Macユーザーのサポート: セルフサポートモデル

Appleテクニカルホワイトペーパー
Macユーザーのサポート:セルフサポートモデル
Appleテクニカルホワイトペーパー
Macユーザーのサポート:
セルフサポートモデル
最終更新日2013年1月23日
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Appleテクニカルホワイトペーパー
Macユーザーのサポート:セルフサポートモデル
目次
概要
5
ユーザーの啓蒙
5
ソフトウェアのインストールとアップデート
6
ユーザーによるインストール
7
Mac App Store
7
自動化されたインストール
7
アプリケーション以外のインストール
8
システムのプロビジョニング
9
ゼロタッチモデル:オプション1
9
ゼロタッチモデル:オプション2
9
カスタマーによるセルフヘルプ(Tier 0サポート)
10
自己実行型
10
バックアップ
11
各自のバックアップの活用
11
有料サービスを利用したバックアップ
12
社内バックアップ
12
セキュリティ
12
暗号化
12
ハードウェアのサポート
13
インフラの削減
13
ディレクトリサービス
13
ワイヤレス認証
14
14
資金調達
ハードウェアの自由選択
14
BYODとユーザー所有のシステム
15
2
Appleテクニカルホワイトペーパー
Macユーザーのサポート:セルフサポートモデル
サポートコストの削減
15
設備投資か、運用費か
15
ユーザーの満足度
16
ユーザーの生産性
16
まとめ:サンプル事例
16
結論
17
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Appleテクニカルホワイトペーパー
Macユーザーのサポート:セルフサポートモデル
概要
このホワイトペーパーでは、Macを管理、サポート、保護、制御するIT部門が、コス
ト削減とITスタッフ、ポリシー、プロセスに対するユーザーの満足度向上を両立させ
るための方法を紹介します。
ITのコンシューマライゼーションと個人デバイスの持ち込み(BYOD)の傾向は、多
くのビジネスとエンタープライズの主流となりつつあります。こうした変化により、
ユーザーは最も効率的なツールを使って作業できるようになるため、ユーザーの意欲
と生産性向上など、中堅・大規模組織に多くのメリットをもたらします。また、こう
した傾向により、全体的な仕事に対する満足度、IT部門に対する社員の満足度を高め
るとともに、ハードウェアとソフトウェアの両方のコストを削減できる可能性もあり
ます。実際、セルフサポート型の原理は、コストを削減しながらユーザーに権限を付
与する非常に強力な媒体となりえます。
こうした新しいセルフサポート型のアプローチは、ほぼすべての業界における幅広い
企業で採用されています。このアプローチは、すべての組織に適しているわけではあ
りませんが、組織が計画とリソース配分を行うにあたり検討する価値は十分にありま
す。ユーザーの満足度向上とコスト削減のために、このアプローチのすべての要素を
導入する必要はありません。どのようなアプローチを導入する場合でも、セルフサポー
トアプローチを好むユーザーと一元管理型のITによるサポートのアプローチを好むユー
ザーの両方が満足できるようバランスをとることが重要です。
ユーザーの啓蒙
大規模な組織におけるIT管理者および社員には、次のような共通の疑問があります。
•
IT部門が(すべてではなくても)ほとんどなくなった場合、ユーザーのコンピュー
タの自動化された制限や制御の部分はどうなるのか。
• 日常のコンピュータの使用についての主要な意思決定者が、そのコンピュータを
使うことにほとんどの時間を費やしている人々である場合はどうなるのか。
• ユーザーがシステムの基本を理解し、個人の車や家と同じような感覚で運用に責
任を持つようになった場合、どうなるか。
この数年間で、どこからでも可能なインターネットアクセス、Apple
iOSデバイスな
どのモバイルソリューション、クラウド関連テクノロジーによって、ユーザーによる
セルフサポートの傾向が高まっています。ウェブポータルがサポートセンターの電話
にとって代わりました。多くのサポート体制では、自動化されたシステムが人間同士
の相互関係を補完しています。予算制限に対する重圧と、セルフサポートに慣れてい
る従業員を抱える中、多くのIT部門がこのアプローチを検討し始めているのは当然の
ことと言えます。
職場における「コンシューマライゼーション」の概念は魅力的です。たとえば、コン
シューマライゼーションには「何か必要な時は自分で手に入れる」という意図があり
ます。保留で待たされたり、システムをデポに持ち込んだりする必要もありません。
代わりに、利用可能なツールを使用し、様々な自動システムを通じて自分のニーズを
満たすことができます。
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Macユーザーのサポート:セルフサポートモデル
完全な消費者先導型アプローチは、あらゆる組織で実行可能であるとは限りません。
組織によっては法的な理由からコンピュータシステムを特別なポリシーや厳格な標準
に基づいて運用する必要があります。また、社風やビジネスモデルのため、ユーザー
の柔軟性をあまり高めるべきではないと考える組織もあります。
それでも、多くの組織がセルフサポートおよびBYODの要素を導入しています。複数
のIT部門の一部が協力して、ユーザーにより多くの責任を持たせるようにすることも
あれば、既存のサポートリソースに対するユーザーの不満が導入の原因になっている
こともあります。数年前は奇抜で実行不可能に見えたこのアイデアは、現在では標準
になっています。
また、新世代の従業員の多くがモバイルテクノロジー、ソーシャルネットワーク、ど
こからでも利用可能なブロードバンドと共に成長してきたという点も注目に値します。
調査では、労働人口に加わろうとしている世代の従業員が、サービスのリクエスト方
法として、従来のヘルプデスク電話サポートよりもセルフサポートのモデルや機構を
好んでいることが明らかになっています。従来の一元管理型サポートチャネルを利用
する前に、自分自身や同僚をサポートしようとする従業員が増えています。効率的か
つ効果的なソリューションに対する要望(およびこうしたソリューションの共有に対
する積極性)は世界的にほぼ共通しており、こうした特徴を併せ持つ新世代の従業員
は組織にとってのすばらしい資産となっています。
ソフトウェアのインストールとアップデート
IT部門が頻繁に行うタスクに、アプリケーションとパッチの提供があります。ソフト
ウェアは頻繁にアップデートされるため、最新のソフトウェアの使用を確実にするこ
とが望まれます。ユーザーの大部分が同じ主要バージョンのアプリケーションを使用
すれば、ユーザーの混乱を減らし、様々な部署間での相互運用性を高めることができ
ます。
以前、このタスクは、各システムに物理的にインストールメディアを持ち込み、各ワー
クステーションで手動でアプリケーションやアップデートをインストールするという
非常に煩雑なプロセスで行われていました。後に、様々な管理スイートや配備ツール
の開発に伴い、IT部門は企業ネットワーク経由でシステムにアプリケーションやアップ
デートをプッシュし、ユーザーの介入なしにインストールできるようになりました。
こうしたシステムにより、何千台ものコンピュータをボタン1つでアップデートでき
るため、IT部門の効率は著しく高まります。
ただし、こうしたシステムにはいくつかの問題も付随していました。こうしたシステ
ムにより、以前使用されたことのないアプリケーションがあらゆるシステムに簡単に
読み込まれるようになりました。これも、操作がボタン1つで可能なためです。サイ
トライセンスは、大規模組織における単一アプリケーションの読み込みを法的に許可
することで、この原理を可能にしました。これには、余分なソフトウェアコストがか
かっても、システムを標準化できるという価値があります。どのアプリケーションを
どこに配置するかについて配慮する必要はほとんどなく、すべてのユーザーが使用す
るあらゆるコンピュータで一貫性のある基本機能を期待できます。
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Macユーザーのサポート:セルフサポートモデル
ITシステムが複雑さを増すに伴い、プロセスを効率化し、各ユーザーの業務内容やニー
ズに最適なソフトウェアを配布できる、さらに複雑なソリューションが検討されるよ
うになりました。
それぞれのユーザーに読む込む固有のソフトウェアを選択させることは、(ユーザー
がBYODモデルで個人のデバイスやコンピュータを選択または購入するかに関係な
く)コンシューマライゼーションの動きにおける中心的な要素です。このアプローチ
は、IT部門の選択と配備作業を軽減すると同時に、より効率的なソフトウェアの使用
とライセンスを促進します。
ユーザーによるインストール
基本的なレベルでのセルフサポートによるソフトウェアの配布方法では、ユーザーが
ウェブページにアクセスしソフトウェアをダウンロードします。多くのアプリケーショ
ンのインストールで、ユーザーにはシステムの管理者権限が必要となります。これに
はリスクが伴いますが、IT部門がコンピュータに触れる必要はなく、サードパーティ
製のソフトウェアも不要です。
同時に、ライセンスキーの配布方法も簡単に作成できます。ユーザーはこの方法で、
煩雑な購入プロセスを経ることなく、特定のソフトウェアについてライセンスキーを
取得できます。これを適切に作成してポリシーを適用すれば、このエンタープライズ
アプリケーションストアのアプローチにより、実際特定のアプリケーションを使用す
るユーザーが少数の場合は、サイトライセンスの必要がなくなります。
このモデルは、ユーザーが自宅のシステムやモバイルデバイスで行うものによく似て
いるため、大部分のユーザーが簡単に理解できます。ほとんどのアプリケーションベ
ンダーは、Appleインストーラパッケージフォーマットを使用しているか、時間と手
間をかけてインストールプロセスをシンプルにしているため、Macシステムへのアプ
リケーションのインストールではIT部門の介入がほとんど必要ありません。しかし、
一部のアプリケーション(独自に開発されたアプリケーションに多い)では、経験の
少ないユーザーが自分でインストールできるようになるまでに、多少の慣れが必要な
場合があります。
Mac App Store
組織は、ユーザーのセルフサポートオプションとして、Mac
App Storeを活用する
こともできます。ここでは無料のソフトウェアを簡単にダウンロードでき、有料アプ
リケーションを選択した場合はユーザーに返金したり、必要なソフトウェアをダウン
ロードするために、IT部門または各部署が購入したギフトコードを配布したりするこ
ともできます。Mac
App Storeから購入したアプリケーションは、Macシステムの
入れ替え時や、アプリケーションを誤って削除した場合でも無料で再ダウンロードで
き、環境によっては複数のシステムで利用できます。
自動化されたインストール
多くのクライアント管理スイートが、このエンタープライズアプリケーションストア
のモデルを使用したセルフサポートポータルを提供しています。その多くの見た目と
使い心地はiTunesやMac
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App Storeに似ています。ユーザーはチェックボックスを
Appleテクニカルホワイトペーパー
Macユーザーのサポート:セルフサポートモデル
オンにするだけでアプリケーションに「登録」できます。ユーザーのコンピュータの
ローカルの管理エージェントがアプリケーションをインストールするので、ユーザー
の権限を昇格する必要がありません。ユーザーは資格情報を入力して、各自の業務や
役職に適切なアプリケーションだけをインストールします。
アプリケーションをインストールした後は、使用可能なライセンス数を減らすことが
でき、IT部門はどのシステムにどのアプリケーションがインストールされたかを(使
用頻度も含め)自動的にトラッキングできます。これはパッチの適用が必要になった
場合の強力なツールになります。パッチが利用可能になった時に、特定のアプリケー
ションの既知のインスタンスを組織全体で自動的にアップデートできます。または、
Mac App Storeと同様に、新しいバージョンが入手可能になった時にユーザーに通
知が届いてソフトウェアをアップデートするオプションが提示されます。
システムが紛失または破損した場合でも、ユーザーが現在登録しているアプリケーショ
ンをユーザーの新しいコンピュータにすばやく配布できます。Appleは、Mac用に購
入したアプリケーションで、Mac App Storeを使用する同様の方法を採っています。
アプリケーションを購入したユーザーには、アップデートに関する通知があります。
ユーザーは、アプリケーションを再購入することなく、購入したアプリケーションを
新しいMacなどに再ダウンロードできます。ラップトップコンピュータを紛失して
も、同じデバイスで交換してすぐに復元でき(別の方法でバックアップと復元を行う
個人情報は除く)、ユーザー側の操作や配慮はほとんど必要ありません。
ライセンスの返還もこのプロセスに統合できます。多くの管理スイートは、アプリケー
ションの実際の使用時間を監視できるよう、アプリケーションの使用レポートを提供
しています。一定時間内のアプリケーションの起動頻度を示す定期レポートを作成で
きます。管理エージェントが使用頻度の低いアプリケーションをシステムから削除す
ると、ライセンスが返還されます。これにより、未使用のライセンスにコストをかけ
ずに、詳細なレポートと完璧なプロビジョニングが可能になります。
管理エージェントは、一部のアプリケーションを必須に設定できます。必須アプリケー
ションでは、ユーザー側の意思決定は必要なく、管理エージェントがネットワークに
接続すると自動的に起動されます。オフィススイートやアンチウイルスソフトウェアな
ど、組織内のすべてのMacで必要なアプリケーションのリストを簡単に作成できます。
アプリケーション以外のインストール
セルフサポートポータルを使ってアクセスできるのは、アプリケーションだけではあ
りません。企業のテンプレート、社員共通の文書、ソフトウェアアップデートなども
同じ方法で配布し、任意または必須のシステムコンポーネントとして設定できます。
この概念を応用して、組織は、使用可能なプリンタの追加、VPNおよび802.1X構成、
さらにはディスクの整合性の検証といったIT部門のタスクにユーザーのセルフサポー
トアプローチを導入することができます。こうしたタスクはすべて、適切に設定され
たポータルを使って行えます。
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Macユーザーのサポート:セルフサポートモデル
システムのプロビジョニング
読む込むソフトウェアのほとんどはアプリケーションですが、新しいコンピュータに
必要なものはアプリケーションだけではありません。要求されるセキュリティのレベ
ルや、新しいシステムの配備に使用されるマスターイメージ(モノリシックイメージ
でもシンイメージでも)のその他の側面の複雑さによっては、多くのオペレーティン
グシステムファイルや構成設定の追加、編集、削除が必要になることがあります。シ
ステム上で管理エージェントを使用している場合、最初にコンピュータにエージェン
トを組み込むという課題もあります。
システムのプロビジョニングにおけるセルフサポートアプローチでは、ユーザーにシ
ステムを提供する「仲介者」としてのIT部門の作業が排除されます。IT担当者がシス
テムを開梱し、イメージを作成してから、システムを再梱包して最終的な使用場所に
出荷するという作業は、時間とリソースがかかります。
ゼロタッチモデル:オプション1
この最初のシステムプロビジョニング上の課題を回避するアプローチの1つとして、
ほとんどのハードウェアベンダーとリセラーが提供している自動化されたイメージン
グ機能を活用できます。この機能は従来広く使用されてきましたが、ほとんどの場合
大きなモノリシックイメージが必要とされるため、新しいハードウェアとオペレーティ
ングシステムで、またはアプリケーションのアップデート時に頻繁にアカウントの微
調整が必要でした。
シンイメージングのワークフローとしてより効率的なアプローチは、システムで使用
したい管理エージェントをベンダーがインストールし、ユーザーにシステムを直接出
荷することです。ユーザーはこのシステムを作動させ、ネットワークに接続できます。
接続後は管理エージェントが主要サーバに接続し、必要とされる重要なパッチをすべ
て適用して、ユーザーアカウントをプロビジョニングできます。その後ユーザーは、
セルフサポートポータルから追加のソフトウェアとその他の項目を選択できます。こ
のアプローチでは、プロセスは完全に自動化されたままで、基本機能とセキュリティ
を確保できます。
ゼロタッチモデル:オプション2
ゼロタッチモデルのさらに高度な使用方法では、ユーザーがシステムを入手し、その
後システムの唯一の管理者として、必要となるエージェントとその他のソフトウェア
をインストールし、システムを企業環境にブートストラップできます。このアプロー
チは、システムのプロビジョニングでSCEPなどのセキュアな認証済みメカニズムを
使用するモバイルデバイスとクライアント管理スイートに適しています。
このアプローチでは、一般公開されているウェブサイトから(基本的なプロビジョニ
ングが終了しないとVPNが動作しない点に注意)、またはインストールディスクや、
システム購入時にユーザーに出荷されたUSBキーフォブを利用して、管理エージェン
トをインストールします。
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Macユーザーのサポート:セルフサポートモデル
ITユーザーと標準ユーザーを分けたい場合は、ユーザーに管理者アカウントを設定し
ないでおくこともできます。この場合は、カスタム設定の起動DVDまたはUSBキー
フォブを使用して、管理エージェントをプロビジョニングしてから基本のユーザーア
カウントをプロビジョニングします。
カスタマーによるセルフヘルプ(Tier 0サポート)
セルフサポートモデルでサポート費用を削減する上で重要な要素は、セルフヘルプ
(Tier 0)サポートオプションを強化し、普及させることです。こうしたサポートオ
プションを使えば、ユーザーは従来のサポートサービスを利用する前に自分でサポー
トできます。Tier 0環境の充実度が高いほど、後続のTierのサポートも大幅に減らす
ことができます。
基本的なTier 0の提供内容は、メーリングリストなどシンプルなものにすることがで
きます。これは、ユーザーが質問したり、問題解決に参加したりできる場となりま
す。メーリングリストをアーカイブすれば、後に組織内での体系化された知識源とな
ります。
社内ソーシャルネットワーク、Wiki、フォーラムのようなウェブベースの提供内容
も、Tier 0のサポートツールとして非常に効果的です。ユーザーが即時のフィードバ
ックを提供し、常に内容を編集できるようにすると、文書の適時性とユーザーとの関
連性を維持できます。IT部門のスタッフも、必要に応じてユーザー向けの通知や詳細
情報を投稿できます。
特定のアクティビティのスクリーンキャストやPodcastを、オンラインヘルプデスク
のソリューションと組み合わせることができます。ユーザーがサポートチケットを提
出する際、自分で問題を解決するために役立つ様々なツールや資料をユーザーに提供
できます。これを効果的に用いれば、全体のヘルプデスクチケットの半数は提出前に
解決できます。
自己実行型
適切に計画して実行すれば、自動的に強化されるようなTier 0のサポート内容を作成
できます。素となる資料は必要ですが、ある程度の数のユーザーが集まれば、
CRM(コミュニティリレーションシップマネージャ)を確立できます。CRMには、
ユーザーコミュニティへの指導と、場合によってはコンテンツの削除や編集を担うIT
部門のスタッフが適していますが、一部の組織では、一般のユーザーがローカル
CRMを努める場合もあります。これらの社員はIT部門のスタッフではありませんが、
ほかのユーザーのサポートに関心を持っています。そういった社員は、実体験や個人
の関わり合いを通して全体のサポートを大幅に強化できます。また、こうした社員
は、大規模組織のIT部門のスタッフのように別のチームや部署としてではなく、同僚
としてみなされます。
標準のユーザーが努めるCRMを効果的に活用するには、こうしたユーザーの進歩や
成功を奨励することが必要となります。セルフヘルプフォーラムで星によって評価す
るといったシンプルなものや、公的な賞やインセンティブ(CRMのコンピュータを
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Macユーザーのサポート:セルフサポートモデル
一般ユーザーよりも頻繁に入れ替えるなど)を授与するといった実質的なものにする
ことができます。
ここで議論になるのが、CRMの使用は無償ではないという点です。CRMはほかの職
務も担っているため、内部サポートサイトでほかのユーザーのIT関連の問題をサポー
トしていると、自分の職務が果たせなくなる可能性があります。これに伴うコスト
は、存在したとしても計算がとても困難です。一般社員の生産性は通常、労働時間で
はなく、労働の結果を基準にして評価されます。CRMは必ずしも結果を少ししか出
していないわけではなく、多くのCRMは、ほかのユーザーをサポートすることでや
る気や興味が起き、ユーザーのサポートに加えて通常の業務も達成することができる
と感じています。ただし、認められたり、賞をもらったりすることのほうがはるかに
やる気が起きるようです。
バックアップ
堅牢なアプリケーションポータルと管理エージェントは、アプリケーションやその他
のシステムレベルのパッケージの再インストールはサポートできますが、ユーザーデー
タのバックアップは行いません。既存のバックアップサービスレベル契約(SLA)に
よっては、これが問題となる場合もあります。IT部門がローカルでのバックアップを
行わず、ユーザーが重要な情報を手動でネットワークのファイル共有、クラウドサー
ビス、定期的にバックアップされるコラボレーションシステムに保存することはきわ
めて一般的です。
セルフサポートモデルでは、ほとんど、もしくはまったく予算をかけずにバックアップ
を大幅に強化できます。
各自のバックアップの活用
ほとんどのオペレーティングシステムには、何らかの基本的なユーザーのバックアップ
機能が備わっています。Appleが提供するTime
Machineを使うと、ユーザーは外付
けハードドライブにシステムファイルやアプリケーションなど様々なファイルをバック
アップできます。ユーザーはファイルを自分で復元するか、必要に応じてシステムの
ベアメタル復元も実行できます。ユーザーが特に頻繁にバックアップドライブを交換
している場合を除き、オフサイトでのバックアップは提供しませんが、Time
Machineよってほとんどの一般的なデータ紛失を防ぐことができます。
システム上で管理エージェントを使用している場合は、定期的にバックアップをチェ
ックするようエージェントを設定できます。こういった設定をしておけば、確実にバ
ックアップシステムを機能させ、定期的に新しいバックアップを作成することができ
ます。
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Macユーザーのサポート:セルフサポートモデル
有料サービスを利用したバックアップ
業務用のバックアップには、SaaS(Software as a Service)としてオンラインバック
アップが含まれています。比較的低い年間コストで、ユーザーはバックアップエージェ
ントを利用することができます。このエージェントは、クラウドに存在するプロバイ
ダのサーバにファイルをプッシュします。ユーザーは自分の保存プロセスを始めて、
バックアップ内容を完全に管理することもできます。
この設定は、最小限のコストでオフサイトのバックアップの要件を満たしています。
基本的なバックアップと復元のプロセスはこの方法ではできませんが、IT部門の関与
がなくても重要なユーザー情報を保護できます。
多くの場合、クラウドでのバックアップは暗号化されるので、重要なデータをオフサ
イトでほかの企業と一緒に保管する時も心配はいりません。
社内バックアップ
IT部門がデータセンターにある独自のバックアップサーバをホストできるソリュー
ションを、多くのベンダーが提供しています。ユーザーの使用感は、ユーザー自身が
復元を行う時なども変わりません。組織はバックエンドのストレージを保守し、ユー
ザーはバックアップの割り当てを必要に応じて増やせます。
この方法はより複雑ですが、コストの削減が見込まれます。しかし、主要なメリット
は、バックアップデータをより精密に制御できることです。バックアップが社内・社
外のどちらで行われるかにかかわらず、ほとんどの部分でユーザーの使用感は変わり
ません。
セキュリティ
セルフサポートモデルは、必ずしも安全性が低いわけではありません。ディスク全体
の暗号化、アンチウイルスソフトウェア、そのほかの方法を使ってセキュリティを保
持できます。目標は、それらのインストールや使用をユーザーにとってできるだけ簡
単なものにすることです。
セキュリティ機能の大半で、理想的な設定はユーザーに注目されません。ユーザーは
それぞれ異なるレベルの保護を必要としている可能性があるため、個々のニーズは組
織の中でも異なります。
暗号化
HTTPSやSSL VPNなどのセキュアなプロトコルでは、動的なデータに簡単にセキュリ
ティ層を作成できます。オンラインバンキングを利用しているユーザーはすでにこれ
らのプロトコルを知っているかもしれません。
静的なデータには少し準備が必要ですが、適切に処理すればユーザーからはほとんど
透過的に処理されます。FileVaultは、Appleのアプリケーションです。Snow
Leopard以前に搭載されていたFile Vaultではユーザーのホームフォルダの暗号化を
行います。ディスク全体の暗号化には、Lionから搭載されたFileVault 2、またはサー
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Macユーザーのサポート:セルフサポートモデル
ドパーティソリューション(PGP、Check
Point、WinMagic)を使用することがで
きます。これらのソリューションは、システムを起動する時以外は透過的に処理され
ます。ポータブルコンピュータを紛失したり盗まれたりした場合もデータは安全に保
たれます。
ハードウェアのサポート
アプリケーションの配布とユーザーバックアップソリューションによって、ハードウェ
アの修理は非常にシンプルになります。ユーザーが同じコンピュータまたは代替品か
らアプリケーションポータルに戻れれば(または管理クライアントをインストールで
きれば)、最後にバックアップした環境から完全に環境を複製できます。その点を考
慮すれば、ハードウェアサポートはユーザーの利便性とユーザーが要望する重要な
SLAになります。
本社には、サービス拠点の運営を検討するのに十分な人数がいるかもしれません。
Appleは様々なサポートプログラムを用意しているので、お客様がお使いのシステム
上で在庫部品のオプションも含む保証修理を行えます。組織はハードウェアに対する
貸与者の資金を保守でき、ユーザーは迅速に代替品を受け取ってコンピュータの修理
中も作業を続けられます。
より手のかからない方法として、承認を受けた修理センターや再販業者を利用した
り、ユーザーが電話をして修理を依頼したりすることもできます。オンサイトサービ
スの電話番号も利用できます。
インフラの削減
セルフサポートポータルは、従来のITインフラをさらに削減できます。管理者アカウ
ントがなくても管理エージェントを使ってアプリケーションを追加/削除できれば、
ほかにどのようなサービスが削減できるでしょうか。まずは従来のディレクトリサー
ビスです。
ディレクトリサービス
組織は、ディレクトリサービスの完全な排除を検討する代わりに、ポータブルコン
ピュータにまでディレクトリサービスを提供する必要性を疑問視しています。ほとん
どの企業環境では、ポータブルコンピュータを実際に使用するのは、そのコンピュータ
を割り当てられたユーザーだけです。ほかのユーザーからの資料などは、Eメール、
ファイル共有、クラウドサービス、リムーバブルメディアなどの媒体を通じて受け取
ります。ユーザーがファイルを受け取ると、事実上そのファイルの所有者となるため、
ポータブルコンピュータには強力な認証や識別サービスを提供する必要はありませ
ん。このモデルは、組織内でのモバイルデバイスの配備および管理方法を拡張したも
のです。
ポータブルコンピュータはディレクトリサービスを削減しやすい部分です。これによ
り、バックエンドサービスへの需要が大幅に削減され、サーバやその他のインフラを
より適切な用途に再プロビジョニングするか、使用を停止することができます。デス
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Macユーザーのサポート:セルフサポートモデル
クトップコンピュータは複数のユーザーが使用する場合があるため、このモデルには
あまり適していません。
ワイヤレス認証
もう1つインフラの削減を容易に検討しやすいのがワイヤレス認証です。多くの組織
では、ワイヤレスネットワーク保護のために強力な認証方法を作成しようと多くの予算
と時間を投じています。802.1Xはこのニーズを満たすために登場しました。
しかし、同時に、ほとんどすべての組織が、同様ではあるがセキュリティレベルとい
う点で異なる、非常に堅牢なVPNソリューションを導入しています。ほとんどのポー
タブルコンピュータがVPNアクセスとワイヤレスアクセスの両方のライセンスを持っ
ているため、サービスが重複することになります。また、ワイヤレス認証ではベンダー
と規格の競合という複雑な状況があるため、IT部門にとっては最も難しいタスクにな
る場合があります。
一部の組織ではこの重複に気付き、ワイヤレス認証を排除しています。こうした組織
では自由なワイヤレスアクセスの使用を許可し、ワイヤレスネットワークを信頼でき
ないネットワークとみなす「コーヒーショップ」モデルを採用しています。ポータブ
ルコンピュータのユーザーが社内リソースにアクセスする時は、自宅のネットワーク
(または公共ネットワーク)を使用している時と同じように、VPNを使用する必要が
あります。
資金調達
セルフサポートモデル成功のための主な要素は、ユーザーにITへの興味を持ち続けて
もらうことです。使っているシステムの機能に興味があるユーザーは、システムによ
り深く注意を向け、適切なソフトウェアパッチで更新を行うだけでなく、通常は責任
を持ってシステムを使用します。
組織はより信頼できるユーザーにこの責任を請け負わせます。しかし、ユーザーに所
有権を与えるより効果的な方法があります。
ハードウェアの自由選択
システムを選択する上でユーザーに大きな柔軟性を与えると、非常に費用がかかる可
能性がありますが、組織はユーザーにハードウェアのための一定の手当てを支給でき
ます。実際の支給金額は様々ですが、通常は一定の範囲内のシステムから選択するの
に十分な金額です。
社員は次のように手当てを支給されます。
• 企業の購入カードで利用を許可されている金額
• システムのセットからの選択(個人または部門にコストがかかる場合とそうでな
い場合がある)
• 機器の購入用に支払われる「ITのフレックス給付金」
• 一度に、または長期間にわたって支払われる給付金
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Macユーザーのサポート:セルフサポートモデル
企業によっては、コンピュータを企業の資産であると考えていますが、仕事の一部と
して必要な個人の資産であるととらえる企業もあります。この場合、社員はコンピュー
タを承認済みのセットから選び、予算を超えた分は自分で支払うか、完全に自由に選
ぶかのどちらかの方法でコンピュータを購入します。
その代わり、ユーザーは一定の期間(組織の通常のコンピュータの入れ替え時が一般
的)が終了してもコンピュータを使い続けることができます。仕事とプライベートが
融合されたこのモデルは、よりクリエイティブで柔軟な仕事の習慣をユーザーに身に
つけさせるために考えられました。さらに、普段から使用しているシステムの直接の
所有者になることで、ユーザーはさらにしっかりとシステムに目を向けるようになり
ます。コンピュータ上の不適切/違法なものが仕事に使用されるのではという懸念に
は、通常、IT担当者ではなく人事部門のポリシーによって対応します。
BYODとユーザー所有のシステム
手当てを支給し、社員が管理する形態のシステムへの移行は、多くの組織の基本的な
IT原理にとって重大な変化です。ユーザーが所有するシステムが中央で管理されるも
のではなくなるため、ユーザーがシステム上に業務とは関係のないファイルなどを保
持する可能性が出てきます。ユーザーがコンピュータを所有する場合、こうしたファ
イルの保存を許可することはもちろん、完全に予期しておくべきです。多くの組織が、
iPhoneやiPadなどのモバイルデバイスについてBYODモデルを積極的に取り入れて
います。このモデルを拡張して、個人のポータブルコンピュータも含めることは、自
然な流れであると言えます。今後数年間で、そのモデルが主流となるかもしれません。
サポートコストの削減
組織はソーシャルなセルフサポートモデルによってコストを節約できます。主な節約
は、通常のユーザーが必要とする専門機関からのサポートの削減によるものです。組
織にとっては、セルフサポート環境でAppleのシステムを使っているユーザーのヘル
プデスクチケットを50パーセント削減することも珍しくありません。
ヘルプデスクチケットの削減によって、IT部門のスタッフは、かかってきた電話に応
対するだけではなく、より積極的なサポートに多くの時間をかけられるようになりま
す。このモデルを使用しているIT部門は、ユーザーの問題に対処する代わりに、セル
フヘルプに役立つ資料やほかのTier 0リソースを作ることに集中できます。
しかし、企業が結んでいるサポート契約との競合が起きる場合があります。特に、ニー
ズが減った時も割引されない、毎月一定の金額を支払うサポート契約であった場合、
このモデルと競合する可能性があります。
設備投資か、運用費か
会計上の規制によっては、企業が支給したシステムからユーザーが自分のために購入
したシステムに移行すると、出費が企業の設備投資から運用費に変わる可能性があり
ます。企業の戦略とビジネス状況によっては、従来の資本償却のアプローチから、社
員への支給によって運用費を利用するアプローチに切り替える企業もあります。
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Macユーザーのサポート:セルフサポートモデル
ユーザーの満足度
詳細なコストを計算することはできませんが、セルフサポート環境を選び、その環境
で成功するためのツールを入手したユーザーは、コンピュータに対しても、サポート
に対しても、通常とても高い満足度を報告しています。適切に導入すれば、これらの
環境ではほとんどの場合、非常に高いユーザー満足度が見られます。
ユーザーの生産性
このアプローチを導入した組織は、ユーザーが問題解決にかける時間が、IT部門がサ
ポート要求に応対するのを待つ場合より短くなっていると報告しています。一般的な
サポート時間の制約がないので、ユーザーはより良いサービスを受けられます。さら
に、この設定を選んだほとんどの社員は、テクノロジーに対してもともと興味を持って
いるため、このモデルは、組織に貢献しようという社員の気持ちに応え、それを活か
します。
まとめ:サンプル事例
大幅なコスト削減や社員の満足度向上のために、このホワイトペーパーに記載されて
いる要素をすべて導入する必要はありません。ただし、これらの要素すべてをどのよ
うに組み合わせるかを示すため、このセクションでは新しい社員が加わった時に企業
が対応する状況のサンプル事例を紹介します。
新しい社員が企業に加わり、コンピュータの購入予算を割り当てられました。そ
の社員は様々なシステムが提供されるウェブサイトを紹介されます。すべてのコ
ンピュータはノートブック型ですが、一部にはほかより高性能のものや、バッテ
リーの駆動時間が長いもの、重量が軽いものもあります。社員はシステムを選
び、システムの価格が割り当てられた予算を超過した場合に備えて自分のクレジ
ットカードを提出します。
コンピュータが出荷され、朝までに社員のデスクに直接届けられます。特別なビ
ルドやオペレーティングシステムは搭載されていない状態です。社員はユーザー
名とパスワードによるSSL VPNへのログイン方法が書かれたシンプルなインスト
ラクションシートを支給されます。システムは公共のインターネット接続または
オフィスでだれもがアクセスできるワイヤレスネットワークのいずれかを使います。
VPNへの接続が完了したら、社員は社内のアプリケーションストアにある数々の
アプリケーションに目を通し、役割にふさわしいアプリケーションを選びます。
セルフヘルプビデオとスクリーンキャストに従って、Eメールやカレンダーのクラ
イアントを設定します。ローカルの複数のプリンタから選択する時も、自動化さ
れた様々なシステムがサポートします。
たとえどこかで行き詰まったとしても、基本的な問題をサポートするヘルプデス
クへの通話料無料の電話番号が知らされています。
問題が起きたら、設定に関する問題についての様々なセルフヘルプフォーラムと
Eメールの一覧を見ることができます。これらのリソースには、情報が現在も有効
で正しいものかを確認するボランティアアシスタントたちがついています。ハー
ドウェア問題の場合、社員は再販業者やメーカーと直接やりとりしたり、サード
パーティによるオンサイトの修理委託を利用したりできます。
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Appleテクニカルホワイトペーパー
Macユーザーのサポート:セルフサポートモデル
仕事以外の時間には、コンピュータ上で個人所有の画像やマルチメディアプロジェ
クトを自由に使うことができます。社員はセルフサポートで情報を取得できるオ
ンラインのバックアップサービスに、仕事のファイルに加えて個人データのバック
アップをとります。
3年後、社員は古いコンピュータを私用にとっておくこともリサイクルに出して
多少の払戻金を得ることもできます。新しいIT購入予算が社員に与えられ、また
同じサイクルが繰り返されます。
結論
このホワイトペーパーに記載されているいくつかのアイデアを活用すれば、組織は大
幅にコストを節約することができます。ユーザーと組織の両方に適応したセルフサ
ポート環境を作るには、慎重さが必要です。また、紹介されているアプローチは、必
ずしもすべての企業に適しているわけではないことに注意してください。
ユーザーをこのプロセスに初期から関与させ、ニーズに対する最善策は何かを理解す
ることで、最高のメリットが得られます。すべての提供物について、セルフサポート
アプローチを好むユーザーと一元管理されたITサポートアプローチを好むユーザーの
ニーズのバランスをとりましょう。
Appleは、新しいシステムの初期設定、Mac App Store、組織による一元修理委託
や修理サービスの外部委託の保守など、セルフサポートモデルを簡素化する多数のソ
リューションを提供しています。詳しくはAppleアカウントチームまたはApple製品
取扱店にお問い合わせください。
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Appleテクニカルホワイトペーパー
Macユーザーのサポート:セルフサポートモデル
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います。ただし、誤植や制作上の誤記がないことを保証するものではありません。
2013年1月23日
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