Ⅳ-1 安衛則第六百三十五条 協議組織の設置及び運営

今回は安衛法第30条1項に規定される「特定元方事業者等の講ずべき措置」を具体的に挙げます。
Ⅳ-1
安衛則第六百三十五条 協議組織の設置及び運営 特定元方事業者は、法第三十条第一項第一号の協議組織の設置及び運営については、
次に定めるところによらなければならない。
一
特定元方事業者及びすべての関係請負人が参加する協議組織を設置すること。
二
当該協議組織の会議を定期的に開催すること。
と規定されています。また、平成7年4月の通達『元方事業者による建設現場安全管理指針について』
で具体的な運営方法等が定められています。
元方事業者が設置・運営する労働災害防止協議会等の協議組織については、次によりその活性化を図ること。
(1) 会議の開催頻度
元方事業者は、協議組織の会議を毎月1回以上開催すること。
(2) 協議組織の構成
元方事業者は、協議組織の構成員に、統括安全衛生責任者、元方安全衛生管理者又はこれらに
準ずる者、元方事業者の現場職員、元方事業者の店社(共同企業体にあっては、これを構成する
すべての事業者の店社)の店社安全衛生管理者又は工事施工・安全管理の責任者、安全衛生責任者
又はこれに準ずる者、関係請負人の店社の工事施工・安全管理の責任者、経営幹部、安全衛生推
進者等を入れること。なお、元方事業者は、構成員のうちの店社の職員については、混在作業に
伴う労働災害の防止上重要な工程に着手する時期、その他労働災害を防止する上で必要な時期に
開催される協議組織の会議に参加させること。
(3) 協議事項
協議組織の会議において取り上げる議題については、次のようなものがあること。
[1]
建設現場の安全衛生管理の基本方針、目標、その他基本的な労働災害防止対策を定めた計画
[2]
月間又は週間の工程計画
[3]
機械設備等の配置計画
[4]
車両系建設機械を用いて作業を行う場合の作業方法
[5]
移動式クレーンを用いて作業を行う場合の作業方法
[6]
労働者の危険及び健康障害を防止するための基本対策
[7]
安全衛生に関する規程
[8]
安全衛生教育の実施計画
[9]
クレーン等の運転についての合図の統一等
[10]
事故現場等の標識の統一等
[11]
有機溶剤等の容器の集積箇所の統一等
[12]
警報の統一等
[13]
避難等の訓練の実施方法等の統一等
[14]
労働災害の原因及び再発防止対策
[15]
労働基準監督官等からの指導に基づく労働者の危険の防止又は健康障害の防止に関する事項
[16]
元方事業者の巡視結果に基づく労働者の危険の防止又は健康障害の防止に関する事項
[17]
その他労働者の危険又は健康障害の防止に関する事項
(4) 協議組織の規約
元方事業者は、協議組織の構成員、協議事項、協議組織の会議の開催頻度等を定めた協議組織の
規約を作成すること。
(5) 協議組織の会議の議事の記録
元方事業者は、協議組織の会議の議事で重要なものに係る記録を作成するとともに、これを
関係請負人に配布すること。
(6) 協議結果の周知
元方事業者は、協議組織の会議の結果で重要なものについては、朝礼等を通じてすべての現場
労働者に周知すること。
Ⅳ-2
安衛則第六百三十六条 作業間の連絡・調整
特定元方事業者は、法第三十条第一項第二号の作業間の連絡及び調整については、
随時、特定元方事業者と関係請負人との間及び関係請負人相互間における連絡及び
調整を行なわなければならない。
と規定されています。また、同上の通達では以下のよう定められています。
元方事業者は、混在作業による労働災害を防止するため、混在作業を開始する前及び日々の安全施工
サイクル活動時に次の事項について、混在作業に関連するすべての関係請負人の安全衛生責任者又は
これは準ずる者と十分連絡及び調整を実施すること。
[1]
車両系建設機械を用いて作業を行う場合の作業計画
[2]
移動式クレーンを用いて作業を行う場合の作業計画
[3]
機械設備等の配置計画
[4]
作業場所の巡視の結果
[5]
作業の方法と具体的な労働災害防止対策
毎日の安全行程打ち合わせにおいては、上の通達の内容を含め以下の点を特に入念に実施する
よう心掛けて下さい。
① 上下作業についての作業時間の調整、養生の方法、立入禁止、投下禁止などの危険防止
措置についての連絡
② 足場、型枠、クレーン、杭打(抜)機等の組立又は解体作業における作業時間等の調整
及び危険防止措置についての連絡
③ 荷揚げ、荷降し作業におけるその周辺作業員間の作業時間の調整及び危険防止措置の方法
についての連絡
④ 同一の足場を使用する場合の作業時間の調整及び作業員間の連絡の方法
⑤ 建設機械を用いて行う作業と、その周辺作業員との調整
Ⅳ-3
安衛則第637条 作業場所の巡視
特定元方事業者は、法第三十条第一項第三号の規定による巡視については、毎作業日に少なく
とも一回、これを行なわなければならない。
2
関係請負人は、前項の規定により特定元方事業者が行なう巡視を拒み、妨げ、又は忌避して
はならない。
と決められています。安衛則でいう「特定元方事業者」は「統括安全衛生責任者」=「工事責任者」
です。巡視時の確認事項としては、以下の点に特に注意して下さい。
① 連絡・調整事項の実施状況
② 朝礼等における指示事項の実施状況
③ 災害防止協議会の決定事項等の実施状況
④ 安衛法第31条に定められている建設物、設備又は原材料について、災害防止のための措置
に欠陥が無いかを点検する。(次ページに詳細)
第三十一条 (注文者の講ずべき措置)
特定事業の仕事を自ら行う注文者は、建設物、設備又は原材料(以下「建設物等」という。)
を、当該仕事を行う場所においてその請負人(当該仕事が数次の請負契約によつて行われると
きは、当該請負人の請負契約の後次のすべての請負契約の当事者である請負人を含む。第三十
一条の四において同じ。)の労働者に使用させるときは、当該建設物等について、当該労働者
の労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
と規定されています。「労働災害を防止するため必要な措置」については、安衛則644条∼662条に
規定されています。
【安衛則第644条】 くい打機及びくい抜機についての措置【安衛則第654条】仮設通路についての措置
【安衛則第645条】 軌道装置についての措置
【安衛則第655条】足場についての措置
【安衛則第646条】 型枠支保工についての措置
【安衛則第655条の2】作業構台についての措置
【安衛則第647条】 アセチレン溶接装置についての措置
【安衛則第656条】クレーン等についての措置
【安衛則第648条】 交流アーク溶接機についての措置
【安衛則第657条】ゴンドラについての措置
【安衛則第649条】 電動機械器具についての措置
【安衛則第658条】局所排気装置についての措置
【安衛則第650条】 潜函等についての措置
【安衛則第659条】全体換気装置についての措置
【安衛則第651条】 ずい道等についての措置
【安衛則第660条】圧気工法に用いる設備についての措置
【安衛則第652条】 ずい道等型枠支保工についての措置
【安衛則第661条】エックス線装置についての措置
【安衛則第653条】 物品揚卸口についての措置
【安衛則第662条】ガンマ線照射装置についての措置
具体的に適合させる基準については、別に規定されています。(今回は省略します)
巡視に際して下請負業者及びその作業員の法令違反を発見した場合に、これを是正させることは、
元方事業者としての指導・指示義務(安衛法第29条)です。
第二十九条 (元方事業者の講ずべき措置)
元方事業者は、関係請負人及び関係請負人の労働者が、当該仕事に関し、この法律又はこれに
基づく命令の規定に違反しないよう必要な指導を行なわなければならない。
2
元方事業者は、関係請負人又は関係請負人の労働者が、当該仕事に関し、この法律又はこれ
に基づく命令の規定に違反していると認めるときは、是正のため必要な指示を行なわなければ
ならない。
3
前項の指示を受けた関係請負人又はその労働者は、当該指示に従わなければならない。
昨年の監督署臨検で当社が受けた使用停止・是正勧告が13件ありましたが、そのうち3件が安衛法
第29条違反でした。