日本が誇る技術力 part2

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投資家ネット*『ジャパニーズ インベスター』/宝印刷主催
第51回 個人投資家のための会社説明会
基調報告
『日本が誇る技術力 part2』
2013年11月29日(金) 於: 京王プラザホテル 「錦」
常務執行役員
近藤 一仁
【ご注意】 「個人投資家のための会社説明会」は、個人投資家の皆様に参考情報を提供し、企業に対する理解を深めていただくことを目的に開催するものです。従いまして個
別銘柄への投資を推奨したり、特定の金融商品の購入を推奨したりするものではありません。また、主催者及び参加企業は投資・運用結果に対して一切の責任を負いません。
投資や金融機関とのお取引を行われる場合には個別情報をご確認の上、ご自身の判断と責任において行うようお願いいたします。
本日、お話ししたいこと
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1
ノーベル物理学賞・化学賞が日本の得意分野
2
2013年のノーベル物理学賞を支えた日本の技術力
3
ノーベル賞受賞者の共通点(ヒト・モノ・カネ・ITそして評価)
4
現状の課題と問題点 (R&D:予算、体制、基礎研究と応用研究)
5
高技術分野における日本のグローバル・ポジション
6
日本のグローバル・ニッチ・トップ カンパニー100社
7
事例研究(堀場製作所、ローツェ)
8
本日の3社のご紹介
1
昨年は「時の人」、日本人二度目の生理学・医学賞受賞 japanese
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山中 伸弥教授
1962年9月4日生まれ(51歳)
京都大学iPS細胞研究所所長・教授、グラッドストーン研究所上級研究員
奈良先端科学技術大学院大学栄誉教授
大阪府東大阪市出身
1987年、神戸大学医学部卒業、1993年、大阪市立大学・博士(医学)
2012年、ノーベル生理学・医学賞をイギリスのJ・ガードン博士と共に受賞
中学・高校では柔道。大学ではラクビー。現在はマラソンを趣味として取り組むスポーツマン。
スポーツで培った経験は集中力で活きており、研究時にはどうやったら人の3倍研究できるか
を考えている。
20歳で結婚した奥さんは中学・高校が一緒の同窓生で、皮膚科医。2人の娘さんは医大生。
父親はミシンを作る町工場の経営者で、医学とはまったく関係ない家庭で育った。
両親が共働きだったため、鍵っ子で放任されていた。とくに塾などにも通ってはいない。
父親と似ていることは、技術者の血を強く感じること。父親は山中教授に「おまえには事業の素質
がない」と言い、怪我が多かったため、医者になることを勧めた。
ノーベル賞受賞理由:「成熟細胞が初期化され多能性をもつことの発見」
2
ノーベル生理学・医学賞では、利根川/山中の両博士 japanese
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生理学・医学賞
受賞者
年齢
1987年
利根川進
48歳
2012年
山中伸弥
50歳
学歴/受賞理由
京都大学理学部卒、カリフォルニア大学サンディエゴ校博士課程修了(Ph.D.)、マサ
チューセッツ工科大学教授/多様な抗体を生成する遺伝的原理の解明。48歳での
受賞。1987年にはノーベル賞に加えて、アルバート・ラスカー賞も受賞している。
神戸大学医学部卒、カリフォルニア大学サンフランシスコ校博士課程修了、京都大学
再生医科学研究所/様々な細胞に成長できる能力を持つiPS細胞の作製。50歳での
ノーベル賞受賞。2009年にアルバート・ラスカー賞を47歳で受賞している。
※ 受賞時の年齢
江崎玲於奈
48歳
湯川秀樹
42歳
田中耕一
43歳
利根川進
48歳
山中伸弥
50歳
下村脩
80歳
鈴木章
80歳
南部陽一郎
87歳
3
ノーベル賞は、物理学賞・化学賞が日本の得意分野
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日本人初のノーベル物理学賞受賞 湯川 秀樹博士
1929年、京都帝国大学理学部物理学科卒業。
1934年、中間子理論構想を発表、中間子の存在を予言する。
1947年にセシル・パウエル等が実際に中間子を発見したことで、
1949年にノーベル物理学賞を受賞した。このニュースは敗戦・占領
下で自信を失っていた日本国民に大きな力を与えたと言われる。
4
日本のノーベル賞受賞者 (物理学賞・化学賞分野)
物理学賞
受賞者
年齢
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学歴/受賞理由
1949年
湯川秀樹
42歳 京都帝国大学理学部卒、理学博士(大阪帝国大学)/中間子の存在の予想
1965年
朝永振一郎
59歳 京都帝国大学理学部卒、理学博士(東京帝国大学)/量子電気力学分野での基礎的研究
1973年
江崎玲於奈
2002年
小柴昌俊
48歳 東京帝国大学理学部卒、理学博士(東京大学)/半導体におけるトンネル効果の実験的発見
東京大学理学部卒、ロチェスター大学博士課程修了(Ph.D.)、理学博士(東京大学)/天体物
76歳
理学、特に宇宙ニュートリノの検出に対するパイオニア的貢献
名古屋大学理学部卒、理学博士(名古屋大学)/小林・益川理論とCP対称性の破れの起源の
64歳
発見による素粒子物理学への貢献
名古屋大学理学部卒、理学博士(名古屋大学)/小林・益川理論とCP対称性の破れの起源の
68歳
発見による素粒子物理学への貢献
東京帝国大学理学部卒、理学博士(東京大学)/素粒子物理学における自発的対称性の破
87歳
れの発見 ※米国籍
小林誠
2008年
益川敏英
南部陽一郎
化学賞
受賞者
年齢
学歴/受賞理由
1981年
福井謙一
63歳 京都帝国大学工学部卒、工学博士(京都大学)/化学反応過程の理論的研究
2000年
白川英樹
64歳 東京工業大学理工学部卒、工学博士(東京工業大学)/導電性高分子の発見と発展
2001年
野依良治
63歳 京都大学工学部卒、工学博士(京都大学)/キラル触媒による不斉反応の研究
2002年
田中耕一
43歳
2008年
下村脩
鈴木章
2010年
根岸英一
東北大学工学部卒、東北大学名誉博士/生体高分子の同定および構造解析のための手法
の開発
旧制長崎医科大学附属薬学専門部卒、理学博士(名古屋大学)/緑色蛍光タンパク質(GFP)
80歳
の発見と生命科学への貢献
北海道大学理学部卒、理学博士(北海道大学)、北海道大学工学部名誉教授/クロスカップ
80歳
リングの開発
東京大学工学部卒、ペンシルベニア大学博士課程修了(Ph.D.)、パデュー大学教授/クロス
75歳
カップリングの開発
5
2013年のノーベル物理学賞を支えた日本の技術力
ノーベル物理学賞受賞者(2013年)
日本人研究者と日本企業の貢献
ピーター・ヒッグス名誉教授【右】
(イギリス、エディンバラ大学)
浅井祥仁教授
(東京大学)
フランソワ・アングレール名誉教授【左】
(ベルギー、ブリュッセル自由大学)
約2,900人が参加する
ヒッグス粒子研究の国
際チーム「アトラス」で、
日本人研究者110人の
まとめ役を務めた。
欧州原子核研究機構(CERN)によって存在が確
認された素粒子(ヒッグス粒子)に基づく、質量
の起源を説明するメカニズムの理論的発見
アトラスで観測されたヒッグス
粒子が4個の電子に崩壊する
事象の候補
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ヒッグス粒子の存在を観測した
「アトラス測定器」
アトラス測定器の建設には多
くの日本企業が参加。日本の
技術無くしては建設出来な
かったと言われる。
【ヒッグス粒子発見に対する貢献で、3氏が仁科賞を受賞】
近藤 敬比古 氏(高エネルギー加速器研究機構特別教授)
小林 富雄 氏 (東京大学素粒子物理国際研究センター教授)
浅井 祥仁 氏 (東京大学大学院理学系研究科教授)
出所:ATLAS JAPAN(アトラス実験日本グループ)Webサイト、各種報道等より作成。
6
ヒッグス粒子の発見に貢献した主な日本企業と大学
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素粒子加速器を構成する部資材に貢献する日本企業
新日鐵住金
超伝導電磁石に使用する特殊ステンレス材
古河電気工業
超伝導ケーブル
IHI
低温ヘリウムコンプレッサー(冷却装置)
東芝
超伝導電磁石、信号読み出し集積回路
JFEスチール
電磁石用非磁性鋼材
カネカ
超伝導電磁石用ポリイミド絶縁テープ
浜松ホトニクス
素粒子を検出するセンサー
川崎重工業
低温真空容器
ソニー
検出器信号アンプ
フジクラ
耐放射線性光ファイバー
クラレ
放射線検出用プラスチックファイバー
有沢製作所
銅箔ポリイミド電極シート
検出装置「アトラス」の実験グループ
高エネルギー加速器研究機構、
東京大学、筑波大学など16機関
検出装置の設計や開発、データの解析作業
出所:ATLAS JAPAN(アトラス実験日本グループ)Webサイト、日本経済新聞(2013年10月9日朝刊)等より作成。
7
自然科学系のノーベル賞受賞者の共通点
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1
幼少期から自然に親しみ、自然現象の美しさや不思議さに
心を奪われ、他のことをする暇もなく、夢中になる。
2
机上の勉強だけではなく、頭の中の知識と想像力を使って
物事を理解しようとする。
3
恩師に恵まれる。(ただし、イギリスのJ・ガードン博士のよう
な例外もある。)
4
挫折しても再起する。何度失敗しても諦めない。
5
論文は「英語」で発表し、その論文が長期間かつ多頻度に
わたり他の論文に引用されている。
6
ノーベル賞に先立ち、ウルフ賞やラスカー賞などの権威ある
賞(経済学:ジョン・ベイツ・クラーク賞)を先に受賞している。
8
ノーベル賞受賞者による 「イノベーションの創出要因」
社会的ニーズ
豊富な知識
人々の願望
綿密な
作戦(計画)
豊富なアイデア
正確な判断
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系統だった
探索
強い意志力
不屈の行動力
よいテイスト
楽観的で
あきらめない心
プライオリティ
(優先順位)
セレンディピティ
(幸運な発見)
イノベーション
出所:根岸英一「私の履歴書」(日本経済新聞 2012年10月22日)、利根川進「私の履歴書」(日本経済新聞 2013年10月31日)を参考に作成。
9
イノベーションの源泉は、ヒト・モノ・カネ・IT、そして評価 japanese
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(複数回答、N=467)
出所:「日本企業の国際競争力とビジネスの展開に関するアンケート調査」(日本貿易振興機構(JETRO)、2007年8月)
10
国際競争力の源泉は、特化/開発/海外/ブランド戦略
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(複数回答、N=467)
出所:「日本企業の国際競争力とビジネスの展開に関するアンケート調査」(日本貿易振興機構(JETRO)、2007年8月)
11
日本の特長は組織の和、ユニークな中小企業の存在
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技術開発における日本・米国・アジアの特長
日本
米国
アジア
研究開発部門と生産現
場が一体となっている。
研究開発は主にベン
チャー企業が中心。
研究開発は大企業の研
究所や大学が中心。
完成品メーカーと素材・
部品メーカーが一体と
なって製品開発を進める。
(自動車など)
大企業はベンチャー企業 日本企業など外国企業
を買収することで、研究 からの技術導入が多い。
開発の成果を獲得する。
(AppleやGoogleなど)
ものづくりの基盤となる
中小製造業の集積地が
存在する。(東京都大田
区、東大阪市など)
新技術の特許戦略や知
的財産戦略に強い。
ものづくりの基盤となる
中小製造業の集積が存
在しないため、必要な部
品は日本企業から調達。
12
2014年2月のソチ オリンピックに挑戦する日本の技術japanese
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下町ボブスレーネットワークプロジェクト・・・2014年2月、NHKでテレビドラマ化!
下町ボブスレー
ボブスレーは、「氷上のF1」とも言われる。イタリア代表はフェラーリ、ド
イツ代表はBMWといった有名企業がソリの開発をしているが、日本代
表はドイツ代表の中古のソリを調達して競技に臨んでいた。
2011年12月、大田区を中心とした中小企業が集まって、日本人のた
めの日本人による初の国産ソリを開発して、オリンピック日本代表を
応援しようというプロジェクト(約40社)がスタート。
東レ・カーボンマジック(株)が
ボディを製作
2013年3月6、7日、米国で行われた「ノースアメリカンカップ」の男子2
人乗り競技で、「下町ボブスレー」が初めて国際大会に参戦し、総合7
位に入賞。下町ボブスレーが国際基準を満たしていることを証明した。
洗練された技術をもつ大田区の町工場の特長
難しい課題を集積力を生かしたネットワークにより解決する問題解決力と情報共有ができている。
ニッチで高シェアの自社製品を持っている。
(例)はやぶさや人工衛星に使われる部品など
※ 『下町ロケット』(池井戸 潤、TBSドラマ「半沢直樹」の原作者)
13
日本の高い研究開発費対GDPの比率!
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研究開発費(R&D) 世界TOP 5
研究開発費(R&D) 国内TOP 5
売上高R&D比率 国内TOP 5
(2011年、単位:億円※)
(2013年度予定、単位:億円)
(2013年度予定、単位:%)
順位
企業
研究開発費
順位
1
トヨタ自動車
8,613
1
2
マイクロソフト
8,422
3
フォルクスワーゲン
4
5
企業
売上高
R&D比率
研究開発費
順位
トヨタ自動車
8,900
1
メドレックス
282.86
2
ホンダ
6,300
2
ラクオリア創薬
140.20
8,000
3
日産自動車
5,080
3
UMNファーマ
138.15
ノバルティス
7,776
4
パナソニック
4,900
4
セルシード
62.80
サムスン電子
7,617
5
ソニー
4,600
5
カルナバイオサイエンス
38.17
企業
※2011年平均レート:1ユーロ=111.0678円で換算
出所:文部科学省「科学技術要覧 平成24年版」より宝印刷で作成。『会社四季報・2013年秋号』より作成。
売上高R&D比率は宝印刷で試算。、『The 2012 EU Industrial R&D Investment Scoreboard』より作成。
自動車
製薬
電機・IT
14
世界の大学評価の軸は、研究環境と成果とその影響力japanese
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イギリスの「Times Higher Education」の
世界の大学ランキングは、13の評価項目
からなり、それらを5つのカテゴリーに
分けてウエイト付けしている。
世界の大学ランキング2013
2013
2012
2011
1
1
2
2
4
2
大学名
1 教育環境(学ぶ環境)
2 研究成果(量、収入、名声)
30%
3 論文引用(研究の影響力)
30%
4 産業収入(イノベーション力)
5 国際性(スタッフ、学生の国際性)
2.5%
30%
7.5%
世界の大学ランキング2013 アジア編
国・地域
2013
2012
2011
カリフォルニア工科大学
アメリカ
27
30
26
東京大学
日本
7
オックスフォード大学
イギリス
29
40
34
シンガポール大学
シンガポール
3
4
スタンフォード大学
アメリカ
35
34
21
香港大学
香港
4
2
1
ハーバード大学
アメリカ
46
49
37
北京大学
中国
5
7
3
マサチューセッツ工科大学
アメリカ
50
53
28
浦項工科大学校
韓国
6
5
5
プリンストン大学
イギリス
52
71
58
清華大学
中国
7
6
6
ケンブリッジ大学
アメリカ
54
52
57
京都大学
日本
8
8
9
ロンドン大学
イギリス
65
62
41
香港科学技術大学
香港
9
10
8
カリフォルニア大学バークレー校
アメリカ
68
94
79
韓国科学技術大学
韓国
10
9
8
シカゴ大学
アメリカ
128
108
112
東京工業大学
日本
27
30
26
東京大学
日本
54
52
57
京都大学
日本
出所:イギリス「Times Higher Education」(2011∼2013)の世界の大学ランキング
大学名
国・地域
※ 日本の大学では以下、東北大学(137位)と大阪大学(147
位)が200位までにランキング入りしている。
15
主要国の研究開発費と自然科学系分野の研究成果
順位
国名
研究開発費 研究者数 一人当たりの ノーベル賞
(購買力平価換算)
研究開発費 受賞者数
(万人)
(兆円)
1
2
3
4
5
6
7
8
アメリカ
日本
中国
ドイツ
フランス
韓国
イギリス
ロシア
japanese
investor
46.5
17.2
14.1
9.6
5.5
5.1
4.7
3.8
(万円)
141.3
84.0
159.2
31.2
22.9
23.6
23.5
44.2
3,290
2,047
885
3,076
2,401
2,161
2,000
859
(人)
248
16
0
68
31
0
78
14
※一人当たり研究開発費は、研究開発費及び研究者数より宝印刷で試算。
※ノーベル賞受賞者数は、自然科学分野(物理学、化学、生理学・医学)のみ。国名は国籍でカウントしている。
出所:「科学技術要覧 平成24年版」(文部科学省)、他より作成。
16
中小企業技術革新制度(SBIR)の日米比較
日本
(中小企業技術革新制度、日本版SBIR)
開始年
japanese
investor
米国
(Small Business Innovation Research)
1999年
1982年
7省庁:総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水
産省、経済産業省、国土交通省、環境省
11省庁:農務省、商務省、国防総省、教育省、
エネルギー省、国土安全保障省、運輸省、保健
福祉省、環境庁、航空宇宙局、全米科学財団
毎年、支出目標額を閣議決定
(2013年度は約455億円)
年間外部研究開発予算1億ドル以上の省庁が
その2.5%を拠出。毎年約1,800億円を投入。
※2011年改正で3.2%まで段階的に引き上げ
支援
枠組み
各省庁が補助金等を指定し、既存制度で支援
「3段階選抜方式」
先端技術のアイデアを試作品まで作らせて目利
きし、民間VCへ紹介又は政府調達等につなげ
ていく
実績・
成果等
• 2007年度に米方式に忠実な「3段階競争選抜方 • SBIRの被採択者には、潤沢な民間VC投資
式」の新エネルギーベンチャー技術革新事業を
(2008年VC投資額284億ドル:日本1,366億
導入。⇒累計126件を支援
円の約20倍)へのアクセスが容易となる。
• ・2008年度から中小・ベンチャー企業向け段階
• 例えば、全米バイオ製薬企業トップ10中の7
的選抜方式(NEDO「SBIR技術革新事業」)を導
社(2000年時点)が資金不足の創業初期に
入、SBIR採択企業データベースを拡充。⇒累計
受賞。新エネルギー関係でも、VC投資を受け、
急成長するベンチャー企業を多数発掘。
41件を支援
• ・2012年度から中小企業技術革新挑戦支援事
業を導入(0.5億円)。各省庁からテーマを募集し、
各省庁のR&DにつながるF/Sを支援。
参加省庁
予算
出所:内閣府 総合科学技術会議・科学技術イノベーション政策推進専門調査会の資料より作成。
17
文部科学省による研究開発支援の拡充
japanese
investor
2013年度から10年程度の長期的な支援を実施
iPS細胞の臨床応用や安全性確保に向けた研究を加速させるため、
研究機関へ助成する予算総額は、200億∼300億円規模となる見通し。
2013年度予算の概算要求では、京大iPS細胞研究所(山中伸弥所長)を
中心とする研究機関の研究開発を後押しするため、約27億円を盛り込む。
さらに、同規模の予算を今後約10年間継続して投入する計画。
長期的な助成によって安定した研究環境を整えることで、作製
や培養などのiPS細胞技術を確立させるとともに、臨床に向け
た安全性研究も進め、iPS細胞を用いた再生医療の実現に向
けて支援する。
18
公的研究機関で働く研究者の雇用環境の国際比較
japanese
investor
日本
アメリカ
英国
フランス
ドイツ
給与
・基本的に公
務員の給与水
準。
・人件費の一
律削減(研究
開発力強化法
により、常勤職
員の約9%)。
・研究者の市
場価値に基づ
き、経験と実
績により給与
が変動。
・人件費一律
削減の仕組み
はない。
・ベースの給
与とともに、勤
務成績を加味
した給与。
・人件費一律
削減の仕組み
はない。
・研究公務員
給与体系に基
づく。
・人件費一律
削減の仕組み
はない。
・公務員の給
与に準拠する
ものの、ハイレ
ベルな研究者
には部長クラ
スの給与。
・人件費の一
律削減の仕組
みはない。
年金・退職金
の通算
国立大学法人
と研究開発法
人間の年金・
退職金通算な
し。
職歴が長いほ
ど退職金が上
がる制度と
401k制度の2
つの制度を併
用。
公務員の年金
スキームに準
じる。
大学と公的研
究機関との人
材流動は限定
的。教育義務
を伴う大学教
官への異動は
少ない。
州政府が年金
を運用し、他
の公的研究機
関に行っても
支給額は変わ
らない。
出所:内閣府 総合科学技術会議・科学技術イノベーション政策推進専門調査会の資料より作成。
19
イノベーションを創出するための9つの重点的取組み
重点的課題
japanese
investor
重点的取組み
1.多彩な人材がリーダーシップを発揮できる環境の構築
イノベーションの
芽を育む
2.大学・研究開発法人を国際的なイノベーションハブとして強化
3.競争的資金制度の再構築
4.産官学の連携・府省間の連携強化
イノベーションシステムを
5.人材流動化の促進
駆動する
6.研究支援体制の充実
7.新規事業に取り組む企業の活性化
イノベーションを
結実させる
8.規制改革の推進
9.国際標準化・知的財産戦略の強化
出所:内閣府 総合科学技術会議・科学技術イノベーション政策推進専門調査会の資料より作成。
20
世界シェアトップ製品をもつ主な日本企業(1)
企業名
製品
japanese
investor
世界シェア
TDK
HDD磁気ヘッド(外販分)
100%
日本ガイシ
NAS(ナトリウム硫黄)電池
100%
旭化成
再生セルロース繊維
100%
レーザーテック
マスクブランクス検査装置
100%
日本金属
温間圧延マグネシウム薄板
ほぼ100%
ダイソー
ジアリルフタレート(DAP)樹脂
ほぼ100%
ニコン
液晶パネルの露光装置(中小型分野)
90%
旭ダイヤモンド工業
太陽電池用シリコンを切断するダイヤモンド電着ワイヤ
90%
日本化成
太陽電池封止材向け添加剤
90%
タツタ電線
フレキシブルプリント基板向け電磁波シールドフィルム
90%
三井金属
スマートフォン向け極薄電解銅箔
90%
浜松ホトニクス
光電子増倍管
90%
住友重機械工業
MRI用の冷凍機
ワコム
ペンタブレット
85%
東京エレクトロン
半導体製造用の塗布現像装置
80%
堀場製作所
自動車排ガス分析計
80%
旭化成
スマートフォン向け電子コンパス
80%
HOYA
半導体製造用マスクブランクス
80%
80∼90%
21
堀場製作所 (1) 「おもしろおかしく」
事例研究
japanese
investor
堀場製作所の企業文化(社是) 「おもしろおかしく」
人生の一番よい時期を過ごす「会社での日常」を積極的でエキサイティングな
ものにしてほしいという、前向きな願いが込められている。
沿革
1945年
10月、堀場雅夫氏(最高顧問)が堀場無線研究所(現堀場製作所)創業。
1969年
自動車整備工場向けの小型COガス分析計「MEXA-200」が大ヒット。
1971年
3月、大阪証券取引所、京都証券取引所に株式上場。
1975年
米国EPA(環境保護庁)へ自動車排ガス測定システムを納入。「MEXA」が世界標準へ。
1982年
9月、東京、大阪両証券取引所第一部に株式上場。
1987年
10月、西独フォイザー社と自動車排気ガス計測システムについて業務提携。
1990年
1月、最先端の研究開発棟ACTIVE ZONE 21が完成。
1995年
2月、日米欧共同開発で全世界の規制に対応したエンジン排ガス測定装置を発表。
1997年
3月、新本社ビル(地上5階建て)完成。
1998年
9月、米国に「ホリバ/エステック社」を設立。半導体ビジネスを強化。
2003年
1月、創立50周年(1月26日)記念行事「排ガス計測駅伝」をスタート。
2005年
10月、ドイツの自動車試験装置メーカー シェンク社 事業買収。
2007年
堀場厚社長が日本分析機器工業会(JAIME)会長に就任。
2010年
堀場厚社長がフランス「レジオン・ドヌール勲章」受賞。
2012年
欧州最大の研究開発拠点がフランスに完成。
出所:堀場製作所Webサイト等より作成。
創立時の堀場製作所
ACTIVE ZONE 21
本社ビル
22
事例研究
堀場製作所 (2) 世界トップシェアの技術力
japanese
investor
独創的な技術で世界の半導体業界を支える!
半導体の製造に不可欠な流体制御機器「マスフローコ
ントローラ」※ではHORIBAグループ(堀場エステック)は
シェア34%と世界一
※「マスフローコントローラ」
ガスや液体の質量流量を正確に計測し、流量制御を行う機器。
半導体、液晶、LED、太陽電池、パワー半導体、光ファイバーなど、
幅広い分野で生産装置に搭載されている。
デジタルマスフローコントローラ SEC-N100
エンジン排ガス測定の分野で世界トップシェアを誇る!
排ガス計測からエンジン性能試験、エンジン開発の
トータルサポートシステム等、自動車開発に関わる
総合計測設備を提供。
堀場製作所の排ガス分析装置は、排ガス分析計の
代名詞として広く知られており、世界各国の規制当
局や公的研究機関、自動車関連企業で採用され、
事実上の業界標準となっている。
出所:堀場製作所Webサイト等より作成。
エンジン排ガス測定装置
MEXA-ONE
超音波式排ガス流量計
EXFM-ONE
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世界シェアトップ製品をもつ主な日本企業(2)
企業名
製品
japanese
investor
世界シェア
クラレ
光学用ポバールフィルム
80%
富士フイルム
液晶パネル向けの偏光板用保護フィルム
80%
ダイセル
三酢酸セルロース(TAC)
80%
シマノ
競技や高級スポーツ自転車の駆動系部品
80%
ウシオ電機
露光光源
80%
日本電産
HDD用スピンドルモーター
80%
協和発酵キリン
アミノ酸「オルニチン」
ディスコ
半導体ダイシング装置
70%
クレハ
リチウムイオン電池用接着剤
70%
THK
リニアガイド(直動案内機器)
60%
ナブテスコ
産業ロボット用精密減速機
60%
日本セラミック
赤外線センサー
60%
富士フイルム
磁気テープ(LTO)生産
50%
マブチモーター
小型モーター
50%
日本高純度化学
MPU用金メッキ薬
50%
ファナック
工作機械用NC
50%
日立金属
高機能ネオジム磁石
50%
東北特殊鋼
電磁ステンレス鋼、エンジンバルブ鋼
50%
約80%
24
日本のグローバル・ニッチ・トップ カンパニー100社
japanese
investor
国際市場の開拓に取り組んでいる企業のうち、ニッチ分野に
おいて高いシェアを確保し、良好な経営を実践している企業
グローバルニッチトップ企業 (GNT)
経済産業省は、「グローバルニッチトップ企業100選」(GNT)※を選定し、
その知名度向上や海外展開を支援することを狙いとする。
これらの企業の経験が、GNTを目指す他の企業の経営上の羅針盤とし
て活用されることを目指す。
※「グローバルニッチトップ企業」の定義(経済産業省)
大企業
特定の商品・サービスの世界市場の規模が100∼1,000億円程度であって、過去3年以内において1年
でも、20%以上の世界シェアを確保したことがある企業。
中堅企業
・中小企業
特定の商品・サービスについて、過去3年以内において1年でも、10%以上の世界シェアを確保したこ
とがある企業。なお、中堅企業とは、大企業のうち、直近の売上高が1,000億円以下の企業。
出所:経済産業省ニュースリリース(2013年10月11日)より作成。
25
グローバル・ニッチ・トップ カンパニー(GNT)とは?
japanese
investor
単なる中小・中堅企業とどこが違うか?
「隠れたチャンピオン」である
GNT企業として認知する尺度は?
海外市場でも高いマーケットシェアを保有
顧客ニーズを汲み取っているため、買い手がしっかりと決まっている
(高い価格競争力をもつ)
特許よりも、「模倣困難性の確保」のため、ノウハウを守る
日本留学の外国人を登用し、グローバル戦略に活用
GNT企業は、どこに存在する?
全国に広く存在している(例:広域多摩地域、広島県福山市など)
利益率が相対的に高く、経済処遇面でも大企業に遜色ない
26
日本のグローバル・ニッチ・トップ カンパニー (一例)
企業名
所在地
創業年
japanese
investor
ニッチトップ製品等
Mipox(株)
東京都立川市
1925
超微粒液体研磨剤、研磨用テープ
昭和精工(株)
神奈川県横浜市
1954
食品容器用、自動車部品用金型
東成エレクトロビーム(株)
東京都瑞穂町
1977
電子ビーム及びレーザによる精密加工
(株)インテリジェント
センサーテクノロジー
神奈川県厚木市
2002
味覚センサー
利昌工業(株)
大阪市北区
1921
高耐熱性ガラスエポキシテープ、ICカードチップ
オプテックス(株)
滋賀県大津市
1979
遠赤外線利用の自動ドア用センサ
(株)タカコ
京都府精華町
1973
アキシアル・ピストン・ポンプによる油圧ポンプ、油圧
モーター
サムコ(株)
京都市伏見区
1979
半導体等製造装置(CVD 装置・ドライエッチング装置等)
(株)三橋製作所
京都市右京区
1944
パウチディスペンサー、蛇行修正シート巻取り装置
(株)片岡製作所
京都市南区
1968
レーザ加工機、電池検査装置、液晶製造装置
尾池工業(株)
京都市下京区
1876
真空蒸着によるプラスチックフィルム等の表面加工
ローツェ(株)
広島県福山市
1985
デュアルアームロボット等半導体ウェハ-ー搬送機
(株)キャステム
広島県福山市
1970
メタルインジェクションおよびびロストワックスによる精密
鋳造部品
(株)シギヤ精機製作所
広島県福山市
1911
円筒研削盤
本多機工(株)
福岡県嘉麻市
1949
ラテックスポンプ等特殊産業用ポンプ
出所:『産業立地 2011年7月号』「日本のものづくり グローバル・ニッチ・トップ企業についての考察ーGNT企業ヒアリングを踏まえてー(前編)」(細谷祐二、経済産業省
27
地域政策研究官)より作成。 注:赤字の表記企業は上場企業
ローツェ (1) 人と技術を育てる
事例研究
japanese
investor
ローツェが目指す会社
1
2
3
4
5
国際社会の中で国内、海外の拠点において多様なネットワークを構築し、それぞれの拠点地域に優秀な
人材を集め、研究・開発業務あるいは製造・サービス業務を行う。
優秀な人材を育てるために、個人の時代にあった会社システムをつくる。
個人の技術を向上させて将来の希望を実現させるため、実務功績を重視する。
国内海外を問わず先進的な企業、関連グループなどとともに共同研究、共同開発を積極的に進める。
地場企業、研究機関などと協力して、半導体・液晶産業のニーズに合う製品作り、企業組織作りを行う。
沿革・受賞歴
1985年
3月、ローツェ(株)を設立、モータ制御機器の開発を開始。
1986年
4月、注目発明賞(科学技術庁)受賞。
1989年
4月、本社工場を新築。
1993年
1月、ローツェ総合研究所を新築。
1996年
2月、シンガポールに子会社を設立。3月、台湾に関連会社を設立。
10月ベトナムに子会社を設立。11月、米国に子会社を設立。
1997年
11月、韓国に子会社を設立。12月、株式を日本証券業協会に店頭登録。
2003年
2月、発明大賞・考案功労賞(日本発明振興協会・日刊工業新聞社)受賞。
11月、韓国子会社(RORZE SYSTEMCORPORATION)が韓国KOSDAQ市場に上場。
2006年
4月、元気なモノ作り中小企業300社選定(経済産業省中小企業庁)。
2008年
6月、上海に子会社を設立。
2010年
4月、文部科学大臣表彰科学技術賞(文部科学省)受賞。
2012年
6月、崎谷文雄社長が黄綬褒章(内閣総理大臣)受賞
出所:ローツェWebサイト等より作成。
本社
(創立時)
本社
(1989年)
総合研究所
(1993年)
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ローツェ (2) 日本企業トップの技術力
事例研究
japanese
investor
半導体製造用ウエハ搬送機シェア世界第3位、日本企業トップ!
超小型のモータ制御機器を開発し独自の自動化システ
ムを構築、これを応用したウエハ搬送用クリーンロボット
を開発。塵が発生せず故障も少なく、高い信頼性を実現、
半導体製造工場で次々と採用された。
液晶ガラス基板の搬送用ロボットにも進出、近年進んで
いるガラス基板の大型化の搬送も得意としている。
グローバルな事業展開
米国、韓国、台湾などに拠点を有し、
各国のユーザーのニーズに合わせた
開発、製造、販売、サービスを提供。
国際分業の生産拠点としてベトナム
に早い段階から進出、標準品や汎用
部品を生産してローツェグループ各
社に供給している。
出所:ローツェWebサイト等より作成。
ウエハ搬送ロボット(左) 真空ロボット(右)
ローツェの由来
世界最高峰エベレスト
(8,844m)の隣に並ぶ
ローツェ山(8,516m)に
由来。
世界最高を脇で支えているローツェ山の姿を半導
体・液晶産業を支える自社に例えた社名であり、
自社の哲学である「技術に自信を持って、楽しみな
がら仕事のできる集団」にぴったりの社名といえる。
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会社説明を行う3社のご紹介
japanese
investor
テクマトリックス株式会社 代表取締役社長 由利 孝 氏
当社は、IT戦略の立案からコンピュータシステム導入における分析、設計・構築、運用・監理
の一連のサイクルにわたるトータルサービスを提供するITサ−ビス企業である。1984年の
会社設立以来、継続的に成長を続け、今年2013年2月12日に東京証券取引所第一部に上
場した。 http://www.techmatrix.co.jp
日進工具株式会社 代表取締役社長 後藤 弘治 氏
超精密加工・微細加工に必要な超硬小径エンドミルのリーディングカンパニー。Made in
Japan にこだわり、強固な財務体質と高い技術力・開発力を武器に、小径エンドミルにお
ける圧倒的№1を目指す。 http://www.ns-tool.com/
インフォコム株式会社 代表取締役社長 竹原 教博 氏
国内11社、海外3社で企業グループを構成し、一般企業をはじめ、携帯電話事業者、医療
関係機関、官公庁、教育研究機関などに各種ITサービス(BtoB)を提供するとともに、消
費者が利用する携帯電話などへのコンテンツ配信、eコマースなどのサービス(BtoC)を
提供し、進化を続けている。 http://www.infocom.co.jp
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参考文献・資料
japanese
investor
『山中伸弥先生に人生と iPS細胞について聞いてみた』 山中伸弥/緑慎也、講談社、2012
年10月10日刊、 ∼ノーベル賞受賞!唯一の自伝∼
『わたしの履歴書』 根岸英一、日本経済新聞(2012年10月連載)
『わたしの履歴書』 利根川進、日本経済新聞(2013年10月連載)
『再生医療のお話』 ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング 2012年
『はやぶさ 世界初を実現した日本の力』 川口淳一郎、日本実業出版社、2012年
『日本にしかできない技術がある』 片山修、PHP研究所、2004年
『どうする「理数力」崩壊』 筒井勝美/西村和雄、PHP研究所、2004年
『東京スカイツリー ∼六三四に挑む∼』 片山修、小学館、2012年
『ナノパーティクル・テクノロジー』 野城清/細川益男、日刊工業新聞社、2003年
『ここまで来たナノテクノロジー』 吉田典之、技術評論社、2010年
『科学に親しむ3000冊』 日外アソシエーツ、2009年
『信頼の器』 作藤尚之、ジャパニーズインベスター、2009年∼2010年、6回連載
『日本のものづくり、グローバル・ニッチトップ企業についての考察(前編/後編)』 細谷祐二
、経済産業省 産業立地 2011年7月号&9月号
『グローバル・ニッチトップ企業に代表される優れたものづくり中小・中堅企業の研究』 細谷
祐二(RIETI 経済産業研究所) http://www.rieti.go.jp/jp/
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