日本経済新聞電子版に「目に見えない光が開くLEDの新市場 医療用にも」

研 鼻
越
解 鍬
耀
目に見 えな い光 が 開 くLEDの 新市場 医療 用 にも
2014/11/1701001日 本経済新 聞 電子版
2014年 のノーベ ル 物 理学 賞 は言色発光ダイオー ド(LED)が 対象だつた 。今 では室 内照 明 はもちろん 、液 晶
テ レビの バ ックライトにも使われ ている。照 明 が注 目され がちだが 、実 は 目に見 えない光を出す LEDも ある。
照 明以外 の 技術 でも日本 が 世界をリードしている。
■ 目に見 えない深 紫外線 LEDで 細 菌 の DNA破 壊
パ ナソニックは6月 、波長 270ナ ノ(ナ ノは 10億 分
の 1)メ ー トルの 深紫外線 と呼ぶ光を出す LEDの
販売を始 めた 。人の 目に見 える光 は波 長約 400∼
800ナ ノメー トルで可視光 と呼ぶ 。深紫外線 は 目に
見 えないので室 内照 明 には使 えないが 、細菌 の D
「ユー ザ ー 企業と共 同
NAを 壊 して殺菌 ができる。
で用途 を開拓 している。電 気 歯 ブラシの洗浄容器
や水洗 トイレの ノズル の先 端 に取 り付 けるなど検
エコソリュー ションズ社 )
討 中だ」(パ ナソニックロ
DOWAホ ール ディングスは波 長 265∼ 340ナ ノメ
ー トルの LEDを 開発 し、昨年 から病院 の手 術室な
どで一 部採用され始 めた 。旭化成も米国のグル
ープ会社 が 波長 250∼ 280ナ ノメニ トルの LEDを 開
パナツニックが理化学研究所と共 同開発 し、6月 に発売した深紫外線 LED。 家
電などで用途 開拓を進 めている (パ ナソニック提供 )
発 し、輸 入商社 のオプトサイエンス (東 京 宮
新宿 )を
通 じて 日本企 業 と用途 開拓を進 めている。
「白色 LEDを 組み込 んだランプは 1イ 国1000円 を
事 業拡大 には 2つ の 課題 が ある。ひとつ は価格が高 いことだ。
切 り始 めた 。深 紫外線 LEDは まだ価格 が 数十倍する。家電などで普及すれ ば低価格 になり、販売も増 えると期
待 している」(DOWA)
もうひとつ は発光効率が低 いことが 普及 の妨 げになつている。パ ナソニックと深紫外線 LEDを 開発 した理化学
研究所 の平 山秀樹 主任研 究員 は「効率 はまだ 10%程 度 だ」という。
半導体 の 中で電子 と電子 の 穴 (ホ ール )が 合体 して発光する内部量子効率 という指標 は平 山主任研究 員 らが
約 80%を 実現 している。ところが 半導体 の 中で発 生した光 の粒 (光 子 )を 外 に出す「取 り出し効率」は悪い 。様 々
な原因 によって半導体 の 中で発 生 した光子の 多くが 日の 目を見ないで消える。内部量子効率 と取 り出し効 率を
掛 け合わせた「外部量子効率」は現 時点 で10%止 まりだ。つまり使 つた電気 の 90%は 深紫外線を生み 出さず に
捨 てている。
「50%
平山主任研究員らは現在 、半導体材料 や 素子構造 の 改 良で外部量子効率を高 め る研究を進 めている。
程 度まで高 められるとみている。効率 が上がれ ば 、白色 LED照 明 に続き、深紫外緑 LEDの 市場 は拡大するだろ
う」(平 山主任研究 員 )と 期待 している。
■ LEDカ バ ーの 耐 熱 ガラス 、新 製法 で価格 100分 の 1に
光子 のエネルギーは 波長 が 短 い ほど大きい。深紫外線 は可視光より高 エネルギーのため 、発光部を保護 した
り光を広 げたりする透 明カバ ー にも耐久性 の ある材料 が必 要 になる。照明用 には安価なアクリルなどの 樹脂 が
使えるが 、深紫外線を遮 つてしまう。現在 、深 紫外線 LEDの カバ ーには蛍石 (フ ッ化カルシウム )が 使われる。高
価なうえ精密な加 工が 難 しい。
九州大 学 の藤野茂教授 らは深 紫外線 LED用 力
バ ーガラスを視野 に、石英ガラスを安価 に加 工 す
る技術を開発 した 。石英ガラスは酸化ケイ素 (シ リ
カ)だ けでできた最も純粋なガラスで、一 般 のガラ
スの 2倍 に近 い1000度 以上の 高温 に耐える。さら
に可視光も深紫外線も通す。これまでの 欠点は、
加 工 するために大きな塊を使 つた り2000度 以上の
高温 にした りするため 高価 になることだつた。高く
ても使わざるをえない理化学 実験 の 反応容器 や
高級な レンズなど用途 は 限定 的だった 。
.
藤野教授 らが 開発 したの は、粒径 10ナ ノメー トル
ほどのシリカ粒子を水溶性合成樹脂のポリビニル
アルコール (PVA)で 回 めて最終形状 にし、1100
∼1200度 で数十分 加 熱する方法だ。加熱 によつ
九州大学 は石 英 ガラスの安価な成形 法を開発 。シリカ粒子を固めた成形 品
(左 )と 加熱後の石 英 ガラス。直径 35ミ リから20ミ リに均等 に収縮する (九 大提
供)
「形状 にもよる
て体積 は収 縮するが 、元の形状を保 つ 。PVAは 分解 してなくなり、石英ガラスの 成形 品 ができる。
が 、成形 品 の価格 は材 料費も含 めて従 来技術 で作るより100分 の 1程 度 にできるだろう」(藤 野教授 )と いう。深紫
外線 LED用 だけでなく、アクリルより耐 久性 が 高 いの で照 明用 LEDに も使 えるとみている。
■ 日本 、LED関 連 部 品 の 開発 に強み
日本勢 が LEDの 新 たな用途 に挑 め るの は、LED関 連部 品 の 研究 に地 道 に取 り組 んできたからだ。タムラ製作
所 は照 明 に使 える従 来 の LEDで 発光効率を高 め る新 しい基板材 料を開発 した 。基 板 というのは 半導体を支える
土 台だ。市販 の LEDの 多くは基 板 にサファイア (酸 化アルミニ ウム )、 発光部 に半導体 の 窒化ガリウムを使 つてい
る。タムラ製作所 は子会社 の 光波 (東 京・練 馬 )と 共 同で、LEDの 効率を高めるため 、サファイアに代 わる新 しい
基板材料 の 酸化 ガリウム を開発 した。
サ ファイアは透 明で高 い温度 にも耐える。この 性質 が LEDに 向くためず っと使 つてきた。しか し電気 が 流れない
絶縁体 で、光を通す部分 が 狭くなる。一 方で新 開発 の 酸化 ガリウム は 電気 が 流れる。その結果 、光る面積を広く
とれる。両社 は半導体 メー カーの 協 力を受 け、約 3年 か けて酸化ガリウム基板を使 つて窒化ガリウムの青色 LED
開発 に取 り組んだ 。これまでに発光効率 が 数十 %向 上 しそうなデータも得ている。来年 6月 までに基 板 のサンプ
ル 出荷を本格 的に始める。
酸化 ガ リウムには LED用 基板 以外 にも有望な用途 が ある。情報通信研究機構 は 13年 、省 エネ機器 の 中核部
品を研究開発するグリーンICTデ バ イス先端 開発 センター を設 立 した 。東脇 正 高 センター 長を中心に、タム ラ製
作所などと協 力して酸 化ガリウム を用 いたパ ワー 半導体 の 開発 と用途 開拓を進 め る。
パ ワー 半導体 は高 い電 力を制 御する電子部 品で、家電 か ら電車 、自動車 、発電・送電機器 に応用する。材料 と
して現在 の主 流 はシリコンで炭化ケイ素も使 う。青色 LED用 の窒 化 ガ リウム も次の登場を待 つ が「酸化 ガリウム
はさらに優れ た性能を発揮する」と東脇 センター 長 は言う。東京 五 輪 が 開 か れる20年 を目標 に実用化を目指 して
いる。(黒 川卓 )
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