質問です。自分の肛門、見たことありますか?

NHK総合テレビ 毎週水曜日・午後8時から放送中
http://www.nhk.or.jp/gatten/
2011年1月26日放送
テーマはお尻の悩みの代名詞「痔(じ) 」。
患部の場所が場所だけに、あまり普段会話にのぼることもなく、
実態がわかりにくい病気です。
ところが、最新の統計によると、
1か月で2万件以上も痔の手術が行われていることが判明。
人知れず悩む患者さんがたくさんいることがわかってきました。
その背景にあるのは、痔に対する間違ったイメージ。
痔と言えば・・・
「固いモノが出て切れるだけのこと」、「お尻を清潔にさえしていれば問題ない」、
「薬だけで簡単に完治できる病気」などなど。
このように、痔を軽く見ていた結果、症状をより悪化させてしまい、
手術にまで至るケースが続出していたのです。
番組では、そんな痔の簡単な予防・改善のコツと最新治療の情報をお伝えします。
質問です。自分の肛門、見たことありますか?
今回、痔の番組を作るにあたって、数百人にアンケートをとりました。
見出しの質問は、設問の中の1つです。
結果は、8割以上の人が「1度も見たことがない」と回答しました。
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恐らくこの中には、恥ずかしくて本当のことを書けなかった人も含まれていると思います。
でも・・・、それを差し引いたとしても・・・です。
思春期を過ぎた大多数の成人の方々に、
「1度も見たことがない」と宣言されてしまう肛門って、
ちょっと気の毒な存在だと思いませんか?
体の中でも、長年ほぼ毎日酷使され、
かつお風呂などではわたしたちにいつも触れられている部分でありながら、
「おまえなんか知らない」って言われているようで・・・。
今回の取材で、1か月に2万件以上も痔の手術が行われていることがわかりましたが、
予防・改善のコツは、わたしたちが普段ほとんど無視している
この肛門をちょっと気にかけてあげることから始まります。
見たことがある人もない人も、ほんの少しだけ肛門に優しくなってもらえれば・・・。
そんな思いで番組を作りました。
20代の女性Aさんは、10年近くもの間「ある症状」が気にかかっていました。
それはお尻からの出血です。
始まりは高校生の時、排便後にお尻をふいたところ、
少量の血が紙についていることに気づきました。
さらにその後、ある時、排便してから便器を見ると、
真っ赤な鮮血が飛び散っていることにも気づきました。
ところが、Aさんは病院に行くことは一度もありませんでした。
それはなぜでしょうか?
その理由は「痛くないから」という意外なものでした。
そこで、番組で痔の疑いのある人にアンケートをとったところ、やはり同様。
「病院に行くほどではない」、「ガマンできないほど痛いわけじゃない」
などの意見がたくさん寄せられたのです。
鮮血まで出ているのに、一体どうしてこんな不思議なことが起こってしまうのでしょうか?
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「病院に行くほどではない」
と様子を見ていた60代の女性Bさんを「ある悲劇」が襲いました。
なんと お尻の穴におデキ ができてしまったのです。
その正体は痔核(じかく) 。
一般的に「イボ痔」と言われているもので、痔の人の約6割がこのタイプです。
どうして、痛くないただの出血が、このような結果になってしまうのでしょうか?
その答えは、お尻の穴の奥、「便の通り道」の構造に隠されていました。
実は便の通り道は、妊娠8∼10週目ごろになってはじめて人間の体に発生します。
しかもそれは、直腸側の管と肛門側の管がドッキングすることで、
一本の通り道になっていたのです。
恐ろしいことに、イボ痔は、この「合わせ目」の内側、
つまり直腸側にできるものがほとんどです。
実は直腸側には痛みを感じる神経が通っていません。
そのため、便が通る時に、イボ痔が傷つき出血しても、
ほとんど痛みを感じることがないのです。
結果的に、放置する人が多く、時とともにイボ痔はどんどん成長。
やがて、お尻の穴の外に出てしまうほど悪化してしまいます。
また、「合わせ目」の外側(肛門側)には、
痛みを感じる神経が通っているため激痛を伴う場合も。
こうなると日常生活の大きな負担になり、手術で切り取ることもあるのです。
一体どうしてこんな場所にイボ痔ができてしまったのでしょう?
ある海外の報告では、800人以上の肛門を無差別に検査したところ、
86%にイボ痔が見つかりました。
そこで番組で、人間に近いチンパンジーの肛門を検査したところ、
どのチンパンジーからもイボ痔は1つも見つかりませんでした。
どうして人間にだけイボ痔ができてしまうのでしょう?
最初のポイントは、肛門の位置です。
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チンパンジーは四足歩行のため、心臓と肛門の高さがほぼ同じ。
その結果、心臓を出た血液は肛門へ向かった後、スムーズに戻ってくることができます。
ところが人間の場合、二足歩行なので肛門の位置は下がります。
そのため、重力の影響で血液が心臓に戻りにくくなります。
つまり、うっ血を起こしやすくなるのです。
イボ痔とは直腸の血管の病気だったのです。
さらに恐ろしいポイントは、何気ない排便時のいきみです。
番組の実験によると、少しいきむだけで200(mmHg)近くも
肛門の中の圧力が高まることが判明しました。
すると、便は直腸を通過する時、直腸の壁を押し広げます。
ただでさえうっ血しがちな肛門の血管が強く圧迫されるのです。
結果的に、いきみをくり返すことでイボ痔はふくらんでしまうのです。
イボ痔が大きくなると、便がないのに便があるように感じ、さらにいきみます。
悪循環に陥るのです。
イボ痔の原因は、わたしたちの何気ない生活の中に隠されていました。
誰にできてもおかしくないイボ痔ですが、自宅できる予防・改善のコツはあります。
ここでは代表的なものをいくつか紹介します。
※下記はあくまで目安です。病状次第で改善効果は異なります。
1.便座で3分以上いきまない!
「長時間のいきみ」は、本来生き物の自然な行為ではありません。
便の7∼8割は最初のいきみで出てしまっているとされ、
実はさして便意を感じていない状態で無理に押し出そうと
長時間いきむケースがほとんどです。
便座で3分を超えても便意がない場合は無理にいきまず、
いったんトイレから出ることをおすすめします。
2.便秘・下痢を防ぐ食習慣を!
長時間のいきみを招く最大の原因が、排便トラブルです。
改善のコツは、朝30分ほど早く起きてコップ一杯の冷たい水や牛乳を飲みます。
その後ボリュームのある朝食をとる習慣を心がけてください。
すると、このタイミングで胃腸の動きが活発になるため、
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自宅で便意が生じやすくなります。
結果的に外出先で便意をもよおす機会が減るようになり、適切な排便習慣につながります。
3.入浴して肛門の血行を改善!
血行の改善はイボ痔の予防・改善につながります。
肛門を入浴で温める習慣をつくってください。
ただし、肛門の周りが化のうしてしまう「痔ろう」というタイプの痔になると、
一時的に痛みなどの症状が和らいでも、
後でかえって化のうを悪化させてしまう場合があります。
ご注意ください。
イボ痔の治療法の中で代表的なものを紹介します。
※病状や痔のタイプによって治療法は異なります。
どれが適切かは医師の診断をあおいでください。
1.排便・食生活の改善
代表的なものは次の3つです。
(1)便座で3分以上いきまない
(2)便秘・下痢を防ぐ食習慣
(3)入浴して肛門の血行を改善
(詳しくは「自宅でできる予防・改善の鉄則」の項目を参考にしてください)
2.薬物療法
市販薬の多くは、排便時に肛門を刺激しないための「潤滑油」としての役割があります。
したがって「1」で挙げた生活改善を合わせて行えば改善効果が期待できます。
3.ALTA(アルタ)療法
注射でイボ痔を縮小させる治療法です。
手術をしなくて済んだり、切り取る部分を少なくできます。
症状次第では日帰り治療も可能になり、
患者の負担を大幅に減らしてくれるようになりました。
ただし、イボ痔ができる場所によってはこの治療は適応できません。
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実際に病院に行った方がいい目安の中で代表的なものを挙げます。
1.排便時に出血する
たまたま固い便が出て少量の血が出ることは誰しもありますが、
習慣的にそんな症状がある人、または便座に鮮血が飛び散るほど出血したことのある人は、
一度、大腸・肛門科を受診されることをおすすめします。
痔だと思って受診した人の内、
6%が大腸がん・ポリープができていたという調査結果があります。
2.排便時に異物感がある
排便時に 何か が出たり引っ込んだりする違和感があれば、多くの場合はイボ痔です。
悪化すると、次第にイボ痔が外に飛び出し戻らなくなることもあります。
早期であれば、治療の負担も減りますので、やはり一度大腸・肛門科を受診してください。
ひょっとしてイボ痔?病院に行く目安は?
1.排便時に出血する
たまたま固い便が出て少量の血が出ることはありますが、
習慣的にそういった症状が出る人、
または便座に鮮血が飛び散るほど出血したことのある人。
痔だと思って受診した人の内、
6%に大腸がん・ポリープができていたという調査結果もあります。
2.排便時に異物感がある
排便時に 何か が出たり引っ込んだりする違和感があれば、多くの場合はイボ痔です。
悪化すると、次第にイボ痔が外に飛び出し戻らなくなることもあります。
早期であれば、治療の負担も減りますので、やはり一度大腸・肛門科を受診してください。
イボ痔の予防・改善の3大鉄則は?
1.便座で3分以上いきまない
「長時間のいきみ」は本来自然な行為ではありません。
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便の7∼8割は最初のいきみで出てしまっているとされます。
便座で3分を超えても便意がない場合は無理にいきまず、
いったんトイレから出ることをおすすめします。
2.便秘・下痢を防ぐ食習慣を!
長時間のいきみを招く最大の原因が排便トラブルです。
改善のコツは、朝30分ほど早く起きてコップ一杯の冷たい水や牛乳を飲みます。
その後ボリュームのある朝食をとる習慣を。
すると、このタイミングで胃腸の動きが活発になるため、
自宅で便意が生じやすくなります。
3.入浴して肛門の血行を改善!
イボ痔は肛門付近の血液が滞る「うっ血」が関係しているため、
血行を良くすることはイボ痔の予防・改善につながります。
肛門を入浴で温める習慣をつくってください。
ただし、肛門の周りが化のうしてしまう「痔ろう」というタイプの痔になると、
一時的に痛みなどの症状が和らいでも、
後でかえって化のうを悪化させてしまう場合があります。ご注意ください。
※ただし、病状次第で改善効果は異なります。
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