採用・募集における年齢制限禁止政策について

はじめに
「年齢差別1」という言葉がある。
端的にいえば、この言葉は、年齢を基準とする雇用制度を指し示す。そ
の中で典型的な事例としては定年制度が挙げられるが、他にも求人・中途
採用時の年齢制限といった採用時における差別や、年齢によって賃金その
他の労働条件について差別することも挙げられる。つまりは企業側からみ
れば、年齢による労働者の分別であり、雇用の管理するひとつの手法であ
り、労働者側からみれば、年齢によって労働が制限されるという一つの雇
用のあり方である。
こうした年齢を指標とする労働者の区別は、我々が一般に想像するよう
な、いわゆる「日本的雇用慣行」から考えれば、極めて常識的な人事のあ
り方であるだろう。
しかし、今この言葉が世界の中で大きな波紋を広げている。
それが、人権保障上の観点による性別・人種・宗教・信条・障害等とい
った「差別」とともに起こった、「年齢差別」への規制運動である。これ
が世界各国に影響を及ぼし、結果、欧米諸国を筆頭に多くの国において取
り入れられようとしているのが現状だ。
2007 年 10 月。この「年齢差別」規制が日本でも、ついに始まった。年
齢を基準とした雇用制度が広く浸透しているわが国に対して、この規制は、
果たしてどのような効果を与え、将来的な労働環境をどのように変化させ
るのだろうか。
以上に示した問いこそが、私にとってのはじまりであり、すべてでもあ
る。本稿において、その答えに一歩でも近づくことが出来たならば、幸い
である。
1英訳は
Age Discrimination。
1
目次
はじめに………………………………………………………………………….1
図表一覧......................................................................................................3
第1章
問題意識の形成.............................................................................4
第 2 章 年齢差別をめぐる議論……………………..…...........................…7
1. はじめに………………………………………………………………7
2. 諸外国における年齢差別への取り組み……………………………7
3. 我が国における年齢差別への取り組み……………………………9
4. 年齢制限に関する議論………………………………………………12
第 3 章 採用・募集に関する年齢制限禁止政策について…………………13
1. はじめに………………………………………………………………13
2. これまでの年齢制限禁止政策への流れ……………………………14
3. 雇用対策法の全容と、その改正点...............................................15
第 4 章 2001 年雇用対策法改正の効果分析...........................................19
1. はじめに………………………………………...……………………19
2. データ及び手法........................................... ...............................20
3. 分析............................................. .............. .......... .....................23
第 5 章 結論と議論..................................................................................24
参考文献....................................................................................................25
おわりに....................................................................................................27
2
図表一覧
表 1 諸外国における年齢差別禁止法の有無とその状況…………………8
表 2 年齢制限禁止に関する検討会とその主張……………………….10,11
表 3 雇用における年齢差別禁止の是非に関する議論………………12,13
表 4 中高齢者雇用拡充のための方策…………………………………….14
表5 雇用対策法 第一章第一条…………………………………………. 16
表 6 昨今の雇用対策法の変遷、及び同法を取り巻く環境………………17
表 7 2007 年 10 月 1 日以前と以後における例外項目の比較……………18
表 8 分析結果Ⅰ………………………………………………………………33
表 9 分析結果Ⅱ………………………………………………………………34
図 1 男性 45∼49 歳離入職率…………………………………………………4
図 2 男性 50∼54 歳離入職率…………………………………………………5
図 3 男性 50∼54 歳離入職率…………………………………………………6
図 4 年齢制限のある求人の割合……………………………………………19
図 5 50∼54 歳及び 55∼59 歳における求人数……………………………21
図 6 50∼54 歳及び 55∼59 歳における就職件数…………………………22
図 7 景気動向指数 CI ………………………………………………………23
図 8 50∼54 歳及び 55∼59 歳における就職件数…………………………23
図 9 50∼54 歳及び 55∼59 歳における就職件数…………………………24
3
第一章
問題意識の形成
昨今の雇用環境において高失業状態において、とりわけ厳しい状況に置
かれているのが、中高年齢者2である。その問題は、中高年齢者は失業状態
のまま、労働市場に滞留してしまいやすいことにある。なぜか。その理由
は、中高齢層における離職率と入職率の乖離に求めることができる。
図 1
男性45∼49歳離入職率
9
8
7
6
5
男性45∼49歳入職率
男性45∼49歳離職率
4
3
2
1
0
1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006
年度
厚生労働者(2006)『雇用動向調査』より筆者作成。
2本稿では、厚生労働省『中高年者縦断調査』による定義を用い、50
して、論を進めたい。
4
歳∼59 歳と限定
図 2
男性50∼54歳離入職率
12
10
8
男性50∼54歳入職率
男性50∼54歳離職率
6
4
2
0
1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006
年度
厚生労働者(2006)『雇用動向調査』より筆者作成。
5
図 3
男性55∼59歳離入職率
14
12
10
8
男性55∼59歳入職率
男性55∼59歳離職率
6
4
2
0
1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006
年度
厚生労働者(2006)『雇用動向調査』より筆者作成。
上にみたのは、男性中高年齢者における離職率と入職率の年次データで
ある。注目すべきは、図の離職率と入職率の差である。この差が大きけれ
ば大きいほど、新たに失業者の数が増えていると考えられる。さらにここ
十年ほどに限ってみれば、男性 45 歳∼49 歳における離職率・入職率の差
は、平均 1 ポイント前後であるのに対し、男性 50 歳∼54 歳における離職
率・入職率の差は、平均 2 ポイント程度、男性 55 歳∼59歳における離職
率・入職率の差にいたっては、平均 4 ポイントに至ることが分かる。この
ことから、1 年経つごとに例外なく齢を重ねていくであろう失業者にとっ
て、これは再就職先を見つけるというのは年々厳しくならざるをえない。
では、なぜ中高年齢者にとって、再就職する機会が少ないのだろうか。
その背景には、長期安定的な企業の雇用慣行が一般化してきたこと、年功
6
的な賃金処遇制度が定着してきたことが考えられる。つまり、求人需要に
年齢による偏りが存在するのは、わが国の労働市場において極めて構造的
な要因によるといえよう。その意味で、中高年齢者の雇用機会の拡充を図
るためには、構造を変え、わが国における「働き方」に大きな変化を与え
なければならない。
いま、この「年齢差別」を規制することで、求人需要における年齢によ
る偏りを変化させ、新たな雇用機会を作出するという政策が展開されよう
としている。本稿では、この規制によって、中高齢者の雇用環境はいかに
変化するのだろうか。その変化を探ることで、今の日本の労働市場に働く
一つのメカニズムを見出していきたい。
第二章
年齢制限をめぐる議論
1. はじめに
急速な高齢化の進展等を背景に、多くの先進国において中高年齢者の
雇用確保が重要な政策課題となっている。企業に中高年労働者の雇用を
促す規制として、
「年齢制限への規制」がある。本章では、年齢制限を
めぐる議論をまとめる。
2. 諸外国における年齢差別への取り組み
多くの先進国において、年齢制限の撤廃が進んでいる。
「年齢差別禁止法」として制定された各国の立法に共通するのは、募集・
採用から退職にいたるまで雇用のあらゆる局面での大半の年齢制限が禁
止されることである。また、その一方で、法対象年齢の違い、例外項目の
内容、定年制の是非といった点においては、多様なアプローチが見られる。
7
表 1 諸外国における年齢差別禁止法の有無とその状況
アメリ
カ
カナダ
有無
実施時期
導入の理由
定年制の有無
有
1967 年
雇用政策上の見地による
無
有
1970 年代末
人権保障上の見地による
有
有
1990 年
人権保障上の見地による
無
有
1993 年
人権保障上の見地による
有
有
1998 年
NGO などの政治的圧力
有
有
2000 年
人権保障・雇用政策上の見地による
無
オース
トラリ
ア
ニュー
ジーラ
ンド
アイル
ランド
フィン
ランド
2000/78/EC 指令により、加盟国は 2003 年 12 月までに年齢差別禁止法の導入が提唱さ
れる
ドイツ
フラン
ス
日本
有
2001 年
人権保障・雇用政策上の見地による
有
有
2001 年
人権保障・雇用政策上の見地による
有
無
―
―
―
櫻庭(2003)を参考に筆者作成。
こうした法介入の形態に違いが生まれる3のは、各国の雇用慣行・労働市
3特に年齢差別禁止法の導入理由に関しては、図
1 より二つの理由が存在していること
が分かる。一点目、雇用政策上の理由というのは、理解しやすい。EC においては高齢
者の就業率が著しく低いという状況が問題視され、早期引退の趨勢が継続すると労働
者不足と社会保障費の増大を招くという視点から、EC 加盟国において年齢差別禁止法
の導入が図られた。つまり、労働市場に対する国の介入の必要を感じての導入である
8
場のあり方に大きく影響されているからである。
年齢制限禁止に関わる諸国の取り組みから、特記すべきは、まず 1967
年のアメリカにおける「雇用における年齢差別法4」の制定である。
同法は、
年齢制限禁止政策において各国に先行する形で定められ、カナダ、オース
トラリア、ニュージーランド等の政策論拠としも、多く援用されている。
加えて、2000 年の EC による「雇用および職業における平等取り扱いの一
般的枠組みを設定する」指令の提唱5も大きい。同指令により、EU 加盟国
の多くは原則として 2003 年 12 月 2 日まで、遅くとも 2006 年 12 月 2 日
までに年齢差別を禁止せねばならなくなっている。
また、上図から分かるように、日本では年齢差別は未だ禁止にはいたっ
ていない。次項では、わが国におけるその取り組みについて、考察する。
3. わが国における年齢制限への取り組み
わが国では、昨今の年功主義から能力主義への流れと中高年齢者の雇用
促進の要請から、日本においても不合理な年齢差別行為は規制すべきもの
という、雇用政策上の見地から、その認識が改められつつある。その中で
特に、募集・採用におけるという雇用の一局面を切り取って、段階的に年
齢差別を撤廃する取り組みが開始されてきた。
ため、従来の雇用慣行・政策との整合性にも比較的配慮がなされているといえる。二
点目の人権保障上の理由と記載されている国は、性別・人種・宗教・信条・障害とい
った、あらゆる基本的権利の保障を目的とした流れの中で年齢差別を禁止している。
両者のおいては、その立法当初の大儀名分について、若干のずれがある点に留意が必
要である。
4Age
Discrimination in Employment Act: ADEA。以下、ADEA と略記する。
5提唱の背景には、人権保障の観点が大きく作用したと考えられる。櫻庭(2003)による
と、
「あらゆる差別規制を同様に取り扱う水平的アプローチがとられたことから、年齢
差別の禁止も人権保障としての差別規制の一つと位置づけられ」たため、特に年齢差
別に反対していた使用者団体の意見を退けられた。こうした、EU における労働市場政
策の急速な転換に関して、濱口(2001)では「驚異的ですらある」と表現されている。
9
表 2 年齢制限禁止に関する検討会とその主張
1995 年 第八次雇用対策基本計画
「失業なき労働移動の実現」を今後の雇用政策の方向性に掲げる。従来の内部労
働市場に重点を置いた雇用維持政策から外部労働市場に重点を置いた再就職政
策にシフトが始まる。
2001 年 6 月 雇用における年齢差別禁止に関する研究会
「年齢差別を禁止して定年による退職という人事管理の一手段を禁止すると、この
ような強い雇用保障が問題となる」「この強い雇用保障のまま定年が禁止されれ
ば、事実上企業は無制限に雇用を保障する責任を負うことになりかねない」「従っ
て、年齢による差別の禁止をしていくためには、同時に企業に他の雇用の調整手
段を認めていく必要があろう。その結果、企業にとっては労働者をいったん正規従
業員として採用しても、比較的柔軟に解雇ができるようになるというメリットがある反
面、これまで手厚く雇用が保障されていた労働者にとっては雇用保障がなくなると
いうデメリットもある」
2001 年 7 月 総合規制改革会議
「内外の競争環境の激化や技術構造の急速な変化に対応するために、人材の円
滑な移動を促しうる労働市場システムの整備が必要であると指摘。また、2001 年の
雇用対策法改正に伴い策定される『指針』に、募集・採用時に年齢要件を課す場
合、求人企業にその理由を明示することを求める内容を盛り込むべきであること、
中長期的にはこれを法律で義務付けることを検討すべきとの指摘を行った。
2001 年 7 月 雇用対策法改正
「労働者の募集・採用において、その年齢にかかわりなく
均等な機会を与えること」が企業の努力義務に。
2004 年 総合規制改革会議(2004)『規制改革・民間開放推進3か年計画』
募集・採用時の年齢制限について、「中長期的には、年齢制限そのものを禁止する
ことについてもその可能性を検討する」ことが盛り込まれた。
2004 年 労働政策審議会(2004)『今後の高齢者雇用対策について』
「個人の能力や適性にかかわらず年齢のみを理由として就職の機会を奪うもので
あり、その是正を図るべきものである。したがって、本来は原則として禁止すること
10
が求められる」とする。また、ハローワークに寄せられた求人のうち年齢不問求人
が少数派に止まることや、2001 年の雇用対策法改正に基づき年齢制限緩和の努
力義務化が行われてから間もないことを理由に、募集・採用時にやむをえず年齢制
限を行う場合に、求企業に理由の明示を義務付けることが適当であるとの報告が
行われた。
2006 年 12 月 労働背政策審議会(2006)『人口減少下における雇用政策について』
フリーターの再チャレンジ策の一環として、企業における募集・採用のあり方の見直
しが重要であることと指摘。募集・採用時の年齢制限の禁止にまで踏み込まず。
2006 年 12 月 「再チャレンジ支援総合プラン」
募集・採用における年齢差別禁止の義務化は盛り込まれず。
2007 年 1 月 与党協議会
募集・採用時における年齢制限を禁止する方向で一致。
2007 年 2 月 「再チャレンジ支援総合プラン」改定
「労働者の募集採用に係る年齢制限の禁止について義務化する」
との文言が追加。
2007 年 6 月 雇用対策法改正
募集採用に係る年齢制限禁止の義務化。更に例外事由が絞込まれる。
みずほ総合研究所(2007)、濱口(2004)等を参考に、筆者作成。
以上の経緯から分かるように、年齢制限禁止はわが国においても大枠に
おいて「進展している」といえる。特に 2007 年に入ってから積極的な取
り組みの背景には、少子高齢化・人口減少により労働力人口の大幅な減少
が見込まれるため、労働者の就業を促進する必要性が高まったこと、さら
にその就業を促進する対象を拡大する必要が生まれたことがある。これま
で、年齢制限は「中高年齢者の再就職の壁」と捉えられることが多かった
が、出産後の女性や若者に対する雇用対策という視点からも重要課題とし
て認識されるようになったことで、
「幅広い人々の活用を阻害する壁」及
び「働く人の格差の一因」として捉えられ始めたと考えてよいだろう。そ
の意味で、募集・採用に係る年齢制限禁止政策の意義がより従来以上に広
範的になったといえる。
11
次に、以上に挙げたような年齢差別禁止政策の流れをより詳細に汲み取
るために、年齢制限に関する議論を紹介したい。
4. 年齢制限に関する議論
みずほ総合研究所(2007)では、年齢制限に対する態度を大きく 2 つに大
別できるとしている。その一つが、わが国では年齢に基づく雇用慣行が広
く定着しており、年齢制限を幅広く禁止することは労働市場の混乱を招く
ために現実的ではないとする見方である。もう一方は、定年制や募集・採
用時の年齢制限の存在が高年齢者の能力発揮を阻害しているので、成果主
義の浸透や公正な職務評価をはじめ実現のために諸条件をクリアした上
で、雇用における年齢制限の禁止を真剣に検討すべきという見方である。
表 3 雇用における年齢差別禁止の是非に関する議論
雇用における包括的な年齢差別禁止は
雇用における年齢差別禁止を真剣に検討す
適当でない
べき
厚生労働省(2003)「今後の高齢者雇用
旧経済企画庁(2001)「雇用における年齢差
対策に関する研究会」
別禁止に関する研究会」
法律による包括的な年齢差別禁止は、
現状では、定年制の存在により必ずしも高年
①年齢が採用、処遇、退職の重要な決
齢者の能力が十分に発揮されていないこと、
定要因である日本で労働市場の混乱を
中途採用の年齢制限によって失業した中高
招く可能性があること、②定年制の禁止
年労働者の再就職が困難になっていることを
は定年制の有する雇用保障機能の低下
踏まえると、成果主義の浸透や公正な職務
に繋がるため、高齢者の雇用機会の確
評価をはじめ、年齢差別禁止を導入する際
保にかえって悪影響を及ぼす懸念があ
の前提条件について検討を深めていく必要
ることなどから、現時点では適当ではな
があるもの、高年齢者の雇用および採用時
いと結論付け、募集・採用時の年齢制限
の年齢制限のいずれの問題の解決方法とし
の是正、定年制を維持した上での高年
ても、年齢差別禁止は真剣に検討すべき一
12
齢者の雇用機会の確保等、雇用の各場
つの理念型であると指摘。
面に応じた是正を行っていくことが、現
実的かつ効果的と指摘。
みずほ総合研究所(2007)を参考に筆者作成。
ここで問題となるのは、両者の立場に基づく政策が、企業の中にいる労
働者と外にいる労働者に、それぞれ異なる影響を及ぼしうるということで
ある。年齢差別禁止に否定的な政策を推進する場合、今現在雇用されてい
る労働者は定年まで安定した雇用の下に置かれるが、定年退職後や失業後
の再就職は困難な状況に陥る。一方、年齢差別禁止に肯定的な政策を推進
する場合、定年の廃止により年齢を基準に一律に退職を強いられることが
なくなり、また失業した中高年齢者の中でも意欲と能力の高いものの再就
職が進む可能性がある。しかし、年齢差別の禁止によって定年制を廃止す
る場合、企業には他の雇用調整手段を認めていく必要があるため、今現在
企業で雇用されている中高年齢者の雇用は今より不安定化する可能性が
ある。
以上が、年齢制限に関する、おおよその議論の枠組みである。さて次章
では、雇用対策法を中心に、これまでわが国で行われてきた年齢制限禁止
政策の中の特に募集・採用に係る規制について、みていく。
第三章
募集・採用における年齢制限禁止政策について
1. はじめに
本章では、年齢制限禁止政策の経緯と雇用対策法の政策的位置付けを確
認したい。そこで、これまでの年齢制限禁止政策の流れを踏まえたうえで、
2001 年、2007 年に相次いで改正された雇用対策法の全容について、紹介
13
する。
2.これまでの年齢制限禁止政策への流れ
北浦(2003)によると、わが国では、すでに高度成長期から、年齢別の求
人倍率が中高年齢層に低くなることから、求人需要に年齢による構造的な
偏りが存在することが指摘されていた。このため、中高年齢者の雇用機会
の増大は、早くから雇用政策の重要な課題であった。以下の図は、1960
年代から 1970 年代にかけての中高齢者雇用拡充の流れが示されている。
表 4 中高齢者雇用拡充のための方策
1966 年 雇用対策法制定、職業安定法改正
国は、事業主に雇用されている労働者のうち中高年齢者の比率が一定の雇
用率以上になるよう必要な対策を講じなければならないこととされる。
1971 年 「中高年齢者の雇用の促進に関する特別措置法」制定
雇用率制度が職業安定法から同法に移される。
1976 年 「中高年齢者の雇用の促進に関する特別措置法」改正
55 歳以上を対象とする高年齢者雇用率制度に改められる。
北浦(2003)を参考に筆者作成。
これまで、企業において中高年齢者の再就職を促進させるために、大き
く二つの政策が取られてきた。一つが企業に対する規制を強いたケース、
他方が企業に助成金を与える、つまり中高年齢者を雇用する誘因を与えて
いたケースである。
1965 年に雇用対策法制定以来、主に前者の規制が行われることが主眼
であったが、1970 年代後半より雇用率制度の実効性を高めるために、助
成金制度の活用が並行されるようになり、その後そうした誘導措置に主眼
が置かれるようになった。しかし、現在のように雇用需要そのものが伸び
悩み、失業率が高止まりするなかで助成金への依存のみでは政策効果に限
度があるとされ、規制政策に揺り戻しが起こった。その結果として行われ
14
た動きが、今回の雇用対策法の改正である。
3.雇用対策法の全容と、その改正点
今回の雇用対策法改正に触れる前にまず、雇用対策法の全容について、
紹介する。
雇用対策法6とは、先述にあるように 1966 年に制定された法律である。
その第一章の第一条において、雇用対策法の目的・意義に関して以下のよ
うに記されている。
6
その構成について、記す。
第一章
総則(1 - 10 条)
第二章
求職者及び求人者に対する指導等(11 - 15 条)
第三章
職業訓練等の充実(16 - 17 条)
第四章
職業転換給付金(18 - 23 条)
第五章
事業主による再就職の援助を促進するための措置等(24 - 27 条)
第六章
外国人の雇用管理の改善、再就職の促進等の措置(28 - 30 条)
第七章
雑則(31 - 38 条)
附則
筆者作成。
15
表 5 雇用対策法
第一章第一条
この法律は、国が、少子高齢化による人口構造の変化等の経済社会情勢
の変化に対応して、雇用に関し、その政策全般にわたり、必要な施策を
総合的に講ずることにより、労働市場の機能が適切に発揮され、労働力
の需給が質量両面にわたり均衡することを促進して、労働者がその有す
る能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者
の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図るとともに、経済及び社
会の発展並びに完全雇用の達成に資することを目的とする。
この法律の運用に当たつては、労働者の職業選択の自由及び事業主の雇
用の管理についての自主性を尊重しなければならず、また、職業能力の
開発及び向上を図り、職業を通じて自立しようとする労働者の意欲を高
め、かつ、労働者の職業を安定させるための事業主の努力を助長するよ
うに努めなければならない。
総務省法令データ提供システムより筆者作成。
以上が、雇用対策法の主旨である。先に年齢制限政策をとりまく主張の
数々について述べたが、ここでは特に雇用対策法に関する環境の変遷を述
べる。
表 6 昨今の雇用対策法の変遷、及び同法を取り巻く環境
年次
要項
内容
「失業なき労働移動の実現」を今後の雇用
政策の方向性に掲げる。従来の内部労働市
1995 年
第八次雇用対策基本計画
場に重点を置いた雇用維持政策から外部労
働市場に重点を置いた再就職政策にシフト
が始まる。
「労働者の募集・採用において、その年齢に
2001 年
雇用対策法改正
かかわりなく均等な機会を与えること」が企
業の努力義務に。
16
「公共職業安定所で受理した求人のうち、年
2003 年
厚生労働省職業安定局長から都道
齢不問求人の割合を、平成 17 年度に 30%」
府県労働局長あてに通達
とする年齢制限緩和の数量目標を導入し
て、取り組みの強化が図られる。
2007 年
「再チャレンジ支援総合プラン」改定
2007 年
雇用対策法改正
「労働者の募集採用に係る年齢制限の禁止
について義務化する」との文言が追加。
募集採用に係る年齢制限禁止が義務化。
みずほ総合研究所(2007)、濱口(2004)より筆者作成。
上図にみたように、1990 年代のいわゆる「バブル経済」の崩壊の影響
による失業者の増加から外部労働市場改革の必要性が高まり、労働力の円
滑な活用が求められるようになった。このとき、労働市場に滞留する労働
力として、大きな割合をもつ中高年に焦点が当てられることとなった。そ
うして、2001 年 7 月雇用対策法が改正、同年 10 月より施行されるに至っ
た。
以上に述べた年齢制限規制の流れはここから、さらに加速する。その結
果、2003 年に更なる取り組みの強化が図られ、2007 年 6 月には法改正、
同年 10 月施行によりついに募集採用に係る年齢制限の禁止が義務化され
ることになる。
こうした流れの背景には、二つの動きがある。一点目は、就業を促進す
べき対象の拡大である。少子高齢化に伴う労働力人口の減少やワーキング
プアをはじめとする「働く人の格差」問題への懸念が高まり、中高年齢者
だけでなく、フリーターや子育て後の女性の働く意欲や能力の活用が急が
れるようになったのである。もう一点は、より直接的な事柄である。夏の
参院選に際し、「再チャレンジ」を選挙スローガンに掲げた与党の取り組
み成果を有権者にアピールするという意思が働いたことが考えられる。以
上、二つの要因によって、結果的に法改正が実行されたと推察できる。
さらに、ここで留意されたいのは、年齢制限禁止といっても例外的な事
由は残されていた点である。2001 年の法改正時点において例外項目が 10
項目認められていたのに対し、2007 年の法改正によって例外項目は 6 項
17
目と減り、年齢制限への規制は強まっている。以下の表をみてもらいたい。
表7
2007 年 10 月 1 日以前と以後における例外項目の比較
2007 年 9 月 30 日まで
募集・採用に係る年齢制限禁止の
努力義務の例外
2007 年 10 月 1 日∼
募集・採用に係る年
齢制限禁止の
義務化の例外
①年齢制限の上限が定年と同じ場合
②警備業務等、労働基準法が
特定の年齢層の雇用を禁じている場合
③経験不問で、新卒者と同じ待遇で
正社員として採用する場合。
→これまで同様
④高齢者の雇用を推進するため、
60 歳以上を採用する場合。
例外項目
⑤社内のいびつな年齢構成を
是正する目的で採用する場合
⑥子役など、芸能・芸術分野で採用する場合。
⑦一定水準以上の体力が必要な場合。
⑧商品などの特性に合わせた
年齢が求めれられる場合。
→削除
⑨賃金体系の変更が必要な場合。
⑩労災に考慮が必要な場合。
みずほ総合研究所(2007)等を参考に筆者作成。
以上を考慮すると、募集・採用時に年齢制限を設ける法的な余地は、2007
年 10 月以降、それまでよりも大幅に縮小するということができる。
18
第四章
2001 年雇用対策法改正の効果分析
1. はじめに
本章において検証する問いは、「中高年齢者に対する雇用政策としての
2001 年雇用対策法改正は、企業の求人行動に影響を与えうるのだろうか」
である。
政府は中高年齢失業者の再就職政策として、これまで雇用対策法を改正
してきた。その効果という点で、まず年齢制限のある求人割合は、減少傾
向にある。
図 4
年齢制限のある求人の割合(ハローワーク)
100
90
80
70
%
60
50
40
30
20
10
0
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
厚生労働省「募集・採用時における年齢制限禁止の義務化について」を参
考に筆者作成。
19
しかしながら、この年齢制限のある求人割合の減少は、真に法改正によ
る影響なのだろうか。労働需要とは、景気の動向に大きく左右されるだろ
う。私が本稿で実証したいことは、法改正による効果である。また、仮に
求人数の上昇というデータが得られても、実質的な再就職までに至らなけ
れば、効果とはいいがたい。法改正によって、見かけの上では年齢制限の
撤廃が行われたとしても、面接段階で年齢による「スクリーニング」があ
ったかどうかは判別しがたい。よって、以下のデータ及び手法を用いて、
実証分析を試みる。
2. データ及び手法
被説明変数 Y=パートタイムを含む常用労働者における就職件数7、説明
変数 x1 =パートタイムを含む常用労働者における月間有効求人数8、x2=
景気動向指数 CI9(2005 年=100) 、x3=2001 年 10 月ダミーとして、Y=a
+ b1x1 + b2x2 + b3x3 の回帰分析を行う。期間は、1997 年 1 月から 2008 年
7 月。観測数は、139。
この分析により、景気の動向及び法改正の時期を鑑みた上で、「50∼59
歳における有効求人数の変化は、50∼59 歳における就職件数に影響を与
える」という仮説を検証する。用いるデータの詳細は以下の通りである。
なお、検証は 50∼54 歳と 55∼59 歳の二通りに分けて行う。
7
職業安定所の有効求職者が、職業安定所の紹介により就職したことを確認した件数を
いう。
8 「前月から繰り越された有効求人数」と当月の「新規求人数」の合計数をいう。
9景気に敏感な指標の量的な動きを合成した指標であり、主として景気変動の大きさや
量感を測定することを目的としている。
20
19
97
19 年1
97 月
19 年7
98 月
19 年1
98 月
19 年7
99 月
19 年1
99 月
20 年7
00 月
20 年1
00 月
20 年7
01 月
20 年1
01 月
20 年7
02 月
20 年1
02 月
20 年7
03 月
20 年1
03 月
20 年7
04 月
20 年1
04 月
20 年7
05 月
20 年1
05 月
20 年7
06 月
20 年1
06 月
20 年7
07 月
20 年1
07 月
20 年7
08 月
20 年1
08 月
年
7月
人
図 5
50∼54歳及び55∼59歳の有効求人数
180,000
160,000
140,000
120,000
100,000
80,000
50∼54歳有効求人数
55∼59歳有効求人数
60,000
40,000
20,000
0
厚生労働省『職業安定業務統計』より筆者作成。
21
19
97
19 年1
97 月
19 年7
98 月
19 年1
98 月
19 年7
99 月
19 年1
99 月
20 年7
00 月
20 年1
00 月
20 年7
01 月
20 年1
01 月
20 年7
02 月
20 年1
02 月
20 年7
03 月
20 年1
03 月
20 年7
04 月
20 年1
04 月
20 年7
05 月
20 年1
05 月
20 年7
06 月
20 年1
06 月
20 年7
07 月
20 年1
07 月
20 年7
08 月
20 年1
08 月
年
7月
人
図 6
50∼54歳及び55∼59歳就職件数
18,000
16,000
14,000
12,000
10,000
8,000
50∼54歳就職件数
55∼59歳就職件数
6,000
4,000
2,000
0
厚生労働省『職業安定業務統計』より筆者作成。
22
図 7
景気動向指数CI (2005年=100)
120.0
100.0
80.0
60.0
40.0
20.0
19
9
19 7年 1
97 月
19 年 5
97 月
19 年 9
98 月
19 年 1
98 月
19 年 5
98 月
19 年 9
9 月
19 9年 1
99 月
19 年 5
99 月
20 年 9
00 月
20 年 1
00 月
20 年 5
0 月
20 0年 9
0 月
20 1年 1
01 月
20 年 5
01 月
20 年 9
02 月
20 年 1
02 月
20 年 5
0 月
20 2年 9
03 月
20 年 1
03 月
20 年 5
03 月
20 年 9
04 月
20 年 1
04 月
20 年 5
0 月
20 4年 9
05 月
20 年 1
05 月
20 年 5
05 月
20 年 9
06 月
20 年 1
06 月
20 年 5
06 月
20 年 9
07 月
20 年 1
07 月
20 年 5
07 月
20 年 9
08 月
20 年 1
08 月
年
5月
0.0
景気動向指数CI( (2005年=100))
内閣府調査より筆者作成。
3. 分析
分析の結果、50∼54 歳の年齢層においては、重決定 R2=0.35 におい
て、下表の結果が得られた。
表 8 分析結果Ⅰ
係数
標準誤差
t
P-値
切片
21623.87
4535.482
4.767711
4.76E-06
50∼54 歳有効求人数
0.002181
0.014971
0.145684
0.884388
景気動向指数 CI (2005 年=100)
-127.121
59.36659
-2.14129
0.034047
2001 年 10 月ダミー変数
3532.443
518.8924
6.807661
2.96E-10
筆者作成。
同様に 55∼59 歳の年齢層においては、重決定 R2=0.58 において、下
23
表の結果が得られた。
表 9 分析結果Ⅱ
切片
55∼59 歳有効求人数
景気動向指数 CI (2005 年=100)
2001 年 10 月ダミー変数
係数
標準誤差
t
P-値
-1158.1
2874.835
-0.40284
0.687702
0.016888
0.007436
2.270977
0.024731
102.293
34.53258
2.962216
0.00361
1158.994
330.5618
3.506133
0.000618
筆者作成。
以上の結果より、50∼54 歳の年齢層においては、有意な結果が得られ
なかった。次に、55∼59 歳の年齢層においては、有効求人数の変化と就
職件数の間に正の相関があることがわかった。だがその一方で、景気動向
指数との間にも相関があることがわかったともいえる。
第五章
結論と議論
以上の結果をまとめると、55∼59 歳の年齢層においては、有効求人数
の変化は、景気動向の影響を受けながらも、就職件数に影響を与えている
といえそうである。つまり、法改正の効果は、充分に観測された。
では、50∼54 歳における結果はどう捉えるべきだろうか。ここで、考
えられることが、繰り返しになるようだが、日本的雇用慣行である。
わが国の賃金制度の現状をみると、いまだに年齢が処遇の重要な基礎条
件となっている企業は多い。例えば職能給といっても勤続年数による運用
は少なくない。こうした中で、中高年齢者の採用を行うことは、人件費コ
ストの面でも、適切な役職という面からも企業は抑制的になる傾向が強い
のではないだろうか。よって、求人数それ自体の変化は起きても、求人行
動、つまり求人に際するインセンティブには変化は起きていないと考える。
以上のような視点で、賃金体系及び人事制度の変化を前提にしなければ、
募集・採用における年齢制限禁止政策は今後とも大きな効果を得られない
24
ように考える。よって、わたくしは年功賃金制の減少等により、求人需要
の偏りが是正された結果、年齢制限禁止政策がはじめて功をなし、中高年
労働者の雇用環境は改善されるように思う。
参考文献
北浦正行(2003)「中途採用時の年齢制限緩和策について」
『日本労働研究雑
誌』No.521 pp.17 - pp.30
川口大司(2003)「年齢差別禁止法が米国労働市場に与えた影響―米国の実
証研究のサーベイ」『日本労働研究雑誌』No.521 pp.43-pp.53
櫻庭涼子(2003)「諸外国における年齢差別への取組み」
『日本労働研究雑誌』
No.521 pp.31-pp.42
清家篤(2000)『定年破壊』講談社
―――(2001)「年齢差別禁止の経済分析」『日本労働研究雑誌』487 号
pp.44-pp.56
―――(2003)「労働研究の流れを変えた本・論文――E.ラジアー『定年は
なぜあるのか?』」
『日本労働研究雑誌』513 号
pp.12-pp.15
―――(2008)「本格的高齢社会における年齢差別禁止の可能性にかんする
考察」
『三田商学研究』第 50 巻 6 号 pp.109‐pp.125
みずほ総合研究所(2007)「募集・採用時の年齢制限禁止の義務化―法改正
に伴う成果と課題」『みずほ政策インサイト』2007 年 9 月 11 日
三菱総合研究所(2002)「採用等における年齢基準に関するアンケート調査」
森 戸 英 幸 (2001) 「 雇 用 に お け る 年 齢 差 別 禁 止 法 」『 日 本 労 働 研 究 雑
誌』487 号 pp.57-pp.69
濱口桂一郎(2001)「EUの年齢・障碍等差別禁止指令とそのインパクト」
『世界の労働』2001 年 2 月号 p.36
―――――(2004)「高齢者雇用政策における内部労働市場と外部労働市場」
『季刊労働法』204 号
25
【参考 URL】
厚生労働省 HP http://www.mhlw.go.jp/
総務省 HP http://www.soumu.go.jp/
総務省法令データ提供システム
http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxsearch.cgi
26
おわりに
なぜ大学に入ったか。なぜ商学部に入ったか。なぜ学問に取り組んでき
たか。こういった類いのことは、ずっと考えないことにしていた。それは、
私自身が明確な意思・意図を持って、行動してきた自信がなかったからだ。
だがゼミに入って、変わった。少しは考えるようになったのだ。
勿論それは、多分に先生のお導きもあっただろう。しかし、それだけで
はなかった。私には、一緒に考えくれるゼミの仲間がいてくれた。先輩、
後輩、そして同期の皆。いわゆる「デキる」「デキない」にかかわらず、
皆全身全霊でこの問いに対し、答えを出しては考え、答えを出しては考え
ていた。権丈ゼミでは、皆が痛いほどにこの問いを共有していた。だから、
ゼミ員とともに過ごした 2 年間は、とても楽しかった。
ふとふり返ると、私にとって、ゼミは活動ではなく、ほとんど生活その
ものであったように思える。
朝起きると、決まってゼミ員の誰かが隣で寝ていた。無論、勉強尽くめ
であったという話ではない。だが、それはそれで、良かったとも思ってい
る。自分の意地のため、仲間の面子を保つため、なりふり構わず事に挑む。
これもまた、素晴らしい学生生活のあり方ではないだろうか。
福澤も「貧乏をしても難渋をしても、粗衣粗食、一見みるかげもない貧
書生でありながら、知力思想の活発高尚なることは王侯貴人も眼下に見下
すという気位で、ただむずかしければおもしろい、苦中有楽、苦即楽とい
う境遇であった」と、その自伝において大坂・適塾時代を懐古している。
形は違えども、私が大学生活で求めていたのは、そうした環境だったのか
もしれない。
最後に、権丈先生をはじめ、大学生活で関わったすべての人たちに感謝
をしたい。そして与えてもらった多くの恩を胸に刻みこみたいと思う。
27
今ようやく、ゼミ生活が終わろうとしている。これほど寂しいことはな
い。
2009 年 1 月 13 日
荒れた綱島の自室にて
澵井
28
真