No.48 (Japanese) - 弘前大学大学院医学研究科/医学部医学科

1面:医学研究科長医学部長寄稿
2面:故阿部由直教授のご逝去を悼んで
3面:退職にあたって・教授就任の御挨拶
4〜6面:特集 各賞受賞
6面:医学部国際化教育奨励賞受賞訪問報告
7面:弘前医学会例会報告
8面:研究室紹介 形成外科学講座
9面:プロ医師のためのキャリアパス
10面:学士編入学教育セミナー・人事異動
第48号
発行日:平成21年3月18日
発行者:医学研究科広報委員会
刷:やまと印刷株式会社
印
遠藤正彦氏筆
弘前大学長
題字
佐
佐佐
藤
藤藤
﹁東 洋 大 学︑箱 根 駅 伝 初
優 勝 ! ﹂︑ 新 年 早 々 の こ の
ビッグニュースは私はもと
より︑それにかかわってき
たスタッフにとって本当に
待ちに待った朗報でした︒
東洋大学陸上競技部への
支援のきっかけは︑我々と
年たち︑また五十年たつう
ちには︑いつか時代遅れに
なるであろうことは︑だれ
でも知っている︒これは︑
学問上の仕事に共通の運命
である︒いな︑まさにここ
にこそ学問的業績の意義は
存在する︒⁝学問上の﹃達
成﹄はつねに新しい﹃問題
提起﹄を意味する︒それは
他の仕事によって﹃打ち破
ら れ ﹄︑ 時 代 遅 れ と な る こ
とをみずから欲するのであ
る ︒﹂と は マ ッ ク ス・ウ ェ ー
バ ー ︵﹃ 職 業 と し て の 学
問 ﹄︶の 言 葉 で す が ︑医 学 を
修めるべき医師も︑このよ
うな事実に謙虚に向き合っ
ていなければなりません︒
これからの医学︑医療を
担 う 人 た ち に は︑本 当 の
﹁ 名 医 ﹂を 師 に ︑本 当 の﹁ 名
医︑良医﹂を目指して欲し
いと願っています︒
梅
田
孝
故倉掛重精先生︵当時大分
大学医学部教授︶とで一九
九六年以降毎年二月に別府
大分毎日マラソンに出場す
る選手のメディカルチェッ
クを実施し︑同競技部・川
嶋伸二前監督︵シドニーオ
リンピックマラソン競技代
表︶が以前よりこれに興味
も持っていたことによるも
のです︒二〇〇六年三月に
倉掛先生の紹介で同監督と
面談し︑同年より支援を開
始することになりました︒
この時︑川嶋前監督は﹁長
距離選手は慢性的な疲労や
社社会
社
会会医
医医学学
学講講
講座座
座 准准
准教教
教授授
授
﹁﹁東
﹁
東東洋
洋洋大
大大学
学学陸
陸陸上
上上競
競競技
技技部
部部へ
へへの
のの
ススポ
ポポー
ーーツ
ツツ医
医医学
学学的
的的観
観観点
点点か
かから
ららの
のの
ス
支支援
援援に
ににつ
つつい
いいて
てて﹂
﹂﹂
支
進んでいるのかもしれませ
ん︒しかし︑少なくとも私
た ち は︑医 療 の 本 質 を 見
失ってはならないと思いま
す︒完璧を目指した努力を
欠いてはならないのはもち
ろんですが︑どこまで行っ
ても完璧はないのです︒現
在︑例え最良の医療とみな
されているものであって
も︑早晩︑時代遅れになら
ざるをえません︒そうなる
必要があるのです︒
﹁学 問 の ば あ い で は︑自
分の仕事が十年たち︑二十
敬
敬敬
医医療
医
療療従
従従事事
事者
者者と
ととしし
して
てて目
目目指
指指すす
すべ
べべき
ききもも
もの
のの
ないと思います︒自らを厳
しく見つめ︑常に〝医師と
しては未だし〟と思うのが︑
強いて言うなら﹁名医﹂で
あり﹁師として仰ぐに相応
しい医師﹂であると思えま
す ︒﹁ カ リ ス マ ﹂ の 名 に 甘
んじるような医師は︑少な
くとも私には︑許容できま
せん︒沖中先生は︑厳然た
る事実をもって自分自身を
見つめる潔さを示されてい
ると私は理解しています︒
既に故人となられた沖中先
生ご自身が︑どのような意
図で誤診率を公表されたか
は定かでありませんが︑私
には︑客観性とともに︑客
観的な事実をもって語る潔
さを示したものと感じられ
ます︒重要な事柄ほど︑評
価には︑前提のない客観性
が必要なのだと思います︒
情報公開は必要ですが︑
最終的評価は情報の受け手
に任せるのが本来の在り方
です︒私の杞憂であれば幸
いですが︑そして最近の医
療界のごく一部の現象に違
いないと信じていますが︑
残念ながら自らの実績を必
要以上に高らかにアピール
する風潮があるように思い
ます︒稀には︑他を批判す
ることで自らの評価を高め
ようとする意図が読み取れ
る場合もあるような気がし
ます︒これには︑医療の評
価などを巡る時代の変遷の
影響があるのかもしれず︑
また︑医療界のみならず︑
他の領域でも同様のことが
弘弘前前
弘
前大
大大学
学学大大
大学
学学院
院院医
医医学
学学研
研研究
究究科
科科長
長長・
・・医
医医学
学学部
部部長
長長
かつて東京大学医学部内
科学教授であられた沖中重
雄先生は︑一九六六年の退
官の際に︑ご自分の誤診率
が十四%であったと公表さ
れ た そ う で す︒こ の 数 字
は︑
﹁ 誤 診 ﹂を 厳 密 に 定 義 し
たものであり︑他の医師た
ちは誤診率の低さに驚く一
方 ︑一 般 の 人 た ち は ︑
〝東大
教授であり︑名医にしてそ
んなに誤診が多いのか!〟
と驚いたとの話もありま
す︒私は︑当時の経緯をリ
アルタイムで見聞きしてい
た訳でもありませんし︑沖
中先生のお名前を内科学教
科書の編者として知ってい
るだけですので︑そのよう
な話の意味や︑数字そのも
のの評価は明らかではあり
ませんが︑勝手ながら私自
身はこの事実から〝医学と
はなにか〟ということの一
端を感じます︒
私が感じることは︑医師
としての沖中先生の真の謙
虚さです︒自らの専門領域
で最大限の努力を払い︑常
に最良の結果を追求するこ
とは当然であり︑例え素晴
らしい成果を挙げたとして
も︑少なくとも自らを誇る
ようなことがあってはなら
医 学 研 究 科 長
医 学 部 長 寄 稿
スポーツ貧血に常に悩まさ
れ︑最近では長距離選手は
血液で走るとさえ言われて
い ま す ︒﹂ と 話 を し て い た
ことが今でも印象に残って
います︒
また︑この支援を始める
にあたり本学と同陸上競技
部︵埼玉県川越市︶との間
には距離的な制限等があり
ましたので︑同陸上競技部
近くで勤務する埼玉医科大
学・山田睦雄先生︵平成十
一 年 度 本 学 大 学 院 修 了 ︶︑
日本体育大学・鈴川一宏先
生︵本学大学院在学中︶に
協力を仰ぎ︑実施が可能と
なりました︒
支援を開始して二年間
は ︑年 に 三 回︵ シ ー ズ ン 前・
中・後 ︶の 血 液 生 化 学 検 査 ︑
整形外科的なメディカル
チェック等を実施しました
が︑二〇〇六年は箱根駅伝
五位︑二〇〇七年は十位と
なかなか成果を出すことが
できませんでした︒そのよ
うな中で︑今年度初め本講
座中路教授より﹁東洋大の
支援は︑今年度結果が出な
ければ最後にしよう︒その
代わり︑これまで以上にや
れるだけのことをやってみ
よ う ︒﹂と 話 が あ り ︑今 年 度
はこれまで以上に濃密な支
援をすることにしました︒
具 体 的 に は︑メ デ ィ カ ル
チェックの頻度を上げ︑六
月以降月一回のペースで血
液生化学検査︑整形外科的
チェック︑心理テスト︑身
体 組 成︵ 体 重 ︑体 脂 肪 量 ︑筋
肉量︶等を調査し︑これを
できるだけ早い段階で解析
し ︑指 導 者 ︑選 手 に 返 し ︑そ
の時点︵通常練習期︑強化
期︑調整期など︶でのコン
ディションの状況とそれに
対する対策を助言し︑全体
又は個人単位でチェック以
後のコンディショニングや
健康管理︑練習計画の参考
にして貰うとい
う作業を繰り返
し ま し た︒ま
た︑こ れ に つ い
て個人的に分か
らないことや悩
む ことがあれば︑
選手毎に電話や
メ ー ル で 直 接連
絡 を 貰 い︑対 応
し助言すること
も 行 い ま し た︒
ま た︑助 言 の 内
容 は︑主 に 栄 養
摂取の過不足や
貧 血 へ の 対 策︑
筋疲労の蓄積状
況 等 で し た︒ま
た︑今回特 に 印 象 に 残 っ た
こととして︑箱 根 直 前 の 十
二月二十四日に実施した
チェックで︑プレッシャー
で走れなくなっていた六区
の富永光君の体調が実際は
良好であることや︑常に貧
血傾向であった七区で区間
賞を獲った飛坂篤恭君の貧
血が改善されていたことを
確認し伝え︑自信をもって
大会に臨ませてあげること
ができたことが上げられま
す︒
今年度の支援が成果と
なった大きな要因は︑一つ
は支援を濃密にすることで
選手と我々のコミュニケー
ションもこれまで以上に良
好となったこと︑またコン
ディショニングや健康管理
に対する選手の意識が良い
方向に変化したことにある
と思います︒さらに︑指導
者が選手のコンディション
を客観的に把握し︑箱根に
向けての短期的・長期的な
練習計画や選手選考に上手
く活用できたところもこの
成果につながったと思いま
す︒
私達が行っている予防医
学的観点︵コンディショニ
ングや健康管理︶に立脚し
たスポーツ医学的サポート
の必要性については種々取
りざたされています︒しか
し︑実際のスポーツ現場で
はこれが十分に理解され︑
普及しているとは言い難い
状況にあります︒私達も今
回 の 成 果 を 糧 に︑今 後 も
様々なスポーツ現場で私達
が目指すスポーツ医学的サ
ポートをさらに展開︑普及
していければと思っていま
す︒
本サポートは︑冒頭紹介
した倉掛先生からお願いさ
れたのですが︑その時の言
葉が今も頭に残っていま
す ︒﹁ 川 嶋 君 ︵ 日 本 体 育 大
学の後輩︶は熱血漢で本当
にいいやつだから応援して
く れ な い か ﹂︒ そ の 言 葉 通
り︑川嶋監督は誠実で立派
な人格者でした︒実は十二
月初旬に東洋大学陸上競技
部の部員による不祥事が発
生し︑箱根への出場が危ぶ
まれました︒それでも出場
を許され初栄冠という快挙
が待ち受けていたわけで
す︒当然のことながら川嶋
監督は優勝の歓喜の輪の中
には入れませんでした︒そ
れだけが唯一の痛恨事でし
た︒
教授
西
條
康
夫
が悪化し酸素も必要となり
腫瘍内科に入院していただ
きましたが︑その際症状が
落ち着いているときにはP
Cで仕事をしていらっしゃ
い ま し た︒ま た︑回 診 の
後︑私に腫瘍センターやが
んプロフェッショナル養成
プランについて相談や指示
をされ仕事に対する情熱は
決して衰えるどころかます
ます強くなっていたように
思 い ま す︒最 後 の 最 後 ま
で︑いろいろな先生方に仕
事についてお話されていま
した︒担当医の一人として
阿部先生に有効ながん治療
ができなかったことが大変
残念です︒
志半ばで︑先生が専門と
するがんの病に倒れた阿部
先生はさぞかし無念であっ
たろうと思います︒私ども
にとって︑阿部先生という
先輩そして指導者を失った
ことは大変残念になりませ
ん︒残 念 な が ら︑が ん は
益々増えているのが現状で
す︒今後も︑阿部先生の意
思を受け継ぎ︑一人でも多
くのがん患者を助けられる
ようがん診療に取り組んで
いきたいと思います︒
阿部先生本当にお世話に
なりました︒ありがとうご
ざいました︒ゆっくりお休
み下さい︒
合掌
平成二十一年二月九日に
逝去されました弘前大学大
学院医学研究科放射線科学
講座教授 阿部由直先生の
お別れの会が︑三月六日午
後一時三十分から市内南城
西の公益セレモニーホール
で執り行われました︒生前
の広い交誼のため︑遠方か
らも含めて多数の方々が参
列されました︒会場ホール
には︑写真のほか︑愛用品
など多数の遺品が並べら
れ︑阿部先生を偲ぶに十分
たるものでした︒
お別れの会は︑佐藤 敬医
学研究科長
︵お 別 れ の
会 委 員 長︶
の挨拶で始
ま り ま し
た︒続 い て︑
長畑守雄講
師︵放 射 線
科 ︶の 進 行
で︑石 戸 谷
忻 一 先 生
︵弘 前 大 学
医学部鵬桜
会 理 事 長︶
︑
中路重之教
授︵社 会 医
学 講 座 ︶︑ 小 野 修 一 准 教 授
︵ 放 射 線 科 学 講 座 ︶︑ な ら
びに臨床研修後に阿部先生
が主宰する放射線科学講座
へ進むことを決意した廣瀬
勝 巳 君︵医 学 科 六 年 次 学
生︶の四名からお別れの言
葉 が 述 べ られました︒佐 藤
研究科長の挨拶も含め皆さ
んからは︑阿部先生の業績
に加えて︑す ば ら し い お 人
柄を偲ぶ言葉が切々と表さ
れました︒そ の 後 ︑ 阿 部 先
生が出演されたテレビ番組
のビデオが放映され︑最後
に︑ご遺族・ご親族の方よ
会場に飾られた阿部先生思い出の品々
りご挨拶をいただきました︒
荘厳な雰囲気の中にも︑
厚情の阿部由直先生のお人
柄がにじみ出るお別れの会
であり︑改めて阿部先生と
のお別れの悲しみを痛感し
ました︒ご冥福をお祈り申
し上げると共に︑先生のご
遺志を継ぐべく放射線科学
講座をはじめとした弘前大
学の一層の発展に尽力すべ
しとの決意を新たにした次
第です︒
原子力・放射線安全管理功労者表彰
洋
文部科学大臣賞を受賞して
山
勤務当初は非密封の放射性
同位元素を使用する研究の
み行う施設でした︒平成十
一年の増改築工事の完成に
より︑教育というもう一つ
の重要な業務が加わり︑教
育と研究という両輪がうま
くバランスした施設となっ
ています︒
今後の課題として︑老朽
化している放射線測定器等
の研究設備の更新︑放射線
安全管理システム等の管理
用機器の更新が挙げられま
す︒これらの課題について
も要望事項のマッチングの
結果︑医学研究科及び保健
学研究科のご厚意により具
体化へ向け作業が進んでい
るところであります︒当実
験室は全学共同利用教育研
究施設になってはいます
が︑ほぼ全ての利用が医学
関係の利用となっており︑
これは今後も変わることは
ないと思っております︒今
までの放射線安全管理のレ
ベルを維持しながら利用者
の立場に立って使いやすい
実験室を目指していきたい
と考えております︒今後と
も各方面で皆様のお力添え
が必要となる場合が多々あ
る と 思 い ま す の で︑ご 指
導・ご鞭撻のほどよろしく
お願いいたします︒
佐
アイソトープ総合実験室
技術専門職員
この度︑放射線安全功労
者として文部科学大臣賞を
受賞しましたことは誠に光
栄であり︑関係者の皆様に
厚くお礼を申し上げます︒
この受賞そのものは個人で
受けたものですが︑弘前大
学アイソトープ総合実験室
の放射線安全管理が全国的
なレベルにおいてうまく機
能していることが認められ
たものと思っております︒
これは総合実験室の管理ス
タッフのみではなく︑利用
者︑事務担当︑その他関係
する人たちが一丸となって
作り上げた結果が評価され
たものであると思っており
ます︒
私は約二十五年前に弘前
大学放射性同位元素研究室
総合実験室︵当時︑現在の
弘前大学アイソトープ総合
実験室︶に放射線安全管理
実務担当者として採用さ
れ︑平成元年に放射線取扱
主任者に選任され︑以来現
在まで勤務しております︒
お別れ会に引き続いて行われた偲ぶ会の様子
腫瘍内科学講座
せて頂く程度でした︒
私が弘前大学に来ること
になったのも阿部先生が弘
前で活躍されていたことが
大きく影響しています︒こ
ちらに来ることが決まった
時には大変喜んで頂きまし
た︒こちらにきてからは短
い期間でしたが何かと助言
をいただき大いに助けてい
ただきました︒また︑がん
診療を一緒にやっていきた
いとよく語っていたのが強
く心に残っています︒
しかし︑昨年の五月頃︑
咳が止まらないんだと話さ
れた時︑軽い気持ちで抗生
物質を飲んだらいかがです
かと話しましたが︑もうそ
の時には既に病が進行して
いたことを後で知りまし
た︒その後︑手術︑放射線
治療︑そして薬物治療を受
けられましたが︑咳などの
呼吸器症状が強くなり私も
担当医の一人として診療に
携わりました︒呼吸器症状
阿部教授お別れ会
宏
島
鬼
教授
病理生命科学講座
故阿部由直教授の
ご逝去を悼んで
弘前大学大学院医学研究
科放射線科学講座阿部由直
︵享年五十八歳︶教授は︑
かねて腎癌でご闘病中であ
りましたが︑平成二十一年
二月九日に逝去されまし
た︒ここに謹んで生前のご
厚誼を深謝し︑ご冥福をお
祈りします︒
故阿部教授には︑東北大
学加齢医学研究所で内科と
放射線科という立場で︑肺
癌患者の照射をお願いし肺
癌診療の指導を受けていま
した︒その後︑私が留学か
ら帰国後に外勤先にしてい
た病院がたまたま阿部先生
の外勤先でもあり︑お話す
る機会がありました︒その
とき︑にこにこしながら弘
前大学にいくことになった
と話してくれたことが印象
に残っています︒弘前大学
に赴任されてからは︑同じ
く肺癌を研究・診療する立
場から︑学会や研究会など
でお会いしたとき︑お話さ
医学部ウォーカー第 48 号
平成 21 年 3 月 18 日
阿部由直先生お 別れ の 会
退退職職
退
職にに
にああ
あたた
たっっ
ってて
て
たことは有り難いことで
あった︒その他に思い出に
残ることとしては︑やはり
学生諸君や諸先生方との協
力で行ったこと 学生のク
ラブ活動や顧問の先生方と
の交流︑慰霊関連施設の移
転や行事︑毎年の講義・実
習やコンパでの学生諸君と
の交流︑第一回・第十回国
際フォーラムの主催︑ハバ
ロフスク訪問などの国際交
流︑弘前医学会のシンポジ
ウム︑東医体や医師国家試
験での好成績︑新校舎など
と充実していた︒後半は研
究費不足などで十分に実験
ができず︑また書類書きも
多くて苦しんだ︒最後は八
方塞がりの状況であった
が︑残された力をふり絞っ
て︑毎朝六時から八時迄︑
盆も正月もなく五 ︱六年の
間︑単純ではあるが未開の
領域での長期間の継続を必
要とする実験を自ら主体に
なって行った結果︑重要な
発見に恵まれ︑救われた気
がしている︒
加加 地
加
地地
隆
隆隆
最後に後輩諸君へ︒天は
自ら助けるものを助ける︒
人それぞれに良いものを
持っているはずなのでそれ
を十分に生かして︑それぞ
れが天から授かった使命を
果たすべく人生を歩んで
行ってほしい︒しっかりと
した基盤に立って︑幅広い
視野のもとに︑粘り強い努
力を続けて︑何事かを成し
遂げられんことを︒
教育者としては︑教え子
が︑皆しっかりとした考え
方︑専門的知識や技能をみ
につけ︑幅広い視野と温か
教教授
教
授授就
就就任
任任の
のの御
御御挨
挨挨拶
拶拶
ている﹂と言ったことでも
知られています︒この﹁ぼ
くらはガリレオ﹂は︑上で
書いたガリレオが見いだし
たような一見直観に反する
ような事実を支持する実験
と︑その背後に潜む自然の
もつ法則を簡単な数学を
使ってわかりやすく説明し
てくれる本でした︒また︑
そのシンプルな法則がより
複雑な現象を説明すること
にとても役に立つことを示
してもいました︒小学校高
学年から中学生のあたり︑
ちょうど︑多感なこころを
持つころ︑このどうにもお
さ ま り の よ く な い﹁こ こ
ろ﹂も︑いくつかの簡単な
法則で説明できるのでは
と︑夜中に家をこっそり出
て散歩しながら︑いろいろ
工夫をしていました︒
時は流れ︑一九八一年弘
前大学医学部に入学し︑一
九八七年に卒業するまで
に︑神経科学という面白い
科学があることを知りまし
た︒教えて下さったのは︑
後に私の科学上の師とな
り︑今回私が幸いにもその
神神経
神
経経解
解解剖剖
剖・・
・細細
細胞胞
胞組組
組織織
織学学
学講講
講座座
座 教教
教授授
授
この度︑弘前大学大学院
医学研究科 神経解剖・細
胞組織学講座を担当するこ
とになりました一戸紀孝で
す︒
小学校高学年の冬休み
に︑街の図書館から﹁ぼく
らはガリレオ﹂という本を
借りて読みました︒このガ
リレオはガリレオ・ガリレ
イのことで︑ピサの斜塔の
上から︑軽い物体と重い物
体を落として︑物体の重さ
にかかわらず地面につくま
での時間は同じであること
を示したと言われている人
のことです︒また︑彼は詳
細な天体の観察と深い思索
から地動説を支持し︑天動
説を支持していた当時のキ
リスト教会から︑意見を変
えるように求められました
が ︑﹁ そ れ で も 地 球 は 動 い
戸
戸戸
紀
紀紀
孝
孝孝
い人間性を兼ね備えて社会
に貢献する良い医師︑立派
な医師になってもらいたい
のはもちろんである︒しか
しながら︑創造的な研究な
くしては大学の真の存在意
義はない︒今後この医学部
から一人でも多く︑新事実
の発見︑新概念の創出︑メ
カニズムの解明など学問の
発展に貢献する研究者が輩
出することを祈っている︒
一一
一
志を継ぐこととなりました
正村和彦 神経解剖・細胞
組織学講座初代教授︑神経
生理学の鈴木寿夫教授︑当
時助手でいらした小松英彦
現生理学研究所教授︑神経
内科の松永宗雄教授らの諸
先 生 で し た︒医 学 部 を 卒 業
し︑麻 酔 科 医 と し て の 臨 床
研修を修了した後︑瞳孔を
自律神経系のよいモニター
システムとして︑生理学的
手法と解剖学的手法を組み
合わせて自律神経の大脳皮
質制御の研究をしていた正
村先生のもとで︑研究をさ
せていただくこととなりま
した︒瞳は﹁こころ﹂の窓
というように︑面白いこと
がいろいろとありました︒
学位を得て正村先生に助手
と し て い た だ き︑テ ネ シ ー
大 学 メ ン フ ィ ス 校 の Kitai
先
生のところにも ︑ 留 学 さ せ
ていただきました︒また︑
霊長類の研究に興味を持
ち ︑ 八 年 前 か ら 理化学研究
所・脳科学総合研究センター
の Kathy Rockland
先生のもと
で︑霊長類の大脳皮質の研
究にも携わりました︒この
医学研究科学外公開講座
﹁健康・医療講演会﹂
弘前会場開催報告
の実際が紹介されました︒
講演のあと︑参加者と講
演者での活発な質疑応答が
あり︑講演者のわかりやす
い話から︑乳がんは対処で
き︑その治療も年々進歩し
ていることが︑参加者にも
伝わったと思います︒
医学研究科広報委員会委員 上 野 伸 哉
︵脳神経生理学講座 教授︶
平成二十年十一月二十二 と︑数 名 の 男 性
日︵土︶ 弘 前 文 化 セ ン と い う 構 成 で し
ター中会議室にて学外公開 た︒
弘前市立病院
講 座﹁ 健 康・医 療 講 演 会 ﹂が
開催されました︒前日の雪 院 長 の 松 川 先 生
の 残 る 状 況 に も か か わ ら ず︑ よ り 開 会 の 辞 が
八十名もの参加があり︑ほ あ り︑弘 前 大 学
ぼ 会 場 は 満 杯 と な り ま し 大学院医学研究
た︒参加者は九割以上女性 科 消 化 器 外
で ︑ 若 い 方 か ら 年 配 の 方 科・乳 腺 外 科・甲
状腺外科 講師
小田桐弘毅先生
演 題﹁あ な た の
乳房と命をがん
で失わないため
に ﹂︑弘 前 市 立 病
院 乳腺外科科
長 長谷川善枝
先生 演題﹁もしも乳がん
になってしまったら﹂の二
つの講演が行われました︒
小田桐先生からは主に乳が
んの予防に関して︑特に検
診内容と早期発見の大切さ
についての講演があり︑長
谷川先生からは乳がん治療
間︑脳回路の解剖学を軸足
の中心としながら︑ウィル
スベクターやジーンチップ
などの分子生物学的手法︑
電気生理学的手法を共同研
究などいろいろな形で取り
入れて脳にアプローチして
きました︒脳の精緻な回路
から︑いかにして高度な認
知 ︑知 性 や 感 情 ︑そ し て﹁ こ
ころ﹂が生まれてくるのか?
また︑その回路のどのよう
な特徴が︑どのような変調
をきたしやすく︑病気へと
つながっていくのか?そし
て︑それを癒す方法︑救う
方法は?問い続けて︑工夫
し続けて行きたいと思いま
す︒幸いなことに︑弘前大
学には︑脳神経血管病態研
究施設の存在に示されるよ
うに︑素晴らしい神経科学
の伝統と実績があり︑相談
させていただく相手にはこ
と欠きません︒この伝統を
さらによきものとするよう
頑張りたいと思いますの
で ︑ ど う ぞ ︑ み な さまご指
導・ご鞭撻のほど︑よろし
くお願いいたします︒
長谷川善枝 先生
生生体体
生
体構構
構造造
造医医
医科科
科学学
学講講
講座座
座 教教
教授授
授
旭川医大から転任して十
八年︑思い出は尽きない︒
温かい先輩の諸先生方のお
陰でスムーズにスタートが
でき︑ご期待に沿うべく精
一杯頑張った︒丁度世代交
代であったため沢山の委員
会の仕事を拝受し︑色々な
先生方から貴重なご指導を
頂きつつ︑溶け込んでいっ
た︒また︑御遺体収集を含
む解剖学の膨大な教育関係
の義務︑そして大学院の教
育を含む研究などで︑体力
的 に も 大 変 で あ っ た︒幸
い︑教授会の同僚も︑教室
員も︑学生諸君もとても良
い雰囲気で迎えてくれたた
め︑なんとか乗り切ること
ができた︒個性溢れる教室
員との交流はなんといって
も 愉 快 で
あ っ た︒ま
た︑最 初 の
頃は唐牛助
成金など研
究費に恵ま
れ︑臨 床 か
らの大学院
生などの援
軍 も あ り︑
皆一生懸命
努力してく
れ た た め︑
良い研究成
果に恵まれ
小田桐弘毅 先生
平成 21 年 3 月 18 日
医学部ウォーカー第 48 号
:
医学部ウォーカー第 48 号
第二十七回
島
宏
唐牛記念医学研究基金助成金
鬼
し て 視 床 下 部︵視 交 叉 上
核︶での時計遺伝子の発現
が重要とされています︒こ
れまでの研究は︑時計遺伝
子の転写制御機構など遺伝
子の機能解析が大部分であ
り︑時計遺伝子と疾患との
関連性は十分に解明されて
いませんでした︒
我々は︑ Dec
遺伝子が時計
遺伝子ファミリーに属する
ことを解明するとともに︑変
異型 Dec
遺伝 子 を 用 い て の
時計遺伝子の分子制御機構
について明らかにしてきま
した︒さらに︑低酸素状態
や癌化によりDEC発現が
亢進していることから︑時
計遺伝子が概日リズムの調
節に加えて︑血管新生や細
胞増殖などの病態機序との
関連性も示してきました︒
一方︑死因第一位を占める
教授
癌の高悪性度形質を
制御する時計遺伝子の
機能解析
病理生命科学講座
第二十七回唐牛記念医学
研究基金助成金Aを受賞
し︑大きな喜びとともに︑
故唐牛敏世氏の意志を尊重
した研究の発展に尽力せね
ばならないとの新たな気持
ちでおります︒受賞の研究
課題﹁癌の高悪性度形質を
制御する時計遺伝子の機能
解析﹂を説明させていただ
きます︒
生物体内には一日二十四
時間を刻む生物時計︵概日
リズム︶が存在しており︑
近年そのリズム発振機構と
癌︵悪性腫瘍︶では︑癌細 て時計遺伝子の発現に対応
胞の増殖や転移にかかわる した癌細胞増殖と腫瘍血管
因子として腫瘍血管新生が 新生の機序を解明すること
きわめて重要です︒
ですが︑これに加えて細胞
今回の受賞研究課題は︑ 増殖・血管新生を抑制する
このような背景をもとに時 ことで癌自体の制御を試み
計 遺 伝 子 群 ︵ Clock, Bmal, ることも目標としています︒
︶が 制 御 す る 概 さらに病態解析・ 制御のみな
Per, Cry, Dec
日リズムの下で︑癌の細胞 らず︑時間制御型薬物療法
増殖や腫瘍血管の新生が行 など新たな治療への展開も
われているとの作業仮説で︑ 見据えた研究も目指します︒
受賞いたしました唐牛記
これを個体レベルで証明す
ることにより︑癌が示す高 念医学研究基金助成金を有
悪性度の病態が解明される 効利用させていただき︑十
との考えから示されたもの 分な成果をあげられるよう
です︒研究の目標は︑ヒト 努力いたす次第です︒
腫瘍異種移植系などを用い
横 山 良 仁
の 発 現 を 誘 導 し ま す ︒ Nrf2
欠損マウスの解析から︑本
因子が酸化ストレス応答だ
けでなく︑発がん︑炎症を
はじめとする様々な疾患
の防御に重要な役割を担
助教 丸 山 敦 史
うことが報告されていま
す︒
下に述べさせていただきま
私たちは炎症における Nrf2
す︒
の役割を詳細に解析するた
我 々 は 生 命 活 動 に 必 要 な め ︑ マ ク ロ フ ァ ー ジ を Nrf2
エネルギーを食物とその酸 活 性 化 剤 で 刺 激 し た 際 に
化的代謝から得ています︒ 誘 導 さ れ る 遺 伝 子 を マ イ
食 物 に は 種 々 の 化 合 物 が クロアレイにより検索しま
含 ま れ て お り ︑ 酸 素 は 潜 した︒その結果︑病原体を
在 的 な 毒 性 を 持 っ て い ま 認識する受容体や︑細菌感
す︒そのため生体は︑環境 染の感受性に関与する鉄輸
由来のストレスを解毒する 送体遺伝子が発現誘導され
系を進化させてきたと考え ることを見出しました︒ま
ら れ ま す ︒ 転 写 因 子 Nrf2 た Nrf2
はマクロファージだ
は︑活性酸素をはじめとす けでなく︑好中球や樹状細
る環境ストレスによって活 胞といった自然免疫系細胞
性 化 し ︑ 生 体 防 御 遺 伝 子 群 で も 活 性 化 さ れ ま す︒し か
し︑細 菌 感 染 に お け る Nrf2
の役割は不明です︒そこで
本 研 究 で は ︑ Nrf2
活性化に
基づく細菌感染防御作用を
解 明 することを目的としま
した︒
活性化により自然免
Nrf2
疫系を強化し︑細菌感染を
防御する分子機構が明らか
となれば︑新たな感染症予
防法につながる可能性があ
り ま す ︒ ま た ︑ Nrf2
活性化
物質を多く含む食品が知ら
れています︒それらの食品
を 用 い る Nrf2
活性化を基盤
と し た 感 染 症 予 防・治 療
は︑副作用の心配が少ない
と考えています︒
最後に︑分子生体防御学
講座の皆様︑そして実験等
でお世話になっている諸先
生方に心から感謝申し上げ
ます︒今後とも御指導のほ
ど︑よろしくお願い申し上
げます︒
り光線力学的手法で予備実
験をしたところ腫瘍縮小が
得られましたので︑光線力
学 的 療 法 と PPAR リ ガ ン
ドなどの新規抗腫瘍剤を
組み合わせて再発卵巣癌
の 治 療戦略の一つにでき
ないかと計画したのが今回
のテーマの主旨になりま
す︒光照射の工夫や薬剤濃
度の設定︑安全性などを動
物実験で確認して臨床応用
を目指したいと考えていま
す︒
弘前大学は﹁世界に発信
する﹂がキャッチフレーズ
ですので︑このような類を
みない治療方法の開発はま
さに弘前大学の目指すとこ
ろに一致すると自負してい
ます︒教室の水沼英樹教授
はじめ腫瘍研究グループメ
ンバーたちとともに医学の
発展に寄与できるよう研究
に邁進していく所存です︒
今後ともご指導の程よろし
くお願い申し上げます︒
が活性化する
Nrf2
自然免疫系の解明
分子生体防御学講座
この度は第二十七回唐牛
記念医学研究基金助成金B
に選出していただき︑選考
委員の先生方をはじめ︑関
係者の皆様に深く御礼申し
上げます︒私が申請いたし
ました研究内容について以
です︒その再発は癌性腹膜
炎の形できたすものが大部
分 で あ り︑手 術 が で き な
い ︑既 存 の 抗 が ん 剤 が 効
Karoji Memorial Fund for か な い ︑ し た が っ て 再 発
に よ る 助 す る と ほ と ん ど cure
できま
Medical Research
成 研 究 で あ る と 記 述 し て 権 せ ん︒現 在︑分 子 標 的 薬 や
威ある学術雑誌に投稿した 新規抗がん剤の開発が盛ん
論文は二十編におよび︑ま に 行 わ れ て い ま す が ︑ ま
さに唐牛記念医学研究助成 だ 決 定 打 に は 至 っ て い ま
金 に 助 け ら れ ︑ 育 て て も せ ん︒私 た ち の 研 究 グ ル ー
ら っ た と い う 気 持 ち を も っ プでは︑ PPAR リガンド︑
ています︒最近では臨床の
阻
PPARリガンド︑ COX‑2
忙 し さ と 研 究 棟 改 修 に よ る 害剤 が 卵 巣 癌 の 癌 性 腹 膜 炎
実験スペースの縮小からや に対して効果があるという
や研究への気概が落ちてい 研究結果を得ました︒それ
ましたが︑今回の研究助成 がここでいう新規抗腫瘍剤
を受けてまた生き返った気 になります︒癌性腹膜炎の
分です︒
播種病巣はせいぜい米粒大
私たち研究グループの研 の大きさであるのが特徴で
究課題について概説いたし す︒光親和性薬剤を播種し
ます︒卵巣癌という病気は たがん組織に取り込ませ︑
進行がんであっても七割が 技術の発達した腹腔鏡手術
寛解するのですが︑寛解症 を駆使し病巣にレーザー光
例のうちまた七割が再発し をあてるといういわゆる光
て結局五年生存率は三十% 線力学的療法のアイデアが
台という婦人科がんの中で 生まれました︒ヌードマウ
は治療に最も苦労する病気 スに卵巣癌の皮下腫瘍を作
た ち の 研究グループでは
講師
光線力学的療法と
新規抗腫瘍剤を併用した
卵巣癌治療法の開発
産科婦人科学講座
この度は第二十七回の唐
牛記念医学研究基金助成金
を賜り大変光栄に思いま
す︒故唐牛敏世氏︑株式会
社みちのく銀行様︑また医
学研究科研究推進委員会
の 選考委員の皆様に感謝
申し上げます︒いまは晴れ
がましい気分と研究助成を
受けたことの責任の重さが
ありますが心地よい緊張を
感じています︒実は︑私は
第十四回︑第十九回と二度
唐牛記念医学研究基金Bを
受けており︑今回の唐牛記
念医学 研 究 助 成 A で 三 回
目 の 受 賞 と な り ま す︒私
α
平成 21 年 3 月 18 日
γ
α
弘前大学医学部学術賞
崎
育
子
産科婦人科学講座
この度は︑第十三回弘前
大学医学部学術特別賞を賜
り︑これまで行ってきた研
究に対し高い評価を受けた
ことは大変光栄に存じま
す︒選考委員の先生方︑医
学部鵬桜会︑青森医学振興
会︑関係者の皆様に感謝い
たします︒受賞対象になり
ました研究の概要を簡単に
紹介させていただきます︒
の質︵組成やサイズ︑修飾パ
ターン︶についての網羅的解
析 法 の 開 発︑ ボ ス た ち に
よって開発された画期的な
方法により調製した配列既
知のオリゴ糖を用いた︑マラ
リアの母子感染に必要な糖
鎖 構 造 に 関 す る 解 析︑ 当
研究グループで見出された
ヒアルロン酸合成阻害剤の
作 用 機 序 の 解 明︑ 機 能 解
析ツールとしての糖鎖改変
プロテオグリカンの調製︑等
に成功しました︒
今後は︑医学の各種ご専門
の先生方のご意見を頂戴し
ながら︑これらの解析方法や
技術を駆使し︑この研究が将
来︑微力でも医学に貢献でき
る形となるよう︑精進する所
存 で す︒今 後 と も ご 指 導 ご
支援を賜りますよう︑よろし
くお願い申し上げます︒
4)
講師 横
山
良
仁
複数のヒト卵巣癌細胞か
ら作製した皮下担癌マウ
スと癌性腹膜炎マウスを用
い た 実 験 的 卵 巣 癌 に お い て︑
3)
薬剤投与に共通してマウ
ス の 血 清 中︑腹 水 中 の
︵P G︶ E
のレ
Prostaglandin
2
ベ ル が低 下 し て い た こ と は
重要な知見と思われます︒
レ2 ベ ル の 低 下 は ︑ク ロ
PGE
フィブリン酸投与によって
腫 瘍 内 で PGE
を PGFに 変
2
2
換する Carbonyl reductase
が
有意に増加し︑さらにPG
合 成 酵 素 ︵ mPGES
︶の レ ベ
ル が 有 意 に 低 下 し た こ と︑
シグリタゾン投与によって
腫 瘍 内 mPGES
のレベルが
有意に低下したこと︑ピオ
グリタゾン投与によって腫
瘍 内 で COX‑2
の発現調節因
子 で あ る AP‑1
の発現レベル
が 低 下 し COX‑2
発現が減少
したこと︑メロキシカム投
与によって腫瘍内で COX‑2
の
発現が欠如したこと︑から
導かれていることがわかり
ました︒クロフィブリン酸
α
Peroxisome proliferator‑ acti‑ は フ ィ ブ ラ ー ト 系 高 脂 血 症
︵ PPAR
︶ リ 剤の主成分であり︑シグ
vated receptor
ガンドであるクロフィブリ リタゾンとピオグリタゾ
ン酸︑ PPAR リ ガ ン ド で あ ン は 経 口 血 糖 降 下 剤 ︑ ま
るシグリタゾン︑ピオグリ たメロキシカムはオキシ
タ ゾ ン︑さ ら に は 選 択 的 カム系の非ステロイド抗
阻害剤であるメロキ 炎症治療薬でどの薬剤も
COX‑2
シカムの抗腫瘍効果を調べ 日常臨床で汎用されてい
た結果︑いずれも単剤で血 る 薬 剤 で す︒特 に ク ロ
管新生の抑制とアポトーシ フィブリン酸については
スの誘導が顕著であり卵巣 抗腫瘍剤として応用可能
癌の標準治療薬の一つであ なことを世界で初めて証
るシスプラチンと同等の抗 明したものであり公報に
腫 瘍 効 果 を 発 揮 す る こ と て 特 許 公 開 中 で もありま
︵特 開 2007‑126422
を 証 明 し ま し た︒ま た 各 す
︶︒こ
れらの薬剤は副作用など安
全性が確立されていること
鑑み︑卵巣癌のみならずヒ
ト固形癌全般において抗癌
剤との併用補助薬あるいは
抗癌剤と性質の異なる
へ
tumor dormancy therapy
応用できる可能性を秘める
ものと考えています︒
本賞は︑完成度の高い研
究を顕彰する目的との位置
づけとされますが︑私とし
ましてはまだまだ道半ば︑
メカニズムにしましても血
管新生阻害とアポトーシス
誘導以外の因子があると考
えていますのでもう少し掘
り下げる必要性を感じてい
ます︒また目標であります
臨床応用に向けてもうひと
頑張りしないといけいとも
思 っ て い ま す︒本 賞 受 賞
は︑生化学第二講座︵ゲノ
ム生化学︶の故佐藤清美教
授︑土田成紀教授のご指導
により培ったリサーチマイ
ンドがなければ決して実現
しなかっただろうと確信し
ています︒また水沼英樹教
授をはじめ産科婦人科学講
座で研究をともにする同僚
たちへ感謝の意を表すると
ともに︑今後は若手研究者
たちにリサーチの苦楽を教
える立場にいることを自覚
し本賞受賞者としての責任
を果たしていきたいと決意
しています︒
Epistatic connections
between microphthalmia‑
associated transcription
factor and endothelin
signaling in Waardenburg
syndrome and other
pigmentary disorders
可 代
古典的MAPキナーゼ経路
を通じ直接既存のMITF
を リ ン 酸 化 し ︑ MAPキ
ナーゼ経路︑cAMP経路
を通じMITF遺伝子の発
現を新規に上昇させる︑と
いう二つの方法でMITF
の活性を制御し︑さらにこ
の経路は色素産生に関与す
る蛋白であるSILVと細
胞周期制御蛋白である
︑ さ ら に EDNRB
の遺
CDK2
皮膚科学講座 神
この度は栄誉ある弘前大
学医学部学術賞学術奨励賞
をいただき︑誠にありがと
うございました︒推薦いた
だきました教授︑学術賞選
考委員の先生方ならびに関
係者の皆様に深く感謝申し
上げます︒
受賞した論文について簡
単に紹介いたします︒ワー
ル デ ン ブ ル グ 症 候 群︵W
S︶は感音性難聴︑虹彩異
色︑皮膚・毛髪の脱色素病
変を主徴とする症候群であ
り︑W S Ⅱ 型 で は 小 眼 球
症 関 連 転 写 因 子 ︵ MITF
︶︑
WSⅣ型ではエンドセリ
ン ︵
︶と そ の 受 容 体
3 EDN3
であるEDNB受容体
︵ EDNRB
︶の 遺 伝 子 が 原 因
遺伝子として明らかになっ
ていますが︑MITFとE
DNの分子生物学的な関係
についてはまだ不明な点も
多く存在することから︑培
養正常ヒト色素細胞におけ
るMITFとEDNシグナ
ルの関係性とその機能につ
いて研究を行いました︒そ
の結果EDNシグナルは
このたびは名誉ある賞を
いただきまして︑大変光栄
に思います︒実験生活を送
るなかで︑知識的なことは
もちろん︑物理的あるいは
伝子発現の上昇に関与する
ことを明らかにしました︒
このたびの論文は学位論
文であり︑皮膚科学講座現
教授の澤村大輔教授︑中野
創准教授ほか皮膚科学講座
の皆様に︑培養の仕方など
初歩の初歩から実際の実験
指導を手ほどきして頂き︑
無事研究を遂行することが
できました︒最後になりま
すが︑皮膚科学講座の先生
方並びにご協力いただいた
先生方︑共同実験者である
東京工科大学応用生物学部
の芋川玄爾教授︑金沢大学
がん研究所の西村栄美教
授︑ハーバード大学ダナ・
ファーバー癌研究所の
教授を中心
David E. Fisher
とした諸先生方には心から
感謝申し上げます︒今後と
も︑さらなる御支援ならび
に御指導の程宜しくお願い
致します︒
佐 藤 知
彦
︵次ページへ続く︶
精神的に多くの方々に助け
られました︒本当にありが
とうございました︒
研究に費やした二年間を
振り返ると︑辛かったこと
が圧倒的に多く思い出され
ます︒大きなゲルを使った
電気泳動法の実験が何度
やってもうまくいかない時
期がありました︒他の方法
で結果を出したいと私は考
え︑上司のI教授に何度か
西北中央病院小児科
Functional analysis of
JAK3 mutations in transient
myeloproliferative disorder
and acute megakaryoblastic
leukemia accompanying
Down syndrome
2)
准教授 柿
糖鎖は︑タンパク質などに結
合し︑その分子の作用の調節
や安定化に働くだけではな
く︑特定の配列や高次構造に
基づいた重要な機能をもつ
のではないかと考えており
ます︒しかし︑糖鎖構造の複
雑さのために︑解析が遅れて
います︒
本 研 究 で は︑ 生 体 試 料
中のグリコサミノグリカン
2)
血管新生阻害を標的とする
進行卵巣癌の
新規治療法の開発
1)
第十三回
糖鎖工学講座
このたびは︑栄誉ある学術
特別賞を賜りまして︑身に余
る 光 栄 に 存 じ ま す︒関 係 者
の皆様に厚く御礼申し上げ
ます︒
受賞の対象となりました︑
生体内糖鎖の構造と機能に
関する研究は︑生化学第一・
糖鎖工学講座において︑遠藤
正彦先生︑故高垣啓一先生の
ご指導の下で︑国内外の多く
の方々のご支援によって現
在も継続させていただいて
い る も の で す︒そ の す べ て
の方々に感謝申し上げます︒
生体内のほとんどのタン
パク質は︑翻訳後修飾の一つ
である糖鎖修飾を受けた複
合糖質として機能していま
す︒従いまして︑糖鎖につい
ての解析をなくして︑生命現
象や疾患のメカニズムを解
明することができない場合
が あ り ま す︒当 研 究 グ ル ー
プでは︑プロテオグリカンと
呼ばれる複合糖質と︑その糖
鎖成分のグリコサミノグリ
カン︑糖鎖のみから成るヒア
ルロン酸を主な研究対象と
し︑それらの構造と機能との
関係を明らかにすることを
目 標 の 一 つ と し て お り ま す︒
1)
生体 内 糖 鎖 の 構 造 と
機能 に 関 す る 研 究
︵医 学 応 用 を 目 指 し て ︶
平成 21 年 3 月 18 日
医学部ウォーカー第 48 号
γ
α
︵前ページより︶
掛け合いましたが︑そのた
びにI教授は電気泳動法を
薦め︑何度も失敗する私に
﹁なんでうまくいかないか
なぁ︑J先生はすぐにでき
た の に ︒﹂ と お っ し ゃ り ま
した︒そんなこんなで一ヶ
月が経ち︑業を煮やしたI
教授の提案によりJ先生と
一緒にやってみることにな
りましたが︑やはりうまく
いきません︒J先生とやっ
てもうまくいかないことを
伝えると︑﹁水が悪いんだ
な︒こ の 方 法 は や め よ
う ︒﹂ と あ っ さ り I 教 授 は
おっしゃり︑朝から晩まで
ひたすら繰り返したこの実
験は終わりました︒﹁水が
悪い﹂って⁝︒﹁今日は︑
日が悪いようなので改め
て ︒﹂ み た い な 感 じ で し ょ
うか︒これが最もつらかっ
た﹁水事件﹂です︒
しかし︑こうした実験・
研究生活の中で新しい何か
を発見したときの喜びは非
常に大きいものでした︒そ
んな時には伊藤先生のとこ
ろへ走って伝えに行きまし
た︒すると伊藤先生も心か
ら 嬉 し そ う な 顔 を し て︑
﹁ Congratulation!
﹂と 握 手 を
して喜びを共有してくれま
した︒実験を通して伊藤先
生と同じ時間を共有でき︑
実験以外のことも含めて多
くのことを学ばせていただ
きました︒親身になってご
指導いただき︑心から感謝
しています︒
学生に向けて︵ちょっと
偉 そ う で す が ︶︒ 実 験 や 研
究をして得られることは︑
その場の知識・結果だけで
はありません︒この後何十
年と続く生活に幅を持たせ
てくれます︒そういった意
味において︑なるべく早く
に実験・研究生活を経験す
ることを勧めます︒
最後になりますが︑今後
は賞の名に恥じないよう︑
いっそう精進していきたい
と思います︒今後ともご指
導・ご鞭撻のほどをよろし
くお願いいたします︒
丹
羽
ググラ
グ
ララスス
スゴゴ
ゴーー
ー大大
大学学
学にに
におお
おけけ
けるる
る
医学
医医
学学教教
教育育
育のの
の視視
視察察
察をを
を終終
終ええ
えてて
て
麻酔科
英
智
まともになっていくのです
が︑英 国 一 年 生 は 違 い ま
す︒彼らの一週間はおおよ
そ以下の通りでした︒
月曜日 PBL
:
火曜日 :
自習
水曜日 :
PBL
木曜日 ︵
:古 典 的 ︶ 講 義
金曜日 :
この度平成二十年十一月
自由
十五日〜二十二日にかけて
もちろん︑他にも病院訪
グ ラ ス ゴ ー 大 学 医 学 教 育 の 問 ︑ Clinical Skill
実習など
視察に行って来ましたので 色々あるようですが︑ここ
報告します︒
で大事なことは︑基本的に
英国医学教育といいます は自分で調べ︑考え︑まと
とこれまでに何度か当教室 める時間が多くとられてい
員 が 報 告 し た Problem‑ る と い う こ と で す ︒ P B L
︵ P B L ︶が 理 論 と は 人 が あ る こ と を 理
based learning
挙げられますが︑この手法 解するためには︑まずその
を中心としたチュートリア 物事を分析し︑疑問点を明
ル授業は弘前大学でも行わ らかにした上で知識を獲得
れており︑今更説明するま し︑その得た知識を基に議
で も な い と 考 え て お り ま 論したり行動したり活用す
す︒よって今回︑私の報告 ることでその知識はより深
では若手医師という立場か いものになるというもので
ら見た英国学生の医学教育 す︒実際︑彼らは授業で提
への姿勢とPBLの関連に 示された症例のキーワード
ついて述べさせて頂きます︒ か ら 様 々 な 分 野 に わ た る 疑
まず英国の教育カリキュ 問点を挙げ︑分析し︑各自
ラムですが︑入学は十八歳 で調べ︑理解し︑更に次回
であり︑カリキュラム自体 のPBL授業で議論し活用
は日本とほぼ変わりません︒ す る こ と で そ の 知 識 を 自 分
しかし︑今回私は一年生 のものにしているようでし
のPBL及び授業後の生徒 た︒ただ漫然と講義を聴き
の行動を中心に見学しまし 暗記を中心とした知識と比
たが︑自分が一年生だった 較すると︑PBLで得た知
頃とはまるで違うことに驚 識の方がより定着するのは
かされました︒みなさん︑ 明白です︒更に彼らはPB
医学部に入学した一年生の Lに加え︑積極的に病院訪
頃を思い出して下さい︒勉 問を行うことにより実際の
強に没頭した毎日を送って 症例に触れ︑知識をより深
いたと思いたいのですが︑ く定着するとのことです︒
私が最も感心した事は︑
今の弘大学生の様子を見て
いますとやはり今も昔もあ 実はPBL中の彼らの姿勢
まり変わっていないのだな ではなく︑授業後の様子で
と思います︒これはこれで す︒彼らは授業が終わった
医 者 に な っ て か ら 苦 労 し て ら ︑部 活 ︑バ イ ト ︑飲 み に は
行きません︒学食で議論を
まとめ︑図書館に行き様々
な教科書︑インターネット
を使い勉強します︒調べる
ことは︑解剖︑生理など基
本的なことから︑手術手技
など臨床的なことまで幅広
いものでかなりの労力がい
ると思われました︒図書館
の 様 子 は︑こ れ が 一 年 生
か?と思うくらいでした︒
彼らは豊富な自由時間をこ
のように使っています︒見
た目は普通の十八歳で︑爪
を黒く塗っている子もい
て︑お洒落な子ばかりでし
た︒ノートをきれいに書く
子もいたし︑汚い子もいま
した︒いたって普通なので
すが︑やっていることは偉
いと思いました︒学食で少
し雑談したのですが︑彼ら
のPBLへの感想として
は︑すごく好きだという子
もいれば︑きついという正
直な子もいました︒
今回の視察の意見をまと
め ま す と︑英 国 学 生 は 非 常
に勉学意欲が高く︑すばらし
いと思いますが︑これはその
システムによる所が大きい
か も し れ ま せ ん︒上 記 の 通
り話してみると普通の十八
歳であり︑おそらく家での生
活 も 普 通 な の で し ょ う︒し
かしその勉学への姿勢及び
実際の知識には驚かされま
す︒つまり︑システムによっ
ては︑弘大学生も英国学生の
ようになることは可能だと
思 い ま す︒す で に チ ュ ー ト
リアル授業が弘大でも導入
さ れ て い る の で︑こ れ は 是
非 続 け︑拡 大 し て い く べ き
だ と 思 い ま す︒今 後 自 分 も
学生教育に関与していくこ
と が 多 く な る と 思 い ま す︒
こ の 経 験 を 学 生 に も 教 え︑
且つ自分の教育法にも生か
し て い き た い と 思 い ま す︒
貴重な経験をさせて頂きあ
りがとうございました︒
皆 川 正 仁
国国際
国
際際化
化化教教
教育育
育奨奨
奨励励
励賞賞
賞
︱︱ペ
ペペン
ンンシシ
︱
シルル
ルババ
バニニ
ニアア
ア大大
大学学
学
医医
外外科
科科のの
の視視
視察察
察︱︱
︱
医学学
学部部
部 外
胸部心臓血管外科学講座 講師
二名︵フランス︑英
scholar
国 領 ア イ ル ラ ン ド 出 身︶
とで術者と会話が出来るよ
うに設定されているため︑
ライブ手術のような感覚で
術 者 と 生 徒 が discussion
で
きるような実習もあるとの
事でした︒
授業の形態で︑日本と大
きく異なるのは学生全体に
対する授業より︑チュート
リアル教育が多くを占め
る と い う 点 で す︒ペ ン シ
と ︑ 同 大 学 胸 部 心 臓 外 科 の ル バ ニ ア 大 学 で は problem
レジデント一名にもインタ
と case based
based learning
ビューを行いました︒
があるとの
learning session
手術室見学では︑心臓外 ことでした︒指導教官は教
科手術を見ましたが︑医学 授︑助 教 授︑レ ジ デ ン ト
部 の 実 習 生 ︵ B S L に あ た ︵ teaching resident
︶が 行 う
この度は︑海外の医学部 る︶が時々手術の手洗いに そ う で す︒医 学 部︵四 年
を視察するという貴重な機 入っておりました︒手術は 間︶のうちはじめの一年半
会 を 与 え て 頂 き ︑ 選 考 委 員 基 本 的 に 一 人 の attending は 四 十 〜 五 十 % が こ の よ う
の皆様ならびに関係者の皆
と 一 人 の P A な形態の少人数制の学習で
surgeon
様 に 心 よ り 感 謝 申 し 上 げ ま ︵ physician assistant
︶で執 あり︑後半は七十%を占め
す︒視察に際し︑ペンシル 刀され︑手術の中心となる るようです︒また︑ユニー
バ ニ ア 大 学 胸 部 心 臓 外 科 と こ ろ で assistant professor ク な 授 業 形 態 と し て イ ン
部 門 助 教 授 Dr. Joseph や associate professor
が指導 ターネット発信の授業があ
に 計 ら い を し て 的助手もしくは術者として り︑学生は自宅に居ながら
Gorman III
頂き︑手術室見学ならびに 加 わ る と い っ た 具 合 で し コンピューターの前で授業
外 科 部 門 の ク リ ニ カ ル ・ ク た ︒ 手 術 中 に 学 生 に 対 す る を受けるものです︒インター
ラークシップのチーフ・ディ 質 問 や 指 導 は 少 な く ︑ こ の ネ ッ ト 授 業 と 少 人 数 制 の 教
レ ク タ ー で あ る Dr. Rachel 点 で は 弘 前 大 学 に お け る 手 育 が 主 体 で あ る よ う で す ︒
医 師 に イ ン タ ビ ュ ー 術 室 実 習 の ほ う が よ り 参 加 外科系のクリニカル・クラー
R. Kelz
をすることが出来ました︒ 型の実習と感じました︒後 クシップは十二週間が割り
また︑ Gorman Cardiovascular 日 ︑ Dr. Kelz
に病院実習につ 当てられ︑この間に外科を
の visiting い て 尋 ね た と こ ろ ︑ 病 院 実 八 週 間 ︵ 四 週 間 は 一 般 外 科
Research Group
習中︑一学生 を︑残りの四週間は二週間
が 一 人 の 患 者 ず つ subspecialty
の外科を
さ ん を 担 当 し 回 る ︶︑救 急 を 三 週 間 ︑麻 酔
て︑手術があ 科を一週間回るようです︒
るときには手
博士号︵PhD︶を取得
洗いに入るこ する場合には二年間を要し
ともあるとの ますが︑レジデント︵六年
事 で し た ︒ ま 間 ︶や フ ェ ロ ー︵ 二 年 間 ︶の
た︑別の臨床 期間に二年間臨床を中断し
実習形式とし て研究を行います︒同大学
ては︑講義室 心臓外科のレジデントの医
に 学 生 が 集 師にこの点を聞いたとこ
まって手術室 ろ︑レジデント中には二年
と直結したモ 間の研究の義務があり︑レ
ニターを介し ジデント終了後に臨床を中
て手術を見学 断してPhDを取ろうとす
し︑さらに手 ると︑家族がいる場合︑実
︵次ページへ続く︶
術室と講義室
Dr. Bavaria(左)と
attending surgeon(右)
写真1
医学部ウォーカー第 48 号
平成 21 年 3 月 18 日
ような現状があるのではな
いかと考えさせられました︒
私個人的には︑国が主導
の臨床研修医制度は廃止す
べきで︑医学部卒業生はダ
イレクト入局の上︑大学や
教 室 ︑診 療 科︵ department
︶
主導で何年間かのレジデン
トコースを設け︵この部分
が 義 務 ︶︑ こ の 間 に 各 種 専
門医や︑博士号︵二年程度
の義務的研究期間を設け
る︶を取得させることが出
来るシステムが好ましいの
ではないかと思いました︒
最後に︑改めまして︑この
ような機会を与えて下さい
ましたことに︑心より感謝
申し上げます︒
中 根 明 夫
弘前医学会例会
原
田
伸
彦
す︒評議員会︑一般演題発
表︑特別講演または公開講
座等︑懇親会が予定されて
います︒弘前医学会は専門
性が限られておらず︑医学
に関するさまざまな演題が
発表されます︒これは︑普
段各専門分野の学会では勉
強できない研究成果を聴く
ことのできる貴重な学会で
あると思います︒第九十三
回総会には︑会員並びに関
係各位の皆様の積極的な参
加をお願いいたします︒
脈硬化巣形成が約十%まで
減少していることが明らか
になりました︒これまでの
培養細胞レベルでの解析と
あわせて考えると︑マクロ
フ ァ ー ジ の Nrf2
を介した
の発現誘導が泡沫化
CD36
マクロファージの形成を促
進して動脈硬化症の発症に
寄与していることが示唆さ
れました︒
筑波大学博士課程を修了
後︑伊東健教授の就任に伴
弘前医学会例会
受賞して
いそれまで足を踏み入れた
ことのなかった弘前に来て
から三年目が終わろうとし
ています︒関東地方から離
れたことのなかった私には
大雪と氷点下は全く未知の
世界でした︒研究室の立ち
上げからここまで研究を進
めてこられたのは諸先生方
のご協力ならびにご指導が
あってのことと思い︑心か
ら感謝しております︒
弘前医学会優秀発表賞を
を 用 い た 研 究 に よ り ︑ Nrf2
は血管内皮細胞ではヘムオ
キシゲナーゼ1などの抗炎
症・抗酸化ストレス遺伝子
の発現誘導により動脈硬化
症防御的に︑一方︑マクロ
フ ァ ー ジ で は 酸 化 LDL
を取
秋田大学社会環境医学講座
り込むスカベンジャー受容
法医科学分野 教授 美 作 宗太郎
体 で あ る CD36
の発現誘導
とが本研究の契機となりま
により動脈硬化症促進的に
した︒当初は研究費の獲得
働くことが明らかになって
や保育機関への研究協力の
いました︒しかしながら︑
要請に苦労しましたが︑色
個 体 レ ベ ル で の Nrf2
の動脈
を数値で表すことができる
硬化症への寄与は不明であ
分光測色計という機器を用
り ま し た︒そ こ で 我 々 は
い て︑小 児 が
の動脈硬化巣形成への
Nrf2
日常生活で受
影 響 を ︑ Nrf2
遺伝子欠損マ
ウスを用いて解析しまし
この度︑第百四十六回弘 傷 し た 打 撲 傷
た ︒ そ の 結 果 ︑ Nrf2
遺伝子 前 医 学 会 例 会 に お き ま し による皮膚変
欠 損 マ ウ ス に お い て は Nrf2 て ︑﹁ 小 児 に お け る 打 撲 傷 色 を 数 値 化 す
野生型マウスと比較して動 の客観的診断法の検討﹂と る こ と に 焦 点
いうテーマで発表させて頂 を 当 て ま し
いたところ︑優秀発表賞を た︒こ の 方 法
頂戴致しました︒私は︑前 は 簡 便 で︑小
任の熊本大学勤務中から︑ 児 が 打 撲 傷 を
通常の法医解剖・検案業務 受 傷 し て か ら
の他に︑児童相談所からの 治 癒 す る ま で
要請で被虐待児の損傷検査 の 測 色 値 の 推
を担当して参りました︒し 移 に は 一 定 の
かし︑検査を担当するうち パ タ ー ン が あ
に︑身体的虐待において高 る こ と が 解 明
頻度にみられる打撲傷の診 さ れ︑受 傷 時
断が検査者の経験のみで主 期 の 推 定 に 利
観的に診断されていること 用 で き る 可 能
に疑問を持ち︑客観的な診 性 が 出 て き ま
断方法の必要性を感じたこ し た︒と こ ろ
Lのマクロファージへの取
り込みが泡沫化マクロ
ファージの形成に重要であ
ることが明らかになってい
ます︒これまでの培養細胞
助教
弘前医学会優秀発表賞を
受賞して
分子生体防御学講座
γ
︵感染生体防御学講座 教授︶
この度は︑第百四十六回
弘前医学会例会優秀発表賞
表 し た 原 田 伸 彦 先 生 ︵ 分 子 連 転 写 因 子︵ MITF
︶と エ ン を 賜 り ま し て ︑ 大 変 光 栄 に
生 体 防 御 学 講 座 ︶ と ︑ 小 児 ド セ リ ン 3︵ EDN3
︶の 相 互 存 じ ま す ︒ 選 考 委 員 の 諸 先
の 身 体 的 虐 待 に お け る 打 撲 制 御 を 解 析 し EDN3
が 生を始め関係者の皆様に心
傷の受傷後経過時間の客観
の 活 性 を 制 御 し て い から御礼申し上げます︒
MITF
今 回 は ﹁ 転 写 因 子 Nrf2
的評価を可能にした﹁小児 る こ と を 明 ら か に し た 成
の
に お け る 打 撲 傷 の 客 観 的 診 果 ︑ 佐 藤 先 生 か ら は Down 動 脈 硬 化 症 へ の 役 割 ﹂ と い
断法の検討﹂を発表した美 症候群に伴う一過性骨髄増 う題で発表させていただき
作 宗 太 郎 先 生 ︵ 法 医 学 講 殖 性 疾 患 と そ れ に 続 発 す る ま し た ︒ Nrf2
は第二相異物
座︶が選ばれ︑佐藤敬会長 急性巨核芽球性白血病にお 代 謝 酵 素 や ヘ ム オ キ シ ゲ
から表彰状と記念メダルが ける非レセプター型チロシ ナーゼ1などの一連の生体
贈呈されました︒
ン キ ナ ー ゼ JAK3
変 異 の 遺 防御遺伝子の発現を制御し
優秀発表賞授賞式に引き 伝 子 及 び そ の 機 能 解 析 を ています︒動脈硬化巣形成
続き︑第十三回弘前大学医 行った成果が講演されまし 初期についてですが︑血管
学学術賞の記念講演が行わ た︒引き続いて︑学術特別 の炎症性変化に伴う血中単
れ ま し た ︒ 最 初 に 学 術 奨 励 賞 受 賞 者 と し て ︑﹁ 生 体 内 球 の 血 管 壁 へ の 浸 潤 と そ れ
賞 受 賞 者 と し て ︑﹁ ワ ー ル 糖 鎖 の 構 造 と 機 能 に 関 す る に 引 き 続 き お こ る 酸 化 L D
デンブルグ症候群とその他 研 究︵医 学 応 用 を 目 指 し
色 素 疾 患 に お け る MITF
と て ︶ で 受 賞 し た 柿 崎 育 子 先 に お い て PPARリ ガ ン ド
エ ン ド セ リ ン シ グ ナ ル の 関 生︵ 糖 鎖 工 学 講 座 ︶と﹁ 血 管 と COX‑2
阻害剤として使用
係 ﹂で 受 賞 し た 神 可 代 先 生 新 生 阻 害 を 標 的 と す る 進 行 さ れ て い る 薬 剤 に 腫 瘍 抑 制
︵ 皮 膚 科 学 講 座 ︶と﹁ Down 卵 巣 癌 の 新 規 治 療 法 の 開 発 効 果 が あ る こ と を 見 い だ
症候群に伴う一過性骨髄増 で 受 賞 し た 横 山 良 仁 先 生 し︑ヒトにおいても抗癌剤
殖性疾患および急性巨核芽 ︵産科婦人科学講座︶の二 との併用あるいは休眠療法
球 性 白 血 病 に お け る JAK3 人 の 講 演 が あ り ま し た ︒ 柿 へ の 応 用 の 可 能 性 に つ い て
遺伝子変異の機能解析﹂で 崎先生は︑複合糖質プロテ 講演されました︒
次回の第九十三回弘前医
受賞した佐藤知彦先生︵小 オグリカンとその糖鎖成分
児科学講座︶の二人の講演 の構造・機能解析や構造解 学 会 総 会 は︑北 五 医 師 会
がありました︒神先生から 析法の長年の研究成果とこ ︵田中正彦会長︶の担当で
︑
は ワ ー ル デ ン グ ル グ 症 候 群 れ か ら の 展 望 に つ い て 講 演 平成二十一年七月四日︵土︶
のそれぞれⅡ型とⅣ型の原 されました︒横山先生は︑ 五所川原市のプラザマリュ
因遺伝子である小眼球症関 実験的卵巣癌マウスモデル ウ 五 所 川 原 で 開 催 さ れ ま
平成二十年度庶務幹事
回弘前医学会例会報告
146
第百四十六回弘前医学会
例会が循環呼吸腎臓内科学
講座と感染生体防御学講座
の担当で︑平成二十一年一
月三十日︵金︶午後一時三
十分から医学部コミュニ
ケーションセンターで開催
され︑一般演題十五題と第
十三回弘前大学学術賞受賞
講演四題の発表が行われま
した︒今回は一般演題が十
五題に達し︑久しぶりに二
会場での開催となり︑学外
からも三演題︑保健学研究
科からも一演題が出されま
した︒A会場で七演題︑B
会場で八演題の発表が行わ
れ︑日頃の研究成果とそれ
に対する活発な討論が繰り
広げられました︒一般演題
終了後︑恒例の優秀発表賞
について︑蔵田潔審査委員
長︵統合生理学講座教授︶
から受賞者の発表と講評が
なされました︒今回の例会
では︑生体防御遺伝子の発
現を制御する
の遺伝子
Nrf2
欠 損 マ ウ ス を 用 い て Nrf2
の
動脈硬化巣形成への関与を
解 析 し た ﹁ 転 写 因 子 Nrf2
の
動脈硬化症への役割﹂を発
第
際のところ収入の面でつら
い︑と話していました︒日
本では︑現在︑二年間の臨
床研修医制度が義務化で
︵今後一年間に短縮を検討
中 ︶︑ さ ら に 後 期 研 修 制 度
も選択可能と言う現状で
は︑大学院を希望する医師
が減少していることも似た
︵前ページより︶
平成 21 年 3 月 18 日
医学部ウォーカー第 48 号
が︑症例を集めるにつれて
データにバラツキが目立つ
ようになり︑皮膚変色の原
因としての皮下出血そのも
のを評価する必要性を痛感
したため超音波診断装置を
導入しました︒その後も試
行錯誤を重ねながら研究を
続けてきたところ︑弘前大
学に着任してからは科学研
究費の配分にも恵まれて︑
昨年は研究成果の一部を国
際学会で発表し︑国際雑誌
に投稿する段階にまで漕ぎ
着けました︒今回は︑これ
まで研究内容を体系的に発
表する機会がなかったため
に︑学内外の多くの方々に
研究を紹介する意味でも︑
まだ研究途上ではありまし
たが弘前医学会で発表させ
て頂いた次第です︒弘前医
学会例会の数ある最先端の
医学研究発表の中で︑この
ような地味で小規模な研究
発表にスポットライトを当
てて頂いたことに感謝致し
ますとともに︑今後も優秀
発表賞の名に恥じぬよう︑
更に同研究を継続していき
たいと思っております︒
講師
六番目と早くに設置されま
した︒
医学科学生の教育は︑四
年次後期八コマの講義を
行っており︑未だ一般的に
もあまり浸透していない︑
﹁形 成 外 科 は 何 を す る 科
か?﹂というところから授
業しています︒BSLやク
形成外科
井
克
憲
リニカルクラークシップな
どの実習では︑形成外科手
術の奥深さ︑奇抜さ︑そし
て楽しさを余すところなく
教えて︑少ない形成外科医
が︑少しでも増えるよう努
力しています︒
専門医教育では︑当教室
で形成外科学会認定専門医
と熱傷学会認定専門医の認
定施設を取得しており︑専
門医の育成にも力を入れて
います︒
教室での研究は︑臨床の
場で生じた疑問を︑より追
求し︑臨床にフィードバッ
クできることを目標に行っ
ています︒主な研究テーマ
は︑皮弁血行動態の解明︑
褥瘡の治癒機転の解明︑耳
介への移植軟骨再生の研
究︑新しい創傷被覆材の開
発︑瘢痕・ケロイドの治療
法の開発︑顔面の種々の局
所皮弁開発などです︒
形成外科の診療とは︑外
傷や腫瘍切除による変形
を︑さまざまな手術方法を
駆使して元の状態に近づ
け︑より目立たなく縫合す
るものです︒外傷や手術に
よる瘢痕は患者が直接目に
する部分であり︑精神的な
意味も含めてQOLの向上
に大きく関わっています︒
形成外科で扱う疾患は︑
大きく三つに分類されます︒
横
形 成 外 科 学 講 座
形成外科学講座の歴史
は︑附属病院皮膚科の中で
の形成外科診療班から始ま
り︑昭和五十七年に附属病
院形成外科新設︑そして平
成七年に形成外科学講座が
新設されました︒比較的新
しい講座ですが︑全国の旧
国立大学形成外科の中では
医学部ウォーカー第 48 号
平成 21 年 3 月 18 日
1.外傷︑外傷後変形
体 表 の 外 傷︑熱 傷 を 扱 い ︑
顔面では骨折も治療しま
す︒外傷や熱傷後に生じた
瘢痕拘縮︑肥厚性瘢痕によ
る機能障害の改善︑整容面
の改善は形成外科の主要分
野です︒
2.腫瘍︑腫瘍切除後再建
主に皮膚︑皮下腫瘍の切
除︑および切除後欠損を皮
膚移植や各種の皮弁を用い
て再建します︒
最近︑他科から依頼され
る再建術が増えており︑頭
頚部腫瘍切除後のマイクロ
サージェリーを用いた各種
皮弁による再建などを手が
けています︒
3.表在性先天異常
体表の異常は形成外科で
扱いますが︑当科では特に
唇裂︑口蓋裂に力を入れて
います︒唇裂口蓋裂は言語
や咬合とも関連し︑言語聴
覚士︑矯正歯科医と連携し
たチーム医療を行っていま
す︒また︑耳介変形や唇裂
鼻変形に対する矯正装具を
当科オリジナルの方法で作
成︑使用しており︑良好な
結果を得ています︒
現 在 ︑形 成 外 科 で は ︑月 ︑
水 ︑金 は 外 来 診 療 ︑火 ︑木 は
手術を行い︑これと平行し
て病棟診療を行っていま
す︒この他に他科からの依
頼の再建手術や外傷などの
急患には随時対応しており
各発表につき三名の教員が
審査を行いました︵各教員
は十名の審査を行う︒今回
は二十四名に審査員を依
頼 ︶︒ 審 査 は ︑ ① パ ワ ー ポ
イ ン ト の 内 容︵ 三 十 点 ︶︑②
口 演 の 態 度 ︵ 三 十 点 ︶︑ ③
質問に対する答え方︵三十
点︶について評価し︑各教
員は十演題の中から印象に
残った発表を三つ選ぶ
︵ボーナス点を十点加算︶
という方法で行い︑上位三
名に優秀発表賞を贈呈する
こ と に し ま し た︒全 般 的
に︑パワーポイントの作り
方には慣れており︑その内
容は甲乙つけがたいもので
した︒一方︑演壇に立って
発表することに慣れていな
いせいか︑かなり緊張した
孝 一
ます︒
形成外科は︑海外では形
成再建外科という名前が一
般的であり︑
﹁ 再 建 ﹂が 主 な
仕事です︒さまざまな欠損
をさまざまな組織を用いて
再建していくわけですが︑
個々の患者で同じ形の欠損
などなく︑それぞれに最も
適切な方法を考えていかな
ければなりません︒また︑
その結果は直接見ることが
できるため︑患者の満足度
に大きく影響します︒それ
ゆえ︑形成外科はやりがい
のある仕事であり︑教室員
一同︑より質の高い医療を
提供できるよう日々努力し
ています︒
若 林
表情の学生が多く見受けら
れました︒さらに︑審査員
やフロアからの質問に対し
ては︑研修内容を理解し良
く答えた学生から︑ほとん
ど答えられなかった学生ま
で 幅 が 見 ら れ ま し た︒ま
た︑二人の学生は発表を英
語で行いました︒
審査の結果︑今回は以下
の三演題が優秀発表賞に選
ばれました︵発表順︒カッ
コ 内 は 配 属 講 座 ︶︒ 小 山 石
隼﹁GISTの個別化治療
に向けたKIT細胞質内領
域 蛋 白 の 合 成 ﹂︵ 分 子 病 態
病 理 学 講 座 ︶︑ 湯 沢 健 太 郎
﹁ヒアルロニダーゼ固定化
カラムを用いた糖転移反応
の 検 討 ﹂︵ 糖 鎖 工 学 講 座 ︶︑
津 島 隆 太﹁弘 大 緩 和 ケ ア
脳神経病理学講座 教授
研究室研修
優秀発表賞について
平成十五年度まで四年次
前期に実施していた研究室
研修が平成十八年度から三
年ぶりに復活し︑三年次後
期 ︵ 火・水・木 の 午 後 ︶に 行
うことになりました︒さら
に︑昨年度から研究室研修
発表会を復活しました︒今
年は三年次学生七十四名
︵学士編入学を除く︶が︑
受け入れ希望のあった三十
四講座のいずれかにおいて
十月から一月まで研修を行
いました︒
発表会は一月二十七日か
ら二十九日の午後に基礎大
講堂で行い︑昨年と同様に
優秀発表賞の審査も行いま
した︒今回も学生一人あた
りの持ち時間を八分︵発表
五 分 ︑質 疑 応 答 三 分 ︶と し ︑
チ ー ム の 通 信 簿 ﹂︵ 麻 酔 科
学 講 座 ︶︒ さ ら に ︑ 以 下 の
五名は優秀発表賞に準ずる
成績でした︒山口公大︵ゲ
ノ ム 生 化 学 講 座 ︶︑ 小 林 明
恵 ︵感 染 生 体 防 御 学 講
座 ︶︑今 野 将 人︵ 皮 膚 科 学 講
座 ︶︑平 仁 田 長 美︵ 脳 神 経 生
理 学 講 座 ︶︑村 上 健︵ 産 科
婦 人 科 学 講 座 ︶︵ 順 番 は 発
表 順 ︶︒ 優 秀 発 表 賞 に 選 ば
れた三名はどれもすばらし
い発表で高得点を獲得しま
した︒小山石君は研究内容
が優れており質問にも的確
に答えていたこと︑湯沢君
は発表内容が具体的でわか
りやすかったこと︑津島君
は発表も質問も自分の言葉
で語り説得力があったこと
が受賞理由と思われます︒
なお︑授賞式が三月四日に
医学部長室で行われ︑佐藤
医学部長から三名の学生に
優秀発表賞が贈呈されまし
た ︵ 写 真 ︶︒
最後に︑四ヶ月にわたり
学生を受け入れ指導してい
ただいた担当教員ならびに
今回審査を担当して下さっ
た教員の方々に心より感謝
申し上げますとともに︑来
年度もご協力を賜りますよ
う宜しくお願い申し上げま
す︒
平成 21 年 3 月 18 日
謙
教授︶
教授)
チュートリアル・ベストシナリオ賞
贈呈式が行われる
難いこと︑これらが一連と
なって大きなキャリアとな
り︑さらなる発展につなが
るなど︑熱く︑楽しく話し
た︒学生はこれから医師と
なり︑よるべなき患者の友
となるとともに日々進歩す
る医学を学び︑最新の医学
とエビデンスを身につけ︑
さらに言えば医学の発展に
も何らかの形で貢献して欲
しい︒一人ひとりが大きな
可能性を秘めており︑能力
を十分に発揮するためにも
キャリアを積んで欲しいと
願う︒
(感染生体防御学講座
夫
明
根
中
チュートリアル教育実施委員会委員長
学務委員会特別講義
しては︑まず医師免許が大
前提であり︵最近は臨床研
修 修 了 証 も 加 わ る ︶︑ 各 学
会の認定専門医や医学博士
の学位︑産業医や各インス
ト ラ ク タ ー 等 の 資 格︑国
内・国外留学および研修︑
診療実績︑大学・研究期間
等での活動実績︑役職︑学
会活動と役職等がある︒弘
前大学医学部を卒業後︑上
記のキャリアを身につけな
がら自らを高め︑持てる能
力を最大限に発揮し︑より
良い医師として人生を送っ
て欲しい︑そういう願いか
ら企画した特別講義であ
る︒昨 年 度 か ら 開 始 し た
が︑第 一 回 目 と 同 様 に 奥
村︑大山力教授︑鬼島宏教
授の学務委員三名が各々の
履歴とともにこれまで積み
重ねてきたキャリアを学生
に紹介し︑その意義と重要
性を米国留学中の写真など
を呈示するなど楽しく︑具
体的に︑わかりやすく学生
に話した︒平日のBSL終
了後であったが︑五年次学
生の多くが出席した︒通常
の講義とはまったく違う内
容で︑各教授の人生談もあ
り︑また卒業を一年後に控
え︑将来の進路を思案中だ
けに学生の関心は高いよう
であった︒
三名の講師はいずれも医
師︑医学者としてどのよう
に研鑽してきたか︑大学病
院や市中病院︑医学部︑研
究機関などを行き来するこ
とで多くを学び成長できた
こ と︑海 外 留 学 は 苦 労 も
あったが楽しい思い出を多
く残せたこと︑そして研究
成果が評価され︑一流の学
術誌に掲載されたときの喜
びと充実感は何物にも代え
学務委員長 奥 村
︵循環呼吸腎臓内科学講座
プロの医師のための
キャリアパス
第2回
五年次BSL学生を対象
とし︑平成二十一年二月十
三日午後五時より学務委員
会主催でキャリアパス特別
講義を行った︒キャリアパ
ス と は ︑﹁ 仕 事 の 経 験 を 積
みながら次第に能力を高く
する順序であり︑あるいは
その目的のために職場を異
動する経歴のこと﹂と定義
される︒医師のキャリアと
医学部ウォーカー第 48 号
チュートリアル教育は六
年 が 経 過 し︑昨 年 同 様
チュートリアル第三期生が
二 十 年 度 後 期 第 一・第 二
クールでチューターを務
め︑延べ二十人の六年次学
生が担当しました︒また︑
チューターには学士編入学
学生が多く加わりました︒
昨年同様︑チューター担当
学生はティーチングアシス
タントとして佐藤医学部長
よ り 辞 令 が 渡 さ れ︑学 生
チューターへの期待が述べ
られました︒二十年度前期
第一クールで︑加藤弘之教
授にチュートリアルのト
レーニングを行っていただ
いたことは以前報告しまし
たが︑その後のチュートリ
ア ル に お い て︑い わ ゆ る
﹁ハワイ大学式チュートリ
アルの弘前大学版﹂が学生
に定着し実践されたこと
は︑チュートリアル教育の
大きな改善点ともなりまし
た︒た だ︑毎 年 み ら れ る
学生のチュートリアル授
業に対するマンネリ化は
相変わらずの問題点で
す︒一方︑昨年度同様︑医
学科図書委員会から図書費
を頂戴し︑チュートリアル
教育を経験した学生有志と
チュートリアル教育実施委
員会のコア委員及びチュー
トリアル教育を受けている
三 年 次 学 生 に お 願 い し︑
チュートリアルをはじめ
医学教育に関する図書を
選 定 し て も ら い ま し た︒
教員と学生が一体となっ
て︑弘 前 大 学 医 学 部 医 学
科の教育に即した魅力あ
るチュートリアル教育の
改 善 に 向 け︑さ ら に 努 力
していきたいと思いま
す︒今 後 と も チ ュ ー ト リ
アル教育に対するご理解
とご協力をお願いいたし
ます︒
優秀シナリオの
表彰
第六クールおよ
び第七クールで学
生が作成したシナ
リオとチューター
ガイドをチュート
リアル教育実施委
員会のコアメン
バーが評価を行
い︑二 十 五 編 を 推
薦 し ま し た︒さ ら
に第二段審査で優
秀シナリオ三編を
選びました︒
青森医学振興会
のご支援をいただ
き︑三 月 四 日 医 学
部 長 室 に お い て︑
作者に図書券が贈
呈 さ れ ま し た︒学
生が作成したシナ
リオはさまざまな
視点から作成され
て お り︑今 年 度 も
優 秀 な シ ナリオが
多く出されまし
た︒
⁚⁚⁚⁚⁚⁚⁚⁚
シナリオ優秀賞
︵五十音順︶
相吉 翼 君
﹁会 社 員 の A さ
ん︵ 三 十 二 歳 ︶は 単
身赴任で東京に家族を残
し︑弘 前 市 の 古 い 木 造 ア
パートに一人で暮らしてい
ました・・・﹂
青木義紘 君
﹁小 学 一 年 生 の タ ク ヤ く
んは︑みんなと一緒にサッ
カーをするのが大好きな少
年です︒・・・﹂
斎藤絢介 君
﹁大 阪 か ら 冬 休 み を 利 用
して克夫君︵八︶は父親の
益雄︵三十三︶と母親の多
恵子︵三十二︶と一緒に父
親の実家のある八戸にか
えってきました・・・﹂
あ る︒そ の 大 き な 原 因 は バ
イオテロに関わると考えら
物が手に入らない!
医 学 部 に 限 ら ず︑理 系 の
大学はいろんな化学合成
物︑天然物質を︑試薬︑薬品
と し て 教 育︑研 究 の た め に
必 要 と す る︒最 近︑試 薬 等
の値段が上がったのみなら
ず︑一 部 の 試 薬 が 手 に 入 ら
ないという事態がおきつつ
の自国生産と管理が必要で
は?
れる化学物質を︑欧州︑アメ
リカが輸出禁止措置をとっ
て い る こ と に 起 因 す る︒も
しその化合物を日本国内で
作っていなければ︑その化合
物を使った検査︑実験︑研究
はすべて止まる︒ワクチン︑
食料だけでなく︑科学技術立
国に値するいろんな分野で
平成
年度
奥
村
謙
藤
敬
遠藤正彦先生から
河北文化賞副賞 万円が
寄附される
佐
100
・1︶
●大学院医学研究科
・
・
明夫
・
︶
附属動物実験施設長
併任︵
中根
採用︵
山口
・1・1︶
公 平 ︿医員﹀
消化器血液内科学講座
採用︵
紀孝
助手
神経解剖・細胞組織学講座 教授
一戸
助教
︿独立行政法人理化学研究所﹀
広 一 ︿むつ総合病院﹀
循環呼吸腎臓内科学講座
及川
・2・1︶
副研究科長
併任︵
・1︶
五 月 ︿医員﹀
助教
・
●附属病院
採用︵
皮膚科
12
弘前大学大学院医学研究
科教授︵放射線科学講座︶
阿部由直氏には︑平成二十
一年二月九日御逝去されま
した︒享年五十八歳
ここに︑謹んで哀悼の意
を表し御冥福をお祈りいた
します︒
お悔やみ
池永
20
節分の豆まきを終え︑春
奥村
謙
を迎える準備を始めようと
副学部長
した矢先に︑放射線科学講
奥村
謙
座教授 阿部由直先生の訃
辞職︵ ・2・ ︶
報を耳にしました︒寄せら
法医学講座 准教授
れました追悼文を読んでい
美 作 宗 太 郎 ︿秋田大学﹀
ただければ︑阿部先生の存
在がいかに偉大なもので
お知らせ
あったかが理解されます︒
医学部ウォーカーへ教授 万泣に伏すのではなく︑弘
感謝申し上げるものです︒ 就任ご挨拶を掲載希望の方 前 大 学 の 将 来 を 見 据 え︑
医学研究科としては︑その は︑弘前大学医学研究科総 各々が医学研究科の発展に
ご厚志に報いるべく︑有効 務グループ︵総務担当︶ま 尽力することが︑阿部先生
に 遣 わ せ て 頂 く と と も に ︑ で ご 連 絡 願 い ま す︵ 0172‑39‑ の 遺 志 を 継 ぐ こ と で あ ろ う
︶︒ た だ し ︑紙 面 の 都 合 と 思 い ま す ︒ 話 変 わ り ︑ 節
研究のますますの発展を期
5194
する決意を新たにしたいと により掲載ができない場合 分 と い え ば 豆 ま き で あ る
もございますので︑あらか が︑弘前市の鬼神社では︑
思います︒
じめご了承願います︒
﹁ 鬼は農耕を助く力強き存
在 ﹂で あ り ︑
﹁ 鬼 は う ち ︑福
は う ち﹂と 豆 を ま く そ う
弘前大学医学部
だ︒鬼の末裔の小生にとっ
ては︑うれしい限りの解釈
である︒弘前大学という大
地を力強く耕し︑人材育成
という実りをもたらすこと
が我々に課せられた課題の
臨床准教授
ひとつであろう︒不断の努
丹代
諭 ︵大館市立総合病院小児科副部長︶
力が︑着実な成果を実らせ
平成二十一年一月一日〜平成二十三年十二月三十一日
ると信じ︑四月からの新年
度も新たな気持ちで頑張り
たい︒
︵鬼島 記︶
医学研究科長
こ の 度︑遠 藤 正
彦 先 生 か ら︑医 学
研究科に河北文化
賞の副賞百万円全
額をご寄附頂き︑
一月二十六日に医
学研究科長室にお
いて贈呈式が行わ
れました︒
これに先立つ一
月 十 七 日 に は︑仙
台市において第五
十八回河北文化賞
の贈呈式があり︑
遠 藤 先 生 は﹁バ イ
オ技術に新しい道
をひらく糖鎖工学
の 研 究﹂で 東 北 の
学 術 を 対 象 と し た 賞 を︑
︵財︶河北文化事業団から
受賞されたものです︒その
詳細は新聞報道に譲ります
が︑当日は︑河北新報社と
東北放送の役員をはじめ︑
宮城県の名士の方々が三百
人以上出席して盛大な式典
が執り行われました︒推挙
者として佐藤も出席させて
頂きましたが︑河北文化賞
の伝統と権威を改めて認識
する機会でした︒本学から
は ︑ 平 成 七 年度の吉田 豊先
生︵大腸がん集団検診方法
の 確 立 に 寄 与 ︶ 以 来の受賞
となりました︒
遠藤先生には︑その副賞
百万円全額を医学研究科に
おける研究推進のためにご
寄附頂いたもので︑心より
12
12
学士編入学教育セミナー
学務委員長
は︑カリキュラムにまだ改
善の余地があるものの学習
効果としては期待通り︑ま
たは期待以上の成果が得ら
れていると言えよう︒最後
に平成二十二年度から実施
される二年次後期編入学制
度について討論した︒入学
しにくくなる可能性も危惧
されるが︑学生の理解は容
易となり︑また優秀な学生
︵現在も優秀であるが︶も
入学するようになるだろう
との意見があった︒
支援を賜りますよう︑切
に お 願 い 申 し上げます︒
なお︑入会方法等の詳細
に つ い て は︑ 弘 前 大 学 総
務 部 総 務 課 広 報・支 援 グ
ル ー プ︵ Tel : 0172‑39‑3012
︑
E‑mail : [email protected]
︶ま で ご 連 絡 い
ki‑u.ac.jp
ただくか︑弘前大学後援
会 ホ ー ム ペ ー ジ︵ http://
www.hirosaki‑u.ac.jp/kou
︶をご覧く
en/ index.html
ださい︒
16
臨床教授・臨床准教授
称号付与者
28
もあった︒
成 績 に つ い て は︑二 年
次︑三年次︑四年次のいず
れの科目も編入学学生の成
績は通常入学生と差がな
く︑むしろ平均点で比較す
ると良好な傾向すら認めら
れた︒このことは四年次後
期に実施される共用試験
︵CBT︶の結果によく反
映 さ れ︑二 〇 〇 六 年 度 以
降︑編入学学生の平均点は
通常入学生よりも多少であ
るが上回っていた︒すなわ
ち本学の学士編入学制度
弘前大学
後援会のご案内
弘前大学後援会では︑
学生の学業︑課外活動へ
の助成︑学生の進路指導
に必要な助成等学生生活
の多岐にわたる分野の助
成を行っております︒つ
きましては︑何卒本会の
趣旨に御賛同頂きまして︑
各位の格別の御高配︑御
20
20
21
21
21
︵循環呼吸腎臓内科学講座 教授︶
心とする教員が参加した︒
医学教育センターが前もっ
て編入学学生の履修状況や
進級状況等をアンケート調
査し︑その結果に基づいて
学士編入学教育のあり方︑
改善点等について討論し
た︒
編入学学生が三年次に履
修すべき講義・実習数は通
常入学学生と同様に一日四
〜五コマであるが︑通常入
学学生がPBLや研究室研
修など比較的ゆとりがある
のに対し︑編入学学生は専
門 科 目 講 義 と 実 習︵生 理
学︑生化学︑病理学︑解剖
学︑細菌学など︶がほとん
どで︑とくに後期末は試験
勉強もあり︑かなり消耗す
るとの意見が多く聞かれ
た︒一年間で通常入学生の
履修内容に追いつかなけれ
ばならず︑三年次と四年次
の二年間で臨床実習前の専
門科目をすべて履
修することのハー
ドさが改めて認識
された︒この他︑
授業・実習の順序
に起因する問題点
も指摘された︒例
えば︑病理学実習
が組織学実習より
先であるため理解
しづらく︑何らか
の対策を講じるべ
きと考えられた︒
一方でカリキュラ
ムに多少無理があ
るものの概ね履修
しやすいとの意見
青森医学振興会
社団法人
20
平成十五年度より導入さ
れた医学部医学科三年次学
士編入学制度は平成二十年
度で六年目を迎え︑一期か
ら六期まで合計百二十名の
編入学学生を受け入れてき
た︒当 初 は︑以 前 の 二 年
次︑三年次カリキュラムと
ほぼ同じ内容を三年次一年
間で履修する必要があった
ため︑編入学学生には負担
が相当大きかったと思われ
る︒これを改善するために
カリキュラムの見直し︑再
構築を行ってきたが︑編入
学学生がより学びやすく︑
そして医学部学生生活を楽
しめるようにするにはどう
すればいいかなどを検討す
る目的で︑昨年度より学士
編入学教育セミナーを開催
した︒第二回となる今回は
平成二十一年二月二十六日
午後六時より︑主として三
年次編入学学生と教授を中
医学部ウォーカー第 48 号
平成 21 年 3 月 18 日