MBA EOB 2012 7 世代継承性とリーダーシップ

EOB2012 Day4§7
世代継承性とリーダーシップ
2012年6月2日
金井壽宏
1
TKANAI
ある交流型の研修のテーマ
(非常によく練られていた)
1.夢を語る
2.壁を知る、壁を越える
3.(夢を)あきらめない
4.(小さく)まとまるな
5.軸・志を持つ
2
TKANAI
1
原理・原則(持論)があっても、それを
もってめざすべき星、夢がなかったら
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3
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幼いときの夢
小学校のときの夢
中高のときの夢
学生時代の夢
入社直後の夢
一人前になりかけたころの夢
管理職になったときの夢
中年だと思い始めたころの夢
TKANAI
中年の語感
4
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この言葉を聞くとわくわくしますか。
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なにを連想しますか。
TKANAI
2
人生を太陽の動きになぞらえると
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紙を一枚、使って、半円を描こう
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今どこにいるか ○を入れる
どこに戻りたいか ★を入れる
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TKANAI
和智正忠さんの生き方
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簡単なストーリ
成し遂げてきたこと
ひとを見る目
若いひとも含め、慕われて
– 
バリー・ビットマン、東京医科歯科大学
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今、さらに成し遂げつつあること
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金井が考える 「世代継承的夢(generative dream)」
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TKANAI
3
村上輝久さん(1929年
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7
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こどものころ お父さん 楽器
鉄道
調律師
札幌
銀座
静岡
ミケランジェリ タローネ
リヒテル
TKANAI
佐渡 裕さん(1961年
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)の生き方
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)の生き方
この両親のもとで
フルート 芸大
散髪屋
タングルウッド バーンスタイン、小澤
ブザンソン国際指揮者コンクール
PMFOのレジデント
フランス、イタリア、首席客演指揮者
1万人の第九コンサート
TKANAI
兵庫県芸術文化協会芸術監督(音楽)就任
4
コミュニケーションの問題としてのモティベー
ション・プロセス
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緊張系 危機感に訴える
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希望系 夢・ビジョンをしっかり語る
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関係系 つながりあうためには、話し合う
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持論 リーダー格のひとが持論を語る。
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TKANAI
人生の正午で
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旅をやめるひとと
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よりスケールの大きな旅に出るひとがいます
TKANAI
5
夢の現実吟味
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夢なんて実現しないよ、というときの夢と
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夢しか実現しないよ、というときの夢
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TKANAI
さて、それでは皆さんの夢
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【事前課題リフレクション・レポート6】20代のひと
には、やや難しいのを承知のうえでの事前課題
ですが、このメモをみれば、自分なりの世代継承
的夢を語れそうだという素材をメモしてきてくださ
い。
TKANAI
6
一皮むけた経験、各段階の夢も内省
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世代継承性は、【リーディング1】で取り上げた漸
成説における一段階の発達課題です。わたし自
身は、ミドルのころにもう中年なのでと衰退しは
じめるとひとと、それまでの蓄積を生かしながら、
さらにスケールの大きなことを実現するひとと二
極分化しているように思われるときがあります。
13
TKANAI
つづき
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後者の道がEOBでの道標です。ひとりではでき
ないほどスケールの大きいひとを、他の人々を
巻き込み、そのひとたちにも使命感を与え、かつ
そのひとたちも育てながら、成し遂げていく、しか
も、その結果生まれたものがつぎの世代にも喜
ばれるようになれば、もう畢竟の「世代継承性発
揮」です。
この問題は、男性と女性とで見方が違うところ
があろうかと思いますので、クラスではそのこと
TKANAI
についても議論したいです。
7
手をあげにくいかもしれませんが、
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リーディング6でいう世代継承的夢にかかわる
「一皮むけた経験」を聞かせらえばと思っており
ます。 15
TKANAI
キャリアの節目、モティベーションの自己調整
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節目で夢の現実吟味
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やる気の自己調整
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キャリアの節目を彩るの
は不安と夢
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自己調整の引き金に、緊
張と希望
TKANAI
8
不安と夢、緊張と希望のペアのもつ意味
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ダニエル・ギルバート『幸せは、いつもちょっと先
にある』早川書店。前頭葉の損傷。
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Later 先のことを。
TKANAI
コエーリョ自身がもらしたねらい
夢に向かう勇気・元気 それへのハードル
(1)人生に望むものを手に入れるのは、夢みたい
で不可能だといわれる
(2)自分のやりたいことをするために夢を追求す
れば、周囲のひとたちを傷つけると思ってしまう
(3)途中で挫折したらどうしようという恐怖感
(4)これまで一生かけて追い求めてきた夢を実現
するのが怖くなってしまう
18
TKANAI
9
安藤忠雄先生の言葉(最近の手紙も)
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「若いときに、打ち込むことがなかったら終わりやで」(東
大教授をしてとき学生に)
「中年になって、緊張感失ったり、闘わなくなったりしたら、
終わりやで」
理解を示すのがリベラルに見えると思って、若いひとに、
あれもOK、これもOKという間違いについて、「ガンクロな
んか、ほんまに、あれも個性でいいと思いますか。理解
を示すのが文化人だと思っているひとがいますが、わた
しなら、ガンクロなんかいっぱい集めて船に乗せて、沖に
出て、ボチャーンと、....」
人生の目的とは旅をすること(アルケミスト)、わたしに
とって建築家としてのキャリアの旅だった(安藤忠雄)
TKANAI
Q ひとは、放置しておいても、希望や
幸せを求めるものか
Q われわれのディフォー
ルト値は、元気で希望に
満ちているのか
20
TKANAI
10
人間は、幸せを求めているというが、
不幸せを求めている節がある
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「希望を抱いて旅をする方が、到着してしまうより素晴ら
しい(It is better to travel hopefully than to arrive)」(ロ
バート・L.スティーブンス)
「人生には二つの悲劇がある。ひとつは心から望むこと
に達せないことであり、今ひとつはそれを得てしまうこと
だ(There are two tragedies in life. One is not to get
your heart’s desire. The other is to get it.)」(ジョージ・
バーナード・ショー)
「わたしたちは、いつも一番愛するものを破壊してしまう」
(オスカー・ワイルド)
TKANAI
曇っているままのほうが、希望がある
たどり着かないからこそ、希望がもてる
加藤一郎さんのキャリア研究 「キャリアに霧がかかっていると希望が
感じにくいが、霧が晴れると、希望がなくなってしまう‐‐霧があるから
こそ、希望がある
l  「希望を抱いて旅をする方が、到着してしまうより素晴らしい(It is better
to travel hopefully than to arrive)」(ロバート・L.スティーブンス)
l  「人生には二つの悲劇がある。ひとつは心から望むことに達せないこと
であり、今ひとつはそれを得てしまうことだ(There are two tragedies in
life. One is not to get your heart’s desire. The other is to get it.)」
(ジョージ・バーナード・ショー、あるいはオスカー・ワイルド )
l  「到着駅を目指さない永遠の旅行者のライフ・スタイル(the life style of
eternal traveler who is careful not to arrive」 (A.アドラー)
l  「道が長くあるように祈りたまえ――と彼が旅人に勧める。そうすれば体
験と冒険が多かろう(Pray that the way be long, he counsels the
seafarer, that your journey be full of adventures and experiences」
(古代ギリシャ『イサーカ』)
組織変革なんか、目標までたどり着いてしまわないほうがいいとどこかで
願ってしまっている。
TKANAI
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11
フロイトとユング 面白い対比いっぱい
しかし、ともに45歳以降に個性化
フロイト
人生の前半に注目
神経症の研究
自分も神経症
性のエネルギー、リビドー
かわいそうな自我
個人の無意識
夢=個性化された神話
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ユング
人生の後半に注目
分裂病の研究含む
中年の危機のとき自分も
中心にセルフ
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集合的無意識、神話、元型
神話=脱個性化された夢
最後の1行はキャンベル
TKANAI
生涯キャリア発達とリーダーシップ開発
会社という組織のなかに入ってから
Individual contributor 担当者(一般社員として、与えられた
課題をこなす)
l  Manager(はじめて部下を持つころ、絵や夢は与えられる;仕
組みを使う)
l  Leader(たとえば、事業経営者として、その事業部の将来像
=夢を描き、その実現のために人びとを巻き込む;仕組みを
壊す、創る)
営業の達人の発達と、営業所長、営業統括本部長(さらに、ある
製品分野の事業部長、さらには社長になるまでの、キャリア
TKANAI
発達とリーダーシップ開発
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12
キャリア発達の節目と夢の現実吟味
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子どものころの夢
思春期(もはや子どもではないが大人でもない時期)の
夢
学生時代の夢
就職活動するときの夢
中年のときにまた姿を現す夢 (Levinson, D.)
停年退職したらやりたいと思っている夢
いくつになっても夢
現実吟味(reality-testing)との関連
金井壽宏『働くひとのためのキャリア・デザイン』PHP新書。
TKANAI
成熟した大人(たとえば40代50代のひと)に
「キャリア(や人生)の節目は?」と聞くと
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チーフや係長になったと
き
はじめて部下を(ひとりで
も)もったとき
結婚したとき
第1子が生まれたとき
思いもかけぬ異動
海外勤務
最初の管理職
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l 
はじめて大勢の部下を
もったとき
関連会社に出向、転籍し
たとき
転職したとき
とうとうライフプラン研修
を受けたとき
TKANAI
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だれの夢、夢のスケール、夢の現実吟味
リーダーシップの軸としてのビジョン
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より若いときほど、「わたしの」
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あとの段階ほど、「われわれの」 「わたしの夢」と語っ
ていても、集合性。
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さらに、「われわれの」に世代性、公共性と使命感が備
わると、たとえば、リンカーン・メモリアルでのキング牧師
の演説 I have a dream
英雄の物語
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TKANAI
佐渡 裕さんの場合(指揮者) ワンモアタイム
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この両親のもとで
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芸大でフルート、散髪屋
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コーラスとフルートのレッスン
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タングルウッドでの師事
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ブサンソン・コンクール
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ジパング
パッション→ビジョン→ミッション
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的場さんのミッション型経営者の研究
TKANAI
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杉本八郎さんの場合(エーザイ)
→今回は、ケースでは読んでいません
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小説家になる夢
手堅い勉強、高校
エーザイで開発
組合、剣道
大型新薬ふたつ
人事部、ひととのつながり、ネットワーク
創薬研究所
京大教授 つぎの世代へ伝えること
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TKANAI
村上輝久さん(ヤマハ)
ワンモアタイム
浜松
国鉄
l  ピアノ技術師
l  札幌支店
l  銀座支店
l  浜松工場で開発
l  タローネに師事
l  プロジェクトXで描かれた世界
個人として成し遂げたこと、職場にもたらしたもの、ヤマハのコーポレー
トブランドにもたらしたもの、日本の社会や世界にもたらしたもの
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TKANAI
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もたらしたものという視点と
世代性(generativity)
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Agentic なもの
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Communalなもの
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キング牧師、杉本さん、佐渡さん、村上さん
Dan McAdamsのような研究が日本にない
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6,7分使って、キング牧師の映像を見
ます l 
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【事後リーディング】金井壽宏「リーダー人物の
語りとリーダーシップ現象の時空間」 金井壽宏・森岡正芳・高井俊次・中西眞知子
編『語りと騙りの間——羅生門的現実と 人間のレスポンシビリティー(対応・呼応・責
任)』ナカニシヤ出版、2009年。
TKANAI
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