Q&Aで読み解く「担い手3法」改正ポイント

Q&Aで読み解く「担い手3法」改正ポイント
5月29日の衆院本会議で改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)、改正公共工事入札契約適正化法
(入契法)
、改正建設業法の3法が全会一致で可決、成立した。一連の法改正は、インフラの品質確保とその担い
手の確保を実現することを大きな目的としており、
「三位一体改正」や「担い手3法」などとも呼ばれる。法改正
の趣旨や具体的内容を10のQ&Aにまとめて解説する。
【Q1】今回、担い手確保を大きな狙いとして3法が改正されることとなった背景を教えてください。
【A1】
建設投資の急激な減少や受注競争の激化に伴い、いわゆるダンピング受注が横行し、それが下請などにしわ寄
せされ、現場の技能労働者の処遇の悪化を招いてきました。将来の見通しが立たず、魅力もないことなどを理由
に建設業界への若者の入職も減少しています。
一方、東日本大震災の復興、防災・減災、インフラの老朽化対策や維持管理、耐震化などの担い手として建設
業が果たす役割はますます増大しています。
建設業に期待されるこうした役割を発揮してもらうことを目的に、これまで業界の疲弊を招く原因にもなった
ダンピング受注を防止し、現在だけでなく、将来にわたって公共工事の品質が確保されるよう、
「担い手の確保」
を新たな目的に据えた公共工事品確法を中心に、それと密接に関連する建設業法、入契法をセットにした法改正
が行われることになりました。
このうち公共工事品確法の改正は、国会議員の発議による議員立法、建設業法と入契法は、国土交通省を中心
とする関係省庁が連携した政府提出の法改正となりました。それぞれ成り立ちが異なる法律ですが、同じ目的を
持った法改正のため、総称して「三位一体改正」や「担い手3法」などと表現されています。
【Q2】公共工事品確法の改正について、ポイントを教えてください。
【A2】
05年4月に施行された当初の法律は、公共工事の「品質確保」の重要性を世の中に問い掛けるという大きな
意義がありました。
それまでの公共工事の発注は「価格のみの競争」が主体でした。この法律では「価格と品質」の両面で競争す
るという大きな転換が図られ、それまで試行的に進められてきた総合評価方式が本格的に導入されることになり
ました。それでも、長く続いた公共投資の減少の影響もあり、安値受注の横行に歯止めが掛からず、業界の疲弊
を招く結果となりました。
今回の法改正では、公共工事の品質が、現在だけでなく、将来にわたって確保できるように、それに携わる「担
い手」を確保することを大きな眼目として法律の目的や基本理念が見直されました。それらを実現するために、
「発注者の責務」も明らかにされました。
さらに、一般競争入札と総合評価方式による画一的で硬直的と指摘された入札契約方式に多様性を持たせ、事
業の特性や地域特性に応じて選択できる「多様な入札契約方式」の導入・活用が法律に位置付けられました。
【Q3】改正法に明記された「発注者の責務」とはどのようなものでしょうか。
【A3】
公共工事を発注する国や都道府県、市町村などがそれぞれ、改正法の目的や基本理念に沿った発注を行えるよ
う、明確化したのが「発注者の責務」です。
具体的には、公共工事を施工する建設業者が「適正な利潤」を確保できるようにするため、建設市場での労務
や資材などの取引価格、施工の実情を的確に反映した予定価格を適正に設定することとしています。
そのほか、昨今相次いで発生している入札不調・不落に対応し、再度行われる入札でできる限り早期に契約を
締結するよう努めるとも定めています。そのために、不調・不落となった入札に参加する業者から見積もりを取
るなどして、実勢を反映させた予定価格を設定することを求めています。ダンピング受注を防止する観点から、
低入札価格調査基準や最低制限価格を設定することも発注者の責務となります。
さらに、業界から要望の強い発注の平準化に取り組めるよう、計画的な発注や適切な工期の設定に努め、当初
予想できなかった施工上の事態にも速やかに対応できるよう、円滑な設計変更を行うことも明記されました。
これらの責務規定に基づいて発注関係事務を実施できるよう、国や地方自治体などの発注者が連携することも
定めています。
【Q4】多様な入札・契約方式の導入・活用とは具体的にどのようなものを指すのでしょうか。
【A4】
改正法では、さまざまな工事の性格や地域の実情を踏まえ、多様な方式の中から適切なものを選択したり、あ
るいは組み合わせたりして入札・契約を実施すると規定しています。
例えば、発注者だけでは仕様を確定できず、民間事業者の技術やノウハウを生かすべき工事に適した方法とし
て「技術提案交渉方式」があります。公募で技術提案を審査し、選定された業者と工法や価格などを交渉するこ
とを認めるものです。この方式では、予定価格は交渉を踏まえて設定することになるので、実際に必要とされる
価格での契約が可能になります。
技術提案を求める総合評価方式では、競争参加者が多数見込まれる場合を想定し、受発注者双方の事務負担の
軽減を目的とした「段階的選抜方式」が有効となります。一定の技術水準を持った業者に絞り込んだ上で、落札
者を決めるやり方です。
採算が取りにくく、敬遠されがちな地域の維持管理のための工事などでは、地元の事情に明るい中小業者が安
定した受注をしやすくなるよう、
「複数年契約」
「複数工事一括発注」
「共同受注方式」といった方法を活用するこ
とが想定されます。これらの方式によって発注ロットが大きくなれば、採算性が向上する可能性が高くなります。
改正法の条文に盛り込まれたこれらの方法以外にも有効なものがあると想定されており、各発注者が工夫した
新たな方法も採用するなどして、これまでの行き過ぎた価格競争を是正し、施工者が適正な利潤を確保できるよ
うになることが期待されます。
国土交通省では、新たな入札契約方式を活用しようとする地方自治体の取り組みを後押しすることを目的に本
年度、
「多様な入札契約方式モデル事業」を実施することにしています。モデル事業の対象となった自治体には、
入札契約の専門家を派遣するなどの支援を実施し、そこから得られた成果を基に発注者向けのマニュアルを作成
することになっています。
【Q5】多様な入札契約方式の導入・活用をはじめ改正法に定められた発注事務が、発注者ごとにばらばらに運
用されることが心配です。
【A5】
改正公共工事品確法では、発注者を支援する目的で発注者共通のルールとなる「運用指針」を国が作ることに
なっています。多様な入札契約方法をどのような工事にどのような手続きで適用するか、さらにその際の留意点
などを指針で規定することになります。
運用指針の策定に当たっては、地方自治体、学識経験者、民間事業者など公共工事関係者の意見を聴くことを
前提としています。国交省では、国や自治体の担当者が参加するブロック監理課長等会議や発注者協議会、地方
公共工事契約業務連絡協議会(地方公契連)といった会議や、別途開催する改正法の説明会などの場で、各発注
者の意見やアイデアを丁寧に聴くことにしています。民間事業者にも、例えば毎年秋に開催する全国建設業協会
(全建)のブロック会議なども活用して意見を聴取するようです。
国交省は、こうした各主体との意見交換など「プロセス」を重視しながら、年内をめどに運用指針づくりを進
めることにしています。各発注者や事業者団体などが地域の実情を踏まえた意見や提案を出すことが、改正法を
運用する上でも重要な意味を持つことになりそうです。
【Q6】公共工事の品質を確保する上では、工事の前段階で行われる調査・設計も重要だと思います。改正公共
工事品確法ではそのことは考慮していないのでしょうか。
【A6】
改正法では、調査・設計についても、工事に準じて品質の確保に努めることが明記されました。調査・設計業
務の段階で品質を確保するために、それぞれの業務内容に応じて必要とされる知識・技術を持つ者の能力を資格
などで評価し、活用することとしています。
これに関連して国交省は現在、インフラの点検・診断に従事する技術者を評価する一環として、一定の技術水
準を確保した既存の民間資格を大臣認定するための検討を行っています。国交省告示に基づく資格の認定を14
年度中に始められるよう、今後準備が進められるようです。
【Q7】公共工事品確法と併せて入契法と建設業法も改正されました。その経緯とポイントを教えてください。
【A7】
インフラの品質とその担い手を確保する公共工事品確法を公共工事の基本と位置付け、その基本理念を実現す
るために、密接に関連する入契法と建設業法の改正で具体的措置を導入することが考えられました。
改正で柱となった事項は、▽ダンピング対策の強化▽契約の適正な履行の確保▽建設工事の担い手の育成・確
保▽適正な施工体制確保の徹底―です。
〈公共工事品確法と建設業法・入契法等の一体的改正の概要〉
【Q8】改正入契法では具体的にどのようなことが規定されたのですか。
【A8】
公共工事の入札契約適正化のために、受発注者が講じるべき措置を定めました。その柱が「ダンピング防止」
です。具体的な措置として、入札参加者に応札額の内訳の提出を求め、それを発注者が確認することにしました。
これにより、見積もり能力のない業者が積算もせずに入札に参加し、最低制限価格で落札するような事態を排除
することができるようになります。
契約の適正な履行の確保では、公共工事の受注者が作成・提出する施工体制台帳を小規模工事にも拡大します。
公共工事では従来、下請金額が3000万円(建築は4500万円)以上の工事の受注者に施工体制台帳の提出
を求めていました。改正法では、インフラの維持修繕など、比較的規模の小さい工事の増加が見込まれることか
ら、それらの施工体制を的確に把握し、手抜き工事や丸投げのような不正行為を防止するために、規模の大小に
かかわらず、すべての工事で台帳の作成・提出を義務付けることになりました。
【Q9】建設業法はどのように改正されたのですか。
【A9】
建設業者や団体による担い手の確保・育成が責務として新たに規定され、それらを国土交通省が支援すること
も追加されました。
担い手の確保・育成の取り組みとして想定されるのは、▽技能労働者や技術者に対する講習・研修の実施とい
った人材育成▽技能労働者などへの適切な賃金の支払いや社会保険加入の徹底といった就労環境の整備▽下請
契約における請負代金の適切な設定や適切な代金の支払いといった元下取引の一層の適正化▽広報などによる
若年者や女性の入職促進―などがあります。
事業者団体がこれらに取り組む場合は国交省に届け出てもらい、優良な事例を広めたり、必要に応じて団体間
の調整を行ったりする支援策が検討されています。
【Q10】改正建設業法では、建設業許可についても一部見直しが行われたと聞いています。
【A10】
まず、許可業種区分を43年ぶりに見直し、29業種目となる「解体工事業」が新設されました。これは維持
更新の時代に対応して今後増加が見込まれる解体工事の適正な施工を確保することが狙いです。
現在の「とび・土工・コンクリート工事」から工作物の解体を分離独立させるもので、今後、解体工事業とし
て許可を与えるのに必要となる技術者資格などが検討され、公布から2年以内に許可申請の受け付けが開始され
ます。施行後3年間は経過措置として、とび・土工工事業でも解体工事業を営むことができることになっていま
す。
さらに今回、建設業法と関連する浄化槽法、建設リサイクル法も改正され、それぞれの法律で新たに暴力団排
除条項が整備されました。建設業からの暴力団の排除を徹底するため、役員(取締役、執行役)が「暴力団員」
または「暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者」であることが許可の欠格要件や取り消し事由となる
範囲が拡大されました。
具体的には、取締役などと同等以上の支配力を持つ相談役や顧問が暴力団員等である場合も、同様の取り扱い
になります。加えて、当該企業に多額の出資を行い、事実上のオーナーとして事業活動を支配するような者が暴
力団員等であった場合も、同様に欠格要件や取り消し事由になります。
■公共工事品質確保促進法(改正後)
目次
第一章 総則(第一条|第八条)
第二章 基本方針等(第九条|第十一条)
第三章 多様な入札および契約の方法等
第一節 競争参加者の技術的能力の審査等(第十二条・第十三条)
第二節 多様な入札および契約の方法(第十四条|第二十条)
第三節 発注関係事務を適切に実施することができる者の活用および発注者に対する支援等(第二十一条|第
二十四条)
付則
第一章 総則
〈目的〉
第一条 この法律は、公共工事の品質確保が、良質な社会資本の整備を通じて、豊かな国民生活の実現およびそ
の安全の確保、環境の保全(良好な環境の創出を含む。)
、自立的で個性豊かな地域社会の形成等に寄与するもの
であるとともに、現在および将来の世代にわたる国民の利益であることにかんがみ、公共工事の品質確保に関す
る基本理念、国等の責務、基本方針の策定等その担い手の中長期的な育成および確保の促進その他の公共工事の
品質確保の促進に関する基本的事項を定めることにより、現在および将来の公共工事の品質確保の促進を図り、
もって国民の福祉の向上および国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
~略~
〈基本理念〉
第三条 公共工事の品質は、公共工事が現在および将来における国民生活および経済活動の基盤となる社会資本
を整備するものとして社会経済上重要な意義を有することにかんがみ、国および地方公共団体並びに公共工事の
発注者および受注者がそれぞれの役割を果たすことにより、現在および将来の国民のために確保されなければな
らない。
2
公共工事の品質は、建設工事が、目的物が使用されて初めてその品質を確認できること、その品質が受注者
の技術的能力に負うところが大きいこと、個別の工事により条件が異なること等の特性を有することにかんがみ、
経済性に配慮しつつ価格以外の多様な要素をも考慮し、価格および品質が総合的に優れた内容の契約がなされる
ことにより、確保されなければならない。
3
公共工事の品質は、施工技術の維持向上が図られ、並びにそれを有する者等が公共工事の品質確保の担い手
として中長期的に育成され、および確保されることにより、将来にわたり確保されなければならない。
4
公共工事の品質は、公共工事の発注者(第二十四条を除き、以下「発注者」という。)の能力および体制を考
慮しつつ、工事の性格、地域の実情等に応じて多様な入札および契約の方法の中から適切な方法が選択されるこ
とにより、確保されなければならない。
5
公共工事の品質は、これを確保する上で工事の効率性、安全性、環境への影響等が重要な意義を有すること
にかんがみ、より適切な技術または工夫により、確保されなければならない。
6
公共工事の品質は、完成後の適切な点検、診断、維持、修繕その他の維持管理より、将来にわたり確保され
なければならない。
7
公共工事の品質は、地域において災害時における対応を含む社会資本の維持管理が適切に行われるよう、地
域の実情を踏まえ地域における公共工事の品質確保の担い手の育成および確保について配慮がなされることに
より、将来にわたり確保されなければならない。
8
公共工事の品質確保に当たっては、入札および契約の過程並びに契約の内容の透明性および競争の公正性が
確保されること、談合、入札談合等関与行為その他の不正行為の排除が徹底されること、その請負代金の額によ
っては公共工事の適正な施工が通常見込まれない契約の締結が防止されること並びに契約された公共工事の適
正な施工が確保されることにより、受注者としての適格性を有しない建設業者が排除されること等の入札および
契約の適正化が図られるように配慮されなければならない。
9
公共工事の品質確保に当たっては、民間事業者の能力が適切に評価され、並びに入札および契約に適切に反
映されること、民間事業者の積極的な技術提案(公共工事に関する技術または工夫についての提案をいう。以下
同じ。
)および創意工夫が活用されること等により民間事業者の能力が活用されるように配慮されなければなら
ない。
10 公共工事の品質確保に当たっては、公共工事の受注者のみならず下請負人およびこれらの者に使用される
技術者、技能労働者等がそれぞれ公共工事の品質確保において重要な役割を果たすことにかんがみ、公共工事に
おける請負契約(下請契約を含む。
)の当事者がおのおのの対等な立場における合意に基づいて公正な契約を適
正な額の請負代金で締結し、その請負代金をできる限り速やかに支払う等信義に従って誠実にこれを履行すると
ともに、公共工事に従事する者の賃金その他の労働条件、安全衛生その他の労働環境が改善されるように配慮さ
れなければならない。
11 公共工事の品質確保に当たっては、公共工事に関する調査(点検および診断を含む。以下同じ。
)および設
計の品質が公共工事の品質確保を図る上で重要な役割を果たすものであることにかんがみ、前各項の趣旨を踏ま
え、公共工事に準じ、その業務の内容に応じて必要な知識または技術を有する者の能力がその者の有する資格等
により適切に評価され、およびそれらの者が十分に活用されること等により、公共工事に関する調査および設計
の品質が確保されるようにしなければならない。
~略~
〈地方公共団体の責務〉
第五条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、その地域の実情を踏まえ、公共工事の品質確保の促進に関する
施策を策定し、および実施する責務を有する。
〈国および地方公共団体の連携および協力〉
第六条 国および地方公共団体は、公共工事の品質確保の促進に関する施策の策定および実施に当たっては、基
本理念の実現を図るため、相互に緊密な連携を図りながら協力しなければならない。
〈発注者の責務〉
第七条 発注者は、基本理念にのっとり、現在および将来の公共工事の品質が確保されるよう、公共工事の品質
確保の担い手の中長期的な育成および確保に配慮しつつ、仕様書および設計書の作成、予定価格の作成、入札お
よび契約の方法の選択、契約の相手方の決定、工事の監督および検査並びに工事中および完成時の施工状況の確
認および評価その他の事務(以下「発注関係事務」という。)を、次に定めるところによる等適切に実施しなけれ
ばならない。
一 公共工事を施工する者が、公共工事の品質確保の担い手が中長期的に育成されおよび確保されるための適
正な利潤を確保することができるよう、適切に作成された仕様書および設計書に基づき、経済社会情勢の変化を
勘案し、市場における労務および資材等の取引価格、施工の実態等を的確に反映した積算を行うことにより、予
定価格を適正に定めること。
二
入札に付しても定められた予定価格に起因して入札者または落札者がなかったと認める場合においてさ
らに入札に付するときその他必要があると認めるときは、当該入札に参加する者から当該入札に係る工事の全部
または一部の見積書を徴することその他の方法により積算を行うことにより、適正な予定価格を定め、できる限
り速やかに契約を締結するよう努めること。
三 その請負代金の額によっては公共工事の適正な施工が通常見込まれない契約の締結を防止するため、その
入札金額によっては当該公共工事の適正な施工が通常見込まれない契約となるおそれがあると認められる場合
の基準または最低制限価格の設定その他の必要な措置を講ずること。
四 計画的に発注を行うとともに、適切な工期を設定するよう努めること。
五 設計図書(仕様書、設計書および図面をいう。以下この号において同じ。
)に適切な施工条件を明示すると
ともに、設計図書に示された施工条件と実際の工事現場の状態が一致しない場合、設計図書に示されていない施
工条件について予期することができない特別な状態が生じた場合その他の場合において必要があると認められ
るときは、適切に設計図書の変更およびこれに伴い必要となる請負代金の額または工期の変更を行うこと。
六
必要に応じて完成後の一定期間を経過した後において施工状況の確認および評価を実施するよう努める
こと。
2
発注者は、公共工事の施工状況の評価に関する資料その他の資料が将来における自らの発注に、および発注
者間においてその発注に相互に、有効に活用されるよう、その評価の標準化のための措置並びにこれらの資料の
保存のためのデータベースの整備および更新その他の必要な措置を講じなければならない。
3
発注者は、発注関係事務を適切に実施するため、必要な職員の配置その他の体制の整備に努めるとともに、
他の発注者と情報交換を行うこと等により連携を図るように努めなければならない。
〈受注者の責務〉
第八条 公共工事の受注者は、基本理念にのっとり、契約された公共工事を適正に実施し、下請契約を締結する
ときは、適正な額の請負代金での下請契約の締結に努めなければならない。
2
公共工事の受注者(受注者となろうとする者を含む。
)は、契約されたまたは将来施工することになる公共工
事の適正な実施のために必要な技術的能力の向上並びに技術者、技能労働者等の育成および確保並びにこれらの
者に係る賃金その他の労働条件、安全衛生その他の労働環境の改善に努めなければならない。
第二章 基本方針等
〈基本方針〉
第九条 ~略~
〈基本方針に基づく責務〉
第十条 ~略~
〈関係行政機関の協力体制〉
第十一条 ~略~
第三章 多様な入札および契約の方法等
第一節 競争参加者の技術的能力の審査等
〈競争参加者の技術的能力の審査〉
第十二条 ~略~
〈競争参加者の中長期的な技術的能力の確保に関する審査等〉
第十三条 発注者は、その発注に係る公共工事の契約につき競争に付するときは、当該公共工事の性格、地域の
実情等に応じ、競争に参加する者(競争に参加しようとする者を含む。以下同じ。)について、若年の技術者、技
能労働者等の育成および確保の状況、建設機械の保有の状況、災害時における工事の実施体制の確保の状況等に
関する事項を適切に審査し、または評価するよう努めなければならない。
第二節 多様な入札および契約の方法
〈多様な入札および契約の方法の中から適切な方法の選択〉
第十四条 発注者は、入札および契約の方法の決定に当たっては、その発注に係る公共工事の性格、地域の実情
等に応じ、この節に定める方式その他の多様な方法の中から適切な方法を選択し、またはこれらの組み合わせに
よることができる。
〈競争参加者の技術提案を求める方式〉
第十五条 発注者は、競争に参加する者に対し、技術提案を求めるよう努めなければならない。ただし、発注者
が、当該公共工事の内容に照らし、その必要がないと認めるときは、この限りではない。
2
発注者は、前項の規定により技術提案を求めるに当たっては、競争に参加する者の技術提案に係る負担に配
慮しなければならない。
3
発注者は、競争に付された公共工事につき技術提案がなされたときは、これを適切に審査し、および評価し
なければならない。この場合において、発注者は、中立かつ公正な審査および評価が行われるようこれらに関す
る当事者からの苦情を適切に処理することその他の必要な措置を講ずるものとする。
4・5 ~略~
〈段階的選抜方式〉
第十六条 発注者は、競争に参加する者に対し技術提案を求める方式による場合において競争に参加する者の数
が多数であると見込まれるときその他必要があると認めるときは、当該公共工事に係る技術的能力に関する事項
を評価すること等により一定の技術水準に達した者を選抜した上で、これらの者の中から落札者を決定すること
ができる。
〈技術提案の改善〉
第十七条 ~略~
2
第十五条第五項ただし書の規定は、技術提案の改善に係る過程の概要の公表について準用する。
〈技術提案の審査および価格等の交渉による方式〉
第十八条 発注者は、当該公共工事の性格等により当該工事の仕様の確定が困難である場合において自らの発注
の実績等を踏まえ必要があると認めるときは、技術提案を公募の上、その審査の結果を踏まえて選定した者と工
法、価格等の交渉を行うことにより仕様を確定した上で契約することができる。この場合において、発注者は、
技術提案の審査および交渉の結果を踏まえ、予定価格を定めるものとする。
2
発注者は、前項の技術提案の審査に当たり、中立かつ公正な審査が行われるよう、中立の立場で公正な判断
をすることができる学識経験者の意見を聴くとともに、当該審査に関する当事者からの苦情を適切に処理するこ
とその他の必要な措置を講ずるものとする。
3
発注者は、第一項の技術提案の審査の結果並びに審査および交渉の過程の概要を公表しなければならない。
この場合において、第十五条第五項ただし書の規定を準用する。
〈高度な技術等を含む技術提案を求めた場合の予定価格〉
第十九条 発注者は、前条第一項の場合を除くほか、高度な技術または優れた工夫を含む技術提案を求めたとき
は、当該技術提案の審査の結果を踏まえて、予定価格を定めることができる。この場合において、発注者は、当
該技術提案の審査に当たり、中立の立場で公正な判断をすることができる学識経験者の意見を聴くものとする。
〈地域における社会資本の維持管理に資する方式〉
第二十条 発注者は、公共工事の発注に当たり、地域における社会資本の維持管理の効率的かつ持続的な実施の
ために必要があると認めるときは、地域の実情に応じ、次に掲げる方式等を活用するものとする。
一 工期が複数年度にわたる公共工事を一の契約により発注する方式
二 複数の公共工事を一の契約により発注する方式
三 複数の建設業者により構成される組合その他の事業体が競争に参加することができることとする方式
第三節 発注関係事務を適切に実施することができる者の活用および発注者の支援等
〈発注関係事務を適切に実施することができる者の活用〉
第二十一条 ~略~
2
~略~
3
第一項の規定により、契約により発注関係事務の全部または一部を行う者は、基本理念にのっとり、発注関
係事務を適切に実施しなければならない。
4
国および都道府県は、発注者を支援するため、専門的な知識または技術を必要とする発注関係事務を適切に
実施することができる者の育成およびその活用の促進、発注関係事務を公正に行うことができる条件を備えた者
の適切な評価および選定に関する協力、発注者間の連携体制の整備その他の必要な措置を講ずるよう努めなけれ
ばならない。
〈発注関係事務の運用に関する指針〉
第二十二条 国は、基本理念にのっとり、発注者を支援するため、地方公共団体、学識経験者、民間事業者その
他の関係者の意見を聴いて、公共工事の性格、地域の実情等に応じた入札および契約の方法の選択その他の発注
関係事務の適切な実施に係る制度の運用に関する指針を定めるものとする。
〈国の援助〉
第二十三条 国は、第二十一条第四項および前条に規定するもののほか、地方公共団体が講ずる公共工事の品質
確保の担い手の中長期的な育成および確保の促進その他の公共工事の品質確保の促進に関する施策に関し、必要
な助言その他の援助を行うよう努めなければならない。
〈公共工事に関する調査および設計の品質確保〉
第二十四条 公共工事に関する調査設計または設計の発注者は、その発注に当たり、公共工事に準じ、競争に参
加しようとする者について調査または設計の業務の経験、当該業務に配置が予定される技術者の経験または有す
る資格その他技術的能力に関する事項を審査すること、受注者となろうとする者に調査または設計に関する技術
または工夫についての提案を求めることその他の当該業務の性格、地域の実情等に応じた入札および契約の方法
を選択すること等により、その品質を確保するよう努めなければならない。
2
公共工事に関する調査または設計の発注者は、公共工事に準じ、業務状況の評価の標準化並びに調査または
設計の成果および評価に関する資料その他の資料の保存に関し、必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
3
国は、公共工事に関する調査および設計に関し、その業務の内容に応じて必要な知識または技術を有する者
の能力がその者の有する資格等により適切に評価され、およびそれらの者が十分に活用されるようにするため、
これらに係る資格等の評価の在り方等について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
付則
〈施行期日〉
1
この法律は、公布の日から施行する。
〈検討〉
2
政府は、この法律の施行後五年を目途として、この法律による改正後の公共工事の品質確保の促進に関する
法律の施行の状況等について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずる
ものとする。
■改正公共工事品確法、改正建設業法等/国会における付帯決議
【参議院国土交通委員会の付帯決議】
〈公共工事品確法〉
1
発注者の予定価格の設定に当たっては、経済社会情勢の変化の反映、公共工事の従事する者の労働環境の改
善、公共工事の品質確保の担い手が中長期的に育成されおよび確保されるための適正な利潤の確保という目的を
超えた不当な引き上げが行われないよう、関係機関にその趣旨を徹底すること。
2
多様な入札および契約の方法の導入に当たっては、談合などの弊害が生ずることのないよう、その防止につ
いて十分配慮するとともに、入札契約における透明性、公正性、必要かつ十分な競争性を確保するなど必要な措
置を講ずること。
3
段階的選抜方式の実施に当たっては、恣意(しい)的な選抜が行われることのないよう、案件ごとに事前明
示された基準にのっとり、透明性をもって選抜を行うこと等その運用について十分な配慮を行うこと。
4
発注者を含む関係者が連携し、公共工事の受注者が適正な額の請負代金での下請契約の締結、公共工事の適
正な実施のために必要な技術的能力の向上、技術者、技能労働者等の育成および確保、これらの者に係る賃金そ
の他の労働条件、安全衛生その他の労働環境の改善に努めるよう適切な措置が講じられること。
〈建設業法等〉
1
公共工事設計労務単価の引き上げが1次下請以下のすべての建設労働者の賃金の支払いに確実に反映され
るよう、賃金の支払い状況の把握に努めるとともに、所要の対策を講ずること。
2
公共工事における施工体制台帳の作成・提出の義務付けに当たっては、1次下請以下の施工体制の的確な把
握により、手抜き工事や不当な中間搾取などの防止、安全な労働環境の確保などの適切な施工体制の確立を図る
こと。
3
建設労働者の社会保険の加入が早急かつ確実に実施されるよう指導監督を強化するとともに、所要の対策を
講ずること。
【衆議院国土交通委員会の付帯決議】
〈公共工事品確法〉
1
発注者の予定価格の設定に当たっては、経済社会情勢の変化の反映、公共工事に従事する者の労働環境の改
善、公共工事の品質確保の担い手が中長期的に育成されおよび確保されるための適正な利潤の確保という目的を
超えた不当な引き上げが行われないよう、関係機関にその趣旨を徹底すること。
2
公共工事の入札不調等の発生の増加にかんがみ、予定価格と実勢価格のかい離の対策として、本法に基づく
見積徴収方式が発注者において活用されるよう促進するとともに、見積価格の妥当性を適切に確認し、適正な予
定価格の設定を図ること。
3
多様な入札および契約の方法の導入に当たっては、談合などの弊害が生ずることのないよう、その防止に十
分配慮するとともに、入札契約における透明性、公正性、必要かつ十分な競争性を確保するなど必要な措置を講
ずること。
4
段階的選抜方式の実施に当たっては、恣意(しい)的な選抜が行われることのないよう、案件ごとに事前明
示された基準にのっとり、透明性をもって選抜を行うこと等その運用について十分な配慮を行うこと。
5
発注者を含む関係者が連携し、公共工事の受注者が、適正な額の請負代金での下請契約の締結、公共工事の
適正な実施のために必要な技術的能力の向上、技術者、技能労働者等の育成および確保、これらの者に係る賃金
その他の労働条件、安全衛生その他の労働環境の改善に努めるよう適切な措置が講じられること。
〈建設業法等〉
1
建設工事の適正な施工とその中長期的担い手確保を図るため、低入札価格調査制度などの導入が進んでいな
い市町村において導入を促進することなどのダンピング受注対策の更なる強化を図ること。
2
公共工事設計労務単価の引き上げが1次下請以下のすべての建設労働者の賃金上昇につながるよう、賃金の
支払い状況の把握を含め所要の対策を講ずるとともに、最近の技能労働者の不足等の市場実態を反映した公共工
事設計労務単価の適宜適切な見直しを行うこと。
3
建設業許可に係る業種区分の見直しによって新設される解体工事業の許可に当たっては、混乱のないように
円滑な施行に努めるとともに、解体工事に伴う重大事故が絶えないことにかんがみ、公衆災害の防止に万全を期
すこと。
4
公共工事における施工体制台帳の作成および提出の義務付けに当たっては、1次下請以下の施工体制の的確
な把握により、手抜き工事や不当な中間搾取などの防止、安全な労働環境の確保などの適切な施工体制の確立を
図ること。
5
建設労働者の社会保険の加入が早急かつ確実に実施されるよう、適正な額の請負代金での下請契約の締結を
含め指導監督を強化するとともに、所要の対策を講ずること。
日刊建設工業新聞 2014 年 6 月 20 日 8・9 面に掲載しています