食糧問題 - 広島県立教育センター

地理歴史科
学習指導案
広島県立広高等学校
1
科目名
地理B
2
対象学年
2学年または3学年
3
単元名
食料問題
4
単元設定の理由
中野
和子
学習指導要領の大項目「(3 )現代世界の諸課題の地理的考察 」の「カ 人口 ,食料問題の地域性 」
を取り上げる。食料問題は,地域を越えた地球的規模で深刻化している諸課題の一つとなっている
が,その現れ方は地域によって異なっている。この食料問題を主題的に取り上げることによって,
世界的視野と地域的視野から課題を分析させ,特定の地域に限定してみられる地域的特殊性,およ
び地域を越えてみられる類似性や規則性について考察させることができ,課題を追究する過程を学
ばせることができるとともに,現代の世界認識を育てることができる。
5
単元の目標
食料問題とはいったいどんな問題なのかを説明する理論を ,世界的視野から低所得国 ,中所得国 ,
先進農産物輸出国の3地域を取り上げ,仮説の形成と検証を行いながら追究し,習得することがで
きる。具体的には,低所得国として絶対的食料不足地域であるアフリカのガーナ,中所得国として
相対的な食料不足地域であるアジア,先進農産物輸出国として食料生産過剰地域のアメリカ合衆国
を事例に総合的な理論を形成・検証し,アフリカのガーナの理論をケニアに,アジアの理論をマレ
ーシアに適用し,知識の相対化を図ることができる。
6
単元の構成(全7時間)
導
パート1
入
1時間
絶対的食料不足の食料問題
−知識の形成・検証と知識の適用・相対化−
パート2
相対的食料不足の食料問題
−知識の形成・検証と知識の適用・相対化−
パート3
3時間
1時間
在庫処理の食料問題
−知識の形成・検証−
2時間
- 1 -
7
評価規準
(1)知識・理解
次の知識の構造にみられる知識を理解することができる。
【A−①】
【A】
【Ⅰ】
カカオは栽培し続けるしかなく,ま
【A−①−a】
カカオ栽培は多額の先行投資を必
ガーナはカカオという安価
た,政府も重要な輸出品であるカカ
要とするため,価格が低下しても
で価格が不安定な一次産品に
オ栽培を奨励している。
生産活動を停止できない。仮に停
依存しているモノカルチャー
止すれば,借金だけが残る。
一次産品に依存する不安定
経済であるため,外貨不足と
な経済であり,食料不足を
いう経済問題に直面し,十分
食糧輸入や食料援助で補お
に食料輸入できない。先進国 【A−②】
うとしてるが,不足分を補
からの食料援助は十分に成果
海外からの食料援助が,ガーナの実
海外からの援助米が低価格なため,
う援助でしかなく,自国の
が上がっていない。
情を十分理解したものになっておら
国内産の米に買い手がつかず,食
【A−②−a】
農業は好転の兆しがみられ
ず,米生産を阻害する結果となり,
料援助協定による穀物を安価に買
ない。
また,小麦のとれないガーナでの小
える制度は,逆に国内農業をだめ
麦輸入を 増やす結果となっている。
にしている現状がある。また小麦
食が始まり,小麦輸入が増える。
【A ’】
低所得国は食料不足
ケニアは,商品作物に依存し
の問題,中所得国は
ている不安定な経済状態で,
経済発展に伴う新た
食料不足を輸入や食料援助で
な食料不足と自給率
補おうとしているが,自国の
低下,先進農産物輸
食料生産は好転の兆しがみら
出国は在庫処理とそ
れない。
れに伴い輸入国の農
業の育成が阻害され
ている問題
【Ⅱ】
【B】
【B−①】
【B−①−a】
経済発展による食生活の高
アジアの経済発展は,食生
国内総生産が増加し経済発展してい
度化により,穀物消費量,
活の変化を生み,肉食の増加
るアジア諸国で,食肉消費量の増大
先進国と発展途上国の食料消費は
肉類の消費で大きく差がみられ,
輸入量ともに増加し,それ
と肉を生産するための穀物消
がみられる。
アジアは,国内総生産が増加し経
が自給率の低下や農業の相
費を増大させた。
済発展している。
対的な地位の低下という問
題を生んでいる。
【B ’】
マレーシアでは経済発展して
おり,食肉消費量の増大がみ
られ,食料輸入が増えている
また,経済発展による農業の
相対的な地位の低下がみられ
る。
【Ⅲ】
【C】
【C−①】
生産過剰の中での輸出価
アメリカ政府は農家を補助
格低下が招く農業保護のため
する価格・所得支持に多く支
の膨大な農業支出問題と,在
出している。
生産過剰から在庫率が上がり,農
産物の国際価格は低下してきている。
【C−①−a】
アメリカの生産量は年々増加して
おり,アメリカの在庫率も高くな
っている。世界の穀物在庫もアメ
庫処理のための新たな市場開
リカ同様に多くなっている。
拓が食料援助輸入国の農業の
【C−①−b】
育成を阻害しているという問
アメリカがガーナへ食料援助を行
題がある。
った時期は,アメリカの在庫も多
く,在庫処理と新たな市場開拓の
ねらいもあった。
- 2 -
(2)思考力・判断力
現代社会の食料問題とはいったいどんな問題なのか,なぜ食料の不足がおこっているのか,を追
究することができる。
追究の結果習得した理論を,授業で取り上げた地域以外の他の地域に適用して,その地域にみら
れる社会的事象を解釈することができる。
(3)技能・表現力
追究過程において,各資料から検証に必要な社会的事象を読み取ることができる。
思考・判断の追究過程を説明することができる。
(4)関心・意欲・態度
授業の学習内容や追究過程を応用させ,同じような社会的事象がみられる国や地域を取り上げる
ことができる。
8
単元の指導計画(全7時間)
導入およびパート1
発
絶対的食料不足の食料問題
問
・これはどこの子どもの写真で
しょう?それではこれは?
教授・学習活動
資
料
生徒から引き出したい知識
T:発問する。
<写真1>
・アフリカ
P:答える。
<写真2>
・バングラディシュ
・世界の慢性的栄養不足の世界
(・農業生産が低いから)
地図をみせる。なぜ,これら
T:発問する。
(・人口増加が著しいから)
の地域は食料不足なのでしょ
P:推測する。
(・農業生産が人口増加に追いつか
うか?
導 ・次の資料を見せてください。
さっきの食料不足の地図と比
ないから,など)
T:発問する。
<資料ア>
P:答える。
・農業生産が低い所でも栄養不足人
口割合が比較的高い所もあれば世
べてみてください。どのよう
界的小麦輸出国でも栄養不足人口
なことがわかりますか?
がみられる所もある。
・次の資料と比べてみてくださ
い。どんなことがわかります
か?
T:資料を見せて
<資料イ>
発問する。
・人口が増加している地域でも食料
が不足している所と不足していな
P:答える。
い所がある。
入 ・いったいなぜこれらの地域で
T:発問する。
(・食料の分配の問題)
食料問題が起こっているので
P:推測する。
(・南北問題,など)
しょう?
○現代世界の食料問題とはいっ
T:学習課題を
たいどんな問題でしょうか?
提示する。
P:推測する。
・次の資料からどんなことがわ
かりますか?
・ガーナは食料不足が起こって
いるでしょうか?次の資料で
T:発問する。
<資料1>
P:答える。
T:発問する。
P:答える。
確かめましょう。
・アフリカで今後も食料不足の人口
が増えると予測される。
<資料2>
・毎年のように10万トンから50万ト
ンもの穀物が供給不足の状態にお
かれてきた。また,これは年々増
- 3 -
展
加傾向にあり,食料不足は好転す
る兆しはみられない。
・不足分を輸入でまかなうこと
ができていますか?
T:発問する。
<資料3>
P:答える。
・穀物輸入は年々増えている。しか
も輸入によって食料不足を補える
年もあれば,食料輸入が十分でな
い年もある。
・【 Ⅰ】 なぜ,アフリカでは食
T:発問する。
料の不足している地域がある
P:推測する。
(・いろいろ)
のでしょう?
・【 A】 なぜ,ガーナでは農業
が国の主要産業であるにもか
かわらず,食料不足が起こっ
ているのでしょう?
・ガーナのカカオ輸出に占める
割合は,世界でまた国内でど
のくらいでしょう?
T:資料を見せて
発問する。
<資料4>
・世界のカカオ生産の14.1%を占め
<資料5>
世界2位,また国の輸出の約半分
P:答える。
がカカオによって占められてい
る。
・ガーナのカカオの輸出量,生
産量はどうなっていますか?
T:資料を見せて
発問する。
<資料6>
・増えている。
<資料7>
P:答える。
・カカオは日常の食料になりま
すか?
開
T:発問する。
・ならない。商品作物である。
P:答える。
・【 A−①】 なぜ,日常の食料
T:発問する。
(・いいことがあるから)
(穀物など)をつくらずにカカ
P:推測する。
( ・儲かれば食料が買えるから,等)
オを栽培し続けているのでし
ょう?
・カカオ栽培で農民は儲かって
いるのでしょうか?資料で確
かめましょう。どんなことが
T:資料を見せて
<資料8>
発問する。
・カカオの国際価格は非常に不安定
で,価格が低下する傾向にある。
P:答える。
また,生産者価格が国際市場価格
わかりますか?
より低く抑えられている。つまり
儲からない。
・【 A−①−a】
なぜ,儲から
ないカカオを栽培し続けるの
でしょうか?資料で確かめて
T:資料を見せて
<資料9>
発問する。
・1950年代,独立前のガーナではカ
カオ栽培こそ富の象徴であると歌
P:答える。
う流行歌があったが,今も植民地
みよう。どんなことがわかり
時代からの名残がある。
ますか?
<資料10>
・【A−①−a】 カカオ栽培は,多
額の先行投資を必要とするため,
価格が低下しても生産活動を停止
できない。
Ⅰ
・【 A−②】 やめることができ
T:発問する。
(・貧しいから)
ないカカオ栽培でも,なぜ他
P:推測する。
(・カカオ栽培以外の作物の作物生
の土地で穀物生産を活発にし
産にまわすお金がないから,)
- 4 -
て食料問題を解決しようとし
(・耕地が足りないのではないか,
ないのでしょう?
・【 A−②−a】 実は米の生産
を増やして何とかしようと試
など)
P:VTRを視聴
VTR
する。
みたことがありました。しか
しそれは大失敗に終わったの
です。なぜだと思いますか?
VTRを見てみましょう。
・何の穀物が援助されていまし
たか?
・この援助は何にどのような影
響を与えていましたか?
T:発問する。
・米
P:答える。
T:発問する。
P:答える。
・
・【A−②−a】海外からの援助米
が低価格なため,国内産の米に買
い手がつかず,食料援助協定によ
る穀物を安価に買える制度は,逆
に国内農業をだめにしている現状
がある。
・穀物援助がガーナの人々の食
生活をどのように変化させま
T:発問する。
・小麦食がはじまった。
P:答える。
したか?
・小麦食がはじまったことは,
どのような影響があります
T:発問する。
P:答える。
か?
・【 A】 なぜ,ガーナは食料不
足が起こっているのでしょ
【A−②−a】小麦はガーナでは栽
培されないため,小麦輸入が始ま
り,食料輸入が増える。
T:発問する。
P:答える。
う?
【A】
①ガーナは,植民地時代に持ち込
まれたカカオという安価で価格
が不安定な一次産品に依存して
いるモノカルチャー経済であ
る。そのため外貨不足の経済問
題に直面しており,十分に食料
Ⅱ
輸入できない。また,穀物生産
が需要に追いついていない。
②先進国からの食料援助がガーナ
の実情を十分理解したものにな
っていないため,自国の食料生
産は成果が上がらず,逆に穀物
生産を阻害する要因になってい
る。
①②の理由から食料不足になってい
るのである。
・【 A’】それでは,ガーナの食
料不足の原因である『①ガー
- 5 -
ナ経済は一次産品に依存して
いる脆弱な経済状態である。
②食料援助も自国の食料不足
を解決できず,自国の食料生
産の阻害要因になっている 。』
は,ガーナだけに適用できる
ことでしょうか?それともア
フリカの他の国でも適用でき
ることなのでしょうか?
・みんなのよく知っているケニ
T:事例地域を
アを事例に検証してみましょ
提示する。
う。
・まず,現在の主要輸出品目か
T:資料を見せて
<資料11>
・ケニアはイギリスの植民地支配以
らみてみましょう。資料から
発問する。
<資料12>
降,コーヒー,茶がケニアの輸出
どのようなことがわかります
P:資料を見て
<資料13>
総額の約半分を占める。
か?
答える。
・ヨーロッパ人の大農場が栽培条件
展
の良好な地域に集中し,現地農民
による小経営との間の生産条件に
は格差がある。
・穀物生産はどうでしょうか?
次の資料を見てください。
どのようなことが分かります
か?
開 ○食料輸入によって食料は足り
ているのでしょうか?資料か
らどのようなことがわかりま
T:資料を見せて
<資料14>
発問する。
・主食のとうもろこしは生産の変動
幅が大きく,絶対的不足が避けら
P:資料を見て
れない状況にある。
答える。
T:資料を見せて
発問する。
<資料15>
・穀物輸入が約1割を占め,輸入に
<資料16>
依存している。また,貿易収支の
P:答える。
赤字は急速に増大している。この
すか?
ことから食料輸入が十分とはいえ
ない可能性がある。さらに国内の
地域格差があり,貧困層は購買力
が極度に乏しく食料確保すること
も難しい。
Ⅲ ○食料援助について,資料から
どのようなことがわかります
T:発問する。
<資料17>
P:答える。
<資料18>
か?
・ケニアは食料援助を必要してい
る。
・日本もケニアへの食料援助を行っ
ている。(無償食料援助協力19億
円,有償協力約8億円)
・以上のことからケニアではど
うであるといえるかな?
T:発問する。
P:答える。
<資料19>
・商品作物に依存する不安定な経済
状態で,食料不足を食料輸入や食
料援助で補おうとしているが,自
国の食料生産は好転の兆しがみら
れない。
- 6 -
・【 A’】ガーナの学習とケニア
終
の検証から,なぜ,絶対的力
T:発問する。
・【A’】 一次産品に依存する不安
P:答える。
定な経済であり,食料不足を食料
料不足の地域がみられるので
輸入や食料援助で補おうとしてい
しょうか?
るが,不足分を補う援助でしかな
結
く,自国の農業は好転の兆しがみ
られない。
パート2
相対的食料不足の食料問題
発
問
教授・学習活動
・これまでアフリカの国を取り
T:資料を見て
上げて食料問題をみてきまし
発問する。
たが,アフリカとともに一貫
資
料
<資料20>
生徒から引き出したい知識
・アジアが90年代に入っても一貫し
て穀物純輸入量が増加している。
P:答える。
して穀物輸入が増加している
地域はどこでしょう?資料を
導
みてください。
・それではアジアをみていこう 。 T:資料をみて
アジアの次の資料からどのよ
うなことがわかりますか?
発問する。
P:答える。
<資料21>
・穀物生産量は上がっているが,自
給率は低下している。また,穀物
消費量が上昇している。
・【 Ⅱ】 なぜ,アジアで食料自
入
給率の低下が起こっているの
T:発問する。
でしょう?穀物消費量がこの
P:予測する。
( ・穀物輸入国となるのではないか,
など)
ままでいくと,アジアの自給
率はどうなっていくと予想さ
れますか?
・【 B】 なぜ,アジアで穀物消
T:発問する。
(・人口が増えているから)
費量が拡大しているのでしょ
P:推測する。
(・食べる量が増えたから,など)
うか?
・調べてみましょう。例えば,
あなたは1日に3食ご飯を食
T:発問する。
P:答える。
べるとして ,何合食べますか?
・1合190グラムとして,<資料
21>の国々の1996年の合計人口
T:発問して計算
してみる。
をかけたら,何トンになるで
・1日3合の場合
190g×3合×365日×30億3988万人
=632447.03千トン
しょう?
・実際は,<資料21>から1996年
に何千トン消費しています
か?
T:資料を見て
発問する。
P:答える。
・実際の消費量は762901千トンで,
人間が1日3合食べる量よりも1
億3045.4千トンも実際の消費量の
方が多い。
- 7 -
・【 B】 なぜ,アジアの穀物消
費量は多いのでしょう?
・穀物を食べているのは人間だ
けなのでしょうか?
・VTRを見てみましょう。
展
T:発問する。
(・わからない)
P:推測する。
T:発問する。
P:答える。
P:VTRを視聴
(・わからない)
VTR
する。
・肉1kgつくるのに,トウモロ
コシが何kg必要でしょうか?
T:発問する。
・8kg
P:答える。
・【 B−①】 なぜ,アジアで家
畜を飼う飼料としての穀物が
T:発問する。
必要になっているのでしょ
P:答える。
<資料22>
・【B−①】アジアで肉食が増えて
いるから
う?
・【 B−①−a】 なぜ,アジア
で肉食が増えているのでしょ
T:発問する。
<資料23>
P:答える。
<資料24>
・【B−①−a】経済発展で食生活
が豊かになり,肉食が増えたから
う?
・【 B】 それでは,なぜアジア
では穀物消費量が上昇してい
T:発問する。
・【B】アジアの経済発展は,食生
P:答える。
活の変化を生み,その結果肉食が
るのでしょうか?まとめてみ
増え,肉を生産するための穀物消
よう。
費が上昇した。そのため,自給率
の低下を招き,穀物輸入を増加さ
せている。
開 ・【 B’】本当にアジアで起こっ
T:検証のための
ているということが,具体的
事例地域を
なアジアの国で
提示する。
こっている
<資料25>
でしょうか?マレーシアをみ
てみよう。
・マレーシアの食料輸入,肉の
T:資料を見て
<資料26>
消費量は増加しているでしょ
発問する。
<資料27>
うか?また,経済は発展して
P:答える。
食肉消費量も増加している。また,
国内総生産は増加しており,経済
いますか?
発展している。
・その結果,マレーシアではど
T:資料を見て
のようなことが起こっている
発問する。
でしょうか?
・【B ’】 食料輸入が増えている。
P:答える。
<資料28>
・農林水産業人口の減少,一人当た
り国内総生産の農林水産業と製造
業の格差が拡大している。
・農業従事者の高齢化,若年労働者
の農業場慣れによる担い手が不足
している。
・【 Ⅱ】アジアでは,いったいど T:発問する。
んな食料問題が起こっている
終
P:答える。
といえるでしょう?
・【Ⅱ】経済発展による食生活の高
度化により,穀物消費量,輸入量
ともに増加し,それが自給率の低
下や農林水産業の地位の相対的低
下などを生んでいる。それはアフ
- 8 -
結
リカとは異なる新たな食料問題で
ある。
パート3
在庫処理の食料問題
発
問
・復習です。ガーナへ米や小麦
導
教授・学習活動
料
T:発問する。
を輸出していたのは,どうい
P:答える。
う国だったでしょう?また,
T:資料を見て
次の資料からどういうことが
発問する。
わかりますか?
資
生徒から引き出したい知識
・アメリカ,タイ
<資料29>
・アメリカは世界の穀物輸出大国で
ある。
P:答える。
・【 Ⅲ】アメリカは何の問題もな
いのでしょうか?
入
・これはアメリカの農業への財
T:資料を見て
<資料30>
・アメリカの農業財政支出が年々増
政支出額です。日本円になお
発問する。
<資料31>
加しており,日本の農業支出のお
してどのくらいになります
P:答える。
か?日本と比べてどうかな?
T:資料を見て
よそ 1.4倍を支出している。
説明する。
・【 C】 アメリカは,外国に多
T:発問する。
くの農産物を輸出する農業大
P:推測する。
(・わからない)
国で,食料については問題な
さそうなのに,なぜこんなに
政府はお金をかけているので
しょう?
・まず,政府は何にお金をかけ
T:資料を見て
<資料32>
・穀物への価格・所得支持支出が,
ていますか?資料をみてみよ
発問する。
<資料33>
農業支出全体の約4割を占め,政
<資料34>
府は農民にとって満足しうる目標
う。
P:答える。
価格を設定し,農家へ不足分を補
助している。また,その農産物価
格支持予算は増加傾向にある。
展
・【C−①】なぜ,生産者に目
T:発問する。
標価格を設定して,保護しな
P:推測する。
(・わからない)
いといけなかったのでしょう
?アメリカの農家は儲かって
なかったのでしょうか?
・次の資料をみてみよう。国際
T:資料を見て
価格はどうなっていますか?
発問する。
<資料35>
・【C−①】国際価格は下がってき
ている。
P:答える。
・農家の収入と規模別の資料を
T:資料を見て
- 9 -
<資料36>
・ 大規模農家ほど所得が大きく,
見てください。どういうこと
がわかりますか?
発問する。
<資料37>
P:答える。
小規模農家は儲かっていない。ま
た,農家数は減少しており,特に
小さな農家が減っている。
開 ・それでは,小さな農家が減っ
T:発問する。
た近年では,何に農業支出が
P:推測する。
(・わからない)
必要なのでしょうか?大きな
農家は国際価格が安いのに,
心配はないんだろうか?
・【 C−①−a】なぜ,国際価格 T:資料を見て
は安いんでしょうか?次の資
料からどんなことがわかりま
<資料38>
発問する。
・【C−①】【C−①−a】穀物の生
産量と在庫率が増えている。(余
P:答える。
剰農産物の増大)
すか?
・それでは作った農産物はどう
すればいいでしょうか?
・資料をみてください。アメリ
カの1農家平均の支出額です 。
Ⅰ
どのようなことがわかります
T:発問する。
(・わからない)
P:推測する。
T:資料を見て
<資料39>
・生産費に多くの費用がかかる。
発問する。
P:答える。
か?
・売ろうとした場合,作るのに
T:発問する。
お金がかかっている農産物を
P:推測する。
(・わからない)
売るには,どうする必要があ
るでしょう?
展 ・資料を見てみよう。どんなこ
とがわかりますか?
T:資料を見て
<資料40>
発問する。
・輸出しても農家が困らないよう,
輸出できるように政府が農家を補
P:答える。
助している。だから今でも支出額
は膨大なんだ。
・それだけで安心かな?大丈夫
かな?
・見つからなかったらどうなり
ますか?
開
T:発問する。
P:答える。
ない。
T:発問する。
・アメリカの大きな農家まで成り立
P:答える。
・ここでガーナへの食料援助に
T:資料を見て
ついて,思い出してみましょ
発問する。
う。ガーナの食料援助はいつ
・新たな市場を開拓しなければなら
たなくなるかもしれない。
・1980年から86年に行われた。
(1988年以降は不明)
P:答える。
頃行われたのでしょうか?
・その頃のアメリカの穀物在庫
T:資料をみて
量を調べてみましょう。資料
発問する。
からどのようなことがわかり
<資料41>
・アメリカの穀物の在庫は非常に多
かった。
P:答える。
ますか?
・【 C−①−b】なぜ,アメリカ T:資料を見て
はガーナの食料援助を行った
のでしょう?次の資料からど
発問する。
P:答える。
- 10 -
<資料42>
<資料43>
・【C−①−b】アメリカは国際食
料援助大国である。その食料援助
は,人道援助でもあるが,在庫処
んなことがわかりますか?
理と新たな市場の開拓のねらいも
Ⅱ
あった。
・【 Ⅲ】それでは,農産物輸出大 T:発問する。
国であるアメリカが抱える食
P:答える。
・【Ⅲ】生産過剰の中での輸出価格
低下が招く農業保護のための膨大
料問題とは,いったいどんな
な農業支出の問題と,在庫処理の
ことだといえるだろうか?
ための新たな市場開拓が,食料援
助輸入国にとって自国農業の育成
を阻害されているという問題。
○現代世界の食料問題とはいっ
たいどんな問題でしょうか?
T:発問する。
P:答える。
終
○発展途上国(低所得国)は食料不
足の問題,中所得国は経済発展に
伴う新たな食料不足と自給率低
下,先進農産物輸出国は在庫処理
結
とそれに伴う穀物輸入国の自国農
業育成を阻害しているという問
題。
9
教授用資料とその出典
<写真1>アフリカの栄養不足の子ども…『最新地理図表』第一学習社 2000 p.56
<写真2>バングラデシュの子ども…『図説地理資料世界の諸地域NOW』帝国書院 1999 p.60
<地図1>慢性的栄養不足…FAO『世界の食料・農業データブック下』農山漁村文化協会 平成10年 pp.479-480
<資料ア>小麦の輸出入(1999)…国勢社『世界国勢図会2001/02』p.250
<資料イ>発展途上国の人口増加数…国勢社『世界国勢図会1994/95』pp.55-59,
発展途上国の栄養不足人口…西川潤『世界経済診断』岩波ブックレット№512 2000 p.39
<資料1>栄養不足人口…FAO『世界の食料・農業データブック下』農山漁村文化協会
平成10年 p.480
<資料2>ガーナの穀物の生産量と需要量…細見眞也・島田周平・池野旬『アフリカの食糧問題』
アジア経済研究所 1996 p.34
<資料3>ガーナの穀物輸入…細見眞也・島田周平・池野旬『アフリカの食糧問題』アジア経済研究所 1996
p.35
<資料4>カカオ豆の生産…『地理統計2001』帝国書院 p.53
<資料5>ガーナの主要輸出商品の輸出額と構成比の推移…細見眞也『アフリカの農業と農民 −ガーナの事例
研究−』同文舘 平成4年 pp.204-205
<資料6>ガーナのカカオ輸出量の推移…『データブックオブザワールド』二宮書店
1990,1995,2000,2002
より作成
<資料7>ガーナのカカオ生産量の推移…『データブックオブザワールド』二宮書店
1990,1995,2000,2002
より作成
<資料8>ガーナ:ココア価格…細見眞也『アフリカの農業と農民-ガーナの事例研究-』同文舘
平成4年
p.201
<資料9>「ハイライフ」…勝俣誠『現代アフリカ入門』岩波書店 1991 p.193
<資料10>ガーナ:ココア栽培農家の平均生産費…細見眞也『アフリカの農業と農民−ガーナの事例研究−』
同文舘 平成4年 pp.48-49
- 11 -
<資料11>ケニアの輸出品目と輸出額:1997…国勢社『世界国勢図会2001/02』 p.363
<資料12>ケニア:紅茶およびコーヒーの対輸出総額比率の推移…中野一新『アグリビジネス論』
有斐閣ブックス 1998 p.180
<資料13>ケニアにおける紅茶の生産の推移…中野一新『アグリビジネス論』有斐閣ブックス 1998
p.183
<資料14>ケニアにおけるトウモロコシの生産量と輸出入量の推移…中野一新『アグリビジネス論』
有斐閣ブックス 1998 p.188
<資料15>ケニアの貿易収支と主な輸入品目…『データブックオブザワールド』二宮書店
1990,1995,2000,
2002より作成
<資料16>ケニアの貿易動向…『ジェトロ貿易シリーズ ケニア』日本貿易振興会 1991 p.62
<資料17>ケニア:食糧不足が与える影響…中野一新『アグリビジネス論』有斐閣ブックス
1998 p.189
<資料18>食料援助が必要な国…森島賢・金井道夫・大賀圭治・小山修・中川光弘『世界は飢えるか
食糧需
給長期展望の検証』全集 世界の食糧 世界の農村18 農山漁村文化協会 1995 p.118
<資料19>日本政府ベースのケニアへの資金協力…『ARCレポート2000 ケニア経済・貿易の動向と見通し』
世界経済情報サービス
平成12年 p.24
<資料20>世界主要地域別の穀物純輸出量の推移…堀内久太郎・小林弘明『東・東南アジア農業の新展開
中
国,インドネシア,タイ,マレーシアの比較研究』農林統計協会 平成12年 p.24
<資料21>アジア主要国の穀物需給の推移…堀内久太郎・小林弘明『東・東南アジア農業の新展開
ンドネシア,タイ,マ
レーシアの比較研究』農林統計協会
平成12年
中国,イ
p.23
<資料22>アジア主要国の1人当たり食肉消費量の推移…堀内久太郎・小林弘明『東・東南アジア農業の新展
開
中国,インドネシア,タイ,マレーシアの比較研究』農林統計協会 平成12年 p.24
<資料23>穀物及び肉類の消費(地域別分布)…紙谷貢『だいじょうぶか21世紀の食糧資源
現在と未来』ほるぷ出版 1992
p.14より作成
<資料24>所得水準の上昇が消費を拡大…紙谷貢『だいじょうぶか21世紀の食糧資源
と未来』ほるぷ出版
世界の食糧問題の
世界の食糧問題の現在
1992 p.13-15
<資料25>マレーシアの食料(穀物)輸入…国勢社『世界国勢図会』1990/91,1994/95,1995/96,1996/97,1997/98,
2001/02より作成
<資料26>マレーシアと日本の1人当たり年間食肉消費量の推移…堀内久太郎・小林弘明『東・東南アジア農業
の新展開
中国,インドネシア,タイ,マレーシアの比較研究』農林統計協会
平成12年 p.191
<資料27>マレーシアにおける農林水産業と製造業の就業者数と国内総生産…堀内久太郎・小林弘明『東・東
南アジア農業の新展開
平成12年
中国,インドネシア,タイ,マレーシアの比較研究』 農林統計協会
p.188
<資料28>マレーシアの第1次産業従事者の年齢構成…堀内久太郎・小林弘明『東・東南アジア農業の新展開
中国,インドネシア,タイ,マレーシアの比較研究』農林統計協会
平成12年 p.189
<資料29>主要農産物の世界生産・輸出に占めるアメリカの割合…『資料地理 2001』東京学習出版社
p.148
<資料30>アメリカ政府の農業予算の推移…薄井寛『アメリカ農業は脅威か−その強みと弱み』家の光協会
昭和63年 p.244
<資料31>農業への財政支出:日本,アメリカ…堀口健治・豊田隆・矢口芳生・加瀬良昭『食糧輸入大国への
警鐘』農山漁村文化協会 1993 p.31
<資料32>アメリカ農務省の支出…今村奈良臣・服部信司・矢口芳生・加賀爪優・菅沼圭輔『WTO体制下の食糧
農業戦略』農文協1997p.63
<資料33>アメリカの穀物価格支持のしくみ…荏開津典生『「 飢餓」と「飽食」』講談社選書
<資料34>アメリカ農産物価格支持予算の推移…荏開津典生『「飢餓」と「飽食」』講談社選書
- 12 -
1994 p.180
1994 p.181
<資料35>穀物の国際価格…荏開津典生『「 飢餓」と「飽食」』講談社選書 1994 p.167
<資料36>アメリカの農場数と農産物販売額の規模別構成比…中野一新『アグリビジネス論』有斐閣ブックス
1998 p.34
<資料37>アメリカの農家戸数の推移…『ワールド・アルマナック1992日本語版』経済界 p.114,p.119
<資料38>アメリカの穀物生産と在庫量の推移…荏開津典生『「飢餓」と「飽食」』講談社選書 1994 p.168
<資料39>アメリカ農産物販売規模別に比較した主要指標の1農場平均数値…中野一新『アグリビジネス論』
有斐閣ブックス 1998 p.35
<資料40>1986年度価格支持計画によるアメリカ政府直接補助金…荏開津典生『「 飢餓」と「飽食」』
講談社選書 1994 p.253
<資料41>世界とアメリカの穀物期末在庫量の推移…堀内久太郎・小林弘明『東・東南アジア農業の新展開
中国,インドネシア,タイ,マレーシアの比較研究』農林統計協会
平成12年 p.28
<資料42>国際食料援助の規模と構成…ケネス・L・ロビンソン・鶴見宗之介(訳)『合衆国農業・食料政策の展開
と成果』農文協 1990 p.241
<資料43>アメリカの食料援助(1996-2000)…是永東彦監修『国際食料需給と食料安全保障』農林統計協会
平成13年 p.64
10
おもな参考文献
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(1)
岩田一彦『社会科授業研究の理論』明治図書
1994
(2)
岩田一彦『社会科固有の授業理論』明治図書
2001
(3)
森分孝治『社会科授業構成の理論と方法』明治図書
(4)
中本和彦「地歴科地理・単元『ヨーロッパ』の教育内容開発−理論を中核にした地誌学習−」
全国社会科教育学会
(5)
社会科教育研究
2000
No.85
2001
原田智仁「主題学習再考−世界史学習論の批判と構造(2)−」
社会系教科教育学研究
(7)
第53号
草原和博「グローバル問題の地理的探究:GIGIの性格−<社会工学科>としての地理教育−」
日本社会科教育学会
(6)
社会科研究
1978
第12号
社会系教科教育学会
2000
姫野毅「社会問題研究としての地理−Issues in Geographyを手掛かりとして−」中国四国教育学会
教育学研究紀要
第41巻
第2部
1995
<教育内容開発関係>
(1)
速水佑次郎・神門善久『農業経済論新版』岩波書店
(2)
勝俣誠『現代アフリカ入門』岩波新書
1991
(3)
篠田豊『苦悩するアフリカ』岩波新書
1985
(4)
西川潤『世界経済診断』岩波ブックレット
(5)
小田英郎『アフリカ』自由国民社
(6)
L・デローズ/E・メッサー/S・ミルマン:中村定(訳)『誰が飢えているのか−飢餓はなぜ,どうして起こ
るのか?−」清流出版
(7)
№512
2002
2000
1996
1999
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平成4年
(8)
細見眞也『アフリカの農業と農民−ガーナの事例研究−』同文舘
(9)
山本茂・松村智明・宮田省一『地球人の地理講座1たべる』大月書店
- 13 -
平成4年
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(10)
松島政博(編)『世界の食糧と農業』家の光協会平成5年
(11)
細見眞也・島田周平・池野旬『アフリカの食糧問題−ガーナ・ナイジェリア・タンザニアの例−』
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(12)
1996
森島賢・金井道夫・大賀圭治・小山修・中川光弘『世界は飢えるか
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(13)
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(16)
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平成10年
(15)
1989
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平成12年
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筑波書房
The World Food Problem』
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(17)
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(18)
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(19)
中野一新『アグリビジネス論』有斐閣ブックス
(20)
堀口健治・豊田隆・矢口芳生・加瀬良明『食糧輸入大国への警鐘』全集世界の食料世界の農村19
農山漁村文化協会
21世紀の食糧問題』農山漁村文化協会
1992
1998
1993
(21)
手塚眞『米国農業政策形成の周辺−アメリカ農業政治・世界市場−』御茶の水書房
(22)
今村奈良臣・服部信司・矢口芳生・加賀爪優・菅沼圭輔『WTO体制下の食糧農業戦略
全集世界の食料世界の農村21
農山漁村文化協会
米欧豪中と日本』
1997
(23)
荏開津典生『「飢餓」と「飽食」食料問題の十二章』講談社選書メチエ20
(24)
薄井寛『アメリカ農業は脅威か−その強みと弱み』家の光協会
(25)
紙谷貢『だいじょうぶか21世紀の食糧資源
(26)
是永東彦『国際食料需給と食糧安全保障』農林水産文献解題№29
(27) 「ジェトロ貿易シリーズ
1988
1994
昭和63年
世界の食糧問題の現在と未来』ほるぷ出版
ケニア」日本貿易振興会
農林統計協会
1992
平成13年
1991
(28)
ARCレポート2000「ケニア経済・貿易の動向と見通し」世界経済情報サービス
(29)
ケネス・L・ロビンソン・鶴見宗之介 (訳)『合衆国農業・食料政策の展開と成果』農山漁村文化協会 1990
(30)
T・ポールマン他・紙谷貢他(訳)『世界の食料問題と農業政策の動向』農山漁村文化協会
(31)
外務省「世界食糧サミット5年後会合(概要と評価 )」http://www.mofa.go.jpmofaj/gaiko/fao/
after_5.html 2002
(32)
国際連合食糧農業機関(FAO)『世界農業白書 1992』国際食糧農業協会
(33) 『ワールド・アルマナック1992日本語版』 経済界
1993
1992
(34) 『世界国勢図会』'90/'91,'94/'95,'95/96,'96/'97,'97/'98,2001/02 国勢社
(35) 『データブック・オブ・ザ・ワールド』 VOL.2,7,11,13 二宮書店
- 14 -
平成12年
1989