マルチメディアデザイン(1) ガイダンス

マルチメディアデザイン(1)
ガイダンス
慶應義塾大学理工学部
システムデザイン工学科
西 宏章
IED-2005C 情報通信ネットワーク LAN
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授業内容
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マルチメディアとは?
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あらゆるメディアの融合
だから,なんでも扱ってもよい
とはいえ,なんでも扱うと発散してしまう
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でも,発散するなら,それでもいいや
授業内容と試験内容
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通信系・信号処理系を中心に説明
履修人数で,最終試験か課題かを決定
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授業予定
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センサネットワークシステム
画像処理・音声処理
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VoIP, 圧縮,コーデック,電子マネー,PKI,Web2.0
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一般的にマルチメディアの授業で取り上げる内容のうち技術内容
暗号
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画像・音声・情報処理
画像・音声・情報圧縮
秘密鍵暗号化と公開鍵暗号化
代表的な暗号化手法(2回程度)
最近の話題
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地デジ
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マルチメディアへの流れ
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1970年代は,音声,映像といった情報はすべてアナログで
扱われていた
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デジタルに関する理論はずっと以前からあった
ただし,半導体技術が進歩していなかったため,安価に実現できな
かった
1980年代になり,音声がデジタルで扱われるようになった
ここから爆発的にデジタル化の流れが始まる

さまざまな情報(音声,映像,さらには触覚,嗅覚など,5感
にかかわるものから,さらには超感覚的なものまで)扱うこと
ができるようになった
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そして,現在は,
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
マルチメディアをいかに扱うか?が重要になってきた
Googleは,
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人間が係るすべての情報を,あつめ,関連をまとめ,検索できること
を目指している
Web2.0の流れ
もちろん,こういった内容を扱いますが,そのまえに,
なぜ,マルチメディアを扱うことができるようになったのか?
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その根本はなんでしょうか?
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ITの進歩
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これは,ITの進歩がもたらしたということにほかなりません
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マルチメディアの要求がITを動かしたのか,
ITが進歩したからマルチメディアを扱えるようになったのか,
ニワトリとタマゴのお話のようですが
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http://www.west.sd.keio.ac.jp/in-japanese/class-j/multi
マルチメディアデザイン
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マルチメディアデザイン
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いまそこにあるIT危機
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ITにある黄金則とその破たん
どうしてITは強かったのか
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適用範囲が広く、あらゆる分野に新しい技術を提供した
確実に進歩し続けた
ITの基本は「黄金則」

IT産業に関係する企業はある「黄金則」により、どのタイミン
グでどの様な製品を投入すべきかあらかじめ計画可能

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今後もそうであると一部では信じられている
投資や製品開発を適切なタイミングで行い、確実に利益回
収できた
その黄金則とは?
「ムーアの法則」
ムーアの法則とは何か?
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世界最大の半導体メーカーIntel社の創設者の一人である
Gordon Moore博士が1965年に経験則として提唱した、「半
導体の集積密度は1年か2年で倍増する」という法則
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
同じ面積ならば、性能2倍
同一性能ならばサイズが1/2倍

ここでは、ムーアの法則を一般的な2倍/1.5年とする

この法則は驚くべき適用範囲と、恐るべき正確さを持つ
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それゆえ、さまざまな解釈を生み、それぞれが正しく推移して
いる
ゴードンムーアという人
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公演中のムーア氏
1929年米国カリフォルニア州サンフランシスコの田舎で出生
スポーツ好きな一方で化学の実験に興味をもち爆薬作りに熱中
1946年サンノゼ州立大学へ入学して希望通り化学を専攻
1948年カリフォルニア大学バークレー校に転籍、卒業後カリフォルニア工科大
学大学院へ、赤外線分光学で化学博士号を取得
最初の就職先としてワシントンDCにあるジョンズ・ホプキンス大学応用物理学
研究所の研究員
基礎研究よりも実際に役立つ研究を望み転職を希望
1956年転職活動のためローレンス・リバモア研究所に出した履歴書を知って、
半導体で有名なショックレー博士から自宅に電話
シリコン・トランジスタの商品化に向けた研究に没頭するが、ショックレー博士と
の方針の違いがしだいに鮮明になり、ノイス、ムーアを含む8人は博士の元を
去り、新たにフェアチャイルド・セミコンダクターを設立
1961年初めてICを商品化し1個1ドルという価格で大ヒット
60年代にフェアチャイルド・セミコンダクターは世界最大の半導体メーカーへ、
しかし、設立時の資金提供をしてくれた親会社と経営方針でうまくいかなくなり、
1968年7月ロバート・ノイスとともにインテルを設立
現在、インテル社名誉会長
今でもムーアの法則は健在だと言い張っている
すべては一つの講演から始まった
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1965年の講演の際、メモリーチップの成長を見通したメモ
リーの開発推移予想グラフを掲載
次の世代のチップは前の世代の2倍の容量をもち、かつ1・2
年程度で出現するだろうという予測
これをそのまま次々に適用すると指数関数的に性能が向上
することになることを発表
驚くべき適応範囲
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本来はメモリに対する法則であった
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コンピュータの記憶をつかさどるところ
かつて日本が産業のコメと言われ、ぼろ儲けしたところ
現状は、台湾などの諸外国にお株を奪われ、素晴らしい発明であった
FLASHメモリも、韓国のサムスンがシェアトップである
現在は、ありとあらゆる分野に適用されている
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プロセッサ(パソコンの心臓部)の性能
半導体の集積度
半導体の速度
半導体の性能
半導体を利用した、ありとあらゆる製品の性能
センサ性能(自動車の燃費向上)
測定器性能(遺伝子解析器の発展速度)
恐るべき正確さ
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1965年の提案から2004年まで、この法則は間違いなく確実
に生きている
トランジスタ出荷数は‘68年当時の10の9乗から現在は10の
18乗へ
トランジスタ1個当たりの価格は‘68年当時の1ドルから現在
は0.000001ドル以下へ
ムーアの法則はどこまで続くのか?
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
ムーアの法則は半導体の微細加工技術の発展を根拠として
いる
2010年代には微細化が原子レベルにまで到達
ムーアの法則は通用しなくなる?
ムーアの法則はどこまで続くのか?


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半導体製造におけるフォトエッチングの限界
光を利用しているため、光の波長よりも小さな配線は作るこ
とができない
配線を細くすると
トンネル効果により
遠紫外線発生装置
電子の漏れが発生、
正しく動作できない
レンズ
量子理論限界
マスク
シリコンウエハ
ムーアの法則はどこまで続くのか?
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半導体発熱量は、現状すでに核反応炉を越えており、今後
ロケットノズル、そしてやがては太陽の表面クラスにまで到達
プロセッサの速度向上に対して、その他のデバイスとの
ギャップが開くばかりである
半導体間の銅配線の伝送速度の限界により、実際のアプリ
ケーション速度向上が望めない
相対性理論限界
危機を迎えると
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パソコン、カメラ、携帯などIT機器は故障ではなく、性能低下
による買い替え需要により成り立っているが,この仕組みが
破綻する
IT機器が耐久消費財になる
電気メーカは収入源の多くを失う
そのほかの産業においてもダメージを受ける
(おそらく業種には例外がない)
設備投資が激減し金融が破綻する
大不況に陥るかもしれない?
延命に向けたインテルの努力
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ゲートはシリコン原子(Si)でできており、その下にはゲート絶
縁膜という層がある
回路の集積化に伴いゲート絶縁膜も極薄な物が開発され、
原子5個分(1.2ナノメートル)の厚さのものも登場
絶縁膜が薄くなるにつれて量子トンネル効果によるリーク電
流が増大してしまう問題が発生
Intel社はゲート絶縁膜の素材として、過去30年間使用され
てきた二酸化ケイ素にかえて、高誘電率の素材を使った絶
縁膜(High-k絶縁膜)を開発
金属製のゲート(メタルゲート)と組み合わせることで、リーク
電流や発熱を抑えつつトランジスタの性能を高水準で維持
これにより、近々限界を迎えると言われていた「ムーアの法
則」が、2010年代前半まで「延命」される見通しがついた?
本当に危機はくるのか?

半導体に関して到来は確実
いつくるのかについては様々な意見がある
実はすでにムーアの法則は停滞に向かっている
成長が鈍化し、4年程度でほぼ停滞
いずれにせよ抜本的な解決が必要
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それでも発展するという楽観的意見もかなりある
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その後半導体はどうなるのか?
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かなり長きに渡って利用され続ける
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Post半導体の動きが活発化する
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蓄積されたノウハウやコストの安さは魅力を持ち続けるため
ノーベル賞など足元にも及ばない、産業革命を巻き起こすぐらいの発
明が必要
光デバイスが有力視されているが、この技術も微細加工技術に影響
を受ける
結局のところ

有効な打開策はしばらく見つからないのではないか
その後どうなるのか?

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計算能力は,現在の半導体が備えている以上に劇的に向上
するのは難しいと思われる
ある種の問題、例えばデータ検索・マイニング、コンピュータ
チェス・将棋等の複雑な問題、人口知能分野においては、量
子コンピュータ、バイオコンピュータ、光コンピュータ等の応
用が考えられるが,いずれも時期尚早
よりやすく生産可能な後進国へ工場が次々に移転し,単なる
価格競争に発展
有力企業以外は製造部門が破綻?
その後どうなるのか

私見では、
世の中は,ようやく民生用途でも並列処理というものに目を
向ける時代になったと思われる.
 Intel Core2DuoプロセッサやディユアルコアAMD
プレイステーション3など
 地球シミュレータもBlue Geneも大規模並列計算機

3次元方向への拡大がすすむ

今までは,並列処理は良いといっても,開発している間に半
導体技術の進歩が速すぎて後の祭りになったプロジェクトが
多数あった
今後は並列処理が主流となり、世界が大並列処理の一員に

ちょっとしたエピソード
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もしマイクロソフトが自動車を作ったら
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かつてのビル・ゲイツの発言
「もしGMがコンピューター業界のような絶え間ない技術開発
競争にさらされて いたら、私たちの車は1台25ドルになって
いて、燃費は1ガロン1000マイル になっていたでしょう。」
これに対し、GMは次のようなコメントを出した
「もし、GMにマイクロソフトのような技術しか存在しなければ、
我が社の自動車の性能は次のようになるだろう。」


特に理由がなくても、2日に1回はクラッシュする

ユーザーは、道路のラインが新しく引き直されるた
びに、新しい車を買わなければならない

高速道路を走行中、ときどき車が動かなくなることも
あるが、これは当然のこと であり、淡々と再起動し、
運転を続けることになる。時にはエンジンを再インス
トールしなければならない

過去により運転しやすい自動車も存在したが、それ
らの自動車は全道路のたった 5%しか走ることがで
きなかったため、普及には至らなかった

オイル、水温、発電機などの警告灯は「general car
fault(一般的な自動車の警告)」という警告灯ただ一
つだけになる

エアバッグが動作するときは「本当に動作して良い
ですか?」という確認がある

車から離れると、理由もなくキーロックされてしまい、
車の外に閉め出されることがある

運転操作は、ニューモデルが出る毎に、はじめから
覚え直す必要がある。 なぜなら、それ以前の車とは
運転操作の共通性がないからである

エンジンを止めるときは「スタート」ボタンを押す