鋼矢板を用いた自立式土留め工の設計

四国地方整備局平成18年度道路技術(構造物設計)研修資料(右城)
構造物計画(土留め工の設計)
鋼矢板を用いた自立式土留め工の設計
㈱第一コンサルタンツ 右城 猛
工学博士,技術士
1.土留め工の種類
掘削時に地山が崩壊するのを防止する「土留め工」には,土留めだけを目的とした「土留」と,止水と土
留めの両方を目的とした「締切」がある。「土留め工」は,「土留」と「締切」を総称した呼び方である。
土留め工の支保工形式は,図 1.1 に示すように自立式,切梁式,アンカー式,控え杭タイロッド式に分類
できる。各支保工形式の特徴及び適用条件を表 1.1 に示す。
切梁式土留め
自立式土留め
10m程度以下
鋼矢板3m以上
親杭1.5m以上
親杭1.5m以上 10m以上は弾塑性法
掘削底面
中間杭
鋼矢板3m以上
掘削底面
切梁
土留め壁
土留め壁
3m以下
腹起し
控え杭タイロッド式土留め
アンカー式土留め
腹起し
定着
掘削底面
長
10m
の範
主働
すべ
り面
上
3~
45+φ/2
タイロッド
受働
すべ
り
45+φ/2
囲
仮想支持点
アンカー
土留め壁
掘削底面
土留め壁
腹起し
長4
m以
主働すべり面
図 1.1土留め工の支保工形式
1
控え杭
自由
面
45-φ/2
1/β
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表 1.1 土留め工の支保工形式の適用条件
形式
自立式土留め
切梁式土留め
アンカー式土留め
控え杭タイロッド式土留め
土留め工の曲げ剛性と根
切梁,腹起し等の支保工と根
土留めアンカーと根入れ地盤の
控え杭で拘束したタイロッド
支 持
入れ地盤の受働抵抗によ
入れ地盤の受働抵抗によって
受働抵抗によって土留壁を支持
と根入れ地盤の受働抵抗によ
機構
って土留壁を支持する工
土留壁を支持する工法
する工法
って土留壁を支持する工法
・適用掘削深さ
・機械掘削に際して支保工が
・切梁がないので機械掘削が容
・自立式土留めでは変位が大
軟弱地盤:H≦3m
障害になる。
易。
きくなる場合に用いられる。
良質地盤:H≦4m
・掘削面積が大きいと支保工
・偏土圧が作用する場合や任意
・アンカー式土留めより経済
・支保工がないため土留
が増える。
形状の掘削にも適応可能
的
・良質な定着地盤が必要アンカ
・背後に控え杭を設置する敷
ー打設が可能な敷地があるこ
地が必要
法
適 用
条件
め壁の変形が大きい
と。
図 1.2 切梁式土留め工の各部の名称
「労働安全衛生規則」では,岩盤または堅い粘土の地盤以外の地山を深さ 2m 以上垂直に掘削する場合に
は,土留め工を必要としている。「建設工事公衆災害防止対策要綱(平成5年)」では,土質に見合った勾配
を確保できる場合を除いて,掘削深さが 1.5m を超える場合には留め工が必要としている。また,建設工事
公衆災害防止対策要綱では,土留め工に使用する鋼矢板の型式,腹起しや切梁として使用する H 形鋼のサイ
ズを規定している。さらには腹起しや切梁の設置間隔も図 1.2 のように規定している。
土留め壁は図 1.3 のように分類される。仮設構造物として一般に使用されているのは,親杭横矢板壁と鋼
矢板壁である。親杭横矢板壁には止水機能がないので,地下水がある箇所には不適である。
2
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親杭横矢板壁
土留め板(30mm以上)
親杭
親杭(H形鋼)
土留め板
1~2m
1~2m
軽量鋼矢板
U形鋼矢板
土留壁による分類
鋼矢板壁
(シートパイル)
広幅型U形鋼矢板
ハット形鋼矢板
鋼管矢板壁
モルタル柱列壁
柱列式連続壁
ソイルセメント柱列壁
U形鋼矢板
泥水固化壁
地中連続壁(場所打ちコンクリート)
図 1.3土留め壁の種類
U形鋼矢板2)
親杭横矢板壁1)
ハット形鋼矢板3)
図 1.4 土留め壁
道路土工-仮設構造物工指針では,掘削深さが 3m 以深で使用する親杭横矢板壁には H-300×300,鋼矢板
壁にはⅢ型以上を使用するものとしている。また,3m 以浅の親杭横矢板壁には H-150×150,鋼矢板壁には
Ⅱ型以上を使用することが望ましいとしている。
鋼矢板壁はシートパイルとも呼ばれる。これには,軽量鋼矢板,U 形鋼矢板,広幅型 U 形鋼矢板,ハット
形鋼矢板がある。ハット形鋼矢板は,国土交通省の新技術活用評価委員会の評価を受けて NETIS 登録され
ている。一方向打設が可能,継手の競り合いによる貫入抵抗が小さい,壁体構築後の中立軸と鋼矢板一枚当
たりの中立軸が一致する断面形状をしているため継手効率を 100%期待できるなどの特長を有している。
写真の出典
1) 有限会社マイトホームページ http://www.mights.co.jp/HTML/genba06.htm
2)JFE スチール株式会社ホームページ http://www.jfe-steel.co.jp/products/kenzai/doboku/koyaita/07_sekouhou.html
3) JFE スチール株式会社ホームページ http://www.jfe-steel.co.jp/products/katakou/kouyaita/kouyaita_e.html
3
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2.自立式鋼矢板土留め工の設計法
( 1 ) 概 説
自立式土留め工の解析法は,極限平衡法,弾性法,弾塑性法の3種類に大別できる。従来,道路関係では
極限平衡法が,河川関係では弾性法が採用されていたが,平成11年3月の道路土工指針の改訂以降は,道
路関係でも弾性設計法が使われている。
a) 極限平衡法
極限平衡法は,矢板が前方に十分変位して地盤が完全に塑性化したと仮定し,図 2.1(a)に示すように矢板
の背面には主働土圧,根入れ部の前面には受働土圧を作用させて解析する方法である。
主働土圧による転倒モーメントと受働土圧による抵抗モーメントが等しくなる深さ (=つり合い深さ L0)
を求め,つり合い深を 1.2 倍して根入れ長さとしている。
極限平衡法は合理的でしかも計算が簡単な解析法であるが,矢板の変位を求められないという欠点がある。
b) 弾性法
弾性法は,図 2.1(b)のように矢板の根入れ部が「離散型のバネ」(ウインクラーバネとも呼ぶ)で支持さ
れた「弾性床上の梁」として解析する方法である。
「弾性床上の梁」の解析はかなり複雑であるが,根入れ長がπ/β以上あれば「半無限長の梁」と見なすこ
とができるので簡便になる。βは特性長と呼ばれ,長さの逆数(1/m)の単位を持つパラメータである。
道路土工-擁壁工指針では,根入れ長を 2.5/β以上とすることにしている。「2.5/βの根入れがあれば, 解
析結果はπ/βとほとんど変わらない」というのがその理由のようである。
弾性法では,地盤反力度 p は矢板の変位δに比例するものとして p=kδとして算定する。このため,根入
れの浅い所では,地盤反力が受働土圧を超えるという力学的な不合理を生じる。また,根入れ長を 2.5/β以
上とすれば,掘削深さとは無関係に,地盤の硬さ(地盤反力係数)と矢板の種類(曲げ剛性)だけで根入れ長が
決まることになる。
c) 弾塑性法
弾塑性法は,地盤反力が受働土圧を超えるという弾性法のもつ不合理を解消した解析法である。地盤反力
度 p が受働土圧 pP と等しくなる深さを求め,その点より浅い範囲は塑性化した領域と見なして受働土圧を作
用させ,その点より深い範囲は弾性領域であるので離散型のバネで支持されている,として解析する方法で
ある。
鋼矢板
EI
鋼矢板
EI
h
鋼矢板
EI
主働土圧
p0=kδ0
PA
主働土圧
受働土圧=地盤反力
PA
主働土圧
L=1.2L0
z
L0
PP
=γ
pP
z
KP
yP
0.2L0
(a)極限平衡法
PA
yA
働
受
圧
土
=γ
pP
z
KP
L=2.5/β
受働土圧
地盤反力
p=kδ
k
(b)弾性法
図 2.1 自立式土留め工の解析法
4
f
受働土圧 PP
圧
土 z
働 γK P
受 =
pP
地盤反力
p=kδ
k
(c)弾塑性法
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弾塑性法では,一般に有限長梁として解析するので,根入れ長に 3/β以上あるいは 2.5/β以上といった制
限を設ける必要はない。掘削深さや土圧の大きさに応じて根入れ部の地盤の塑性化深さが決まってくるので,
根入れ地盤全体が塑性化しないことを確認すればよい。
弾塑性法は最も合理的な解析法であるが,弾性床上の有限長梁として解析しなければならないので,計算
が複雑になる。とは言っても表計算ソフト「エクセル」などを利用すれば比較的簡単である。
( 2 ) 弾性床上の梁理論
a) 一般解
梁のたわみ曲線の微分方程式は,次式で表される。
d 4δ
EI 4 = − kδ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2.1)
dx
ここに,E は矢板のヤング率,I は矢板の断面2次モーメント,x は掘削面からの深さ,δは x の深さにお
ける矢板のたわみ,k はバネ定数である。
微分方程式の一般解は,次のようになる。
δ = e βx (C1 cos βx + C2 sin βx) + e − βx (C3 cos βx + C4 sin β x) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2.2)
ここに,C1,C2,C3,C4 は積分定数。βは特性値と呼ばれ,長さの逆数の次元を持つパラメータであり次
式で表される。
β =4
k
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2.3)
4EI
梁のたわみδと,たわみ角θ,曲げモーメント M,せん断力 S の関係は次のように表される。
dδ
⎫
θ=
⎪
dx
⎪
2
d δ⎪
M = − EI 2 ⎬ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2.4)
dx ⎪
d 3δ ⎪
S = − EI 3 ⎪
dx ⎭
M0
変位δ
H0
たわみ角θ
曲げモーメントM
せん断力 S
(-)
(-)
(+)
(-)
L
k
x
(+)
EI
(+)
(-)
図 2.2 弾性床上の梁
5
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式(2.2)と式(2.4)より,
θ = − βe βx [C1 (cos β x − sin β x) + C2 (cos β x + sin β x)] + β e − βx [C3 (cos β x + sin β x) − C4 (cos β x − sin βx)]
M =
S=
k
2β 2
[e
βx
(C1 sin βx − C2 cos βx) − e − βx (C3 sin βx − C4 cos βx)
]
[
]
β βx
e {C1 (cos βx + sin βx) − C2 (cos βx − sin βx)} − e − βx {C3 (cos βx − sin βx) + C4 (cos β x + sin β x)}
2β
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2.5)
b) 有限長の梁に対する解
図 2.2 に示すように矢板の根入れ長を L,矢板先端の拘束をフリーとすると,掘削面(x=0)および矢板先端
(x=L)における境界条件は次のように表される。
⎫
⎡ d 2δ ⎤
⎡ d 3δ ⎤
掘削面の境界条件 ⎢ EI 2 ⎥ = M 0 , ⎢ EI 3 ⎥ = H 0 ⎪
⎣ dx ⎦ x =0
⎣ dx ⎦ x =0
⎪
⎬ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2.6)
2
3
⎡ d δ⎤
⎡ d δ⎤
⎪
矢板先端の境界条件 = 0 , =0 ⎪
⎢ EI 2 ⎥
⎢ EI 3 ⎥
dx
dx
⎣
⎦ x=L
⎣
⎦ x= L
⎭
4個の境界条件式が立てられたので,これより4個の積分定数 C1,C2,C3,C4 を決めることができる。
掘削面から x の深さにおけるたわみδ,たわみ角θ,曲げモーメント M,せん断力 S は下記のようになる。
2β
[H 0 (sinh βL ⋅ G2 − sin βL ⋅ F2 ) − M 0 β {sinh βL(G3 − G4 ) − sin βL( F3 − F4 }]
δ=
2
k (sinh βL − sin 2 β L)
2β 2
[H 0 {sinh βL(G3 + G4 ) + sin βL( F3 + F4 )} − 2M 0 β {sinh βL ⋅ G2 + sin βL ⋅ F2 }]
k (sinh 2 β L − sin 2 β L)
1
[H 0 {sinh βL ⋅ G1 + sin βL ⋅ F1} + M 0 β {sinh βL(G3 + G4 ) − sin βL( F3 + F4 )}]
M =−
2
β (sinh β L − sin 2 βL)
1
[H 0 {sinh βL(G4 − G3 ) − sin βL( F3 − F4 )} − 2M 0 β {sinh βL ⋅ G1 + sin βL ⋅ F1}]
S =−
(sinh 2 βL − sin 2 βL)
θ=
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2.7)
ただし,
G1 = sin β x ⋅ sinh β ( L − x) ,F1 = sin β ( L − x) ⋅ sinh βx ⎫
⎪
G2 = cos β x ⋅ cosh β ( L − x) ,F1 = cos β ( L − x) ⋅ cosh βx ⎪
⎬ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2.8)
G3 = sin βx ⋅ cosh β ( L − x) ,F1 = sin β ( L − x) ⋅ cosh βx ⎪
G4 = cos β x ⋅ sinh β ( L − x) ,F1 = cos β ( L − x) ⋅ sinh β x ⎪⎭
長さ L のⅢ型鋼矢板の上端に水平力 H0=100kN を作用させたとき,矢板のたわみおよび曲げモーメントが
相対曲げ剛性(βL)によってどのような曲線を描くかを示すと図 2.3 のようになる。図 2.4 は図 2.3 と同じ条
件で,相対曲げ剛性(βL)と矢板天端のたわみ,最大曲げモーメントの関係を表したものである。
βL が大きいほど矢板上端のたわみは小さくなる。βL=1.0 では,矢板は剛体(EI=∞)的に変形する。曲げ
モーメントはβL に伴って大きくなる。また,βL がπ以上においては,たわみも曲げモーメントも一定に
収束する。つまり,βL>πであれば,矢板長を無限長(L=∞)と見なすことができる。
6
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根入れ部の矢板の最大曲げモーメントM(kN・m/m)
根入れ部の矢板のたわみδ(m)
-0.03 -0.02 -0.01
0
0.01
0.02
0.03
0.04
0.05
0.06
0
0
1
1
0
=1.
βL
2
1.5
剛体的変形
3
3
4
4
根入れ深さx (m)
2.0
βL=2.5
5
6
20
30
40
50
60
70
80
90
.0
=1
βL
2
β
L=
βL=
10
= 1.
βL
5
=2
βL
.0
=2
βL
5
β
3.0
L=
β
L
.5
H0=100kN
.5
=3
6
Ⅲ型鋼矢板
根入れ深さx (m)
0
βL=3.0
7
L
7
8
8
βL=3.5
9
9
図 2.3 相対曲げ剛性βL と矢板のたわみ,曲げモーメント
矢板の最大曲げモーメント
M(kN・m/m)
掘削面の水平変位δ(m)
90
剛体
0.14
0.12
有限長の梁
半無限長の梁
0.1
0.08
0.06
0.04
0.02
0
0
1
2
3
4
相対曲げ剛性βL
5
80
70
50
40
30
有限長の梁
半無限長の梁
20
10
0
6
剛体
60
0
1
2
3
4
5
6
相対曲げ剛性βL
(a) 相対曲げ剛性とたわみの関係
(b) 相対曲げ剛性と最大曲げモーメントの関係
図 2.4 相対曲げ剛性βL と矢板のたわみ,曲げモーメント
M0=100kN-m
[計算例 2.1]
H0=100kN
図 2.5 に示す鋼矢板のたわみ,たわみ角,曲げモーメント,せん断力を
有限長の梁として計算せよ。
特性値 β = 4
k
3,000
=4
= 0.3865 m-1 4 EI
4 × 33,600
特性長 β L = 0.3865 × 6.0 = 2.319 > π
L=6.0m
βL<πなので半無限長とは見なせない
x を 0 からり L=6m まで 0.3m 刻みに変化させて表計算ソフトエクセルで
k=3,000kN/m
解答
x
鋼矢板Ⅲ型
E=2×108kN/m2
I=0.000168m4
EI=33,600 kNm2
計算した結果を表 2.1 に示す。
表2.1 の計算結果をエクセルのブラフウィザードを用いて散布図として
描かせたものを図 2.6 に示す。
7
図 2.5 有限長の鋼矢板の計算例
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表 2.1 エクセルによる計算結果
x(m)
x'=L-x(m) G1(x,x')
F1(x' ,x)
G2(x,x')
F2(x' ,x)
G3(x,x')
F3(x' ,x)
G4(x,x')
F4(x' ,x)
δ(m)
θ(rad)
M(kNm)
S(kN)
0.0
6.0
0.000
0.000
8.571
-0.954
0.000
0.299
8.512
0.000
0.0076
0.0003
-100.00
-100.00
0.3
5.7
1.043
0.061
7.370
-0.912
1.053
0.435
7.303
-0.128
0.0065
0.0011
-124.17
-61.65
0.6
5.4
1.790
0.159
6.211
-0.866
1.812
0.577
6.136
-0.239
0.0055
0.0017
-138.00
-30.55
0.9
5.1
2.286
0.292
5.123
-0.814
2.323
0.728
5.041
-0.327
0.0045
0.0020
-143.56
-5.99
1.2
4.8
2.575
0.458
4.126
-0.750
2.631
0.892
4.039
-0.385
0.0037
0.0022
-142.69
12.80
1.5
4.5
2.698
0.654
3.233
-0.668
2.776
1.071
3.142
-0.408
0.0029
0.0023
-137.01
26.58
1.8
4.2
2.691
0.876
2.447
-0.559
2.794
1.267
2.357
-0.387
0.0022
0.0023
-127.90
36.10
2.1
3.9
2.584
1.121
1.770
-0.415
2.716
1.478
1.684
-0.315
0.0016
0.0022
-116.52
42.08
2.4
3.6
2.406
1.383
1.197
-0.226
2.571
1.702
1.120
-0.184
0.0011
0.0020
-103.82
45.16
2.7
3.3
2.179
1.654
0.720
0.019
2.380
1.932
0.659
0.016
0.0006
0.0019
-90.58
45.93
3.0
3.0
1.923
1.923
0.331
0.331
2.162
2.162
0.294
0.294
0.0003
0.0017
-77.39
44.90
3.3
2.7
1.654
2.179
0.019
0.720
1.932
2.380
0.016
0.659
0.0000
0.0016
-64.69
42.50
3.6
2.4
1.383
2.406
-0.226
1.197
1.702
2.571
-0.184
1.120
-0.0003
0.0014
-52.83
39.11
3.9
2.1
1.121
2.584
-0.415
1.770
1.478
2.716
-0.315
1.684
-0.0005
0.0013
-42.01
35.01
4.2
1.8
0.876
2.691
-0.559
2.447
1.267
2.794
-0.387
2.357
-0.0007
0.0012
-32.37
30.44
4.5
1.5
0.654
2.698
-0.668
3.233
1.071
2.776
-0.408
3.142
-0.0009
0.0011
-23.97
25.57
4.8
1.2
0.458
2.575
-0.750
4.126
0.892
2.631
-0.385
4.039
-0.0010
0.0010
-16.84
20.54
5.1
0.9
0.292
2.286
-0.814
5.123
0.728
2.323
-0.327
5.041
-0.0011
0.0010
-10.93
15.43
5.4
0.6
0.159
1.790
-0.866
6.211
0.577
1.812
-0.239
6.136
-0.0013
0.0010
-6.21
10.29
5.7
0.3
0.061
1.043
-0.912
7.370
0.435
1.053
-0.128
7.303
-0.0014
0.0010
-2.59
5.14
6.0
0.0
0.000
0.000
-0.954
8.571
0.299
0.000
0.000
8.512
-0.0016
0.0010
0.00
0.00
sinh βL = sinh 2.319 = 5.034 sin β L = sin 2.319 = 0.7328
たわみδ(m)
0.01
0.005
曲げモーメントM (kN・m)
たわみ角θ(rad)
0
-0.005
0.003
0.002
0.001
0
0
-100
-200
せん断力S (kN)
100
0
-100
0
0
0
0
1
1
1
1
2
2
2
2
3
3
3
3
4
4
4
4
5
5
5
5
6
6
6
6
-200
図 2.6 計算結果
c) 半無限長の梁に対する解
矢板の根入れ長を半無限長(L=∞)とすると,式(2.2)は次のようになる。
δ = e − βx (C1 cos β x + C2 sin βx) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2.9)
掘削面(x=0)における境界条件は次のように表される。
⎡ d 2δ ⎤
⎡ d 3δ ⎤
⎢ EI 2 ⎥ = M 0 , ⎢ EI 3 ⎥ = H 0 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2.10)
⎣ dx ⎦ x=0
⎣ dx ⎦ x=0
2 個の境界条件式が立てられたので,これより 2 個の積分定数 C1,C2 を決めることができる。掘削面から
x の深さにおけるたわみδ,たわみ角θ,曲げモーメント M,せん断力 S は下記のようになる。
この式は林圭一(1921),Y.L.Chang(1937)によって誘導されたもので,林-チャン式あるいはチャン式と呼
ばれている。
8
四国地方整備局平成18年度道路技術(構造物設計)研修資料(右城)
H0
⎫
e − βx {(1 + βh0 ) cos β x − βh0 sin β x}⎪
2 EIβ 3
⎪
H 0 − βx
⎪
M =−
e {(1 + βh0 ) sin βx + βh0 cos βx} ⎬ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2.11)
β
⎪
⎪
S = − H 0 e − βx {cos βx − (1 + 2βh0 ) sin βx}
⎪
⎭
δ=
ここに,
h0 =
M0
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2.12)
H0
掘削面(x=0)におけるたわみδ,たわみ角θは次のようななる。
1 + β h0
⎫
δ=
H0 ⎪
2 EIβ 3
⎪
⎬ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2.13)
1 + 2βh0
⎪
θ=
H
0
⎪⎭
2 EIβ 2
曲げモーメントが最大になる深さ lm と,最大曲げモーメント Mm は,次のようななる。
1
1
⎫
lm = tan −1
⎪
β
1 + 2βh0
⎪
⎬ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2.14)
H0
2
Mm = −
(1 + 2βh0 ) + 1 ⋅ exp(− β lm )⎪
⎪⎭
2β
( 3 ) 道路土工指針に基づいた設計法
a) 荷重
・上載荷重
地表面の上載荷重は,一般には 10kN/m2 とする。建設用重機など特に大きな荷重を載荷する場合はそれを
考慮する。
・水圧と土圧
掘削底面より上に,水圧と主働土圧を作用させる。水圧は静水圧とする。道路土工指針では,主働土圧を
式(2.15),式(2.16)に示すランキン式で算定することとしている。ランキン式を使うのは計算を簡単にするた
めである。
q
q
pAmin=0.3γh
pA
pA
H
pw
H
pw
掘削底面
掘削底面
土圧
土圧
水圧
(a) 砂質土地盤
(b) 粘性土土地盤
図 2.7 自立式矢板に作用する荷重
9
水圧
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クーロン式において壁面の傾斜角を鉛直,壁面の摩擦角をゼロと置いて計算すればランキン式と同じ結果
になる。
p A = (σ 'v + q )K A − 2c K A ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2.15)
φ⎞
⎛
− ⎟ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2.16)
K A = tan 2 ⎜ 45゜
2⎠
⎝
ここに,pA は主働土圧強度(kN/m2),KA は主働土圧係数,σ’v は着目点における地盤の有効土被り圧(kN/m2),
q は地表面の載荷重(kN/m2),c は土の粘着力(kN/m2),φは土の内部摩擦角(度)である。
なお,粘性土地盤においては,主働土圧は式(2.17)で算定される値を下限値とする。
p A min = 0.3γh ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2.17)
ここに,pAmin は粘性土地盤における主働土圧の下限値 (kN/m2)
[計算例 2.2]
図 2.8 に示す自立式土留め工の掘削底面より上に作用する主働土圧を算定せよ。
解答
q=10kN/m2
H=3.00m
(2)鉛直応力σと主働土圧強度 PA,最小土圧強度 pO
粘性土 γ1=16kN/m3、φ=0、c=10kN/m2
z
h2=1.00m
φ⎞
0⎞
⎛
⎛
K A = tan 2 ⎜ 45 − ⎟ = tan 2 ⎜ 45 − ⎟ = 1.000
2⎠
2⎠
⎝
⎝
φ⎞
24 ⎞
⎛
⎛
砂質土層 K A = tan 2 ⎜ 45 − ⎟ = tan 2 ⎜ 45 − ⎟ = 0.422
2 ⎠
2⎠
⎝
⎝
粘性土層
h1=2.00
(1) 主働土圧係数
砂質土
γ2=18kN/m3、φ=24゜、c=0
Lo
上面
σ 1u = q = 10kN/m 2
鋼矢板Ⅱ型
粘性土層(第1層)
砂質土
N値 6
p A1u = σ 1u K A − 2c K A = 10 × 1.00 − 2 × 10 × 1.00 = −10kN/m 2
po1u = 0.3σ 1u = 0.3 × 1.00 = 0.30 tf/m 2 > p A1u
図 2.8 設計条件
下面
σ 1l = σ 1u + γ 1 ⋅ h1 = 10 + 16 × 2.00 = 42kN/m 2
p A1l = σ 1l K A − 2c K A = 42 × 1.00 − 2 × 10 × 1.00 = 22kN/m 2
po1l = 0.3σ 1l = 0.3 × 42 = 12.6kN/m 2 < p A1l
砂質土層(第2層)
上面
σ 2 u = σ 1l = 42kN/m 2
p A 2u = σ 2u K A − 2c K A = 42 × 0.422 − 2 × 0 × 0.422 = 17.7kN/m 2
po 2u = 0.3σ 2u = 0.3 × 42 = 12.6kN/m 2 < p A 2u
下面
σ 2l = σ 2u + γ 2 ⋅ h2 = 42 + 18 × 1.00 = 60kN/m 2
p A2l = σ 2l K A − 2c K A = 60 × 0.422 − 2 × 0 × 0.422 = 25.3kN/m 2
po 2l = 0.3σ 2l = 0.3 × 60 = 18kN/m 2 < p A2l
(3)主働土圧と最小土圧が等しくなる深さと土圧強度
10
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zm =
σ 1u (K A − 0.3) − 2c K A
10 × (1.00 − 0.3) − 2 × 10 × 1.00
h =
× 2.00 = 1.16m
(0.3 − K A )(σ 1l − σ 1u ) 1
(0.3 − 1.00) × (42 − 10)
σ m = σ 1u + γ 1 ⋅ z m = 10 + 16 × 1.16 = 28.6kN/m 2
pom = 0.3σ m = 0.3 × 28.6 = 8.6kN/m 2
(4)土圧合力と作用位置
粘性土層(第1層)
z
1.16
(3 + 8.6) = 6.7kN/m
PA1 = m ( po1u + pom ) =
2
2
z ⎛ 2 p + pom ⎞
1.16 ⎛ 2 × 3 + 8.6 ⎞
⎟⎟ + H − z m =
×⎜
y A1 = m ⎜⎜ o1u
⎟ + 3.00 − 1.16 = 2.33m
3 ⎝ po1u + pom ⎠
3 ⎝ 3 + 8.6 ⎠
h1 − z m
( pom + p A1l ) = 2.00 − 1.16 × (8.6 + 22) = 12.9kN/m 2
2
h − z ⎛ 2 p + p A1l ⎞
2.00 − 1.16 ⎛ 2 × 8.6 + 22 ⎞
⎟ + h2 =
×⎜
y A1 ' = 1 m ⎜⎜ om
⎟ + 1.00 = 1.36m
3 ⎝ pom + p A1l ⎟⎠
3
⎝ 8.6 + 22 ⎠
PA1 ' =
砂質土層(第2層)
1.00
h
(17.7 + 25.3) = 21.5kN/m
PA 2 = 2 ( p A2u + p A2l ) =
2
2
h ⎛ 2 p + p A2l ⎞ 1.00 ⎛ 2 × 17.7 + 25.3 ⎞
⎟=
×⎜
y A1 = 2 ⎜⎜ A 2u
⎟ = 0.47 m
3 ⎝ p A2u + p A2l ⎟⎠
3 ⎝ 17.7 + 25.3 ⎠
土圧合力
PA = PA1 + PA1 '+ PA2 = 6.7 + 12.9 + 21.5 = 41.1kN/m
土圧合力の作用位置
P ⋅ y '+ P ⋅ y + PA1 '⋅ y A2 6.7 × 2.33 + 12.9 × 1.36 + 21.5 × 0.47
h0 = A1 A1 A2 A1
=
= 1.05m
41.1
PA
zm=1.16m
h1=2.00
PA1
pom=8.6kN/m2
pA1l
h2=1.00m
H=3.00m
pA1u=-10kN/m2 po1u=3.0kN/m2
PA1’
=22.0kN/m2
po1l
=12.6kN/m2
pA2u=117.7kN/m2 po2u=12.6kN/m2
yA1’
PA2
yA1
yA2
Lo
pA2l=25.3kN/m2 po2l=18.0kN/m2
土圧強度
土圧合力作用位置
図 2.9 土圧分布
【参 考】側圧係数
土留め壁には土圧と間隙水圧が作用するが,粘性土の場合には土圧と間隙水圧を分離することが難しい。
このため,粘性土地盤に対しては,土圧と間隙水圧を一体とした側圧を用いるのがよい。
11
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表 2.2 側圧係数 [道路土工-仮設構造物工指針,1999 年]
N値
側圧係数の推定式
側圧係数の最小値
N≧8
K=0.5-0.01H
0.5
4≦N<8
K=0.6-0.01H
0.6
2≦N<4
K=0.7-0.025H
0.7
N<2
K=0.8-0.025H
0.8
側圧は次式で算定することができる。
p = pa + pw = KγH ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2.18)
ここに, p は側圧(kN/m2),paは主働土圧(kN/m2),pw は間隙水圧(kN/m2),γは土の湿潤単位体積重量,K
は側圧係数である。側圧係数は表 2.2 で求めることができる。
b) 根入れ長の計算
矢板の根入れ長 L は,下記の①~③で求められる根入れ長のうちの最大のものとする。
① 最小根入れ長
掘削深さが H<3m の場合: L≧H
掘削深さが H≧3m の場合: L≧3m
② 半無限長と見なせる根入れ長(Chang 式が適用できる根入れ長)
2.5
L≥
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2.19)
β
β =4
k
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2.20)
4EI
理論上,半無限長と見なせる根入れ長は L>π/βであるが,道路土工指針では L>2.5/βでも良いとして
いる。参考までに地盤の N 値と 2.5/βの関係を示すと図 2.10 のようになる。地盤の N 値が小さいほど,曲
げ剛性が大きい矢板ほど根入れ長は長くなる。
③ 掘削底面の安定を確保する上で必要な根入れ長
ボイリング,パイピング,ヒービング,盤膨れに対する安全が確保できるように決定する。掘削底面の安
定性の照査法については後述する。
10
PA
h
Ⅳ型
Ⅲ型
Ⅱ型
8
L = 2. 5 × 4
4 EI
k
6
L=2.5/β
必要根入れ長 L=2.5/β (m)
12
4
2
0
5
10
15
20
25
30
35
40
根入れ地盤のN値
図 2.10 根入れ地盤の N 値と必要根入れ長の関係
12
k
β =4
k
4EI
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δ
c) 変位の計算
δ3
矢板頭部の変位量は次式で算定する。
δ2
δ1
δ = δ1 + δ 2 + δ 3 ( 2.21)
ここに,δは矢板頭部の変位量,δ1 は掘削底面での変位量,δ2 は掘削
三角形換算
底面でのたわみ角による変位量,δ3 は掘削底面より上の片持梁のたわみ。
δ1,δ2,δ3 は次式で算定する。ただし,式(2.22)と式(2.23)が適用できる
のはβL>2.5 の場合である。βL<2.5 の場合には,有限長の梁として計算
H
M0
掘削底面
H0
しなければならない。
1 + βh0
H0
δ1 =
( 2.22)
2 EIβ 3
L
k
1 + β h0
δ2 =
H
H
(
2.23)
0
2 EIβ 2
h
δ 3 = 0 H 0 H 2 ( 2.24)
図 2.11 変位の計算
5EI
M
h0 = 0 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2.25)
H0
β =4
k
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2.26)
4EI
ここに,H は掘削深さ(m),H0 は土圧と水圧による水平力(kN),M0 は掘削底面位置における土圧と水圧に
よるモーメント(kN-m), E は矢板のヤング率で 2×108kN/m2,I は矢板幅 1m 当たりの断面2次モーメント,
k はバネ定数である。
矢板に U 形鋼矢板を使用する場合の断面2次モーメント I には,継手効率 0.45 を考慮しなければならない。
ただし,鋼矢板継手部の掘削面側を鋼矢板頭部から 50cm 程度溶接したり,コンクリートで鋼矢板頭部を 30cm
程度の深さまで連結して固定したもの等については,継手効率を 0.80 まで上げることができる。
d) 応力度の計算
鋼矢板の曲げ応力度σは次式で算定する。
M
σ = m ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2.27)
Z
ここに,Z は矢板幅 1m 当たりの断面係数。矢板に U 形鋼矢板を使用する場合の断面係数には,継手効率
0.6 を考慮しなければならない。ただし,鋼矢板継手部の掘削面側を鋼矢板頭部から 50cm 程度溶接したり,
コンクリートで鋼矢板頭部を 30cm 程度の深さまで連結して固定したもの等については,継手効率を 0.80 ま
で上げることができる。
e) バネ定数
地盤のバネ定数 k は式(2.29)で算定する。
k = B ⋅ k H ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2.28)
ただし,
−
3
⎛B ⎞ 4
k H = k H 0 ⎜ H ⎟ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2.29)
⎝ 0.3 ⎠
1
α ⋅ E0 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2.30)
kH 0 =
0.3
ここに, k はバネ定数(kN/m),B は土留め壁の幅である。通常は B=1m として計算する。BH は換算載荷幅
13
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で,BH=10m とする。E0 は土の変形係数(kN/m2),αは E0 の求め方に対応する係数である。ボーリング孔内水
平載荷試験,一軸圧縮試験,三軸圧縮試験から E0 を求める場合はα=1.0 とする。
αE0 は次の経験式で推定しても良い。
砂質土 αE0 = 2,800 N ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2.31)
粘性土 αE0 = 210c ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2.32)
ここに,N は標準貫入試験の N 値,c は土の粘着力(kN/m2)である。これよりバネ定数 k は次式のように表
せる。
砂質土 k = 673N ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2.33)
粘性土 k = 50c ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2.34)
f) 鋼矢板の継手効率(断面性能の有効率)
U形鋼矢板壁の中立軸は,図 2.12(左)に示すように矢板1枚のときと連結したときでは異なる。連結した
ときの中立軸は,継手位置と同じ壁体中心線に一致する。このため,土圧や水圧の作用を受けて曲げ変形す
ると,継手位置に鉛直方向のせん断応力が発生し,継手のせん断抵抗が不足していると継手がずれる。この
ため,隣合った矢板が一体として抵抗できなくなる。
こうしたことから,矢板の変位や応力度の計算に用いる断面2次モーメントや断面係数などには,継手が
ずれないとした時の断面性能の値に対して 1 より小さい係数を乗じたものを用いることにしている。この係
数を継手効率あるいは断面性能の有効率と呼んでいる。
継手にすべり抵抗が全くなければ,断面二次モーメントの継手効率は 0.3 程度,断面係数の継手効率は 0.4
程度になる。
ハット形鋼矢板は,1枚の時も連結したときも中立軸は壁体中心線に一致し,継手位置は壁体の外側とな
る。このため,継手位置にせん断応力が発生しないので継手効率は常に 1 となる。
表 2.3 U 形鋼矢板の断面性能
断面二次モーメント I (cm4)
断面係数 Z(cm3)
①1枚
②2.5 枚当たり
③幅 1m 当たり
比率
①1枚当
②2.5 枚当たり
③幅 1m 当たり
比率
当たり
(継手抵抗なし)
(継手が結合)
②/③
たり
(継手抵抗なし)
(継手が結合)
②/③
Ⅱ型
1,240
3,100
8,740
0.35
152
380
874
0.43
Ⅲ型
2,220
5,550
16,800
0.33
223
558
1,340
0.42
Ⅳ型
4,670
11,675
38,600
0.30
362
905
2,270
0.40
種類
1枚のときの中立軸=連結したときの中立軸
連結したときの中立軸
1枚のときの中立軸
U形鋼矢板
ハット形鋼矢板
図 2.12 鋼矢板の中立軸
14
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表 2.4 U 形鋼矢板の継手効率(断面性能の有効率)
継手効率(断面性能の有効率)
計算種別
一般の場合
継手部の掘削面側を矢板頭部から 50cm 程度溶接
鋼矢板頭部から 30cm 程度の深さまでコンクリートで固定
根入れ長の決定におけるβ
断面二次モー
の計算
メント
断面力,変位の計算および
これに用いるβの計算
断面係数
応力度の計算
1.0
1.0
0.45
0.8
0.6
0.8
道路土工-仮設構造物工指針では,U 形鋼矢板の継手効率(断面性能の有効率)を表 2.4 のように規定して
いる。
[計算例2.3]
図 2.8 に示した自立式土留め工について根入れ長を決定せよ。また,計算例2.2で求めた荷重を用いて
矢板の変位量と応力度を照査せよ。
解答
(1)バネ定数
掘削底面の N 値
N=6
k=673N=673×6=4,038kN/m3
バネ定数
(2)根入れ長
矢板の種類 U 形鋼矢板Ⅱ型
矢板のヤング係数 E=2×108 kN/m2
矢板幅 1m 当たりの断面2次モーメント I0=1.68×10-4m4
有効曲げ剛性 EI = αEI 0 = 1.0 × 2 × 108 × 1.68 × 10 −4 = 33,600 kNm2
矢板の特性値
β = 4
k
4,038
=4
= 0.416m −1
4E ⋅ I
4 × 33,600
根入れ長
2.5
2.5
L =
=
= 6.0m
0.416
β
(3)変位量
有効曲げ剛性 EI = αEI 0 = 0.45 × 2 × 108 × 1.68 × 10 −4 = 15,120 kNm2
矢板の特性値
β = 4
k
4,038
=4
= 0.508m −1
4E ⋅ I
4 × 15,120
掘削高 H=3m
掘削底面位置の水平力 H0=41.1kN
水平力の作用位置 h0=1.05m
掘削底面での変位量
15
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δ 1 = 1 + β ⋅ h3 0 H 0 = 1 + 0.508 ×1.05 3 × 41.1 = 0.001m
2 EIβ
2 ×15,120 × 0.508
掘削底面でのたわみ角による変位量
δ 2 = 1 + 2β ⋅2h0 H 0 ⋅ H = 1 + 2 × 0.508 × 1.052 × 41.1× 3.0 = 0.033m
2 EIβ
2 × 15,120 × 0.508
掘削底面以上の片持梁のたわみ
δ 3 = h0 H 0 H 2 =
5 EI
1.05
× 41.1× 3.0 2 = 0.005 m
5 × 15,120
矢板頭部での水平変位量
δ=δ1+δ2+δ3=0.001+0.033+0.005=0.039m=3.9cm
許容水平変位量
δa=0.03H=0.03×3.0=0.09m=9.0cm>δ=3.9cm
(O.K.)
(4)応力度
最大曲げモーメントが発生する深さ
1
1
1
1
lm = tan −1
tan −1
=
= 0.887m
1 + 2 βh0 0.508
β
1 + 2 × 0.508 × 1.05
逆三角関数
tan A = x のように与えられているとき,A の角度は逆三角関数を用いて A = tan −1 x のように求めることが
できる。tan-1484 は「アーク・タンジェント・エックス」と読む。
表計算ソフト Excel では,ATAN(x)と表す。例えば,x=0.484 であれば,セルに「=ATAN(0.484)」と書き
込めば「0.451」の答えが表示される。
INV
例えば,カシオの電卓を使用して計算するのであれば,数字を 0.484 と押した後,
5
を押せば良い。ただし, MODE
sin-1
sin
の順にキー
と押して液晶画面が RAD モードになっていることを確認した上で計
算すること。
最大曲げモーメント
M m = H 0
(1 + 2β ⋅ h0 )2 + 1
2β
exp(− β ⋅ lm ) = 41.1 ×
(1 + 2 × 0.508 × 1.05)2 + 1
2 × 0.508
exp(− 0.508 × 0.887 )
=59.2kN-m=59.2×106Nmm
指数関数
exp(x)は自然数の指数関数(exponential function)のこと。 e x と表記することもある。
表計算ソフト Excel では,EXP(x)と表す。例えば,x=-0.45 であれば,セルに「=EXP(-0.45)」と書き込め
ば「0.638」の答えが表示される。
カシオの電卓を使用して計算するのであれば,下記のようにキーを押せば exp(-0.45)の答えが求まる。
0
.
4
5
+/-
INV
ex
ln
電卓でexp(-0.45)を計算するときに,EXPというキーを押す人がたまにいる。電卓のEXPは指数部置数キー
であり全く違う。
矢板幅 1m 当たりの断面係数 Z0=1,340cm3=1.34×106mm3
有効断面係数 Z = αZ 0 = 0.6 × 1.34 × 10 6 = 8.04 × 105 mm3
矢板の応力度
M 59.2 × 10 6
σ =
=
= 74 N/mm 2 < σ a = 265 N/mm 2
Z 8.04 × 105
16
(O.K.)
四国地方整備局平成18年度道路技術(構造物設計)研修資料(右城)
3.掘削底面の破壊に対する判定と対策
( 1 ) 道路土工指針による判定法
掘削底面の破壊には,図 3.1 に示すような現象がある。ボイリング,パイピング,盤膨れ,ヒービング現
象である。このような現象が発生すると,土留め工の崩壊につながるので極めて危険である。各現象の発生
メカニズムと,道路土工指針による判定法を表 3.1 に示す。
表 3.1 掘削底面の破壊現象と判定法
現 象
ボイリング
パイピング
ヒービング
盤膨れ
矢板の背面側と掘削面側で水位
パイピングとは,締切り
ヒービングとは,軟弱な粘
掘削底面の下に,粘性土地盤や
差を生じると浸透流が発生す
矢板や締切り内に打設さ
性土地盤において,掘削背
細砂層のような透水性の低い
る。浸透圧が地盤の有効重量を超
れた基礎杭の周辺に沿っ
面の土塊の重量が掘削底
層があり,その下に被圧水をも
えると,砂の粒子が沸き立つ状態
て,局部的にパイプ状に
面より下の地盤の支持力
つ透水性土層がある場合,掘削
になる。このような現象をクイッ
発生するボイリングのこ
より大きくなると,地盤内
によって抑え荷重が少なくな
クサンド,あるいはボイリングと
とである。
の土がすべり出し,掘削底
り被圧水圧とのバランスが崩
面が膨れ上がる現象。
れて掘削底面の地盤が膨れあ
いう。
がる現象。
対象地盤:砂質土または
対象地盤:砂質土
対象地盤:粘性土
対象地盤:粘性土と砂質土
粘性土
q
判定法
d/2
h
h
d1
W
d
W
H
d2
d
u
u
d + d2
Fs = 1
≥2
h
≥ 1.2
安全率
安定数
安全率
γH
Nb =
ここに,
c
< 3.14
安全率
1.57γ w h
u = λ1λ2
≤ γ wh
4
−0.45
⎛B⎞
λ1 = 1.3 + 0.7⎜ ⎟
≥ 1.5
⎝d⎠
⎛L
⎞
+ 0.37 ⎟
⎝B
⎠
hw
c
安全率
Fs =
w
u
過剰間隙水圧
γ 'd
d1 γ1
d2 γ2
Fs =
−2
λ2 = 0.95 + 0.09⎜
B:土留め平面形状のの短辺長
L:土留め平面形状のの長辺長
17
Mr
≥ 1.2
Md
Fs =
w γ 1 d1 + γ 2 d 2
=
≥ 1.1
u
γ w hw
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土留め矢板
土留め矢板
地下水
ボイリング
パイピング
パイピング
パイピング
ボーリング調査孔
基礎杭
透水層
難透水水層
被圧帯水層
土留め矢板
土留め矢板
地下水
パイピング
透水層
透水層
盤膨れ
難透水水層
難透水水層
被圧帯水層
被圧水圧
沈下
はらみ
隆起(ヒービング)
土の移動
図 3.1 掘削底面の破壊現象
18
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かまど地獄
山地獄
図 3.2 別府地獄巡り(2003.7.13 著者撮影)
地盤面
矢板
矢板
掘削底面
h
地盤面
h
掘削底面
df
流線
Gs,e
df
d
(a) 水位が地盤面より低い場合
流線
Gs,e
d
(b) 水位が地盤面より高い場合
図 3.3 限界動水勾配による判定法
( 2 ) ボイリング
砂質土地盤のように透水性の大きい地盤では,遮水性のある矢板などを用いて掘削する。その場合,矢板
の背面側と掘削面側で水位差を生じると浸透流が発生する。浸透圧が掘削地盤の有効重量を超えるようにな
ると,砂の粒子が沸き立つ状態になる。このような現象をクイックサンド,あるいはボイリングという。図
3.2 の別府の地獄巡りで見られる噴砂や地震時の液状化による噴砂も同じ現象である。
ボイリングに対する安全性を検討する方法には,限界動水勾配による方法,テルツァギーの方法,テルツ
ァギーの方法を修正した土工指針の方法などがある。
a) 限界動水勾配による方法
動水勾配 i が限界動水勾配 ic に達すると,ボイリングが発生する。ボイリングを起こさせないためには式
(3.1)を満足させる必要がある。
Fs ⋅ i < ic ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 3.1)
ここに,Fs は安全率であり,一般には 1.5 とする。
動水勾配(正確には平均動水勾配)は,式(3.2)で求められる。
h
i=
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 3.2)
d +df
ここに,h は水位差,d は掘削底面からの矢板の根入れ深さ,df は地下水位からの矢板の根入れ深さであ
19
四国地方整備局平成18年度道路技術(構造物設計)研修資料(右城)
るが,図 3.3(b)のように水位が背面地盤より高い場合には地盤面から矢板先端までの深さとする。
限界動水勾配は次式で表される。
γ ' Gs − 1
ic =
=
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 3.3)
γ w 1+ e
ここに,γ’は土の水中単位体積重量,γw は水の単位体積重量,Gs は矢板根入れ地盤の土粒子の比重,e
は土の間隙比である。
Gs =2.7,e=0.7 とすれば,限界動水勾配は ic=1 となる。土質に関係なく限界動水勾配は 1 と考えてよい。
そうすれば,ボイリングに対して必要な矢板の根入れ深さは式(3.4)となる。
d ≥ Fs h − d f ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 3.4)
b) テルツァギーの方法
テルツァギー(Terzaghi)は,図 3.4 のように矢板から約 d/2 の範囲内でボイリングによって砂が持ち上がる
ことを確認し,ボイリングに対する安全率 Fs は,矢板から d/2 の範囲で深さが d の砂柱の有効重量 W’と,
砂柱の底面にかかる全過剰間隙水圧 U との比とした式(3.5)で求めればよいとしている。(星埜他共訳:テ
ルツァギー・ペック土質力学,基礎編,丸善)
W ' γ 'd
Fs =
=
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 3.5)
U γ w ha
ここに,γwha は砂柱底面に作用する平均過剰間隙水圧である。
テルツァギーは,砂柱底面の平均過剰間隙水圧は流線網を描いて求めるとしているが,過剰間隙水圧は図
3.4 に示すように矢板位置が最大で,γwh/2 の値になる。このため,ha=0.5h とすれば安全側の結果が得られ
る。
c) 道路土工指針の方法
道路土工-仮設構造物工指針(日本道路協会,1999 年)では,テルツァギーの考え方を基本とし,締切りの
形状による補正係数を考慮してを平均過剰間隙水圧 u を求める方法を示している。また,ボイリングに対す
る安全率は 1.2 以上確保するものとしている。
γ 'd
Fs =
≥ 1.2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 3.6)
u
d/2
h
膨れ上がり
W’
d
砂柱
γwd
γw(h+d)
γwha
静水圧
U
不透水層
γ wh
2
(過剰水圧)
図 3.4 テルツァギーのボイリングの考え方
20
γwh
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d/2
ua =
γ wh
u
ub = 0.57u a
2
楕円浸透流理論から求められた
過剰間隙水圧分布
図 3.5 過剰間隙水圧分布
ここに,
1.57γ w h
≤ γ w h ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 3.7)
4
−0.45
⎫
⎛B⎞
≥ 1.5 ⎪
λ1 = 1.30 + 0.7⎜ ⎟
⎝d ⎠
⎪
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 3.8)
−2 ⎬
⎛L
⎞ ⎪
λ2 = 0.95 + 0.09⎜ + 0.37 ⎟ ⎪
⎝B
⎠ ⎭
u = λ1λ2
式(3.7)の平均過剰間隙水圧 u は,過剰間隙水圧分布を図 3.5 のように仮定して求めたものに,有限要素法
による浸透流解析で得られた締切り形状による補正係数λ1,λ2 を乗じて求めるものとしている。式中の B
は締切りの平面形状の短辺長,L は長辺長である。
( 3 ) パイピング
パイピングとは,締切り矢板や締切り内に打設された基礎杭の周辺に沿って,局部的にパイプ状に発生す
るボイリングのことである。
道路土工-仮設構造物工指針(日本道路協会,1999 年)では,前述した式(3.4)でパイピングに対する検討を
行うものとしている。安全率 Fs は 2.0 以上としている。この安全率は,河川構造物の設計で使われているレ
インの式のクリープ比 C に相当する。ちなみに,河川構造物の設計では土質に応じてクリープ比 C を決め
ている。極めて細かい砂又はシルト 8.5,細砂 7,中砂 6,粗砂 5,細砂利 4,中砂利 3.5,栗石を含む粗砂利
3,栗石と砂利を含む場合 2.5 である。
( 4 ) 盤膨れ
掘削底面の下方に,粘性土地盤や細粒分の多い細砂層のような透水性の低い難透水層があり,その土層の
下に被圧水をもつ透水性土層がある場合,掘削によって抑え荷重が少なくなり被圧水圧とのバランスが崩れ
たときに掘削底面の地盤が膨れあがる現象である。
被圧水をもつ透水性土層の上面に作用する土被り荷重を w,この面に作用する被圧水による間隙水圧を u
とすると,盤膨れに対する安全率は式(3.9)で求められる。
道路土工-仮設構造物工指針では,盤膨れに対する安全率 Fs を 1.1 以上確保するものとしている。
w γ h + γ 2 h2
Fs = = 1 1
≥ 1.1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 3.9)
u
γ w hw
ここに,h1,γ1 は掘削底面と被圧帯水層の間にある透水層の層厚,湿潤単体積重量,h2,γ2 は掘削底面
と被圧帯水層の間にある難透水層の層厚,湿潤単体積重量,hw は被圧水の水頭,γw は水の単位体積重量で
ある。
21
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被圧水頭
矢板
透水層
hw
膨れあがり
土被り荷重w
難透水層
γ1
h1
γ2
h2
被圧水圧 u
透水層(被圧帯水層)
難透水層
図 3.6 盤膨れに対する検討
[計算例 3.1]
図 3.7 の土留め工を施工中に掘削底面から水が噴き出すというトラブルが発生した。どのような現象が発
生したのかについて調べよ。
地下水
0.7m
4.3m
5.0m
シルト質砂
wn=28%,e=0.74,Sr=100%
砂62%,シルト24%,粘土14%
wL=28%,wp=22%
5.7m
9.7m 10.4m
1.4m
4.0m
5.4m
2.6m
wn=44%,e=1.13,Sr=100%
砂1%,シルト36%,粘土63%
wL=48%,wp=26%
粘性土
4.0m
1.4m
0.6m
火山灰
wn=56%
砂2%,シルト27%,粘土71%
wL=70%,wp=35%
粘性土
図 3.7 掘削底面から水が噴き出した土留め工
解答
土の湿潤重量は,土粒子の比重 Gs=2.65,飽和度 Sr=100%,水の単位体積重量をγw=9.8kN/m3 とすると次
式で求められる。
S
Gs + r ⋅ e
2.65 + e
100
γ t =
γw =
× 9.8
1+ e
1+ e
この式よりシルト質砂(e=0.74)はγt=19kN/m3,粘性土(e=1.13)はγt=17kN/m3 となる。
パイピングの安全率
22
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Fs =
d 1 + d 2 8.3 + 4.0
=
= 2.86 ≥ 2 (O.K)
h
4.3
盤膨れの安全率
γ d + γ 2 d 2 19 × 1.4 + 17 × (2.6 + 1.4)
=
Fs = 1 1
= 1.0 < 1.1
9.8 × 9.7
γ w hw
(OUT)
道路土工指針に準拠した検討では,盤膨れが発生することになる。しかし,実際にはパイピングであった
ように思えた。
( 5 ) ヒービング
ヒービングとは,軟弱な粘性土地盤において,掘削背面の土塊の重量が掘削底面より下の地盤の支持力
より大きくなると,地盤内の土がすべり出し,掘削底面が膨れ上がる現象のことである。
ヒービングに対する安全性の検討には,斜面安定問題として考える方法と支持力問題として考える方法が
ある。
a) 斜面安定問題として考える方法
安定解析を行って斜面の安定性を評価するのが斜面安定問題である。斜面の安定解析には一般に円弧すべ
り計算が行われている。簡便分割法あるいはフェレニウス法などと呼ばれている方法である。円弧すべりに
よる計算は,地盤のせん断強度が一様でなくても計算ができる。このため,地盤改良による安全率の増加を
確認する等に使うことができる。
図 3.8 に示すように半径 r の円弧のすべり面を仮定し,すべり土塊を鉛直のスライスに分割し,スライス
底面の粘着力と摩擦による抵抗モーメントを Mr,スライスの自重による転倒モーメントを Mo とすれば,す
べりの安全率 Fs は次式で与えられる。
Σ (Wi cosθ i tan φi + ci Li )
M
Fs = r =
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 3.10)
Mo
Σ (Wi sin θ i )
安全率には,一般に 1.2 が採用されている。
0
上載荷重
鋼矢板
r
H
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
⑪
q
⑫
Wi
掘削底面
①
②
③
④
⑤
θι
d
θι
sθ i
W ico
N i=
円弧すべり面
図 3.8 円弧すべり計算
23
T i=
W
c iL i
nφ i+
a
t
osθ i
ic
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上載荷重
a
i
鋼矢板
H
P
d
掘削底面
q
45゜
W1
h
P
W2
X
X
C1
b
R1
g
W2
V
X
d
e
C1
すべり面
f
c
X
W1
V
R1
B=
2d
力の多角形
p=
V
= γH+q
B
掘削底面
d
図 3.9 粘性土地盤の破壊面
b) 支持力問題として考える方法
地盤が均質な粘性土(φ=0,c>0)であるとすると,地盤の破壊面は図 3.9 のようになる。掘削底面より上の
すべり土塊 abgh に作用する力のつり合いを考えると,bg 面に左右する鉛直力は V = (γH + q) B ,bg 面の単位
面積当たり鉛直力は p = γH + q となる。
平坦な粘性土地盤の支持力度は qd = cN c として表される。c は地盤の粘着力,Nc は支持力係数である。き
局部的に地盤が塑性化をはじめる状態では Nc=3.14,地盤が完全に塑性化した状態では Nc=2+π=5.14 である。
地盤の過大な変形を防ぐには,塑性化を防止しなければならないので γH + q ≤ 3.14c となる。変形すると式
(3.11)になる。
γH + q
≤ 3.14 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 3.11)
c
道路土工-仮設構造物工指針では,式(3.11)で q のない式が示されているが,上載荷重 q がある場合には q
をγH に加算しなければならない。
式(3.11)から明らかなように地盤の強度が深さ方向に一様なら,矢板の根入れを大きくしてもヒービング
に対する安全性は向上しない。
( 6 ) 掘削底面の破壊対策
a) 砂質地盤の事前調査と対策
透水性の高い砂質地盤あるいは礫質地盤で,地下水面より深く掘削をする必要がある場合には,ボイリン
グ,パイピング,盤膨れの可能性がある。施工前に,ボーリング,サンプリング,標準貫入試験,粒度試験,
含水比試験,湿潤密度試験などを必ず実施し,土層構成,地下水面の深さ,被圧帯水層の有無,単位体積重
24
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量,間隙比,飽和度を調べ,ボイリング,パイピング,盤膨れに対する検討を行っておく必要がある。
ボイリング,パイピング,盤膨れが発生すれば,対策に多額の費用を要するばかりでなく,工期の遅れ,
周辺への影響などのトラブルが生じるので事前に対策を講じておくのが得策である。
ボイリングおよびパイピング対策としては,図 3.10 のような方法がある。矢板を長くすれば浸透流路長が
長くなるので動水勾配を小さくすることができる。ディープウェルやウェルポイントで地下水を下げれば,
損失水頭を小さくすることで動水勾配を小さくできる。矢板を不透水層に根入れさせば,過剰間隙水圧をシ
ャットアウトすることができる。掘削底面地盤の地盤改良は,地盤の間隙比を小さくすることで限界動水勾
配を高めることができる。
盤膨れ対策には,図 3.11 に示す方法がある。矢板を被圧帯水層の下部の不透水層まで根入れさせれば,被
圧水圧をカットすることができ。ディープウェルやウェルポイントで地下水を低下させれば掘削底面地盤
に作用する間隙水圧を低減できる。地盤改良をすれば,上載荷重を増加させることができる。矢板の周辺で
被圧帯水層の下部の不透水層まで地盤改良を行えば,被圧水圧をカットすることができる。
なお,地下水位を低下させれば,周辺地盤の沈下,井戸枯れ等の問題を生じる恐れがあるので,事前に十
分調査し検討しておかなければならない。
b) 粘性土地盤の事前調査と対策
軟弱な粘性土地盤ではヒービングの恐れがある。施工前に,不攪乱試料の採取,含水比試験,湿潤密度試
験,液性・塑性試験,一軸圧縮試験,三軸 UU 試験などを実施し,ヒービングに対する検討を行っておく必
矢板根入れ延長
ディープウェル
要がある。
矢板根入れ延長
地下水低下
地盤改良
不透水層
(a)矢板根入れを延長
(b)地下水位低下工法
(c)遮水工法
(d)地盤改良工法
不透水層
被圧帯水層
矢板根入れ延長
ディープウェル
図 3.10 ボイリング,パイピング対策
被圧帯水層
被圧帯水層
地盤改良
不透水層
(a)矢板根入れを延長
不透水層
不透水層
(b)地下水圧低下工法
(c)地盤改良工法
図 3.11 盤膨れ対策
25
地盤改良
被圧帯水層
(d)地盤改良工法
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一軸圧縮試験から求められる粘着力 cu が比較的大き
くて,式(3.11)で求められる安定数 Nb が十分小さいにも
関わらず,掘削によって土留め工が大きく変位するとい
ったトラブルを発生することがある。粘性土が鋭敏であ
ると鋼矢板の打ち込みや工事に伴う振動等で cu が極端
に低下し,ヒービングを発生するものと思われる。粘性
土が鋭敏かどうかは,図 3.12 で判定できる。これは,三
笠正人博士によって作成されたものである。
縦軸の非排水せん断強さ cu とは,一軸圧縮強度 qu を
1/2 して求められる。横軸の液性指数 IL は式(3.12)で求め
られる。
IL =
wn − w p
wL − w p
=
wn − w p
( 3.12)
Ip
ここに,wn は自然含水比,wp は塑性限界,wL は液性
限界, IP は塑性指数である。
この図で鋭敏粘土か超鋭敏粘土のゾーンに入ると,掘
図 3.12 鋭敏比と塑性指数関係(地盤工学会,土質試験-
基本と手引き)
削によって地盤が大きく変形する危険性が高い。
ヒービング防止対策には下記の方法がある。
①
背面土砂の除去
②
矢板の根入れ長や剛性を増す
③
地盤改良(生石灰杭工法,深層混合処理工法)
背面土砂の除去は,効果が確実に得られる方法であるが,適用するには用地上の制約あるいは施工上の制
約がないことが条件になる。
矢板の根入れ長を長くする方法は,軟弱な粘性土層の下に砂質土層または堅い粘土層がある場合,あるい
は粘性土の一軸圧縮強度が深度方向に増加している場合でないと効果が得られない。
地盤改良は,掘削面側のみに施工している例が多い。掘削面側には受働土圧が発生するため,背面側に施
工するよりも改良効果が大きい。改良工法には,生石灰杭工法と深層混合処理工法の実積が多い。
掘削
掘削底面
掘削底面
掘削底面
粘性土
粘性土
粘性土
粘性土
地盤改良
粘性土
粘性土
砂質土
(a)背面土砂の除去
(b)矢板の根入れを長くする
図 3.13 ヒービング対策
26
(c)地盤改良
粘性土
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c) トラブル発生時の対策
施工中にボイリング,パイピング,盤膨れなどの現象が発見されたときは,何はともあれ掘削作業を中止
し,掘削内に水を貯め,地下水との水位差を小さくすることである。被圧水圧が大きくて,掘削内に水を貯
めてもボイリングやパイピングが止まらない場合には,土砂を埋め戻す必要がある。
ボイリングやパイピングが完全に治まってから,前述したような対策工法について検討し,最も確実で経
済的な工法を選択するのがよい。
施工中にヒービングの現象が発見されたら,掘削作業を中止し,土砂を埋め戻すのがよい。その後で,背
面土砂の除去か地盤改良について検討を行う。
4.演習問題
高知県の N 市で河川改修工事があり,河川と国道が横断する地点で図 4.1 に示すように地盤を 5.5m 掘削
して橋梁を施工した。
掘削時の土留め工には,Ⅳ型の U 形鋼矢板を用いた自立式土留め工を採用した。掘削を開始したところ,
掘削に伴って矢板が前方へ変位し,2.3m 掘り下げた時点で矢板頭部の変位は 95mm に達した。このため,鋼
矢板の後方 7m の位置に控え杭として H 型鋼を打ち込み,矢板頭部と控え杭をタイロッドで連結する方式に
変更して以後の掘削を行った。しかし,矢板の変位は止まらず,掘削完了時には矢板頭部が前方へ 290mm
たわんだ。掘削の深さと矢板の変位の関係を図 4.3 に示す。この影響で周囲の地盤には矢板から 21m 離れた
遠方までクラックが発生した(図 4.2)。
施工地点の土質は,図 4.1 のボーリング柱状図に見られるように,上部は砂混じり粘土で,その下には厚
さ 4m の火山灰層がある。深度 2.5~3.3m から採取した試料の土質試験結果を表 4.1 に示す。
[問 1]控え杭を施工せずに自立式土留め工で 5.5m まで掘削するとして,矢板根入れ長の妥当性を検討し,
矢板頭部の変位量と応力度を求めよ。ただし,側圧(土圧と間隙水圧)は,道路土工指針の側圧係数を用いよ。
[問 2]掘削底面の安定性について検討せよ。
[問 3]過大な変位を生じた原因と,設計・施工上の問題点について述べよ。
[問 4]こういったトラブルを防ぐために,設計者として配慮すべき点について述べよ。
[問 5]こういったトラブルを防ぐために,発注者として配慮すべき点について述べよ
表 4.1 土質試験結果
項 目
土質試験結果
3
一般特性
湿潤密度ρt=1.70g/cm ,乾燥密度ρd=1.13g/cm3,土粒子の密度
ρs=2.71g/cm3,自然含水比 wn=51%,間隙比 e=1.40,飽和度 Sr=98%
粒 度
砂分 5%,シルト分 52%,粘土分 43%
コンシステンシー特性
液性限界 wL=41%,塑性限界 wp=20%,塑性指数 Ip= 21
圧密降伏応力
pc=104kN/m2
一軸圧縮試験
一軸圧縮強さ qu=72kN/m2,破壊ひずみεf=13%,変形係数 E50=2.0MN/m2
三軸 CU 試験
全応力 c=19kN/m2,φ=11゜,有効応力 c’=13kN/m2,φ’=25
27
四国地方整備局平成18年度道路技術(構造物設計)研修資料(右城)
GL-2.3~GL-5.5mの掘削
GL±0~GL-2.3mの掘削
0
0
290mm
95mm
N 値
10 20 30 40 50
GL±0.0
7m
GL±0.0
タイロッド
控え杭
5
鋼矢板Ⅳ型 L=13.5m
火山灰
10
場所打ち杭φ1.0m
深
度
(m)
粘土質
15
シルト
鋼矢板Ⅳ型 L=13.5m
GL-5.5m
H-300×300 L=10m
GL-2.3m
砂混じ
り粘土
20
砂礫
岩盤
25
図 4.1 土質と土留め工の形状
プロパン置き場
ブロック塀
ク ラ ッ ク(0.3mm)
(0.5mm)
ブロック塀
日 数
0
計量器
(5.5mm)
15
20
25
30
35
0
95mm
(3mm)
(4mm)
タ
イ
ロ
ッ
ド
鋼矢
板
掘削深さ(m)
控
杭
え
10
0
灯油タンク
(3mm)
5
100
変位
2
GL-2.3m
地盤
200
290mm
4
GL-5.5m
河川
0
6
10m
図 4.2 平面図 図 4.3 掘削と矢板変位の関係
28
300
矢板頭部の水平変位(mm)
ク ラ ッ ク(13mm)
四国地方整備局平成18年度道路技術(構造物設計)研修資料(右城)
q
自立式鋼矢板土留めの設計計算例(粘性土)
1.計算条件
矢板の種類 U形鋼矢板
3
型
qKa
掘削深さ
H=
3
m
根入れ深さ
L=
6.5
m
側圧係数
Ka=
0.63
土の単位体積重量
γ=
18
根入れ地盤のN値
N=
5
根入れ地盤の粘着力
c=
20
kN/m2
地表面の上載荷重
q=
10
kN/m2
水位差
Hw=
3
m
2.側圧
合力
Pa =
Hw
kN/m3
(q+γH)Ka
⎛
1
2q ⎞
⎟=
γ H 2 K a ⎜⎜ 1 +
2
γ H ⎟⎠
⎝
ya =
作用位置
H
H
3
⎛ 3q + γH
⎜⎜
⎝ 2 q + γH
⎞
⎟⎟ =
⎠
L
69.9
kN
1.14
m
3.矢板の断面性能
矢板の種類
U形鋼矢板 Ⅲ型
ヤング係数
E= 2.00E+08 kN/m2
断面二次モーメント
I= 0.000168 m4
断面係数
Z= 1340000 mm3
4.バネ定数
地盤の変形係数
E0=2800N=
Eoの算定に関する係数
14000
α=
kN/m2
1
直径30cmの剛体円板による平板載荷試験の値に相当する水平方向地盤反力係数
kHo=1/0.3αEo=
46667
kN/m3
壁体形式に関わる係数
η=
1
換算載荷幅
BH=
10
水平方向地盤反力係数
矢板幅
バネ定数
m
kH=η・kHo(BH/0.3)-3/4=
B=
k=kH・B=
1
3364
29
m
kN/m2
3364
kN/m3
四国地方整備局平成18年度道路技術(構造物設計)研修資料(右城)
5.矢板の根入れ長に対する検討
矢板の曲げ剛性
EI= 3.36E+04 kN・m2
断面2次モーメントの有効係数
α=
矢板の有効曲げ剛性
特性値
1
αEI= 3.36E+04 kN・m2
β =
4
k
4 α EI
特性長
= 0.398
1/β=
必要根入れ長
2.5/β=
2.513
m-1
m
6.281 m
<
L=6.5m
6.矢板の変位と断面力
6.1 矢板の特性
断面2次モーメントの有効係数
αI=
矢板の有効曲げ剛性
特性値
0.45
αEI= 1.51E+04 kN・m2
β =
4
k
4 α EI
特性長
=
0.486
m-1
1/β=
2.058
m
6.2 任意深さの変位と断面力
半無限長の弾性床上の梁としてChang式で計算する
掘削底面からx(m)の深さにおける変位量δ,曲げモーメントM,せん断力Sの算定式
δ =
H0
2 EIβ 3
M =−
H0
β
e − β x {(1 + β h0 ) cos β x − β h0 sin β x}
e − β x {(1 + β h0 ) sin β x + β h0 cos β x}
S = − H 0 e − β x {cos β x − (1 + 2 β h0 ) sin β x}
水平力
Ho=Pa=
69.9
kN
作用高
ho=ya=
1.14
m
特性値
β=
0.486
βho=
0.554
1+βho=
1.554
1+2βho=
2.108
m-1
30
四国地方整備局平成18年度道路技術(構造物設計)研修資料(右城)
矢板の根入れ長を20分割した各深さの計算値
x(m)
β・x
exp(-β・x)
δ(m)
M(kN-m)
S(kN)
0.0
0
1
0.0313
-79.7
-69.9
0.3
0.158
0.85385
0.0249
-97.2
-39.1
0.7
0.316
0.72906
0.0192
-105.9
-15.1
1.0
0.474
0.62251
0.0142
-107.6
3.2
1.3
0.632
0.53153
0.0099
-104.4
16.3
1.6
0.79
0.45384
0.0064
-97.5
25.2
2.0
0.948
0.38752
0.0036
-88.4
30.6
2.3
1.106
0.33088
0.0013
-77.9
33.2
2.6
1.264
0.28252
-0.0003
-67
33.7
2.9
1.422
0.24123
-0.0015
-56.2
32.7
3.3
1.58
0.20598
-0.0024
-45.9
30.5
3.6
1.737
0.17605
-0.0028
-36.5
27.6
3.9
1.895
0.15032
-0.0031
-28
24.3
4.2
2.053
0.12835
-0.0031
-20.7
20.9
4.6
2.211
0.10959
-0.003
-14.4
17.5
4.9
2.369
0.09357
-0.0028
-9.3
14.3
5.2
2.527
0.0799
-0.0026
-5.1
11.4
5.5
2.685
0.06822
-0.0023
-1.8
8.7
5.9
2.843
0.05825
-0.0019
0.6
6.4
6.2
3.001
0.04974
-0.0016
2.4
4.5
6.5
3.159
0.04247
-0.0013
3.5
2.9
変位量δ(m)
0.04 0.02
0
-0.02
0.0
曲げモーメントM(kNm)
100
0
-100 -200
0.0
せん断力S(kN)
100
0
-100
0.0
1.0
1.0
1.0
2.0
2.0
2.0
3.0
3.0
3.0
4.0
4.0
4.0
5.0
5.0
5.0
6.0
6.0
6.0
7.0
7.0
7.0
31
四国地方整備局平成18年度道路技術(構造物設計)研修資料(右城)
6.3 矢板天端の変位量に対する検討
有効曲げ剛性
δ3 δ2
δ1
αEI= 1.51E+04 kN・m2
掘削深さ
H=
3
m
0.031
m
掘削底面での変位量
δ1=
1+βho
2αEIβ3
Ho=
H
掘削底面でのたわみ角による変位量
δ2=
1+βho
2αEIβ2
Ho・H=
0.046
m
掘削底面以上の片持梁のたわみ
1
δ2=
30αEI
Ho・H4=
0.012
m
0.089
m
L
矢板頭部での水平変位量
δ=δ1+δ2+δ3=
許容変位量
δa=003H=
0.09
m
>
δ=0.089m
( O.K. )
6.4 矢板天端の曲げ応力度に対する検討
最大曲げモーメントが発生する深さ
lm =
1
tan
β
−1
1
=
1 + 2 β h0 =
0.911
m
最大曲げモーメント
Mm =
H0
2β
(1 + 2 β h0 ) 2 + 1 ⋅ exp( − β l m ) =
断面係数の有効係数
αz=
断面係数
有効断面係数
応力度σ=
107.8
Mm
=
Z=
1340000 mm3
αz・Z=
804000 mm3
<
σa=
265
7.掘削底面の安定検討
7.1 ヒービングの検討
安定数Nb=
γH
c
2.7
<
3.14
(OK)
>
2
(OK)
7.2 パイピングの検討
水位差
107800000 N・mm
0.6
134 N/mm2
αz・Z
kN・m
Hw=
3
m
浸透流路長 Lw=2L+Hw=
16
m
安全率 Fs=Lw/Hw=
5.3
32
N/mm2
(OK.)