「事故は起こりうるもの」を前提としたセキュリティ

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「事故は起こりうるもの」を前提としたセキュリティ
-失敗を繰り返さない努力がセキュリティ推進の基本-
日本セキュリティ・マネジメント学会常任理事
若梅裕子
1.ハインリッヒの法則
最近、飲酒運転、いじめ、そして個人情報の漏えいなど同じような事件・事故が連続し
て起きています。なぜ、同じことが繰り返されるのでしょうか。
危機管理、安全管理、セキュリティなど様々なところで、「ハインリッヒの法則」を当
てはめることができます。この法則は、アメリカの損害保険会社社員であるハインリッヒ
が、労働災害事例を分析し、導いた理論で、1件の重大な事故の背景には、29 件の同種の
軽微な事故、300 件のヒヤリとしたり、ハットしたりした小さなミスが存在するというも
のです。
このことは反対に、ひとりひとりのちょっとしたセキュリティへの違反や作業などでの
ミス(底辺の 300)をできるだけ減らすことが、重大な事故を起させにくくすることに繋
がることを意味しています。しかしながら底辺の 300 をゼロにすることは不可能です。完
璧な人などいません。どんな人でもミスすることがあります。その前提に立って、セキュ
リティ対策を事前に検討し、策定しておくことが重要です。また、セキュリティ事故は起
こりうるものとして対応策を定期的に訓練しておくことも重要なセキュリティ対策です。
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2.事件・事故に学ぶ
日本のことわざに、①「喉もと過ぎれば熱さを忘れる」、②「対岸の火事」、というのが
あります。
①のような目先のことにとらわれ、その場限りでどうにかし、本質的な解決をしないで
いると、失敗などの痛い経験が活きず再発防止することなどできません。また、②のよう
に「自分のところは大丈夫」と思い、「自分のところでも起こりうる」と考えないでいる
といずれ自分のところで同じような事件・事故が起きることにつながります。
「ハインリッヒの法則」の比率は、自分のところだけでなく、もっと広い視野にたって
(日本全体として)捉えてみてください。
自分のところで起きた事件・事故はもちろんのこと、他者で起きた事件・事故から学ぶ
ことも大切です。リスク管理では“発生頻度”が問われますが、実際にどのリスクがどの
くらいの発生頻度があるか判断することは難しいのが現状です。そこで最も基本的で大切
なことは、実際に起きてしまった事件・事故を繰り返さないようにしていくことです。
既に起きた事件・事故を繰り返さないためには、セキュリティ施策における PDCA サイ
クル(Plan-計画、Do-実施・実行、Check-点検・評価、Act-処置・改善)を確立し、
それに基づいて継続的に改善していくことが重要なのです。
(了)
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