The Cinema of UCG Choice

C
○2005
TWENTIETH CENTURY FOX. All rights reserved
『プロヴァンスの贈り物』
The Cinema of
UCG Choice
8月初旬公開
新宿ガーデンシネマ、
恵比寿ガーデンシネマ
プロファンスのスローライフを思わせる
ルノー・キャトル
ルノー・キャトルは、シトロエンの2CVに対抗
曇りがちなロンドンに住むイギリス人と、陽光輝
し、1961年に作られたルノーの小型大衆車だ。
くプロヴァンスに住むフランス人、大都市と田
時にクルマ選びはその人の価値観を如実に表
舎町、1分1秒を争う金融業界と、子供の頃と
すものだが、もしこの2台を見かけたのが東京だ
変わらない南仏。そして愛車はそれぞれ“ステイ
ったら、そこに大差はないかもしれない。可愛く
タス”のアストン・マーチンと、
“農民の道具”の
ておしゃれなクルマ、中でもフランス車が好きと
キャトルである。これが2CVならここまでの落差
いう、ややマニアックな範疇である。だがフラン
にはならないだろう。オンリーワンのスタイルを
スで見かけたら、意味合いはちょっと違ってくる。
主張する理想家シトロエンに比べ、ルノーは実
「デコボコ道でも卵が
直なリアリストだ。そ
割 れない」2 C Vは 確
こに漂うのはパリのエ
かに道具としても優秀
スプリでなく、プロヴ
だが、分かりやすく個
ァンスのスローライフ。
性的なデザインはポッ
そののんびりとした和
プな印象で、女優が
み感は、1997年の登
乗っても様になる。一
場以来、大ヒットを続
方、キャトルのデザイ
ける“ 直 系 の 息 子 ”、
ンは良くも悪くも普通、だが世界初のハッチバ
カングーに引き継がれている。日本でもおしゃ
ックは「子牛も積める」といわれた。ド直球に
れな商用車としてなかなか人気のようだ。
“農民の道具”である。
監督は『エイリアン』のリドリー・スコットで爵
『プロヴァンスの贈り物』はその名の通りプロ
位を持つイギリスの巨匠だが、南仏に別荘とぶ
ヴァンスを舞台にしたドラマで、主人公はひょん
どう園を所有しているらしい。原作者は友人だ
なことからこの地のぶどう園とシャトーを相続し
というから、ロハスなマックスの伯父ヘンリーの
たロンドンの金融ディーラー、マックス。そこは
モデルはこの人だろう。そのガレージにはジャガ
彼を育ててくれた趣味人の伯父ヘンリーの持ち
ーとランボルギーニ。勘違いしてはいけない。
物で、彼自身が幼い日々を過ごした場所でもあ
ランボはランボでもトラクターである。牛はそも
るのだが、いまや生き馬の目を抜く業界のすれ
そも“農民の道具”であったのだ。
っからしとなった彼は、さっさと売り払うためにプ
ロヴァンスにやって来る。そこで、地元でレスト
ランを経営する女性ファニーに出会うのだ。さ
て問題は、あまりにかけ離れたふたりの価値観。
渥美志保
映画ライター、コラムニスト。数々の人気雑誌に映画関連のコラム
を執筆している。映画に登場するクルマで最も好きなのはボンド・
カーのアストン・マーティン。
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