地方公共団体の地震防災訓練(図上型訓練) 実施要領モデルの作成

地方公共団体の地震防災訓練(図上型訓練)
実施要領モデルの作成に関する
調査研究報告書(平成18年度)
=市町村による図上訓練の企画から検証までのケース・スタディ=
平成19 年3月
総務省消防庁国民保護・防災部応急対策室
は じ め に
平成17年度に実施した「地方公共団体の地震防災訓練(図上型訓練)実施
要領モデルの作成に関する調査研究」では、市町村が実践的、効果的な地震防
災訓練(図上型訓練)に容易に取り組めるようにするため、図上型訓練の種類
と特徴やこれまでの実施事例を整理するとともに、人口10万人未満の市町村
用の図上型訓練の実施要領のモデルを作成しました。
本年度は、これらの成果を踏まえ、市町村の地域特性、災害特性等の類型に
応じた図上訓練を効果的に実施するための課題・留意事項を整理するとともに、
これまで作成してきた図上訓練実施要領モデル(マニュアル)を改善できるよ
う、タイプの異なる複数の市町におけるケース・スタディとしての図上型訓練
の実施に取り組みました。
図上型訓練の実施に当たっては、防災担当者の知識・能力や訓練にかけられ
る費用・労力の程度や、図上型訓練に当たっての課題をどのように設定するか
の判断が市町村ごとに異なります。また、図上型訓練の具体的な実施方法や内
容は、市町村の災害特性や防災体制の実情により非常に多様なものとなること
から、それぞれの市町村ごとの工夫・改善の余地があるといえます。
今回研究会で実施した図上型訓練は、昨年度作成した図上訓練実施要領モデ
ル(マニュアル)に基づき、当該2市町で想定される地震時の都市型災害や危
険物災害、列車事故、火山噴火災害の災害危険を踏まえ、市町村担当者の皆さ
んが被害想定やシナリオの作成を行うなど、主体的に企画・準備、運営するコ
ンセプトのもとで、ケーススタディとしての訓練を実際に実施することによっ
て検証しました。今後、これらの成果を踏まえ、さらに改善を施すことで、よ
り簡易で応用性のある図上型訓練マニュアルの作成を目指すなどの工夫が必
要と思われます。
本報告書は、図上型訓練に関する豊富な知識と経験を有する学識経験者、地
方公共団体、防災関係機関の委員により構成される「図上型防災訓練マニュア
ル研究会」を設置し、数回の研究会を経てとりまとめたものです。
報告書及び解説DVDに掲載した図上型訓練の実施要領や留意事項は、様々
な特性・規模の市町村においても十分活用可能なものであることから、今後図
上型訓練の導入を検討されている市町村の関係者の方々に広く活用されるこ
とを希望するものです。
平成19年3月
図上型防災訓練マニュアル作成研究会
座 長
吉 井
博 明
図上型訓練マニュアル調査報告書
=市町村による図上訓練の企画から検証までのケース・スタディ=
目
次
はじめに
第1章
調査研究の目的等
1.調査研究の目的
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
2.調査研究項目
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
3.調査研究体制
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2
4.調査研究スケジュール
第2章
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2
市町村による図上型防災訓練の実施
~八代市及び那須町のケース・スタディを踏まえて~
2-1
図上シミュレーション訓練の特徴及び基本的進め方
1.訓練の特徴
・・・・・・・・・・・
5
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5
2.訓練の基本的な進め方
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3.市町村が自ら訓練の企画・準備・実施に取り組むための要件
2-2
図上シミュレーション訓練の企画・準備
・・・・・・
8
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
9
1.訓練の企画・準備過程の全体像(ロードマップ)
2.必要な基礎知識の習得
・・・・・・・・・・・・・・・・・
9
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
12
3.事例に基づく訓練企画資料の作成
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
12
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
28
図上シミュレーション訓練の実施 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
33
4.訓練の企画・準備のポイント
2-3
1.直前オリエンテーション
2.作戦会議
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
33
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
35
3.訓練の運営・進行
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4.市町村長による模擬記者会見
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5.図上シミュレーション訓練の評価・検証
2-4
6
36
43
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
45
市町村による訓練の企画準備実施の試みについての評価・検証 ・・
54
2-5
住民参加型ワークショップの実施(災害図上訓練DIG)・・・・・・・
1.「防災ワークショップ」を通じて住民との意見交換と連携
2.災害図上訓練DIGの活用
第3章
3-1
55
・・・・・・・・・
55
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
56
より実戦的かつ効果的な図上型防災訓練に向けて
市町村等防災機関が実施する図上型防災訓練 ・・・・・・・・・・・・・・・
59
1.訓練の準備段階
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
59
2.訓練の実施段階
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
61
3.訓練の評価・検証段階
3-2
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
62
地域住民と防災機関が連携した図上型防災訓練 ・・・・・・・・・・・・・
63
1.住民参加「防災ワークショップ」を通じて住民と行政間の
防災情報の共有と連携の強化を ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.災害図上訓練DIGの活用
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【参考資料】
参考資料1
図上型防災訓練(ケース・スタデイ)の検証(八代市及び那須町
における取り組み)
参考資料2
市町村における図上型防災訓練解説DVD(付録)
「その時に備えて!
図上型防災訓練マニュアル」
63
63
第1章
調査研究の目的等
第1章
調査研究の目的等
1.調査研究の目的
平成17年度の調査研究においては、平成16年度に作成した「地震防災訓練
(図上型訓練)の実施要領モデル」を用いて、人口10万人未満の市町村を対象と
して図上型防災訓練を実施し、その結果を評価・分析することにより、実施要領を
活用する上での留意点・課題を整理しましたが、平成18年度では、これらの調査
研究結果を踏まえ、様々な災害の類型と地域特性を有する市町村の実践的・効果的
な図上型訓練の実施を支援するため、引き続き複数の市町村の訓練実施にかかるモ
デルを改善するとともに、市町村が主体となり、自ら訓練の準備、実施、評価・分
析に参画することにより、より広く図上型防災訓練の実施を普及できる手法の確立
を目的としました。
2.調査研究項目
本調査研究における調査研究項目は、以下に示すとおりです。
(1)地震防災訓練(図上型訓練)の実施(ケーススタディ)
平成16年度及び17年度に作成した地震防災訓練(図上型訓練)の実施要領
モデルを踏まえ、複数の市町村(2市町村程度)をモデルとして実地に図上型訓
練を企画・実施しました。
これにより図上型訓練の企画、準備、運営から訓練結果の評価・検証まで一連
の効果的な図上訓練の実施方法を検討しました。
ア
対象とする災害・事象
主に、地震による土砂災害、車両、鉄道災害、危険物災害・コンビナート災
害、火山性地震やこれに起因する噴火災害、各種ライフライン被害等を想定す
るとともに、予想される事象のもと活動体制、情報収集・伝達、広報、避難・
救出など初動対応を検証。
イ 訓練実施体制
研究会及び作業部会のもとで実施(訓練実施市町村との調整、図上型訓練
の企画者・進行管理者・講評担当者と訓練参加者の役割分担等)
ウ 図上型訓練の準備、実施、評価・検証
図上訓練の一連の流れに沿い、効果的かつ適切に図上型訓練の実施方策を
検討し、その過程で、スタッフの啓発資料、被害想定要領、状況付与シナリ
オ作成要領、評価・検証ツール等を作成。
1
(2)地震防災訓練(図上型訓練)の実施結果の評価・分析
(1)で実施した地震防災訓練(図上型訓練)の結果を分析・評価し、図上型
訓練の実践的・効果的な実施を支援できるよう、実施要領モデルを効果的に活
用するための課題・留意事項を整理しました。
(3)調査研究報告書の作成、普及
前記(1)及び(2)の検討結果を調査研究報告書にとりまとめ、CD-R
OM形式で電子媒体化し、地方公共団体に配布することとしました。報告書に
は、訓練の実施状況と手順等を映像化した訓練要領解説DVDを添付しました。
3.調査研究体制
(1)研究会
本調査研究を推進するための体制として、昨年度に引き続き、研究会を設置し
ました。委員名簿は、以下(p.4)に示すとおりです。
(2)作業部会
本調査研究を実質的に推進するため、本研究会のもとに「作業部会」を設置し、
研究会と連携して調査研究を進めました。作業部会は、研究会委員のうち、研究
会名簿(p.4)に*印を付した学識経験者、市町村委員及び事務局で構成しました。
作業部会の役割は、以下のとおりです。
・ 訓練実施市町村の図上型訓練の準備(訓練要綱、被害想定、状況付与シナリ
オ及び評価ツール等の資料を作成し、訓練方法を具体化)
・ 現地における図上型訓練の実施(市町村担当者、訓練参加者と役割分担)
・ 訓練結果の評価・検証(訓練当日の講評、意見集約を踏まえ、さらに訓練結
果の評価・検証を継続して実施)
4.調査研究スケジュール
本調査研究スケジュールは以下のとおりです。
2
○ 第1回研究会
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
平成18年8月23日
・
調査研究方針の検討
・
複数の市町村における図上型訓練実施計画の検討(訓練実施市町村、
想定災害、訓練手法、内容、実施体制等)
↓
・
市町村の特性に応じた訓練要領を作成
・
訓練実施市町村~収集した資料に基づく訓練要領作成、シナリオ及び評価
ツール、進行管理者・スタッフ用ツールを作成(8~10月)
・
図上型訓練の実施(11月~12月の間に、2箇所で実施)
・
図上訓練実施要領解説DVD作成方針(案)を作成
↓
○ 第2回研究会
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
平成19年1月16日
・
市町村における図上型訓練(ケーススタデイ)中間報告
・
平成18年度調査研究報告書(目次及び本文素案)検討
・
図上訓練実施要領解説DVD作成方針(案)検討
↓
・
ケーススタデイ結果の評価・分析(作業部会における継続作業)
・
調査研究報告書(案)及び訓練要領解説DVD作成
↓
○ 第3回研究会
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
平成19年2月27日
・
平成18年度調査研究報告書(案)の内容検討、確定
・
図上訓練実施要領解説DVD(案)検討、確定
↓
調査研究報告書(訓練要領解説DVD含む)の印刷・製本、発送
3
図上型防災訓練マニュアル研究会
委員名簿(敬称略)
1.委 員
(座
長)
吉井 博明 東京経済大学コミュニケーション学部教授
(学識経験者)
小村 隆史* 富士常葉大学環境防災学部助教授
高梨 成子* (株)防災&情報研究所代表
秦
康範* 独立行政法人防災科学技術研究所川崎ラボラトリー研究員
日野 宗門 Blog 防災危機管理トレーニング主宰
(関係機関)
安藤 隆太
大橋 裕寿
岡嶋
守
北口 隆也
守田 高志
防衛省陸上幕僚監部運用支援情報部運用支援課運用支援班長
東京電力(株)総務部防災グループマネジャー
東海旅客鉄道(株)安全対策部担当部長
日本電信電話(株)第2部門災害対策室長
警察庁警備局警備課課長補佐
(消 防 庁)
小笠原倫明 総務省消防庁国民保護・防災部長
重松 秀行 総務省消防庁国民保護・防災部応急対策室長
足達 雅英 総務省消防庁国民保護・防災部防災課災害対策官
(関係市町)
辻本 士誠* 熊本県八代市防災危機管理課課長補佐
阿部 拓志* 栃木県那須町総務課課長補佐
2.事
山城
下島
出崎
高岡
伊藤
齋藤
胡
務 局
芳生* 総務省消防庁国民保護・防災部応急対策室地域情報把握専門官
正幹 総務省消防庁国民保護・防災部応急対策室応急対策係長
親吾* 総務省消防庁国民保護・防災部応急対策室総務事務官
昌文 総務省消防庁国民保護・防災部応急対策室総務事務官
豊治*(財)消防科学総合センター研究開発部調査研究課長
泰*(財)消防科学総合センター研究開発部調査研究課研究員
哲新*(財)消防科学総合センター研究開発部調査研究課研究員
(注)* 印は、作業部会委員を兼ねる委員等
4
第2章 市町村による図上型
防災訓練の実施
~八代市及び那須町のケース・スタディを踏まえて~
第2章 市町村による図上型防災訓練の実施
~八代市及び那須町のケース・スタディを踏まえて~
本章においては、平成16年度~17年度に作成し、改良してきた地震防災訓練
(図上型訓練)実施要領モデル(以下、「図上型防災訓練マニュアル」という。)を用
いて、異なる地域特性、類型の市町村における防災担当職員による図上型防災訓練の
企画・実施のケース・スタディを通じて、その準備、実施、評価・検証過程の実施方
法及びそのポイントを具体的に示します。
災害時の対応のイメージがリアルに描けないことが多い中で、図上型防災訓練が、
災害時の市町村長や防災担当者の役割認識の形成、適切な対応や意思決定能力の向上、
対策計画の点検等のために最適で優れた方法であるこはこれまでに随所で指摘されて
いるところですが、本報告書では、市町村が図上訓練を主体的に企画・準備、運営す
るのにどのような方法をとるとよいかを明らかにします。
2-1
図上シミュレーション訓練の特徴及び基本的進め方
1. 訓練の特徴
(1)図上シミュレーション訓練とは
一般的に、図上シミュレーション訓練とは、実際の災害時に近い場面を設定
して、訓練者にそれぞれの立場(役割)で災害を模擬体験し、様々な方法で付
与される災害状況を収集・分析・判断するとともに、対策方針を検討するなど
の災害対処活動を図上で行う訓練です。
この種の訓練では、実際に災害が発生した時の現場と酷似した状況を体験で
きることから、訓練参加者に、実際の災害時に犯しやすい失敗を認識させ、迅
速かつ適切な対応を取るための検討が可能となり、極めて実戦的な効果が得ら
れることが実証されています。訓練の目的や、参加者の構成等によって、訓練
における状況付与手段や、進め方は大きく異なります。
(2)本研究会における図上シミュレーション訓練の特徴
この報告書における図上シミュレーション訓練は、市町村長及び市町村災害
対策本部を対象とし、市町村の体制を包括的に点検するための一つの手段とし
5
て位置づけられ、災害を「模擬体験」することに着目していることから、以下
の特徴があります。
ア
市町村長をはじめとする幹部が参加する訓練
市町村長をはじめとする幹部と職員が訓練参加者(プレイヤー)として参
加することから、トップの意思決定及び検証に繋がる包括的で実戦的な訓練
となります。
イ
緊急記者会見を組み込んだ訓練
図上訓練の一連の流れに緊急記者会見(マスコミ対応)を組み込んだこと
から、市町村長や広報担当者が被害や対策内容を的確に把握することととも
に、明確な対策方針を確立し市民に向けたメッセージを発信するなど、緊急
記者会見の意義を確認できる訓練となります。
ウ
多種多様な状況付与手段による訓練
状況付与が電話、無線機、ファックシミリなどのほか、ニュース報など、
多種多様な手段で実施されることから、より現実に近い活動環境のもとでの
実戦的な訓練となります。
エ
各機関の参加と双方向の情報連絡、対応を導入した訓練
市町村の災害対策本部以外の国(消防庁、国交省、気象台、自衛隊等)、
都道府県危機管理部局・都道府県警察、消防本部、電力会社、報道機関、地
域住民等(又はこれらの要員役を演じる者)によって構成する進行管理者
(コントローラー)を数多く配置することにより、訓練参加者(プレイヤ
ー)に「一方」的に情報を付与するだけでなく、訓練参加者(プレイヤー)
は、その意思決定に応じ臨機応変に「双方向」的に対応していくことが可能
となり、より実戦的な訓練をできることが主な特徴となります。
2. 訓練の基本的な進め方
訓練は訓練参加者(プレイヤー)と進行管理者(コントローラー)に分かれて、
コントローラーがプレイヤーに「状況」※ を付与することを中心に進めます。図
1には、訓練の基本フロー、図2には、市町村の災害対策本部を対象とした訓練
のイメージを示します。
ア
訓練参加者(プレイヤー)は、付与される状況を整理・分析・判断し、なす
べき行動を決定し、一連の対策活動を行います
6
イ
進行管理者(コントローラー)は、訓練参加者(プレイヤー)に対応行動
(意思決定)を促すための「状況」(例:住民からの救助要求など)を付与し、
また、プレイヤーの回答(例:現地調査職員派遣などの意思決定及びその連
絡)に応じ、さらに新たな「状況」(例:被害拡大情報)を追加付与して演習
を進めていきます。
※「状況」とは、地震・津波、気象などの自然現象、災害状況、被害状況、
それに伴う住民の状況、関係機関などによる対応状況など、図上型防災訓
練の対象となる災害対策本部員である訓練参加者(プレイヤー)が対応す
るために必要なことがらのすべてをいいます。
図1
訓練の基本フロー
「状況付与計画」に基づき状況付与
TEL、 FAX、 無線、携帯電話等
防災計画、対応マニュアルに基づき対応
(コントローラ
ー又は統制部)
訓練参加者
(プレイヤー又は
対応過程でコントローラーに問い合わせ
TEL、 FAX、 無線、携帯電話等
問い合わせに対して対応
7
演習部)
グループ間の連絡
進行管理者
図2
市町村災害対策本部を対象とした訓練のイメージ
進行管理者
(コントローラー又は統制部):
演習を進行する側
シナリオに基づき進行
訓練参加者
(プレイヤー又は演習部):
演習を受ける側】
シナリオは知らされない
●被害状況の付与
●国、関係省庁、地方自治体等に関す
る状況の付与
●統制部から付与される状況に基づ
き本部活動の実施状況を把握し、判
断指令、実行の確認を行う。
○○県(現地状況の報告
要求に関する付与)
指示・報告要求
○○市災害対策本部
問い合わせ、報告
○○県
(応援要請の要否に関す
る問い合わせ)
※
情報提供、報告
情報分析
本部活動
意思決定
マスコミ
(取材要求に関する状況
を付与)
指示・報告要求
情報集約
現地派遣員
(消防団を含む)
(現場の被害状況の報告)
報告・要請
運用調整・派遣指
取材・記者会見要請
対策実施
記者会見・発表等
解説DVDの活用
本報告書で記載する「図上シミュレーション訓練」の詳細については、付録とし
て添付する「図上型防災訓練解説DVD」を利用することで、より具体的な理解を
促すことができます。
3.市町村が自ら訓練の企画・準備・実施に取り組むのための要件
一般的に、訓練を企画・実施する市町村の担当者にとって、
「図上訓練の進め方を知っていること」
「災害時の災害対策本部の業務を知っていること」
「被害想定ができること」
「災害時の社会状況等の想定ができること」
の4つの条件が必要となります。
8
しかしながら、市町村を取り巻く現状から、これらの条件を満たすことが困難で
あるため、市町村図上訓練企画・運営担当者に対して、マニュアル研究会事務局が、
①
基礎知識の習得を目的とする事前研修の実施
②
訓練用資料作成の具体的ノウハウを例示するサンプル資料の提示
③
訓練用資料作成中における訓練実施方法等の助言
などの方法によって、市町村による図上シミュレーション訓練の企画・準備及び実
施の試みを行いました。
2-2
図上シミュレーション訓練の企画・準備
1.訓練の企画・準備過程の全体像
図3は八代市、図4は那須町における図上訓練の企画・準備作業の流れをフロー
チャートで示したものです。これによると、市町村が図上シミュレーション訓練を
概ね2ヶ月程度で企画準備ができることがわかります。(但し、2ヶ月とは、最小
限の作業で準備する場合であり、なるべく早めに着手するのがよいのは当然で
す。)
八代市及び那須町の訓練実施経過に関する詳細資料は、参考資料1を参照下さい。
9
図3
実施要領
15週間
13週間
図上シミュレーション訓練のための企画・準備過程の全体像
被害想定
状況付与スケジュール
実施要領資料作成
とりかかる
付与スケジュール
とりかかる
被害想定とりかかる
4週間前
前日
訓練の事前協議(消防本部)
訓練の概要説明(副市長)
関係各課訓練参加依頼文送付
3週間前
1週間前
関係者との協議
基本知識の習得
5週間前
2週間前
(八代市)
関係機関訓練参加依頼文送付
実施要領資料作成
器材、道具の準備
被害想定箇所地図作成
とりかかる
付与スケジュール、
状況付与票の作成
会場設営
訓練参加者(プレイヤー・各
対策部代表の説明会
コントローラーの事前説明
【八代市からの反省点】
① 取りかかりが遅れ、充分に企画を練る時間がなかったのです
② 1ヶ月前までにはコントローラー役を決め、打合せを数回実施しておけば、状況付与や被害想定が厚みを増すのではな
いかと思います
10
図4
図上シミュレーション訓練のための企画・準備過程の全体像
実施要領
19週間
被害想定
状況付与スケジュール
関係者との協議
基本知識の習得
専門家のと訓練相談
(宇都宮大学教育学部教授)
7週間前
6週間前
(那須町)
実施要領資料作成
とりかかる
付与スケジュール
とりかかる
被害想定
とりかかる
5週間前
訓練概要・実施方法説明
(那須岳火山防災委員会)
4週間前
訓練の実施伺い(町長)
3週間前
2週間前
訓練実施依頼文送付
(那須町各課局)
実施要領資料作成
1週間前
器材、道具の準備
前日
会場設営
臨時・緊急火山情報等
最終修正
付与スケジュール、
状況付与票の作成
11
訓練職員の派遣依頼文送付
(気象台、県、警察、消防)
コントローラーの説明会
2.必要な基礎知識の習得
ケース・スタディを行った市町村が容易に訓練の企画・実施に取り組むために、
事前に図上シミュレーション訓練の企画・実施方法及び留意事項をまとめた調査研
究報告書(H17年度)を配布するだけでなく、基本知識の習得を目的とした訓練
企画担当者向けの研修を実施しました。研修内容は、主に表1に示すとおりです。
ここでは、図上訓練の意義・手法の概要に関する座学のほかに、「被害想定」及
び「訓練シナリオ作成」に関する体験演習も盛り込みました。
表1
1
研修のプログラム
あいさつ
10分
(座学)
2
図上訓練の概要
20分
3
~基礎を学ぶ~
・ 訓練の進め方
・ 被害想定の手法
・ 訓練シナリオの設定方法
90分
(演習)
4
5
~実践してみよう~
・ 対象市町村における被害想定
・ 訓練シナリオの作成
3時間半
フリートーキングと総括
30分
【基礎知識の習得についての市町村担当者の意見】
① 那須町:研修でもう少し例題を含めてほしいと思いました
③ 八代市:より具体的な実施要領・被害想定・状況付与の作成方法を理解すること
が重要だと感じました
3.事例に基づく訓練企画資料の作成
訓練の企画準備にあたって、作成すべき資料リストを表2に示します(詳細は
参考資料を参照してください)。以下では、その中の主な資料として、「訓練の
実施要領」、「被害想定」、「状況付与計画」の作成方法及び市町村担当者の反
省点をまとめます。
12
表2
訓練企画準備実施のための作成資料一覧
資料名
No
備 考
コントローラー
プレイヤー
1 図上シミュレーション訓練次第
●
●
訓練の概要
2 資料1
訓練の実施要領
●
●
訓練要領、担当区分記載
3 資料2
訓練評価シート
(プレイヤー用)
-
▲
訓練終了後のアンケート票
4 資料3
プレイヤー用災害対応記録票
-
▲
訓練時に使用
複数枚準備し適宜使用
5 資料4
プレイヤー用時系列管理表
(時系列事案管理表)
-
▲
訓練時に使用
複数枚準備し適宜使用
6 資料5
災害時情報連絡票
-
▲
7 資料1'
被害想定根拠資料(Excel)
●
-
8 資料2’
状況付与スケジュール表
●
-
時刻別に付与する情報一覧
9 資料3’
状況付与計画表
●
-
担当区分を記載
10 資料4’
訓練用画面.ppt
●
▲
模擬のニュース報道画面
11 資料5’
訓練評価シート
(コントローラ用)
●
-
訓練終了後のアンケート票
12 資料6’
コントローラー対応記録票.doc
▲
-
訓練実施時に使用
複数枚準備し適宜使用
13 資料7’
状況付与票(付与カード)
▲
▲
時間の進行に応じ配付
14 資料8’
震度情報等.doc
▲
▲
(FAX送信用)
訓練時に使用
複数枚準備し適宜使用
地域(地区)別の被害想定数
時間別の被害判明数
凡例
● :事前配付資料
▲ :訓練実施時に進行に応じ、適宜使用する資料
※ コントローラー用の資料は、プレイヤーには配付してはならない
(1) 「訓練の実施要領」の作成
ア
訓練目的の設定
訓練目的とは、「訓練で何を明らかにしたいか」ということです。この場合に、
「どのような災害(地震)の発生を想定し、どのような場面(初動期、応急期、
復旧復興期)において、どのような参加者を対象とするか」などを明確にする必
要があります。
以下、表2に、八代市及び那須町における訓練目的の設定例を示します。
13
表2
図上シミュレーション訓練の目的
【八代市】
今後30年以内にマグニチュード7.5程度の地震が発生する確率が
最大で6%といわれている「布田川・日奈久断層帯」での地震を想定
し、その初動期における災害対策本部及び本部事務局員等(各部担当者
を含む)が行うべき状況判断(意思決定)と役割行動の確認、並びに応
急対策活動上の問題点・課題を把握すること。
【那須町】
那須岳の小規模な水蒸気噴火を想定し、その初動期における災害対策
本部及び本部事務局員(各部担当者を含む)等が行うべき状況判断(意
思決定)と役割行動等の確認、並びに応急対策活動上の問題点・課題を
把握すること。
イ
課題の特定
アで対象とした災害が起きたときに対応が困難となることが予想される課題を
抽出します。これは、後述する状況付与シナリオ(状況付与スケジュール及び状
況付与票)の作成に直結する基本設定となります。
訓練課題を設定するにあたって、まず、アで設定した災害の発生を前提に、地
域防災計画や現状の防災体制に基づいて、予想される対策事項を抽出します。
表3に、八代市及び那須町における設定例を示します。
表3
区
訓練における対策事項の設定例(八代市及び那須町)
分
応急対策
別の対応
検討する対策事項
八代市
那須町
災害対策本部運営(情報収集・伝達・分析・確
認、参集、本部機能が損なわれた時の対応など)
○
○
避難誘導(消火活動を含む)
○
○
救出活動
○
○
医療救護活動
○
-
緊急輸送、交通確保
○
○
避難所運営
○
○
災害時要援護者支援
○
○
ボランティア対応
○
○
広報・マスコミ対応
○
○
滞留者(帰宅困難者・観光客)対応
孤立地区への対応
△観光客
○
14
次に、以上で抽出した対策事項に沿って、想定災害の発生時に、対応が困難と
なることが予想される課題を特定していきます。
表4に、八代市及び那須町における設定例を示します。
表4
①
②
八代市
③
④
⑤
那須町
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
ウ
訓練課題の設定例
(八代市、那須町)
地震直後に職員をいかに招集し、災害対策本部を設置するか(現地災害
対策本部が設置された場合の相互の連携、情報連絡方法等)
地震による建物到壊、火災、土砂災害、ライフラインの被害発生状況
とその際に生じる防災活動の制約の把握
地震時の情報収集・整理・分析・伝達をどのように行うか
地震発生後の 1~2 時間と事態安定期の災害対応を適切に実施できるか
• 地震に伴う土砂崩れへの対応、
• 道路・交通の不通箇所が生じたときの状況把握、
• 避難、救出・救助等の支援活動の実施等々
地震時の地元協定締結業者との連絡、他市町村・消防機関への応援要
請、自衛隊災害派遣要請、緊急消防援助隊出動要請等を早いタイミン
グでいかに適切に実施できるか
緊急火山情報が発表された時、何を備えるのか
どの範囲の住民等をどこまで避難させるのか
避難するとした場合、どのタイミングでどのような手段でさせるのか
現実的に大規模避難に踏み切れるのか。判断と責任の所在は
噴火後、関係機関が状況把握をどのように連携をとって実施するか
避難の拡大及びその際の避難手段をどのようにするか
マスコミとの対応はどのようにするか
訓練参加者(プレイヤー)の選定
市町村の災害対策本部を対象とした図上シミュレーション訓練を企画する場合、
訓練参加者(プレイヤー)は市町村の職員に絞り、本来の部署の主な要員で行う
ことが望まれます。
具体的には、訓練目的に想定した発災時期(例えば、初動期)に応じて関係す
る部署から選定します。関係部署の参加者は、基本的に、地域防災計画やマニュ
アル等で規定されている役割及び活動内容に基づいて行動することとします。
以下、表5に、八代市における訓練目的・課題に応じた訓練参加者(プレイヤ
ー)の選定例を示します。
15
表5
プレイヤーの編成と役割分担表の例示
グループ
災害対策本部長ほか
〃
企画振興部
(本部事務局)
〃 消防対策部
〃 総務対策部
〃健康福祉対策部
〃 建設対策部
〃
教育対策部
〃
〃
〃
水道対策部
医療救護対策部
支所対策部
(八代市)
役割
備考
本部の意思決定、班員への指
市長、副市長
示
情報整理、受援対応等個別対 防 災 危 機 管 理 課 ほ
応
か
〃
〃
〃
広報広聴課ほか
こども家庭課ほか
土木管理課ほか
教育総務課ほか
〃
水道局、市立病院
〃
各支所総務課
計
44名
【八代市の反省点】
① 担当部局の決定については、今回の想定が発災後から4時間までとしたため、
初動・応急活動において関係する部署から選定しました。
② 今回の訓練は、市長及び3役はじめ対策本部の部長・班長(課長)クラスを
対象とし、また、グループ(班編制)を複数の対策部で編成したため、手足
として実際の業務に直接当たる職員が不足した点が現実的ではなかったので
す。ただ、災害時の初動期(混乱期)の状況を体験する意味では有効ではな
かったかと思います。
③ 今回、消防団を災対事務局のグループに入れていたが、本来は単独のグルー
プにすべきだったのです。
(2)「被害想定」の作成
ア
想定災害の前提条件の設定
上記で設定した訓練目的をもとに、訓練における想定地震等の前提条件の設定
を行います。
まず、想定地震のタイプを決めておきます。被害を起こす地震には、プレート
境界型(海溝型)地震と直下型(活断層による)地震、火山性地震の3つのタイ
プに大きく分けられ、地震の型としてよく用いられています。それぞれが被害の
16
様相と規模との関係を表6に示します。次に、地震の発生時刻、季節及び天候な
どの前提条件を設定します。地震の発生季節、時刻などは、火災の発生、観光客
の被害の有無、職員の参集、対応状況などに関連します。表7に、八代市及び那
須町における訓練企画に当たっての想定災害の前提条件の設定例を示します。
表6
地震の型とそれぞれの被害特徴
地震の型
海溝型地震
被害の特徴
・ マグニチュードが大きい(8クラス)
・ 揺れの範囲が大きく、複数の市町村や府県全域が被災
・ 海底で起きるため、大きな津波が起こることが多い
直下型地震
・ マグニチュード7クラスの比較的浅い地震
・ 生活の場の内陸部で発生するため、局所的に大被害が発生
・ 津波の被害は少ない
火山性地震
・ 噴火様式は、火砕物を伴う噴火とマグマ水蒸気噴火(水蒸気
爆発)の 2 種類に分けられる
・ 地震は火山とその近くの特定の範囲内で起きる
・ 火山の下の数 km 程度の深さで起こることが多い
・ 火砕流と岩屑なだれ、火山泥流、降灰・噴石による犠牲者が
多い
表7
訓練企画の前提条件の設定例
八代市
那須町
直下型
火山性地震(水蒸気噴火)
平日昼間発災(勤務中)
○
○
夜間・休日発災
-
-
地震の型
季節
天候
イ
秋
晴れ
(当日の実状況)
冬
晴れ
(積雪40cm 北西の風)
概略的被害状況の設定
図上シミュレーション訓練のために、被害の様相、規模(被害量)などの推計
を独自に行うことは難しく、手間もかかるので、できる限り既存の被害想定資料
(都道府県の被害想定調査報告など)を参考に行います。なお、被害量総数の設
定とは別に、時間経過に沿った被害状況の判明率を設定し、訓練の対象フェーズ
(例えば、地震直後~3時間を対象とする場合)に応じて、地震発生後から概ね
1時間毎の被害数値想定を作成しておきます。このとき、過去の大規模地震災害
17
時の被害判明率に準拠する方法もありますが、訓練の便宜を考慮し、被害判明率
をある程度高く設定しておくことも考えられます。
表8に数値的被害総数の設定例を、表9に時系列的被害量の設定例を示します。
表8
数値的被害量の設定例
(八代市)
人的被害(人)
死者
地震
31
25
22
2
10
25
20
6
16
25
15
3
60
42
36
7
10
25
4
4
388
代陽校区
八代校区
麦島校区
龍峯校区
宮地校区
高田校区
郡築校区
昭和校区
植柳校区
金剛校区
日奈久校区
二見校区
太田郷校区
八千把校区
松高校区
坂本地区
千丁地区
鏡地区
東陽地区
泉地区
合計
負傷者
行方不明者
火災
地震
5
4
3
1
4
8
8
2
6
9
7
1
20
13
11
3
4
7
1
1
118
火災
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
8
6
8
2
3
9
4
1
5
6
3
2
15
15
11
5
7
16
2
2
130
表9
重傷
地震
40
31
42
10
19
48
24
6
27
31
18
11
78
76
56
26
35
80
13
12
683
軽傷
火災
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
地震
776
557
807
208
384
903
457
125
496
591
390
236
1,471
1,331
993
53
71
161
27
25
10,062
火災
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
時系列的被害量の設定例
避難者
地震・火災
2,362
1,981
1,216
293
679
1,479
1,765
620
1,029
2,284
1,298
270
3,915
2,493
2,016
1,188
1,290
3,080
502
47
29,807
全壊
地震
809
678
416
100
232
506
604
213
353
782
444
92
1,341
854
690
398
432
1,030
168
172
10,314
住家被害(棟)
半壊
火災
38
30
21
8
28
57
56
17
42
69
50
9
146
95
76
9
10
25
4
4
794
地震
1,028
782
1,028
191
441
1,101
433
95
618
564
488
257
1,887
1,722
1,241
597
648
1,545
192
259
15,117
死者
地区別
情報解禁時刻
人的被害(人)
行 方
負傷者
不明者
重傷
軽傷
A地区
B地区
C地区
D地区
E地区
F地区
G地区
合計
調
住家被害(棟)
避難者
査
全 壊
半 壊
非住家(棟)
公共
その他
建物
道路
(箇所)
橋りょう
(箇所)
港湾
(箇所)
その他
崖くずれ
水道
(箇所)
(戸)
非住家(棟)
公共
その他
建物
2
14
2
46
5
14
3
3
1
7
2
11
3
4
18
99
道路
(箇所)
2
2
2
2
0
2
0
10
橋りょう
(箇所)
2
2
1
1
1
3
1
11
その他
港湾
崖くずれ
水道
(箇所) (箇所)
(戸)
2
2
118
0
5
398
0
2
123
0
5
23
0
3
64
0
1
93
0
1
36
2
19
855
電話
(回線)
電気
(戸)
ガス
(戸)
死者
地区別
A地区
B地区
C地区
D地区
E地区
F地区
G地区
合計
9
26
8
1
4
7
2
57
人的被害(人)
行 方
負傷者
重傷
軽傷
不明者
52
22
52
157
67
157
46
20
46
9
4
8
25
11
25
39
17
39
14
6
14
342
147
341
電話
(回線)
71
239
74
14
38
56
22
514
電気
(戸)
118
398
123
23
64
93
36
855
ガス
(戸)
95
318
99
12
51
74
32
681
情報解禁時刻
住家被害(棟)
避難者
全 壊
半 壊
108
322
95
17
52
81
29
704
32
107
33
6
17
25
10
230
48
160
50
9
26
37
15
345
地震発生2時間後の覚知情報
区分
死者
地区別
A地区
B地区
C地区
D地区
E地区
F地区
G地区
合計
13
39
12
2
6
10
4
86
人的被害(人)
行 方
負傷者
不明者
重傷
軽傷
48
34
78
144
101
235
42
30
70
8
5
12
23
16
38
36
25
59
12
9
21
313
220
513
区分
A地区
B地区
C地区
D地区
E地区
F地区
G地区
合計
死者
48
143
42
8
23
36
13
313
人的被害(人)
行 方
負傷者
不明者
重傷
軽傷
13
123
288
40
369
862
12
109
255
2
20
46
6
60
139
10
93
216
3
33
78
86
807
1,884
建物
(棟)
2
情報解禁時刻
住家被害(棟)
避難者
全 壊
半 壊
161
483
143
26
78
121
44
1,056
127
428
133
25
69
100
39
921
191
642
199
37
103
150
58
1,380
非住家(棟)
公共
その他
建物
5
55
7
183
11
57
8
11
4
29
6
43
7
17
48
395
道路
(箇所)
4
4
4
4
0
4
0
20
橋りょう
(箇所)
8
8
4
4
4
12
4
44
その他
港湾
崖くずれ
水道
(箇所) (箇所)
(戸)
0
8
237
0
20
795
1
8
247
0
20
46
0
12
128
0
4
186
0
4
72
1
76
1,711
電話
(回線)
142
477
148
28
77
111
43
1,026
電気
(戸)
237
795
247
46
128
186
72
1,711
:
地震発生6時間後の覚知情報
地区別
建物
(棟)
中
地震発生1時間後の覚知情報
区分
地震
1,714
1,303
1,713
319
735
1,836
723
158
1,031
940
813
428
3,145
2,871
2,069
995
1,080
2,576
420
432
25,301
(那須町)
地震発生30分後の覚知情報
区分
一部破損
ガス
(戸)
189
636
197
23
102
148
65
1,360
建物
(棟)
1
4
情報解禁時刻
住家被害(棟)
避難者
全 壊
半 壊
591
1,771
525
94
286
444
160
3,871
382
1,283
398
75
206
299
116
2,759
573
1,925
597
112
309
449
174
4,139
非住家(棟)
公共
その他
建物
18
164
21
550
19
171
12
32
9
88
9
128
8
50
96
1,183
18
道路
(箇所)
20
20
20
20
0
20
0
100
橋りょう
(箇所)
24
24
12
12
12
36
12
132
その他
港湾
崖くずれ
水道
(箇所) (箇所)
(戸)
1
24
710
1
60
2,386
2
24
740
0
60
139
0
36
383
0
12
557
1
12
216
5
228
5,131
電話
(回線)
426
1,432
444
83
230
334
130
3,079
電気
(戸)
710
2,386
740
139
383
557
216
5,131
ガス
(戸)
568
1,909
592
69
306
445
194
4,083
建物
(棟)
3
12
3
1
2
1
26
ウ
具体的被害状況の設定等
=ここからが防災対策見直し作業のスタート
=
以上に述べた訓練の目的(課題)及び大凡の被害状況の想定結果に基づいて、
被害の発生状況(場所・時間・経過)などをできるだけ具体的に設定していきま
す。また、被害の形態や時間経過の変化及び影響などについて概要ではなく出来
るだけ具体的に設定しなければなりません(ただし、プレイヤーの対応等訓練の
経過によっては使用しない場合もあります)。
(ア)基礎データの収集
基礎データの収集は、訓練成果の裏づけでもあるように、訓練企画の作成には
非常に重要な作業です。地域防災計画、各種マニュアル、過去における災害事象
等必要なデータを収集し、照らし合わせることにより、上記で示した目的と繋が
り、災害(被害)状況の設定等が容易に決めることができます。
むしろ、この作業自体が地域防災計画や災害対応マニュアル等の見直しに繋が
る第一歩となってきますので、極めて重要な作業となります。
【収集する基礎データの例】
— :地域防災計画
— :各種マニュアル
— :過去の災害事象事例データ
— :県の被害想定
— :人口・世帯数(各地域人口・世帯数・年代別表等)
— :防災拠点データ(消防署・消防団関係)
— :水道配管図
— :電気・電話配線図
— :ガス普及率
— :公共施設・病院施設・避難施設・避難場所等
(イ)具体的な被害想定
以上の基礎データをもとに、「どの場所でどのような災害形態が起こりやすい
か」を考えていきます。また、考えられる被害をそのまま使った設定にするので
はなく、訓練のテーマや課題に応じて、訓練目的が達成できるように設定するこ
とが重要です。
19
その際に、訓練の対象地域の地理的な特徴や市町村役場、消防署、警察署及び
医療機関等重要施設の所在と相互の位置関係を確認できるような地図を用意し、
そのうえで具体的な被害想定を行うと作業しやすくなります。そして、被害設定
の目的に応じて、時間経過とともに被害や状況の変化を描いていきます。必要に
応じて、さらに細かい状況の設定をしてもかまいません。
八代市では、GISなど電子地図上での被害想定はしていませんが、写真1の
ように、白地図上に地区ごとの被害内容を張り付け、被害の発生場所や様相等を検討し
ています。今後の課題として、電子地図上での現場単位のより綿密な被害想定の必
要性を挙げています(地図上の被害想定の設定例として、図5を例示。)。
写真1
図5
地図上での被害情報張り付け作業例(八代市)
地図上で具体的な被害想定の設定例
20
(C町)
※「被害想定」の作成方法に関する反省点:
【那須町】
• 一つ一つの被害は思い浮かんでも、それら被害を繋げ、災対本部の流れ
を想定するのは難しく、データ収集から始めました。
• 本町の災害記録及び、三宅島、有珠山等過去に噴火した火山の記録を収
集すると多少、訓練の災対本部の流れが見えてきました。
• 次に本町の特徴(地形・人口分布等)を再確認し、現地を回りながら被
害を想定しました。
• 被害を始めに数字で表してしまったのは失敗でした。想定した被害と辻
褄が合わず、結局数字は白紙に戻しました。
【八代市】
• 本市の場合、平成12年度に実施した地震被害想定を基に作成しました
が、合併後の地区についてはデータがなかったため、概算で割り出しま
した。また、道路、橋梁、ライフライン関係の被害想定も事例をもとに
積算しました。
• しかしながら、実際には用意した被害データすべてをプレイヤーに伝達
する場面がありませんでした。これは、どのコントローラーが定期的に
発信するのかを決めていなかったためです。例えば、1時間ごとにスク
リーンに被害件数等を映し出すしことも考えられます。状況付与票だけ
では不足する情報を補うことが必要です。
• 今回は地震災害を想定した訓練であったため、市内全域での被害想定を
行いました。本市は、海岸部から平野部、山間部まであるため、地域特
性に応じた被害想定を行いました。
例
:山間部→急傾斜等における崖崩れ・土砂崩れによる災害及び孤立等
:海岸部→液状化現象による避難及び被害
:市街地→建物倒壊、主要道路等の被害、火災による延焼拡大等
•
•
•
被害対象地域(地区)の選定終了後、担当者自身が各地域(地区)で実
際に発生が予想される災害をイメージして、被害想定地域(地区)の地
図上(例:市内全図・被害の状況設定の概要)又はシナリオへの書き出
し作業を実施しておくと、以降の時間設定等の作業がイメージしやすく
なります。
本市においては、取りかかりが遅かったため、個々の被害現場における
時間経過ごとの綿密な被害想定が十分に用意できませんでした。
プレイヤーからの問い合わせで、学校・保育園の人的・物的被害や医療
機関の受け入れ状況などを聞かれるので、より詳細な時間経過ごとの状
況想定等に基づくバックデータを作っておく必要があります。そのため、
「被害想定地図」資料の作成は、参考になります。本市では、電子デー
タの被害想定地図は作成しませんでしたが、配布された例示データを参
考に白地図上に地区ごとの被害内容を張り付ける作業をしました。
21
(3)「状況付与計画」の作成
状況付与は、図上シミュレーション訓練において、プレイヤー(演習部)の災
害対応行動を促すための最も基幹となる素材です。「発信元」、「付与先」、
「伝達手段」、「付与時刻」、「付与内容」の5つで構成されます。
① 発信元:どこから(コントローラー)から伝えられた情報か、発信元を示しま
す
② 付与先:状況を付与するグループ(プレイヤー)名を具体的に書いておきます
③ 伝達手段:状況の伝達手段で、電話かFAXかなどを示しておきます
④ 付与時刻:状況を付与する訓練時の想定時刻を示します
⑤ 付与内容:プレイヤーに被害や状況などを具体的に示します
以上を用いて、表10に示す「状況付与スケジュール表」を作成します。
表10
№
1
付 与 先
付 与
時 刻
本部事務局 11:00
2
全員
11:01
3
全員
11:02
4
本部事務局 11:03
「状況付与スケジュール表」の作成例
発 信 元
付与方法
件名
種別
地区
緊急火山情
報第1号
災害情報
ー
スクリーン
ニュース映
+アナウン
像
ス
緊急火山情
報第1号
災害情報
ー
町長
口頭
(庁内放送を
想定してマ
イクで)
町災害対策
本部設置
緊急連絡
ー
栃木県
FAX
被害報告依
頼
緊急連絡
ー
栃木県
FAX
5
避難部
11:04
保育園
電話
児童への対
問い合わせ
応
ー
6
総務部
11:05
県職員
電話
入山者対応
状況報告
ー
電話
市災害対策
本部設置
緊急連絡
ー
7
本部事務局 11:06 那須塩原市
(那須町
一部)
状 況 付 与 シ ナ リ オ
別紙緊急火山情報第1号参照~
「平成18年12月21日11時00分 気象庁地震火山部発表
那須岳の火山性地震の回数が、21日9時から1時間に30回と急増しています。
那須岳山頂付近を中心に山体の急激な膨張が観測されています。
ニュース映像 PP(6~7)
11時00分ころ宇都宮気象台が那須岳の緊急火山情報第1号を発表しました。
今後の情報に注意して下さい。
(町長「訓練災害対策本部設置宣言」)
緊急火山情報の発表により、那須岳が噴火の恐れがあると想定されるため、災害対策本部を
設置した。
職員は、的確な情報収集と迅速な対応を行い、住民の安全確保に努めていただきたい。
火山防災緊急連絡・被害報告依頼~
21日11時00分、気象台より緊急火山情報第1号が発表されました。被害が発生した場合に
は、第4号様式(その1)により県消防防災課宛に報告願います。
那須保育園です。
先ほどから地震が何回も発生しています。外は雪があるため、園児は建物内で待機していま
す、現在、職員が園児の保護者に連絡を取っていますが、連絡が取れない保護者もいます。
園児を迎えにくるよう依頼していますが、連絡が取れない園児はどうすれば良いでしょう
か?
大田原林務事務所の齋藤です。
登山指導センターで確認したところ、現在、那須岳に入山者が8名います。入山者の現在位
置は不明です。
他の登山口からの入山者もいると思われます。
那須塩原市災害対策本部より~
那須塩原市は、緊急火山情報の発表により11時00分に「災害対策本部」を設置しまし
た。
三斗小屋宿付近の地域に避難指示を出します。今後も相互の連携をお願いします。
8
総務部
11:07
交通業者
電話
民間バス運
休
対応報告
ー
東野交通那須営業所より~
東野交通は那須塩原から大丸温泉間のバスを、11時00分大丸温泉発の便をもって運休するこ
とに決定しました。
運行の再開については未定です。
9
避難部
11:07
町職員
電話
学校閉鎖
被害報告
ー
那須小学校です。
先ほどから地震が頻繁に発生し、児童を校庭へ避難させました。教師が保護者に連絡を取
り、迎えにくるよう依頼していますが、連絡が取れない保護者もいます。
保護者に連絡が取れない児童は今後、どのような対応をしたらよいでしょうか?
10
避難部
11:08
町職員
電話
避難所被害
被害報告・
問い合わせ
ー
湯本支所の薄井です。
先ほどからの地震で本棚から本が落ちたりしましたが、避難所としては問題ありません。
公民館のホール、和室を避難所として開設しています。
本部事務局 11:09
栃木県
FAX
県災害対策
本部設置
緊急連絡
ー
栃木県災害対策本部より~
栃木県は、緊急火山情報の発表により11時00分に「災害対策本部」を設置しました。
各市町においては、災害対策本部を設置した場合は県への報告が必要です。
まだ報告していない市町においては、大至急報告願います。なお、既に報告済みの場合は不
要です。
那須高原青
年の家職員
電話
観光客対応
被害報告・
問い合わせ
ー
那須高原青年の家の職員です。
先日からの宿泊客・高校生85名が滞在しております。今後どのような対応をしたらよいで
しょうか?
施設自体は、現在のところ被害はありません。
11
12
避難部
11:10
22
ア
状況付与の種類
状況付与の内容によって、大きく下記の3つの種類に分けられます。それぞれ
の種類ごとに作成していくと、容易にできます。
(ア)訓練(及び状況付与)の目的に関係なく共通な「基本的付与」
例えば、気象庁や消防庁、都道府県などから出される地震情報などの付与が挙
げられます。表11に設定例を示します。
表11
付 与
時 刻
11:00
発 信 元
栃木県
「基本的付与」の設定例
件名
(那須町)
状 況 付 与 シ ナ リ オ
別紙緊急火山情報第1号参照~
「平成18年12月21日11時00分 気象庁地震火山部発表
緊急火山情 那須岳の火山性地震の回数が、21日9時から1時間に30回と急増し
報第1号 ています。
那須岳山頂付近を中心に山体の急激な膨張が観測されています。
11:01
ニュース映像 PP(6~7)
ニュース映 緊急火山情 11時00分ころ宇都宮気象台が那須岳の緊急火山情報第1号を発
像
報第1号 表しました。
今後の情報に注意して下さい。
11:03
火山防災緊急連絡・被害報告依頼~
被害報告依 21日11時00分、気象台より緊急火山情報第1号が発表されました。被
害が発生した場合には、第4号様式(その1)により県消防防災課宛
頼
に報告願います。
11:20
11:21
(※
栃木県
ニュース映像 PP(9~11)
11時20分ころ那須岳が噴火しました。
ニュース映
ニュース報 噴煙が大きく舞い上がっています・
像
以下省略
今後の情報に注意して下さい。
気象庁
(気象庁→栃木県→那須町)
別添 緊急火山情報第2号 参照。
緊急火山情 「緊急火山情報第2号
報第2号 平成18年12月21日11時21分 宇都宮地方気象台発表
21日11時20分ころ那須岳が噴火しました。
上表において、訓練の開始時間は11:00と設定されています)
(イ)状況付与の目的に応じた「対策項目別の状況付与」
(1)のイで特定した訓練の課題を踏まえて、訓練で検討したい具体的対策事
項を抽出し(表12)、それぞれの付与目的を明確したうえで、状況付与の設定
(表13)を行っていきます。
訓練における状況付与の目的・ねらいを明確することにより、具体的な被害状
況や、状況付与計画(スケジュール)の設定が容易となるだけでなく、訓練にお
ける状況付与の目的に対して、どのような対応が行われていたかを確認すること
により、対応行動の評価を行うことができます。
23
表12
訓練で検討したい具体的対策事項
対策事項
災害対策本部運営
避難誘導
救出活動
医療救護活動
緊急輸送、交通確保
避難所運営
災害時要援護者支援
ボランティア対応
広報・マスコミ対応
滞留者(帰宅困難者・観
光客)対応
孤立地区への対応
表13
•
「対策項目別の状況付与」の設定例
•
建設機関への
連絡
応援要請
一部抜粋)
訓練で検討したい具体的な対策事項
・庁舎内の安全確保
・庁内被害状況確認
・災害情報の放送
・応援要請
・避難勧告地域、警戒区域設定地域等の周知を指示
・住民の誘導等指示
・消防・建設機関への連絡
・応援要請
・救護班の組織・準備
・医療機器・医薬品の確保・配備
・外来・入院患者の対応
・必要な品物及び数量を予測する
・建設業者への連絡
・職員派遣
・応援要請
・職員、車両、物資等の派遣・配分
・関係機関への連絡
・ボランティアセンターの立ち上げ
・ボランティアのの受け入れ
・住民からの安否確認
・防災無線の放送
・記者会見
・避難場所及び避難経路の案内
・観光客の安否確認
・救援物資の提供
・被害把握
・ライフライン復旧
対策事項 具体的な対策項目
災害対策 • 応援要請
本部運営
救出活動
(八代市・那須町
•
•
付与の目的
応援要請が必要
かの判断ができ
るか
県建設業協会八
代支部へ応援要
請の依頼ができ
るか
24
(八代市)
状況付与シナリオ
熊本県災害対策本部ですが、
県内及び隣接県からの応援隊
が出動準備中とのことである
が、現在の被害状況はどう
か?
○町○番地の▲▲さんの家屋
が倒壊して、中に何人か閉じ
こめられている。消防署が救
出に行っているが、重機と人
手が足りないので、応援をお
願いする。
(ウ)上記以外の「その他の状況付与」を作成していきます。
例えば、実際の災害時に多い未確認のあいまい情報、誤情報も含む、災害対策
本部の混乱を加速させるような防災関係機関・マスコミ・住民からの問い合わせ、
要望などの付与が挙げられます。表15に設定例を示します。
表14
付 与
時 刻
(八代市)
発 信 元
状 況 付 与 シ ナ リ オ
11:05
県
地震緊急連絡・被害報告依頼
11月20日午前11時頃、熊本県内で非常に強い揺れを感じま
した。被害が発生した場合には、各県地域振興局に報告願いま
す。
11:17
県
熊本県災害対策本部ですが、県内及び隣接県からの応援隊が出動
準備中とのことであるが、現在の被害状況はどうか?
11:25
住民
坂本町○○地区で土砂崩壊。民家が押し潰されている。救助をお
願いしたい。
11:34
NTTドコモ熊本支店です。携帯電話は徐々にかかりにくくなっ
ライフライ
ています。今のところ、メールについては問題ありません。災害
ン
時優先携帯電話は活用していますか?
13:08
報道関係者
13:23
住民
(※
イ
「その他の状況付与」の設定例
KKTテレビの○○○です。地震の被害の状況はいかがですか?
災害情報を放送しようと思うのですが、いかがですか?
隣の食堂のプロパンガスボンベが転がってガスが噴出し、先ほど
そこに火がついて、ボンベから火が噴き出している。消防車は来
てくれるのか、他にもボンベが転がっている。
上表において、訓練の開始時間は11:00と設定されています)
留意ポイント
状況付与スケジュールの作成にあたっては、次のポイントに留意してください。
(ア)地域の実態との整合性
被害状況及びそれらが生じる時間の設定などが現実と大きく離れると、参加者
の図上訓練への取り組む態度と姿勢に大きく影響を与えてしまいかねませんので、
地域の実態との整合性をとりながら、調整していく必要があります。
(イ)「状況付与計画表」の作成
訓練参加者(プレイヤー)及びコントローラーの構成に応じて、付与件数及び
タイミングのバランスを十分に考慮して、設定する必要があります。そのために、
図6のような担当者区分を明記した「状況付与計画表」を作成しておくと良いの
です。
25
図6
「状況付与計画表」の設定例
コントローラ
杉山
(指導員)
付与
番号
1
付与時間
11:00
出崎
(自衛隊)
ニュース
気象庁
映像
プレイヤー
中川
稲垣
須藤
(八代
(指導員) (八代市)
市)
消防対 総務対策 医療救護 支所対策
学校・避難
ライフライ 住民・マ
付与方法
市長 事務局
報道機関
策部
部
対策部
部
場所・区長
ン
ンション
スクリー
ン
FAX
震度情報
スクリー
ン
FAX
震度情報
FAX
地震情報
電話
記者会見
野村
(指導員)
自衛隊
●
3
11:03
114
14:29
115
14:29
●
○
116
14:30
●
○
117
14:33
118
14:35
122
14:39
123
14:43
124
14:45
125
14:46
126
14:50
127
14:52
128
14:57
129
14:58
計
132
●
●
●
○
●
○
●
○
●
○
●
○
●
○
●
○
●
○
●
○
●
14
件名
地震発生
○
6
付与が一人の担当者に集中し
ないように、タイミング考慮
して設定していきます
ウ
(八代市)
1
14
17
13
21
1
44
コントローラの各々が担当す
る付与件数が偏らないように
設定にします
10
13
5
報道情報
電話
避難所
FAX
電話
ゆうパック無料
化
取材依頼
電話
ガス漏れ
電話
取材依頼
電話
停電
電話
給水車の確保
電話
防災担当大臣視
察
スクリー
ン
報道情報
17
各グループ(プレイヤー)へ
の付与件数がバランス良く設
定していきます
状況付与票の作成
以上に作成した「状況付与計画表」に基づいて、実際に訓練でプレイヤーに付
与する票(カード)は、図7のようなものとなります。それぞれ1枚ずつ、A4 か
A5 版の大きさなどに統一して付与します。
状況付与票に「状況付与の目的」または「プレイヤーからの予想される問い合
わせ」等を書き出しておくと、コントローラーが訓練の趣旨を理解しやすくなり
ますし、プレイヤーとのやりとりの中で、状況に応じて、訓練の目的に沿った追
加付与もしやすくなります。この場合に、A4 版の大きさにすると良いです。
26
図7
№
付
「状況付与票」の作成例
(那須町)
10
与
先 避難部
付 与 時 刻 11:08
発
件
信
付与方法
元 町職員
内線527
名 避難所被害
◆湯本支所の薄井です。
先ほどからの地震で本棚から本が落ちたりしましたが、避難所
としては問題ありません。
公民館のホール、和室を避難所として開設しています。
※「状況付与計画」の作成における感想と反省点:
【八代市】
• 状況付与スケジュールは、災害の種類や地域特性によって異なるため、一
概に先進事例をもとに作成することは薦められません。事前にコントロー
ラーミーティングを開き、実際に関係機関が行うであろう手順に従って、
スケジュールを組んだほうが実戦的な訓練となるものと考えます。
• 状況付与票の内容に対して、プレイヤーの対応が的確であるかどうかを判
断し、よりよい方向に導くことがコントローラーの役割だと思います。そ
のためには、まず最初にコントローラーを決定し、評価ポイントに関する
事前の打合せを十分に行う必要があります。状況付与カードには、被害想
定に基づいた具体的な場所や状況を記載すべきと思います。
• プレーヤーに余裕を与えないような状況付与を作成し、対策部間に偏りが
生じないように配慮すべき。特に午後からの状況付与が軽くなるため、あ
らゆる事象を想定した状況付与を作成すべきと思いました。
27
【那須町】
• 各々の付与は前提となる被害想定を、いつ?誰が?どんな方法で?どんな状
況で?どんな情報として?災対本部に入ってくるか当てはめていきました。
• 上記で浮かび上がった付与を、パズルのように組み合わせてスケジュールを
作成しました。また、組み合わせ途中で思いついた2次災害などもここで加
えました。
• 「災対本部各部にどんな対応をさせたいのか」これを明確にしないまま、ス
ケジュールの作成に入ってしまったため、修正を何度も加えなければなりま
せんでした。
• 前の段階で状況付与の目的をしっかり定めておけばもっと効率よく作成でき
たと思います。
4.訓練の企画・準備のポイント
(1) 体制づくり(人員・作業分担など)
防災担当者が充実していない自治体では、平常時業務を抱えながら、訓練の企
画準備を行うことには、かなり負担が大きいと思われるため、資料の作成などの
訓練企画・準備にあたっては、担当者一人で行わず、係内で役割分担をし、作業
効率をあげることが必要となります。
【那須町の感想】
那須町は2人体制で通常業務をしながら、企画を進めて参りました。
簡単には次のような割り振りでした。
①担当者A:訓練実施の起案、町長説明、職員・住民・関係機関等への
協力依頼、コントローラーの宿泊先等の調整等
②担当者B:→訓練資料作成、会場準備、消耗費準備等
また、シナリオ等訓練の鍵を握るものは2人の話し合いで決めました。
小さな市町村は職員一人ひとりが担当する業務が多いと思われますの
で、訓練専任の職員はほぼ不可能ではないかと考えます。
今の作成手順でも担当者の勉強としてはとても良いとは思うのです
が、実際に私は作業途中で、他市町村の災害対策を調べたり、那須町の
災害危険箇所の再確認ができたりと、とても勉強になりました。
28
(2) 幅広い関係機関の参加要請
災害時における関係機関との連携確認の機会にも繋がるので、付近の市町村、
土木事務所等県やの機関や警察・自衛隊駐屯地・鉄道駅・ガス会社・電力会社等
できるだけ幅広い関係機関の参加を得ることが望まれます。
【那須町の感想】
• 訓練の資料作成に取り掛かる前に火山専門家の中村教授にご意見をいただ
きました。火山噴火の図上防災訓練は実施可能なのか?また訓練の効果は
あるのか?(地震のような突発的な災害ではないので)どの程度の噴火規
模(マグマ噴火、水蒸気噴火等)が良いだろうか?相談の結果、臨時火山
情報の発令から噴火後の火山活動の低下までを訓練期間とし、現実的な水
蒸気噴火を想定することにしました。
• スケジュール(案)ができたところで、気象台にご意見をいただきまし
た。那須岳の特徴に合った火山活動になっているか?火山情報が無理なく
現実的に発令できているか?他にどんな被害が想定できるか?など。相談
の結果、タイムスケジュール及び火山情報の文面を修正しました。
(3) 関係者への事前説明
図上シミュレーション訓練の成功如何については、市町村長をはじめとする参
加者の理解を最大限必要とするため、訓練の必要性及び訓練の概要について理解
を得ることが、図上訓練の準備段階としての第一ステップとなります。
ア
プレイヤーへの事前説明
プレイヤーとしての各部の参加に対する事前説明について、下記の事項を簡潔
に示した「実施要領」により行います。
○ 図上シミュレーション訓練の基本的考え方と手法の特徴
○ 訓練の目的、課題
○ 訓練の基本的前提条件
○ 訓練参加者の編成概要
○ ルール(進め方等)
○ 訓練中に記入すべき書類の取り扱い方
○ 訓練で使用するグッズ
○ 会場のレイアウト
この段階では、訓練の具体的内容、特に状況付与シナリオは、ごく一部の担当
者に示す程度とし、プレイヤーには示さないものとすることが重要です。
29
【那須町の感想】
•
説明会は2回に分けて開催しました。1回目で図上シミュレーション
訓練についての説明、今回の訓練の進め方についての説明を行いまし
た。他市町村の訓練のビデオ(研究会事務局の消防科学総合センター
提供のもの)も上映しました。
•
2回目で簡単なシナリオ(本番のシナリオとは全く違いますが)を使
い、訓練と同じ形で15分ほど動いてもらいました。
•
事前に訓練と同じ形で動いたことにより、訓練の進め方に関する疑問
はなくなり、当日、スムーズに訓練に入ることが出来たとの意見を、
プレイヤーからいただきました。
【八代市の感想】
参加者への事前説明については、訓練の流れを十分理解できるように
説明しておく必要があります。(特に記録票への記入の仕方につい
て。)
イ
コントローラー会議
訓練の運びを円滑に、また訓練の目的を達成するために、コントローラー間の
意思疎通を図ることが不可欠です。
以上のプレイヤーへの説明事項のほか、下記の事項を簡潔に示した資料を用い
て、コントローラー会議を行います。
○ 被害想定の概要
○ 状況付与の目的、概要及び状況付与スケジュール
○ プレイヤーへの付与、問い合わせ応対要領
(4) 会場設営、各種機材・小道具の確保
地域防災計画、職員防災行動マニュアル、各種資料を訓練中に閲覧・使用でき
るよう各自に配布するほか、計画書原本や大判の管内地図等を会場に適宜に配備
しておきます(図8に会場設営の例を示します)。
30
図8
訓練会場のレイアウト例
スクリーン
プロジェクタ
ボード
市長
副市長
本部事務局
(内線0000)
消防対策部
(内線0000)
ー
ボ
ド
コピー機
小道具等
総務対策部
水道対策部
医療救護対策部
ー
出
入
口
進行管理者1
(内線0000)
進行管理者2
(内線0000)
自衛隊
八代警察署
(内線0000)
八代消防本部
県・振興局
(内線0000)
住民(内線0000)
(八代市)
ボ
ド
(内線0000)
参 観 者
ー
健康福祉対策部
建設対策部
教育対策部
(内線0000)
支所対策部
ボ
(内線0000)
(内線0000)
ド
報道機関
注):
1. 机を組み合わせ、島を作る。各班のグループ名を記載した名札立てと名札を
用意する。各班に書類受けを置く。
2. 市内全地区の地図、地域防災計画、職員初動マニュアルを班ごとに用意。小
道具(表3-5参照)を用意する。
3. プロジェクタは、進行管理者のもとに置き、コピー機を各グループの中間の
等距離の位置に配置する。
31
表15
◎
◎
◎
◎
◎
○
○
○
○
○
◎
◎
◎
図上シミュレーション訓練で使用する小道具類(◎は必須)
対象地区の地図(被害等を記入するための鉄道・道路等を簡略化した地
図、市販地図でも可)
八代市地域防災計画、職員防災行動マニュアル等
ホワイトボード(各グループの情報整理用)、ホワイトボード用マーカ
ー
模造紙、罫紙(各グループ2~3枚)
多色マジックペン、多色サインペン、多色蛍光ペン
のり、セロテープ、メンディングテープ
クリップ
電卓、定規、はさみ
パソコン、プリンタ
メールボックス(書類受け)
参加者名札、グループ名を記載した名札立て
コピー機(グループ共通。1台 農業委員会から借用)
状況付与票、「災害対応記録票」、「災害対応連絡票」(問い合わ
せ・連絡・回答・報告用)、「コントローラー用対応記録票」、「時
系列事案管理表」
写真2 最適なレイアウトで訓練会場を設営する
写真3 状況付与表等の資料の配布準備
32
2-3
図上シミュレーション訓練の実施
1.直前オリエンテーション
進行管理者(コントローラー)統括係は、訓練の実施に先立ち、訓練要領を
基に訓練全体のスケジュールの説明を行います。
表16
時
刻
項
訓練の全体スケジュール(那須町実施例)
目
内
容
10時00分
開会
○
主催者開会挨拶
10時05分
訓練説明
○
配布資料に基づき訓練の進め方の補足説明
10時45分
作戦会議
○
グループごとに、役割分担を決める
11時00分
訓練開始
第 1 場面
○
12時00分
(休憩)
12時55分
13時00分
訓練開始の合図(マイク等により一斉に「那須岳
の緊急火山情報第1号発表を想定、図上訓練を開始
します。」とアナウンス)
• 状況付与(訓練進行管理者)
• 対応検討・決定(訓練参加者)
• 関係機関役に報告・指示・要請等(訓練参加者)
○ 災害対応第 1 場面終了(マイク等により「第 1 場
面を終了します。昼食後第2場面を行います。」と
アナウンス)
○
訓練の進め方の再確認
訓練再開
第2場面
○
15時25分
訓練再開の合図(マイク等により「第2場面を開
始します。」とアナウンス)
• 状況付与(訓練進行管理者)
• 対応検討・決定(訓練参加者)
• 関係機関役に報告・指示・要請等(訓練参加者)
訓練終了
○ 災害対応終了(マイク等により「訓練を終了しま
す。休憩後検討会を行います。」とアナウンス)
検 討 会 、 講 ○ 総括・講評:全体討議及び取りまとめ
評
閉会
○ 主催者閉会挨拶
15時30分
終了
○
14時30分
14時40分
片づけ
また、訓練を実施するにあたり、訓練の進め方についても図上訓練実施要領の
「訓練の進め方(次頁参照)」に基づいて最終の説明(※)を行うとともに、訓
練参加者(プレイヤー)全員に徹底します。
訓練の進め方で不明な点に関しては、訓練開始前に進行管理者(コントローラ
ー)に確認の上、参加者全員の意識共有をはかっておくことが大切になります。
※
訓練の実施にあたっては、事前に訓練の概要(進め方について)説明を実施
していることを前提とし、当日は最終確認を行う場と位置付けます。
33
図9
コントローラー
訓練の進め方(那須町実施例)
プレイヤー
訓練記録資料の取扱と保存
統括係(消防庁・消防科学総合センター)
1.全体の進行管理(センター)
1.コントローラーからの問い実施例合わせ対応
(消防庁、那須町)
2.状況付与カード配布・管理(センター、指導員)
3.状況付与計画管理(消防庁、センター、指導員)
4.対応記録票・FAX等の管理(センター)
5.プレイヤー・アドバイザー(消防庁)
訓練中に使用した「状況付与票」
災害対策本部・本部員会議
1.災害対策基本法における町長の権限に基づく意思決定、及び広域応援等の要請並
(新規に付与したものを含む)、「対
びに災対本部会議の開催等重要事項の対応決定については、プレイヤーの判断によ
応記録票」等々すべての文書に関して
り適時行うこと。また、これらの意思決定については、関係機関等を担当するコン
は、作成を担当した各自が責任をもっ
トローラに対し、実災害におけるオペレーションと同様に指示、要請等を行うこ
て保管し、訓練終了後「対応記録票・
FAX等の管理」担当(センター)に
と。
2.模擬記者会見は訓練上必須とする。会見時期、内容等は町長が自ら決定し実施
一纏めに整理して渡すものとする。
状況付与の指示
重要事項の意思決定
情報共有
付与完了と対応状況の報告(※必ず実施)
各部:(総務(事務局)・救護・避難・給水・応急復旧・消防)
状況付与係
(国の機関、地方公共団体、住民、報道機関等々)
1.プレイヤーへの状況付与
Ⅰ
状況付与
0.訓練直前の作戦会議:
状況付与票
(電話・FAX・スクリーンで行う)
① 状況付与計画に基づき、「状況付与票」(例示 3-1)を用いて
付与
z 付与方法が電話の場合、直接各部の内線へ電話する
電話で付与した後、コントローラの手元に保留
z 付与方法がFAXの場合、各対策部に設置のFAX受信箱へ
置く(状況付与係が各対策部に配布)
z 付与方法がスクリーン表示の場合、スクリーンに映像表示の
FAXで付与した後、プレイヤーの手元に保留
うえ読み上げる。(スクリーン管理係)
z 付与する時間が重なる場合、「状況付与スケジュール」の順
番で付与する
Ⅱ 付与状況への対応
※ 「状況付与票」は、状況付与カード配布・管理(センター)
(電話またはFAXで行う)
から、付与2~3分前に各コントローラに配付
② 付与した情報は、「状況付与計画管理係」(消防庁)に、“付
与№”、及び“付与時刻”とともに付与完了の旨を伝える。
電話・口頭で回答の後、プレイヤーの手元に保留
③ 新規(アドリブ的)に状況付与をした場合、必ず白紙の「状況
付与票」に記入したうえ、「状況付与計画管理係」にその旨を伝
FAXで回答した後、コントローラの手元に保留
える
プレイヤー用
対応記録票
2.プレイヤーからの問い合わせへの対応
①
Ⅲ
問い合わせ
(電話またはFAXで行う)
Ⅳ
問い合わせへの対応
(電話またはFAXで行う)
3.その他
状況に応じて、コントローラの間では、適宜に問い合わせ・協議
をして、コントローラ全員の共通認識をはかることとする
34
1.付与状況に対する対応:
①
コントローラからの状況付与への回答
z 電話で回答する場合に、内線へ電話したうえ、回答内容を「プレイヤー用対
応記録票」(例示 3-3)に記入する
z FAXで回答する場合、FAX用紙に回答を記入し、状況付与相手へ渡すと
ともに、回答内容の概要を「プレイヤー用対応記録票」に記入していく
② 付与状況に対しての、各対策部への問い合わせ・要請等を行う場合は、口頭で行
うとともに、内容を必ず「プレイヤー用対応記録票」に記入する。
③ 各対策部は、付与状況における被害情報・重要な意思決定事項・対応結果を情
報連絡票(例示 3-4)に記入し本部事務局へ渡し、本部事務局員がホワイトボード
に内容を記載しておく
※ 状況設定を勝手に作らない
④ 各対策部は、入ってきた情報とそれに対しての対応(問い合わせ、報告、要請
等)を「時系列事案管理表」(例示 3-5)に時系列で記入していく
2.他機関(状況付与係)への問い合わせ
プレイヤー用
時系列事案管理表
コントローラ用
対応記録票
プレイヤーからの問合せのあった項目のみを回答すること
z 回答が可能であれば、直接回答する
z 回答ができない場合は、「確認し、改めて回答する」旨を応
答し、一度電話を切るとともに、統括係の「問い合わせ対応
係」(消防庁または那須町)に対応を確認したうえで、問い合
わせのあったプレイヤーに回答する
② 回答手段は電話、又は、FAXにて行う
③ 回答内容は「コントローラ用対応記録票」(例示 3-2)に記録
するとともに、重要な共通情報については「状況付与計画管
理係」(消防庁)に伝える。
※ 重要な共通情報は、コントローラ用ホワイトボードに記載
し、コントローラ全員の共通認識をはかる
グループごとに、以下の役割分担を決め、「作戦会議」を行い、図上訓練上の対応に
ついての意思統一を図る。
z リーダー(1名)
z FAX・状況付与票読み上げ係(1名)
z 記録係(2~3名):「対応記録票」、「情報連絡票」、「時系列事案管理
表」の記入担当等役割分担
z 必要に応じて、情報収集・分析・意思決定・伝達の役割分担も決めておく
①
付与された情報に対して、または、状況に応じて、他機関(状況付与係)への
問合せ、報告、伝達、指示、要請等が必要な場合は、電話またはFAXで行う
② 訓練に参加していない関係機関に対する問い合わせは、原則的に不可
3.その他
①
災対本部内の重要情報の共有については、ホワイトボード・模造紙への書き込
みのほか、放送設備等を使用し、適時行う
② 「対応記録票」、「FAX用紙」等を、予め本部各班において準備しておく。
訓練中に不足した場合は、コピー機で複写すること
2.作戦会議
訓練を実施する上で、各部での対応を円滑に実施するために以下の役割分担を行
っておくことが必要となります。
表17
役割分担とその内容
役割分担
内容
部の部長、もしくは、それに値する人員を
選任する。部のリーダーとして、部をまと
リーダー(1名)
めて円滑に災害対応が実施できるように指
示命令を行うことを担う重要な役割とな
る。
FAX等により付与された情報を読み上げ
FAX・状況付与票の読み上げ係
ることにより、部内の情報共有を図る役割
(1名)
を担う。
「対応記録票」、「情報連絡票」、「時系
記録係(2~3名)
列事案管理表」の記入し、記録を残す役割
を担うものとする。
※ 部の構成人員によって、適宜調整を行うこととする。
なお、この他に必要に応じて情報収集・分析・意思決定・伝達等の役割分担も決
めておき、適宜、訓練を実施できるような体制を整えておくことも必要になります。
また、各部の内部で役割分担が決定した後、グループごとに「作戦会議」を行い、
部の中の役割分担と併せて、他部署からの情報収集や伝達ルートの確認と徹底する
とともに、意思決定事項に関わる調整について確認を行っておきます。
進行管理者(コントローラー)統括係は、この時点で訓練参加者(プレイヤー)
に図上訓練実施時の対策の決定や確認、情報交換の方法について疑問点・不明な事
項があれば、進行管理者(コントローラー)に質問するよう促します。
写真4 訓練直前のオリエンテーション
(那須町)
写真5 作戦会議における役割分担の確認
(八代市)
35
3.訓練の運営・進行
訓練は、想定した時間に想定した事象が起こったものと仮定して開始します。
想定事象が発生した場合、市町村は災害対策本部が設置されたもの(自動設置の場
合)とし、各対策部のプレイヤーは地域防災計画上の所掌事務に基づく対応により、
訓練を実施します。以下、八代市、那須町の訓練想定及び実施体制を示します。
表18
想定事象の参考例(八代市、那須町の実施例)
想定事象
市町村名
平成 18 年 11 月 20 日(月) 11 時 00 分発生
「日奈久断層帯」での地震発生、マグニチュード7.5
八代市
八代市は震度6弱~7
那須岳の小規模な水蒸気噴火による噴石、降灰等による災害
平成 18 年 12 月 21 日 午前 11 時 00 分
緊急火山情報第1号の発表
「噴火の危険が迫っていると考えられる状況」
那須町
表19
人口
面積(㎢)
地域の特徴
訓練実施日時
想定の発災時間
災害の類型
発災時の条件
訓練時間
訓練フェーズ
プレイヤー人数
コントローラ人数
訓練の実施体制(八代市、那須町の実施例)
熊本県八代市
栃木県那須町
140,266人
27,857人
68㎢
372.3㎢
活断層あり。新幹線駅、石油基地、ガ
活火山、観光地、別荘あり。
スタンクあり。
2006/11/20(月) 11:00
2006/11/20(月) 11:00
直下型地震
都市型・農山村型
平日勤務中(秋、晴れ)
3時間
発災~4時間
42人
23人
2006/12/21(木) 11:00
2006/12/21(木) 11:00
火山性地震
(水蒸気噴火、降灰、泥流)
平日勤務中(冬、晴れ)
3時間
発災-2時間半
51人
20人
プレイヤー構成
◎市長、助役等
○総務部
○事務局
○健康福祉部
○建設対策部
○水道対策部
○医療救護部
○消防本部
○支所対策部
◎町長、助役等
○総務部
○事務局
○救護部
○避難部
○給水部
○応急復旧部
○消防署(団)
コントローラ構成
○消防庁、気象庁、海上保安庁、
自衛隊等国機関
○県庁等指定地方行政機関
○消防機関
○現地職員
○住民
○医療機関
○報道機関
○学校・ライフライン等関係機関
同左
36
(1)状況付与について
訓練は、上記の条件を前提とした上で訓練参加者(プレイヤー)が自ら行動を行
うとともに、状況付与計画に基づいて被害状況等の状況付与を進行管理者(コント
ローラー)から訓練参加者(プレイヤー)に対して行います。付与の手段としては、
以下の方法で行うこととします。
表20
付与手段
付与手段と付与方法
具体的な付与方法
コントローラーから、プレイヤーに対して直接、電話(携帯電話、無
電話
( 携 帯 電
話、無線
etc)
線 etc)で付与を与えます。
※
電話による付与の場合、ざわついた雰囲気の中で音声が聞き取れ
ない事や、受信者がきちんと情報をメモして残さない限り、文字情報
としては残らないなど、実際の状況に近い付与方法となります。ま
た、直接の対話なので、プレイヤーに対してその場での返答が求めら
れます。
FAX
状況付与票を本部事務局(一括受付の場合)、もしくは、各部署に設
置されたFAX箱に直接投函し、付与情報として与えます。
会場の前方に設置されたスクリーンに、予め準備したニュース映像
スクリーン (静止画像)を投影するとともに、音声(音読)を流して情報を付与
します。(全参加者に付与される情報となります)
進行管理者(コントローラー)は、上記の手段を用いて、状況付与計画に基づき、
付与を実施することとなりますが、訓練の状況によっては、時間間隔により付与が
前後したり、電話が殺到して付与先に通じないなどが想定されるため、付与時間や
付与方法については、臨機応変で対応していく柔軟性が必要となります。
また、進行管理者(コントローラー)は、上記のような場合や、付与のバランス
が悪い場合など、訓練がスムーズに進行できるような調整を図る必要が生じます。
この場合、付与情報が少なく、あまり動きが見えないような部署に対しては、新規
の付与を作成して与えるなどの対応も必要になります。
37
写真6 スクリーンによる状況付与
写真7 電話による状況付与
写真8 仮想ファックスによる状況付与
写真9 口頭伝達による状況付与
FAX 入れ
図10
№
付
33
与
先
付 与 時 刻
発
件
状況付与票の参考例
信
元
名
救護部
11:29
○○地区の住民○○
想 定 時 刻
11:29
付 与 方 法
電話
要援護者の搬送
家に寝たきりの老人がいるのですが、家には自分しかいないため、一
人では搬送ができません。町役場の職員の方に搬送を手伝って頂けな
いでしょうか?
また、どこに避難すれば良いのでしょうか?
38
(2)訓練時の対応の記録、整理、とりまとめ
訓練は、適宜進行管理者(コントローラー)状況付与係による状況付与がきっ
かけとなり、訓練参加者(プレイヤー)が対応することで進行しますが、訓練参
加者(プレイヤー)各班において議論し決定した対応内容は、その都度記録し、
適宜進行管理者(コントローラー)に報告します。
訓練参加者(プレイヤー)は、様々な手段で収集した情報を整理し、進行管理
者(コントローラー)統括係に提示するよう徹底します。その際の記録手段は、
罫紙、模造紙、管内地図、ホワイトボード(掲示板)、パソコン、災害対応記
録・連絡票等がありますが、記録すべき情報の内容(地域、時刻、対策種別等)
に応じて最も適した手段を選択します。
なお、これらの記録手段の活用要領や担当者の役割分担等について徹底されて
いないと、情報共有に支障が出るので注意が必要です。
写真10 付与された状況の読み上げ
写真11 地図を使った状況の確認
写真12 災害状況のホワイトボードへの記入
写真13 本部会議等における対策の議論
39
写真14 対応記録表への記入
ア
写真15 対応状況のパソコンへの記録
進行管理者(コントローラー)による対応記録
進行管理者(コントローラー)は計画に基づいた付与を行った場合、コントロ
ーラー用の対応記録票に記載します。また、付与した情報に対する訓練参加者
(プレイヤー)からの問い合わせや回答状況についても時刻と内容がわかるよう
に記録しておきます。
その他、やり取りを行う上で、新規に付与を行った場合についても、発信した
時刻と発信した内容がわかるように記載して残しておきます。
図11
コントローラー用の対応記録票の記載例
氏名:○○
担当機関名:○○県
付与
№
1
時刻
受発信
相手先
発(受)信内容
13:29
発信
or
受信
※
本部事
務局
※
自衛隊による負傷者搬
送が必要か
13:50
発信
or
受信
15:25
発信
or
受信
本 部
事務局
本 部
事務局
二郎
対
応
(回
答)
自衛隊のヘリコプター
は何機要請できるのか?
→2機要請します。
○○町の離着陸場は、○
○グラウンド:【緯度・
度分 秒・経度・度 分
秒】
自衛隊ヘリはいつ頃○
○町に到着できるか
15:00頃
今現在の被害状況は
後ほど FAX で報告します
※塗りつぶした部分については計画に基づく付与であるため、記入を省略可。
40
備
考
イ
訓練参加者(プレイヤー)による対応記録
訓練参加者(プレイヤー)は、進行管理者(コントローラー)から付与された
情報をプレイヤー用の対応記録票に記載します。また、付与された情報に対して
行った、行った対応方法等についても併せて記載しておきます。
付与された情報に対して即座に回答ができない場合には、その旨も記載します。
その後、各部、及び対策本部内で検討を行った上で決定した対応の方法(方針)
については、付与を与えたコントローラーにその結果を報告するとともに、プレ
イヤー用の対応記録票に時刻と具体的な内容について記載します。
※
プレイヤーは付与された情報に対して、対策本部として行った対応状況をコ
ントローラに報告し、その対応方針で問題なく対処できたことを確認した事を
もって、その付与情報は完結されたものとします。
図12
プレイヤー用の対応記録票の記載例
№
1
記入者
所属: 本部事務局
氏名:
相手方機関(担当者)名
○○県
受 信 時 刻
13時29分
電話・無線・FAX・口頭
受 信 手 段
(該当するものに○をつける)
自衛隊による負傷者搬送
用
件
用
件
概
要
○○
太郎
航空部隊から負傷者搬送の要否の問い合わせ、必要場合に、
ヘリの離着陸上を連絡ください
【対応記録状況】
時
刻
13:30
他機関への報告・指示・要請等
他機関名
連 絡 概 要
発信先相手への回答
自衛隊のヘリコプターは何
機要請できるのか?→2機要
請します。
○○町の離着陸場は、○○
グラウンド:【緯度・度 分
秒・経度・度 分 秒】
13:35
医療・救助班
41
自衛隊ヘリ(2機)要
請済み・・・・
図13
プレイヤー用 時系列管理表
総務対策 部
No
時間
発信者
受信内容
対応
備考
1
11:41
○○テレビ
取材に来たいがどのル 国道3号線は通行止めに
ートからがよいか。
なっているので、県道か
らがよいだろう。
2
11:57
△△新聞
市長の記者会見はいつ 被 害 状 況 が ま と ま り 次
行うか。
第、連絡する。
(3)情報共有について
訓練参加者(プレイヤー)は、各部署で収集した情報とその対応状況等につい
て把握するとともに、災害対策本部員全員で情報共有を図ることが必要です。
そのため、手段としてプレイヤー間の伝達や連絡等を行う場合には、図13の
「連絡票」を使用し、各部との連絡調整、及び情報共有を行います。
また、訓練での進行状況や情報伝達の緊急性も踏まえた上で、必要に応じて口
答や館内への一斉放送などにより情報伝達を行うことも手段の一つです。その他、
模造紙や管内地図、ホワイトボードに記録を残すとともに、情報の整理や情報共
有のツールとして活用することが大切です。
図14
連絡 種別
発 信 部
連絡
時刻
氏
名
□指令
□要請
○○
□総務班
受 信 部
○○
名
内
容
□広報・情報班
□建設班
□水道班
□医療・救助班
□教育班
□救護・物資班
□消防班
一郎
□本部事務局
□総務班
□産業・輸送班
件
□報告
太郎
□産業・輸送班
名
□情報
13時35分
□本部事務局
氏
連絡票の記載例
□広報・情報班
□建設班
□水道班
□医療・救助班
□教育班
□救護・物資班
□消防班
自衛隊ヘリ要請
自衛隊ヘリ(2機)要請済み
○○町の離着陸場は、○○グラウンド:【緯度・度
42
分
秒・経度・度
分
秒】
4.市町村長による模擬記者会見
災害時において、市町村の災害対策本部は、被害等の情報を収集し、整理した上
で、市町村長に必要な情報を正確に伝達する必要があるとともに、市町村長もまた
その情報を把握する必要があります。
また、大規模災害が発生した場合には、市町村長は住民の不安解消を行うために
行政が行っている災害対応を市町村長自ら被災住民や被災地外の住民に対して、テ
レビ等報道機関を通じて迅速かつ適切に伝えることが必要です。
上記を踏まえ、本研究会で実施している図上訓練では、市町村長の記者会会見を
行うことを必須の課題として実施しました。
(1)災害時における市町村長等の意思決定力の点検・検証
訓練において、災害時における市町村長の意志決定能力については、以下の3
項目が点検・検証ポイントです。
ア
シミュレーション型図上訓練における「模擬記者会見」の実施は、「模擬災
害」での種々多様な付与条件に基づく災害情報等を収集・取捨選択・整理し、
さらにまとまった情報を訓練災害対策本部として住民等に発信出来るか否か
について点検・検証を行う。
イ
また、上記の情報に基づいて、市町村が執るべき対応策の実施について、市
町村長等幹部が的確に判断、意思決定のうえ部下である市町村職員に指示を
徹底することが出来ているかという点について、模擬記者の「質問」によっ
て点検・検証する。
ウ
模擬記者会見を実施することにより、どのような情報を住民が求めているか、
また、それらをいかに的確に報道機関を通じて伝えることが出来るかどうか
という点について、「住民の視点で再考する」ことによって、災害対策のあ
り方を再検証する。
43
(2)災害時における報道機関との連携のあり方について検証
訓練において、災害時における報道機関との連携のあり方については、以下の
3項目が検証のポイントです。
ア
マスコミを防災関係機関として適切に連携することが必要と考えられる。
そのための意識を市町村長はじめ職員の間に共有しておく。
イ
情報の収集・伝達等災害対応の状況を市町村とは違うマスコミ的視点でチ
エックすることで報道機関の考え方を知り、求められる情報について共通認
識を持っておくなど、必要な情報共有体制の確立を資する。
ウ
市町村長自身が「担当者からの報告を待つ」という姿勢から、「必要な情
報収集を部下にリクエストする」、さらには所要の対応の実施を指示すると
いった積極的な判断・行動及び意思決定等のきっかけとする。
写真16 記者会見と質疑応答(八代市)
写真17 町長による記者会見の対応
(那須町)
44
5.図上シミュレーション訓練の評価・検証
図上シミュレーション訓練の究極的目的は災害対応能力の向上を図ることにあ
ります。そのために、模擬的な災害環境下において訓練参加者(プレイヤー)が
行った意思決定及び役割行動の妥当性についての評価・検証は重要な意味を持ち
ます。一方、自前で訓練の企画準備を行った場合に、訓練の基本設定や、シナリ
オ作りなどの妥当性についての評価・検証も必要となります。
(1) 評価・検証の方法及び留意点
ア
評価・検証の方法
訓練結果の評価・検証は、図15に示す各資料を総合的に分析したうえで行
うことができます。
図15
図上シミュレーション訓練の評価・検証方法
総合的評価検証
①検討会の意見
グループ毎の評価検証
②アンケート結果
参加者個々の評価検証
③対応記録票の
結果
事案毎の評価検証
④その他(ホワイ
ドボード、記者会
見資料等)
訓練全体の評価検証
(ア)「検討会の意見」に基づく評価・検証
訓練終了後の当日、まず訓練参加者(プレイヤー)の各グループにおいて、
付与された主な状況内容のもとで行った情報収集・分析及び意思決定の概要や
感想・反省点について検討し、とりまとめておきます。その後、グループ間の
意見交換を図り、グループ内で集約された意見を会場で発表・共有します。
一方、参加者自らで付与された状況に対する意思決定等を評価することが困
難な場合に、外部の専門家に協力要請し、訓練の全体的な実施経過を踏まえて
客観的な評価・検証を得るようにします。
45
写真18 参加者の意見交換 (八代市)
写真19 専門家による講評 (八代市)
(イ)「アンケート結果」に基づく評価・検証
訓練終了後に訓練参加者全員(プレイヤーとコントローラー)に対してアン
ケートを実施し、訓練における参加者個々の災害対応行動の反省・自己評価及
び訓練の設定、運営上の問題点、意見などをもとに、訓練全体の評価・検証を
行うことができます。
(ウ)「対応記録票の整理結果」に基づく評価・検証
訓練中プレイヤーが作成する「対応記録票」(図13参照)、「連絡票」
(図14参照)を整理する(表16参照)ことにより、訓練における災害事案
ごとの対応を評価・検証することができます。
46
図13
対応記録票の記入例
(那須町)
No.
記入者
-
相手方機関(担当者)名
受
信 時 刻
受
信 手 段
件
用
所属:
避難部
氏
名:
那須
太郎
湯本地区の住民 ○○
11時29分
電話 ・ FAX ・ 口頭(該当するものに○をつける)
救援要請他
名
件 概 要
1.寝たきり老人の搬送を手伝って欲しい
2.逃げる場所はどこか?
対応記録
時刻
他機関への報告・指示・要請等
発信先相手への回答
他機関名
連 絡 概
要
1.救護部に確認をとり救援に
いけるように調整をとり、
再度連絡を入れる。
11:29
2.最寄りの○○小学校が避難
所になっているので、そち
らに避難して下さい。
11:31
11:35
救護部
湯本地区の住民から
寝たきり老人の搬送
についての救援要請
が来ているので対応
できないか?
救護部
救護部との調整によ
り職員と車の手配が
可能である確認が取
れた
湯本地区の○○に電話にて連絡。
12:00頃には町の救護部の職
11:36
員がそちらに到着予定である旨を
伝えた。
図14
部署間の「連絡票」の記入例
例
情報連絡票
(那須町)
総 務 部
部
日 時 平成18年12月21日(木) 午前 ・ 午後 11 時 30 分
報 告 者
本部事務局
・被害情報、対応状況等を記入すること
○○地区で雪崩発生。住宅3戸が倒壊。
住民8名の安否が確認できない。
内 容
47
確
認
欄
ボード記入
済 ・ 未
本 部 長
表16
付 与
時 刻
発 信
元
9:27
自在園
9:27
保健福
祉対策
部
9:35
自在園
9:35
総務対
策部
9:37
付与先
事案別の対応記録の整理例
事案名
対応分類 連絡方法
総務対策 自在園から
部
の要請
要請
電話
自在園から
の要請
回答
電話
総務対策 自在園から
部
の要請
要請
電話
自在園
自在園から
の要請
回答
電話
自在園
事務局
自在園から
の要請
要請
電話
9:37
事務局
自在園
自在園から
の要請
回答
電話
9:44
保健福
祉対策
部
自在園
自在園から 問い合わ
の要請
せ
9:44
自在園
9:45
保健福
祉対策
部
9:45
自在園
自在園
保健福祉 自在園から
対策部
の要請
自在園
回答
自在園から 問い合わ
の要請
せ
保健福祉 自在園から
対策部
の要請
回答
地区
馬瀬
(E町
一部抜粋)
状況付与
自在園ですが、先ほどの地震
により、旧館の建物の壁が落
ちたり、ガラスが割れたりし
て、大変危険なため、入居者
を一本松荘へ搬送したいが、
人手と車両がたりません。御
荘支所と消防署にも電話した
が、災害対応で人手がないと
言うことだ。そちらで何とか
ならないか。
本部より改めて連絡する
とのこと。
本部よりOKの返答→車
両確保するとのこと。
9:50頃着く予定
改めて連絡するといったのに
連絡がない。どうなっている
のか。
本部より改めて連絡す
る。
改めて連絡するといったのに
連絡がない。どうなっている
のか。
9:50に現場に職員を
派遣する。
自在園へ被害状況問い合
わせ
ケガ人の状況知らせるよ
う依頼
電話
電話
壁が崩れていて、ガラスもわ
れている。
入居者については確認作業中
現在の状況がわかれば。
けが人の関係どうなって
いるのか。改めて連絡く
れ。
電話
電話
プレイヤーの
対応記録
壁が崩れている。ガラス壊れ
ている。
(エ) その他(ホワイドボード、記者会見資料等)に基づく評価・検証
ホワイドボード(写真3)や地図への記入内容、記者会見資料等を回収し、
主要の対応行動を整理・分析することにより、訓練の評価・検証を行うことが
できます。
イ
評価・検証の留意点
訓練結果を評価検証する上で特に留意を要する点を以下に示します。
(ア)検討会における評価・検証のルール
訓練直後の検討会における評価・検証では、「質問、反省は自由、批判は厳
禁」を基本ルールとします。
48
(イ)評価・検証のために対応記録をまめに残しておく
訓練中において、参加者が状況付与やそれらの対応などで手一杯となり、対
応記録を十分に残さないことが多々あります。事前の説明会や訓練当日のオリ
エンテーションにおいて、対応記録作成の重要性と必要性を十分に説明してお
く必要があります。
例:
① 実際の災害対応時は情報伝達の時刻が問題になることもあり、記録作成の
重要性は非常に高い
② 訓練結果を評価し、改善策につなげていくための不可欠の基礎資料です
(ウ)訓練目的に応じたチェックリストの作成
訓練における災害対応行動を具体的に評価・検証するためには、企画段階で
作成した「訓練の課題」、「予想される対策項目」、「状況付与目的・ねら
い」などを踏まえたチェックリストを作成しておく必要があります。
表17
№
1
2
3
4
5
付 与 先
付 与定
発 信 元
時 刻
刻
本部事務局 11:00
全員
全員
栃木県
(那須町
一部抜粋)
状 況 付 与 シ ナ リ オ
別紙緊急火山情報第1号参照~
「平成18年12月21日11時00分 気象庁地震火山部発表
那須岳の火山性地震の回数が、21日9時から1時間に30回と急増していま
す。
那須岳山頂付近を中心に山体の急激な膨張が観測されています。
ニュース映像 PP(6~7)
11時00分ころ宇都宮気象台が那須岳の緊急火山情報第1号を発表しまし
ニュース映 た。
11:01
像
今後の情報に注意して下さい。
11:02
本部事務局 11:03
避難部
想定対応の記入された資料の例示
11:04
町長
栃木県
保育園
(町長「訓練災害対策本部設置宣言」)
緊急火山情報の発表により、那須岳が噴火の恐れがあると想定されるため、災
害対策本部を設置した。
職員は、的確な情報収集と迅速な対応を行い、住民の安全確保に努めていただ
きたい。
チェックリスト
・各部に情報の伝達
・情報収集指示
・災害対策本部設置の検討
・災害対策本部の設置
・関係課長・局長招集
・災害対策本部会議開催
・災害対策本部を設置した旨を
関係機関 に通報
・避難勧告地域、警戒区域設定
地域等の周知(住民、関係機
関)を指示
・住民の誘導等指示
火山防災緊急連絡・被害報告依頼~
・県に報告したか確認
21日11時00分、気象台より緊急火山情報第1号が発表されました。被害が発生
した場合には、第4号様式(その1)により県消防防災課宛に報告願います。
那須保育園です。
・保育園の対応指示
先ほどから地震が何回も発生しています。外は雪があるため、園児は建物内で ・職員の派遣等を検討
待機しています、現在、職員が園児の保護者に連絡を取っていますが、連絡が
取れない保護者もいます。園児を迎えにくるよう依頼していますが、連絡が取
れない園児はどうすれば良いでしょうか?
49
(2) ケーススタディーにおける評価・検証の実例
ア
訓練の付与状況に対する対応への評価・検証
(ア)「検討会の意見」に基づく評価・検証の例
訓練終了後の参加者(プレイヤー)の発表における主な反省点・課題の
例を、以下に示します。検討会意見の詳細は、参考資料を参照して下さい。
八代市
(本部事務局を例として)
那須町
(救護部を例として)
• 災害対策の総合窓口として対応を行
いました
• 救助物資、ボランティア、救護所
の開設、さらに遺体の収容等
対応上
の反省
点
• 全体の現状認識と把握が十分にでき
なかったのです
• 初動において、救命救急体制がどう
なっているのか、人的被害は何処に
どのような形になっているのか、こ
の状況が把握出来ないと医療体制も
やはり充分とは言えないのです
• 他の部から提供された情報内容の
解釈の違い、情報内容の伝達のニ
ュアンスが不明確なところがあ
り、再度情報の確認をとったこと
がありました
• 情報が錯綜する中で、救護者数や
負傷者数の確認が不十分でした
• 役割分担をもっと明確にしたほう
が良かったです
• 情報の対応にのみ追われてしま
い、今の被害状況や或いはその災
害の状態等の全体像が見えていな
かったのです
今後の
課題と
改善に
向けて
• 情報収集能力、体制を、今後強化す
るべきです
• 倒壊家屋の現状を把握することによ
り、その中に救命救助者がいるのか
どうか等の確認作業をどうやって誰
が行うのかというのも大変大きな課
題となります
• 行政だけでなく、住民、あるいは団
体と一体となって取り組むべきです
• なるべく自治防災会の結成率を高め
ていきたいと思います
• 地震時道路が損壊した場合の情報収
集について、防災ヘリの活用が重要
となります
• このような訓練を一度でなく、二
度、三度と体験していくことが、何
かあった際に非常に有効であると痛
感しました
• 救護部と避難部の役割分担につい
て、マニュアル上はありますが、
実際、現場での境目というのがあ
まり明確にできないという意味で
は、一緒でも良かったのではない
かと思いました
訓練で
行った
対応
50
(イ)「アンケート結果」に基づく評価・検証の例
訓練終了後に実施したアンケートの集計例を以下のようにに示します。詳
細は参考資料を参照して下さい。
① 被害情報の収集・分析・伝達について
被害情報の収集・分析・伝達は、うまくできましたか
0%
10%
20%
30%
40%
那須町 0.06.4
50%
60%
70%
80%
70.2
八代市 0.0 8.8
90%
23.4
79.4
非常にうまくできた
うまくできた
100%
11.8
まあまあだった
うまくできなかった
② 他機関との連携
他機関と連携して、対応をとることができましたが
0%
10%
20%
30%
40%
那須町 0.0 14.9
八代市 0.0
50%
60%
70%
80%
90%
74.5
15.6
10.6
68.8
非常にうまくできた
うまくできた
100%
15.6
まあまあだった
うまくできなかった
③ 訓練中に活用したもの
訓練中に活用したもの
0%
10%
那須町
20%
30%
40%
50%
42.9
37.8
八代市
地図
防災計画
その他の資料
51
60%
70%
80%
90%
100%
42.9
11.4 2.9
54.1
0.0 8.1
まったく活用しなかった
イ
訓練の基本設定やシナリオ作りなどの妥当性についての評価・検証
訓練の基本設定やシナリオの内容そのものに関する評価・検証に関する設
問への回答例を、以下のように示します。詳細は参考資料を参照して下さい。
【質問】:訓練時間、状況付与内容、訓練のやり方等に関して何か意見・要望
等ありましたら記入してください
良い点
•
•
•
•
問題点
•
•
•
•
•
•
(回答例)
八代市
訓練時間はちょうど良いと思いま
す
状況付与が臨機応変に出されてお
り、大変参考になりました
リアルタイムでの実施であり、緊
迫感がありました
初めての訓練で要領を得ない部分
もあったが、トータルでは成果が
あったと思います
会場が狭かったです
状況付与に関しては、件数が多す
ぎて、深く検討する時間がなかっ
たのです
役割が多く、訓練参加者をもう少
し多くした方が良かったと思いま
す
八代市の上水道普及率は50%で
弱であり、それ以外は自家用井戸
使用である。給水対策について
は、八代市の場合、その辺の状況
付与のあり方も考慮する必要があ
ったかもしれません
訓練ではあるが、現況にあった体
制であるべきでは?実際あり得な
いルートでの情報伝達等は混乱を
招くおそれがあるのではないかと
思いました
被害想定に応じての状況付与では
あるが、各対策対応の予想までも
考えておくべきではなかったか?
シナリオの練り込みが不十分であ
ったと感じました
52
•
•
•
•
•
•
•
•
•
那須町
今回の訓練は、火山防災という事で
今まで行った事のない訓練で参考に
なりました
短時間の訓練にしては、内容のある
良い訓練でした
本日の配分、方法でよいと思います
訓練により、状況判断の適切な対応
は可能と思い、有効な訓練でした
火山噴火でどんな被害が起こり得る
のかある程度イメージできたのは、
良かったのです
スタッフ数に応じた付与情報でもよ
かったのではないかと思います
状況付与内容が多すぎて、情報の分
析をする時間がなかったです。この
様に多くの情報を付与する方法も訓
練の方法としてはわかるが、逆に状
況付与数を少なくして適切な分析対
応を訓練する方法があると思います
現実的には、情報量がもっと多くな
るのかも知れないが、訓練の場とし
ては、例えば、午前中はもっと例題
を少なくして、一連の対処の仕方に
ついて、身につくような訓練、午後
は、現実的なものでの訓練とか、工
夫しても良かったかも知れません
記録票、時系列管理表の記入が膨大
であった。記入に時間がかかり対応
が遅れることがあった。時系列管理
表は、訓練終了後、まとめるのも一
案ではないかと思います
(3)評価・検証における課題
図上訓練では、訓練を実施したままで終わるのではなく、訓練における対応
が適切であったかどうか、今後の災害対応に向けてどう改善すべきかなどにつ
いて、評価・検証を行うことが非常に重要です。
一方、アンケート調査を中心とした自己評価には限界が考えられるため、よ
り客観的、具体的な評価・検証の手法の確立が必要とされます。
そのため、以下のような課題が挙げられます。
ア
地域防災計画や、職員行動マニュアルなどに照らして根拠ある評価が
考えられるが、訓練における対応行動の詳細な把握及び明確な評価基準の
設定を追求していく
イ
アンケート調査のみでは捉えにくい全体の対応(判断や指示など)に
ついて、評価員を専属で配置するとともに、状況付与計画と参加者の具体
的予想行動を示したチェックリストの作成を推進していく
ウ
綿密な評価・検証基準(チェックリスト)を作成するために、事前企
画準備の段階で、予想される対応に照応した、より練り込まれたシナリオ
作りを講じていく
53
2-4
市町村による訓練の企画準備実施の試みについての評価・検証
訓練実施後、今回の2市町の図上シミュレーション訓練の企画・準備実施の試み
そのものについて、訓練企画・運営担当者を対象としたアンケート調査を行い、そ
の回答結果を以下のように整理しました。
八代市
1.図上訓練に対して何を 本市に日奈久断層帯が走っ
求めていたか
ているため、地震を想定し
た訓練は有意義であると判
断しました
那須町
・職員が臨機応変に災害に
対応する能力を身に着ける
ための訓練
・町の防災体制をより良く
するため、職員一人ひとり
がそれぞれの立場で防災体
制を考える場を設けるため
の訓練
2.企画実施した図上訓練 まずは初めての図上訓練で 職員から様々な意見があっ
は、ご期待にどの程度に答 あったので、各部署におい たが、想像以上の効果があ
えたか?
てはそれぞれ課題が見出せ りました
たのではないかと思います
3.このような訓練は、今 次回実施する場合は、地震 今 後 、 火 山 防 災 だ け で な
後継続的に実施していく予 発生から 4 時間後以降の く、地震、水防等において
定はあるか?
対応として、今回参加しな も実施していきたいと思い
か っ た 部 署 を 対 象 に 行 う ます
か、洪水や台風を想定した ※今後の進め方としては、
訓練を企画することも考え 今回の訓練は進め方・シナ
リオ等がほぼ決定してから
られます
但し、独自で行う場合は、 そこに町の防災体制を組み
担当者の意欲次第で実行で 合 わ せ る 形 で 準 備 を し た
きるかが決まるため継続的 が、町の防災体制を骨子と
して、そこに肉付けする形
に行うことは疑問です
で訓練の進め方・シナリオ
等を作成すれば、より実際
に近い形で訓練が実施でき
たと思います
54
2-5
住民参加型ワークショップの実施(災害図上訓練DIG)
本研究会で実施した八代市及び那須町の図上訓練においては、行政と地域住民
が連携し住民参加型ワークショップを実施し、その中で、災害図上訓練DIGの
手法を活用しつつ、図上型防災訓練を実施しました。
1.「防災ワークショップ」を通じて住民との意見交換と連携
市町村と地域住民が一体となって地域防災力の向上を図り、災害時の初期消火
や避難誘導等に地域の力を活用するなど、自主防災活動を活性化するには、地域
住民と行政の連携体制の確立に向けて系統的に取り組むことが重要です。
地域住民と行政が防災にかかる様々な情報を共有し、自ら住んでいるまちの災
害危険性や効果的な対応方策などを再確認するため、住民参加による「防災ワー
クショップ」を開催する方法が各地で実施されています。
本研究会で実施した訓練のうち、那須町の訓練では、地元の那須岳火山防災協
議会の協力が得られ、特に、メンバーである宇都宮大学の研究室の参加・協力の
もとで作成された那須岳火山ハザードマップが活用されました。また、ワークシ
ョップには、地元自治会・自主防災組織によるリーダーだけでなく、地元観光協
会、社会福祉協議会など地域の実情に詳しい関係者の多数参加が得られました。
このように、ワークショップを成功させるには、地元消防・警察・気象関係者、
ボランティア関係者のほか、地元大学・研究機関等にも広く協力を得ながら、準
備・運営することが効果的です。
写真20
ワークショップ-火山防災協議会(那須町)
55
2.災害図上訓練DIGの活用
災害図上訓練DIGは、当該地域の地図を確保・活用するだけで容易に準備が
進められる極めて簡易な図上型防災訓練であり、住民の防災意識の向上と地域の
災害対応力の強化を図るために、最も適した訓練手法のひとつであることから、
本研究会のワークショップにおいて積極的に取り入れて実施しました。
(1)準備段階(オリエンテーション~設営)
図上訓練マニュアルに示された基本的なステップを踏まえた事前の準備もさる
ことながら、災害図上訓練DIGを成功させるには、訓練に参加した住民から自
ら住んでいる地域に対する関心と創意工夫などを引き出すことが重要です。
訓練参加の住民や自治会等の役員を主体とする訓練を運営できるようにするた
め、参加者の自己紹介に始まり、机・地図・シートの設営などから取り組むこと
による参加者の一体感の醸成などに心掛けることしました。
写真21 DIGの開会を宣言
写真22 オリエンテーション
写真23 地図にシートを貼り付ける
写真24 参加者間で自己紹介する
56
(2)訓練当日の実施・運営
災害図上訓練DIGを効果的に実施するには、図上訓練マニュアルに示された
基本的なステップⅠ(自分の住むまちの特性・特徴を理解する)→ステップⅡ
(災害を想定する)→ステップⅢ(対策を考える)の手順のフローを踏まえ、地
域住民の創意工夫やパワーを引き出しながら進めることが重要です。
今回の訓練では、地元外から、図上型防災訓練マニュアル研究会委員や事務局
員、図上訓練指導員で構成される「図上訓練支援チーム」が派遣され進行管理者
を担当しましたが、今後訓練に参加した市町村職員が講師となる場合が考えられ
ますので、その場合は、訓練内容を十分に習熟し、説明において曖昧な表現や頼
りない口調は避け、大きな声ではっきり指示することが必要との指摘がなされま
した。また、時間の配分に注意し、次の展開を早めに指示し、各班の進み具合を
見ながら、適切な指導を行うことなどに留意する必要があります。
写真25 ステップⅠ 自分の地域を理解する
写真26 ステップⅡ 災害を想定する
写真27 ステップⅢ 対策を考える
写真28
する
57
議論内容の記載及び整理
(3)訓練結果の評価・検証(気づきの整理)
災害図上訓練DIGを効果的に実施するには、マニュアルに示された基本的な
ステップを踏まえ、訓練参加者(プレイヤー)自らが地域の災害危険や生じうる
事態についてのイメージトレーニングを行い、これに対する災害時の行動や平常
時の防災の備えのあり方をじっくり検討し、整理する時間を作ることが肝要です。
そのため、今回の研究会で実施した訓練では、訓練終了後に、参加者グループ
ごとの発見内容(気づき)を自由に発表し、意見交換する場を持ちました。
また、このとき市町村や県の防災担当者のほか、マニュアル研究会委員など防
災に関する専門家が講評役として訓練結果を評価・検証する方法をとりました。
但し、訓練参加者(プレイヤー)に対し指摘するのではなく、良い点を見出し、
今後の意欲につなげることに意を配りました。この訓練は結果が問題ではなく、
作業過程におけるグループ内でのディスカッションにより、地域の防災に必要な
ことがらについての自発的な発見・気づきをいかに引き出せるか意味を持ちます。
写真29 グループ毎の発見内容の発表
写真30 収集情報を模造紙へ記入、掲示
写真31 グループ毎の発見内容の発表
写真32 ワークショップDIG風景
58
第3章 より実戦的かつ効果的な図上型防災訓練の実施に向けて
3-1
市町村等防災機関が実施する図上型防災訓練
本研究会でケーススタディを行った図上シミュレーション訓練(ロールプレイ
ング方式)の企画・準備方法や当日の訓練の実施、評価・検証方法は、第2章で
詳細に触れたところですが、ここでは、今後より実践的活効果的な訓練とするた
めの全般的な留意事項を整理します。
1.訓練の準備段階
(1)図上シミュレーション訓練の段階的実施
本研究会でケーススタディを行った市町村等防災機関が実施する図上型防災訓
練の手法である図上シミュレーション訓練(ロールプレイング方式)は、全国で
多数実施されています。
一般に、状況予測型図上訓練や災害図上訓練DIGは簡易な手法、図上シミュ
レーション訓練は詳細な手法とされます。また、図上シミュレーション訓練も、
訓練の規模・形態を変えると本研究会で実施した方式のほか、ある程度簡易な
「図上ワークショップ」方式としたり、状況付与を多数の防災関係機関相互で実
施する「フルスケール・シミュレーション訓練」方式とすることができます。
このように、図上型防災訓練は、目的や課題の設定次第で簡易な方式と詳細な
方式のいずれかを選択すればよいのですが、経験の度合いに応じて最初に簡易な
方式から始め、次第に詳細な方式に拡張する場合もあれば、最初から詳細な方式
によりひととおりの訓練メニューを体験することで当該市町村に必要な訓練課題
や検討項目を割り出し、次の段階の訓練に発展させる場合があります。
詳細な方式とする場合、状況付与シナリオをどの程度の詳しさで作成するか、
訓練時間をどのように設定するか、関係機関をどこまで参加させるか、内線電
話・無線・FAX等を伝達手段として使用するかどうかなどで、訓練の企画・準
備作業や本番の訓練の運営・進行の程度を決めることになります。
肝心なことは、市町村の訓練企画・運営担当者がどのような目的や課題の設定
のもとで図上訓練に望むか(当初段階のコンセプトをいかに確立するか)という
点にかかっているのです。また、どのような方針のもとで実施した場合も、市町
村が最初に実施した訓練において得られた成果を踏まえて、次に実施する訓練に
おいてより明確に課題を絞り込んだ訓練とする必要があります。
59
なお、市町村の訓練企画・運営担当者は、図上型防災訓練の実施に当たって、
訓練手法のノウハウをある程度理解しておくことが前提となりますが、こうした
ノウハウのほかにも、市町村が災害対策を実施する際の基本文書である地域防災
計画や災害活動マニュアルの記載内容、過去の大規模災害時における防災機関や
住民の対応の実施状況について基本的な学習をしておくことなどは必須の前提と
いえます。
(2)様々な訓練手法との併用
図上防災型訓練を効果的に実施するには、図上シミュレーション訓練を実施す
る前の予備段階として、状況予測型図上訓練や地域住民とのワークショップで活
用される災害図上訓練 DIG を実施することが効果的です。これらの手法を用いた
訓練を組み合わせて行うことで、時間経過に対応した地域の各種事象の発生・拡
大状況などが把握でき、当該市町村の災害特性や防災対応上の基本的な課題やポ
イントを把握できます。
このうち、状況予測型図上訓練は、「状況創出型図上訓練」ともいわれ、特に首
長や防災担当者の意思決定・役割の確認を促すことから、個人の意思決定能力の向
上に重点をおいた訓練に適しています。また、この訓練は、最小限の準備で訓練を
行うことができ、災害対応の前提条件に制約を設けること無く防災の課題を万遍な
く把握できますが、その分、参加者の主体的・能動的な関わりが必須です。
災害図上訓練DIGについても同様に、訓練を事前に実施しておくことにより、
当該市町村の災害危険や防災力の程度を視覚的に把握できることから、その後実施
する図上シミュレーション訓練の効果を高めることができます。
これまでのケーススタディの実施状況を見ると、訓練の準備段階で作成した資料
はある程度共有化されていますが、状況予測型図上訓練や災害図上訓練DIGを実
施することによって把握された内容を図上シミュレーション訓練に反映するような
活用方法には至っていないことから、今後の訓練ごとの成果の有効活用が望まれま
す。
60
2.訓練の実施段階
(1)災害対応上の課題(失敗)を多数見出せる訓練こそ成功
よくいわれるように、訓練を無難に終えても、問題点や課題を把握できなけれ
ば失敗と同じです。そのため、進行管理者(コントローラー)は、訓練参加者
(プレイヤー)の対応や意思決定が低調と判断される場合は、多少の齟齬や失敗
を恐れず思い切りのよい対応を促すこと。
(2)実戦的で職員が納得できる訓練を
いわゆる「マスコミ受け」を意識しすぎ、不必要な訓練項目となっていないか
確認し、一見地味に見えても、訓練目標と課題を達成できる実戦的な訓練を関係
者を巻き込んで企画したシナリオに基づく訓練を徹底すること。
(3)徒に訓練に時間をかけすぎず、臨機応変の対応を
図上型防災訓練は、状況付与シナリオに沿って進行させることが基本ですが、
訓練の状況に照らして適宜シナリオの順序を変えたり、大幅に省くこともあり得
ます。また、状況によっては、事前に用意したシナリオに無い追加付与を行うこ
とで、訓練に緊張感をもたらすことで臨機応変な対応を促すことも考慮します。
また、延々と続く訓練が良いとは限りません。内容が濃密な訓練であれば、短
時間でもよいので、職員招集、災害対策本部立ち上げの初動段階から始まる訓練
の進展状況を見極め、ある程度訓練の目的を達したと判断されたら訓練を打ち切
ったり、次のステップの訓練に進めるなどの判断も必要です。
(4)災害時における関係機関との連携確認の機会に
災害時に連携が必要となる国の機関や通信・交通などの関係機関が訓練に参加
する場合、訓練を通じてコミュニケーションを図る機会となることを徹底します。
また、訓練の企画準備段階の情報交換も含め、関係各機関との実践的な連携のあ
り方(計画やマニュアル)を点検することに留意します。
(5)プレイヤーとコントローラーの連携で訓練の進行をスムーズに
訓練企画・運営担当者は、訓練をスムーズに進行できるよう、関係者の人員配
置・役割分担に十分留意します。このとき、進行管理者(コントローラー)の状
況付与とこれに対する訓練参加者(プレイヤー)の対応又は問い合わせがうまく
かみ合うよう、各々の役割を徹底し、訓練の進行を適正化することが大事です。
61
3.訓練の評価・検証段階
(1)訓練当日の評価・検証
訓練参加者(プレイヤー)が行った意思決定及び役割行動の妥当性についての評
価・検証は重要な意味を持ちます。訓練で行った意思決定が妥当であったかどうか
を市町村の訓練担当者が自ら評価するのは困難であることから、外部の専門家に協
力要請し客観的な評価・検証を得られるよう、日頃から人材の確保に努めるものと
します。
また、評価・検証を訓練参加者(プレイヤー)が自ら行うことも重要であり、各
班ごとにグループワークを行い、訓練で行った意思決定の内容(感想・反省点含
む)について討議したうえ、検討会で発表・報告し、意見交換を図ります。このと
きの記録内容は保存しておき、次回以降の訓練に活用する必要があります。
(2)訓練当日以降の評価・検証
訓練当日に、全ての評価・検証を完了させられないことも考えられるため、進行
管理者(コントローラー)は、アンケート調査票、チェックシート等を用いた参加
者の意見・感想などのデータのほか、訓練参加者(プレイヤー)各班の対応を記入
した「対応記録票」「時系列管理表」を回収し、これらを後日分析・検討します。
この方式は、分析に時間とノウハウを要することから、調査検討項目を絞ったうえ
で、問題点及び課題を洗い出すことが望ましいといえます。
(3)訓練対応事例の記録・蓄積
市町村の図上型防災訓練の取り組みが進みつつあることから、これら訓練実施要
領やシナリオなどの情報を集約し、共有・活用することが求められます。
本マニュアルを活用して訓練を行う場合、同じように図上シミュレーション訓練
(ロールプレイング方式)を採用したとしても、採用する状況付与方式・内容など
は異なることから、今後の図上型訓練に当たっては、様々な状況付与のパターンを
整備しておき、これらの中から市町村の特性等に対応するものを選択できるように、
過去に取り組んだ図上型防災訓練の実施事例について整理を図る必要があります。
なお、訓練の実施状況の映像記録については、新たな訓練実施時に参考にできる
よう編集しておくとよいです。また、訓練結果はその都度地域防災計画や職員防災
行動マニュアルに反映させるなどの取り組みが必要です。
62
3-2 地域住民と防災機関が連携した図上型防災訓練
1.住民参加「防災ワークショップ」を通じて住民と行政間の
防災情報の共有と連携の強化を
地域防災力の向上を図るには、市町村など行政と地域住民の間の情報共有と連携
体制の確保のための取り組みが不可欠です。
具体的には、行政が蓄積している防災に関する情報などをわかりやすく地域住民
に説明する場を設定することや、住民参加による「体験型防災ワークショップ」、
「防災タウンウオッチング」などの企画を実施することが効果的です。
防災ワークショップの講師等は、必ずしも学識経験者である必要はなく、地域の
実情に詳しい防災担当者のほか、消防・警察など地域の防災に関する経験・知識を
有する人々に幅広く依頼し、住民の視点に立った防災企画とすることが重要です。
また、こうした取り組みに併せて災害図上訓練DIGによる防災ワークショップ
を実施することは、一層効果的です。
2.災害図上訓練DIGの実施
(1)準備段階
住民参加型「防災ワークショップ」で災害図上訓練DIGを実施する際は、先
ず最初に、訓練参加者が実際に取り組む図上型防災訓練のレベルを設定したう
えで、準備に取りかかることが効果的です。
また、訓練参加地区数と参加者人数を明らかにしておき、進行管理者(コント
ローラー)の人員数と役割分担を決定しておく必要があります。基本的に災害
図上訓練DIGは簡易な手法であることから多くの人数を要しませんが、より
高いレベルを追求する場合、進行管理者(コントローラー)のレベルアップが
必要となります。
なお、市町村において事前に作成すべきDIGの関連資料のうち、市町村の
地域特性や災害危険に関する資料は、図上シミュレーション訓練の実施準備の
際に作成した資料と共用できるので、これらを活用し、地域・地区毎の被害想
定資料を整理・抽出しておきます。
なお、イメージトレーニングを必要とする場合は、簡単な状況付与シナリオ
を複数作成しておくこととなりますが、これらも図上シミュレーション訓練の
企画準備段階で作成されたシナリオの一部を活用することになります。
63
(2)訓練当日の進行管理
訓練当日、訓練を始める前に司会進行のもとで行うこととなるオリエンテー
ションでは訓練に関する説明のみならず、参加者の自己紹介や机・地図・シー
トの設営などを全員で行うなどにより、訓練参加者同志のコミュニケーション
を円滑にすることに配慮し、雰囲気作りを心がけることが必要となります。
幅広い住民や関係団体職員の参加が得られ、気軽で自由な雰囲気のもとでの
訓練となるよう、進行管理者(コントローラー)は、スタッフと協力して訓練を運
営することが不可欠となるため、この役割の担当者は、災害図上訓練DIGの
進行を効率的に実施できるような素養とノウハウを身につけておく必要があり
ます。
(3)訓練実施後の評価・検証
災害図上訓練DIGでは、訓練の中で訓練参加者(プレイヤー)が発見した
内容(気づき)を重視しています。そのため、これらを訓練参加グループごと
に自由に発表し、意見交換する場を設けることにより、これを評価・検証とし
ます。
訓練当日の進行管理同様、この面でも担当者は、災害図上訓練DIGを効率
的に評価・検証できるような素養とノウハウを身につけておく必要があります。
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