査定返戻を減らそう

査定返戻を減らそう
いそむら
しょう
石巻赤十字病院 医事課 磯村 将
1.
テーマ選定理由
案
名
層
別
1
2
3
4
5
重
要
性
緊
急
性
実
現
性
効
果
性
期
待
性
合
計
点
数
順
位
1
査定返戻の減少
問題解決型
2
4
2
4
3
15
1
2
医事について知識の向上
課題達成型
4
1
4
1
4
14
2
3
未収減少の継続
問題解決型
1
3
3
2
2
11
3
4
残業を減らす
問題解決型
3
2
1
3
1
10
4
(単位:点)
毎月の診療報酬(レセプト)請求後、審査側でその診療行為が認められないものは査定として減点され、内容に
疑問をもったものについては返戻として病院にレセプトが戻される。
査定については査定された分が減収となり、返戻に関しては請求内容が認められるまでそのレセプトの収入はな
い。今回の QC 活動ではレセプトの査定返戻を減少させることに挑戦した。
【活動の概要】
(2) テーマの種別
(3) 目標(指標と目標値を含む)
(4) 活動前後の指標の変化
(5) 活動の種類
(6) チームの名称
(1) 施設名 (
石巻赤十字病院
□①診断治療
□②安全
■④無駄削減・能率・業務環境
)
□③患者サービス/満足度向上
□⑤質管理システム
□⑥その他
【査定】入院・外来共に多い検査の査定件数 43%の減少
【返戻】事務的に防げるもの 37%の減少
実施前( 41.5%
) ⇒ 実施後(
□①職場単位のグループ活動
19.01%
)
*単位も記載のこと
□②複数の職場が連携したグループ活動
■③テーマに合せて召集されたチームプロジェクト
Go!Go! チーム査低返零
□④その他
(7) 実施期間 計(
(8) 所属部門(複数可)
□①診療部門 □②支援部門 ■③事務部門 □④その他
(9) チームリーダー
名前( 磯村 将
(10) チームメンバーの人数
(12) QCストーリー
)所属部署( 事務部 医事課 )職種( 事務
7 (人)
■①問題解決型
(11) 活動回数: 今回で(
□②課題達成型
-1-
□③その他 (
1
60
)週
)
)回目
)
2.
活動計画の作成
区分
テーマ選定
全員
現状把握
全員
原因解析
全員
対策立案
全員
対策実施
全員
効果確認
全員
歯止め・標準化
全員
3.
日程
担当者
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
現状把握
(1)
調査項目
【査定】 項目毎の査定件数(外来・入院)
【返戻】 返戻件数(入院) ※QC メンバーに入院担当者が多いため、今回は入院の返戻を調査対象とした。
(2)
調査期間
【査定】 平成 22 年 11 月診療分~平成 23 年 1 月診療分
【返戻】 平成 23 年 7 月診療分~平成 23 年 8 月診療分
(3)
調査結果
【査定】
外来11-1月査定パレート図
100
340
320
300
280
260
240
220
200
180
件数
160
140
120
100
80
60
40
20
0
90
80
70
60
50
比率
40
30
20
10
0
A60
D60
C60
A20
B60
D70
A10
D30
その他
項目別
入院11-1月査定パレート図
100
140
90
80
120
70
100
60
件数
80
50
40
60
30
40
20
20
10
0
0
B60
B30
D50
B50
D60
A60
項目別
-2-
D10
A20
A50
C60
その他
比率
※項目の説明
【査定理由】
【診療区分】
A
医学的に適応と認められないもの
10
管理料
50
手術
B
医学的に過剰・重複として認められないもの
20
投薬
60
検査
C
A・B 以外で医学的に認められないもの
30
注射・点滴
70
画像
D
算定要件に合致していないもの
40
処置
その他
リハビリ・入院料等
入院・外来ともに上位を占める検査について割合を求めてみた。
336 件(入院・外来の検査に対する査定)÷487 件(査定の全体数)×100=68.9≒69%
検査の査定件数が入院・外来を合わせると全体の 69%を占めている事が分かった。
結果、事務的に防げるもの(入院・外来の A60・D60)に着手することとした。
上記より 208 件(入院・外来の A60・D60)÷487 件(査定の全体数)×100=42.7≒43%
調査をした結果、事務的に防げるもの(入院・外来の A60・D60)が全体の 43%であることが分かった。
【返戻】
入院の返戻件数を返戻理由別に調査した。
上記より事務的に防げるものをピックアップした。
依頼返戻はそもそも、事務側から審査機関に取下げ依頼をかけていることから未然に防げるものがほとんどで
ある。
また、審査機関からの返戻のなかで保険関係・重複・一部負担金も未然に防げると考えられ対策対象とした。
上記より 38 件(事務的に防げるもの)÷104 件(返戻の全体数)×100=36.5≒37%
調査した結果、事務的に防げるものが全体の 37%であることが分かった。
-3-
4.
目標の設定
【査 定】 入院・外来共に多い検査の査定件数 43%の減少
【返 戻】 事務的に防げるもの 37%の減少
5.
要因と解析
医師と看護師
患者
特別食の情
報が事務に
リハビリ病名が こない(病名) カルテに病名の
適切でない
記載がない
Nsと事務の
共有認識がない
当日退院
が多い
(保険証)持ってく
ることを知らない
事前の退院
連絡がない
(保険制度)
患者教育
できてない
患者教育する
資料がない
退院会計が
事前準備 病名が
ICD10に
できない 沿ってない
よく確認でき
ないまま退
院会計を出
すしかない
先生が使い
易い物を使
用する
保険証毎月
の確認なし
Drのレセプトに
関する
認識不足
病名
漏れ
Drへ操作教え
方が悪い
処方日数を
オーバーする
反省をしないから同じミスをする
Drは操作が
わからない
(詳記)材料の
ことを書いて
も削られる
概算請求じゃないから
複雑な手技が多い
(操作)教え方
マニュアルがない
られな い
保険診療の
診査基準に
合わない
緊急入院
が多い
(請求時)選択
するのが難しい
内容と材料が合わない
ベッドが空
かない
入退院が激しい
退院会計
事前準備
よく確認でき
ないまま退 ができない
退院時間が
早い
院会計を出
流れ
漏れ
検査
知識不足
何をつけて
いいかわか
らない
知識が
偏っている
病名がICD10に
沿ってない(外来)
エラーチェックが全てに
かからない
HISの機能に
不満がある
オーダーから飛んでくる
手技が違う
レセプトを担当者
のみで確認して
いる
患者が多い
なくなったから
忘れ
材料
知識不足
査
定
返
戻
が
発
生
ネット環境がない
待たされた患者が
急かしてくる
先生が使い
易い物を使
市立病院が
用する
病名をレセプト
点検時につけ
てしまう
のこぎりかけ
ICD10の
知識不足?
(点数早見表)
厚い本で読む気
にならない
手軽に調べ
られる本が
少ない
よく調べ
(詳記)書き方
マニュアルがない
レセプトを担当者
のみで確認して
いる
外用薬の
日数抜け
退院時に確認
できない
保険登録
を間違う
関心がない
材料を多量
に使用する
疑い病名の
まま薬が出
てた
確認不足
保険登録後
確認なし Drがレセプトに
ルーチンの検査
が多い
薬の品目が多い
処置票交換
をしていない
医師が保険
診療を考えない
保険証記号
番号誤り
(Dr)コスト意識
がない
保険証を
持ってこない
レセプト 退院時処方
確認不足に病名をつ
けない
医事課
すしかない
一か月点検を導
入していない
電話が多い
レセプトを集中
して点検でき
る場所がない
環境
レセプト提出まで
のスケジュールが
短い
クラークのやることが
多い
レセプトだけの時間
がとれない
レセプト点検が十分にできない
「医師のレセプトに関する認識不足」、「保険登録後の確認が無い」、「退院会計が事前準備できない」、「保険制度の
患者教育ができていない」、「退院会計の事前準備ができない」、の 5 項目があげられた。
6.
対策の立案
上記 5 項目の要因から統計図+マトリックスを使用し下記のように具体策の検討し、3 項目の対策を実施すること
が決定した。
査
定
・
返
戻
を
減
ら
す
要 因
対 策
保険の患者教育が出来ない
保険に対する患者の意識対策
保険登録後の再確認がない
重
要
性
持
続
性
即
効
性
実
現
性
効
果
性
評
価
保険に関してのパンフレット・ポスターを作成
3
3
2
3
2
13
入院患者様と面談
3
2
3
2
3
12
保険証の再確認
3
3
3
3
3
15
退院時に保険証の確認
3
2
2
2
3
12
Drに査定・返戻されている金額を伝える
3
3
3
3
2
14
レセプト点検時の際の場所の確保
3
3
2
2
3
13
査定・返戻の多いものの病名対照表の作成
3
3
2
3
3
14
退院予定患者の事前把握
3
3
3
3
3
15
登録後に再確認する
Drのレセプトに対する認識不足
Drの意識改革
レセプトの確認不足
確認する時間・余裕を増やす
退院会計の事前準備が出来ない
具 体 策
事前準備出来るようにする
-4-
7.
対策実施 (対策実施期間 平成 23 年 2 月 1 日~2 月 29 日)
No.
いつ
誰が
どこで
何を
どうする
1
毎日 15 時に
クラークが
病棟で
退院予定患者を
看護師に聞きにいく
2
登録後毎日
QC メンバーが
課内で
保険証のコピーを
再確認する
3
1 週間以内に
QC メンバーが
課内で
病名対照表を
入外に配布する
対策 No.3 『検査・特食/病名 対照表』
対策 No.1 『退院患者事前把握』
QC 査定返戻の対策についてのお願い
検査名
コ 骨塩定量検査
骨粗鬆症疑い
グ グルコース
糖尿病疑い、甲状腺機能低下症疑い、膵炎疑い
シ 心筋トロポリンT
急性心筋梗塞疑い、不安定狭心症疑い
ゾ
悪性リンパ腫
確定病名以外査定される
ヘ ヘリコバクターピロリ
ヘリコバクターピロリ感染症の疑い
胃潰瘍、十二指腸潰瘍など確定病名必要
事が可能ではないかと考えたからです。
フ フィブリノゲン
フロートラックセンサー
DIC疑い、妊娠高血圧症疑い
心臓疾患の病名
産婦人科多い
以下の取り決めを作りましたので、それに沿って行って頂きたいと思います。
B BNP
うっ血性心不全疑い
対象期間は 2/1(水)~2/29(水)です。
C CA125
Ck・アイソ
卵巣癌疑い、子宮癌疑い、消化器癌疑い、肺癌疑い、乳癌疑い
H HbA1c
HIV-1,2
糖尿病疑い
HIV陽性以外は99で、請求しない
U UCG
心臓弁膜症の疑いなど
今回 QCで査定返戻について行っています。そこで、査定返戻が多い要因として、事前に
適応病名
注意事項
4月に一回限度。実施日のコメント必要
会計が出来ないからではないかという意見がありました。
そこで対策として、各クラークで看護師に事前確認をして頂きたいと思います。
理由としては、「退院通知はしてないが、検査結果次第で退院予定」「家族とのムンテラ次
造血器悪性腫瘍細胞(モノクロナーム抗体法)
第で退院決定」などの退院しそうな人を事前把握することで退院準備を余裕を持ってする
① 締切り時間を 15 時とします。
15 時までに翌日の退院通知がされている分についてはカウントしません。
15 時以降にクラークが看護師に聞いて回って退院可能となっている人や退院しそうな
確定の場合は、指導料で算定
心筋梗塞、筋炎、皮膚炎、筋萎縮症など
陽性以外は病院持ち出し
人をカウントして下さい。
食種名
② 翌朝に前日の退院者のリストを各 BOX に入れますので、15 時以降にカウントした退院
者のみ赤でチェックして下さい。
易消化食
リストにいない人(退院しそうだったが延期・翌日以降になった方)は余白に名前・ID を
書いて下さい。
脂質コントロール食
③ リストは配布された日の夕方までに 4 東 BOX に返却して下さい。
蛋白質コントロール食
④ 後日アンケート用紙を配布しますのでご協力ください。
対象期間は 2/29 までですが、アンケートは一度 2/14 で期間を切らせて頂きます。
それ以降の分については、対象月の翌月 3 月に再度行わせて頂きます。
エネルギーコントロール食
お忙しい中、大変申し訳ありませんがご協力をお願い致します。
尚、不明な点があれば QC メンバー 佐藤・横山までお願い致します。
GoGo! チーム査低返零
エネルギー制限
低コレステロール食
対策 No.2 『保険証ダブルチェック』
-5-
適応病名
・胃十二指腸胃潰瘍
・炎症性腸疾患
・胃術後
・膵炎
・肝炎
・胆石(発作時)
・腎炎 腎不全
・透析
・ネフローゼ症候群
・糖尿病
・肥満
・高脂血症
・脂肪肝
・慢性肝炎 肝硬変
・慢性膵炎
・心臓病
・妊娠中毒症
・高脂血症
・胆石
効果の確認
対策 No.1 『退院患者事前把握』
2 月診療分の対策を行ったが、その効果を確認するため、病棟クラークに対しアンケート調査を実施することに
した。
(1)
対策を実施して、会計が余裕を持って行えるようになったか?
・ とてもなった
0%
0人
30%
・ まあまあなった 7 人
・ 変わりない
とてもなった
まあまあなった
3人
変わりない
70%
対策 No.2 『保険証ダブルチェック』
入院の返戻件数を返戻理由別に調査した。
返戻件数(入院)
35
30
25
件
数
20
15
10
5
0
診療内容及び
症状等
25.65
診査機関からの返戻
2.56
依頼返戻
病名もれ
23.08
0
事務的その他ミ
ス
23.08
0
手術
保険関係
一部負担金
施設基準
その他
15.38
0
5.13
2.56
2.56
0
0
0
0
0
保険関係対策前後比較(%)
上記より保険関係をピックアップし、活動前後で比較。
診査機関からの返戻
保険証の再確認の効果については、目標に掲げた
依頼返戻
15.00
事務的に防げるもの全てを削減することはできなかった。
しかし、保険に関する返戻が減少し、保険証の再確認
の効果は認められた。
パーセンテージ(%)
8.
10.00
3.96
5.00
2.56
6.93
2.56
0.00
前
対策
保険
係
関係
険関
後保
策
対
項目
-6-
対策 No.3 『検査・特食/病名 対照表』
入院
外来
入院・外来査定件数グラフ(%)
N=494
%
%
0.00
A60
1.42
D60
1.82
10.00
C60
30.00
0.00
40.00
1.01
6.07
9.51
A20
1.01 6.48
D70
0.61
1.82
項
目
2.11 5.63
A60
2.11 4.93
B20
1.413.52
2.02
0.00
A30
2.112.11
B50
1.82
0.20
D30
1.412.82
9.51
7.09
対 策
40.00
5.63 0.00
D50
その他
30.00
11.27
A20
B30
20.00
14.79
D60 0.70
16.60
11.34
10.00
B60 0.70
21.66
B60
項
目
20.00
入院
外来
入院・外来査定件数グラフ(%)
N=142
その他
16.90
前
21.83
対 策 後
上記より A 査定の検査と D 査定の検査をピックアップし、活動前後で比較。
D60対策前後比較(%)
A60対策前後比較(%)
入院
入院
外来
20.00
25.00
20.00
パーセンテージ(%)
パーセンテージ(%)
外来
15.00
21.66
10.00
5.00
15.00
10.00
16.80
11.27
5.00
4.93
2.11
1.42
0.00
A60
前
対策
対策
0.00
0
後A6
対策
1.82
0
前D6
0.7
D60
後
対策
項目
項目
病名対照表についても、目標に掲げた事務的に防げる検査査定の全てを削減することはできなかったが、
病名もれによる検査の査定を減少させることができた。
さらに、入院特別食の早見表を掲載したことで、病名漏れに伴う特別食の査定がゼロ件になり、その効果は
とても大きいものだった。
無形効果は、査定返戻の多い検査や薬品名を具体的に挙げたことで、職員に問題意識が芽生えたことが
良かった点として挙げられる。
-7-
9. 反省と今後の課題
① 反省
資料が膨大過ぎることと震災の影響があり、現状把握に予想以上の時間がかかった。
その為、対策開始が遅くなってしまい効果の確認まで至らなかった。
② 今後の課題
実施期間の査定・返戻については 2~3 カ月後にしか答はでないが、確実に効果が認め
られないことについては対策を見直す。更には内容を実のあるものにする。
現在も対策継続中である。
10. 標準化と管理の定着
なぜ
標
査定返戻をなくす
準
ため
いつ
誰が
何を
どうする
年に数回
医事課員が
病名対照表を
更新する
毎日
病棟クラークが
翌日の退院患者を
医師や看護師に確認する
1ヶ月に1回
医事課員が
査定分析会を
開催して討議する
化
管
退院患者を事前に
理
把握するため
教
査定返戻状況を
育
把握するため
11. 反省と今後の課題
① 反省とまとめ
テーマ選定
現状把握
査定と返戻の両方では量が膨大過ぎた。どちらかに絞ればよかったと思われる
予想以上に時間がかかってしまったため、計画から大幅にズレが生じた。対策実施期間が短く
なってしまった
要因解析
多くの問題点を追求することができた
対策立案
効果の期待できる対策を立てられた
対策実施
効果確認
標準化
管理の定着
実施期間が短くなってしまったがニチイさんや NIC さんの協力を得られてスムーズに進めること
ができた
目標は達成しなかったが、大幅に減少させることができた
効果が表れた病名対照表を年に数回更新することで、スタッフの意識向上に期待がもてる
② 今後の課題
効果があった保険証の再確認は、作業量が膨大でメンバーの負担が大きかったため標準化できなかった。
ついては、これに変わる対策を講じる必要がある。今後のレセプト点検の質の向上に繋げたい。
職員間で改善された意識を継続させていくことも重要だと思われる。今年度も引き続き活動を行っているの
で、その課題としたい。
-8-