1 食品表示基準におけるアレルゲンの表示義務見直し案の解説 2014 年

食品表示基準におけるアレルゲンの表示義務見直し案の解説
2014 年 7 月 23 日
NPO 法人食物アレルギーパートナーシップ(FAP)
アレルギーを含む物質の表示は、平成 13 年 4 月 1 日に施行されてから十数年経過し、その
間、食物アレルギー児の保護者を対象とした調査(平成 19 年アレルギー研究班検討会報告、
宇理須ら)で、約 80%役に立っていると回答していることから、この法律が一定の役割を果たし
てきたといえる。
平成 25 年 6 月 28 日、食品表示法が公布され、その後消費者委員会食品表示部会(加工食
品の表示に関する調査会)で検討された表示基準のなかで、アレルギー表示のルールが一部
改定され、現在パブリックコメントが募集されているので、その見直し案について解説したい。
1. 代替表記、特定加工食品及びその拡大表記について
①代替表記は引続き存続させる。
②特定加工食品及びその拡大表記は廃止する。
③代替表記の拡大表記のうち卵の「卵白」「卵黄」は、廃止
④乳については、乳以外のアレルゲンに準じた見直しを行なう。
【解説】
①代替表記は引続き存続させる。
代替表記は、アレルゲン名を単に漢字や仮名等に変えただけの表記なので、改めて
「(○○を含む)」と表示する必要性が低い。
③代替表記の拡大表記のうち卵の「卵白」「卵黄」は、廃止
ただし、特定原材料「卵」の拡大された表記、「卵黄」「卵白」は各々個別にアレルゲン性
が存在するので、「卵」を代表する表記とはしない。
・ 各々が産業的に完全分離することが困難なこと。
・ 以下のような事故事例があったこと
「----、複合原材料A、---、卵黄、---」 複合原材料Aには卵白が含まれるが、
卵黄は「卵」の拡大表記なので、現行のルールからは「---、複合原材料A、
---、卵黄、---」でよい。この表示であれば、卵白にアレルギーを持った人が、
この製品には「卵黄」しか使われていないと判断してしまい、事故につながる。
・ 【解説】具体的表示は以下のようになる。
「---、複合原材料A(卵を含むあるいは卵白を含む)、---、卵黄、-----」
②特定加工食品及びその拡大表記は廃止する。
・ マヨネーズに卵が入っていることを知らない例がある。一方、大豆マヨネーズがポピ
ュラーになり、マヨネーズ=卵の認識が希薄になっている。
・ 特定加工食品が多くはなく(26種類)、また、その中でも原材料表示において複合
原材料として用いる可能性があるものは更に少ない(下線、10種類前後)ので、廃
止しても表示上大きな変更にならない(影響が少ない面)もある。
卵:マヨネーズ、オムレツ、目玉焼、かに玉、親子丼、オムライス
小麦:パン、うどん
1
乳:生クリーム、ヨーグルト、アイスミルク、ラクトアイス、ミルク
いか:するめ、スルメ
大豆:醤油、味噌、豆腐、油揚げ、厚揚げ、豆乳、納豆
豚肉:とんかつ、トンカツ
やまいも:とろろ、ながいも
④乳については、乳以外のアレルゲンに準じた見直しを行なう。
・ 「特定加工食品」に整理されていた「ミルク」を「代替表記」とする。
・ 「バター」、「バターオイル」、「チーズ」及び「アイスクリーム」については、乳以外か
ら製造されることがないため、代替表記とする。
・ クリーム、濃縮ホエイ、クリームパウダー、ホエイパウダー及びたんぱく質濃縮ホエ
イパウダーの記載は、当該原材料名の後に括弧を付して(乳成分を含む)とする。
(今までは、クリーム(乳製品)としていた)
・ 複数の表示方法ではなく、「乳」のアレルギー表示は「乳成分」のみとする
・ 特定加工食品であった、生クリーム、ヨーグルト、アイスミルク、ラクトアイスミルク、
乳糖については、生クリーム(乳成分を含む)、ヨーグルト(乳成分を含む)、アイスミ
ルク(代替表記の拡大表示)、ラクトアイス(乳成分を含む)、ミルク(代替表記)、乳
糖(乳の拡大表示)とする。
【用語解説】
※「代替表記」「特定加工食品」「拡大表記」について
「代替表記」:表記方法や言葉が異なるが、特定原材料等と同一であるということが理解でき
る表記。 「卵」 → 玉子、たまご、エッグ、鶏卵 など
「特定加工食品」:特定原材料(等)名又は代替表記を含まないが、一般的に特定原材料等
を使った食品であることが予測できる表記。
「卵」 → マヨネーズ、「大豆」 → 豆腐、味噌 など
「拡大表記」:代替表記、特定加工食品を含むことにより、特定原材料等が理解/予測できる表
記例。 「卵」 → ハムエッグ、「大豆」 → 麻婆豆腐 など
2. 個別表示、一括表示について
①個別表示を原則とする。(一括表示は「表示面積に制約ある」「表示量が多くなり、消費者に分
かりにくい」場合に、例外的に認める。)
②個別表示の繰り返しになるアレルゲンの省略については、仕組みの一部改善を図る。
③一括表示欄に、原材料として表示したアレルゲンや代替表記等で表示されているものも含
め、全てのアレルゲンを表示する。
①個別表示を原則とする。
・ 従来どおりの考え方を踏襲している。
・ 一括表示は「表示面積に制約ある」「表示量が多く、消費者に分かりにくい」場合に、
例外的に認める。 → これも従来どおり
②個別表示の繰り返しになるアレルゲンの省略については、仕組みの一部改善を図る。
・ 従来どおりの考え方を踏襲している。
2
・
【解説】仕組みの一部改善とは、醤油に含まれる「小麦」「大豆」を念頭においている。
従来より、醤油に含まれる「小麦」「大豆」は摂取可能な患者さんが存在するので、
醤油の「小麦」「大豆」は繰り返しになる場合でも、省略しないという考え方。
③一括表示欄に、原材料として表示したアレルゲンや代替表記等で表示されているものも
含め、全てのアレルゲンを表示する。
一括表示欄を見ることで、その食品に含まれる全てのアレルゲンを把握できるように、
原材料として表示したアレルゲンや代替表記等で表示されているものも含め、全てのア
レルゲンを表示する。この実施でアレルゲン表示の見落とし防止を図ることを意図して
いる。
(一括表示の事例)
【従来の一括表示の事例】
小麦粉、糖類、卵、カスタードクリーム、----、イースト、乳化剤、カゼインNa、原材料の一部
に乳成分を含む
【一括表示(新規提案による事例)】
小麦粉、糖類、卵、カスタードクリーム、----、イースト、乳化剤、カゼインNa、原材料の一部
に小麦、卵、乳成分を含む
3. 「乳」の表示について
「乳」の含む表示は、「乳成分を含む」に統一する。
・現状の「乳を含む」「乳製品を含む」「乳成分を含む」の表記を一本化する。
○ 「乳」の含む表示は、「乳成分を含む」に統一する。
・ 乳等省令により乳/乳製品の定義により、乳製品に「乳を含む」とは書けない現状
がある。
・ 定義に係らず、アレルギー患者さんにとっては「乳成分」とすることで、乳化剤などと
の判別もできるので有用である。
以上
3