心 理 学 理 論 と 心 理 的 支 援

心 理 学 理 論 と 心 理 的 支 援
心と脳
脳の構造
大脳皮質
大脳
言語・思考、情動・行動の中枢
小脳
身体各部の運動を調整し、身体の平衡感覚を保つ
間脳
新陳代謝、体温、水分、血圧などを一定の状態に維持するための自律神経系
(視床下部)
の中枢
脳幹
心臓や呼吸の働きを調節する中枢、
(延髄)
嚥下や嘔吐、せき・くしゃみをコントロールする働き
部位
機能
損傷した場合
前頭葉
意思決定、計画・実行、情動のコントロール
非流暢性失語・遂行機能障害
側頭葉
音声や言語の弁別・理解に関する機能
流暢性失語・聴覚失認・記憶
障害・地誌的障害
大脳辺縁系
高次脳機能障害
頭頂葉
空間認知、道具を用いて手で作業する機能
半側空間無視・失行
後頭葉
明暗や色などの資格情報を処理する機能
視覚失認・相貌失認
扁桃体
快―不快、怒り、悲しみ、恐怖などの情動
海馬
記憶
注意障害
小意、選択性注意、転換性注意、持続性注意、配分性注意
失語
アルツハイマー病
リハビリ
数字がたくさん書かれた紙を見せ、特定の数字のみ鉛筆で消
(選択性注意の
していく選択末梢課題を実施。パズルやゲームなどにより、
場合)
楽しみながら全般的に注意力を上昇させる。
非流暢性失語
書かれたものは理解できるが、スムーズな発話が難しい
流暢性失語
流暢に話せるが、人の話や書かれたものの理解が困難
リハビリ
言語表出訓練
(言語聴覚士に
よる訓練)
遂行機能障害
絵カード等を用いて名称を言う、音声を聞
いて復唱する、文字を見て音読する等。
言語理解訓練
音声や文字と対応する写真や絵を選ぶ。
構音訓練
口型のモデルや鏡を見て発音する
前頭葉障害。作業を始められない、途中でやめられない、順番を決められな
い等、物事を行う(遂行する)際に妨げとなる症状。
記憶障害
リハビリ
「目標、計画、手続きを考える」
「実際にそれを実行する」
前向健忘
発症後の新しい出来事を覚えるのが困難
逆向健忘
発症以前の過去の出来事を思い出すことができない
リハビリ
手帳・カレンダーなど記憶の代償手段の活用、アラームな
(前向健忘)
ど聴覚的手掛かりや、目印など視覚的手掛かりの利用、重
要なものは常に同じ場所に置くなどの習慣化、意図的な繰
り返しによる学習、誤学習・誤想起を防ぐ誤りなし学習
失認
視覚失認
見えているものが何かわからない
相貌失認
人の顔を見て誰かわからない
失行
運動障害がみられないのに、意図した動作や指示された動作ができない
半側空間無視
右側もしくは左側の空間に位置する対象物を見落とす障害。空間認知は右脳
優位であるため、右半球損傷による左側無視の場合に重症になる。
情動・感情
基本的情動
プルチックが、人間に最初から備わっている基本感情を8つ導出して円環状に位置付けた。
また、日常場面で生じる情動は、基本的情動が混合した中間的な感情であると説明した。
さらに強度の次元を加え、情動を 3 次元の立体モデルで示した。
(テキスト p.24)
弱い
→ →
→
基本的情動
心配(懸念)
怖れ
混乱
驚き
もの悲しさ
悲しみ
→
→
畏怖
落胆
退屈
嫌悪(嫌気)
当惑(苛立ち)
怒り
期待(予期)
呵責
侮蔑
攻撃
楽観
喜び
受容(受け入れ)
(怖れに戻る)
愛
服従
→
→ 強い
恐怖
驚愕
悲嘆
憎悪
激怒
警戒
歓喜
愛慕
新生児微笑
生後すぐにみられる生理的な微笑(自発的な微笑)
社会的微笑
自ら環境に応答する微笑
情動調律
養育者が、子どもが泣いたり怒ったりした時に、その感情を機嫌の良い状態に転換するよう
働きかけること
社会的参照
養育者の表情を見てその感情態度を確かめながら行動を決めていく
欲求
一次的欲求
栄養や水分摂取、睡眠、排泄など、人間にとって不可欠な基本的欲求。生理的欲求
二次的欲求
発達の過程で培った後天的な欲求。社会的欲求・心理的欲求。
人間の欲求を5つの次元に分類し、ピラミッド型の階層で示した。
一次的欲求である生理的欲求は、最基底の欲求で、ほかのあらゆる欲求に優先する。
第1層から第 4 層までは「欠乏欲求」であり、上位の欲求は低次の欲求が満たされて初めて
派生する。欠乏欲求が全て満たされると、
「成長欲求」である自己実現欲求が生じる。これは
自分の存在価値を高めるような欲求で、完全に達成できる人はごく限られており、むしろ自
己実現を追求する志向性(価値観)が重要視される。(テキスト p.39)
第5層
自己実現
2~5層
二次的欲求
成長欲求
承認と尊重
所属と愛情
1~4層
安全と安定
第1層
生理的欲求
生理的欲求
欠乏欲求
動機付け
達成動機づけ
何かの目標をやり遂げようとする欲求や、目標を達成することに興味をもっている状態
外発的動機づけ
外部的刺激(報酬や叱責)に誘発されてやる気を起こす状態
内発的動機づけ
外部強化によらず、活動自体が報酬となって、行動を実現しようとする状態
内発的動機づ け
知的好奇心
環境と能動的な相互交渉をして知識の獲得を目指す傾向。
の誘因
コンピテンス
自己の活動の結果として環境に効果を生じたり、刺激に変化を求めたり
することができたと感じる有能感・自己効力感
自律性
原因帰属
自分の意思によって決定できるという感覚
行動の結果、その成否の原因を何によると考えるかという理論。ワイナーは達成行動の成否
について、能力・努力・課題の困難度・運という4つの要因を指摘し、個人の内的要因と外
的要因という内在性次元と、安定的な要因であるか不安定な要因であるかという安定性次元
の2次元に分類した。帰属の傾向によって、その時の感情やその後の行動が変わってくる。
(テキスト p.43)
安定性次元
安定的要因
内在性次元
内的要因
能力
外的要因
課題の困難度
不安定的要因
努力
運
葛藤
葛藤
欲求がある時、欲求を満たす誘因が同時に複数あったり、誘因同士が対立したりして、一方
conflict
の欲求を満たすと他方の達成ができないというような状況。
葛藤のモデル
接近―接近葛藤
正の誘因性をもつ2つ(またはそれ以上)の対象があり、両方を満
(K.Z.Lewin)
足させたいが、同時にそれを叶えることができないような場合。
例)休日に映画に行くかハイキングに行くか迷う、など。
回避―回避葛藤
負の誘因性をもつ2つ(またはそれ以上)の対象があり、どちらも
避けたいが、いずれかを選択しなくてはならないような場合。
例)仕事がつらいが、やめると収入がなくなる、など。
接近―回避葛藤
一つの対象が同時に正負の誘因性をもつ場合。負の領域を通過しな
ければ正の領域に到達できない。
例)手術をしなければ健康を取り戻せない、など。
ラザルス
二重接近―回避葛藤
(R.S.Lazarus)
接近―回避葛藤が重なっている場合。
例)パソコンを買う際、機種Aと機種Bがあり、どちらも一長一短
で決めかねる、など。
欲求不満
欲求不満
何らかの妨害要因によって、欲求が阻止されている状態。frustration
欲求不満が引き起
攻撃反応
こす行動パターン
妨害を起こす対象への直接の攻撃か、あるいは、その他の対象(もしくは自
分自身)への攻撃となって現れること。
代償反応
達成され得ない目標そのものを変え、似たものを得ることによって満足する
こと。
退行反応
発達的にみて前段階の行動が出てくること。
固着反応
欲求の充足にかかわりのない反応に固執すること。
抑圧反応
完全に欲求を抑え、体験そのものの存在を無意識のうちに否定する働き。
欲求不満耐性
欲求不満や欲求阻止に対する忍耐力。欲求不満状況下にあって、耐え、合理的に事態を把
ローゼンツァイク
握し、最善策を見つけようとする能力や、バランスを失うことなく行動できる能力。
(S.Rosenzweig)
PFスタディ
被検査者に、日常生活で経験するであろう欲求不満場面が描かれた
(Picture-Frustrati
絵を提示し、その絵画のなかで欲求不満場面に遭遇した人が何と答
on Study
えるかを絵の「吹き出し」に書き込んでもらうテスト。
絵画欲求
不満検査)
欲求不満への対応に反映される自己防衛の仕方、不満解決の仕方、
攻撃の方向などを探る。
防衛機制
抑圧
欲求不満を解消し、心理的な適応状態を保つためにとる行動。適応機制
意識していると苦痛、不快、不安、罪悪感など否定的な感情を体験しなければならない記
憶や観念を無意識化してしまう自我の無意識的働き。
抑制
意識的に判断して否定的感情を我慢したり辛抱したりする行動。
退行
直面しなければならない苦痛に対し、以前の発達段階に幼児帰りを起こすことによって回
避しようとする働き。
反動形成
認めがたい衝動とは反対の態度を取ること。
(敵意をもつ相手に過度に丁寧になるなど)
置き換え
本来の対象に向けられるべき無意識的な感情や衝動が、自我に受け入れられやすい他の対
象に向けられること。
(母への依存や甘えを恋人に向けるなど)
昇華
そのままでは他者に受け入れられ難い欲動や衝動を、社会的文化的価値のある活動に置き
換えること。
補償
自己の能力や身体、精神面について劣っていると感じた時、それを直接的に克服したり(直
接補償)
、他の面で他人よりも優れることによって劣等感を補ったり(間接補償)すること。
合理化
自分が取った言動や感情に矛盾があったり、社会的な非難を受けたりしそうな時、都合の
いい理屈付けをして責任を逃れたり、自己の立場を正当化しようとする働き。
同一化
対象の望ましい属性を自己の中に取り入れ、これと同じように考え、感じ、行動すること
で心の安定を得ようとすること。
投影
抑圧された欲動や観念を外界に移し替えて、その対象がもつ特性のように認知する機制。
知性化
衝動や欲求、感情などを直接表現することは避け、これをもっぱら知的にとらえたり、観
念的な思考によって処理したりしようとするもの。思春期、青年期には広くみられる機制。
逃避
不安や破局をもたらすような状況から逃れることによって、一時的にせよ自分を守ろうと
する対処法。
学習
レスポンデン ト
パブロフ(I.P.Pavlov)の実験
条件付け
①イヌの口に肉粉(無条件刺激)を入れると、唾液(無条件反応)が出る。
②ベルの音(中性刺激)を鳴らした直後、イヌの口に肉粉(無条件刺激)を入れる。
③ベルの音(条件刺激)を聞いただけで、唾液(条件反応)が出るようになる。
このように、生得的反応(唾液)を誘発する無条件刺激(肉粉)と、本来はその反応に関係
ない中性的な条件刺激(ベルの音)を対呈示することで、条件刺激(ベルの音)だけで生得
的反応(唾液)を誘発する学習の手続きを、レスポンデント条件付けという。
オペラント条 件
スキナー(B.F.Skinner)の実験
付け
①ネズミがレバーを押すと、餌(強化子)が出るようにする。
②ネズミは自発的にレバーを押して、餌を得るようになる。
このように、特定の自発的行動(オペラント行動)を強化することによって、その行動の生
起率を変化させる手続きを、オペラント条件付けという。
記憶
短期記憶と
記憶は保持の観点から短期記憶と長期記憶に分類される。
長期記憶
短期記憶
数秒間から数分間の短い記憶。記憶の容量は 7±2 チャンク。
長期記憶
数時間、数日という長い記憶。短期記憶をリハーサルすることで長期記憶に
転送される。
作動記憶
短期記憶と似た性質を持つが、処理の途中の情報や、長期記憶から取り出した情報を一時蓄
えておくような記憶の能力を作動記憶という。
例)計算の途中の数値や、複雑な文章を読んでいる時の関連した情報など。
加齢の影響
短期記憶の影響は少ないが、作動記憶は顕著に低下する。
エピソード記 憶
記憶の質的な分類。
と意味記憶
エピソード記憶
いつどこであったかはっきりしているような、一回限りの具体的な経験
についての記憶。
意味記憶
一般的知識や言葉の意味など、いつどこであったかわからないが、経験
を積み重ねてできた記憶。
加齢の影響
意味記憶はほとんど影響しないが、エピソード記憶は顕著に低下する。
手続き的記憶 と
記憶の働きによる分類
宣言的記憶
手続き的記憶
あることのやり方を知る記憶
宣言的記憶
ある事物・事象がどのようなものであるか知る記憶。
加齢の影響
手続き的記憶は維持されるが、宣言的記憶が低下する。
知能
2因子説
スピアマン
多因子説
サーストン
一般的・基本的な知能「一般因子(g 因子)
」と、個別的・特殊的な知能「特殊因子(s
因子)
」を抽出。因子分析法の先駆をなす。
言語(V)
、語の流暢性(W)、空間(S)、数(N)、記憶(M)、帰納的推理(I)、
知覚(P)の7因子を抽出。
知能は比較的独立した多因子によって構成されるとした。
知能の構造モデル
ギルフォード
人間が既知の情報から新しい知識を生産する創造的な能力を持っていることに注目
し、知能の構造を体系化した。
知
記
能
憶
認
知
思
考
生
産
収束的思考
評 価
拡散的思考
収束的思考:一つあるいは少数の解に辿り着くような思考
拡散的思考:解決するために多くのアイデアを生み出すような思考
さらに、知能を、
(1)与えられた情報の「内容」、
(2)情報処理の「操作」
、
(3)そ
の結果としての「所産」の3次元構造としてとらえた。
(1)
「内容」は、図的、記号的、意味的、行動的の4つの情報
(2)
「操作」は、記憶、認知、評価、収束的思考、拡散的思考の5種
(3)
「所産」は、単位、種類、関係、体系、変換、合意の6種
とし、知能は、4×5×6=120通りの活動として現れると提唱した。
記憶
単位
認知
種類
評価
操作
収束的思考
関係
所産
拡散的思考
体系
変換
合意
内容
図的、記号的、意味的、行動的
流動性知能と
一般的知能(g 因子)は、結晶性知能因子(gc)と、流動性知能因子(gf)に分けるこ
結晶性知能
とができる。
キャッテル
結晶性知能因子:文化・教育的環境の影響を強く受けて発達し、言語性テストによく
反映される。年齢が上がっても上昇し続ける。
流動性知能因子:文化・教育の影響が少なく、非言語性テストによく反映される。20
歳代以降下降する。
知能検査
知能検査の分類
目的によって、 一般知能検査(g 因子を測定するテスト)と、
診断知能検査(知能構造や s 因子を測定するテスト)に分けられる。
問題内容からは、言語性テスト、動作性テストに分けられる。
実施形式から、 個別式と集団式に分けられる。
個別知能テスト(例 ビネー式
一般知能テスト
言語性テスト(α式)
集団知能テスト
知能テスト
動作性テスト(β式)
混合型
個別知能テスト(例 WAIS,WISC,WPPSI
診断知能テスト
集団知能テスト
ビネー式
フランスのビネー(A.Biner)とシモン(T.Simon)が、文部省当局から普通学校で知的障害児
を弁別する方法の研究を委託されたことにより、考案された個別知能テスト。
特色と
検査問題が年齢に沿って難易度順に並べられており、検査結果を各年齢水準
結果の処理
に分類できる精神年齢(MA)の概念を生んだ。
その後、ターマン(L.M.Terman)が、結果の表示に、知能指数(IQ)の指標
を用いた。
知能指数(IQ)=精神年齢(MA)/ 生活年齢(CA)×100
(生活年齢に対する精神年齢の比で、平均値は 100)
田中・ビネー
1 歳から成人までを対象とし、知能の発達水準や発達状況を明らかにして、
知能検査
同時に知的障害の診断や指導に役立つ情報を得ることを目的とする検査。
言語、動作、記憶、数量、知覚、推理、構成などさまざまな内容からなる
118 項目で構成。
ウェクスラー式
知能の多因子説に依拠した数種類の下位検査から成り、全体的な知能水準だけでなく、知
能の個人内差を診断し、知能構造を明らかにしようとしている。
尺度構成
検査全体を言語性検査と動作性検査に分け、それぞれの知能指数を算出でき
るようになっている。下位尺度はそれぞれ難易度順に項目が配列される。
結果の処理
言語性検査
知識、類似、算数、単語、理解 数唱
動作性検査
絵画完成、絵画配列、積木模様、組み合わせ、符号、(迷路)
言語性検査の 6 尺度の評価点の合計で言語性IQを、
動作性検査の 5 尺度の評価点の合計で動作性IQを算出し、
全検査評価点総計から全検査IQを算出する。
偏差 IQ(T得点)を用いて結果を表示することで、同年齢中のどこに位置
するかを知ることができる。また、加齢により成績の低下する尺度と低下し
ない尺度の合計から知能減退率が計算できる。
T得点={(個人の得点)-(集団の平均点)}×10 /集団の得点の標準偏
差 +50 (学力検査の偏差値にも用いられ、平均は 50.
)
WISC
児童用知能検査(5 歳 0 カ月から 16 歳 11 カ月)
WPPSI 幼児用知能検査(幼児・低学年)
WAIS
成人用知能検査
人格・性格
類型論
質的な観点から類型を設定し、それによって多様な性格を整理・分類して性格の理解を容易にし
ようとするもの。
<問題点>典型にあてはまらない中間型や混合型が多い。性格を画一化するおそれがある。
クレッチマー
分裂気質・躁う
臨床経験から、体格と気質にそれぞれ一定の特徴があることを見出した。
体格
気質(性格) 精神異常
細長型
分裂気質
統合失調症
つ気質
特徴
非社交的、きまじめ、臆病、神経質、
従順、鈍感、無関心、など
肥満型
躁うつ気質
躁うつ病
社交的、善良、陽気、活発、激しや
すい、物静か、鈍重、など
闘士型
粘着気質
てんかん
几帳面、執着性、粘り強い、怒りや
すい、など
ユング
心的エネルギー(リビドー)が向かう方向によって、外部のことに影響されや
外向性・内向性
すい傾向を持つ(外向性)か、内面に向かって自分自身のことに関心が集中す
る傾向にあるか(内向性)の2類に分類。向性テストで判定する。
さらに心的エネルギーの機能を「思考」「感情」―「直観」「感覚」に分け、そ
れぞれ外向性と内向性のどちらに向かうかによって8つの類型があるとした。
外向性
情緒の表出が活発で決断が早く、実行力や統率力に優れ、新しい
事態に対する適応が早い。一方、軽率で粗雑な面もあり、自分自
身については比較的無知である。
内向性
控え目で思慮深く、やり始めたことは粘り強く行う。一方、実行
力に乏しく、他人の批判に鈍感で、気難しい面がある。
シュプランガー
生活形式による分類。6種類の基本的な生活領域を考え、その中でどこに最も
価値をおいているかに従って、経済型・理論型・審美型・宗教型・権力型・社
会型の6類型を示した。文化価値に対応するカテゴリーから考察されたもので、
人生態度を分ける場合には今日でも用いられる。
シェルドン
体格と性格の関係をとらえたものであるが、クレッチマーに比べて実験的・計
測的である。正常者についての研究で、実証的。
体格
特性論
気質
特徴
内胚葉型(やわらかでまるい) 内臓緊張型
くつろぎ、安楽を好む
中胚葉型(直線的でがっしり) 身体緊張型
大胆で活動的
外胚葉型(細長く貧弱)
控え目で過敏
頭脳緊張型
個人のもつ多くの特性(行動の諸特徴)を量的に記述しようとするもの。因子分析の手法を用い
て特性と特性の相関を求め、各特性尺度の程度を示すプロフィールで表すことで、個人と個人の
比較が可能になった。
<問題点>客観的測定をめざすあまり個人の全体性や独自性を見逃しやすい。
オールポート
特性を、すべての人が持っている「共通特性」と、その個人だけが持っ
ている「個人的特性」に分けた。共通特性をテストにより測定し、その
測定値をグラフ化して個人のプロフィールを描き出す「心誌(サイコグ
ラフ)
」を考案した。
キャッテル
因子分析を用いて特性を抽出しようとする理論の代表的なもの。12 の基
本的因子を抽出。
(回帰性―分裂性、高知能―低知能、精神的健康―精神
的不健康、支配性―服従性、利己主義―協調性)し、各因子は独立的な
現れ方をするというより重なり合って表面的特徴を作りだすと考えた。
ビッグファイブ
人間の性格を5つの特性で説明できるとする考え方。
①外向性、②神経症傾向、③開放性、④協調性、⑤誠実性
辻平治郎 5因子性格検査 FFPQ
YGPI
ギルフォードの性格理論に基づき矢田部達郎によって作成された質問紙法性格検査。
矢田部・ギル
①神経質、②抑うつ性、③劣等感、④客観性、⑤回帰性、⑥協調性、⑦思考的外向、⑧支配性、
フォード性
⑨社会的内向、⑩のんきさ、⑪一般的活動性、⑫攻撃性、の 12 の下位尺度ごとに 10 問、計 120
格検査
項目から構成される。特性論的な解釈を行うだけでなく、全体的プロフィールの傾向から、5つ
の類型に分類することができる(「平均型」「情緒不安積極型」「情緒不安消極型」「安定消極型」
「安定積極型」
)
。多面的な診断が可能であるため、広く用いられる。
回答者の意図的な反応歪曲に弱いという欠点がある。
集団と社会
対人認知
ハロー効果
他者がある側面で望ましい(もしくは望ましくない)特徴を持っている
と、その評価を当該人物に対する全体的評価にまで広げてしまう傾向。
ピグマリオン効果
人が他人に対して持っている期待が、意識すると否とに関わらず、成就
されるように機能すること。教師の期待が、児童の学習成績を左右する
教師期待効果で知られる。
他者の影響
社会的促進
習熟した課題や単純な課題を遂行する時、見物者や共行動者が存在する
オールポート
ことにより、個人の作業効率が促進される現象。
社会的抑制
未学習課題や複雑課題を遂行する時、他者から見られていたり、他者も
同時に遂行していたりすると、個人の作業効率が劣化する現象。
PM理論
社会的手抜き
集団で協同作業を行う時、一人当りが投与する作業への遂行量が、人数
(社会的怠惰)
が多くなるほど低下する現象。
三隅二不二によって提唱されたリーダーシップ理論。集団機能の視点からリーダーシップの
類型化を試みた。
P機能
集団目標を明確にし、計画・方法を具体化し、仕事の遂行に向けてメンバー
目標達成機能
を動機付け、結果を評価し、集団固有の目標追求と作業の実現を促進する働
き。
M機能
メンバーの意見や不満に耳を傾け、メンバー間のコミュニケーションや人間
集団維持機能
関係を良好に保ち、集団の魅力や士気を高め、集団をまとめ維持する働き。
高
pM型
PM型
M次元 低
pm型
Pm型
低
P次元
高
P機能とM機能のそれぞれの高低の組み合わせで 4 群に分類し、集団効果(生産性、事故率、
メンバーの満足度等)を部下に評定させて平均点を比較したところ、いずれもPM型が効果
的で、pm 型が最低であった。
人の成長・発達と心理
発達の定義
心身の構造と機能の量的・質的な変容現象
成長―発育に伴う系列的・量的増加⇒発達曲線で表す
発達―統合的・質的変化(特定の心的機能が発生する過程)⇒発達段階で表す
発達段階
発達の規定要因
遺伝と環境、成熟と学習
スカモンの発達曲線
リンパ系、一般系、神経系、生殖系
ピアジェ
認知の機能が質的に変化する過程を包括的に理論化した。
感覚運動期
(0~2歳)
新生児:循環反応の時期
9ヶ月:対象の永続性が確立
前操作期
(2~7歳) 象徴機能・表象機能:言語やイメージを扱う
自己中心性。
具体的操作期(7~11 歳) 系列化・分類・保存性の操作を理解
形式的操作期(11 歳以降) 組合わせ思考・関連要因の発見・比例概念
アイデンティ
エリクソン
ライフ・サイクルを8段階に分け、それぞれの段階における発達課題(心理社
漸成説
会的危機)をどのように解決するかによって、パーソナリティの在り方を説明。
定義
ティ
段階
フロイト
発達課題
乳児期(0~1)
口唇期
信頼
対 不信
幼児期(1~3)
肛門期
自律性
対 恥・疑惑
遊戯期(3~6)
男根期
積極性
対 罪悪感
学齢期(6~12)
潜伏期
勤勉性
対 劣等感
青年期(12~20)
性器期
同一性
対 同一性拡散
初期成人期
親密性
対 孤立
成人期(30~
生殖性
対 停滞
成熟期(65~
自我統合 対 嫌悪・絶望
「過去から将来にいたる時間の中で自分は一貫して自分であり、しかも社会的
関係の中で認められている」という「自分は自分である」との感覚。
「時間的な自己の同一と連続性の認識」および「他者が自己の同一と連続性を
認知していることへの認識」という2つの認識が得られることで成立する。
アイデンテ
危機―自らの意見や態度を決定するための葛藤を経験しているか
ィティ地位
傾倒―その領域への積極的な関与がみられるか
マーシャ
の2点を基準に、アイデンティティを4つの地位に評定分類する
地位
危機
傾倒
同一性達成
経験した
している
迷った末、自分自身の解決に達した。
モラトリアム
最中
途中
迷っている最中
早期完了
経験しな
している
自分の目標と親の目標の間に不協和
い
状態
がなく、幼児期以来の信念を補強する
だけで自分の生き方を決めている。
同一性拡散
経験して
していな
何を考えたら良いかもわからない状
いない
い
態
経験した
している
無限の可能性を感じながら、可能なま
まにするため、何も実行しない状態
アタッチメン
二次的動因説―生理的欲求(動因)がまず基本的・一次的なものとしてあり、そこから派生し
ト
て、二次的に親子の情緒的絆が生じたとする。
これに対し、
「対象希求性」は生得的・一次的に備わっている
ハーロウ アカゲサル実験
古典的には、親子の情緒的絆は、基本的・一次的な生理的欲
求(動因)が満たされることで二次的に派生したとされた(二
生後間もない子ザルを母親か
次的動因説)。
ら分離し、
しかし、実験の結果、子ザルはミルクを飲む時以外、金属製
ミルクを与えてくれる金属製
の代理母には近づかず、大半の時間を毛布性の代理母と過ご
の代理母と、
した。
ミルクは与えないが毛布でで
このことは、「対象希求性」が生得的・一次的に備わってい
きた代理母のいる状況に置く。 ることを示唆する。
ボウルビー
一次的性質をもった対象希求性は、人間の幼児にも備わっているとして、
「愛着」の定義
「特定個体との近接を求め、またそれを維持しようとする傾向、あるい
はその結果確立される情緒的絆そのもの」を愛着と呼んだ。
愛着スタイル
Aタイプ(回避型)
親がいなくなってもさほど混乱せず、
親が戻って来てもあまり喜ばない。
エインズワース
Bタイプ(安定型)
ストレンジ・シチ
親がいなくなると混乱するが、
再会すると喜んで親に身体接触を求める。
ュエーション法
Cタイプ(アンビバレ
親がいなくなると混乱し、
(親との分離と再
ント型)
再会しても落ち着かず、親を求めながら激しい怒
会の場面を設定)
りを向ける。
心理検査
ビネー式…田中・ビネー式、鈴木・ビネー式
個別検査
ウェクスラー式…WPPSI(低年齢用)
、WISC-Ⅲ(児童用)、 WAIS-Ⅲ(成人用)
その他…コース立方体組合せテスト、グッドイナフ人物画検査(DAM)
、
知能検査
桐原式人物画検査など
A(α)式(言語式)
集団検査
B(β)式(非言語式)
C(αβ)式(言語・非言語式)
学力検査
通年式…総合的、教科別、領域別
学年式…総合的、教科別、領域別
絵を利用する方法…ロールシャッハ・テスト、
投影法…
個別検査
絵画統覚検査(TAT,CAT)など
遊びを利用する方法…ドール・プレイ、遊戯法など
質問紙法…幼児・児童性格検査、不安傾向診断検査など
人格検査
質問紙法…ミネソタ多面人格検査目録(MMPI)、YGPI(矢田部ギルフォード
性格検査)
、16人格因子(16PF)検査、日本版 CMI、
東大版エゴグラム、5因子性格検査(FFPQ)など
心
絵を利用する方法…ロールシャッハ・テスト、家・木・人物画
理
集団検査
検
(HTP)テスト、樹木画(バウム)テスト、
投影法…
TAT、星と波テスト、風景構成法、
査
動的家族画テスト(KFD)など
文章を利用する方法…文章完成テスト(SCT)など
絵と文を利用する方法…絵画―欲求不満検査(PF スタディ)
作業検査法…内田クレペリン精神作業検査など
適性検査
個別検査…職業適性検査など
集団検査 質問紙法…職業適性検査、職業興味検査、音楽素質検査など
作業検査法…内田クレペリン精神作業検査など
感覚・運動機能検査 ……視力検査、色盲検査、聴力検査、運動能力発達検査、
フロステッグ視知覚発達検査、ベンダー・ゲシュタルト検査など
高次神経機能検査
……標準失語症検査(SLTA)、先行・失認検査、言語能力診断(ITPA)検査、
絵画語彙発達検査(PVT)など
発達検査・その他
……新版K式発達検査 2001、MCC ベビーテスト、遠城寺式・乳幼児分析的発達検
査、津守・稲毛式乳幼児精神発達検査、社会成熟度診断検査、適応行動尺度
(ABS)、ソシオメトリック・テスト、KIDS 乳幼児発達検査、社会的再適応評
価尺度、ローカス・オブ・コントロール(LOC)、長谷川式認知症スケール
(HDS-R)など
人格検査
質問紙法
YGPI
背景
人格特性論の立場から因子分析によって人格特性を抽出、人格目録を作成。
(矢田部ギルフォード
対象
学童用、中学用、高校用、一般用とあり、対象範囲が広い
性格検査)
尺度
D~Sの 12 特性、各 10 項目の全 120 項目
① 経質、②抑うつ性、③劣等感、④客観性、⑤回帰性、⑥協調性、⑦思考
的外向、⑧支配性、⑨社会的内向、⑩のんきさ、⑪一般的活動性、⑫攻
撃性
結果
特性論的な解釈を行うだけでなく、全体的プロフィールの傾向から、
「A型・
平均型」
「B型・情緒不安積極型」
「C型・安定消極型」
「D型・安定積極型」
「E型・情緒不安消極型の5類型に分類できる。
特徴
個人の性格類型や性格の全体像を把握し,その結果を将来における教育・臨
床・産業などの実際面に役立てることができる。回答者の意図的な反応歪曲
に弱いという欠点がある。
MMPI
背景
1943 年ミネソタ大学でハサウェイとマッキンリーによって開発
(Minnesota
対象
15 歳から成人。精神科病院など臨床場面で用いられる。
Multiphasic
尺度
550 項目。
「妥当性尺度」と「臨床尺度」に分かれている。
Personality
「妥当性尺度」は、回答の歪曲や虚偽など、結果の信頼性や妥当性を検討。
Inventory:ミネソタ多
「臨床尺度」は 10 尺度からなり、下位尺度のみ目的別に使用できる。
面式人格目録)
特徴
項目数が多く時間がかかるため、被検査者への負担が大きい。
CMI
背景
コーネル大学で考案された心身両面の自覚症状をチェックする調査票。
(Cornell
対象
14 歳から成人まで。男女別。
Medical Index:
尺度
男性 211 項目、女性 213 項目。
コーネル・メディカ
身体的自覚症:A(目と耳)~L(習慣)までの 12 の身体機能に関わる質問
ル・インデックス)
精神的自覚症:M(不適応)~R(緊張)までの6つの精神症状に関わる質問
結果
身体的自覚症の質問に対する出現頻度を縦軸、
精神的自覚症の質問に対する出現頻度を横軸とする神経症判別図を作成、以
下の4つの領域に分類して神経症のスクリーニングを実施できる。
領域Ⅰ:心理的に正常と判定できる範囲
領域Ⅱ:どちらかといえば心理的正常の範囲
領域Ⅲ:どちらかといえば神経症の範囲
領域Ⅳ:神経症と判定できる範囲
投影法
ロールシャッハ・
背景
精神科医ロールシャッハによって考案されたテスト
テスト
対象
幼児から成人まで
尺度
「インクのしみ」をテスト図版(10 枚)とし、何に見えるか尋ねる。
自由反応段階と質問段階から成る。
結果
結果を分類集計し、被検査者の人格や心理状態を評価・解釈する。
特徴
人格の構造的側面からの適応をとらえる。
検査者の訓練と経験を必要とする。
TAT
背景
モルガンとマレーの「欲求」
「圧力」理論に基づいて人格の特徴を診断する。
(Thematic
対象
児童版として CAT(児童用絵画統覚検査;登場人物に動物が描かれている)が
Apperception
Test:主題統覚検
ある。
尺度
査)
多義的に見ることができる場面が描かれた絵画 30 枚と白紙 1 枚。
図版を提示し、自由に空想の物語をつくるよう求める。
結果
「欲求」と「圧力」の力動的構造(主題)を通して人格を理解する。
「欲求」―個人に行動を起こさせるような内発的な力
「圧力」―環境が個人に与える影響力
特徴
欲求、葛藤、対人関係など、心理社会的な側面の適応をとらえる。
PFスタディ
背景
アメリカの精神分析学者ローゼンツァイクが開発
(Picture-Frustra
尺度
被検査者に日常生活で経験するであろう欲求不満場面が描かれた絵 24 枚を
tion Study : 絵 画
欲求不満検査)
提示し、登場人物が何と答えるかを絵の「吹き出し」に書きこむ。
結果
マニュアルに従って分類され、被検査者の反応が「アグレッション(攻撃性)」
の「方向(他責・自責・無責)」と「型(障害優位・自我防衛・要求固執)
」組
合わせによって9通りに分けられる。
作業法
内田クレペリン精
背景
ドイツの精神科医クレペリンが考案した連続加算法を内田勇三郎が再構成。
神作業検査
対象
幼児型、児童型、標準型(中学 1 年~成人)と適用範囲が広い。
尺度
1行 1 分間、1桁の足し算を連続して 15 分間行い、5 分休憩して後半 15 分
の作業を行う。
結果
連続した単純な精神作業を行ったときの作業量の変化から
モチベーション度、緊張の持続度、注意集中度、疲労度、休憩の効果などの
側面が評価され、人格の診断が行われる。
特徴
被検査者の意図的な操作が入りにくい。
集団で多数の人にスクリーニングできる。
発達検査
遠城寺式・乳幼児分析
特徴
的発達検査
子供の発達を各機能に分析して測定する。心身障害児の状態、発達の様相を
短時間に明らかに診断し得るし、健常児にあっては、特長を明白にし、指導
の基礎資料を得るのに便利である。
対象
0歳から4歳7か月
尺度
運動(移動運動と手の運動)、社会性(基本習慣と対人関係)
、言語(発語と
言語理解)の6つの軸によって発達を測定
結果の
すべての問題について年齢ごとの通過率が示されている。領域ごとに発達の
処理
プロフィールを図示できる。グラフは上の項目ほど年齢が高くなり、それぞ
れの機能の発達を記入し、折れ線で結ぶ。
KIDS乳幼児発達
特徴
検査
乳幼児の自然な行動全般から発達を捉えることができ、場所・時間の制限を
受けずにどこでも短時間で診断できる。
対象
0歳1か月~6歳11か月
Aタイプ
(0 歳 1 ヶ月から 11 カ月)、
Bタイプ(1歳 0 か月から 2 歳 11 か月)、
Cタイプ(3 歳 0 か月から 6 歳 11 か月)
、Tタイプ(発達遅滞児用)
尺度
運動、操作、理解言語、表出言語、概念、対子ども社会性、対成人社会性、
しつけ、食事 の9領域 130 項目について、保護者など、乳幼児の日ごろの
行動をよく知っている人が○×で回答する。
結果の
領域ごとに○の数を集計するだけで、
処理
1.領域別発達プロフィール
2.領域別発達年齢・総合発達年齢
3.領域別発達指数・総合発達指数
が簡単に求められる。
新版K式発達検査
尺度
2001
移動運動、手の運動、基本的欲求、対人関係、発話、理解の6領域
293 項目
結果
姿勢―運動、認知―適応、言語―社会の3領域の観点から、
発達年齢(DA)および発達指数(DQ)、発達プロフィールを作成する。
K-ABC
特徴
子どもの認知処理過程を,継次処理・同時処理の枠組みで測定するとともに,
(Kaufman-Assessment
知識・技能の習得度を,知能とは区別して測定することで、子どもの指導・
Batteryfor Children)
教育(特別支援教育)に活かすことを目的としている。
対象
2歳6か月~12 歳 11 か月
尺度
認知処理尺度(①魔法の窓、②顔さがし、③手の動作、④絵の統合、⑤数唱、
⑥模様の構成、⑦語の配列、⑧視覚類推、⑨位置さがし)
習得度尺度(①表現ごい、②算数、③なぞなぞ、④ことばの読み、⑤文の理
解)
ITPA
特徴
Osgood の意味論をモデルに、言語性能力を評価する。コミュニケーション
(言語学習能力診断検
に必要な心理的機能を測定する。LD児やことばの発達に遅れがある子ども
査)
の診断と治療教育に力を発揮する。
対象
3歳~9歳 11 か月
尺度
表象水準(受容能力、連合能力、表出能力)
自動水準(構成能力、配列記憶能力)など
①ことばの理解、②絵の理解、③形の記憶、④ことばの類推、⑤数の記憶、
⑥絵の類推、⑦絵さがし、⑧ことばの表現、⑨文の構成、⑩動作の表現
BGT
特徴と
視覚・運動形態機能を測定する。児童に対して行えば、発達障害のスクリー
(ベンダー・ゲシュタ
対象
ニングに活用でき、成人に対して行うと、視覚や運動機能の障害、大脳の器
ルト・テスト)
質的損傷の診断が可能。
尺度
点や直線、曲線、円、閉合図形などの絵を組み合わせた9枚の図形
①ボッ点・小円、②小円・ボッ点、③行列、④接触・交錯、⑤曲線図形、⑥
対象、⑦角、⑧不必要、⑨その他
結果の
1枚ずつ模写させ、その描写の正確さ、混乱度、描画方法などに基づいて得
処理
点化される。
ストレスとストレッサー
ストレス
身体的健康や心理的幸福感を脅かすと知覚される出来事。そうした出来事を「ストレッ
サー」と呼び、ストレッサーに対する人々の反応を「ストレス反応」という。
セリエの反応
ストレス時の適応状態の様子を3段階に分類したもの
警告反応期
ショック相 ―体温低下、低血圧、低血糖、胃腸のびらんなど
反ショック相―体温上昇、血圧・血糖上昇、副腎皮質の拡大など
抵抗期
外界からの刺激に対して生体の適応ができている状態(悪性刺激に
対する抵抗力ができる代わりに、刺激全般への抵抗力は低下する)
疲弊期
外界からの刺激が長期間生体に働いた結果、生体のエネルギーが限
界に達し、体重減少、副腎の委縮、胃潰瘍などを併発し、死に至る
キャノン
恒常性維持
なんらかのストレスがかかっても生体内の環境を常に一定に保とう
とする働き
緊急反応説
緊急時における身体反応に交感神経―副腎系が深く関係することか
ら、ストレスによる身体反応の特徴をとらえ、心と身体の関係を示
した。
(心拍数の増加、唾液の分泌減少、瞳孔拡大など)
闘争―逃走反応
ストレス時に生命を保つためにあえて恒常性維持を行わず、攻撃行
動や闘争行動の準備状態をつくること。呼吸を深くする、血圧を上
げるなど。
ストレスから回復するための資源
コーピング
ストレス反応を少しでも減らそうとする意識的な水準の対処過程。
⇔無意識的な水準の対処過程は「防衛機制」
問題焦点型コーピング
ストレスフルな状況そのものを直接的に変革していこうと
する対処方略。
情動焦点型コーピング
ストレッサーによってもたらされる情動を統制、軽減しよう
とする対処方略。
ソーシャル・サポ
その人を取り巻く重要な他者(家族、友人、同僚、専門家)から得られるさまざまな援助。
ート
情緒的サポート
慰めや励まし。 例)「大変ですね」
評価的サポート
サポートの受け手の態度・問題処理手段などについての評価
例)
「よく一人でガマンをなさいましたね、粘り強いですね」
道具的サポート
問題処理に対する具体的・実際的な援助を行うこと
例)ごみの処理ができない人の家に行って片づける
情報的サポート
問題処理に役立つ情報の提供
例)相談窓口の電話番号を伝える
制御可能性
ストレッサーを生じさせることを私たちがどの程度コントロールできるかという認識
予測可能性
ある出来事が起こるのかどうか、それがいつ起こるのかを予測することができること
ストレスと性格特性
ハーディネス
ストレスに直面しても、身体的、情動的に健康を損なうことが少ない人の性格
タイプA行動パターン
1959 年にフリードマンとローゼンマンが提唱した行動パターン。
①完璧主義、②競争的、③功名心、④過敏性、⑤攻撃性、⑥敵意性
などで、なかでも敵意性が高い群は冠状動脈疾患の発病率が高い。
ストレス症状
アパシー
ストレス状態が続き、それに対してうまく対処することができない場合に陥る心理状態。
学習性無力感
対処できない嫌な出来事を体験すると、アパシーに陥る
バーンアウト(燃
「極度の身体疲労と感情の枯渇を示す症候群(マスラック C.Maslach)」
え尽き症候群)
仕事への気力を失い、心身ともに疲労した不適応状態(以下の症状)を指す。
①情緒的消耗感、②対象者と距離をおく姿勢、③目的意識や責任感の喪失、④個人的達
成感の低下
心理的障害
適応障害
はっきりと同定されるストレス因子に対する心理的反応。ストレス因子の開始から3か
月以内に出現する情緒的・行動的反応。抑うつ気分、不安、抑うつと不安の混合、行為
障害(無断欠席、無謀運転)、情緒と行為の障害の混合などがある。
気分障害
うつ状態(うつ病)
抑うつ気分、思考停止、意欲低下、睡眠障害、食欲減退などがあ
り、希死念慮がみられる
躁状態(双極性障害) 高揚気分、易興奮的、観念奔逸、性的・金銭的逸脱行為など
統合失調症
空想や妄想に支配された内観的世界に陥るという特性をもつ。
【陽性症状】幻覚、妄想、思考滅裂など
【陰性症状】自発性低下、ひきこもりなど
抗精神病薬による治療と心理療法による対応が原則。
PTSD(外傷後
著しい恐怖体験や破局的ストレスによって、悪夢やフラッシュバックなどの特徴的なス
ストレス障害)
トレス反応が発言すること。通常外傷を受けてから3か月以内に始まり、数か月、ある
いは数年後に現れることがある。
外傷直後の症状は、急性ストレス障害と呼ぶ。
不安神経症
漠然とした不安に支配される症状。不安発作を伴う場合がある。
強迫神経症
不合理な強迫観念とそれによる強迫行為にとらわれた状態になる。
解離性(転換性)障
麻痺や失声などといった身体的症状や、健忘や多重人格といった精神的な症状を形成す
害
る。
離人症
自己・外界・身体について非現実感をもつようになる状態。
アルコール依存症
ストレス解消のために活用されるアルコールの習慣的常習により、精神的・身体的に依
存するようになった状態。離脱状態に意識障害、幻覚、全身の震えが出る振戦せん妄を
引き起こすことがある。
心理療法
理論に基づく分類
療法
来談者中心療法
病理論
自己不一致
(ロジャース)
治療の原理
セラピストの必要十分条件
技法
感情の反射、表明内容の繰り返し、感情
自己一致(純粋性)
、無条件の肯 の明確化、
定的関心、共感的理解
精神分析
葛藤の無意識下
無意識の意識化(洞察)
自由連想法
(フロイト)
への抑圧
行動療法
誤学習の結果身
再学習
*古典的条件付け(系統的脱感作)
(学習理論)
についたもの
望ましい行動・症状の強化
*オペラント条件付け(シェイピング・
望ましくない行動・症状の消去
トークン法)
*社会的学習理論(モデリング)
認知療法
認知のゆがみ
(A.T.べック)
個人の思考様式(自動思考)や
①問題点の洗い出しと治療法の選択
認知プロセス(スキーマ)の変
⇒②認知のゆがみの修正
容を通して情緒面・行動面の問
⇒③スキーマの修正
題を解決する。
論理療法
非合理な信念
ABCシェマの構造を知り、非
A(出来事)⇒B(信念)⇒C(結果)
(A.エリス)
(イラショナル
合理な信念に代わって、問題を
ビリーフ)
軽くする合理的な信念を用い
⇒D(論争)を行い、
るように勧める
⇒E(効果)を獲得する
Bに非合理な信念がある場合
動作療法
動作体験を通して、日常生活に 動作とは、【主体的に動かそうとする意
(成瀬悟策)
おける情動体験や認知的体験
図⇒努力⇒身体運動のフィードバック】
等、クライエントの体験の仕方
など心理的活動が実現化した一連のプ
が変わるように、クライエント
ロセス。身体運動に伴う新たな「自体感」
の心の活動に働きかける方法。 の体験が、新たな自己の経験につながる
ブリーフ・サイ
短期間に問題の解決を行おうとする心理療法。
コセラピー
問題志向
問題は、クライエントとその人と関わっている人たちの行動によって維
アプローチ
持されていると考え、問題維持行動の変容を目指す。
「なぜ起こったか」過去の原因ではなく、「どうして問題が続いている
か」
、現在と未来の適応に焦点化する。
解決志向
初めから解決に焦点を当て、クライエントの内的資源を引き出す。
アプローチ
「問題解決したらどうなるか」
「問題が起こる前はどうだったか」に関心
を向け、対処の手掛かりを得るアプローチ。
対象者に基づく分類
SST
精神科リハビリテーション、精神科病院に長期入院した人の社会復帰、障害者施設の教育
(社会生活技能
指導などに用いられる認知行動療法の一つ。
訓練)
社会的技能、とくに対人関係場面での対応の仕方について困難性をもつ人への技能の学習
訓練。社会生活上だれもが体験するような場面設定でロールプレイを行い、適切な対応を
スモールステップで習得する。
家族療法
家族を、その構成員が相互に影響し合う一つのシステムであるととらえる療法。クライエ
ントの症状を、家族全体を代表して問題を表現していると考え、IP(Identified-Patient)
と呼ぶ。
表現媒体に基づく分類
遊戯療法
言語によっては十分に表現するに至らないクライエントに対し、遊びを主な表現、コミュ
ニケーションの手段とする心理療法。
アンナ・フロイト
大人に対して行う精神分析を子どもに適用することはできないとし
て、
「遊び」を、子どもとセラピストがラポール形成するための導入技
法ととらえた。
クライン
大人に対する分析は子どもにも適用できるとして、
「遊び」を自由連想
の代わりとしてとらえ、母子関係を分析する対象とした。
アクスライン
クライエント中心療法の立場から発展、8原則を提示
①ラポール、②あるがままの受容、③許容的雰囲気、④情緒的な反射、
⑤子どもに自信と責任、⑥非指示的態度、⑦待つ、⑧必要な制限
箱庭療法
保護された空間の中でクライエントが心象イメージを自由に箱庭内につくり、箱庭にみら
れるテーマを系統的に理解する方法。子どもから大人にまで適用される。
心理劇
モレノによって創始された即興劇を用いた集団心理療法。集団における相互の対人関係や
個人の自発性、創造性の発展を促す。
①ウォーミングアップ⇒②劇化⇒③シェアリングの3段階で進められる。
構成要素 ①監督、②補助自我、③演者、④観客、⑤舞台