最近郊外の大規模開発による住宅地の売れ 行きが悪い。 住宅

鰹
︾
・紙.凝
磁
ミニ開発と街つくり
ミニ開発をどう考えるか
奮麗..
はじめに磯・・
最近郊外の大規模開発による住宅地の売れ
行きが悪い。住宅・都市整備公団の住宅建設の
郊外団地からの撤退や、大手デベロッパーに
よる事業の凍結や、スケジュールの大幅な遅
滞などが示すように、事業の見直しがおこな
われている(写真1)。一方、都心外延部では、
いわゆるミニ開発が比較的好調に売れている。
相続税対策による土地の譲渡や分割、大手企
写真1事業が進まない郊外団地(茨城県利根町)
業の決算対策などによる寮や社宅用地の譲渡
など1000m2前後の土地が市場に出回ってい
る。こうした小規模な用地をさらに狭小に分
割し、建て売り住宅を建て、販売している例
は多い(写真2)。ユーザーは少々高く狭くて
も都心に近い住宅を購入するか、通勤に1時間
半はたっぷりかかるが環境の良い郊外住宅を
(%)
P00
獅
0 0 0 0 08 6 4 2
写真2狭小住宅の建ち並ぶミニ開発(東京都)
、
い 、
竅A 、 、一一一一
一20
、 、
’
@F
1984 85 86 87 88 89 90 91
92
eF
ュし=
一40
Vノ∼
∼一一『=二一ニニ 一 一
\\
魑
93
94
95 96
(年}
(注)各年1月1日、7月1日時点の前年比変動率
(資料)国土庁「地価公示」「都道府県地価調査」
写真3デザインの凝ったファサード(横浜市鶴見区)
図1地価の推移
50
家とまちなみ38
1998.9
選ぶかであるが、これは本人のライフスタイ
ミニ開発の二二
ルや子供の年齢などによって決める場合が多
い。いま郊外に比べ都心に近いミニ開発が好
調なのは、相対的に地価が下がり購入しやす
〈定義〉
くなったのが第一の原因であろう(図1)。バブ
まず最初にミニ開発とは何かという定義を
ル経済のピークであった90年前後は1億円を
整理しておきたいと思う。一般には開発面積
優に越さないと、便利なところは購入できな
と宅地規模から定義される。ミニ開発という
かった。もちろん郊外の大規模団地でも
言葉から、開発そのものの規模が間題ではあ
5000万円以上の物件はざらであり、全体的
るが、50坪以上の住宅を2∼3棟建てたもの
藤田淑宏
(ふじた よしひろ)
アーキ・アイ計画事務所
に高価格であった。環境を買うか、便利さを
は、都心では密度感もなく除外したい。また
買うか、良く議論のあるところであるが、物
いわゆる木賃アパートなどの借家も環境はい
件量の少なさもあって、都市型ミニ開発のニ
いとはいえないが除外する。本稿では都区内
1971年早稲田大学建築学科
ーズには根強いものがある。
及びその外延部にある、一つは開発行為の規
卒業。1973年同大学院修
実は筆者にも最近ミニ開発団地の依頼が多
制にかからない500m2未満(行政によっては
代表取締役社長
1947年横浜市生まれ。
士課程修了。同年佐藤武夫
設計事務所入所(現佐藤総
くなってきた。ミニ開発と聞いただけでプラ
1,000m2未満)の敷地で、一宅地が住宅金融公
ンナーや建築家などは嫌悪感を感じるもので
庫の最低基準である100m2未満の規模のもの
及び公共建築の計画設計を
ある。事実、筆者も抵抗があった。それは我
を指す。駅から徒歩圏の既成市街地にある一
担当。1975∼76年西欧の
が家の近くでも、街なみを魅力的に見せてき
戸建分譲住宅で、一般に地場の開発業者が行
都市及び建築を視察。
たお屋敷が、相続税対策のもと、無残にもい
うものであり、用地は個人のお屋敷の相続税
くつもの宅地に分割され、今までとは比べる
対策による譲渡の場合が多い(写真4)。もう
べくもない、ケバケバしい住宅が軒をつらね
一つは開発行為にはかかり、500m2以上
合計画)再開発、地域計画
1976年日本新都市開発(株)
入社。ニュータウンの計画
及び一戸建て住宅、集合住
宅、関連施設設計を担当。
るのを目の当たりに見るからである(写真3)。
主に担当したプロジェクト
もとより樹齢50年以上の庭にある大木など跡
筑波研究学園都市研究団地
基本計画、仙台青葉スクエ
形もなく、家を建てたわずかな残りの空地も
アー再開発基本計画、鳩山
すべてコンクリートにおおわれ、カーポート
ニュータウン全体計画(埼
スペースにとられている。お屋敷町であれば
玉県景観賞)、市原緑園都
市住宅街並み計画(千葉県
あるほどこうした現象は深刻で、有名住宅地
街並み景観賞)エステアベ
も最低宅地面積を規制したり、何らかの防衛
ニュー所沢全体計画(埼玉
謹
はするものの焼石に水で、町全体が劣化して
いく。本稿では、こうした状況がどうしてつ
県景観賞)、南栗橋豊田地
区住宅街区設計(埼玉県景
観賞)、ウッドパーク11q季
くりだされたのかを考え、新しい一戸建都市
型住居の可能性を探ろうと思う。
の丘住宅街並み計画(千葉
写真4お屋敷の跡地がミニ開発に(東京都大田区)
県街並み景観賞)
1・構造
:規模
﹁
1
1
1
:木造2階
:50−60
1
1容積60%
:●LD12−16畳 主寝室10−12畳
1●外観 スタッコ、リシン
:3000万一
5LDK 2世帯老人同居
: : :
’5000万﹁
:
1種低層住居
1
:●4LDK+d
: ::
30K−50K圏
o
:30−40
: : : :
: : : :
(NT型)
:建物(坪)
:
1土地(坪)
郊外型
II価格
脚
伽
r一璽卿一一輯鴨「『曹層需一一冒一一「
脚
:
1プラン特性
幽
住形式
パルコニィー 出窓
2台駐車 生け垣
:●外構
1
﹁
1
1
1
1
■
1
1
: : :
:
: : :
スタッコ、リシン
サイデングバルコニィー 出窓
lI●外構 1台駐車 生け垣
:5000万一
17000万1
4DK DK8畳以上LDK一体型
:●外観
1
h5−20
,
:●居室6畳
﹁
:容積100%
1
1
:20−40
タイル、石張
●1台組み込み駐車
1・屋上利用
11億
1
,
1
臣,●外観
,
1
1
:5000万一
,
1
1
1
1
:●3LDK 4DK 4LDK ホール型
:・LDK一体型 ホール型 北部屋在
:
1
1
1
︸ : :
:容積150%
: : :
1木造3階
1鉄骨3階
:RC3階
■
:●4LDK
監
鵬
:25−30
1
﹁
準工業
﹁
1種住居
商業
1
8
1
1
: :
1、2種中高層住
:25−30
: : : :
1、2種低層住居
:木造2階
: :
都心型5−10K圏
1
:
10−20K圏
1、2種低層住居
準工業
1
: : ﹁:
開発
1
●
﹁
外延部型
酢
,
ミニ
1
1
1
1
1
表1郊外型と都市型ミニ開発の比較
家とまちなみ38
1998.9
51
2階
1階
土地 100.04m2
建物 9480m2
図2外延部のミニ開発住宅プラン(東京都世田谷区) 出典:週刊住宅情報H101/21
1,000m2前後のいわゆる小規模開発に該当す
メージすれば良い。敷地規模は60坪、建物は
るもので、宅地規模は公庫の最早基準は満た
4LDKで35坪ほどであり、「環境のととのっ
している場合である。大規模宅地の分割や農
た緑:豊かなニュータウン」といったキャッチコピ
地の転用、企業の寮や社宅の跡地を利用して
ーが目に入る。一方都市型は、いわいるミニ
開発したものが多く、中には1,000m2を大き
開発住宅で100m2前後の郊外型ミニ版といっ
く越え全体で10戸以上あり、中央に道路をつ
た大田区、世田谷区、杉並区、練馬区といった
くり、両側に家が建ち並ぶものもある。
区部外延部やそれらに隣接した区域に建つタ
イプと(図2)、木造3階建てを主流にした山
〈位置づけ〉
手線内の都心部に建つタイプに分けられる(図
一戸建住宅は様々な形態があり、同一エリ
3)。郊外の一戸建は容積率が60%程度であ
アの中にも混在しているの実態であるが、現
るが、外延部は100%、都心部は150%と土
在、新規に供給されている住宅は大きく郊外
地価格を反映している。都市居住には共同住
型と都市型に分かれる(表1)。郊外型は別名田
宅としては、マンションやタウンハウスなどがあ
園型とも呼ばれ大規模団地に象徴されるよう
るが、一戸建ミニ団地を筆者は「集合戸建」や
に、環境にめぐまれた広々とした一戸建をイ
「都市阿戸建」といった名前で位置付けている。
洋室 洋室
@ 5.57畳
6.63畳
〈アーバンライフより地縁制〉
今、なぜ多くの企業がミニ開発に参入した
3階
かというと端的にいってそこにニーズがある
からである。つまり都市部における一戸建高
密度住居はある意味では支持されている。環
境を標榜したタウンハウスが(写真5)、わず
LDK
か10年あまりで衰退したのと比べると根強い
13.76畳
人気を感じる。なにが人気を支えているのか。
2階
7000万円前後であれば庶民にとってはそこ
そこの値段ではない。確かに郊外に比べ都心
玄関
洋室
5.58畳
に近く、いわいる徒歩圏で利便性が良い。小
さいながらも一戸建であれば、デフレ時代の
今であっても、今までのトレンドから、いく
1階平面図
図3都心部のミニ開発住宅プラン 出典:週刊住宅情報
H101/21
52
家とまちなみ38 ↑998.9
らかの資産価値とその上昇が長期的に期待で
きると思うのもうなずける。しかし、街づく
り形成からみると、郊外ニュータウンや都心
畷麟蜘.
写真5近郊のタウンハウス(埼玉県所沢市)
写真6半値で買える郊外の住宅地(茨城県阿見町)
の集合住宅と比べ、どうみても魅力的とは言
けである(写真7)。考えみるとこうした区部
い難い。郊外ニュータウンでは半額で良い環
外延部は以前は立派な郊外であった。つまり
境が手にはいる(写真6)。同じ価格であれば、
都市部の著しい人口流入による住宅不足が住
都心のマンションのほうが環境や利便性も良
宅立地を外へ外へと圧し広げた結果、郊外が
いし、いかにもアーバンライフを楽しめそう
都市部に変わってしまったため、地価が上昇
である。このようにみてみると、購入者は郊
し、本来郊外住宅地として需要のあった地域
外の住宅地や都心のマンションと比較してい
に新たな供給がされなくなったため、その受
るだけでもなさそうである。となれば何が購
け皿としてミニ開発が出来たとも考えられる。
入の動機なのだろう。購入者の前住所をみれ
いずれにしろ高密度で環境の良いとはいえな
ば明らかである。つまり地縁性である。親が
い物件がそれなりの市場を形成しているとい
近くに住んでいるとか、前々から近くに住ん
うことは、裏をかえせば対抗する物件がなく
でおり、住み慣れた所から離れたくないと思
選択の余地がないということになる。
う需要層は多い。宣伝方法にもよるが、多く
が同じ区内から購入している。つまり商品の
魅力だけで売れているわけではない。利便性、
地縁性、一戸建、の三つで売れる。それとも
うひとつはその所在地のネームバリューが要
まちなみを著しくそこねたり、高密度によ
因である。いくらすばらしい郊外団地に引っ
る居住環境の劣化を招くミニ開発は、いわゆ
越しても、転居通知に何々郡何々町などと書
る都市部における木造賃貸アパートと並び称
きにくいといった見栄をはる人達は案外多い
せられ、街づくりを破壊する元凶のようにお
ものである。どんな住まいでも東京都世田谷
もわれている。関西に名をはせる「文化住宅」
区と書きたい人達も多い。ネームバリューが
ほどではないものの(写真8)、首都圏でも高
あるというのは、歴史ある文化施設や、公園
密度一戸建住居は年々その敷地規模を縮小さ
などがあり、お屋敷のある邸宅街などが知ら
せ既成市街地をむしばんでいる。
れており、メディアで頻繁に紹介されている
ということである。皮肉にもぞうしたお屋敷
〈供給者側の変化〉
が実はミニ開発のターゲットになっているわ
ミニ開発はいままでは公的機関はもとより
」薩
写真7緑豊かなお屋敷(東京都世田谷区)
写真8軒のつらなる文化住宅(大阪)
家とまちなみ38 1998.9
53
大手デベロッパーは手をださず、専ら地場の
過ぎるファサードが連続しており、とても美
業者が造っていた。したがって開発逃れや違
しいとはいえない。そこには集合住宅の都市
法建築も多々見受けられる。ましてやまちな
的景観や郊外一戸建団地に見る豊かな景観と
みをつくるといった意識も資力もなかった。
は疎遠なまちなみがある。100m2を下回る敷
しかし、近年は大手デベロッパーがこの分野
地ではさらに厳しい条件である。こうしたミ
に参入しだしてから、別の意味でミニ開発が
ニ開発は本来、住宅あるいは住宅地として良
論じられるようになった。彼らは都市日戸建
質なストックとして形成されていたはずのお
住居として、地場業者が手を出しにくい大手
屋敷街を、到底良質なストックとはいえない
企業の社宅用地1000m2前後の土地を手当し、
住宅地に変質させていくのである。
公庫の最低基準を上回る100m2以上の敷地に
30坪程の住宅を建て、価格も知名度と信用力
〈行政区の指導の限界〉
で1000万ほど高く販売しているのが常であ
ではこうした状況にたいし行政側はどう対
る。大手デベロッパーは郊外団地の売上減を
処してきたのだろうか。もともと都市型高密
カバーするため事業のかなりの部分をミニ開
度住宅地として用途が決められた所に建てら
発にシフトしている(写真9)。従って、いま
れたわけでも、公的機関によって計画的に建
まで地場業者の独占だった市場に大手各社が
てられたわけでもない。主にミニ開発の種地
参入して供給過多が心配される一方、郊外団
は社宅や町工場の跡地や、都市農地の切り売
地や都心のマンションでまちづくりのノウハ
り、あるいは相続対策によるお屋敷などによ
ウを重ねた大手デベロッパーがいままでとち
ってまかなわれてきた。つまり従前の用途や
がつたミニ開発の供給をおこなうことが期待
密度と異なったものが突然つくられたことに
されてもいる。
なる。ここに街づくりとしての違和感があり、
行政指導の難しさがある。現状に対応した予
測とは異なる「街づくり」が半ば合法的におこ
なわれるところに、どうしても後追い指導と
ならざるをえないところがある。例えばミニ
開発用地として準工業地域ではインフラは整
備されているが、居住環境は良いとはいえな
いし、農地の転用では接続道路の狭あいや、
インフラの未整備が問題になる。お屋敷が分
割されるケースは、確かに用途は同じ住居で
あるが、一軒家が5∼6戸に分割されること
で分かるように高密度化するため、お屋敷街
にあって著しく環境や景観をそこねる。
現在こうした虫食い状態の開発は急速に進ん
写真9大手デベロッパーによるミニ開発(東京都)
54
でいる。これに対して行政側の指導は精々小規
〈ますます狭小化する現状〉
模開発にたいし最低宅地面積を規定し、接道
最近の週間住宅情報にのっている「優良物件」
条件や接続道路の規定などで開発を規制して
でさえ、敷地は外延部では30坪を都心部では
いる程度である(図4)。法(都市計画法、建築
20坪を下まわっている。比較的ゆとりのある
基準法)のもとに地域に応じ条例化しているが、
公庫融資の100m2以上の敷地では、木造2階
既成市街地のためその運用にも限度がある。
4LDKの郊外型の住宅を無理して模倣してい
さらにこうした規制には幾つかの問題点があ
るため、各部屋も狭く庭もまさに猫の額ほど
る。つまり①要綱の適用外についての扱い、
である。隣家とは軒が重なり合うように接近
②指導そのものの数字のあいまいさと条件の
しており、プライバシーもない。(隣地境界は
低さ、③現状とのかい離④指導と法の矛盾、
50cmで、民法でいう最抵離隔距離と同じで
等である。特に適用逃れのミニミニ開発の乱
ある)外観も間口が狭く、斜線などの影響で複
立がさらに事を深刻にしている(写真10)。そ
雑な形態である。地震や火災に対しては、前
うした結果、街はグランドデザインのないまま、
面道路の狭小さもあって防災対策が十分とは
ますます密集し劣化していく。こうしたなかで、
いえない。まちなみは、空地がなく緑もなく
社会的ニーズに対応し、都市環境の劣化を防
ただ密集感があり、凝り過ぎか、または単調
ぐ計画的ミニ開発の誘導がのぞまれている。
家とまちなみ38 1998.9
コンクリートブロック コンクリートブロック コンクリートフロ・ソク
8鱗地境界線 9.OOm
7.00m /一一一一丁[・
隣地境界線 10.OOm 隣地境界
T、OOm
@1叫
@1氏
敷地面積 7000㎡
敏地面積BOOO㎡
@ ’〒 100
@ こ @ e 矯報
敷地面積70DO㎡
建築面積4050㎡
窒叙
0
1㌦㍉
ョ
じ’
・ンス(高さ1・5m) 曾 轟 フ・ノス(高さ1・5・) @ 道路境界線 自 吟3
@ 蕊
地面積 80QO㎡
築面積 4779㎡
0
地面積 7000㎡
築面積 4050㎡
奮 ∂ ま憩
《う
落藩軸鑑さ8ヨ
0
E巳辮氏
0
o渾
ェ溜麹諾き9
地面積7000㎡
搭`§ヨ
・こ’⑭
0溺
P吐
築面積 3B 10㎡
100
’ 100■r,病略 ”
一
尋〒ξヨ時
一層
@道 馬取
g フェンス(高さ1.5m)の
ェンス(高さ1,5.↑1)
ァb■ 噛 ﹁釦,,イ・=ヒ
口n々 \﹁一 ☆亜〒聾貯 ㌦琶 庸粛u吟叫 て一 庸一 ⊂罫1蟹言へ⊃ “ 雪 心 ︶
0
@偽旧
壁面より50)
ェ濠物諾さ8ヨ
建築面積4779㎡
建築面積 3810㎡
E ミ 「‘
曾も﹁
P80融
道路
@幽
U01圧
垂
一_
「T一一一一’
黶x
峯㌔船ご 韓鑛蓋100き 9
黶f .出まど1
吟
8
8
留
地境界線 9、OOm 隣地境界線10・00m 隣地境界 7、OOm @ コンクリートフロンク コンクリートツ.ロック コンクリートプロッ
一
4小規模住宅開発計画図の例(東京都世田谷区) 出典:世田谷区小規模宅地開発指導要項
の敷地に建つ野球式で賃貸住宅である(図
)。今、ちまたにあるミニ開発住宅は郊外
LDK住宅がベースの一戸建分譲住宅である。
北には採光面積確保のため幾らかの引きが
るが、東西はlm足らずの隣棟間隔であり
住環境が良いとはいえない。それでも住宅
式は明らかに郊外一戸建なのである。都市
居を単に都市にある一戸建て住宅からライ
スタイルそのものを都会的にすればおのず
真10開発適用外によるミニ開発(東京都大田区)
住形式も多様になるはずである。住宅地そ
ものの区画割や配置計画と住宅そのものの
造や間取りを考えてみると、マンションな
にくらべても画一的で、もっと多様な形態
先に述べたようにミニ開発には根強い需要
あってもよいはずである。
ある。それは住宅の環境や価値にあるとい
より、利便性、地縁制、一戸建と「周辺」の
配置形式(表2)〉
境の良さにある。しかし、それらを自ら壊
一般に住棟配置は開発地の形態に左右され
、お屋敷街からミニ開発街へと転落すれば、
。道路づけの良い場合は通例の並立型が多
メージも後退し、結局「地位」が下がり資産
、ファサードデザインをポイントにしてい
値も目減りする。ここでは街が劣化するの
。通例の区画整理用地の2次開発の場合奥
いくらかでも防ぎ、併せて都市住居の在り方
きの長い短冊ロットになるか、真ん中に旗
考えてみるいくつかの可能性を論じてみる。
お宅地を入れ2列を3列にしている。いず
にしろ密集感があり、ちょっとしたアルコ
居住形態を考えよう〉
ブや植樹を設けると良くなるのだがなかな
大都市では、どこの国でも高密度都市住居
そのスペースがとれない。また奥行きの深
形態はある。おおむね集合住宅やタウンハ
敷地では一団の土地を再分割するために、
スが多い。日本では13∼14世紀ごろから
ん中の道路が行き止まりで、これをかこん
くられた京都の町屋が有名であるが、これ
クラスター配置になることが多い。つまり
店舗併用住宅である(図5)。イギリスの開
み型になるため、ある意味ではまとまりや
規制条例住宅、いわゆるロウハウスは短冊
く近所付き合いもおこりやすい。行き止ま
家とまちなみ38 1998.9
5
ワサギ
。』
謔X’
Qu.
﹀
Ol.9:・.’σー
ロソ
’:幽’
H
図5町屋の1階平面図(京都) 出典:島村昇・鈴木幸雄「京の町屋」、鹿島出版会
前庭 居間
後庭
居間
苡
流し日
図6条例住宅1階平面図(ロンドン)
り道路は通過交通もなく格好の子供の遊び場
うことは比較的しゃすいことである(写真ll)。
や主婦のおしゃべりの場となっている。行政
そうすれば景観も良くなるし、安全で魅力的
側は常にこうした行き止まり道路を嫌い、ひ
なコミュニティスペースができる。さらに言
きとらない場合が多い。つまり開発による道
えば道路と反対側に1.5m程度の小道を設けれ
路だろうと位置指定による道路だろうと共有
ば、周辺のバッファゾーンとして、末端のラ
の私有地ということになる。回転広場や各宅
イフラインの埋設スペースとして、あるいは
地のカーポートを一体的に整備し、道路をレ
歩行者通路として機能させることができる
ンガ舗装したり、植樹ますをつくったり、ケ
し、連たんするミニ開発とネットワークも組
ーブルによる電気や電信の地下埋設をおこな
める。
髪
P hP穿 「
@ 耐 . ・・ここ詳、
ご.・ 、郵二霞.、蒔だ嬬一一『▽..臆黙騨阿
寘?`式、
P特臓び噸聴:.、F 鳳』、、、げ虞
’震俘 ’
ワご}瀦・..瓶rr
P㌣
影 て ・
@ 、n ’高 、 ’h
テ .rか、・、
h .帯塗. __こ _.
道路並立型
急 1,,
ー こ二研
:●既存道路に平行に立ち並んでいるもの
:●密集感あるが前面道路が広ければ日照や通風、 見通し確保
:●ファサードデザインがポイント
1
1
,
ブロック型
:■造成された街区を通常より小さく宅地分割したもの
:●郊外住宅地のミニ版で比較的宅地も大きい
:■一体的な外構がポイント
,
1
,
旗ざお型
:●100坪前後の宅地を4分割したもので奥の宅地が旗さお型のもの
:●旗竿ぶぶんは敷地延長で駐車場として利用
:●4棟の住宅の調和がポイント
写真11行き止まり道路をコモンにした例(東京都大田区)
1
■
9
クルドサック型
:●袋路状道路に4−8戸住宅があるもの
:●道路は位置指定され終端に回転広場があるものもある
:●移管しない道路の維持管理
〈住宅形式(表3)〉
都市生活を望む者は本来、多様な価値観を
持ち、家族構成も様々である。たしかにミニ
1
1
クラスター型
:●コモンを囲んで住宅が5−6戸配置されているもの
:●コモンの造り方ポイント
開発でも、郊外型式の住宅が好まれているの
:●共有コモンの維持管理必要
はファミリー層をターゲットにしているから
1
だろう。しかし、都市型住居を考えるならば、
1
両側道路型
:●両側に道路または緑道があり短冊状に区画されているもの
1●隣地片側は境界一杯に建てるゼロロットとするのもある
4LDKにこだわることもないし、中庭をもつ
コートハウスもある(図7)。道路に外壁が直
1
1
人口地盤型
:●1階部分をRC造の駐車場とし人口地盤を形成しその上に2階建
接面したり、地下室や屋根裏部屋のある立体
利用の家も魅力的である。構造形式も木造と
限ることはない。むしろ都市の狭小な宅地だ
1
からこそいろいろな住形式が可能なのである。
表2ミニ開発の配置形式
56
家とまちなみ38
1998.9
その意味では最近とみに増えて来たのが3階
は3階住宅を住みこなすにはまだまだ時間が
建て住宅である(写真12、13)。特に準防火地
かかるが、狭小宅地の多い都会では今後増大
域における木造3階建て住宅の解禁がそれに
することが予想、される。
拍車をかけている。しかし実際は3層の生活
空間は移動が不便で、特に高齢者の住居とな
〈人工地盤〉
るとホームエレベーターでも設置しなければ
配置形式と住宅形式を同時に解決しようと
大変である。したがって、一般には1階は入
したのが人工地盤による住宅である。一階を
り口と車庫の場合が多く、生活空間のベース
RC構造で一体的に造り、駐車場とし、人工地
は2層目に設ける。半生下階を車庫にし、か
盤を形成し2、3階部分を独立した木造住宅と
さ上げの2階建て住居としたり、3層目は屋
する手法である(写真14)。こうすることによ
根裏部屋にするなどすれば、外観のデザイン
り共同住宅とし、容積や接道条件の緩和を可
も不安定でかつ間延びしたひよろ長い3階建
能にする。この手法のミソは混構造にある。
てのイメージもなくなり、住居専用地域にあ
タウンハウスが結局根付かなかったのは、い
っての北側斜線や日影規制などもクリアーで
ろいろ理由はあるがその一つにいくらダブル
きる。もともと多層住宅の歴史がない日本で
ウォールでも木造の境壁で連棟するのが不安
,
倥宅形式 ;特性及び問題点 」 2
騒r乃
蜜
1
1
1郊外型 1●木造2階建て4LDKの郊外一戸建住居のミニ版30坪前後
1喚 叢
8
R層建て住宅 1●生活空間が3層になっている木造(2’x4在来軸組)住宅
(木造3階) :●1階が駐車場と玄関及び1室、居住空間の中心は2階
RCS造可 1●外観がポイント1−3階同じ仕上げだと間延びする
1
3層建て住宅 i●1階はRCで駐車場、生活空間は2−3階で木造の混構造
(混構造) 「●3階屋根裏部屋でも可能 匹
1●外観はおさまりやすい
P
伽
1
Rート型住宅 1●短冊型敷地に対応し中庭をつくった住宅
ll●コートを設けプライバシーや日照の確保
写真12モダンスタイルの木造3階建て住宅
1
[
,
(東京都大田区)
オープンスタイル i.廊下を無くしLD,_体型や間仕切りプリ_の住宅
住宅 i●吹き抜けなど空間を広くした都市型ライフスタイル対応型
@ 1
1
表3ミニ開発の住宅形式
1 リースペース﹂
洋室
主寝室
⊂) 1コ
、趣婆無
U畳
X.5畳
写真13混構造による3階建て住宅(東京都渋谷区)
2階平面図
嘆『
鰹誼
欝
\、
居間
↓」L罎
轄灘醐
1階平面図
図7コートのある住宅プラン
写真14人工地盤による共同住宅(東京都目黒区)
家とまちなみ38 1998.9
57
であったからだ。全部RCにすれば抵抗はな
っこする都市はめずらしい。多くの識者は町
いのだが、これはいわゆるマンションとなる。
を劣化させる元凶として、ミニ開発を追放し、
だから商品の位置づけがきわめて難しい。全
あのCIAMの提唱した空間の広がりをもつ高
体の環境やデザインはまとまりやすいが、専
層住宅にすべきだという主張をする。しかし
有地のある一戸建にくらべると自由度はない
前にも述べたように都市なかでの一戸建を望
し、マンションと比べると、住居が立体移動
む声は強い。それは必ずしもアーバンライフ
になる。管理費や駐車料もばかにならない。
だけを望んでいるわけではない。その証拠に
事実最近の事例をみても販売状況はよくない。
郊外住宅のミニ版がっくりつづけられている。
完全な人工地盤ではなく部分的におこない独
世田谷や杉並といった23区内の外延部はひと
立性をより保つ方法が良いとおもわれる。し
昔前は「郊外」であった。都市住居というより
かし、こうした手法は都市型一戸建のひとつ
も購入者は便利な郊外住宅と位置づけている
の提案であり、平たん地だけでなく、斜面地
のかもしれない。庭つき一戸建志向は郊外住
などでは、擁壁など土木的処理にはよらず、
宅だし、地縁性は下町住宅だし、利便性はマ
建築的処理としてこうした人工地盤を造ると
ンションである。こうした多様であるがそこ
有効であろう。
そこの要求にこたえてきているのが、ミニ開
発住宅である。しかし居住者も行政側もある
〈借地権分譲〉
いは事業者ですら現状に満足しているとはお
都市住居はもともと賃貸が多かった。土地
もわれない。ただ土地を売りたい土地所有者
の高い都心で一戸建を所有することは無理が
と、もうけたい事業者と、規制したい行政と
ある。どんなに環境を良く計画しても、高価
のイタチごっこでは新しい街づくりは不可能
格であれば、売れ残る。往々にして新しい試
である。都市町一戸建は郊外と都心、マンシ
みは成功か失敗かはっきりするのは、居住者
ョンと一戸建という対立慨念ではなしに、新
の真のニーズとマーケットプライスのずれが
たな居住形態として位置付けを明確にし、土
あるからである。最近ふえつつある借地権方
地所有者は街づくりへの参加を、自治体は規
式はこうした問題を解決している。特に土地
制から誘導行政へ、事業者は環境をそこなわ
単価のさほど高くない郊外団地で多くの事例
ず新たな住居形態の提案をすべきであろう。
を見、おおむね成功していることを考えると、
また本来都市居住者にふさわしい、若年の1
本来は都市住居にこそふさわしい方式であり、
次取得者や高齢者にも十分購入できる価格設
あまり事例のないのが不思議なくらいである。
定も必要である。そうしないと、やがてニー
例えば世田谷や杉並といった住宅街では敷地
ズも衰え、ただ虫食いにされた、「街」が残る
30坪に建物30坪の住宅で7000万ほどする
だけになってしまい街の価値そのものが下が
のが地上権では4500万ほどになるし、定期
ってしまう。郊外住宅ではない、集合住宅で
借地権では保証金をいれて3000万程度とな’
はない都市型高密度一戸建住居のスタイルが
る。こうなれば一次取得者にも取得できる。
必ずあるはずである。建築家東孝平氏の自邸
もとより、事業者が従前の土地所有者から土
はわずか6坪の敷地に建つ帯状住居であるの
地を買い上げてこうした方式で供給すると余
は有名である。規模から言えば立派なミニ開
程地代を高くとらないと採算にのらない。し
発住宅である。ここには設計者であり居住者
たがって土地所有者との共同事業であれば十
である氏の顔がある。そしてその動機はとに
分成立する。価格の低減だけでなく、二段階
かく「都市に住みたかった」ということである。
所有は環境の維持にもある一定の有効性があ
もちろん氏とミニ開発需要層とは同じ意識で
る。
はないかもしれない。しかし特殊解とはいえ
30坪で四苦八苦している現状をみると、おお
いに示唆を与えてくれる。今、都市型一戸建
にデベロッパーは目が向いている。「ミニ開発」
という名のもとで街づくりの悪者にならない
〈新しい都市居住形態の可能性〉
ためにも、日本特有な新しい一戸建都市住居
パリやロンドン、あるいはニューヨークな
の可能性を考える時期にきているのではない
ど西欧の都市住居も、台北やホンコンといっ
だろうか。
たアジアの都市住居も、賃貸を中心とした共
同住宅であり、東京のように一戸建住宅のば
58
家とまちなみ38 1998.9