第2節 オンラインシステムの構成

第2節
オンラインシステムの構成
215
第2節 オンラインシステムの構成
コンピュータなどが通信回線で接続されているシステムをオンラインシステムといい,
オンラインシステムの構成には次のような種類がある。
(1) シンプレックスシステム
通信制御装置や処理装置(CPU,プロセッサ)などが 1 台で構成されているシステ
ムをいい,システム構成が簡単で,安価であるが,どの装置が故障してもシステムダウ
ン(システムが使用できない状態)になる。小規模のオンラインシステムや,信頼性が
さほど要求されないシステムに用いる。
通信回線
通信制御装置
処理装置
補助記憶装置
主記憶装置
(2)
通常はオンライン系(主系)でオンライントランザクション処理を,待機系(予備系)
でバッチ処理などを行っている。オンライン系がダウン(使用できない状態になる)す
ると,待機系のバッチ処理などを中断し,切替装置で切り替え,待機系でオンライント
ランザクション処理を再開するシステムをデュプレックスシステムという。また,待機
系は業務システムのプログラムやデータをオンライン系よりすぐに引き継げる状態に
あり,オンライン系に障害が発生したときは待機系で業務システムを引き継ぐシステム
をホットスタンバイシステムという。さらに,ホットスタンバイシステムに対して,デ
ュプレックスシステムをコールドスタンバイシステムという。コールドスタンバイシス
テムはホットスタンバイシステムに比べ,コストは安いがシステムとしての信頼性は低
い。
(オンライン系)
主記憶装置
処理装置
処理装置
主記憶装置
(待機系)
切替装置
通信制御装置
切替装置
通信回線
補助記憶装置
補助記憶装置
216 第 10 章 システム構成
(3)
2 系列で同一の処理を行い,結果を照合する。結果が合わないときは,故障した系列
(異常な系列)を自動的に切り離し,正常な系列だけで処理を続行する。システムの信
頼性は高く,重要なシステムで使用されている。
主記憶装置
通信回線
通信制御装置
処理装置
補助記憶装置
照 合
通信回線
通信制御装置
処理装置
補助記憶装置
主記憶装置
(4)
複数の処理装置で主記憶装置を共用するシステムをマルチプロセッサといい,補助記
憶装置を共用する場合も多い。各処理装置は別々の処理を並列的に行う。
マルチプロセッサシステムには,密結合マルチプロセッサシステムと疎結合マルチプ
ロセッサシステムがある。
密結合マルチプロセッサシステムは,複数の処理装置で主記憶装置を共有して一つの
OS で制御される。
処理装置
通信回線
通信制御装置
主記憶装置
補助記憶装置
処理装置
疎結合マルチプロセッサシステムは,複数の処理装置がそれぞれ独立した主記憶装置
を備え,処理装置間の情報のやり取りは高速バス又は通信リンクで行い,処理装置ごと
に存在する OS で制御される。
第2節
オンラインシステムの構成
217
マルチプロセッサシステムの目的には,次の三つがある。
① 処理装置の負荷分散が図られる。(1 台の処理装置で行う処理を,複数台で分散す
れば 1 台当たりの負荷は減る。)
② システムの信頼性の向上が図られる。
(1 台の処理装置がダウンしても,残りの処
理装置で処理が可能である。
)
③ スループットの向上が図られる。(1 台で処理するよりも,複数台の処理装置で処
理する方が,単位時間当たりの処理量は増える。
)
(5) タンデムシステム
3 台の処理装置(プロセッサ)を直列に並べて,機能分散(役割分担)を行う。この
システムの目的は,処理装置の負荷分散であり,1 台の処理装置ですべての制御を行う
よりも,役割分担により負荷が分散される。
通信回線
FEP
処理装置
BEP
主記憶装置
主記憶装置
主記憶装置
補助記憶装置
① フロントエンドプロセッサ(FEP:Front End Processor,前置計算機)
データ通信の制御を専門に行う処理装置(プロセッサ)をいう。
② バックエンドプロセッサ(BEP:Back End Processor,後置計算機)
補助記憶装置の制御を専門に行う処理装置(プロセッサ)をいう。
(6) 各システム構成の比較
信頼性の向上
負荷分散
スループットの向上
シンプレックスシステム
×
×
×
デュプレックスシステム
○
×
×
デュアルシステム
◎
×
×
マルチプロセッサシステム
○
○
○
タンデムシステム
×
○
△
218 第 10 章 システム構成
(7)
(耐故障システム)
「計算機システムのハードウェアは絶対故障しない」とか,
「ソフトウェアに絶対バ
グ(誤り)がない」と考えるのは現実的でない。
計算機システムの大規模化・複雑化に伴い,ハードウェアの故障やソフトウェアのバ
グがシステムに与える影響を最小限に抑えることが重要となる。
システムの一部が故障しても,システムを全体として見たときの動作に支障をきたさ
ないように設計された高信頼化システム(信頼性の高いシステム)をフォールトトレラ
ントシステム(耐故障システム)という。
デュアルシステム,デュプレックスシステム,マルチプロセッサシステムは,フォー
ルトトレラントシステムの一例である。
(8)
コンピュータに接続した磁気ディスク装置などにデータを書き込むとき,同一内容を
同時に別の磁気ディスク装置などに書き込む方式をいう。一方の磁気ディスク装置の内
容が破壊されて読み出せないときに,もう一方の磁気ディスク装置から読み出すことが
できる。
磁気ディスク装置
コンピュータ
同一内容の
書込み
磁気ディスク装置
(9) フォールトトレラントシステムの設計思想
フォールトトレラントシステムの設計思想には,次のようなものがある。
①
万一システムに障害(フェール)が発生しても,システムが常に定められた安全
状態(セーフ)を保つように設計される。
(例)交通制御システムの一部が故障した。
→ 全部の信号を赤にして,一旦,自動車を全部止める。
第2節
オンラインシステムの構成
219
②
システムに障害(フェール)が発生した場合,障害部分のみを切り離し,機能や
処理能力を低下させた状態(ソフト)でシステムの運用を継続させるように設計さ
れる。また,この機能や処理能力を低下させた状態を,機能縮退という。
(例)銀行のオンラインシステムで,3 台中 1 台の処理装置が故障した。
→ 全業務を行うだけの処理装置の能力がないため,現金預入支払業務だけ
を継続し,為替振込業務などを中断する。
③
複数のコンピュータを相互接続することにより,システム全体の信頼性を高める
手法である。ユーザや他のコンピュータからは,一つのシステムとして見える。一
部が停止して機能・性能が低下しても全体が止まることはなく,処理を続行したま
ま修理や交換も行える。フェールソフトの考え方を複数コンピュータの相互接続に
より実現するものであり,さらには,接続するコンピュータの台数を増やすだけで,
性能の向上をはかることができる。
④
誤操作時のエラーメッセージや確認メッセージを表示させるなどして,操作ミス
や理解不足からくるシステムへの被害をくい止めようとする設計思想である。
(例)ファイルを削除しようとした。
→ 削除してもよいかの確認メッセージを表示する。さらに,削除ファイル
を当分の間ゴミ箱に保管して,回復のチャンスを残しておく。
(10)
(Redundant Array of Inexpensive Disks,ディスクアレイ)
複数のハードディスク装置を組み合わせることにより,高速化や信頼性の向上をねら
ったシステムをいい,次に示すような RAID0∼RAID5 などの種類がある。
220 第 10 章 システム構成
RAID
RAID0
RAID1
RAID2
RAID3
RAID4
RAID5
説
明
データを複数のディスクに分散して巡回的に書き込むことにより,
並列に入出力が可能になり,アクセス速度の高速化を実現する。この
ような技術をストライピング(アクセスの分散化)という。
(図 1 参照)
2 台(複数)のディスクに同一データを重複して書き込むことによ
り,1 台のディスクが故障した場合にも,他のディスクにデータが確
保されているため,信頼性が向上する。このような技術をミラーリン
グという。
(図 2 参照)
ECC(注 1 参照)を付加したデータを,複数のディスクにビット単
位に分散書込みを行う。
(図 3 参照)
RAID2 を簡略化したもので,複数ビットの ECC の代わりに 1 ビッ
トのパリティ(誤り検出情報)を使用する。パリティは,8 ビットの
データの XOR(注 2 参照)を取ったものである。複数のディスクにビ
ット単位に分散書込みを行う。
(図 4 参照)
データの分散化をブロック単位に行う。パリティは,複数のブロッ
クより各ビット単位に計算され,パリティ専用のディスクに書き込ま
れる。このことにより,一つのディスクが障害を起こしても,他のデ
ィスクのブロックとパリティを使用することにより,一つのディスク
を復旧することが可能になる。
(図 5 参照)
パリティ専用のディスクを設けずに,パリティも各ディスクに分散
させて書き込まれる。このことにより,RAID4 のパリティ専用ディス
クへのアクセスの集中を回避できる。(図 6 参照)
【注 1】ECC:Error Correcting Code(誤り訂正符号)
【注 2】XOR:eXclusive OR(排他的論理和)
〔図 1〕RAID0
パソコン
データ 0
データ 1
データ 2
データ 3
:
データ 4
:
データ 5
:
データ 0
データ 0
データ 1
:
データ 1
:
〔図 2〕RAID1
パソコン
第2節
オンラインシステムの構成
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〔図 3〕RAID2
パソコン
データ 1→
データ 2→
ビット 0
ビット 1
ビット 0
:
ビット 1
:
ビット 0
ビット 1
ビット 0
:
ビット 1
:
ブロック 0
ブロック 1
ブロック 2
ブロック 3
パリティ0-3
ブロック 4
:
ブロック 5
:
ブロック 6
:
ブロック 7
:
パリティ4-7
:
・・・
ビット 1
ECC0
ビット 1
:
ECC0
:
ビット 7
パリティ
ビット 7
:
パリティ
:
ECC3
・・・
ECC3
:
〔図 4〕RAID3
パソコン
データ 1→
データ 2→
・・・
〔図 5〕RAID4
パソコン
〔図 6〕RAID5
パソコン
ブロック 0
ブロック 2
ブロック 1
ブロック 4
ブロック 6
ブロック 5
ブロック 8
パリティ 8-11
ブロック 9
ブロック 12 パリティ 12-15 ブロック 13
パリティ 16-19 ブロック 16
ブロック 17
:
:
:
ブロック 3
パリティ 4-7
ブロック 10
ブロック 14
ブロック 18
:
パリティ 0-3
ブロック 7
ブロック 11
ブロック 15
ブロック 19
: