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tec
News
22
ハ ー テ ィ ン グ テ クノ ロ ジ ー ニ ュ ース レ タ ー
特別寄稿: Prof. Dr.-Ing. Jürgen Gausemeier
it’s OWL –
先端クラスターに選出
Dr. Frank Brode
Thomas Wolting
常にオンライン –
Smart Network Infrastructure
正確な接続作業–
Han-Fast ® Lock
Research for innovations!
いつでもどこでも
ハーティング!
ツイッターでもハーティング
Google+でもハーティング
ハーティングではGoogle+で企業情報の提供を開
始しました。ホームページやプレスリリースでお伝え
している情報とは一味違ったコンテンツをお届けし
ます。Google+では、ハーティングでの日常業務の
様子や、個々の仕事の内容、働く社員についてご紹
介します。
ハーティングに関する情報はこちらでも入手できます:
さらに、ツイッターでも企業情報サービスを開
始しました。ハーティング製品に関するニュー
スや役立つ情報、見本市などのイベント情報
をお伝えします。ぜひフォローしてください!
持続可能性はすべ
てのイノベーション
の基礎
「グローバル化」というのは単なるうたい文句ではなく、日々、我々に数々の要求や要
件を突きつけます。企業や組織が自らの地位を維持し、社会のさらなる発展のために
力を発揮することを望むのであれば、持続可能性に取り組まねばなりません。ハーテ
ィングでは、このことが企業ビジョンの根底にあります。
» Dr. Frank Brode, Senior Vice President New Technologies
21世紀が抱える中心的課題は、進む
市場のグローバル化や急拡大する大都
市、減り続ける天然資源、さらには先進
国で進む社会の高齢化によるものです。
こういった世界的潮流のなか、資源の持
続的利用の強化や社会の流動性の維
持、通信の新たなレベルへの進化、これ
らを実現する新しい概念が求められて
います。ハーティングテクノロジーグル
ープでは、インテリジェントで柔軟性が
高いインフラストラクチャの発展は、こ
のような課題を克服していく上で重要な
要素であると考えます。ハーティングの
ビジョンは、個々の機械や機器、設備そ
れぞれにインテリジェンスをもっと持た
せねばならないという考えに基づいてい
ます。それは、オフィスや自宅といった日
常の環境だけでなく、スマートファクト
リーにもあてはまります。電力供給網は
その中核となる部分です。資源の高効率
運用を実現するために、発電所から供給
網、エネルギー貯蔵媒体を通って消費
者にいたるまでの既存インフラストラク
チャが、決定力のあるインテリジェンス
を新たに獲得するのです。
強力なパートナーとの共同研究
こういったビジョンに基づいて、ハーテ
ィンググループが主に取り組む技術分
野は、新たな製造プロセスの開発のほ
か、新素材 (ナノ粒子) の利用、製品ライ
ンナップの拡大および更なる開発、そし
てスマートインフラストラクチャ向けの
新たなソリューションの開発です。これ
らのソリューションでは、センサーや電
子回路、ソフトウェアが搭載された新製
品を組み合わせ、すべての企業および社
協力があってはじめて解決できます。その
ため、ハーティングテクノロジーグルー
プでは、大規模なグローバルレベルの開
発・
ノウハウのネットワークを活用しなが
ら、人工知能からナノ技術まで、各種テ
ーマを研究しています。そして数多くの事
例が示すように、ハーティングが関与す
るものは、持続可能性があって長期的な
取り組みであることをはっきりと示してい
ます。客員教授制度や、長期にわたる数
々の研究協力活動と同様、エスペルカン
ハーティングテクノロジーグループでは、大規模なグロー
バルレベルの開発・
ノウハウのネットワークを活用し、人工
知能からナノ技術まで、各種テーマを研究しています。」
会プロセスにて高度な効率性を実現す
ることを目指します。
プの新技術センター建設も、そういった
意思の表れです。
このような要求度の高い課題は、様々な
研究機関や大学、パートナーとの緊密な
それでは今号をお楽しみください。
3
t e c . N e w s 2 2 : 目次
写真提供:Think Abele GmbH & Co. KG / Stage Kinetik
目次
ストラテジー
論説 / 03
持続可能性はすべてのイノベーション
の基礎
it’s OWL – 先端クラス
ターに選出
/ 06
Dr. Jürgen Gausemeier教授による
寄稿記事
人とテクノロジーを結ぶインテリジ
ェントなインターフェース
/ 08
ヒューマン・マシン・インタラクション
の最新技術について
ビーレフェルト大学
Jochen Steil教授、
Dr. Sebastian Wrede
4
アプリケーション
常にオンライン – Smart Network
Infrastructure / 10
ハーティングではSmart Network
Infrastructureを掲げ、大容量データを
リアルタイムに系統立てて処理する強
固な基盤を構築
さらに先を目指して / 12
ドイツ政府の「Industrie 4.0」プログラ
ムの枠組み内でオートメーションITプラ
ットフォームを開発
オートメーションにおけるサービス
指向アーキテクチャ / 16
サービス指向アーキテクチャ(SOA)
はオートメーションにも適用されつつあ
り、大きな将来性を示す
安定した競争力 / 20
ハーティングのラボラトリーは試験・検
査業務を行うとともにグループ内の戦
略的技術開発を担当
あらゆる用途に対応する高速FTS性
能 / 24
ヒルシャー社、最新世代のnetXでファ
ストトラックスイッチングをサポート
位置決め制御 / 32
SCARAロボットシステムで活躍する
Han-Yellock®
現地法人における
アプリケーション事例 / 40
世界各国でのハーティング製品のアプ
リケーション事例
t e c . N e w s 2 2 : 目次
ソリューション
正確な接続作業 / 22
Han-Fast Lock PCBコネクタは、大電
流のほか、容易な操作性、効率のよいサ
イズといった要件に対応
®
ネットワークコントロールセンター
/ 26
イーサネット・ネットワークの中央運用
管理ソフトウェアとして機能する
Ha-VIS Dashboardを開発
スモール・インテリジェンス・パッケ
ージ / 28
エネルギーフロー制御用に実用性が高
く持続可能なコンセプト「smart Power
Networks」を提案
トピックス
過酷な環境用のパワフルな診断装
置 / 30
ショートニュース / 35
保守、修理、点検にRFIDを使用
読者アンケート / 42
標準化を目指して / 31
イベントカレンダー / 43
har-flex 、産業用機器の自由な設計の
可能性を開く
®
パブリケーション / 43
オールラウンドプレーヤー / 34
Han-Modular ®: 個々のコネクタであら
ゆる用途に対応
パワーエレクトロニクス用電流セン
サー / 36
正確な測定性能と耐干渉性に優れた
ハーティングの電流センサー
モビリティの未来 / 38
ハーティングが提案する効果的なエレ
クトロモビリティソリューション
5
t e c . N e w s 2 2 : ストラ テ ジ ー
it's OWL –
先端クラスターに選出
自主的に学習する機械、先を予測する家電製品、自ら積み重ねた経験をもとに先を見越して動く自動車。知性を持った
技術システムによって私たちの日常が変わります。クラスター「インテリジェント・テクニカル・システム オストヴェスト
ファーレンリッペ (Intelligent Technical Systems OstWestfalenLippe, 「it's OWL」) 」は、テクノロジー地域オストヴ
ェストファーレンリッペのトレードマークです。2012年1月19日、
「it's OWL」は、BMBF (ドイツ連邦教育研究省) の
「先端」クラスターに選出されました。
特別寄稿
» Prof. Dr.-Ing. Jürgen Gausemeier
未来の技術システムは、機械学、電気/
企業
大学と研究機関
業関連組織 (業界イニシアティブ、商工会議所、事業
企
開発機関など)
6
Intelligent Technical Systemsの分野に
おける世界市場のリーダー、隠れたチャン
ピオン、最先端研究のユニークな集結
電子工学、制御工学、ソフトウェア技術、
そして新素材、これらの密接な相互作用
に基づいたものとなり、内に備えた知性
によってメカトロニクスを凌駕するでし
ょう。情報技術だけでなく、非技術系の
分野、例えば認知科学や神経生物学、言
語学といった分野でも、これまでは生体
システムでしか知られていなかった、知
覚や動作、認知に関わる機能を技術シス
テムに統合する様々な方法や技術、手順
が開発されています。こういったシステ
ムを私たちは「インテリジェント・テクニ
カル・システム (Intelligent Technical
Systems)」と呼んでいます。これらは適
応性が高く、頑強で、主体的で、ユーザ
ーフレンドリーなシステムです。
「インテ
リジェント・テクニカル・システム」は、
自身を取り巻く環境やユーザーの要求に
適応します。家庭や製造現場、街中で利
便性を提供し、資源の利用を控え、直観
的な操作が可能で、信頼性も高いシステ
ムです。例を挙げると、電気料金の変動
に秒単位で対応しつつ、自動最適化機能
で洗濯物をふんわり仕上げるタンブラー
式乾燥機や、難しい作業でも簡単に操
作できるうえ、メンテナンス時期を知ら
せてくれる製造機械、あるいは洗濯物を
1枚ずつ洗って乾燥してアイロンをかけ
て折りたたむという作業を高品質で仕上
げながら、水や電気、洗剤は最低限しか
t e c . N e w s 2 2 : ストラ テ ジ ー
使用しない大型クリーニング機械、など
です。
「it's OWL」クラスターの枠組み内で
は、計173の企業、産業イニシアティブ、
大学・研究機関が、メカトロニクスから
ベーションが開発されています。その領
域は、インテリジェント・センサーや装
置、オートメーションコンポーネントを
はじめ、機械類、家電製品、自動車、さら
には生産設備やスマートグリッド、キャッ
シュ管理システムなどのネットワーク化
これによって、イノベーションと製造業の
地としてのドイツの更なる発展に一層弾
みがつきます。
メカトロニクスから、知性を備えたシステムへのイノベー
ションの飛躍」
上記のような知性を備えたシステムへの
イノベーションの飛躍に照準を合わせて
います。47のプロジェクトにおける緊密
な産学連携のもと、製品および生産イノ
Dr. Jürgen Gausemeier教
授は、パーダーボルン大学
のハインツ・ニクスドルフ・
インスティテュートのプロ
ダクトエンジニアリング教
授。BMBF (ドイツ連邦教育研究省) の先端
クラスターとして最近選出された「インテリ
ジェント・テクニカル・システム オストヴェ
ストファーレンリッペ Intelligent Technical
Systems OstWestfalenLippe (it's OWL)」
のクラスター委員会の委員長でもある。
されたシステム (「サイバー・
フィジカル・
システム」と呼ばれるもの) に至るまで、
多岐に及んでいます。これらのプロジェ
クトは、クラスターのイノベーションの
飛躍の総合的な核となる相互技術プラ
ットフォームに基づいています。中小企
業は、開発済みの最先端技術からこの技
術プラットフォームと、結果として生じる
移行プロジェクトまで参加しています。
OWLの企業各社は、将来の市場に向け
て、上記のようなシステムの開発、製造
という課題に取り組んでいます。先端ク
ラスター受賞は大きな成果であるととも
に、この地域の能力をはっきりと証明す
るものであり、この地域は、いまや国際
的なハイテク地域の「チャンピオンズリ
ーグ」にて広く存在を知らしめています。
➥ In brief
ハーティングテクノロジーグループ
とビーレフェルト大学のCoRラボラ
トリーの研究者は、先端クラスタ
ーの34の産業主導イノベーション
プロジェクトの内、2つを手がけ
ています。OWL地域の Intelligent
Technical Systemsに対し、ハーテ
ィングテクノロジーグループを含む
中核企業の合計25社で7,290万ユ
ーロを投資しています。
7
t e c . N e w s 2 2 : ストラ テ ジ ー
人とテクノロジーを結ぶ
インテリジェントな
インターフェース
動作追跡や音声対話、タッチ・視線・ジェスチャ制御など、ヒューマン・マシン・インタラクションにかかわる先端技術
は急速な発展を遂げており、エンタテイメントやスマートフォンなどの分野では実用化されています。
»P
rof. Jochen Steil, Managing Director Research Institute for Cognition and Robotics (CoR-Lab) & Member of the Scientific Board in the Center of
Excellence – Cognitive Interaction Technology (CITEC), University of Bielefeld
Dr. Sebastian Wrede, Head of Cognitive Systems Engineering, CoR-Lab & CITEC, University of Bielefeld
オートメーションにおいても、顧客の要求に柔軟に対応でき
るよう、技術システムが複雑になってきています。このようなト
レンドが組み合わさることで、製造の未来が形成され、能動的
な運用支援を行ってユーザーに適応するインテリジェントなイ
ンターフェースが取り入れられていきます。
製造工程の改善は、インテリジェントなヒ
ューマン・マシン・インタラクションにかか
っています。」
「機械は何をしてもらいたいのか?」
常に人は技術システムと相対するタスクに直面します。機能は
どうやって制御するのか、フィードバックはどう解釈するのか、
エラーはどこで発生しているのか。ヒューマン・マシン・インタ
ラクションは、そのようなタスクを直感的な操作で効率よく行
うための支援インターフェースです。産業界では、オートメーシ
ロボットシステム FlexIRob
8
ョンシステムの設計やその運用もますます複雑化するにつれ、
ヒューマン・マシン・インタラクションが果たす役割は着実に大
きくなっています。同時に、その中では、直感性と高い信頼性が
求められます。
モジュール化と学習による柔軟性
制御技術および測定技術で進むモジュール化とオープンイン
ターフェースとによって、製造工程はソフトウェア主導型の柔
軟な表示が可能になっています。この柔軟性は、より効率よく
適応する製造工程を可能にするだけでなく、プロセスデータ
の包括的なリアルタイム収集を可能にします。例えば実行中の
プロセスでエラー状態を予測することを目的にこれらを利用
することは、ヒューマン・マシン・インタラクション (HMI) のさ
らに別の分野になり、統計的学習と密接に関係しています。例
えば、システムがドリルの摩耗を他のデータベース化された検
証データとの違いから予測できるようになれば、メンテナンス
間隔を調整することが可能になります。こういった予測はシミ
ュレーションシステム内で視覚化され、オートメーションソリ
ューションの状態に関するフィードバックは、より理解しやす
い形でオペレーターに提示されます。ダウンタイムは最低限に
抑えられ、リソースの利用が効率的になり、人と機械間のコミ
ュニケーションも向上します。
直感的なプログラミングと設定
製造プロセスの改善についても同様に、最新の動力制御によ
るロボットコンポーネントの柔軟な導入によるものは特に、ヒ
ューマン・マシン・インタラクションのインテリジェント利用に
大きく左右されます。ビーレフェルト大学の認知ロボット工学
研究所 ( Institute for Cognition and Robotics at the University of Bielefeld) では、力制御と学習とを巧みに組み合わせ
たシステムのプロトタイプを開発しました。このシステムは、
多関節ロボットを非常に複雑な動作を実行できるように数分
で設定します。たとえ専門家でなくてもわずかな労力でシステ
ムを修正できる直感的なオンサイトプログラミングの構想が
プロトタイプの形で実現化されたのです。
t e c . N e w s 2 2 : ストラ テ ジ ー
私たちはお互いを理
解しています。」
最先端クラスター「it's OWL」におけるヒューマン・マシン・
インタラクション
ビーレフェルト大学の専門分野からのこういった最新研究の移
転は、最先端クラスター「it's OWL」にとっても重要な役割を
果たしています。ハーティングテクノロジーグループと協力し
人と機械間の直感的コミュニケーションを基準システムに導
入することで、ヒューマン・マシン・インタラクションは将来、
製造方式をより柔軟にするカギになっていくでしょう。
➥ In brIef
• ヒューマン・マシン・インタラクションにかかわる先
端技術は急速に発展しています。
• 製造工程の改善は、ヒューマン・マシン・インタラク
ションのインテリジェント利用に大きく左右されま
す。
• 「it’s OWL」は、ハーティングテクノロジーグループ
と共に、人間と機械間の直感的なコミュニケーショ
ンを基準システムに導入しています。
9
t e c . N e w s 2 2 : ストラ テ ジ ー
常にオンライン – Smart
Network Infrastructure
リアルタイム通信にはパワフルで信頼性の高いコンポーネントやシステムが求められます。ハーティングテクノロジー
グループでは、Smart Network Infrastructureを掲げ、大容量データをリアルタイムに系統立てて処理する強固な基盤
を構築いたしました。
» Dr. Frank Brode, Senior Vice President New Technologies, Germany, HARTING Technology Group, [email protected]
必要なすべての情報にいつでも幅広く
アクセスできることを求めることは、産業
界においては標準的なこととなりつつあ
ります。ネットワークというものは、エネ
ルギーの分野であれ、機械・生産工程管
理やプロジェクト管理であれ、それ以外
のさまざまなアプリケーションであれ、今
ません。システムに欠かせない、いわゆる
センサーネットワークもインフラストラ
クチャに含まれます。
通常、こういった革新的なソリューション
においては、システムに不可欠なインテリ
ジェンスを提供するパワフルなソフトウェ
ハーティングテクノロジーグループではSmart Network
Infrastructureを掲げ、大容量データをリアルタイムに系
統立てて処理する強固な基盤を構築いたしました。」
や非常に高度化しているため、もはや人間
のコミュニケーションだけでは不十分で
す。
未来を見据えたコンセプトやシステム
は、高まる要求に応えられるものでなけ
ればなりません。ハーティングテクノロ
ジーグループが開発したSmart Network
Infrastructureコンセプトは、現在のニー
ズも将来の要望も、どちらにも対応でき
る構成や製品、システムを提供いたしま
す。
情報の幅広い利用機会の提供
インフラストラクチャはますます重要性
が高まっており、その構成要素も、単なる
コネクタやケーブル、スイッチにとどまり
10
アが重要な構成要素となります。大容量
データのリアルタイム処理能力といったソ
フトウェア性能は、差別化要因と見なされ
ることが多くなっています。そこで、ハー
ティングテクノロジーグループでは、この
分野の動向に注目してきました。
管理業務
従来、ネットワークインフラストラクチャ
は、インテリジェント機能を持つ装置同士
を単純につないだものと見なされてきま
した。しかしその考えは急速に変わりつつ
あり、インフラストラクチャ・ソフトウェア
の重要性は増す一方です。
こういった動向を背景に、ハーティングテ
クノロジーグループでは、インフラストラ
クチャに関する必要な情報をすべて可視
化するダッシュボードを開発しました。ハ
ーティングの管理対象装置をすべて1つ
のインターフェースに集約させることで、
1つの産業ネットワークのインフラストラ
クチャ全体を容易に管理できるようにな
ります。ソフトウェアがトポロジーを自動
認識し、バックグラウンドで絶えず更新し
ていくので、アプリケーションの中断やシ
ステム停止の必要がありません。この手法
では、システム管理者の負担を大幅に減
らせます。さらに、オープンアーキテクチ
ャであるため、Ha-VIS Dashboardには、
他社製の装置を組み込むこともでき、特定
の国際通信規格を満たすことも可能で
す。
新たな挑戦
一方、分散型ネットワークおよびアプリケ
ーションでは、高効率プロセスコントロ
ーラーにはリアルタイム処理、あるいは準
t e c . N e w s 2 2 : ストラ テ ジ ー
リアルタイム処理が求められるようになっ
てきました。システムがトレンドを検知
し、異常な状況を早期発見して適宜に自
動対処できるようにするには、情報を常
に、瞬時に内容に応じて分析しなければ
なりません。
しかし同時に、どのデータパケットが関連
性のあるパケットかを識別して優先処理
するという自動判定プロセスも組み込ま
れています。上記のような要件を持続的
に満たし、リアルタイム性や定時性が求め
られるプロトコルやメッセージのオートメ
ーションレベルを超えた優先処理を実現
するべく、ハーティングテクノロジーグル
ープが踏み出した重要な一歩がファスト
トラックスイッチ (FTS) 技術の採用です。
複合イベント処理 (CEP) およびリアルタ
イムイベント処理 (RTEP) の考えに基づ
いた革新的なシステムコンセプトを実現
させるために、Fast Track Switch は、
企業ネットワークにとって最も重要な定
時性保証ゲートウェイなのです。
展望
新たなテクノロジーをハーティングの
Smart Network Infrastructureシステムソ
リューションに組み込むことで、新しいア
プリケーションを持続的かつ自在に導入
することが可能となります。
CEPに関する参考文献:
1. Luckham, David: The Power of Events: An Introduction to Complex Event Processing in Distributed Enterprise Systems, Addison-Wesley Professional, 2002.
In brief
• Smart Network Infrastructure
は、将来の要望にも対応できる
構成や製品、システムを提供しま
す。
• ハーティングは、インフラストラ
クチャに関する必要な情報をすべ
て可視化するダッシュボードを開
発しました。
• Fast Track Switch は、企業ネッ
トワークにとって最も重要な定時
性ゲートウェイです。
2.Eckert, Michael / Bry, François: Complex Event
Processing (CEP), Institut für Informatik, LudwigMaximilians-Universität München, (2009).
3. Gesellschaft für Informatik e.V. (GI)
11
t e c . N e w s 2 2 : ストラ テ ジ ー
さらに先を目指して
ドイツ連邦政府の「Industrie 4.0」プログラムとハーティングのAutomation ITによって、ありとあらゆる企業アプリケ
ーションの連携ネットワークが構築されつつあります。
» Andreas Huhmann, Strategy Consultant Connectivity & Networks, Germany, HARTING Technology Group, [email protected]
ハーティングテクノロジーグループで
は、製造系企業で使用するすべてのアプ
リケーション用の通信プラットフォーム
として Automation ITを構築いたしまし
た。ドイツ連邦政府の「Industrie 4.0」
プログラムに即し、ハーティングはAutomation ITを今よりもさらに進化させ、
製造分野のインテリジェントネットワー
クの更なる拡張を図っていきます。
オートメーションの通信規格としてのイ
ーサネットの登場は、まさにネットワー
12
ク設計の可能性を開くものでした。しか
しアプリケーションの方は、まだその動
きに追いついていません。特に、新たに
出される要件では、異種アプリケーショ
ン間のより緊密な連携が強く求められる
ため、それが問題となっています。統合
する必要があるのは、ERP (Enterprise
Resource Planning、統合基幹業務シス
テム) ソフトウェアをはじめ、MES (Ma­
nufacturing Execution System、製造
実行システム)、SCADAシステム (System Control and Data Acquisition、監
視制御およびデータ収集システム)、制
御システム、エネルギー管理システムで
す。例えば、エネルギー効率というもの
は、たった1つのアプローチで実現でき
るものではありません。異なる企業アプ
リケーション同士が連携しないことに
は、持続可能なプロセス最適化の実現
は不可能です。
企業アプリケーションの連携
異なる企業アプリケーション間のバリア
フリーな連携の必要性については、過去
t e c . N e w s 2 2 : ストラ テ ジ ー
➥ Info
ハーティングは、smart Power Networksの枠組みの中で、エネルギー効率の
課題に取り組んできました。カギとなる分野の1つが、電力網の管理を助ける統
合イーサネット・ネットワークの利用です。ネットワーク管理は、SNMPなどの
IT技術を使って簡素化します。この統合システムに必要な端末装置であるスマ
ートパワーユニットは、複数のアプリケーションに使用できるようになっていま
す。ハーティングでは現在、オートメーション制御・調整レベルへの統合、およ
びエネルギー管理システムにおける統合に特に力を入れています。ハーティン
グは、ハノーバー・メッセ2012にて、スマートパワーユニットとその統合につい
てご紹介する予定です。
において重要視されず、それが一因とな
って、企業ITとは全く異なる道筋をオー
トメーション開発はたどってきました。
その結果、従来のオートメーションで
は、アプリケーション固有のネットワー
クが構築され、オートメーションのフィ
ールドバスから他の企業アプリケーショ
ンへの通信は、ゲートウェイを介して行
われていました。オートメーションネット
ワーク内の装置は特定のオートメーショ
ンアプリケーションに割り当てられるこ
とが常で、
マスターコントローラー、つま
り従来のPLC (プログラマブルロジック
コントローラー) 下のリニアトポロジー
のフィールドバスによって接続され、それ
は今も変わっていません。
しかしオートメーション用の通信規格と
してイーサネットが導入されたことで、ネ
ットワーク設計の可能性が大きく開か
れ、トポロジー上の自由も生まれました。
マスターコントローラーは、多くのケー
スで機能的にはまだ存在しているもの
の、現在は柔軟な形でネットワークに統
合できるようになっています。他の企業
アプリケーションに関しては、コントロ
ーラーは論理的な情報中継点としてむし
ろ好まれ、ゲートウェイの機能を担って
います。
かくして物理ネットワークによる統一・
融合された通信プラットフォームの形成
にいたりましたが、この通信プラットフォ
ームで使用されるアプリケーションは、
大部分は論理的には独立しています。従
来のオートメーションは、セキュリティー
ハーティングでは、異なる企業アプリケーションの連携
を現場レベルに落とし込むことで、オートメーションIT
構想の実現に一歩大きく近づきました。」
13
t e c . N e w s 2 2 : ストラ テ ジ ー
上の理由もあり、常に自己完結的に機能
するため、オートメーションアプリケー
ションの観点から見たとき、この独立性
を手放す動機がなかったのです。
「オー
トメーションアイランド」とも呼ばれるこ
の手法は、プロセス全体を制御するのに
企業アプリケーション間で情報を共有
する必要性がないのであれば、致命的で
はありません。しかし、この情報交換こ
そが、新しいアプリケーションが必要と
しているものです。
➥ Info
• ERPソフトウェアについては、生
産、財務および会計 (コストセン
ターの割り当て) 、コントローリン
グ (エネルギーコストの製品への
割り当て) 分野が該当しました。
• MES/SCADAシステムについて
は、生産や製品データの記録 (エ
ネルギーデータは、労働時間や
人、製品などのデータと同じよう
な形で記録) と生産発注管理を考
慮せねばなりません。
• 制御管理システムでは、起動や停
止、スタンドバイ管理、休止 (エネ
ルギー管理システムなどの外部仕
様に基づく) などのプロセスの制
御と調整が主な課題です。
• 一方、エネルギー管理システムで
は、主にデータ処理と分析、負荷
管理 (休止管理など)、DIN 16 001
で規定されている要求事項への対
応が求められます。
14
エネルギー効率 ― 今後の課題
エネルギー効率については、企業アプリ
ケーション間のハイレベルな連携が必要
です。具体的にどのアプリケーションを
詳しく検討すべきか、ハーティングと
DFKI (ドイツ人工知能研究センター) と
で共同で評価を行い、次のような結果を
得ました。 (➥ Info).
エネルギー効率の枠組み内で考慮すべ
き様々な企業アプリケーションは、機能
分野がこのように多岐にわたることか
ら、エネルギー効率をたった1つのアプ
リケーションに委ねることは不可能で
す。
もちろん、エネルギー管理システムを導
入し、生産プロセスに手を入れれば、エ
ネルギー利用の最適化と消費削減に一
役買うでしょう。しかしこのアプローチ
では、長期的な効果しか考えられませ
ん。さらに、自動化することもできず、大
幅に変動する電気料金など、常に変化し
続ける状況に柔軟に対応できません。し
たがって、持続可能なプロセス最適化
は、異なる企業アプリケーション同士が
プロセス最適化の枠組み内で連携しな
い限りは、実現不可能です。個々に想定
されるケース、例えば休止管理などは、
この点を裏付けています。
生産設備をスタンバイモードにするのは
コントローラーの仕事ですが、コントロ
ーラーがこれを行うには、休止する時間
や長さといった基本的な情報の取得が欠
かせません。また、休止時間に柔軟性を
持たせ、エネルギー利用率と関連付ける
といったケースも想定されるでしょう。
オートメーションとの連携
生産にかかわるアプリケーション間の連
携が欠如している根本的な理由の1つ
は、産業用オートメーション通信のコン
セプトに見出だすことができます。この
通信プロセスは基本的に周期性を持っ
て発生するものです。中央コントローラ
ーは、ネットワークのトポロジー上の特
徴を完全に把握した上で、分散している
ユーザーと一定の周期で通信を行いま
す。この方法は、情報が予定通りに、保
証された時間に受信側に届くようにする
唯一の方法です。
t e c . N e w s 2 2 : ストラ テ ジ ー
このように、設定された時間応答によっ
てアプリケーションとネットワークとを
連結させる仕組みは、
「調整の枠組みの
中で複合サービスに組み込まれるように
サービスを形成する」という形態のオフ
ィスITでは未知のものです。ネットワー
クは、個々のアプリケーションに対して、
何らかの定義したパフォーマンスを保証
する必要があります。
産業環境のアプリケーションの連携を
可能にする方法の1つに、オートメーショ
ンを1つのサービス指向アーキテクチャ
(SOA) として構築する方法がありま
す。SOAでは、単純プロセスを複数組み
合わせて1つの複合プロセスにします。
この複合プロセスを使用するには、イン
ターフェースさえ分かっていればよく、単
純 プロセスに関する情 報は不要で
す。SOAアーキテクチャは、企業アプリ
ケーションを統合する上で大きなメリッ
トがあり、この件については、カイザース
ラウテルンの展示会にてDFKIの最初の
デモンストレーターが次のように紹介し
ています。
「Office ITに匹敵するIT技術
を適宜活用することで、革新的、とりわ
けより性能の高いオートメーションソリ
ューションが生まれます。」
HARTING Ha-VIS Dashboardを用い
たソリューション
企業ITとオートメーション分野のアプリ
ケーション同士を連携させる方法はいく
つもあります。HARTING Ha-VIS Dashboardは、企業アプリケーションの下、単
純通信の上に置かれます。HARTING HaVIS Dashboardではネットワーク構造
全体の管理ができますが、それだけでは
ありません。
例 え ば D a s h b o a r d サ ー ビ スで
は、RFID(Radio Frequency Identification)とインテリジェントなスマートパワ
ーユニットとを企業アプリケーションに
シームレスに統合することができます。
スマートパワーユニットは、PROFINET
I/Oスタックを用いて制御技術の中へ統
合でき、またERPやMESなどの企業ア
プリケーションの中へは、サービスイン
ターフェースを介することで統合可能で
す。しかし、この統合はまだスタート時
点にすぎません。ハーティングは、企業
アプリケーションの相互連携を推進す
るため、開発に取り組んでいます。個々
のアプリケーション間の論理関係を確立
し、エネルギー効率のよい生産を実現す
ることが目標です。
ハーティングでは、異なる企業アプリケ
ーションの連携を現場レベルに落とし込
むことで、オートメーションIT構想の実
現に一歩大きく近づきました。ここでは
融合イーサネット通信プラットフォーム
によってアプリケーション間通信の基礎
が形成されていますが、製品プロセスを
持続可能な形で最適化するにはアプリ
ケーション同士を連携させる必要があり
ます。 In brief
•オートメーション用の通信規格と
してイーサネットが導入されたこ
とで、ネットワーク設計の可能性
が大きく開かれました。
•SOA (サービス指向アーキテクチ
ャ) は、産業環境のアプリケーシ
ョン間の連携を実現する1つの方
法を提供します。
•HARTING Ha-VIS Dashboardで
は、ネットワーク構造全体の管理
が可能です。
15
t e c . N e w s 2 2 : ストラ テ ジ ー
オートメーションにおける
サービス指向アーキテクチャ
ビジネスITにおけるサービス指向アーキテクチャ (SOA: Service-oriented architectures) は、オープンにアクセスで
きて再利用もできるサービスを用いることで、柔軟性と相互運用性を高めます。現在、このコンセプトは、オートメーシ
ョンの分野にも適用されつつあり (SOA-AT)、大きな将来性を示しています。
»D
ipl.-Ing. Lisa Ollinger, Technical University Kaiserslautern
Dr.-Ing. Jochen Schlick, Deputy Head Innovative Factory Systems IFS, German Research Center for Artificial Intelligence (DFKI) GmbH
Dipl.-Ing. Stefan Hodek, German Research Center for Artificial Intelligence (DFKI) GmbH
サービス指向アーキテクチャ (SOA) の概念は、
ここ数年の間に情報技術の分野で確立され、主に
ビジネスプロセスで使用されています。」
16
t e c . N e w s 2 2 : ストラ テ ジ ー
サービス指向アーキテクチャ (以下
「SOA」) の概念は、ここ数年の間に情
報技術の分野で確立され、主にビジネ
スプロセスで使用されています。そもそ
もSOAとは、ソフトウェアアーキテクチ
ャの抽象概念で、様々なメソッドやアプ
リケーションを、オープンにアクセスで
きて再利用もできる「サービス」とする
ことで、プラットフォームに依存しない
利用および再利用を可能にするもので
す。
SOAの概念を産業オートメーション技
術に適用させるには、工場の制御システ
ム内の全ての制御機能をサービスとし
てカプセル化する必要があります。オー
トメーションピラミッドの上位レベルで
は、これらは、SOA-ITで見られるソフト
ウェアオンリーのコンポーネントにすぎ
ません。しかし下位レベルでは、サービ
スはソフトウェアオンリーの機能ではな
く、実際の技術的プロセスを実行する
ためのメカトロニクスの機能そのもので
す。これらのサービスは、技術的プロセ
スに直接影響を及ぼすべく、メカトロニ
クスコンポーネントの物理的状態に対
して作用することができます。ソフトウ
ェアオンリーのサービスとは異なり、こ
こではサービスが実行される位置と、
技術システムの現在の状態とが重要な
役割を果たします。広く普及している
SOAのガイドラインでは、内部状態に関
係なくサービスを使用できるよう、サー
ビスはステートレスで導入することが望
ましいとされています。しかし、メカトロ
ニクスコンポーネントは、
「シリンダー
の現在位置」などのように物理的な状
態を有することがあり、これは製造プロ
セスに対して重要な影響を及ぼしえま
す。そのようなサービスを正確に規定す
るには、ハードウェアの記述と位置の正
MES/ERPレベル
制御レベル
フィールドレベル:
確な情報、さらにソフトウェアの機能的
範囲の記述が必要です。図1は、SOA-IT
とSOA-ATの主な相違点を示していま
す。
このような違いがあるため、オートメー
ションタスクでのSOAの使用は、従来
のSOAアプリケーションとは根本的に
異なります。なにより、一般的な条件や
要求事項がビジネスプロセス用の従来
のSOAアプリケーションとは全く違うた
サービス
「オーダー」
サービス
「プロセス1」
サービス
「バルブの機能」
サービス
「ポンプの機能」
サービス呼出
図1: SOA-AT制御アーキテクチャの例
17
t e c . N e w s 2 2 : ストラ テ ジ ー
め、適切な導入を可能にしつつオートメ
ーションでのSOA使用を体系的にサポ
ートする別の手順や方法、技術が求めら
れます。
SOA-ATの定義とメリット
オートメーションにおけるSOA固有のア
プローチ (ここでは「SOA-AT」としま
す) では、企業の工場環境でのオートメ
ーションタスクSOAを使用するための
概念的枠組みを定義します。基本概念
は、サービス指向アーキテクチャのパラ
ダイムに基づいた統合制御アーキテク
チャの開発です。このようなサービス指
向の制御アーキテクチャには、次のよう
な特徴があります。すなわち、標準化さ
れた通信インターフェースおよびプロト
コルを使用することと、メカトロニクス
機能および制御機能をサービスとして
機能的にカプセル化することです。ここ
では、技術プロセスとのインターフェー
スとなるフィールド機器の基本的な機能
を「基本サービス」と呼びます。基本サ
ービスは、制御プログラムにて上位のサ
ービスへ統合することができるうえ、標
準化されたサービスインターフェースを
介して呼び出すこともできます。図1は、
そのようなサービス指向の制御アーキ
テクチャの例です。この例では、すべて
のコンポーネント間の通信は、サービス
呼出によって行われています。
サービスの標準インターフェース記述
と、標準通信プロトコルの使用により、
サービスはレベルをまたがって呼び出
すことが可能なため、上位レベルのオー
トメーションコンポーネントの縦方向の
統合が非常に簡単になります。またこの
方法では、コンポーネントを交換・追加
するときの統合の手間を大幅に減らすこ
とができます。さらに、制御ロジックは
もはやI/O信号処理による導入ではない
ため、制御プログラミングが根本的に変
わり、サービスを用いることで、より抽象
的なレベルへと引き上げることができま
す。したがって、制御プロジェクトのプラ
ンニングをハードウェアから大きく独立
させて行うことが可能になり、それによ
って、プランニングや再構成プロセスの
自由度が大きく増すほか、プログラミン
グ労力も最低限に抑えられるとともに、
18
制御プログラムの再利用の可能性が一
層保証されます。この前提条件として必
要なものは、個々のメーカーに依存せず
もっぱらコンポーネントの機能に基づい
た一般サービス仕様と、サービス指向の
メリットを完全にサポートする適切なプ
ランニング方法です。
デモシステム
図2に示すデモシステムは、SOA-AT開
発に関するコンセプトの評価用です。こ
の例に挙げた製造プロセスは、充填と
その後の品質チェックとで構成されるプ
ロセスです。ここでは、正確なオーダー
データは、中央データベースには保存さ
れず、RFIDタグ (無線通信による個体
識別タグ) を用いて製品に直接保存さ
れます。独自設計のハードウェアとソフ
図2: サービス指向制御アーキテクチャによるデモシステム
トウェアの構成は、サービスが実装され
るサービスゲートウェイをすべての機器
に持たせる形で拡張されました。フィー
ルド機器のサービス拡張には、
マイクロ
コントローラーが使用され、中央のPLC
(プログラマブルロジックコントローラ
ー) は産業用PCで置き換えられていま
す。マイクロコントローラーはイーサネッ
ト経由でPCに接続され、周波数変換器
やRFIDリーダ/ライタ、電磁誘導/超音波
センサー、カメラなどのフィールド機器
との接続が確立されています。このケー
スでは、フィールド機器とマイクロコント
ローラーの接続は、フィールド機器のそ
れ ぞ れ の イ ン タ ーフ ェ ー ス
(Profibus、I/O信号、RS232など) に
基づき、個々に開発、実装されていま
す。
t e c . N e w s 2 2 : ストラ テ ジ ー
SOA-IT
SOA-AT
アプリケーション領域
ビジネスプロセス
技術プロセス
サービスの定義
ソフトウェアのカプセル化
メカトロニクス機能のカプセル化
サービス仕様
ソフトウェア機能
メカトロニクス機能 + ハードウェアの記述
+ 位置
位置透過性
サービスプロバイダ側に依存しない
サービスプロバイダ側に依存
ステートレス性
ステートレスソフトウェア + プロトコル
ハードウェアの状態に依存したプロセス
ルースカップリング (疎結合)
結合性が強いモジュラープログラミング
モジュラープログラミング + 機械的構造
ターゲット
分散アプリケーション
技術プロセスの実行
表1: SOA-ITとSOA-ATの比較
評価と展望
SOA-ATコンセプトは、企業の工場環境
におけるサービス指向オートメーション
システムの体系的なプランニングおよび
導入の基礎となるものです。現在、SOAATの使用を支援し確立するために、こう
いったシステムに基づくメソッドやガイド
ラインの策定が必要とされています。ス
テートレス性、ルースカップリング (疎
結合)、再利用性、特異性といった側面に
左右される、サービスの最適な定義に焦
点が当てられています。このアプローチ
の普及を図るには、新旧の技術の整合性
のために段階的なSOA-ATの導入を検討
することが極めて重要です。
現在のサービス指向技術の導入は通常、
非常に大きな労力を要することから、製
造プロセスの特別な統制用の標準化さ
れたプロセス記述言語をはじめ、製造プ
ラントのコンピューター支援によるプラ
ンニング・委託・運用のためのメーカー
横断的な意味論上のデバイスやシステム
モデル、さらに、製造におけるサービス
指向アーキテクチャを効率よく構築し処
理するツールが必要です。
➥ In brief
•ビ
ジネスITにおけるサービス指
向アーキテクチャ (SOA) は、オ
ープンにアクセスできて再利用
もできるサービスを用いること
で、柔軟性と相互運用性を高め
ます。
• SOA-ATコンセプトは、企業の工
場環境におけるサービス指向オ
ートメーションシステムの体系的
なプランニングおよび導入の基
礎となるものです。
19
t e c . N e w s 2 2 : ストラ テ ジ ー
安定した競争力
ハーティングのコーポレートテクノロジーサービス (Corporate Technology Services, CTS) では、ハーティングテ
クノロジーグループ全社の試験・検査業務を行うとともに、グループ内の戦略的技術開発を担当しています。
» Dr. Stephan Middelkamp, Consultant Strategic Technology Development, Germany, HARTING Technology Group, [email protected]
ラボラトリーで扱う試験の範囲は、新技
術や新市場、新製品に合わせて絶えず拡
大しています。」
真空プラズマコーティングシステムで発生したアーク
集束イオンビームによって画像化された3D-MIDコンポーネントの導体路の断面
20
CT (コンピュータ断層撮影) によるHARTING PushPull Power 48V の画像
t e c . N e w s 2 2 : ストラ テ ジ ー
➥ In brief
• ハーティングのコーポレートテクノロジーサービスは
基礎研究と試験・検査業務を担当
• ISO/IEC 17025認定
• 高名な研究機関との連携
• 新製品の開発をサポート
ハーティングテクノロジーグループは、ドイツで研究に最
も力を入れている事業会社の1つです。グループが重視するの
は、単なる製品ラインナップ強化にとどまりません。ハーティ
ングの考え方や取り組み方はもっと急進的です。つまり、一方
では基礎研究を行い、もう一方では、要件の厳しい試験業務
を実施することで、世界で最もダイナミックな産業分野の1つ
においてノウハウの蓄積でリードしています。その中心部門が
コーポレートテクノロジーサービス (Corporate Technology
Services, CTS) で、ハーティングテクノロジーグループ内で
これら2つの中核業務を担当しています。ハーティングの試験
専門家たちは、高度な最先端実験設備や試験機器を利用す
ることができます。
品質と独立性
充実した設備を誇るCTSのラボラトリーはISO/IEC 17025認
定を受けており、試験結果はすべて、品質と独立性が保証さ
れています。業務内容は、認定を受けた電気的/機械的/耐候
性試験、信号品質 (シグナルインテグリティ) および光ファイ
バー試験、ソフトウェア試験、EMC(電磁両立性)試験、コー
ティングや材料特性の検査、寸法検査などで、事実上全てハ
ーティング製品に役立てられています。
ラボラトリーで扱う試験の範囲は、新技術や新市場、新製品
に合わせて絶えず拡大しています。例えば、屋外で使用する製
品のニーズ拡大に伴い、紫外線放射試験や太陽シミュレーシ
ョン、オゾン試験などの試験能力を増強しました。鉄道部門
に関しては、2台の車両間のトランジションポイントでのケー
ブルの動きをシミュレーションするジャンパーケーブル試験
設備を設置しました。インテリジェントインフラストラクチャ
分野の動向、および異なるシステム間のネットワーク化の増
加を受けて、適切なソフトウェア試験の必要性が生じていま
す。これらの試験は、ハーティングがシステムサプライヤーと
して独自開発しているマネージドスイッチやRFIDリーダ用の
ソフトウェアといった分野をカバーします。
す。このほかに、材料分析用に集束イオンビーム装置も追加し
ました。
優秀なパートナーとの連携
新技術の開発では、CTSは高名な研究機関と連携しており、
例えば、ドイツ科学省支援のプロジェクトではベルリン工科
大学(TU Berlin)と連携しています。さらにCTSでは、研究プ
ロジェクトの直接委託、学生の研究プロジェクトや論文の監
修も行っています。
CTSでは、3D-MID (Molded Interconnect Devices、立体回
路部品) など、ハーティングのテクノロジープラットフォーム
のさらなる発展を見据えた集中研究プロジェクトが実施され
ています。目的は低温はんだの信頼性を検証することによっ
て材料選択肢を拡大すること、LDS (Laser Direct Structu­
ring、レーザー加工法) に適した着色プラスチックの開発など
です。後者の研究は、ハーティングの開発部門や顧客にとっ
て、開発上の選択の幅の拡大に貢献しました。
新製品開発
CTSは、その試験実施能力を用いて新製品の開発もサポート
しています。例えば、大電流用PCBコネクタ Han-Fast ® Lock
の開発段階では、通電容量測定を実施し、これによって、ユ
ニットの最適化を図ることができました。また、化成処理の確
立と導入により、Han ®ハウジング製品の耐食性が大幅に向上
し、ユーザーにとって直接的なメリットとなりました。さらに、
世界の動向に合わせた長期プロジェクトも始まっています。
資源の減少に伴い、使用原材料の代替ソリューションは重要
なテーマの1つです。真空プラズマコーティング用の内部試験
施設ではナノコーティングの塗布ができ、その後試験室にて
コーティングの特性試験の実施や認定が可能です。
CTSではさらに、試験方法や検査方法の強化にも取り組んで
います。例えば、ラボラトリーでは、従来の2Dでの光測定の
強化策として、CTスキャナーを用いた3D測定を行っていま
21
t e c . N e w s 2 2 : ソリュー ション
正確な接続作業
パワーエレクトロニクスは接続技術に厳しい要求を突き付けます。PCBとHan ®産業用コネクタは素早く確実に接続せ
ねばなりません。そんな作業も、Han-Fast ® Lockを使用すれば、別のコンポーネントを追加せずとも、簡単、シンプル
かつフレキシブルに実施できます。
» Thomas Wolting, Product Manager, Germany, HARTING Technology Group, [email protected]
パワーエレクトロニクスには、様々な
分野から厳しい要件が課せられます。厳
しい環境下で用いられるため高い保護等
級が特徴的な市場、例えば再生可能エ
ネルギーや輸送、ロボット、オートメー
ションなどの市場では、コンパクトで高
効率のソリューションが求められます。
そこで最適な特性をハウジング側から提
供するのがHan®コネクタです。
ハウジング自体の要件は基本的に知ら
れており、ソリューションも開発されフィ
ールドでの実績もあります。しかしパワ
ーエレクトロニクスの部分は、さらに厳し
い要件を満たす必要があります。つま
り、Han®コネクタからPCBまで電気を通
さねばならないという点です。これにつ
いて、ハーティングテクノロジーグルー
プでは完璧なソリューションを見つけま
した。Han-Fast ® Lockを用いること
で、Han®コネクタとPCBを簡単に素早
く、かつ経済的に接続できます。
内部詳細
Han-Fast® Lockでは、PCBにコンポーネ
ントを追加しなくとも、大電流に関する
要件のほか、容易な操作性、効率のよい
サイズといった要件を満たします。
この点は、アプリケーション設計時や組
み立て・点検時に大きな利点となりま
す。もとより接続性能や信頼性が損な
われることがあってはなりませんが、高
い柔軟性と点検・保守時の扱いやすさ
は、パワーエレクトロニクス製品の2大
要件でもあります。この点は、PCB製造
22
PCBとの接続のために用意されたベントワイヤ付きのHan ® Q 4/2コネクタ
のトータルコストを最適化し、装置コス
ト (TCO - 総保有コスト) を最低限に抑
えるためにも必要です。Han ®コネクタ
とHan-Fast ® LockによるPCB接続で構
成される組み合わせ式のコネクタユニッ
トは、シンプルでエラーフリーな組み立
てを可能にします。
Han-Fast ® Lockを使えばPCBの製作は
簡単です。PCBに最大60Aの電流を流す
ことには特に秘訣はありませんが、コン
パクトで柔軟、かつシンプルな接続を実
現できるのはHan-Fast ® Lockだけです。
接続に必要なコンタクトポイントは1つ
のみ。プリント導体は貫通プレート式で
穴加工してあり、サポートポイントが用
意されています。これ以外の準備は要り
ません。これで、高価なコンポーネント
を別途用意することなく、技術要件と温
度管理に対応することが可能です。
シンプルなプロセス
Han-Fast ® Lock接続エレメントの扱い
はシンプルです。ロットが小さい場合は
t e c . N e w s 2 2 : ソリュー ション
Han-Fast® Lockを用いることで、Han®コネクタと
PCBを簡単に素早く、かつ経済的に接続できます。」
PCBに装着したHan-Fast ® Lock
圧着工具で、ロットが大きい場合は全自
動機械での処理が可能です。H an Fast ® Lock接続エレメントは、コイル状
で納品されるため、より線をそのまま素
早く追加できます。装置メーカーは既製
システムを活用することもできます。
Han-Fast ® Lock接続エレメントでは、最
大 1 0 m m ² のより線 を 使 用 で きま
す。PCBへの接続は組み立てと同様に簡
単です。組み立てたコンタクトを準備し
たPCBに挿入します。ロッキング機構は
Han-Fast ® Lockの1部です。備わってい
るピンがPCBに押し付けられ、固定され
ます。機能はこの上なく簡単で、市販の
押しボタンに匹敵する容易さです。
➥ IN BRIEF
•H
an-Fast® Lockでは、大電流に
関する要件のほか、容易な操作
性、効率のよいサイズといった要
件を満たしています。
• Han®コネクタとHan-Fast® Lock
付き終端PCBで構成される既製
のコネクタユニットは、シンプル
でエラーフリーな組み立てを可能
にします。
• コンパクトで柔軟、かつシンプル
な接続を実現できるのはHanFast® Lockだけです。
23
t e c . N e w s 2 2 : ア プリケー ション
あらゆる用途に対応する
高速FTS性能
ハーティングでは、オートメーションデータの優先処理にファストトラックスイッチ (FTS) 性能を用いることで、リアル
タイムネットワークの構築をサポートしています。現在、ヒルシャー (Hilscher) 社も端末ユニット用のチップソリューシ
ョンとしてFTSをサポートしています。これによって、システム全体を通して一体化された柔軟な設計が実現します。
» Anja Dienelt, Product Manager Ethernet Switches, Germany, HARTING Technology Group, [email protected]
FTSは高度なスイッチング技術であるという事実は、FTS技
術を使用する上で重要な点です。ファストトラックスイッチン
グは、ストア&フォワード方式やカットスルー方式と並ぶ、ス
イッチングマトリクスに実装される標準イーサネット技術要
素の1つです。Modbus/TCP、PROFINET、Ethernet/IPなど
の識別可能なプロトコルはすべて、カットスルー方式を用い
てFTSにより定時応答的に加速化でき、保証された最短時間
で通信機器間の転送を行うこと可能です。識別されたデータ
は優先して加速化され、行く手を阻む非優先データを「追い
越し車線」上で追い抜いていきます。ネットワークにFTSを用
ハーティングのお客様は、Fast Track
Switchを用いることで、定時性が保証さ
れたリアルタイムネットワークを構築で
きます。」
いる場合、端末ユニット側では特に何もする必要がない、とい
うのは重要なポイントです。定時性はネットワークそのもの
によって保証されています。すべての製品の適合性を評価す
る体制をユーザー側で整えることを考えずにすむのは、この
ためでもあります。ハーティングのお客様は、Fast Track
Switchを用いることで、定時性が保証されたリアルタイムネ
ットワークを構築できるのです。
リニア構成もサポートするFTS
FTSスイッチは市場に受け入れられ、一様に良い評価を得て
います。しかしハーティングは、一体化アプローチという観点
から、オープンなマーケット戦略を追求しています。例えば、
ヒルシャー (Hilscher) 社も現在、ファストトラックスイッチン
グをサポートしており、展示会SPS/IPC/DRIVES 2011にて
最新世代のnetXリアルタイムイーサネットコントローラーを
紹介しました。netX にはファストトラックスイッチ機能が備
わっており、さらにnetX 51/52は搭載されているARM CPUに
よって完全な転送プロトコルを実現します。上述したような
24
FTSファミリー
データは、ファストトラックスイッチングおよびこれらのASIC
を用いて定時応答的に加速化することが可能です。チップは
PHYを2個内蔵し、競争力のある価格設定になっています。タ
ーゲットは、
マシンやプラントにてリニア構成で従来の使い方
をするI/Oコンポーネントなどの製品を製造する機器メーカ
t e c . N e w s 2 2 : ア プリケー ション
ヒルシャー (Hilscher) 社のnetX
ーの市場です。ハーティングとヒルシャー社は、ファストトラ
ックスイッチング技術の互換性を維持し、開発を継続するこ
とで合意に至っています。それぞれのテストも成功裏に実施
されました。これによって、FTSスイッチと、FTS 3‐ポートス
イッチを備えた端末ユニットとで構成されるリニアトポロジ
ーの統合ネットワークを構築することが可能となっていま
す。Fast Track SwitchはFTS未対応の装置との互換性があ
り、両者が混在した環境での使用が可能ですが、間に接続さ
れている他のタイプのホップ数が少ないほど、オートメーショ
ンセクション全体のパフォーマンスがよくなり、全データが定
時に到達します。
➥ In brief
• 定時性はネットワークそのものによって保証され
ています。
• F TSスイッチとFTS 3‐ポートスイッチを備えた端
末ユニットとで構成されるリニアトポロジーの統
合ネットワーク
25
t e c . N e w s 2 2 : ソリュー ション
ネットワーク
コントロールセンター
システムコンポーネントはインテリジェントとはいえ、複雑なイーサネット・ネットワークの管理は非常に難しい業務で
す。ハーティングの Ha-VIS Dashboardを使えば、正確な概況把握と的確なアクセスが可能です。
» Olaf Wilmsmeier, Product Manager Software, Germany, HARTING Technology Group, [email protected]
ハーティングテクノロジーグループが開発したHa-VIS Dash-
boardは、イーサネット・ネットワークの中央運用管理ソフトウェ
アとして機能します。ソフトウェアは、管理対象のイーサネット装
置の一元管理やイーサネット・ネットワークの監視、イベントやア
ラーム管理、パフォーマンス監視といったタスクを処理します。
ハーティングテクノロジーグループが開
発したHa-VIS Dashboardは、イーサネッ
ト・ネットワーク用の中央運用管理ソフト
ウェアとして機能します。」
ハーティングテクノロジーグループは、このHa-VIS Dashboard
を主に複雑かつパワフルなIPベースの通信ネットワークの監視・
設定・保守用途に開発しました。このDashboardでは最大256台
のネットワーク装置の認識・管理が可能です。応用分野は、産業
界のネットワークインフラストラクチャをはじめ、エネルギー技
術の幅広い分野、さらに輸送アプリケーションにいたるまで対応
します。
経由で一元的に行うことが可能です。イベントのリンクアップや
リンクダウンを検知してビジュアル表示します。イベント(受信
SNMP (Simple Network Management Protocol) )等のトラッ
プ は、Eメール通知やプログラム呼出などのアクションを自動的
に実行させることができます。こういった柔軟な設定が可能な
機能を用いることで、ネットワーク内のイベントに対する応答時
間が向上します。
解析と統計
Ha-VIS Dashboardは、イーサネット・ネットワークを簡単に監
視・管理できるだけでなく、解析オプションも提供します。ポー
ト単位で選択した接続のネットワーク負荷を周期的にサンプリ
ングし、結果はスケール調整されたダイアグラムで表示します。
トポロジーの検出
ソフトウェアは管理可能なネットワークユニットを検出し、ネッ
トワークトポロジーを自動的に表示することができます。ハーテ
ィングのインテリジェントなネットワークコンポーネント (現時
点では、mConおよびFast Track Switch製品群、RF-R500 RFID
リーダー) はすべて、中央監視・管理が可能です。今後新たに開
発するものとの互換性も保証されています。さらに、他社製のネ
ットワークコンポーネントに対してもオープンなソフトウェアで
す。
自動イベント処理
ハーティングのHa-VIS Dashboardでは、検出した装置の設定を
WebやSNMP、Telnet、SSH (セキュアシェル) インターフェース
26
ネットワーク負荷の記録
t e c . N e w s 2 2 : ソリュー ション
外部プログラムを自由に統合
外部プログラムの呼出は、設定上でHA-VIS Dashboardのメニ
ュー構造に取り込むことができます。以上のように、HA-VIS
Dashboardは可視化および管理を一元的に行うソフトウェアと
して活躍します。
➥ IN BRIEF
• ハーティングは、Ha-VIS Dashboardを主に複雑か
つパワフルなIPベースの通信ネットワークの監視・
設定・保守用途に開発しました。
• ソフトウェアは管理可能なネットワークユニットを
検出し、ネットワークトポロジーを自動的に表示す
ることができます。
• 他社製のネットワークコンポーネントに対してもオ
ープンなソフトウェアです。
トポロジーの自動検出
27
t e c . N e w s 2 2 : ソリュー ション
スモール・インテリジェン
ス・パッケージ
エネルギーフロー制御の重要性がますます高まっています。ハーティングテクノロジーグループでは、実用性が高く持
続可能なコンセプト、
「 smart Power Networks」を提案いたします。
»M
arkus Simons, Product Manager Power Networks, Germany, HARTING Technology Group, [email protected]
John Witt, System Application Manager, Germany, HARTING Technology Group, [email protected]
コストの上昇や政治の圧力は無視できるものではありませ
ん。エネルギーを大量消費する企業は、自社のエネルギー消
費を徹底的に調べることが賢明でしょう。このような場合に、
可能なソリューションに対する基本的な取り組み方は2つあり
ます。1つは、最低限の目標として、消費レベルを使用者のレベ
ルに具体的かつ明確に合わせて浪費を防ぐための受動的なエ
ネルギー管理システムを構築することです。
ハーティングテクノロジーグループで
は、実用性が高く持続可能なコンセプ
ト、smart Power Networks を提案いた
します。」
smartPN Unitは、標準化されたインターフェースを使ってデー
タを収集し、イーサネット経由で転送します。データはデータ
ベースに保存され、外部アプリケーション用に加工することも
できます。さらに、こういったデータを製造工程にフィードバッ
クすることも可能です。
これよりもさらに強力な取り組みが、エネルギーの消費と利用
を制御するという能動的なエネルギー管理です。この方法で
は、エネルギーは本当に必要なときにしか使用しません。こう
いったシステムでは、供給網の負荷が正確にコントロールされ
ます。
データベースは情報供給が柔軟で、システムの実際のエネル
ギー消費について的確な結論を導くことができます。標準的
な各種レポートは、15分単位のデータをもとに作成可能で、さ
らにこれにユーザーが作成したレポートを必要に応じて加え
ることもできます。データアーカイブにアクセスすれば、例え
ば前年の消費データとの比較レポートも可能です。データ素
材はもちろん、他システムへのエクスポートや、他システムでの
使用も可能です。また、このシステムではユーザー管理と認証
管理も行えます。プロセス分析については、1秒単位の値を基
に、スナップショット表示を作成できます。
ハーティングテクノロジーグループの開発チームは、このよう
な要件に取り組む中で、ハードウェアとソフトウェアのソリュー
ションを1つのパッケージに効果的に組み合わせた「HARTING
smart Power Networks」というコンセプトを生み出しました。
そのシステム構成は、smartPN Unit (smart Power Unit)、ア
プリケーションのケーブル配線、エネルギー測定装置、ソフト
ウェアです。システムアーキテクチャはハーティング製なので、
ハードウェアとソフトウェアの相性はぴったりです。
システムは使いやすい設計になっており、ユーザーはプログラ
ミング技術を持っていなくてもシステムを最大限に活用でき
ます。エネルギー消費を最適化するための取り組みを行うこと
も簡単です。システムの設置は柔軟で、非常に経済的です。休
憩時間はエア・コンプレッサーや暖房・冷房をオンオフするな
どで、適正に省エネすることができます。早い段階でバラつき
を検知するようパラメーターを調整できるので、対策を講じる
ことができます。
分散配置したエネルギー測定装置からのデータは、例えばシ
ステムのメイン分配ユニット内にあるsmartPN Unitによって
28
収集・処理され、エネルギー消費の登録と記録が可能になり
ます。これらのデータは、加工や視覚化ができ、ISO 50001や
DIN 16 001規格用に文書化することも可能です。
t e c . N e w s 2 2 : ソリュー ション
エネルギー
理論解析装置
カウン
ター
カウン
ター
測定
装置
mCon
プロセス
smartPN
Unit
カウン
ター
DO
プロセスへ
フィード
バック
LAN
構成
エネルギー管理
外部アプリケーション
へのデータ提供
データベース
smart Powerユニット システム環境
➥ IN BRIEF
• ハードウェアとソフトウェアソリューションを効果的に
組み合わせた smart Power Networksコンセプト
• システムの実際のエネルギー消費に関する的確な結論
を導くことができるデータベース
• 柔軟性が高く、経済的で、使いやすいシステム
smart Powerユニット
29
t e c . N e w s 2 2 : ソリュー ション
過酷な環境用のパワフル
な診断装置
修理や保守作業にRFIDによる無線通信ベースの個体識別や情報処理を用いることで、オートメーションがさらに万全
なものとなります。鉄道や輸送、エネルギー技術など、過酷な環境条件下でのアプリケーションでは、それによるメリ
ットがあります。
» René Wermke, Product Manager RFID Transponder, Germany, HARTING Technology Group, [email protected]
オートメーションにおけるMRO (Main-
tenance, Repair and Overhaul ‐ 保守、
修理、整備) には大きな可能性がありま
す。RFIDシステムコンポーネント (無線
通信による個体識別) の導入で大幅な進
歩が期待できます。ここでハーティング
テクノロジーグループが注目しているの
は、まず1つは、大きな成長が見込めるエ
ネルギー市場、例えばこの場合タービン
の保守やエネルギー分配などです。さら
に、ハーティングのRFID開発では鉄道
技術 (輸送) も重視しています。
長年にわたるお客様と共同で、鉄道技術
の保守管理における要求事項に特化し
た、新たなソリューションやコンセプトの
開発を行っています。Ha-VIS RFIDシリ
ーズのコンポーネントは、この分野での
使用に特に適しており、堅牢性、信頼性、
耐久性が評価されています。こういった
特性はすべて、過酷な環境が特徴的な市
場分野でのアプリケーションにとって必
要不可欠な前提条件です。
製品ライフサイクルを通してコンポーネ
ントレベルで絶えず蓄積されていく現在
の履歴やそれに伴い増加するデータ量を
保存する必要性があるため、記憶容量の
増大と、1.5mを大幅に超える読み取り距
離への対応が求められます。こういった
背景から、内蔵センサーシステムの中期
的開発は、可能であると同時に有益でも
あります。これによりハーティング
は、RFID分野における技術革新のパイ
オニアとしての地位を今後も維持してま
いります。
➥ IN BRIEF
• 保守、修理、点検にRFIDを使用
• 過酷な環境に最適
• 鉄道およびエネルギー技術を重視
30
t e c . N e w s 2 2 : ソリュー ション
標準化を目指して
プリント回路基板接続用コネクタとして2011年に市場に投入したハーティングのhar-flex ® 製品シリーズは、産業用機
器の自由な設計の可能性を広げます。
» Andreas Huhmann, Strategy Consultant Connectivity & Networks, Germany, HARTING Technology Group, [email protected]
Michael Seele, Product Manager har-flex®, Germany, HARTING Technology Group, [email protected]
未来のスタンダード? 産業用制御エ
ンジニアリングの歴史から、har-flex は
製品発展の過程において必需品であった
かもしれません。 産業用コントローラ
ーが導入され始めた頃は、自由に入手可
能な汎用性のあるコネクタに重点が置
かれていました。その結果、DIN 41 612
に準拠したコネクタは、当時広く普及し
てIEC 60297で標準化されたラックシス
テムの基礎となっていました。
®
第2世代になると、製品の設計はそれま
での非常にオープンなアーキテクチャー
から離れていきます。独自開発の制御ユ
ニットに加え、I/Oプラグインユニットの
ためだけにバックプレーンが使用されま
した。
その後の更なる進化では、従来のラック
は取って代わられることになりました。メ
ーカーはプラグインフレームを持たない
モジュールを個別に開発しました。個々
のモジュールは相互接続され、ラックも
バックプレーンも用いず、コントローラー
に直接プラグインします。コネクタは、相
互接続方式に合わせた固有のソリューシ
ョンと一緒に開発され、オートメーション
モジュールの重要要素の1つとして実装さ
れるようになりました。
現在、産業用コントローラーの接続技
術は新しい世代を迎えています。これま
での独自開発の接続方法は、利益の面、
技術の面からも、競争環境に適さなくな
り、har-flex® のような、自由に入手でき
る汎用性の高い製品が市場に登場して
います。
har-flex® コネクタは産業界では必須で
ある堅牢性を備えているだけでなく、サ
イズも非常にコンパクトで、接続の分野
に最適な性能を有しています。サイズ展
開も極数展開も豊富で、モジュール設計
の最適化が可能です。SMT (表面実装
技術) 接続と、オートメーション機械と
互換性のあるパッケージングにより、大
量生産を経済的に行えます。このよう
に、ハーティングテクノロジーグループ
は、 DIN 41 612 コネクタのようなアプ
ローチを継続しつつ、産業用制御システ
ム向けに革新的な接続技術を提供して
まいります。
➥ IN BRIEF
• 堅牢で非常にコンパクト
• 豊富な製品構成による高い柔軟性
• SMT技術によるコスト削減
31
t e c . N e w s 2 2 : ア プリケー ション
位置決め制御
制御およびエネルギー供給がHan-Yellock® で保証されているロボットは、選別
作業や位置決め、パッケージングなどの操作を素早く正確に実施します。
» Frank Quast, Head of Product Management Han®, Germany, HARTING Technology Group, [email protected]
SCARAロボットシステム
SCARA (Selective Compliance Articulated Robot Actuator) という呼び
名で分類されるロボットシステムを使用
しない近代的製造業は想像もできませ
ん。このタイプのロボットはその素早い
動作から、いわゆる「ビックアンドプレ
シリンダーなどの部品の合わせ位置が
指定されていれば、どんなロボットでも
ほぼ、この操作を実行できます。ただし
ごくわずかな誤差があると、その合わせ
作業は実施できません。しかし、そのよ
うな制約はSCARAシステムには当ては
まりません。SCARAでは自動調整が可
Han-Yellock®インターフェースには、本格的なパ
ワーパック Han® EEEモジュールが含まれていま
す。」
ース」と呼ばれる用途、つまり部品をあ
る場所 (a) から別の場所 (b) へ移動させ
る用 途のために特 に開 発されまし
た。SCARAマシンが特に優れているの
は、ジョイント部の許容誤差を補正する
能力です。
能で、位置の誤差を補正して作業を遂行
します。
ロボット制御
近年、SCARAロボットの性能は着実に
進歩すると同時に、装置の据付も従来よ
りも簡単かつ柔軟にできるようになり、こ
れによって効率のよいインターフェースが
使用できるようになっています。ハーティ
ングのコンポーネントが活躍するのはこ
の部分です。
SCARAシステムはコントローラーによっ
て制御され、従来の生産ラインや生産過
程へ組み込まれます。運動エネルギー用
の電流を運ぶパワーコンタクトは、ロボ
ットに振動が生じた場合でも、中断する
32
ことなく確実に機能しなければなりませ
ん。Han-Yellock®インターフェースに、本
格的なパワーパックHan® EEEモジュー
ルが含まれているのはこのためです。コ
ンタクト数は20で、それぞれ500Vの動作
電圧で16Aの電流を流すことができ、ごく
限られたスペースでも使用可能です。
ロボットユニットには、トルク監視や自己
診断、割り込みといった機能が搭載され
ているため、インターフェースにはI/O送信
用の絶縁モジュールも組み込まれていま
す。個々のモジュールは別々に組み立てが
可能で、工具を使用しなくてもハウジン
グフレームに固定させることができます。
さらに、ハウジングはレバーがないタイ
プで、わずかなスペースしか取らず、コン
トローラーの外観に見事に調和します。
省スペース化をさらに進めるため、メーカ
ーではSCARAコンセプトの小型化に全
力で取り組んでいます。小型化による効
率アップのため、モデルは軽量化傾向に
あります。
t e c . N e w s 2 2 : ア プリケー ション
➥ IN BRIEF
• モジュールは別々に組み立て可能
で、工具を使用しなくてもハウジ
ングフレームに固定可能
• システム全体の価値を伝えるデ
ザイン
• コンタクト送電は防振設計
33
t e c . N e w s 2 2 : ソリュー ション
オールラウンド
プレーヤー
Han-Modular ® は、モジュラー方式で組み立てるコンタクトインサートで、信号モジュールやパワーモジュール、あるいは
エアモジュールをも自由に組み合わせて1個のコネクタに仕上げることができます。
» Heiko Meier, Product Manager, Germany, HARTING Technology Group, [email protected]
従来であれば、高価な専用コネクタや別々のソリューション
に振り分けなければならなかった様々な機能を、ハーティング
のHan-Modular ®システムでは組み合わせることができます。
電流は数ミリアンペアから200Aまで、電圧は50~5,000V、エ
このシステムではインターフェース数を減らせるため、大幅な省
スペース化が可能であると同時に、高い柔軟性を発揮してコス
トを大幅に削減します。このシリーズには新製品が絶えず加わ
っています。最近加わったのは、Han-Eco®プラスチック製ハウ
ジングと、 Han-Modular ®ドッキングフレームです。
Han-Eco® 製品シリーズには、多種多様なフードをはじめ、パ
ネル取付型ハウジングや、ボックス型ハウジング、ケーブルツ
ーケーブルフードを取り揃え、サイズも6B、10B、16B、24Bと
豊富で、組み立ても素早くでき経済的です。
Han-Modular ® ドッキングフレーム
Han-Modular ®ドッキングフレームでは低電圧スイッチ装置や
MCC、バッテリーシステム、テスト機器などのドロワーと共に
使用する際、ブラインド嵌合が可能です。機構的に極めて頑丈
なプラスチックフレームで、2モジュール、4モジュール、6モジ
ュールでの使用が可能です。またフローティングサポートによ
り、誤差補正±2 mmと優れ、高い柔軟性を提供する一方で、価
格は低く抑えられています。
➥ IN BRIEF
Han-Eco ® プラスチック製ハウジング
• 信号、パワー、エアの各モジュールは組み合わせ自由
アチューブ、データ線、シールドバス信号、POF (プラスチック
製光ファイバー) またはガラス製光ファイバーのウェーブガイ
ドに対応する脱着可能なプラグコネクタの作成が可能です。
特殊な環境用のハウジング (プラスチック製/金属製、内部/
外部用) と組み合わせることで、特定の使用状況に完全に適し
た、どんな用途をも満たすコネクタを組み立てることができま
す。
34
• 個々のコネクタであらゆる用途に対応
• 新製品: Han-Eco®プラスチック製ハウジング、
Han-Modular® ドッキングフレーム
t e c . N e w s 2 2 : ショートニュース
ハーティング
OWL文化賞を受賞
ハーティングテクノロジーグループは、エス
ペルカンプとその周辺地域における総合的
な文化的貢献が認められ、
「大企業」部門で
初のOWL文化賞 (OWL Culture Prize) を受
賞しました。授賞式でハーティング社長のデ
ィートマー・ハーティングはモノを特徴づけ
る要素として文化の重要性を強調し、文化
は企業の成功に寄与すると共に、地域全体
の魅力を増大させるものだと述べました。ま
た同社上級副社長のマルグリッド・ハーティ
ングは、
「これがありのままの私であり、変
えられるものではありません」と、自ら育っ
た家庭で大きな影響を及ぼしてきた文化に
対する熱い思いを語りました。
ハーティング研究所で修
士論文
ハーティングのようなハイテク企業にとっ
て、研究機関との緊密な連携は、R&D戦略
を成功させる上で重要な要素です。そのため
ハーティングでは、インターンシップや論文
への協力を通じてハーティングを知っても
らう機会を大学生に提供しています。Axel
Kütemannは、プロジェクトリーダーの
Dr. Lutz Trögerの助言を受け
ながら、ハーティングの研究
所で修士論文を書き上げまし
た。Kütemannは、これまで手動
で行なわれていた立体回路基板
(3D-MID) のプリント導体の検査
を、ロボットによる自動テストに
置き換えることに成功しました。
ハーティング、
「Formula Student Electric」を支援
世界中から集結した学生が自分たちで製作したレーシ
ングカーを操り、ホッケンハイムリンクのサーキットで
スリル満点のレースを繰り広げる ー ガソリンを一滴た
りとも使わずに。それが「Formula Student Electric」、
次世代を担う技術者たちに大学で学んだことを披露す
る機会を与えるイベントです。ハーティングテクノロジ
ーグループでは、優秀な若い技術系学生の育成に力を
入れており、2010年以来、さまざまなレーシングチーム
をスポンサーとしてサポートしています。さらにハーティ
ングはエネルギー効率に関する特別賞も授与しました。
お気軽にご意見をお寄せくだ
さい
ご質問やご要望、ご提案がございましたら
[email protected] までお願いいたします。
35
t e c . N e w s 2 2 : ソリュー ション
パワーエレクトロニクス用
電流センサー
素早く正確な電流測定は、周波数変換器やスイッチモード電源、UPSシステム、溶接システムなどのパワーエレクトロ
ニクスシステムの精密な調整に欠かせません。このような環境用に特化して開発されたハーティングの電流センサー
は、極めて正確な測定性能を持つだけでなく、耐干渉性にも非常に優れています。
» Tobias Schäfer, Product Manager OEM, Germany, HARTING Technology Group, [email protected]
L1
A
A
L2
A
A
L3
A
Sensor
Rectifier
G
DC Link
M
A
A
Converter
Motor
A
A
L1
A
A
L2
A
L3
A
A
周波数変換器の原理
シリーズ概要
パワーエレクトロニクスは、鉄道技術や再生可能エネル
ギーなどの市場においてカギとなる技術の1つであり、ハー
ティングソリューションにとって最も重要なアプリケーシ
ョン分野の1つでもあります。ハーティングは、これらのア
プリケーション向けの電気機械部品やシステムのマーケッ
トリーダーであり、コネクタ技術を応用した製品ラインナ
ップを着実に拡大しています。今回、ハーティングはそこ
36
t e c . N e w s 2 2 : ソリュー ション
測定原理
Isecondary
Secondary coil
with N turns
V+
A
A
Iprimary
Vout ~ Iprimary
Iprimary
Isecondary
V-
R sense
+
–
Vsense ~ Iprimary/N
ダイレクトマッピング電流センサー
クローズドループ電流センサー
オープンループセンサーの場合、一次電流の磁界は、磁気的にソフ
トな環状の中に集中します。磁界または電流に比例した電圧を発生
するホール素子は環状の空間に沿って配置されています。ホール電
圧は増幅されたのち、一次電流のマッピングを出力信号として提供
します。このセンサーの長所の1つは、設計がシンプルな点です。た
だし、ホール素子の温度依存性および増幅 (オフセットとゲインドリ
フト) に精度が影響されます。
クローズドループセンサーの設計はダイレクトセンサーの設計と似て
います。ただし、ホール電圧は、測定信号としては直接使用されず、二
次電流の調節に使用されます。二次電流はN巻コイル内を通り、環状
に補正磁場を発生させます。二次電流 x Nが一次電流とまったく同じ
とき、2つの磁場は環状空間の中で相殺されます。ホール素子は常に
磁束がゼロになるよう調節を行います。二次電流は、同時に、センサ
ーの出力信号 (Isec = Ipri/N) でもあります。このセンサーは、消費電
流が多くなりますが、広い温度範囲 (-40°C~85°C、精度≤ 1 %) で極
めて正確に動作します。
に新たなセンサー製品を加えると共に、この製品ラインナップ
向けに革新的なソリューションを開発しました。
設計者にとってさらにメリットといえるのが、センサーはいず
れも実装面積および据付寸法が標準サイズであるため、既存
のアプリケーションに組み込みやすいという点です。適切な結
線技術が用いられ、信号線も既に取り付けられているので、経
済的で確実な組み立てが可能です。組み合わせるコネクタや
ケーブルを別途購入する過程が省け、部品の種類が少なくてす
みます。
電流センサーは、入力・出力電流をリアルタイムで正確にマッピ
ングする電気機械部品です。ここで測定された信号は、電力用
半導体の正確な駆動や、システムの監視に用いられます。
主要ユーザとの緊密な協力のもと、ハーティングでは最新のパ
ワーエレクトロニクスの要件を満たす最適なソリューションを
開発しました。新しい電流センサー製品シリーズは、実証済み
の「ホール効果 (Hall effect)」をベースにしており、電気的に絶
縁された状態で、導体の磁界で電流を測定します。ここでは次
の2つの測定原理を利用しています。クローズドループ技術を
用いた補正電流センサーは、要求水準の高い測定業務用です。
精度要求がさほど厳しくない場合は、オープンループ技術を用
いたダイレクトマッピング電流センサーが使用できます。
これらの新しい電気センサーは、鉄道や再生可能エネルギー
の市場など、過酷な環境下での使用に適した堅牢な設計に加
え、外部磁界からの干渉に対する耐性が非常に高い製品です。
➥ IN BRIEF
• 堅牢性と信頼性/EN 50155 鉄道規格
• 高い精度と耐干渉性
• 標準的な据付寸法で組み込みが簡単
37
t e c . N e w s 2 2 : ソリュー ション
モビリティの未来
E-モビリティには高い要求が課せられています― つまるところ、電気自動車が燃焼エンジン車に取って代わっても、便
利さはそのままに、ということが求められているということです。ハーティングテクノロジーグループは充電システム用
の効果的なソリューションでモビリティの未来に貢献していきます。
» Veit Schröter, Business Development Manager E-Mobility, Germany, HARTING Technology Group, [email protected]
38
t e c . N e w s 2 2 : ソリュー ション
少なくとも国際モーターショーIAA 2011以来、エレクトロ
モビリティは一般の人々の間で大きな話題を呼びました。大手
自動車メーカーは、ほぼ全社が電気自動車を市場に投入して
います。多くの新興メーカーも、ここぞとばかりに独自のコン
セプトや製品ラインを開発し、市場での成功を目指していま
す。これは、電気自動車の日常走行に確かな手応えを感じての
ことです。
ハーティングの開発チームは、充電イン
フラ向けに互換性の高いコンポーネント
の開発、製品化に取り組んでいます。」
今日の電気自動車は、個々のユーザーのニーズに見合った性
能をすでに提供しています。1日当たりの平均走行距離は
30~40kmですが、現在すでに発売されている電気自動車の
連続走行距離は100kmを超えています。電気自動車は、日常
の運転で求められる条件を満たす性能をすでに有していま
す。
しかし開発はこれで終わったわけではありません。自動車メ
ーカーは、特に連続走行距離と充電時間に関しては、かなり
の開発が必要であることを認識しています。
特に注目されているのが、適切な充電技術とそれに伴うアプ
リケーションですが、ここがハーティングテクノロジーグルー
プの出番です。ハーティングの開発チームは、充電インフラ向
けに互換性の高いコンポーネントの開発、製品化に取り組ん
でいます。ここで優先するのは、最高レベルの品質と信頼性
です。ハーティングの製品ラインナップには、異なるパッケー
ジングや性能等級で用意できるE-Mobilityコネクタ type 2
(ISO 62196準拠)を備えた充電ケーブルをはじめ、ロッキン
グシステム内蔵タイプなどのtype 2コンセント、要求仕様に
応じた顧客固有のソリューションなどがあります。
品質とその持続性の確保のため、ハーティングでは、NPE(
国家電気自動車プラットフォーム)およびDIN(ドイツ標準協
会)のDKE(ドイツ電気技術委員会)、IEC(国際電気標準会
議)の委員会にてエレクトロモビリティの規格およびガイドラ
インの策定に特に力を注いでおり、ZVEI(ドイツ電気・電子工
業連盟)やORGALIME(欧州機械・電気・電子・金属加工産
業連盟)、BDEW(ドイツエネルギー水道事業連合会)など
の組織とも連携しています。
このような取り組みはハーティングのお客様にも評価されて
おり、それはRWE社との連携やフォルクスワーゲングループ
など自動車メーカーとのプロジェクトという形で表れていま
す。こういった活動の中で重要なファクターとなっているの
は、自動車サプライヤー分野におけるハーティングテクノロジ
ーグループの幅広い基盤と長年にわたる貢献です。そんな中
で、HARTING Automotive GmbH & Co. KG は、 ISO/TS
16949の厳しい自動車規格の認証を受けています。
ハーティングでは要求に応える際に、鉄道業界向けに開発さ
れ実証され蓄積されてきた接続技術やネットワーク技術の中
でグルーブが有するノウハウも活用しています。電気自動車に
おける戦略は、幅広い分野からのニーズを適切に組み合わせる
ことです。自動車や発電、エネルギー供給、ネットワーク可用
性、そして環境、これらの分野固有の要求事項をすべて調和さ
せねばならない製品は、他にはないと言ってよいでしょう。
➥ IN BRIEF
• エレクトロモビリティは人々の高い関心を集めています。
• ハーティングは充電インフラ向けに互換性の高いコンポ
ーネントを提供しています。
• ハーティングは規格やガイドラインの策定に取り組んで
います。
39
t e c . N e w s 2 2 : 現 地 法 人におけるア プリケー ション事 例
現地法人における
アプリケーション事例
DE
ハーティングのコネクタ、
ショーイベントの成功に一役
第56回ユーロビジョン・ソング・コンテストのフィナーレ
は、2011年5月14日、デュッセルドルフのEspritアリーナか
らライブ中継され、最高潮の盛り上がりを見せました。会
場で豪華フィナーレの模様を楽しんだ観客は総勢3万5
千人。ドイツのテレビ放送では、1383万もの人がこのユ
ーロビジョン・ソング・コンテストをテレビで楽しみ、世
界中の約1億2000万人がテレビでこのイベントを見守り
ました。 会場のデュッセルドルフのサッカースタジアム
は、しばしの間、この大イベントを伝えるヨーロッパ最大
のテレビスタジオに様変わりしていました。
写真提供:Think Abele GmbH & Co. KG / Stage Kinetik
ステージ上のシーン転換に貢献したのはThink Abele
GmbH & Co. KGの90台のMovecatチェーンホイストで
す。ステージの背景幕をチェーンホイストで正確に上下
させるには、高性能で正確なモーターコントローラーが
求められます。ハーティングのコネクタは、モーターおよ
び分散型コントローラーとの直接接続用に設計されてい
ます。Han® 16 Bコネクタソリューションは頑強で、高レ
ベルの保護等級 (IP 65/67) の技術的要件に対応してい
るほか、特に厳しい時間の制約があるような場合でも、す
ばやく安全に接続することが可能です。
» Thorsten Stuckenberg, Market Manager, Germany,
HARTING Technology Group, [email protected]
40
t e c . N e w s 2 2 : 現 地 法 人におけるア プリケー ション事 例
DE
CH
クリーンルームの信頼性
高信頼性を備えたディーゼルユニット用
ハイテクスターター
耐久性に優れ信頼性が高いこと、低温時でも短時間で
高出力が可能なこと、頻繁なエンジン始動に対応する
こと、頻繁な高速荷重に対応でき、メンテナンス回数
が少ないこと。これらは、スイス鉄道の装置改良計画
の中で、入換機関車に用いるディーゼルユニットに対
して出された要求の数々です。これに対し、非常に革新
的な企業として知られるスイスの鉄道技術会社 Railtec
Systems GmbHは、コンデンサー式のパワフルかつ弾
力性に富むスターター技術コンセプトを開発しました。
コンデンサーの場合、必要とするスペースが若干広く
なるものの、冒頭に述べた要求を満たすという点では
バッテリーをはるかにしのぎます。ハーティングの接
続ソリューションと組み合わせることで、高品質・高信
頼性・高耐用性を備えたシステムとなります。この接続
システムソリューションの実現を可能にした大きな要因
は、IRIS (International Railway Industry Standard、
国際鉄道産業標準) の認証、技術力、そして耐用性に
優れた多様なハーティング製品群です。
» Rolf Baumann, Managing Director HARTING AG, Volketswil,
HARTING Technology Group, [email protected]
半導体産業やクリーンルーム技術では、要求の厳しい
エンジニアリングが求められます。エンジニアリング
およびオートメーション専門企業e-concept GmbH
(ドイツ・アーヘン)は、この分野において最も実力の
あるパートナー企業の1つとしての地位を確立していま
す。ハーティングテクノロジーグループは高効率のコネ
クタソリューションを同社に提供しており、最高レベル
の信頼性と接続性能を評価いただいております。ハー
ティング製品は品質が高く、モジュールでの取り扱い
も選択できることで、e-concept社は半導体産業界に
最高品質のコンポーネントを提供することが可能にな
っています。
つまり製品やコンポーネントは完全に出来上がってい
る状態となるので、半導体産業の機械製造の現場です
ぐに使用することができます。
微細構造を持ったチップの製造に用いるEUV光 (超紫
外線) 発生用ラボラトリーシステムの開発は、それを
顕著に示す例の1つです。通常の大気中に存在する、わ
ずか何分の1マイクロメートルのサイズの粒子であって
も、集積回路の障害となることがあるので、コンポー
ネントは特殊なクリーニングなどを必要とします。そ
の後複数の特殊箔でパッケージングすることで、最終
的にクリーンルームにて完全に粒子なしの状態で加工
が可能となります。
» Guido Selhorst, Head of Market Management, Germany,
HARTING Technology Group, [email protected]
Thomas Schmidt, Chief executive officer e-concept GmbH, Germany
41
t e c . N e w s 2 2 : 読 者 ア ン ケート
読者の皆様へ
「tec.News」はハーティングの最新情報やアプリケーションについて最良の方法で
お伝えすることを目的としております。
つきましてはぜひご意見をお聞かせ下さるようお願い申し上げます。
皆様のご意見とご要望をできる限り反映させ、
「tec.News」の内容をさらに充実さ
せてまいります。
お忙しいとは存じますが、オンライン・アンケートにご協力をお願いいたします。
アンケートは2012年7月31日まで実施しております。
ご協力いただいた方の中から抽選で1名の方にApple iPadを差し上げます。
tec.News編集チーム
アンケートにはこちらのリンクからご参加
いただけます:
www.HARTING.com/tecNews-survey
42
ハーティング イベントカレンダー
Apr 23 - Apr 27, 2012
ドイツ、ハノーバー Hannover Messe 2012
May 09 - May 10, 2012
ベルギー、ゲント Automation & Engineering
May 22 - May 24, 2012
イタリア、パルマ SPS/IPC/DRIVES
May 22 - May 25, 2012
スロバキア、ニトラ MSV 2012 Nitra
May 28 - Jun 02, 2012
スペイン、ビルバオ BIEMH
Jun 01 - Jun 08, 2012
デンマーク、コペンハーゲン EWEA
Jun 03 - Jun 06, 2012
米国、アトランタ(ジョージア州) Windpower
Jun 04 - Jun 07, 2012
ノルウェー、リレストロム Eliaden
Jun 06 - Jun 09, 2012
米国、ニューヨーク(ニューヨーク州)MD&M East
Jun 12 - Jun 16, 2012
中国、北京 CIMES 2012
Jun 13 - Jun 15, 2012
ドイツ、ミュンヘン Intersolar
Jun 13 - Jun 16, 2012
ロシア、モスクワ Electro 2012
Jun 14 - Jun 18, 2012
インド、チェンナイ ACMEE India
Sep 17 - Sep 19, 2012
オランダ、アムステルダム ECOC
Sep 18 - Sep 21, 2012
ドイツ、ベルリン InnoTrans 2012
Sep 18 - Sep 22, 2012
ドイツ、フーズム HUSUM WindEnergy
Sep 22 - Sep 25, 2012
トルコ、イスタンブール ISAF
Sep 25 - Sep 26, 2012
英国、ケンブリッジ RFID Europe
Sep 26 - Sep 28, 2012
中国、北京 EP China 2012
Nov 13 - Nov 16, 2012
ドイツ、ミュンヘン electronica 2012
Nov 27 - Nov 29, 2012
ドイツ、ニュルンベルク SPS/IPC/DRIVES 2012
PUBLICATION DETAILS
Published by: HARTING KGaA, M. Harting, P.O. Box 11 33,
32325 Espelkamp (Germany), Phone +49 5772 47-0, Fax +49 5772 47-400,
Internet: http://www.HARTING.com
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in writing by the Editor. This also applies to input into electronic databases and
reproduction on electronic media (e. g. CD-ROM and Internet).
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