2012年6月1日 ミラノ大司教区司牧訪問ミラノ市民との会合の挨拶

ミラノ司牧訪問・市民との会合での講話
ベネディクト16世―ヨゼフ・ラツィンガー
ミラノ大司教区司牧訪問と第 7 回世界家族大会
(2012 年 6 月 1-3 日)
市民との会合
聖父ベネディクト 16 世の講話
ミラノ市ピアッツァ・ドゥオモ
2012 年 6 月 1 日金曜日
昨年 9 月より新しい牧者として、全ヴェネチア大主教であったアンジェロ・スコラ枢機卿を擁して、2012
年 5 月 30 日水曜日に開幕した世界家族大会の準備を進めてきた世界最大のミラノ大司教区の司牧訪問と世
界家族大会参加を兼ねて、ベネディクト 16 世聖下は 6 月 2 日夕にミラノに到着した。リナーテ空港から移
動の沿路に鈴なりの人々とドゥオモ前の広場で待ち構えていた大勢の会衆の熱狂的な歓迎は、教皇庁の不
祥事などの苦境に直面する教皇への愛情と信心に満ちた連帯感を示し、パパ様はそれに応えて慈愛に満ち
た喜びを示される。
市長殿、
関係当局の皆様、
司教職と司祭職における敬愛する兄弟の皆さん、
ミラノ大司教区の親愛なる兄弟姉妹の皆さん!
ここにこんなに大勢お集りの皆様全員に、また、ラジオやテレビを通じてこのイヴェントを視聴
なさっている方々にも、心を込めてご挨拶申し上げます。皆さんの温かな歓待をありがとう!
市長殿には、市共同体を代表して私に賜った丁重な歓迎の御言葉に感謝申し上げます。政府代表、
州知事、県知事、さらに民間団体や軍関連機関等の代表者の皆様にも、この訪問の折々にご協力
頂きました事を有難く、私の敬意を表明致します。それから、あなたに、猊下(スコラ大司教に
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ベネディクト16世―ヨゼフ・ラツィンガー
呼び掛けて)、心のこもったご挨拶をありがとう!
私はきょう皆さんの間にいられるのをとても嬉しく思っており、私にあなたがたの名高い都を訪
れる機会をお与えくださった神に感謝致します。私のミラノ人との最初の出会いは、このドゥオ
モの広場で、ミラノの中心、都の象徴的な堂々とした立派なモニュメントが立つ場所で行われて
います。それは、そのたくさんの尖塔が林立する様相で、高きを、神を見つめるようにと招きま
す。まさに天に向かおうとするような勢いが常にミラノの特徴でありましたし、それは時と共に
ミラノが自分の召命に実を結んで答えることを良しとしました、つまり、諸々の民と文化の十字
路– Mediolanum –であるという事です。この都はこうして、自己のアイデンティティーに対す
る誇りを、歴史の流れの中で自分に
提供されてきた肯定的な貢献を何で
も受け入れる受容力と賢明に連結さ
せることが出来ました。今日でも、
ミラノはこの肯定的な役割を、全イ
タリアのための発展と平和の先遣者
という役割を、発見し直すように召
されています。私の心の籠った「あ
りがとう」は、今一度、この大司教
区の牧者であるアンジェロ・スコラ Angelo Scola 枢機卿に、教区共同体全体の名で私に賜った
歓待とお言葉に対して送られますが、彼と共に補佐司教方にも、また、彼の前にこの栄光に満ち
た古のカテドラルを司った前任者方、ディオニジ・テッタマンツィ Dionigi Tettamanzi とカル
ロ・マリア・マルティーニ Carlo Maria Martini 枢機卿にもご挨拶致します。
特別なご挨拶を申し上げたいのは、家族の代表の方々に対してです-全世界からお越し頂いてお
り、第 7 回世界世界大会に参加なさる方々です。愛情に満ちた思いを馳せるのは、助けと癒し
を必要としている方々、また、多種多様な心配に打ちひしがれている人々であり、孤独や困難の
最中にある方々、失業中の方々、御病人方、服役囚の方々、家や尊厳ある生活を営むために不可
欠の物事に欠けている方々です。このような私達の兄弟姉妹達の中で、集団の連帯と地道な心遣
いに欠乏する人がいませんように。その点で私は、経済‐財政危機の影響を最も強く受けた家族
の必要に具体的に応えるために、そして、教会全体とイタリアの民間社会と一緒に、エミリア・
ロマーニャの震災被害者救援に直ぐに始動するために、ミラノ教区が行った事と行い続ける事に
満足しています。被災者達は私達の心と私達の祈りの中におられますし、彼らのために私はもう
一度改めて寛大な連帯を示してくださるようにとお誘いします。
第 7 回世界家族大会は私に、皆さんの都を訪問し、アンブロジウスの共同体をローマの教会に、
ペトロの後継者に結びつける緊密で堅実な絆を新たにするための有難い機会を提供してくれま
ミラノ司牧訪問・市民との会合での講話
ベネディクト16世―ヨゼフ・ラツィンガー
した。周知の通り、聖アンブロジウスはローマの家系出身で常に永遠の都との、ローマの教会と
の絆を保ちながら、ローマの教会を統率する司教の首位性を明らかにし、elogiando
してきました。ペトロの内に-彼が言明するには-『教会の土台があり、戒律の教えと導き il
magistero della disciplina がある』
(De virginitate, 16, 105)とし、さらに有名な dichiarazione
で『ペトロがいるところ、そこに教会がある』(Explanatio Psalmi 40, 30, 5)とします。アン
ブロジウスの司牧的分別、それに、信仰の正統性とキリスト者の生活についての教えと導きは、 、
普遍教会の内に消去しがたい足跡・痕跡を残すでありましょうし、殊に、ミラノの教会にはっき
りと印されるでありましょう。ミラノの教会は彼についての記憶を培い、その精神を保つのを止
めたことは決してありませんでした。アンブロジウスの教会は、かの礼拝形式の prerogative と
唯一の信仰に独特の表現を保管しつつ、ひとつの教会のカトリック性(普遍性)と十全に生きる
ように、それを証して、豊かにすべく貢献するようにと召されています。
深い教会的感覚とペトロの後継者との霊的交わりと一致の誠実な愛情は、皆さんの教会の歩みを
通して、その豊かさとアイデンティティーの一部を成しており、それは、皆さんの教会を導いて
きた偉大な牧者達の姿の中に輝くように現
れています。まず最初に聖カルロ・ボロメオ
です。あなたがたの土地の息子です。彼は、
神のしもべパウロ 6 世が述べたように、『民
の良識と風習の造形者』
(1968 年 3 月 18 日
ミラノ人への講話)でしたが、それは何より
も特に、トリエント改革の広範で粘り強く厳
格な適用によってでしたし、神学校に始まっ
て、刷新のための機関や制度の創設によってであり、それに、彼の神との深遠な結合に根差し、
模範的な生活の質実剛健さに裏打ちされた際限ない司牧的愛徳によってでありました。しかし、
聖アンブロジウスとカルロと並んで他にも、私達にもう少し近い素晴らしい牧者達を思い出した
いと思います。彼らはその聖性と教えをもってミラノの教会に貴重な飾り付けをしました。福者
アンドレア・カルロ・フェラーリ Andrea Carlo Ferrari 枢機卿、彼はカテケージスとオラトリ
オの使徒であり、キリスト教的な意味での社会的刷新の推進者でした。それから、福者アルフレ
ド・イルデフォンソ・シュスターAlfredo Ildefonso Schuster、彼は「祈りの枢機卿」と呼ばれ、
自分の信徒達のために全面的に消耗し尽くされるに至るまでの、疲れを知らない牧者でした。そ
の以外に、教皇となったミラノ大司教をふたり思い出したいと思います。それは、アキレ・ラッ
ティ、教皇ピウス 11 世であり、ローマ問題の肯定的決着とヴァチカン市国の建国があったのは
彼の決断のおかげと言うべきです。それから、神のしもべジョヴァンニ・バティスタ・モントー
ニ、パウロ 6 世、善良にして賢明で、熟練の手で第2ヴァチカン公会議を幸いな成果をもたら
すように導く術を心得ていました。アンブロジウスの教会の中には、その他にも、私達の時代に
特殊な意義を有する霊的果実が完熟しました。その全ての中でもきょうは、まさに家族の事を考
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ベネディクト16世―ヨゼフ・ラツィンガー
えながら、聖ジャンナ・バレッタ・モッラを思い出したいと思います。妻にして母、教会と一般
市民として領域で活躍した女性であり、信仰と希望と真愛の美しさと喜びを輝かせました。
親愛なる友の皆さん、あなたがたの歴史は文化と信仰でこの上なく豊かなものです。そのような
豊かさが芸術、音楽、文学、文化、産業、政治、スポーツ、ミラノと大司教区全体の連帯を示す
様々なイニシアティブを力づけてきました。今や、こんなに輝かしい伝統のたいまつを将来の世
代に伝達するために真剣に取り組むかどうかは、計り知れない価値を持つ霊的資産と栄光に満ち
た過去の相続人たる皆さんにかかっています。福音的酵母を現代の文化的背景の中に入れるのが
どんなに緊急な課題であるかを、あなたがたはよくご存知です。あなたがたのために死んで復活
なさり、私達の間で生きておられるイエス・キリストへの信仰が、生活に纏わる、個人としても
共同体としても、公的であろうと死的であろうとも、その全ての関係に命を与え活気づけるもの
でなければなりません。こうして、家族から始まって、堅実で真正な「充足感」を生み出すもの
となり、家族は人類の主要な資産として、人間のための真の安定した文化の共通因子であり印と
して、再発見されるべきなのです。ミラノの独自のアイデンティティーは、ミラノを自己の内に
閉ざしながら、孤立させるはずも分離させるはずもありません。反対に、ミラノの歴史に特徴的
な部分や根源のリンパ液を保ちながら、ミラノは希望をもって将来を見つめながら、全イタリア
とヨーロッパの生活との親密で推進力となる結びつきを培うように召されています。様々な役割
と目標の明快な区別の内に、肯定的に「世俗的」ミラノと信仰のミラノは、共通の善を求めて協
力するように召されています。
親愛なる兄弟姉妹の皆さん、あなたがたの歓待にもう一度、ありがとう!皆さんをおとめマリア
の御加護に託します。物質的に彼女はドゥオモの最も高い尖塔の上から昼も夜もこの街を見守っ
ています。あなたがた全員を私は大きく腕を広げて抱きしめながら、皆さんに私の愛情に満ちた
祝福を授けます。ありがとう!!
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