こちら

はじめに
三洋電機と海爾集団公司(ハイアール)の提携
「世界の工場」として名を馳せた中国。それは80年代の日本の電機
企業進出を契機とする。その時行われた対中投資や技術移転は中
国電機産業へ成長をもたらし、現在では国際市場において日本企業
と競争を繰り広げるまでになっている。更に、産業の発展によって購
買力を増した中国は、今や発展途上の巨大市場となり、2001年12月
のWTO加盟を経て、各国企業がそのビジネスチャンスを狙って続々
と進出している。
そんな中、三洋電機グループと海爾集団公司(以下、ハイアール)は、
2002年1月に「広範な分野での包括的提携」の合意を発表した。日中
を代表する両社は何を目的とし、何を得るために提携に合意したの
であろうか。当グループの発表では、提携を合意した両社の概要と
その成長戦略を基礎として、両社の提携の狙いを考察するとともに、
現状の評価に基づくWin-Win提携となるため今後の課題を考察する。
2003年8月2日
Eric&Brothers Co.,Ltd.
(4班)
Eric野嶋
矢倉、池田、杉本、河合
Copyright Eric&Brothers Co.,Ltd. 2003
Copyright Eric&Brothers Co.,Ltd. 2003
中国市場の特徴
日本企業の中国進出
(%)
(億元)
120,000
16
GDP名目額
前年比実質成長率
100,000
14
①市場としての魅力(生産基地か
12
ら市場へ)
80,000
急速な市場拡大
10
家電市場の成長が期待
8
60,000
(13億人中7割を占める内陸農
村部へどうアプローチするか)
6
②部品調達システムが整ってきた 40,000
4
③中国独自の仕組み
20,000
売掛金回収の複雑さ
2
経済・経営問題が複雑に絡み合う社会
0
0
④好景気での戦略が鍵を握る
1990年 1992年 1994年 1996年 1998年 2000年 2002年
2008年北京オリンピック、2010上海万博後の
魅力的だが障壁も高い
バブル崩壊の危険
①80年代に進出した企業
・人員や制度が現地化されていなかった
失敗例が多い
・売掛金の回収問題で躓く
・代理店教育が充分に進まない
②成長してきた対現地企業への対策が必要となってきた
豊富な部品調達ノウハウと先進的な生産技術をどうやって中国ローカルに
適用するかが鍵
③松下電器の最近の動き
黒字のエアコンの中核部品の製造を米国から中国に生産を移管した。結果、
R&D(研究開発)→調達→生産→販売 が全て中国でおこなわれることに
なった。
Copyright Eric&Brothers Co.,Ltd. 2003
Copyright Eric&Brothers Co.,Ltd. 2003
中国企業の日本進出
①日本進出のための条件
・世界市場で有名ブランドに成長すること
・先発企業を凌ぐマーケティング投資を数十年のスパンで継続すること
・技術開発・新製品開発で先発企業を凌駕する能力を身に付けること
以上の3点が揃わないと、日本市場でシェアを奪うことが難しい。
②日本進出の壁(ハイアールと松下電器産業との比較)
日本企業が持つ途方もない国内営業網
☆ハイアール(中国全土)
12,000カ所のアフターサービス拠点と53,000カ所の販売拠点
☆松下電器産業(日本国内)
20,000店の小売店舗網(最大時50,000店舗)を有する。量販店を含めた
販売拠点数ではハイアールを越える。
人口密度で換算→松下電器はハイアールの5倍以上の営業網をもつ。
単独で早期に日本市場でシェアを奪うことは難しい
Copyright Eric&Brothers Co.,Ltd. 2003
海爾集団公司の概要
青島工具
四総廠
青島東風
電機総廠
1984年 1月 1日
青島電気冷蔵庫総廠
青島冷凍庫総廠
青島エアコン廠
1991年12月20日
琴島海爾集団
1992年12月
海爾集団公司
・売上高400億元(5340億円)
・利益30億元(約400億円)
・従業員数3万人
(2000年)
Copyright Eric&Brothers Co.,Ltd. 2003
1
成長著しい海爾
海爾集団公司の企業成長戦略
4.5
60
フォーチュン500社
3.5
50
3
40
2.5
2
30
1.5
20
1
フラットな組織へ
社内の意識改革
青島電気
冷蔵庫総廠
7
8
Ye
ar
99
Ye
ar
20
M
00
id
ye
ar
20
01
Main Business Income (Hundred Million)
日本語
Copyright Eric&Brothers Co.,Ltd. 2003
中国国内の家電業界 Five Forces
1985年
1993年
1993年
1994年
1997年
1997年
1998年
1999年
2002年
2002年
海外企業の参入など,新規参
入の脅威は減った.
【競争企業】
【買い手の交渉力】
販売,サービス競争の熾烈化
価格弾力性が高く、
買い手が強い
経営状態の悪化
英語
Copyright Eric&Brothers Co.,Ltd. 2003
海爾集団公司の提携戦略
【新規参入企業】
部品メーカの圧力
は高くない.
常識はずれの顧客サービス
海爾
「お客様はいつも正しい」
「海爾の国際化は海爾人各人の国際化にかかる」
6S 「整理・整頓・清潔・掃除・しつけ」+「安全」safety
Ye
ar
9
5
6
Ye
ar
9
Ye
ar
9
3
4
Ye
ar
9
Ye
ar
9
Ye
ar
9
Ye
ar
9
Net Profit (Hundred Million)
【売り手の交渉力】
北米進出(2000年)
グローバル化
0
2
0
三洋電機と提携
(2002年1月)
国内企業の吸収合併
10
0.5
中国№1の総合家電メーカー
海外企業との提携・合弁
MainBusinessIncome(100Million)
③製造拠点10箇所46工場
④販売拠点53,000
70
4
NetProfit(100Million)
①1992年から2001年にかけて、
利益は8倍に拡大
(MainBusinessIncome、
NetProfit)
②多くの製品で中国市場1位
エアコン、冷蔵庫、全自動洗濯
機、掃除機、電機温水器
新規市場を求めて海外進出が盛んに
Liebherr(ドイツ)
Merloni(イタリア)
三菱重工業(日本)
GKデザイン(日本)
Philips(オランダ)
Lucent(ドイツ)
C-MOLD(米国)
東芝(日本)
三洋電機(日本)
声宝(台湾)
冷蔵庫(技術提携)
ドラム式洗濯機(合弁)
エアコン(合弁)
デザイン公司(合弁)
カラーテレビ(技術提携)
カラーテレビ(技術提携)
ソフト公司(合弁)
業務用エアコン(技術提携)
家電全般(包括提携)
家電全般(包括提携)
海外からの技術導入による,製品の高品質化
<海爾集団公司のM&A戦略(国内)>
【代替品】
1995年 紅星電器(股)有限公司
1997年 順徳愛徳洗濯機厂
1997年 黄山電子集団
所得増加により,高級な輸入
品の購入意欲も高い.
国内市場における生産規模拡大
Copyright Eric&Brothers Co.,Ltd. 2003
海爾集団公司の企業成長マトリックス
新規市場
北米,EU;
北米,EU;
低価格を武器に輸出戦略
日本,台湾;
提携戦略
既存市場
C
D
A
B
既存事業
新規事業
三洋電機との提携
☆日本市場への進出 三洋ハイアール設立
☆高い技術の導入による国内製品の高度化,ブランド化.
Copyright Eric&Brothers Co.,Ltd. 2003
Copyright Eric&Brothers Co.,Ltd. 2003
三洋電機の概要
社名
三洋電機株式会社
所在地 大阪府守口市
創立
1947年2月創業/1950年4月会社設立
資本金 172,241,294,483円
従業員数 連結:80,500名
(国内:41,861名、海外:38,639名)
• 関係会社 347社
•
•
•
•
•
(子会社272社、関連会社75社、このうち連結子会社117社、持分法適用会社51
社)
• 製品部門 AV・情報通信機器、電化機器、産業機器、
電子デバイス、電池、その他
の6部門
Copyright Eric&Brothers Co.,Ltd. 2003
2
三洋電機セグメント別情報
三洋電機のグループ経営体制
売上高及び営業利益率推移
16.0%
1,000,000
資本的支出対売上高
AV・情報通信機器
14.0%
900,000
電化機器
産業機器
12.0%
800,000
20.0%
700,000
10.0%
500,000
400,000
電子デバイス
電池
18.0%
8.0%
16.0%
6.0%
14.0%
4.0%
その他
AV・情報通信機器
AV・情報通信機器
2.0%
電化機器
0.0%
産業機器
電子デバイス
600,000
300,000
12.0%
200,000
10.0%
100,000
8.0%
-4.0%
0
6.0%
-6.0%
1999
4.0%
-2.0%
2000
2001
電池
その他
電化機器
産業機器
電子デバイス
電池
その他
2002
2.0%
0.0%
1999
2000
2001
2002
Copyright Eric&Brothers Co.,Ltd. 2003
Copyright Eric&Brothers Co.,Ltd. 2003
売上高に占める商品構成の変遷
企業成長戦略
選択と集中の徹底
↓第三の創業期
二次電池や太陽光
発電の育成と金融・
流通サービスの開拓
神武・
岩戸景気による
輸出・
個人消費の拡大
噴流式洗濯機を発売
↓﹁
洗濯機のサンヨー﹂
プラザ合意による円高
不況↓第二の創業期
世界中の人々にとって太陽のような存在
■独創的技術の開発
■優れた商品とまごころのこもったサービスの提供
半導体, 18.7
1999
電池, 16.7
第6期:中堅企業集団構想の推進
1995
エアコン, 6.9
1985
テレビ, 6.7
エアコン, 6.2
テープレコーダー, 8.4
ショーケース, 4.4
電池, 10.5
その他, 51.0
VTR, 18.1
その他, 54.7
ステレオコンポ, 5.9
エアコン, 7.0
テレビ, 17.7
1975
第1期:焼け跡派ベンチャービジネス
冷蔵庫, 8.1 テープレコーダー, 10.3
テレビ, 22.2
1965
経営哲学:馬上行動(物事に取り組むには、人が歩くスピード
ではなく、馬に乗って走るスピードでないと世界との競争に勝てない
半導体, 21.7
情報機器, 5.5
第3期:東京三洋電機の設立と多角化
第2期:総合家電メーカーへの進出
その他, 46.5
デジタルカメラ, 5.5
第5期:次世代事業の開発育成
第4期:三洋電機と東京三洋電機の合併
自動販売機, 3.9
電話機, 8.7
0%
10%
冷蔵庫, 20.3
20%
30%
洗濯機, 9.8
40%
その他, 52.9
ステレオコンポ, 4.0
ラジオ, 7.5
50%
扇風機, 3.5
60%
Copyright Eric&Brothers Co.,Ltd. 2003
70%
その他, 36.8
80%
90%
100%
Copyright Eric&Brothers Co.,Ltd. 2003
三洋電機の提携戦略
業界の収益性を決める5つの競争要因
(Five Forces)
年代
1982
提携先
ファルタ社(西ドイツ)
マロリー社(アメリカ)
GE社(アメリカ)
デュラセル社(アメリカ)
エネルギー・リサーチ社(アメリカ)
レナータ社(スイス)
1984
東京電力
1986
1998
1999
2000
東京電力
エメリタス社(アメリカ)
IBM (アメリカ)
コダック社(アメリカ)
メイタグ社(アメリカ)
2001
フォード社(アメリカ)
2002
東芝
シャープ
海爾集団公司(ハイアール)
三星(サムスン)(韓国)
コダック社(アメリカ)
1979
1980
内容
リチウム電池に関する特許・ノウハウの非独占的実施権を供与
リチウム電池の技術供与
リン酸形燃料電池で技術交換契約締結
リチウム電池で技術供与
出力10,000kWの空冷式リン酸形燃料電池発電システムの概念設計を
開始
出力50kW級のリン酸形燃料電池を開発し、実用実験を開始
合弁で、三洋エメリタス株式会社設立、高齢者福祉事業に参入
半導体事業で協業契約締結
有機ELディスプレーの共同開発で提携
家庭用電化製品分野で協業契約締結
現在開発中のハイブリッド車用バッテリーシステムを独占供給すること
で合意
グループのニッケル水素電池事業の三洋電機への事業譲渡を完了
家庭用電化製品分野で協業
中国最大の家電メーカーと広範な分野での包括的提携
技術協力で提携
と合弁会社を設立、有機ELディスプレイの生産を開始
Copyright Eric&Brothers Co.,Ltd. 2003
△
×
新規参入企業
新規参入企業
莫大な設備投資と継続的な技術
莫大な設備投資と継続的な技術
開発が必要となるため、国内企業
開発が必要となるため、国内企業
の新規参入難しい。中国企業の進
の新規参入難しい。中国企業の進
出が脅威となりつつある。
出が脅威となりつつある。
リチウム電池の製造・販売で技術供与
売り手
売り手
国内と中国の
国内と中国の
部品に関する
部品に関する
クオリティ差が
クオリティ差が
減少し、調達
減少し、調達
先も中国へシ
先も中国へシ
フト。基本的
フト。基本的
には交渉力は
には交渉力は
強い。
強い。
○
買い手
買い手
小売店の組織
小売店の組織
化で、開発商
化で、開発商
品の販売先を
品の販売先を
確保。近年、
確保。近年、
家電量販店の
家電量販店の
拡大により買い
拡大により買い
手への交渉力
手への交渉力
は低下傾向。
は低下傾向。
競争企業
競争企業
デフレの進行に伴い、競合企
デフレの進行に伴い、競合企
業は生産拠点を中国へ本格
業は生産拠点を中国へ本格
化。コスト優位性を軸とした三
化。コスト優位性を軸とした三
洋電機のパターンが崩壊。
洋電機のパターンが崩壊。
△
△
代替品
代替品
基本的に機能性により、差別化を図る
基本的に機能性により、差別化を図る
業界。家電各社の技術力の均質化に
業界。家電各社の技術力の均質化に
より、サービス部分での差別化が鍵に!
より、サービス部分での差別化が鍵に!
Copyright Eric&Brothers Co.,Ltd. 2003
3
三洋電機ポートフォリオマトリックス
SWOT分析
130.0%
☆(スター)
•消費者に対する
Weakness
ブランド力の弱さ
•低い収益性
弱み
•長期負債への依存体質
テレビ
110.0%
(デジタルカメラ・太陽光発電・二次電池)
・OEMで蓄積したブランド
OEMで蓄積したブランド
機会
エクイティの活用
VTR
冷蔵庫
200.0%
・保有技術部門の
市場拡大傾向
Opportunity
?(問題児)
120.0%
↑市場成長率
•「馬上行動」と呼ばれる
スピード経営
Strength
•技術力を背景とした
OEM展開
展開
OEM強み
洗濯機
100.0%
100.0%
150.0%
50.0%
エアコン
0.0%
掃除機
・国内メーカーの中国へ
の生産拠点移動
・中国メーカーの
Threat
国内市場への進出
脅威
・中国メーカーの
技術力向上
二次電池
90.0%
プロジェクター
携帯電話
80.0%
$(金のなる木)
太陽光発電
デジタルカメラ
×(負け犬)
70.0%
←相対市場シェア
Copyright Eric&Brothers Co.,Ltd. 2003
Copyright Eric&Brothers Co.,Ltd. 2003
三洋電機とハイアールの提携関係 in Japan
三洋電機の企業成長マトリックス
包括的提携の骨子(四項目)
新規市場
都市から地方へ浸透する
家電生活による製品需要拡大
⇒中国市場での販売網の確保
中国市場での販売網の確保
C
金融自由化による市場拡大
に対応するサービスの充実
⇒三洋電機クレジット㈱
三洋電機クレジット㈱の活用
D
①三洋電機の製品をハイアールの販売網を利用して中国市場で販売する
②ハイアールの製品を日本市場で販売するための合弁会社(三洋ハイアール)を設立する
③ハイアール製冷蔵庫向けに供給するコンプレッサーを生産する工場を、三洋電機が中国・青島に建設する
④AV機器向けをはじめとするキーデバイスを、三洋電機がハイアールに供給していく
既存市場
アフターサービスや
アフターサービスや商品開発コ
ンサルティングの展開
ンサルティングの展開
⇒技術力の高さは維持し、
ハイアールへ技術供与
ハイアール製品の国内販売
による利益率の確保
A
B
既存事業
新規事業
マーケ
ティング
計画
製品開発
マーケ
ティング
計画
製品開発
S A N Y O
サービス
顧客対応
H A I E R
サービス
顧客対応
原材料
調達
原材料
調達
生産
物流
生産
物流
Copyright Eric&Brothers Co.,Ltd. 2003
三洋電機とハイアールの提携関係 in China
販売
販売
Copyright Eric&Brothers Co.,Ltd. 2003
三洋電機&ハイアールのスマイルカーブ
包括的提携の骨子(四項目)
②ハイアールの製品を日本市場で販売するための合弁会社(三洋ハイアール)を設立する
haire
コンサルティング
sanyo
アプリケーションソフト
Copyright Eric&Brothers Co.,Ltd. 2003
サービス
販売
流
物流
物
生産
販売
産
サービス
顧客対応
原材料
調達
物流
生
H A I E R
生産
モジュラー生産
製品開発
サービス
顧客対応
原材料
調達
計
マーケ
ティング
計画
S A N Y O
設
製品開発
低い
マーケ
ティング
計画
新製品開発
④AV機器向けをはじめとするキーデバイスを、三洋電機がハイアールに供給していく
付加価値
③ハイアール製冷蔵庫向けに供給するコンプレッサーを生産する工場を、三洋電機が中国・青島に建設する
高い
①三洋電機の製品をハイアールの販売網を利用して中国市場で販売する
sanyo
Copyright Eric&Brothers Co.,Ltd. 2003
4
三洋電機ー海爾集団公司の提携のメリット
海爾集団公司
¾日本市場
¾高品質な基幹部品
¾三洋電機の高度な技術
(製品技術,生産技術)
¾ブランド価値向上
中国進出の
リスク低減
将来?
海爾の貢献度
三洋電機
¾巨大な中国市場を確保
(製品市場,部品市場)
¾モノづくりのコンサルタント
現時点
三洋電機の貢献度
日本で売れると中国
でイメージアップ
Copyright Eric&Brothers Co.,Ltd. 2003
5