2 小規模事業所でもここまでやれる 7等級の職能制度をベースに体系整備

CASE
訪問介護
2 小規模事業所でもここまでやれる
7等級の職能制度をベースに体系整備
(株)
アイ・ヘルパー・ジャパン(埼玉県川口市)
制度設計や運用の手間から、小規模事業所の大
POINTS
半はキャリアパスの整備に消極的だ。そんな中、
▶複雑な仕組みとせず、職能や資格に基
づくシンプルな給与体系を導入
同社が制度の導入に踏み切ったのは、介護職員処
遇改善交付金の創設によるところが大きい。代表
▶職員のモチベーション向上を重視し、
「頑
張れば報われる」
報酬体系に
取締役の井上文二氏は、
「常勤職員が 3、4 人の小
▶自己評価シートによる人事考課は、現
場の慣れも考えて試行期間を設ける
る必要性は感じていなかった。だが、交付金の要
規模事業所なので、正直、キャリアパスを整備す
件にキャリアパスが加わると知り、ならば開設当
初から体制を整えておこうと考えた」と話す。
理由はもう一つある。
「スタッフの意欲を引き
アイ・ヘルパーステーション(埼玉県川口市)
は、
出すには、きちんとした評価体系が欠かせない」
(井
介護人材の養成・人材紹介などを手がける(株)
上氏)と考えたのだ。スタッフが目指すべき方向
アイ・ヘルパー・ジャパンが、2009 年 6 月に立ち
性を資格や経験などの評価軸として提示し、それ
上げた訪問介護事業所。職員総数は14
人で、管理者 1 人、サービス提供責任
図1◉アイ・ヘルパーステーションの概要と組織図
者 1 人、常勤ヘルパー3 人と、非常勤
▶
法人名/
(株)アイ・ヘルパー・ジャパン
▶
所在地/埼玉県川口市
▶
提供サービス/訪問介護
▶
事業エリア/川口市、戸田市、蕨市など
ヘルパー9 人(常勤換算 0.2 人)から
なる小規模な事業所だ(図 1)
。
アイ・ヘルパーステーションでは、
開設当初から役職・経験による等級制
▶
職員数/14人
管理者 1人
開設/2009年6月
▶
▶
利用者数/11人(2010年2月実績)
サービス提供責任者 1人
度と、役職手当を組み合わせた給与制
度を導入。さらに、開設 1カ月後には、
常勤ヘルパー 3 人
スタッフ全員を対象とした自己評価シ
ートを作成し、人事考課の試験運用を
始めた。2010 年 2 月に本格運用に踏み
非常勤ヘルパー 9 人
切り、2010 年度から評価と給与を連
動させる予定である。
159
を給与とリンクさせることで、
「頑張った人に報い
図2◉アイ・ヘルパーステーションの給与体系
る体系を整えた」
(井上氏)
。
常勤職員
基本給
職能手当
役職手当
人事考課
+
+
+
(月額 17 万円) (等級ベース)
など
による加算
(2010 年度から)
資格や経験に基づく7等級の制度を整備
小規模な事業所ではそもそもポストが少ないた
め、役職とリンクさせたキャリアパスは整備しに
非常勤
時給
人事考課
+
ヘルパー (等級ベース) による加算
(2010 年度から)
くい。そこで同ステーションでは、資格や経験に
よる等級制度をベースに、職能手当を組み合わせ
資格や勤続年数
により
7 段階の等級を設定
常勤職員の昇給イメージ
(職能手当のみの場合)
職能手当
(月額:円)
たシンプルな給与体系を整備した(図 2)
。具体的
には、職能に応じて 7 段階の等級を設定し、最大
30000
で月額 3 万円の職能手当をつけることにした(表
20000
1)
。2010 年度からは、人事考課による加算も組み
10000
込む予定である。
資格や勤続年数により
階段状に昇給
5000
0
7
ケアの質を高めるため、経験よりも資格を重視
している点も同ステーションの給与体系の特徴だ。
「中小事業所では、資格も立派なキャリアパス。
資格と給与がリンクしていれば、資格取得に対す
るインセンティブが生まれ、ひいてはケアの質の
向上や職員の定着にもつながる」と井上氏は説明
6
5
4
3
2
1
表1◉常勤職員の職能手当
等級
職能手当
(月額)
1
3 万円
2
2 万円
基本要件
資格
勤続年数
介護福祉士
3 年以上
介護福祉士
1年以上 3 年未満
1級ヘルパー
介護職員基礎研修修了
する。
1級ヘルパー
3 年以上
その上で、サービス提供責任者などの役職に応
3
1万円
じて、役職手当を設けた(表 2)
。
「小規模事業所
4
1万円
にとってサービス提供責任者は重要なポストなの
5
5000 円
6
なし
2 級ヘルパー
1年以上
7
なし
2 級ヘルパー
1年未満
で、そこは役職手当で高く評価している」
(井上
氏)
。これらの等級制度や実際の手当の金額は、
介護職員基礎研修修了
介護福祉士
1年以上 3 年未満
1年未満
1級ヘルパー
介護職員基礎研修修了
1年未満
井上氏が様々な企業の賃金テーブルや周囲の相場
注 )等級 3 が同社の求める標準的な人材。人事考課により最大で 100%の加算あり
などを参考に、独自に作成したものだ。
表2◉役職手当や報奨金など(常勤職員のみ)
アイ・ヘルパーステーションの等級制度におけ
る標準等級は、等級 3(ヘルパー1 級と介護職員
種類
役職手当
等級 3 に相当する人材の育成を目指していること
による。実際、同ステーションの常勤ヘルパーは
160
金額
要件
15 万円 管理者
5 万円 サービス提供責任者
基礎研修を修了)である。これは同社が運営する
ヘルパー養成校「アイ・ヘルパースクール」が、
等級
指導員手当
報奨金
備考
月額
月額
2 万円 サービス提供責任者補佐
月額
500 円 実習指導
同行 1訪問当たり
10 万円 介護福祉士の資格取得
一時金
10 万円 ケアマネジャーの資格取得 一時金