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平成 25 年度
教科リーダー養成講座(高等学校)
実践記録
2014/01/29
小さな成功体験を積み重ねる
-世界史B「産業革命」の指導を通して-
県立新潟向陽高等学校
教諭
Ⅰ
南雲
郁絵
指導構想
世界史に限らず学習全般に苦手意識の強い生徒が多い中で,普段行っている授業で生徒の意欲を高
め維持するにはどうしたらいいかと試行錯誤している。視聴覚教材等の使用することで興味関心を促
すことも随時行っているが,講義形式の授業の中においては,発言・発表といった言語活動が生徒に
とって参加意識が高まる機会である。日々の授業において授業者の働きかけで生徒が授業に参加して
いるという意識を促し,学習意欲の向上につなげていく。
Ⅱ
学習指導案
1
単元名
産業革命
2
対象クラス
普通科
2年2組
3
使用教材
教科書
山川出版社『改訂版
副教材
帝国書院『明解世界史図説
4
39 名
(男子 15 名
女子 24 名)
高校世界史
世界史 B』
エスカリエ
四訂版』
単元の目標
産業革命,フランス革命,アメリカ諸国の独立など,18 世紀後半から 19 世紀までのヨーロッパ・
アメリカの経済的,政治的変革を扱い,産業社会と国民国家の形成を理解させる。
・18 世紀から 19 世紀のヨーロッパやアメリカにおける諸革命を通して,社会の産業化と国民国家の
形成の過程について関心を持ち,意欲的に追求している。(関心・意欲・態度)
・18 世紀から 19 世紀のヨーロッパやアメリカにおける諸革命がヨーロッパを中心とする社会の産業
化と国民国家の形成についてどのように関わっているかということを,多角的に考察している。(思
考・判断)
・18 世紀から 19 世紀のヨーロッパやアメリカにおける諸革命に関する当時の絵画資料等を通じて,
諸革命が起こった原因について,多角的に考察している。(資料活用の技能・表現)
・18 世紀から 19 世紀のヨーロッパやアメリカにおける諸革命を通して,社会の産業化と国民国家の
形成の過程について現代世界と関連づけて理解し,その知識を身につけている。(知識・理解)
5
生徒の実態と授業の目的
駅から近く交通の便がよいため,地元の生徒ばかりでなく新潟市近郊の広範囲から様々な生徒が通
っている。1年次から授業をして感じることは,自分に自信がなく,成功体験に乏しい生徒が多いと
いうことである。そのため,日々の授業において発言を引き出し,自己肯定感や自信をつけるという
体験を積み重ねて行く中で,学習意欲の向上と基礎学力の定着を図っていくことが求められる。
1
6
単元の評価基準
Ⅰ
関心・意欲・態度
Ⅱ
思考・判断
Ⅲ
技能・表現
Ⅳ
知識・理解
18 世紀から 19 世紀の 18 世紀から 19 世紀の 18 世紀から 19 世紀のヨ 18 世紀から 19 世紀の
ヨーロッパやアメリカ ヨーロッパやアメリカ ーロッパやアメリカにお ヨーロッパやアメリカ
における諸革命を通し における諸革命がヨー ける諸革命に関する当時 における諸革命を通し
て,社会の産業化と国 ロッパを中心とする社 の絵画資料等を通じて, て,社会の産業化と国
民国家の形成の過程に 会の産業化と国民国家 歴史的事象を追求する方 民国家の形成の過程に
ついて関心を持ち,意 の形成についてどのよ 法 を 身 に つ け る と と も ついて現代世界と関連
欲的に追求している。
うに関わっているかと に,追求や考察した過程 づけて理解し,その知
いうことを,多角的に や結果を適切に表現して 識を身につけている。
考察している。
7
単元の構成と指導と評価の計画
時限
第1
(中単元
学習内容
イギリスの産業革命
いる。
全 2 時間)
学習活動
評価と方法
・イギリスで産業革命が起こった原因とその影響 ・発問,発表
について学ぶ。
(本時)
・グラフ・図の読
第2
資本主義体制の確立
・産業革命の進展と世界市場の形成について学ぶ み取り,ワークシ
・資本主義体制の確立と影響について学ぶ
8
ート記入
発表
本時の計画(1/2時間)
(1)ねらい
・産業革命がイギリスから起こった要因について理解する。
・イギリスの産業革命が綿工業から起こった理由について理解する。
・機械の発明と技術革新が諸工業の発展を促したこと,さらには交通機関の発達を要請したことを理
解する。
・産業社会がどのようにして生まれ,今につながっているかを考察し,現代の我々の生活に産業の発
展が深く関わっていることを理解する。
(2)本時の指導について
資料の読み取りや地図作業,作業内容や質問に対する解答の発表を通じて,授業に能動的に参加す
る意識を持たせる。現代社会の生活と比較することで,生徒がイメージしやすく,自らの言葉での意
見を引き出せるように留意する。機械の発明については深入りせず,機械の発明がどのように社会の
変化をもたらしたかを交通・運輸の面に重点を置いて理解させる。
2
(3) 本時の展開
時間
学習活動
導入 教材確認
10
産業革命とは
教師の働きかけと予想される生徒の反応
・出欠,授業準備の確認
支援・評価・留意点
・授業の準備ができている
・本時の学習内容の確認
[教材の点検]
分
・農業中心社会から工業中心の社会へ
・難しい語句の解説
展開 イギリス
なぜイギリスで始まったのか
・既習内容はノートで確認
35
分
産業革命の背景
(質問例)英・仏・蘭とはどこの国のことか
→イギリス・フランス・オランダ
機械の発明と技
術革新
・技術改良がどのように関
綿工業の技術革新
連しているかを関連づけて
(質問例)インド産の綿シャツが大人気で買えない。 考えることができる
あなたならどうする→自分で作る
(意欲・関心・態度)
手作りと機械で作った品物にはどんな違い
があるか→機械だとたくさん作れる
たくさん作ると値段はどうなるか→安くなる
交通機関の改良
新しい動力の実用化
ワットの蒸気機関改良
諸産業の発展
・ワークシート作業
基礎的な知識を確認でき
石炭・鉄鋼業・機械工業の発達
交通・運輸の発達について
迅速・安価・大量輸送をするには
ているか
地図に運河と炭田,都市
の位置を記入できているか
(質問例)物や人を運ぶのに必要な交通手段は何か ・現代社会の輸送機関から
→車・電車・自転車・バス・飛行機・船など 類推させる
・記入した内容について発
18 世紀後半以降の運河・鉄道の発達
表する
(技能・表現)
まと 産 業 革 命 の 進 展 ・イギリスにおける産業革命の要因について ・産業革命による交通機関
め
と交通の発達
5分
確認する
の発達は,その後の社会に
・産業革命の進展が交通・運輸の発展を促し 何をもたらしたかを考えさ
たことについて確認する
・次回の予告
せる(次回への予告)
・産業革命の影響と社会問題について
・ワークシート回収
3
(4) 本時の評価
評価基準
生徒の状況における評価例
指導の手立て
Ⅰ 意欲・関心・態度 A「十分であると判断される」状況例
・質問に対して、自 ・質問に対して,自ら考え順序立てて説
ら授業ノートや教
明を加えながら答えることができる。
科書を参照しなが
ら考えて答えるこ C「努力を要すると判断される」状況例
とができる。
・ヒントを与え,順序立てて解答
・質問に対し,自ら考えて答えることが
できるように導く。
できない。
Ⅲ
技能・表現
A「十分であると判断される」状況例
・イギリスの石炭や ・イギリスの石炭や鉄鉱石を輸送する手
鉄鉱石を輸送する
段として運河が大きく関わっているこ
手段として運河が
とを地図への記入により読み取り,産
大きく関わってい
業革命の進展と交通網の発達の関連性
ることを地図への
についての考察を適切に表現できる。
記入により読み取 C「努力を要すると判断される」状況例
・ポイントとなる箇所を示し,自
ることができ、そ ・資料を見ながらワークシートに適切に
分で考えて記入できるように導
の考察を適切に表
く。
記入することができない。
現できる。
Ⅲ 授業の実際
(1)研究協議会での指摘より
・板書量が多い
板書中に説明もしているので生徒が集中できない。板書の時間を確保する。
授業プリントと併用できるように調節する
・授業の山場が少なく,盛り上がりに欠ける。
説明が平坦になりがちなので生徒の集中力を切らさないように山場をはっきりさせる。ポイ
ントを絞り説明を簡単に済ますべきところもあると思われる。
・質問の仕方を工夫する(生徒への質問や回答の発表の順番は座席順ではなく,ランダムに行う方
がいい)
今までは順番に当てることで心構えの時間を作っていたつもりだが,いつ当てられるかわ
からない気持ちも大切であり,授業に参加する意識を促すには大切であるとわかった。
・プリントについて
どこまで課題ができていると評価できるかをわかりやすく示すこと,上位層が簡単に終わっ
てしまわないような難易度の作業をどう組み入れていくかが課題である。
(2)今後の課題
4月の授業開始以来,授業ではなるべく答えやすい質問を行い,「わかりません」を許さないかわ
りにきちんと答えたらほめることを心がけてきた。普段の授業の積み重ねで「できる」「やれる」と
いう気持ちができていたことが今回の授業の様子でも見えていた。今後は,こちらからの働きかけや
質問の内容を生徒それぞれにあわせて高度化し,自主的に学習活動ができるようにさせることが課題
である。
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