HDF - 第22回日本HDF研究会学術集会・総会

第22回
日本 HDF研究会学術集会・総会
抄録
ワークショップ
教育講演
HDF 基礎セミナー
イブニングセミナー
スイーツセミナー
ワークショップ
WS1-1
高効率HD
(社医)川島会川島透析クリニック 腎臓科(透析・腎移植)1)
(社医)川島会川島透析クリニック 臨床工学技士部 2)、
(社医)川島会川島病院 腎臓科3)
○土田健司1)、道脇宏行2)、田尾知浩2)、水口 潤3)
本邦における透析療法の成績は主たる治療である血液
9 8 %,血流量 2 5 0 mL/min 以上が 9 5 % である(透析液流
透析(hemodialysis:HD)の成績と考えてよい.しかし,
量は 5 0 0 mL/min,透析液は 3 社を使用)
.
透析効率的には平均の血流量が 2 0 0 mL/min,ダイアラ
低効率HD はほとんど施行していないため,低効率
イザの膜面積は 1 . 5 平米,週 3 回の 4 時間治療が平均で
HD との比較は困難であるが,on-line HDF との比較に
あり,決して高効率HD とは言えない.
おいても血液検査データや生存率データにおいて,高効
このワークショップでは高効率透析について検討する
率HD は遜色ない治療効果を発揮している.したがって,
が,治療条件的な部分はある程度統一して検討すべきと
本邦においては透析液清浄化を実践することで,on-line
も考える.すなわち時間のファクタを一定にして,どの
HDF を施行することなく,高効率HD を施行することで
治療法が効果的かということである.間歇的治療で週 3
も十分治療成績を向上させる可能性がある.
回、1 回 4 時間の枠で考える場合の高効率HD とはという
ことになる.
当 川島 病 院 グ ル ープ では 2 0 1 6 年 6 月末 現 在,およ
そ 1 , 1 0 0 人 の 透 析 患 者 を 治 療 し て い る が, 約 6 0 0 人
が HD, 約 4 0 0 人 が on-line HDF( 血 液 透 析 濾 過:
hemodiafiltration)
,約 1 0 0 人が腹膜透析治療を行って
おり,HD 患者ではダイアライザ膜面積 2 . 0 平米以上が
WS1-2
高効率on-line HDF(前希釈)
虎の門病院 腎センター
○星野純一
34
2 0 0 8 年の透析液清浄化基準の制定、2 0 1 0 年の保険請
存在するが、なかでも近年では中~大分子量物質と長期
求承認、2 0 1 2 年の診療報酬改定による適応疾患の拡大
透析合併症との関連が注目されている。後希釈法は溶質
を通じ、わが国のオンライン HDF 患者数は加速度的に
除去能に優れるが、中大分子量物質除去はアルブミンリー
増加し、日本透析医学会統計調査によれば 2 0 1 3 年末の
クと相関する。一方大面積フィルターを用いた前希釈法
オンライン HDF 患者数は前年度から約 9 , 0 0 0 人増加し
では、中大分子量物質とアルブミンのクリアランスの分
て 2 3 , 5 3 6 人、2 0 1 4 年末には約 1 2 , 0 0 0 人増えて 3 6 , 0 0 0
離が可能であり、HDF フィルターの進歩等で濾過性能が
人に達すると予測されている。この急激な患者増加は世
確保できれば高効率で選択的に溶質除去を得られる可能
界的にユニークであるが、更に欧米諸国と異なり、9 割以
性がある。また前希釈法は低血液流量でも十分な濾過量
上が前希釈法である点がわが国の特徴である。今回はわ
を得ることが可能である。これが高齢の長期透析患者が
が国で前希釈法が圧倒的に支持された理由とそのエビデ
多いわが国で広まった理由の一つと考えられる。透析低
ンスについて考えていきたい。Online-HDF を行う主な
血圧防止や生存率向上に関しては、欧米を中心に 5 つの
目的は、1)尿毒物質除去効率の増加、2)透析低血圧の
RCT にて一定の治療効果が示されているが、前希釈法の
防止、3)生存率の向上および透析合併症の防止である。
エビデンスは Locatelli らによる low flux HD と比し透析
Online-HDF を行う前提に透析液や透析膜の向上があり、
低血圧を半減させた報告のみである。世界一の透析水準
Online-HDF が透析技術向上による慢性炎症や透析低血
を有するわが国において、真に前希釈法が生命予後向上
圧改善などの臨床効果を上回る治療効果を有しているか
に有効かどうか、現在日本透析医学会で検証が行われて
を検証する必要がある。尿毒症物質は約 2 , 0 0 0 種類以上
いる。
高効率on-line HDF (post)
ワークショップ
WS1-3
甲南病院 血液浄化・腎センター
○藤森 明
後希釈HDF 治療においては濾過量と生命予後との関
濾過率
(FF)
を設定する方法を提唱している
(Chapdelaine
連が明らかにされている。すなわち単に HDF をおこな
et al. Clin Kidney J 8 : 1 9 1 - 1 9 8 , 2 0 1 5)
。血漿流量QPW
うだけでは意味がなく、濾過量の多い高効率HDF をおこ
は 血 液 流 量 QB に 対 し、Ht と TP か ら QPW=( 1 -Ht)( 1 -
なうことで初めて合併症予防や生命予後改善が期待でき
0 . 0 1 0 7 TP)QB と計算できる。患者やフィルターの特質を
るわけである。一方、濾過量が過多になれば血液の過濃
考慮して最大の濾過量となるよう FF を設定すると、毎回
縮から TMP が上昇し、過剰なアルブミンの漏出、フィル
の治療における補液流量QS は除水速度を QUF とすると、
ター膜の破損といった有害事象につながる恐れがある。
QS=QPW・FF - QUF で計算される。この方法では毎回の
このため、安全で最大の濾過量を設定する必要がある。
治療開始時に補液流量の計算を行わないといけない煩雑
HDF では通常置換液量を設定しておき、それに体重増加
性が生じるが、血流不足、除水過剰、Ht 高値などの影響
による濾過を上乗せして治療をおこなっている。しかし
を補正しながら安全に高効率HDF をおこなうことができ
この方法では、血液濃縮の度合いは除水量の影響を強く
る。今回は、この FF を利用した HDF 治療の有用性につ
受けることになる。さらに血流量(QB)
、ヘマトクリット
いて検証してみたい。
(Ht)
、総蛋白(TP)の変化も血液濃縮の度合いに影響す
るため、置換液量を設定する方法では最大効率の HDF
を継続しておこなうことが困難である。この問題に対し、
European Dialysis (EUDIAL) Working Group は 血 漿
WS1-4
高効率on-line HDFへの期待~生存率の観点から~
下落合クリニック 腎臓内科
○菊地 勘
【緒言】2 0 1 2 年以降、海外より後希釈オンライン HDF と
5 0 0 0 組のペアで、全死亡までの期間を従属変数、治療群
HD の生命予後を比較した RCT、CONTRAST S tudy、
(HD vs 前希釈オンライン HDF) を独立変数とする Cox
ESHOL Study、OL-HDF Study が発表された。これら
回帰分析を実施した。また、HD 群と前希釈オンライン
を含む systematic review で、1 セッションの置換液量
HDF 群を置換液量で 2 分位した、高置換群( 置換液量
が 2 0 L 以上の高置換群で、生命予後の改善効果が示され
4 0 . 0 L 以上)、低置換群
(置換液量 4 0 . 0 L 未満)
の 3 群比較
ている。しかし、これらは後希釈オンライン HDF の結果
であり、本邦で主流の前希釈オンライン HDF の結果では
ない。
【目的】前希釈オンライン HDF の生命予後に対する効果
を検討する。
を行った。
【結果】HD 群と前希釈オンライン HDF 群の全死亡では、
ハザード比(HR)0 . 8 3 4(9 5 %CI;0 . 7 0 5 - 0 . 9 8 6)と、前
希釈オンライン HDF の生存率が有意に高いことが示さ
れた。また、HD 群と低置換群、高置換群の 3 群比較の
【対象】日本透析医学会統計調査の 2 0 1 2 年- 2 0 1 3 年連
全死亡では、
低置換群の HR 0 .957 (95 %CI;0 .780 -1 .158)
、
結データベースで、治療方法が HD と前希釈オンライン
高置換群の HR 0 . 7 0 3 ( 9 5 %CI;0 . 5 5 9 - 0 . 8 8 3)であり、
HDF を施行している 2 7 2 , 3 1 6 人。この中で、プロンベ
高置換・前希釈オンライン HDF の生存率が有意に高い
シティスコア(PS)の計算に必要な調整因子が揃っている
9 0 , 2 0 8 人を対象として、HD とオンライン HDF の生命
予後を検討した。
ことが示された。
【考察・結語】本邦のデータベースによる 1 年予後の解析
で、前希釈オンライン HDF の予後改善効果が示された。
【方法】治療群(HD or 前希釈オンライン HDF)を従属変
特に 1 セッション 4 0 L 以上の高置換群において高い効果
数、調整項目を独立変数とした多変量ロジスティック回帰
が示されたが、この効果がどのような要因によるのかは
を施行して PS を計算、HD 群と前希釈オンライン HDF
不明であり、今後の検討が必要である。
群を 1:1 マッチングし 5 0 0 0 組のペアが得られた。この
35
ワークショップ
WS2-1
血液透析者における皮膚掻痒症_Japan Dialysis Outcomes
Practice Patterns Study(JDOPPS)研究からの知見
東京女子医科大学 腎臓病総合医療センター 血液浄化療法科
○木全直樹
JDOPPS は、主に生命予後,QOL,入院率,血管アク
は 2 3 . 2 % であったが、2 0 0 2 年には 5 5 .1 %、2 0 0 8 年に
セスをアウトカムとした治療内容から医療管理体制まで
は 8 0 . 7 % と大きく変貌しており、JDOPPS の近似した各
を含む幅広い透析治療に関する前向き無作為化観察研究
phase(phase1 :19 9 9 ~ 2 0 01 年、phase 2 : 2 0 0 2 ~ 2 0 0 5
であるが、皮膚掻痒に関する解析では、皮膚掻痒は年齢、
年、phase 3 : 2 0 0 5 ~ 2 0 0 8 年)における皮膚掻痒の程度
透析歴、血清リン、血清補正カルシウムが高いほど、アル
は、phase が進むに連れて年々減少する事を予想してい
ブミンが低いほど調整オッズ比(AOR) が有意に高いこと
たが、軽度掻痒の患者においても差異は無く、中等度以上
が示された。また、皮膚掻痒の程度を 5 段階に層別した
のかゆみを訴える患者比率は各phase とも 4 3 ~ 4 6 % と
結果では、中等度以上の掻痒で倦怠感との有意な関連性
同等で有意な差を認めていない。このことは皮膚掻痒の
(AOR= 2 . 6 - 5 . 9 , p < 0 . 0 0 0 1 ) を認め、QOL score では、
原因が血液透析で除去される物質が主たる原因でない可
掻痒の程度が高度であるほど、MCS-QOL( 精神的健康度)
能性が示唆された。また、各施設の掻痒患者比率は 1 8 %
および PCS -QOL( 身体的健康度) の低下と関連性が示さ
~ 5 9 % と各phase とも大きなばらつきが示された。これ
れた。
らのことから原因の同定は出来ていないが、透析液の水質
JDOPPS 解析で掻痒に関して上記以外に興味深い点
など透析施設的な影響の方が大きい可能性が示されてい
は、この調査期間中に日本国内の透析膜素材選択が大
る。
きく変化している点にある。日本透析医学会統計調査
で、1 9 9 8 年の透析膜素材に占める合成高分子膜の割合
WS2-2
Drug and Blood purification
大町土谷クリニック
○高橋直子
36
血液透析患者の皮膚掻痒症は 6 0 ~ 8 0%に認められ、
に対して、治療アルゴリズムを構築し、導入している。か
睡眠障害やうつ病などにより QOL を低下させるだけでな
ゆみを改善させるための生活指導を行うとともにかゆみ
く、生命予後にも悪影響を与える重大な合併症である。
の原因により、
1 ) 腎不全・透析に由来する異常に対しては、
かゆみの原因は、1)腎不全・透析に由来する異常、2)
生体適合性を向上させ、なおかつかゆみの原因となる尿
皮膚の異常、3)中枢神経内のかゆみ制御の異常の 3 つに
毒症性物質を効率的に除去するため、PMMA 膜による
大別される。1)腎不全・透析に由来する異常には、尿毒
蛋白吸着型透析、
前希釈オンライン HDF を積極的に行う。
症性物質の蓄積、血清Ca・P 濃度の上昇、二次性副甲状
また、2)皮膚の異常に対しては、乾燥への保湿剤による
腺機能亢進症、ヒスタミン・サブスタンス P・インターロ
スキンケアを重視し、掻破による皮膚炎や二次的湿疹化
イキンなどの起痒物質、透析膜による補体の活性化など
を伴う場合にはステロイド外用剤を併用する。そして、3)
が関与している。2)皮膚の異常には、皮膚の乾燥や乾燥
中枢神経内のかゆみ制御の異常に対しては、選択的κオ
による痒覚神経(C 線維) の表皮内への伸長による皮膚の
ピオイド受容体作動薬の投与を行い、かゆみに対する原
過敏性やかゆみ閾値の低下などがある。3)中枢神経内の
因別かつ総合的な治療を行っている。
かゆみ制御の異常では、内因性オピオイドの関与が注目
その結果、かゆみがある患者は 2 0 0 9 年 5 月の 7 8 . 8%
されている。血液透析患者の皮膚掻痒症にはこれらの因
から 2 0 1 5 年 1 0 月には 4 9 . 8%へ、中等度以上のかゆみが
子が複合的に関与しているため、治療抵抗性となる場合
ある患者も 2 9 . 4%から 3 . 8%へとそれぞれ有意に減少し
が多いと考えられる。そのため、かゆみの原因別かつ総
ており、血液透析患者の皮膚掻痒症には薬物療法や血液
合的な治療が必要である。
浄化療法による原因別かつ総合的な治療が有用であると
当院では、2 0 0 9 年 6 月より血液透析患者の皮膚掻痒症
考える。
HD and HDF
ワークショップ
WS2-3
(医)永生会 まつした腎クリニック
○松下和通
透析皮膚掻痒症は、腎不全患者において高率に認め
また基礎研究では、サイトカインなどによる全身の炎症
られているものの、その病態生理には未だ解明されてい
状態が惹起されて、免疫学的に透析皮膚掻痒症を発症
ないことも多く、治療に難渋する症例も少なくない。血
するという報告もある。透析膜の生体適合性を考慮して
液透析患者における発症率は、1 9 9 0 年代までの報告で
polymethylmethacrylate(PMMA) 膜を透 析皮膚掻 痒症
は 5 0 - 9 0%と非常に高いのに対し、それ以降の報告をみ
患者に使用したところ、4 週間で掻痒スコアが改善したと
ると 2 2 - 5 7%と低 下 傾向を示している。1 8 8 0 1 名の血
いう報告もある(Artif Organs. 2 0 0 8 ; 3 2 : 4 6 8)ことから、
液透析患者を対象とした 2 0 0 6 年の報告では、4 2%の患
透析膜や治療モードの選択が重要となる可能性がある。
者 に 掻 痒 症 を 認 め て い る。
(Nephrol Dial Transplant
透析皮膚掻痒症の発症機序を考慮して、現時点での最適
2 0 0 6 ; 2 1 : 3 4 9 5)こうした透析皮膚掻痒症の発症率低下
な HD・HDF 療法について考察したい。
については、透析技術の進歩が大きく寄与している可能
性が指摘されている。透析量・溶質除去量との関係を
検討した臨床研究はいくつか報告されており、5 9 名の
血液透析患者を対象とした研究では、透析皮膚掻痒症の
程度と Kt/V が負の相関を示したことに加え、透析量を
増加することにより掻痒症状が軽減する傾向も報告され
ており、興味深い。
(Am J Kidney Dis. 1 9 9 5 ; 2 5 : 4 1 3)
WS2-4
前希釈オンラインHDFおける皮膚掻痒症の改善効果
医療法人社団城南会 西條クリニック鷹番
○朝日大樹、長友まどか、中島成仁、土屋光精、下地 博、藤田菊恵
西條公勝、西條元彦
【目的・方法】当院では、平成 2 5 年 1 月よりコンソールを
以上の群でかゆみが有意に改善した。かゆみなし群とかゆ
全台オンライン HDF 治療が可能である多用途透析装置
みあり群の除去率と皮膚水分量を比較した結果、β 2 -MG・
に変更した。HD から前希釈オンライン HDF(以下オン
α 1 -MG 両除去率は同等であったが、かゆみなし群が、か
ライン HDF)変更後 2 9 ヵ月間の皮膚掻痒症(以下かゆみ)
ゆみあり群に比べ有意に皮膚水分量が高値であった。し
の推移を愛Pod 調査シート(質問 2 0 項目)で評価し、かゆ
かし、ヘモダイアフィルタの製造時期によりβ 2 -MG・α1 -MG
みと除去率(β 2 -MG とα 1 -MG)の関係性について検討し
両除去率の低下が認められたので、製造メーカーに依頼
た。また、皮膚水分計を用いて、皮膚水分量も観察した。
し、アルブミンのふるい係数の管理幅を狭め、品質管理
【結果・考察】HD から 3 0 L オンライン HDF 変更後(7 1
を向上させたロットに変更したところ、両除去率が改善
名、ニプロ社製MFX-S、血流量 2 3 8±3 8 mL/min、膜面
し、特にα 1 -MG 除去率が安定した。さらに治療条件を増
2
積 1.87±0 .31m )
、除去率はβ 2 -MG 7 5 . 5 ± 5 . 2%、α
1
-MG 2 3 . 5 ± 5 . 9%であった。中等度以上のかゆみ割合
は、HD 時 2 8 . 2%、変更 3 カ月後 1 2 . 9%で減少した。か
ゆみが改善した 1 0 名では、かゆみがある症例と比較して、
加させた症例(2 6 名)では , β 2 -MG 除去率 7 8 . 4 ± 4 . 0 %、
α 1 -MG 除去率 3 2 . 6 ± 6 . 9 % に増加し、β 2 -MG 除去率
80 % 以上で、
さらにα 1 -MG 除去率 30 % 以上の患者では、
かゆみの悪化がみられなかった。
他の愁訴全てにおいて低値を示した。変更 1 0 カ月後、α
【結語】かゆみ軽減には、乾燥肌などの皮膚状態の是正が
-MG 除去率 3 0 % 未満の症例(3 6 名)を置換液量 3 0 L か
必要である。そのうえで、オンライン HDF 治療は、かゆ
ら 5 0 L に増加した。α 1 -MG 除去率 3 0 % 以上と 3 0 % 未
み改善に寄与する。多職種が連携して、総合的に対策を
満で分類した結果、HD と比較してα 1 -MG 除去率 3 0 %
講ずる必要がある。
1
37
ワークショップ
WS2-5
皮膚掻痒症改善のための透析療法~物質除去手法の観点から~
メディカルサテライト岩倉 看護部透析室
○長尾尋智
2 0 0 1 年の新潟県の大規模調査によると、透析患者にお
とから、機能分類 2 0 1 3 において S 型透析器に分類され
ける睡眠障害を伴う皮膚掻痒症の発症は 4 8%であり、腎
ている。
不全患者において最も頻発する合併症の一つであった。
しかし、掻痒症の発現に特定の分子量領域の物質の蓄
近年は、透析効率の向上、透析液清浄化、オピオイド受
積が関与することが推定されているものの、掻痒症に直接
容体作動薬などの薬物療法、皮膚環境の改善などにより、
関与する尿毒症物質が明らかになっていない現在、医療者
皮膚掻痒症の発症は減少傾向にある。また、発症には、
は治療モードや治療条件を変更することにより、トライ&
炎症などが引き起こすヒスタミンの放出、
(末梢性)
、オ
エラーによって個々の患者に応じた治療条件を模索してき
ピオイド受容体を介したメカニズム(中枢性)の他、物質
た。中大分子量物質の除去効率向上と、治療条件を可変
除去に関わる因子として、小分子物質・中大分子物質の
できる HDF 療法は有効な選択肢であると考える。
蓄積、Ca,P などが関与すると考えられている。
我々は、中大分子量物質の除去を必要とする患者に
小分子物質について広重らの Kt/V と掻痒症の関連の
対 し て は、postHDF と I-HDF を 組 み 合 わ せ た 手 法 を
報告があり、中大分子物質ついては金、櫻井らがβ 2 -MG
用いている。postHDF( 8 L)+I-HDF( 1 . 5 L) の手法により
領域の溶質除去効率と掻痒症の関連を報告している。
β 2 -MG の除去率 8 0%、α 1 -MG の除去率 3 6%を得るこ
また、独自の吸着特性を有する透析膜である PMMA
とができる。当院では掻痒症を訴える患者はほとんどい
は、サイトカインや、アルブミンを越える分子量領域の
ない状況であるが、掻痒症を合併する症例には積極的に
物質を吸着すること、多数の掻痒症の改善報告があるこ
post+I-HDF を施行することを考えている。
WS3-1
高効率透析と栄養士の役割
H・N・メディックさっぽろ東
○角田政隆
38
自施設の 2 0 1 5 年末における透析歴 1 年以上の患者(n-
TIF(Tilburg Frailty Indicator; フレイルの診断ツール )、
2 9 4 ) の透析時間は 2 4 1±16 [min/session]、
血流量は 2 5 4
CNAQ(Council on Nutrition appetite questionnaire; 食
± 2 2 [mL/min] で あ る (On-line HDF は 3 0 名 に 施 行 )。
欲の調査ツール ) などを用いて栄養管理の参考にしてい
2 0 1 4 年の粗死亡率は 6 . 1 % で、毎年全国平均より低値で
る。また、栄養士も普段から透析室に足を運び患者の状
推移している。我々の透析方法は普遍的であると考える
態を把握することが重要である。もし栄養状態の変化が
が、患者の生命予後はそれほど悪くないと思われる。し
透析量やその方法に起因すると考えられるならば、栄養
かし中には透析量の不足に起因すると思われる状態の悪
士も透析方法について意見を述べる必要がある。
化が見られる患者も経験する。一方高効率透析は患者の
自施設の主な検査結果を 2 0 1 3 年末の JSDT 透析統計
QOL を向上させるために非常に有意義な方法であると思
調査( 括弧内) と比較してみたところ、Alb 3 . 6 5±0 . 3 2 [g/
われる。その反面、高効率透析が合わず状態が悪化する
dL] ( 3 . 6 1 )、補正Ca 9 . 0 0±0 . 6 5 [mg/dL] ( 9 . 2 8 )、P 4 . 8 8
患者も存在する可能性があり、必要とされる透析量には
± 0 . 8 9 [mg/dL] ( 5 . 2 2 )、iPTH 1 6 4 . 0 ± 1 0 5 . 4 [pg/mL]
個人差があると思われる。
( 1 6 8 . 7 ) であった。良好な P 管理も生命予後に好影響を
透析患者の状態変化の多くは「栄養状態」の変化として
及ぼすと考える。これには栄養士を含むスタッフの不断
表れる。そのため栄養士も栄養状態を把握する必要があ
の指導が非常に重要であるが、P 制限のために、どうし
る。まずは体重の変化を見るのが重要であるが、対策を
ても蛋白摂取量が少なくなる。栄養状態維持のために、
考える上で、
いろいろな指標を用いて栄養状態を推測する
蛋白摂取は必要不可欠である。また、高効率透析下でも
ことも必要である。自施設では定期的に体組成や握力を
蛋白摂取量を増加させることは必須であり、そのためにも
測定したり、MIS(Malnutrition Inflammation Score) や
栄養士の果たす役割は重要である。
高齢透析患者の栄養障害に対する栄養介入
ワークショップ
WS3-2
(医)清永会 矢吹病院
○中嶌美佳
主題である「高効率透析」の明確な定義はないが、高効
腎臓の 1 0%(Ccr レベル)しか代替できないため患者は
率が患者の不利益になってはならないという暗黙の了解
全員透析不足である。よって自施設では高齢者だからと
がある。物質除去効率の高い透析治療によって栄養障害
いって始めから透析量を少なく設定することはない。一
のリスクを抱えやすいのは栄養摂取量が低下しやすい高
部の患者では愁訴や検査値からさらに血流量などの透析
齢透析患者である。自施設では患者の栄養状態を MIS
量を上げることもあるが高齢者は栄養摂取量が低下しや
で半年に 1 回調査しており、毎回の結果でも年齢が高い
すいため、大部分の患者では透析膜や透析方法の変更を
ほど栄養障害のリスクが高くなる。6 5 歳以上の透析患者
し、それでも改善しない場合は血流量を下げて対応して
における 2 年間の栄養状態の変化を評価したところ、対
いる。また○○を食べれば病気が治るという食品がない
象者 1 7 5 人(年齢 7 5 . 5 歳、透析歴 7 . 4 年)のうち栄養状態
ように、低栄養患者への介入も○○を食べれば栄養がと
が維持・改善した群は 9 5 人、悪化した群は 8 0 人だった。
れるという魔法の食品はない。結局のところ、患者の嗜
調査開始時の背景因子では MIS 合計点が維持・改善群
好や食習慣を丁寧にアセスメントし、いかに患者に合っ
で有意に悪く、それ以外では有意差はみられなかった。2
た食事の提案ができるかが重要となる。食事摂取の改善
年間における透析条件の経過では透析膜は両群で患者に
に時間がかかるならIDPNや栄養補助飲料、治療用特
合わせて変更していた。透析方法は悪化群では HDF が
殊食品などと並行して摂取量の増加を図る。栄養士は栄
5 1 . 3%から 3 8 . 8%に減少し、HD は 4 8 . 8%から 6 1 . 3%
養状態を定期的に評価して、他職種と栄養摂取量と物質
に増加した。血流量は両群ほぼ不変で患者に合わせて上
除去のバランスがとれているかの情報交換を行い、個々
昇や不変、低下が混在していた。透析時間は両群で変わ
の患者に合わせた根気強い介入が求められる。
らなかった。4 時間・週 3 回の標準的な透析治療は正常な
WS3-3
高齢透析患者のHDFと栄養について考える
医療法人社団 腎愛会だてクリニック 栄養科1)、医療法人社団 腎愛会だてクリニック2)
○大里寿江1)、伊達敏行2)
HDF 療法には、β 2 MG 除去、炎症状態改善、循環動態
食事摂取が可能な患者もいる。高効率透析では、アルブ
維持、生命予後改善等多彩な効果が期待されている。同
ミンが 5 ~ 1 0 g 程度抜ける場合もある。通常成人では 1
時にアルブミン、アミノ酸など体に必要な物質の除去に
日あたり 6 ~ 1 5gのアルブミンが合成され、体内に 2 5 0
よる弊害も危惧されている。今回、高齢透析患者の HDF
~ 3 5 0g存在し、血管内 4 0%、血管外 6 0%プールされて
と栄養について検討した。循環動態安定による倦怠感・
いると言われている。アルブミンの合成には、栄養、肝機
疲労感の軽減は、活動量、食事摂取量の維持増加、栄養
能の影響が大きいが、ビタミン B 6 不足の関与も報告さ
状態の改善にもつながる可能性があると考え、7 0 歳以上
れており、食事内容不十分な患者には、薬剤投与の効果
の維持透析患者 1 3 名の HD から HDF 移行前後1年間の
を検討している。4.アルブミンより分子量が小さいア
データを比較した。GNRI の平均値に有意な差はみられ
ミノ酸は、血中濃度が低く細胞内外の移動が容易なため、
なかったが、4 名は移行後上昇傾向であった。2.自施設
血中のアミノ酸除去による筋肉からのアミノ酸流失が懸
での研究では、前希釈オンライン HDF 療法の炎症性サ
念されている。IDPN(透析中栄養点滴)が有用であると
イトカインの除去に加え、産生の少ない浄化法である可
の報告もあるが、透析時の食事・栄養補助飲料摂取も緩
能性が示唆された。炎症マーカーとして CRP についても
徐な消化吸収により、栄養状態の維持改善が可能であっ
推移を見た結果、前後での平均値に有意差はなかったが、
た。以上により、高齢透析患者の HDF 療法における栄養
半数の 6 名に低下がみられた。3.自施設高齢者は、循
士の役割は、個々にあった食事内容を最適なタイミング
環動態維持を目的とした、アルブミン除去量が少ない膜
で提供または、摂取できるアドバイスをすることであると
を選択している場合が多いが、高齢者であっても十分な
考えられる。
39
ワークショップ
WS3-4
血液透析濾過(HDF)療法における栄養関連指標の再考
東京医療保健大学 医療保健学部 医療栄養学科1)、倉田会 えいじんクリニック2)
佐藤循環器科内科3)
○北島幸枝 1)、兵藤 透 2)、佐藤 譲 3)
血液透析濾過(HDF)療法は合併症軽減や予防効果等
年齢 7 2 . 4 ± 7 . 5 歳)
。CRP 0 . 3 mg/dL 以上および炎症性
を目的に普及し、HDF 患者数は 2 0 0 9 年時に比べ約 2 . 5
疾患状態、Hb 8 . 0 g/dL 未満、肝機能異常および輸血歴
倍と増加した
(日本透析医学会統計調査委員会:わが国の
のある者は除いた。各群の GA と HbA1 c の相関関係、
慢性透析療法の現況 2 0 1 4 年 1 2 月 31日現在)
。HDF 療法
既知の相関との比較、HDF 群の Alb 除去量を調査した
は血液透析(HD)療法に比べ中分子蛋白質などの除去効
結果、HD 群の GA と HbA1 c の相関は有意な正相関を
率がよい一方、アルブミン
(Alb)
の漏出も多いことが報告
(r= 0 . 7 3 6、R 2 = 0 . 5 4 2、p < 0 . 0 0 0 1)
認めた。稲葉らの
されている。透析患者の 3 8 . 1%を占める糖尿病透析患者
報告(r= 0 . 7 7 7、p < 0 . 0 0 1 : J Am Soc Nephrol, 2 0 0 7)
の血糖コントロール指標は、
グリコヘモグロビン
(HbA1 c)
でも同様な結果が報告されている。しかし、HDF 群では
が赤血球寿命やエリスロポエチン製剤等の影響を受ける
HD 群より低い相関
(r= 0 . 5 6 2、R 2 = 0 . 3 1 6、p < 0 . 0 0 0 1)
ために日内血糖変動を過小評価することから、グリコア
であった。回収し得た HDF 群の排液(2 4 名)中の Alb 除
ルブミン(GA)を用いることが推奨されている。しかし、
去量は平均 2 . 4 2 ± 2 . 1 6 g であった。したがって、HDF
GA はアルブミン代謝の影響を受けるため、HDF 患者の
患者では Alb 漏出の影響を受け GA 値が過小評価される
GA の評価は現在の評価基準と異なる可能性が考えられ
可能性があった。以上から、HDF 療法においては、血糖
る。そこで HDF 療法を行う糖尿病透析患者の GA 値に
関連指標を含めたその他の栄養関連指標についてもその
関して検討を行った。
評価方法を再検討する必要があると考える。
対象は、HDF 糖尿病透析患者(HDF 群)1 3 3 名(男
今回、血糖関連指標以外にプレアルブミンやアミノ酸
性 8 1 名、女性 5 2 名、平均年齢 6 8 . 7±1 3 . 3 歳)と HD 糖
の動態も含め報告する。
尿病透析患者(HD 群)2 3 名(男性 1 8 名、女性 5 名、平均
WS4-1
臨床工学技士から見た理想の血液浄化療法 −Pre-OHDF(高効率派)−
援腎会すずきクリニック 臨床工学部
○鈴木翔太、本田周子、鈴木一裕
40
当院では、透析量の増加(透析時間延長、血流量増加)
透析後のだるさも軽減できる。よって Pre-OHDF 最大の
と Pre-OHDF で患者の予後改善を目指している。これま
メリットは、無理なく血流量を上げられる事と考えている。
で OHDF を併用し透析量を増加させることで、多くの患
リンの管理についても、標準的な透析で除去できる
者の体重が増加し、栄養状態の指標である GNRI の上昇
リンの量が 8 0 0 ~ 1 0 0 0 mg 程度であるのに対し血流量
も経験してきた。平成 2 8 年 7 月現在、全患者 9 7 名中 7 6
を 4 0 0 mL/min にすることで、自施設の結果では 4 時間
名が Pre-OHDF を行っており、透析時間 5 .1 時間、血流量
で 1 2 0 0 mg、5 時間で 1 4 0 0 mg の除去量が確保できる。
3 3 4 . 2 mL/min、Kt/V:2 .1 7、GNRI:9 2 . 8 となっている。
この 5 時間での 4 0 0 mg の差は週 換 算で 4 0 0 mg × 3 回
透析効率を上げる方法として時間延長と血流量増加が
=12 0 0 mg となり通常透析 1 回分以上となる。このことは
あるが、時間延長による死亡リスク軽減については皆周
合併症予防だけでなく、リン吸着薬の軽減にもつながる。
知の事実であり、特に心肺機能の低下した高齢者では時
透析治療は、正常人が週 16 8 時間で行っていることを、
間除水量も少なくできる時間延長が望ましい。
長時間でも 2 0 時間程度でしか行っていない。透析不足合
その上で、当院の特徴でもある高血流も積極的に確保す
併症を防ぐためにも、年齢や体格、性別などにとらわれず、
るようにしている。通常の HD で高血流にすると、溶質除
しっかりと透析量を確保することが大切である。そのため
去の急激な亢進が原因で血漿浸透圧の低下が起こり、透析
には日頃から医療者の注意深い観察が必要であり、患者
中の血圧低下や透析後のだるさを生じることがある。しか
の変化に速やかに対応できなければならない。私は臨床
し Pre-OHDF の場合、等張性置換液が補充されることで
工学技士として患者の声に耳を傾け、一人一人に合った
血漿浸透圧の低下が是正され、透析中の血圧は維持され
透析方法の提案をこれからもしていきたいと考えている。
テーラーメイドの血液浄化療法を目指して ~溶質除去性能の観点から~
ワークショップ
WS4-2
(医)永生会 まつした腎クリニック
○星野輝夫、池田光章、内藤憲二、鶴田和仁、笠田寿美子、羽根田 破、
多胡紀一郎、松下和通
近年、血液浄化療法が多様化する中、患者の病態に応
果を期待して、9 L/ hという比較的低置換液量の条件で
じたテーラーメイドの治療を実践する為、臨床工学技士
の治療を積極的に行っている。一方で愁訴により、α 1 ‐
は水質管理をはじめ、治療法の選択、治療時間、血流量、
MG(3 3 KDa)領域の大分子量物質の積極的除去を目的と
膜の選択、HDF であれば置換液量等、様々な情報を提供
した場合の HDF においては、更に透水性の高い膜を使
しなければならない。更にスタッフの為の定期的な勉強
用する事で対応しているが、対象患者においては同時に
会の実施、新しいシステムや治療法導入時の実技指導等、
小・中分子量物質も積極的かつ効率的に除去する事が理
その役割は多岐にわたる。当然、各施設において治療シ
想ではないかという考えのもと、2 0 1 5 年 1 月より透析液
ステムが異なる為、限られた環境下で最大限の工夫をし
流量 5 0 0 mL/min、置換液量 1 0 ~ 1 8 L/ 4 ~ 5 hの後希
ているのが現状であると考える。
釈オンライン HDF の施行を開始した。又、間歇補充型
当院においても手探りの中、他施設の先行研究を参考
HDF(I-HDF)においては下肢つれ予防と血圧維持目的で
に前希釈オンライン HDF を開始して今年で 9 年目を迎
2 0 1 4 年 4 月より導入している。更にはオンライン HDF
える。透析困難症や長期合併症予防、透析掻痒症、RLS
と I-HDF を組み合わせたモードも全自動で実施できるよ
(restless legs syndrome)
等の症例を対象として開始し、
うになった。このように、様々な血液浄化療法が登場す
これまでに QOL の維持や改善において一定の効果が得
る中、患者の病態に応じ適正に治療法を選択することは
られ、その結果を報告している。特に高齢透析者に対し
容易な事ではない。今回、溶質の除去性能を中心にこの
てはオンライン HDF による補液を介した血圧安定化効
問題を検討してみたい。
WS4-3
オンラインHDFにおける不定愁訴に応じた治療条件とは
(社医)川島会 川島病院 臨床工学部1)、
(社医)川島会 川島病院 腎臓科(透析・腎移植)2)
○道脇宏行1)、田中悠作1)、廣瀬大輔1)、田尾知浩1)、土田健司2)、水口 潤2)
生命予後が良好であるとともに不定愁訴がない治療条
ることもない。透析困難症では溶質除去ではなく、置換
件こそ理想の血液浄化療法であることは言うまでもなく、
液量の割合を増加させた HF に近い前希釈法が有用であ
その理想に今最も近いのがオンライン HDF ではないか
るとの見解を得た。
と考える。しかし、治療条件をみてみると前希釈法が約
また、この時の不定愁訴が中等度以上と考えられた患
9 0%を占め、置換液量は平均約 4 0 L と日本透析医学会統
者に対し、オンライン HDF 治療を約 1 年間継続した後の
計調査委員会より報告されている。さまざまな不定愁訴
Visual Analog Scale(VAS)
変化を調査したところ、多く
に対し、一律な治療条件で果たして高まる期待に応える
の改善例を認めた。しかし、同一の治療条件で悪化する
ことができるのだろうか?
場合もあり、患者背景と症状の変化については更なる検
当院では臨床効果や治療条件の見直しなど、アルブミ
討が必要である。
ン漏出量を指標に評価を行っており、2 0 1 5 年 6 月末時点
不定愁訴改善率から、循環動態安定を目的とする場合
の評価においても不定愁訴改善率との関連性を認めた。
は前希釈法を選択し、溶質除去を求める場合は後希釈法
関節痛や掻痒といった症状改善に対してはアルブミン漏
の選択が有用であると考える。しかし、継続的な臨床効
出量 2 ~ 4 g/session あるいはそれ以上の治療条件が有
果を得るためにはそれぞれの症状に対し、それぞれの時
効であったことから、既存の合成高分子膜HDF フィルタ
点で治療条件を見直し評価していかなくてはならない。
を用いた前希釈法では 6 0 L 以上の置換液量が必要となる
さまざまな治療条件の提供を可能とすることこそオンラ
場合が多い。一方、後希釈法では 8 ~ 1 0 L 程度の置換液
イン HDF の特徴であり、それを評価検討することが臨床
量でこの条件を満たせる場合が多く、透析不足を危惧す
工学技士の使命である
41
ワークショップ
WS4-4
高齢透析患者に対するI-HDFと私的な理想
医療法人社団 菅沼会 腎内科クリニック世田谷 臨床工学部1)
医療法人社団 菅沼会 腎内科クリニック世田谷 人工透析内科2)
○西澤喬光1)、正木一郎1)、菅沼信也 2)
【背景】
HDF を行う目的は高分子量尿毒素の除去、透析困
難症への対応の2つが主に考えられる。近年は透析患者
の高齢化が進んでおり、後者の目的で選択する事例が多
くなっていくのではないかと推測する。
2 0 0 mL/min で設定している。近年の透析患者背景を鑑
みると、有用な治療法の一つと思われる。
【理想の血液浄化療法】理想を言えばキリがない。本来は
1 0 0 人の患者に対し 1 0 0 通りの治療バリエーションが必
【間歇補液型HD】I-HDF は元々間歇補液型HD という形
要と考える。例えば HF は透析困難症に適応があるにも
で始まった。診療保険請求上「慢性維持血液透析濾過(複
関わらず、衰退しているように感じる。下門らの報告によ
雑なもの)をおこなった場合」に含まれ I-HDF という名称
れば浸透圧変化は OHDF よりも HF の方が緩やかで、透
で定着しているが、置換液量が少量であり Filtration を
析困難症には OHDF よりも適していると推測する。また
つけるには値しないと考える為、私的には I-HD に近いと
I-HDF に比べて中~大分子量領域の除去が期待でき、掻
痒感などの愁訴を改善する可能性がある。しかし、On-
捉えている。
【I-HDF の実際】血液浄化器を介しての逆濾過補液が主
Line HF は保険上の取扱いが定まっていない為、必然的
流で、補液中は除水停止状態となる。置換液量を増やせ
にボトル型HF となる。大量液置換できれば電解質補正
ば除水停止時間が長くなる為、除水速度を速めるか時間
も不可能ではないと推測するが、ボトル型での大量補液
延長の選択を迫られる。除水速度を速める事は本末転倒
は現実的でない。同様の効果を望める療法は TQD を落
で、補液量増大には限界がある。しかし、当院院長らが報
として HF に近づけた OHDF が現実的な妥協点と考える。
告してきた様に1L 程度の少量補液でも循環動態を緩や
【結言】高齢透析患者で活動性の低い症例には I-HDF、
かにする事が示唆された。補液速度も重要と考え当院は
HF、TQD を落とした HDF の選択をするべきと考える。
WS4-5
入院施設(導入)大学病院の立場から
東京医科歯科大学医学部附属病院 MEセンター1)
東京医科歯科大学医学部附属病院 血液浄化療法部 2)
○大久保 淳1)、瀬島啓史1)、小森慈人1)、山本素希1)、前田卓馬1)、宮本聡子1)
山本裕子1)、倉島直樹1)、岡戸丈和2)
臨床工学技士から見た理想の血液浄化療法とは、基本
去を目的に透析液Na 濃度を 1 4 5 mEq/L に調整して施行
的には透析液の清浄化や濃度管理をしっかり行い、生体
し、さらにはアルブミンが除去されないヘモフィルターを
適合性の良い血液浄化器を使用し、安全に施行すること
使用した On-Line HDF も施行している。外来患者にお
と考える。本学血液浄化療法部では、2 0 1 4 年 8 月に逆
ける大分子除去目的にはα1領域が除去可能なヘモフィ
浸透(RO)装置及び透析用水配管の入れ替え直後よりバ
ルター使用した On-Line HDF を施行し、血液流量に合わ
リデーションをとり、生菌数やエンドトキシン値はもち
せて透析液流量も 7 0 0 ml/min まで調整し施行している。
ろん全有機炭素(TOC)もチェックし清浄化管理を行って
また、近年は末梢動脈疾患(PAD)の患者が増加している
いる。濃度管理においては、毎朝各装置の透析液を、血
ため、PMMA や AN 6 9 などの抗炎症作用を有する膜を
液ガス分析装置を用いての、ナトリウム(Na)やカリウム
使用し、場合によってはデキストラン硫酸LDL 吸着療法
(K)
、重炭酸のチェック、さらに浸透圧計で浸透圧の測
(DSAL)との直列施行も行っている。患者の個人差に配
定を行う 2 機種での管理を行っている。透析装置は 1 5 台
慮して各個人に最適な医療を提供すること、すなわち今
あり、すべて個人用装置のため、患者に合わせた処方透析
大会のテーマにも記されているテーラーメイド医療が理
が可能となっている。透析液は無酢酸透析液を使用して
想の血液浄化療法と言える。
いるが、治療前血清カルシウム
(Ca)
が高値の患者には Ca
濃度が 2 . 5 mEq/L の透析液を使用している。さらに、透
析中の血圧低下が懸念される患者には、細胞内水分の除
42
高効率オンラインHDFの治療効果について
ワークショップ
WS5-1
橋本クリニック
○櫻井健治
透 析患者に発 生する下肢イライラ症 候 群(Restless
5 0 L/s、4 時間HDF で治療に入り、除去率、除去量を測
Legs Syndrome:RLS) の原因物質は、中・大分子量尿
定して治療効果を見ながら HDF 条件を上げていく。前
毒素と推定されているもののいまだ同定されていない。
希釈HDF で除去効率が顕著でなければ後希釈HDF に変
我々は、RLS はα 1 -MG 除去率 3 5 % では軽減すれども
更して尿毒素の除去量を増加させるべきである。
治癒はせず、
除去率 40 % の HDF 治療を続けることによっ
て治癒可能であることを報告した。それは現在でも同意
見ではあるが、治療効果が乏しい場合にはα1 -MG 除去
率 4 0%であっても除去量が少ない場合があるので、その
場合には除去量を検討することとしている。α1 -MG 除
去量としては 2 0 0 mg が目標となる。また、蛋白結合型
尿毒素のあるものが症状の発現に関与している可能性も
あるので難治性RLS では 6 ~ 8 g/ 回の Alb 漏出が起こ
るような治療条件を設定する。再発した場合の RLS は
以前の RLS よりも難治性となるという印象がある。ヘモ
ダイアフィルタとして大面積の GDF、MFX-U あるいは
TDF-PV を使 用して Qb 2 5 0 ~ 3 0 0 ml/min、置 換 液 量
WS5-2
下肢イライラ症候群への対策
東京女子医科大学医学部 第四内科
○亀井大悟
下肢イライラ症候群は耐え難い下肢の異常感覚を伴
パーキンソン病、抗精神病薬、末梢神経障害、糖尿病、本
い、下肢を動かしたいという衝動に駆られることを中核
態性振戦などが考えられている。
症状とする、運動異常症に分類される神経学的疾患であ
特発性RLS の薬物治療としては、軽症・間欠型では鉄
る。欧米では古くから知られており、1 9 4 5 年に神経科
補充、中等症・重症では鉄補充に加えてドパミンアゴニ
医Ekbom によりレストレスレッグ症候群(restless legs
ストやα2δリガンドの投与を行う。薬物療法開始時は単
syndrome: RLS)
と命名された。
剤の最小用量から開始し、薬効を確認しながら漸増し投
RLS には特異的なバイオマーカーが存在しないため、
与量は至適最低量にとどめる。
詳細な問診、臨床症状、既往歴などの聴取を行い、診断基
末期腎不全に伴う二次性RLS では、ハイパフォーマン
準に照らし合わせて診断する。International RLS study
ス膜を用いた週 3 回 4 時間の HD でも RLS を認める症例
Group (IRLSSG) の診断基準があり、4 つの必須診断項目
が存在する。このような症例に、前希釈online HDF や高
と 3 つの補助的特徴から構成されている。患者さんの主
補充液量を用いた offline HDF に変更することで症状の
観的な訴えに基づくため、4 つの診断基準を満たす他の
改善を得られる場合があり、HD から HDF への変更も有
疾患
(RLS mimics)
との鑑別が困難である場合も多い。
力な治療選択の一つである。RLS の発症に HD と HDF
RLS の病因はよくわかっていない。推定されている病
の違い(溶質除去や生体適合性など)が関与している可能
因として、特発性RLS では鉄欠乏・鉄代謝異常、ドパミ
性がある。
ン神経機能異常、遺伝的要因が推定されている。二次性
RLS の原因として、慢性腎不全(特に維持透析)
、妊娠、
43
ワークショップ
WS5-3
下肢イライラ症候群に対するI-HDFの効果
社会医療法人財団石心会 川崎クリニック
○宍戸寛治、中村賢洋、鶴澤一行、若狭幹雄
透析中の末梢循環障害是正や急激な血圧低下防止を
液低下に伴う処置が多い患者であるが、マイルドな HDF
目的に間歇補充型血液透析濾過(intermittent infusion として高齢者、栄養障害、末梢循環障害の患者にも適応
hemodiafiltration: I -HDF) が考案され、近年広く臨床応
可能と思われる。一方、下肢イライラ症候群、ESA 抵抗
用されている。I-HDF は補充液や清浄化された透析液を
性貧血、透析アミロイド症など、中・大分子溶質の積極
計画的に血液側に補充することにより1循環血液量減少
的な除去により改善が見込まれる病態では、I-HDF は積
傾向の軽減による血圧の維持2末梢循環障害改善による
極的な適応とはならないと考える。下肢イライラ症候群
血漿再充填速度の増大とそれに伴う溶質移動の促進を図
は透析患者の 1 0 - 3 0 % に合併する。重症例では大容量置
り、その結果として治療中の処置回数の軽減を可能とす
換HDF が有効であり、α1 -MG の除去率 3 5%以上で特
る。また、間歇的に膜を介して超純粋透析液を逆濾過・
に有効とされている。I-HDF は中・大分子溶質の除去能
補充する I-HDF では逆洗によって膜透過性の経時減少を
は HD に近く、α1 -MG の除去率 3 0 % 以上は困難であり、
軽減させる効果が期待できる。溶質除去特性は、小分子
重症例に対する有効性は困難が予想される。しかし、軽
物質は HD、前希釈HDF と同様であるが、中・大分子溶
〜中等症では過去に実施した多施設前向きの前希釈HDF
質の除去能は前希釈HDF に比して少なく、HD に近い。
との比較研究でも差はみられなかった。そこで、軽〜中
アルブミン漏出量も前希釈HDF に比して少ない。これは
等症の下肢イライラ症候群患者で、HD 及び前希釈HDF
置換液量が 1 . 4 L 程度のマイルドな HDF と位置づけら
から I-HDF へ変更した際の効果を検証した。 れる。したがって、I-HDF の積極的な適応としては、血
WS5-4
下肢イライラ症候群の原因と診断、そして当院での治療経験
医療法人社団明洋会柴垣医院
○柴垣圭吾
下肢イライラ症候群の原因と診断、そして当院での治
レスレッグ症候群研究グループ (IRLSSG) が提唱した 4
療経験いわゆる下肢イライラ症候群は特発性( 一次性) と
つの基準でなされ、1 0 個の項目からなるスケールで重症
二次性のものに分かれるが、CKD に伴ってみられるもの
度が評価される。クリニック 3 施設で維持透析を行う当
が後者の代表的なものである。その病態生理的なメカニ
院でもこれまで明確な診断症例が少なく、血液浄化療法
ズムはいまだに不明であるが末期腎不全患者の 2 - 3 割に
別の治療効果を系統だった形で評価はできていない。そ
見られるとの報告もある。特発性のイライラ症候群の原
の中でも薬剤治療が有効・無効であった症例、I-HDF・
因として推定されている脳内のドーパミン作動性神経伝
オンライン HDF が一時的に有効あるいは無効であった
達系の異常や鉄欠乏が、二次性にも関与している可能性
症例等を経験している。これらの自験例を紹介させてい
が指摘されている一方、腎移植後にこれらの症状が改善
ただきながら、HDF 時代の今後の下肢イライラ症候群に
されることより、尿毒症性の因子が末期腎不全患者の下
対する診断・治療方針に関し、議論をさせていただきたい。
肢イライラ症候群の病態に関与している可能性も示唆さ
れる。最近の我が国における HDF 療法の普及に伴い、α
1 マイクログロブリンに近い分子量のタンパク除去による
イライラ症候群の症状改善が多数報告されるようになっ
ており、このサイズの尿毒症性物質による関与の可能性
も推定されているところである。その診断は国際レスト
44
高齢維持透析患者に対する大量前希釈on-line HDFの有用性
ワークショップ
WS6-1
医療財団法人 倉田会 くらた病院 臨床工学科1)
医療法人財団 倉田会 くらた病院 内科2)、医療法人財団 倉田会 えいじんクリニック3)
○澤井美希1)、麻柄 圭1)、坂本 薫1)、内田英雄1)、加藤太郎1)、田中進一1)
倉田康久 2)、兵藤 透 3)、飛田美穂 2)
【背景】on-line HDF は中分子量から大分子量の尿毒性物
0 . 0 1 ),sCr: 6 6 . 1 %, 6 3 . 2 %(P < 0 . 0 1 ) と on で 低 下 が 認 め
質の除去が可能であり , 大量の補液および濾過による緩
られた . β 2 MG では 65 .7 %,73 .1 % と上昇が認められた . 透
徐な小分子量物質の除去, 透析低血圧の回避,QOL の向上
析前BUN,sCr,iP では両者で差はなかった .on へ変更 1 年
が報告されており , 今後高齢者における腎代替療法とし
後では体脂肪,DW, 両上肢の筋肉量, 左室駆出率の増加が
認められた . さらに HDF 中の循環動態も有意に安定して
て期待されている .
【目的】高齢透析患者に対する大量前希釈on-line HDF( 以
いた .
【考察】高齢透析患者に対する大量前希釈on-line HDF は
下on) の有用性を検討した .
【対象】
off-line HDF( 以下off) から on へ変更した入院維持
透析中の患者 1 8 名. 平均年齢 8 1 . 2±9 歳.
QS の増大により拡散能低下があり , 小分子物質で除去率
低下が認められたが ,BUN,sCr の透析前値の上昇は見ら
【方法】
off: 前希釈, 施行時間 4 hr, 総透析流量(tQD)400 mL/
れず , 活動量, 筋肉量の低下している高齢透析患者にとっ
hr, 置 換 液 ( サ ブ ラ ッ ド BSG) 量 1 0 L/sessoin.on: 前 希
て透析量は適量であると考える . 長期的には血清Alb, 体
釈, 施行時間 4 hr, 総透析流量(tQD) 4 0 0 mL/hr, 置換液量
脂肪,DW の増加から栄養状態の改善を認めたことより ,
(QS) 6 0 L/session. 以 上 の 条 件 で HDF を施 行. 比 較 項目
活動量の向上がみられた . 治療中の血圧の安定, 処置回数
は ,BUN,sCr,iP, 血清アルブミン ( 以下Alb), β 2 MG. さら
の減少より ,convection を中心とした HDF は循環動態を
に ,off から on へ変更後 1 年経過した 6 名を対象に ,Inbody
安定させると期待している .
を用いた体組成,DW, 心臓超音波検査, 血清Alb, 透析中の
血圧, 処置回数を比較検討した .
【結語】大量前希釈on-line HDF は , 高齢透析患者に対し
ても有用であった .
【結果】
除去率は off および on で BUN: 7 3 .1 %, 71 . 9 %(P <
WS6-2
オンラインHDF治療は循環動態安定の一因となるか
明理会中央総合病院 臨床工学科1)、明理会中央総合病院 血液浄化療法センター2)
群馬パース大学 保健科学部 3)
○星野武俊1) 、菊池 史 2)、 芝本 隆3)
【目的】透析療法で高齢者の循環動態を考える場合、高齢
た。2:平 均 血 圧は 透 析 液 流 量 1 0 0 mL/ 分 で 2 5 0 mL/
者特有の低栄養、体液量の減少、交感神経機能低下など
分 に 比し 安 定 推 移した。重 炭 酸 濃 度 は 2 5 0 mL/ 分 で
が重要なポイントとなる。したがって、循環動態の安定を
1 0 0 mL/ 分に比べ終了時高値を示し、治療前値に差はな
図ることにより治療中の低血圧を初めとする透析困難症
かった。尿素窒素の除去率では 1 0 0 mL/ 分は 2 5 0 mL/
を防止可能となり、身体への負担も低減できる。そこで、
分に比し 6%の除去率低下を認めた。
オンライン HDF が循環動態安定に関与するか否か検討
した。
【総括】高齢者に対するオンライン HDF では、QOL を優
先し、小~大分子量物質の除去にとらわれず、まずは循環
【方法】1:希釈方式の検討:オンライン HDF での置換
動態の安定を図るための膜選択や治療条件を検討するこ
液量を前希釈では 4 8 L、1 2 L/session、後希釈では 1 2 L/
とで、オンライン HDF は治療選択肢の一つになりうると
session で循環動態を評価した。2:透析液流量の検討:
考える。
置換液量を同量とし透析液流量 1 0 0 mL/ 分、2 5 0 mL/
分で 循環 動態を評 価した。評 価項目は血 圧、脈 拍数、
循環血液量(% BV)
、pH、重炭酸濃度、溶質除去能、
MCFAN による血液通過時間とした。
【結果】1:前希釈法 4 8 L は前希釈法 1 2 L、後希釈法 1 2 L
に比べ平均血圧、% BV ともに透析後半に高値で推移し
45
ワークショップ
WS6-3
無酢酸CDDSにおけるHDFの循環動態安定効果
医療法人社団菅沼会 腎内科クリニック世田谷 人工透析内科1)
医療法人社団菅沼会 腎内科クリニック世田谷 臨床工学部 2)
○菅沼信也1)、阿部達弥 2)
【 背 景 】低Ca 透 析 液との 比 較 でクエン 酸 含 有 透 析 液
男性 2 8 名、透析歴 4 . 5±7 . 6 年、DM 腎症 1 2 名)
も半年後、
カーボスターの HD 中の有意な血圧高値を久野が報告
透 析 中の 血 圧、Alb(3 . 6 1 → 3 . 6 g/dL)
、DW の 指 標と
( 臨 床 透 析 2 5 : 5 9 1 , 2 0 0 9) し て い る。AFBF に お け
なり得る PWI(1 . 8 9 → 2 . 1 9)不変だったが、有意に DW、
る 循 環 動 態 安 定 効 果 も報 告(Santoro A,et al:Contrib
BMI が増加
(5 4 → 5 5 kg、2 1 . 1 → 2 1 . 5)
し、体重増加が多
Nephrol. 1 5 8 : 1 3 8 , 2 0 0 7)されており、既にカーボスター
い二日空きの週初めの血圧低下に伴う除水速度や透析液
を用いた HD よりオンライン HDF(OHDF)又は間歇補
温度の低減、補液、下肢挙上、除水停止等の透析時処置
充型HDF(I-HDF)
に変更においても、補充透析液に酢酸
回数の減少傾向(P= 0 . 0 7)を認めた。週中日や週末の処
が含まれていないことから、さらなる循環動態安定効果
が期待される。
置回数に差はなかった。
【考察】JSDT データベースよりプロペンシティスコアマッ
【目的】無酢酸多人数用透析液供給装置(Central Dialysis
チング後の Cox 回帰分析にて HD 群に比べ前希釈OHDF
fluid Delivery System:CDDS)における HDF の循環動
群の生存率が特に 4 0 L 以上の高置換群で HR 0 . 7 と高く
態安定効果を検討する。
(菊地ら:透析医学会誌 4 9(Suppl 1 ):3 5 0 , 2 0 1 6)
、高
【方法】当院で週 3 回の無酢酸透析液を用いた HD 実施中、
置 換 前 希 釈OHDF が 有 効な 可 能 性 が 高 い。峰 島らが
OHDF 又は I-HDF に変更し半年以上観察出来た患者を
I-HDF における有意な処置回数の減少を報告(透析医学
後ろ向きに調査した。
会誌 4 8:3 5 1 , 2 0 1 5)
している。
【結果】
前希釈高置換OHDF 開始後、透析中の血圧は不変
【結論】無酢酸CDDS における HDF においても循環動態
だったが、置換量増加に伴い二日空きの週初めの血圧低
安定効果が期待出来、OHDF は高置換にて実施すべきと
下に伴う透析時処置回数減少を報告( 腎と透析 7 7 別冊:
考えられる。
84 ,2014 ) している。一方、
I-HDF 群
(n=40:70 .8±12 .3 歳、
WS6-4
新しいモニタリング手法とI-HDFとの組み合わせ
メディカルサテライト岩倉 看護部透析室
○長尾尋智
近年、透析患者の糖尿病性腎症の増加、高齢化に伴
除水に依存したショック症状であるが、近年では除水に
う低栄養、慢性炎症から透析困難症が問題となってい
依存しない複雑な合併症による突然の IDH 発生も増えて
る。透析低血圧(IDH:intradialytic hypotension)と生
おり、従来の間歇的な血圧モニタリングでは対応が遅くト
命予後についての報告では、最も低下した収縮期血圧
ラブルとなる。これに対しレーザ血流計による耳朶血流
が 1 3 0 mmHg を下回ることや透析前の収縮期血圧から
のリアルタイムトレンドグラフモニタリングは有効である
4 0 mmHg 以上の血圧低下がある患者で 2 年後の死亡率
と考えられる。また、峰島らの多施設共同研究によると、
が高いことが報告されている。日本透析医学会の血液透
I-HDF は HD に比べ血圧減少率が緩やかに低下し、処置
析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイ
発生率が有意に減少したと報告しており、I-HDF の循環
ドライン第2章 透析関連低血圧予防の項でも、除水速
動態安定効果に期待と注目が集まっている。この I-HDF
度、ドライウェイトなど IDH 予防について述べられて
を 2 0 1 2 年 1 0 月から継続して行い、この間の各種指標を
いる。透析困難症の対策にはドライウェイト、適正除水
評価してきたので、その効果について述べたい。
速度設定があるが、我々は、多周波数インピーダンス法
(MFBIA)
による体組成の数値化、⊿% BV モニタと BV
変化に応じた除水速度コントロールを自動化したシス
テムを運用しており、当院では高齢透析患者においても
IDH の発生は少ない。また、IDH の発生原因の多くは、
46
高齢透析患者さんが元気に通院して安定した透析治療を行うために
ワークショップ
WS6-5
(医)永生会 まつした腎クリニック
○松下和通
自施設を含めた全国の透析施設では患者の高齢化が急
の血圧安定化と QOL 改善作用に着目し、
「除去」
ではなく、
速に進行している。我々は、こうした高齢患者を含めた循
「補液」による治療中の血行動態安定化作用を期待して、
環動態の不安定な透析患者に対する治療方針としては、
透析低血圧を呈する高齢者や透析困難症患者を主な対象
透析低血圧の是正による患者QOL の改善を最重視し、
「元
に、置換液量 3 6 L/session 前後で行う前希釈HDF を処方
気に通院して安定した透析治療を行う」ことが最も重要で
している。今回は自施設における比較的少量の 置換液を
あると考える。HD に比較した on-line HDF(以下HDF)
用いた前希釈HDF が QOL に及ぼす影響 を含め、
高齢者、
の臨床効果に関する成績は、様々な臨床研究がこれまで
循環動態安定のための透析療法について検討したい。
報告されている。最近報告されたメタアナリシス(Am J
Kidney Dis. 2 0 1 4 ; 6 3 ( 6 ): 8 8 8 - 9 1 )
では、全死亡と心血管
死亡については HDF が優位である傾向があるものの、有
意差は認められなかった。しかし透析低血圧と治療前β
2マイクログロブリン値については、有意な HDF の治療
効果が認められたと報告されている。またアメリカのデー
タベース(UpToDate Topic 1 9 3 7 version 1 5 . 0)において
は、透析低血圧や QOL に関しては HDF が優れている可
能性が報告されている。そこで自施設では上述の HDF
WS7-1
Critical Careにおける血液浄化療法の現状と未来
山梨大学 医学部 救急集中治療医学講座
○森口武史、松田兼一、針井則一、後藤順子、原田大希、菅原久徳、高三野淳一
吉野 匠、伊瀬洋史、渡邉愛乃
急性血液浄化法は重症患者の急性期治療の中で施行
度の心不全を合併した乳児に対しても血液浄化は施行可
されるすべての血液浄化法と定義される.具体的には持
能であり,血液浄化法の適応は拡大の余地がある.また
続的血液濾過透析(CHDF),血漿交換(PE),二重膜濾過
我々は以前より CHDF の汎用性や治療効果の高さに注
血漿交換,血漿吸着(PA),血液吸着などを,各種臓器不
目し,その施行条件や適応,施行方法について完成度を
全,血液関連疾患、膠原病・自己免疫疾患など多種多様
高めてきた.我々は PMMA(polymethyl methacrylate)
な病態に対して施行している.血液を体外循環で清浄化
膜hemofilter を 用 い た CHDF(PMMA-CHDF) が,各 種
するという点では急性血液浄化と HDF とは本質的には
cytokine を血中から除去し,敗血症などの高cytokine 血
変わりないが,長期予後や患者の QOL 向上が主たる目
症の病態に対して有用であることを報告してきた.腎不
標である HDF に対し,急性血液浄化法は施行自体が困
全合併敗血症性ショック症例に対し,cytokine 吸着能を
難である重症度が高い症例に如何に施行し救命するかと
持たない PAN 膜による CHDF(PAN-CHDF) を施行した
いう点が論点となる.例えば小児に対する血液浄化法の
場 合と,cytokine modulation をも目的として PMMA-
施行には様々な問題があるが,現在ではショック状態に
CHDF を施行した場合では,両群がたどる臨床経過は大
陥った小児であっても安全に施行出来るようになってい
きく異なり,高cytokine 血症が病態に大きく関わる病態
る.我々は治療抵抗性の心不全を呈した 5 歳小児および
においては PMMA-CHDF が有効であると考えている.
ショックに陥った 4 ヶ月乳児の拡張型心筋症(DCM) 2 例
本ワークショップではこれら急性血液浄化療法の現状を
を含む小児DCM に対し,世界に先駆け CHDF を併用
概説し,今後考えられる発展形について展望する.
した緩徐血漿交換療法を行い心機能の改善を得た.重
47
ワークショップ
WS7-2
細径の中空糸を用いた新しい血液浄化器の開発
北里大学 医療衛生学部 医療工学科1)、北里大学 大学院医療系研究科2)
山梨大学 医学部 救命集中治療医学講座3)
○小久保謙一1),2)、栗原佳孝 2)、小林こず恵1),2)、菅原久徳 3)、後藤順子3)、森口武史 3)
松田兼一3)、小林弘祐1),2)
現在、急性血液浄化の領域では、小型、可搬型といった
析液側の流れが不均一になりやすく、拡散による除去性
装置の研究開発が注目されている。小型の装置は乳児や
能が低下してしまうため、血液透析には適さないモジュー
新生児への使用、可搬型の装置は災害時や救命救急の現
ルとなるが、血液濾過用のモジュールであれば問題ない。
場での使用が想定されている。
実際にブタ血液を流して検討したところ、中空糸を細径
血液透析膜や血液濾過膜に用いられている中空糸の内
化することで、中空糸内の壁ずり速度が大きくなることか
径は、2 0 0 μm 前後の値となっている。これは、拡散によ
ら、長時間の安定操作が可能な濾過流量を大きくできる
る物質除去を主な原理とする血液透析において、物質除
という利点も明らかになった。それらの結果を踏まえ、現
去の効率と血液側の圧力損失のバランスから、内径 2 0 0
在さらにヘッダ部分の流れを重視した矩形のモジュール
μm 前後が最適であるという計算に基づく。しかし、濾
を設計し、血液の流れ、長時間の除去性能の安定性など
過による物質除去を主な原理とする血液濾過では、内径
を検討している。
2 0 0 μm 前後が最適とは限らず、中空糸内径をさらに小
この技術は、まずは急性血液浄化の領域で、小型・可
さくすることで、小型かつ高性能のフィルタを開発できる
搬型の血液濾過装置へと応用できると考えているが、将
可能性があった。そこで、最も膜厚の薄いセルローストリ
来的には、慢性腎不全患者の治療が可能な携帯型・装着
アセテート膜を用いて、内径を 1 0 0 μm に細径化した中
型の人工腎臓、さらには植込み型の人工腎臓の開発へと
空糸を用いてモジュールを作成した。モジュール作成に
繋げていきたいと考えている。
当たっては、中空糸本数を多くするとともに中空糸長さを
短くし、圧力損失の増加を防いだ。中空糸を短くすると透
WS7-3
オンライン血液濾過透析の救命救急領域への応用
千葉大学大学院 医学研究院 救急集中治療医学1)、千葉大学医学部附属病院 人工腎臓部 2)
千葉大学医学部附属病院 ME機器管理センター3)
○服部憲幸1),2)、安部隆三1)、富田啓介1)、古川 豊3)、松村洋輔1)、島居 傑1)
柄澤智史1)、長野 南3)、織田成人1),2),3)
オ ン ラ イ ン 血 液 濾 過 透 析 (On-line hemodiafiltration:
等以上の治療成績であり,現在は OLHDF が第一選択の
OLHDF) が保険収載されて以降,慢性維持透析領域で
ALS となっている.一方,ALS としての OLHDF は初期
の施行件数は飛躍的に増加している.我々は,OLHDF
に長時間連続施行する必要があり,透析液の水質維持や,
により得られる大量の濾過によって改善が期待できる
薬剤・栄養など有用物質の除去に対する配慮,低カリウ
病態が救命救急領域にも存在すると考え,2 0 11 年 4 月
ム血症や低リン血症への対策が必要である.また,開始
に ICU 内に多人数用の逆浸透装置を設置し,ICU 内で
時には急激なホメオスタシスの変化による不均衡症候群
OLHDF を施行できるよう体制を整備した.以後,2 0 1 6
や循環動態悪化への注意を要する.一度覚醒が得られれ
年 7 月までの 5 年 3 ヶ月の間に,5 3 例に対して OLHDF
ば間欠的な OLHDF で覚醒を維持できることが多く,経
を施行している.通常の腎補助療法としての OLHDF に
口摂取や能動的なリハビリテーションが可能となること
とどまらず,肝不全に対する人工補助療法(ALS)として
が,肝再生や移植まで全身状態を良好に維持する上で有
OLHDF を行い,また薬物中毒などに対しても OLHDF
利に働く.OLHDF は肝再生または移植までの bridging
を試行した.ALS としての OLHDF は特に有用性が高
therapy であり,経過中に感染症を合併すると救命は困
く,急性肝不全 昏睡型 1 4 例中 7 例( 5 0 %) を救命し,1 3
難となる.カテーテル感染を含めて感染症を生じさせな
例( 9 3 %) が 昏 睡 状 態 か ら 覚 醒 し た.こ れ は 以 前ALS
いことが重要である.
と し て 施 行 し て い た high-flow dialysate continuous
hemodiafiltration(HFCHDF) の 覚 醒 率 8 9 %(n= 3 5 ) と同
48
急性腎障害に対する血液浄化開始基準
ワークショップ
WS7-4
東京大学 医学部 救急部・集中治療部
○土井研人
体液量、電解質、酸塩基平衡異常において致死的な病態
(stage 3 ) かつ人工呼吸あるいはカテコラミンなどを必要
に対しては速やかに血液浄化を開始することで異論はな
とする重症例を、ランダム化直後より開始する Early 群
いが、このような危機的状況よりも先行して開始すること
(N= 3 11 ) と、高カリウム血症、代謝性アシドーシス、肺
の是非について、これまで多くの臨床研究が行われてき
水腫、BUN ( ≧ 11 2 mg/dl)、乏尿( 7 2 h 以上) などによる
た。これまで合計 9 つのランダム化比較研究(RCT)が早
基準を満たすまで開始しない Delayed 群(N= 3 0 8 ) にラ
期の血液浄化開始による死亡率を検討している。2 0 1 5 年
ンダムに割り付け、早期血液浄化の有用性が検討され、
以降に発表されたものとしては、カナダにて施行された
6 0 日死亡率に有意差を認めなかった。ELAIN 研究では
オープンラベルのパイロット研究があり、腎性AKI を早
AKI 重症度stage 2 かつ血漿NGAL が 1 5 0 ng/ml 以上
期治療群
(N= 4 8)
と通常治療群
(N= 5 2)
にランダム化し死
の重症 2 3 1 症例を Early 群( ランダム化直後より開始) と
亡率と腎機能回復が検証されたが有意差は認められな
Delayed 群(Stage 3 に進行あるいはいわゆる絶対基準に
かった。心臓術後症例を対象とした HEROICS 研究では
該当した場合に開始)にランダム化し、9 0 日死亡率を評
心臓手術後にカテコラミンサポートを必要とするショッ
価したところ Early 群が有意に低い死亡率を示した。こ
ク症例が、早期の血液濾過( 8 0 ml/kg/h、4 8 時間施行)
れまで報告された 9 つの RCT のうち、2 8 日あるいは 3 0
を行う群と必要あれば CHDF を施行する通常治療群に
日死亡率が記載された RCT についてメタ解析を行った
それぞれ 11 2 名ずつランダムに割り付けられた。その結
ところ、早期開始の有効性は支持されなかった。しかし、
果、死亡率、腎機能回復についていずれも有意差はなかっ
各研究における早期開始群は開始時期が異なり治療モダ
た。2 0 1 6 年 5 月にはフランスの AKIKI 研究とドイツの
リティにも相違があったことから結果の解釈には注意が
ELAIN 研 究 が 発 表され た。AKIKI 研 究では重 症AKI
必要である。
WS7-5
新しい持続的透析液供給システム「NEREUS」の開発と透析
液清浄度の担保について
川崎医療福祉大学医療技術学部臨床工学科1)、川崎医科大学附属病院 MEセンター2)
川崎医科大学腎臓高血圧内科3)
○小野淳一1),2)、三宅将司1)、上岡将大1)、小笠原康夫1)、佐々木 環 3)
我々は、持続的腎代替療法(CRRT) の血液浄化量を多
次に、2 -compartment model を用いて尿毒素の体内
く処方することで、敗血症性ショックに対する早期昇圧
動態解析を行ったところ、NEREUS を CRRT,SLED に
効果ならびに治療予後改善効果を報告してきた。しかし、
対応するためには、透析液流量 1 0 0 ml/min 程度の供給
CRRT に用いる血液浄化液(透析液、置換液)として、重
性能を備える必要があることが示唆された。現在、透析
曹補充液を使用することが多く、血液浄化量を増加させ
液流量の低流量化を目指して、透析液濃度制御の検討を
るには医療経済的、マンパワー的な観点から限界がある。
行っている。
そこで、2 0 0 3 年の本学会において、CRRT 装置に対し
また、透析液の低流量下は、装置内部の配管容量に対
て on-Line で透析液を供給するシステムの必要性を報告
する透析液流量の低下をきたし、配管内部での炭酸塩の
し、2 0 0 7 年にそのプロトタイプ機「 NERRUS」の作成な
生成ならびに生物学的汚染リスクの懸念が考えられる。
らびに基本性能に関する報告を行った。
そこで、NEREUS における 透析液清浄度の評価を行っ
本装置の基本性能は、維持透析で使用される透析原液
たところ、活性炭濾過器から ETRF までの区間の透析液
を RO 水で希釈、調整した上で、CRRT 装置へ透析液を
が透析用水としての基準範囲内の生菌が検出された。急
供給することであり、装置起動後の初期濃度安定性の検
性血液浄化領域にて on-Line HDF を実施するためには、
討では、起動後 1 0 分以内に末端透析液濃度の安定が得ら
ETRF を 2 本直列に設置するとともに、ETRF 直前の透
れた。また、CRRT 装置(ACH- 1 0 ) との連動性に関する
析液の清浄度として標準透析液を担保する必要がある。
検討では、透析液流量 1 . 0 ~ 5 . 0 L/hr の範囲で安定した
このため、配管消毒の工夫や UV 灯等を併用する必要が
末端透析液濃度が得られることを報告した。
あると考えられた。
49
ワークショップ
WS7-6
オンラインHDFの脳血管障害に対する適応経験
JA徳島厚生連 吉野川医療センター1)、社会医療法人川島会 川島透析クリニック2)
社会医療法人川島会 川島病院 3)
○林 秀樹1)、橋本寛文1)、土田健司2)、水口 潤3)
オンライン HDF 療法は特に大量液置換が可能なため、
るいは脳梗塞急性期の病態では、症例に応じて前希釈大
濾過(filtration)を中心にした治療が可能となる。濾過は
量液置換オンライン HDF 治療を提供しており、原則発
拡散とは異なるため、物質除去の観点から考えた場合、
症後 1 週間はこのような治療モードに変更することとし
一般的には小分子物質の除去は劣ることになる。病態に
ている。2 0 1 3 年から 2 0 1 5 年までの間に脳血管障害を発
もよるが、急性期に小分子物質除去を抑えた血液浄化が
症した 5 7 名のうち、8 名に前希釈大量液置換オンライン
有用となる病態がある。小分子物質は血漿浸透圧の規定
HDF を施行した。年齢は 4 2 ~ 7 8 歳。脳血管障害の内
因子であり、小分子物質の急激な濃度変化は血漿浸透圧
訳は硬膜下血腫 4 例、脳出血 2 例、脳梗塞 2 例。これらを
を急激に変化させることになり、このことが一方で脳浸
対象に治療中血圧の推移、血液生化学検査、臨床症状に
透圧の急激な変化をもたらすことになる。脳出血、脳梗
ついて検討を行った。血圧は、脳血管障害発症前HD 施
塞いずれの病態でも病巣が大きい場合、脳浮腫が一定の
行時と比べ有意に改善した。血液生化学検査に関しては
時期に一定のサイズで出現するため、脳浸透圧の変化が
特記すべき事項を認めず、症状に関しては 1 例で頭痛の
脳圧の変化に影響し、脳ヘルニアの発症などに影響する
改善を認めた。前希釈大量液置換オンライン HDF は、脳
可能性がある。脳卒中ガイドラインや JSDT ガイドライ
血管障害時の腎代替療法として安全に選択される治療で
ンでは、脳血管障害時の透析方法として腹膜透析や持続
あり、今後救急救命領域での腎代替療法として適応され
血液透析濾過が推奨されているが、症例によってはオン
ていく可能性がある治療法である。
ライン HDF が奏功する場合がある。当院では脳出血あ
WS8-1
On-LineHDFに関わる看護師の意識調査
医療法人偕行会 透析医療事業部1)、医療法人偕行会 偕行会セントラルクリニック2)
○熊澤ひとみ1)、川越由美枝 2)、後藤陽華2)、上野彰之1)、櫻井 寛1)
透析医療の現場では、職種の異なるスタッフがそれぞ
トコル、治療開始後は評価シートに沿いながら、定期的
れの専門性を活かし、目的と情報を共有し、患者個々の
に評価を実施しているものの、実際、看護師がどのように
状況に応じた医療を提供することが重要である。看護師
HDF を理解して患者に携わっているのかという疑問を感
と臨床工学技士の業務は、重複する点も多数あるが、看
じる。そこで今回、On-LineHDF に関して、当法人内の
護師業務の中心となるのは、患者を身体的・社会的・精
看護師と臨床工学技士に意識調査のため、グループ内の
神的に個別にとらえ、個々に合わせた支援を行うことで
外来透析施設 1 4 施設で勤務する看護師約 2 1 0 人、臨床工
ある。一例として、HDF 療法に関しては、HDF 療法本
学技士約 9 0 人、合計約 3 0 0 人へアンケート用紙を配布し
来の特性を理解し、より患者の状態に合わせた効果的な
た。今回の調査結果から、看護師と臨床工学技士の意識
治療が実施出来る様、看護師と臨床工学技士が互いの役
の違いを明確にし、本来看護師が介入すべき役割につい
割の中で協力して患者を総合的に看る必要がある。当法
て考察する。
人では、2 0 1 2 年より On-LineHDF を開始し、近年では、
その治療効果への期待から HDF 件数は増加し、現在で
は、約 3 0%の患者が HDF(IHDF 含)を実施している。
しかし、HDF に関しては、条件の設定、透析液の清浄化
等、臨床工学技士への依存度が高いのではないかと考え
る。HDF 施行の患者に対し、看護師も治療開始前はプロ
50
看護師による客観的患者愁訴の把握と診療への関与:
レストレスレッグ症候群の事例を通じて
ワークショップ
WS8-2
倉田会 えいじんクリニック
○羽賀里御、白鳥 恵、山本茉梨恵、角田美由貴
【背景】透析室看護師に求められるのは、患者の愁訴を拾
い上げ治療に繋げることである。そのためには医師や臨
床工学技士そして看護師同士にも患者から拾い上げた情
総合得点を算出し得点が高いほど睡眠が障害されている
と判断される。
【症例1】3 4 歳女性(透析歴 2 ヶ月、糖尿病性腎症)に対
報を客観的に伝える必要がある。近年、看護師が客観的
し各スコアの 1 年の変化を追った。IRLS:2 6 点→ 0 点、
な指標として用いることの出来る多くのツールが開発さ
PSQL:1 4 点→ 1 0 点
【症例 2】4 1 歳女性(透析歴 1 4 年 11 ヶ月、IgA 腎症)に
れてきている。
【目的】
今回、我々はレストレスレッグ症候群で下肢のムズ
ムズ感や不眠の症状の強い症例に対し、On-Line HDF を
含めた集学的治療を施行した症例を経験した。その際に、
対し同様に観察した。IRLS:2 8 点→ 1 0 点、PSQL:1 5
点→ 9 点
【考察】今回、下肢のイライラや不眠の強い患者に対し、
看護師は日々の症状の聞き取りに加え「レストレスレッグ
On-Line HDF の条件を変更し、さらに種々の新規に開発
症候群重症度スケール」と「日本版ピッツバーグ睡眠質問
された薬剤を併用し、集学的に加療し症状を緩和するこ
票」を 1 年間追跡し、看護評価に利用したので、その 2 症
とができた。治療法の変更は看護師が客観的に把握した
例を報告する。
指標に基づいて行われた。
【使用ツール】
「レストレスレッグ症候群重症度スケール」
【結論】我々看護師は患者の訴えに耳を傾けるだけではな
(以後IRLS)
過去 1 週間の足の不快な感覚や頻度、睡眠等
く、症状を客観的に把握評価し、それを他職種に伝える役
への影響の程度を 1 0 の項目で質問する。3 1 点以上が最
割の最前線に存在する。このようなツールを積極的に取
重症、1 0 点未満が軽症と判断される。
「日本版ピッツバー
り入れることは看護技術のスキルアップのみならず、チー
グ睡眠質問票」
(以後PSQI)過去 1 ヶ月の睡眠時間や質、
ム医療にとって重要である。
不眠の原因について 9 の項目で質問する。0 から 2 1 点で
WS8-3
オンラインHDFの治療効果を患者主体のQOLで評価する
(医)永生会 まつした腎クリニック
○笠田寿美子、星野輝夫、羽根田 破、多胡紀一郎、松下和通
【緒言】
自施設では、
2008 年から On-line HDF 療法条件を、
的尺度Skindex 2 9 を、4 RLS に対しては国際レストレス
透析低血圧症や高齢者に対する、治療中血行動態安定化
レッグス症候群研究G の診断基準と重症度スケールを使
作用に期待する前希釈と、大分子の積極的な除去による
用して、導入前と3ヶ月後と1~5年毎に評価した。結果
RLS や生命予後改善に期待する後希釈で、病態により選
は、1 ~ 4 に対する On-line HDF 療法導入前と3ヶ月後
択している。看護師は導入前から医師・臨床工学技士と
と1~5年毎の各QOL 尺度、 スコアは改善し長期に維持
マニュアルや患者指導用の紙芝居作成に関わり、透析低
できていた。On-line HDF 療法における看護師の役割医
血圧を含む病態別HDF 治療効果を、患者主体の QOL で
師の治療方針Shared decision making と臨床工学技士
評価して継続している。今回、1 透析低血圧 2 透析掻痒
の技術や知識、客観的なデータ分析、医療アシスタントを
症 3 足病変に対する末梢血流改善 4 RLS の4つの病態に
含むマンパワー、家族の支えがあってこその透析治療で
対する長期治療効果を報告し、病態に応じたテーラーメ
あり、看護師は、 患者の主観すなわち患者がどう感じるか
イドな HDF 治療における看護師の役割を考察する患者
を大切に聞き取り、その主観を客観的データにし、 治療効
主体の QOL 評価 2 0 1 0 年~ 1 5 年までの 1 ~ 4 の病態別
果をチームに伝える事が重要である。チームメンバーに
導入プロトコールで導入し、自ら意思決定した患者に対
患者情報を伝達し調整を図っていく事が重要な役割であ
して On-line HDF 療法を継続し、その治療効果を調査し
る。さらに、On-lineHDF 療法による愁訴の少ない透析
た。方法は、1 の透析低血圧症と 3 の足病変に対する末
療法は、QOL 向上の効果が維持できると示唆されたが、
梢血流改善に対しては、健康関連QOL を測定する包括的
その延長線上に安定した健康的な生活を展開し維持でき
尺度SF 3 6 V 2 を、2 の透析掻痒症に対しては、疾患特異
るよう援助していくことを今後の課題にしていく。
51
ワークショップ
WS8-4
HDFにおける看護師の役割
医療法人社団清永会 矢吹病院
○縄 広美、政金生人
オンライン HDF は HD と比較し、中~大分子量物質の
除去により透析アミロイドーシスの進展予防や、貧血・炎
症・透析低血圧の改善に効果があり、生命予後の改善が
期待できるとされている。当院でも 1 9 9 6 年に透析液の
清浄化対策を行い、早くから HDF 療法を実践している。
2 0 1 5 年 1 2 月末現在、当院の患者 2 5 4 名中 1 3 1 名
(5 1 . 5%)
と約半数の患者がオンラオイン HDF を行っている。今回、
治療中の透析患者を年齢・透析歴・HDF 開始理由の視
点から、当院における HDF 患者の特徴を振りかえった。
また、当院では患者さんの訴えに基づく透析医療を目
指し、
「患者さんにとって良い透析を行う」ことを目的に
定期的にアンケート調査(愛Pod 調査)を行っている。そ
の結果より当院の患者の愁訴の傾向、事例を通した HDF
の効果について、および透析医療の現場における看護師
の役割について考察した。
WS8-5
オンラインHDF患者への看護支援について考える
2)
社会医療法人川島会 川島病院 看護部1)、社会医療法人川島会 川島透析クリニック 腎臓科(透析・腎移植)
3)
社会医療法人川島会 川島病院 腎臓科
(透析・腎移植)
○数藤康代1)、西川雅美1)、平野晴美1)、土田健司2)、水口 潤3)
川島透析グループでは、腎炎・慢性腎臓病、血液透析、
り強みを生かす日常生活支援の実践が求められる点にお
腹膜透析、さらには腎移植療法まで腎疾患を幅広く治療
いて、オンライン HDF 療法、HD 療法の看護に大きな違
している。透析療法においては、約 1 , 1 0 0 人の透析患者
いはないと考えられる。しかし、オンライン HDF の高い
のうち、オンライン HDF 療法を施行している患者は 4 0 0
エビデンスレベルでの有効性や、患者状態に応じた適切
人を超えている。徳島県において 6 つの施設からなる
な治療条件の提供を継続できることで、不定愁訴をはじ
病院グループであり、全施設において全台でオンライン
めとした有症患者においては、HD 療法時の状態より安
HDF が施行できることから、今後もオンライン HDF 療
定する事もあり、透析中の看護ケアの必要量は減少して
法が腎代替療法の中心になっていくことが予想される。
いく可能性をみている。
オンライン HDF 療法は置換液方法や置換液量の問題、
オンライン HDF の看護をあえて論じるなら、オンライ
さらにはヘモダイアフィルタの性能の点から、臨床現場で
ン HDF を適応した病態がどのように改善したかまた、長
は看護師より臨床工学技士が治療にかかわっている場合
期合併症患者の状態がどのように変化していくのかなど
が多い。ただ、臨床工学技士は HDF 条件設定などが主
を、医師、臨床工学技士以外の側面から観察することだと
となるため、看護面でのフォローは少ない可能性がある。
考える。単に血液検査だけではなく、栄養状態やフレイ
当グループも例外なく高齢透析患者の増加に伴い、透析
ルなどを評価し、悪化を未然に防いでいくことがオンライ
室における看護ケアは煩雑化している。また看護師はケ
ン HDF において重要と考える。
アリングにより、患者その人の考えや意向、望みなどを知
52
EL1
ヒューマンエラー対策 ~ヒューマンエラーが事故に至る経緯と防止法~
ANAビジネスソリューション株式会社 営業本部 ⼈材・研修事業部
○⽯井和宏
ワ教
ーク
育シ
講
ョ演
ップ
53
EL2
透析低血圧のメカニズムとOn-line HDFの有効性
河北総合病院透析センター
○篠田俊雄
教育講演
54
透析低血圧症は愁訴のない快適な透析治療を阻害する
実際には濾過される血漿水の Na 濃度は、透析膜非透過
だけでなく、長期予後を悪化させる病態であり、長期透析
性陰イオンであるアルブミンの影響により血漿Na 濃度よ
や高齢の患者での合併が多い。透析低血圧は主として除
りも低くなる(Gibbs-Donnan 効果)
。このため、この濃度
水に伴う循環血液量の減少により生じ、その主因は血漿
差に置換液量を掛けた量の Na が血漿分画に補充されて
再充填機構(PR)
の障害であり、多くの場合血圧維持機構
いることになる。血漿Na 濃度の上昇がみられないのは、
の障害も伴っている。高齢患者では体水分量の減少や低
間質や細胞内分画から血漿分画への自由水移動により修
栄養、交感神経機能低下、カテコラミン分泌低下、心機能
飾されているためであり、浸透圧による PR 促進の証左と
低下により透析低血圧を発症しやすい。PR を改善すれ
考えられる。したがって、HDF では除水量を増加しても、
ば循環血液量が維持されやすくなるため、血圧維持機構
血漿分画外からの水分移動の促進により循環血漿量が維
の障害がある場合でも、血圧低下が生じにくくなる。高ナ
持されやすくなる。
トリウム透析や血液透析濾過法(HDF)では透析中、特に
On-line HDF のうち前希釈法は後希釈法にくらべて置
開始 1 ~ 2 時間の血漿浸透圧低下が緩和されるため、PR
換液量が多いため、体内への Na 負荷の増大を懸念する
が改善し透析低血圧が生じにくい。
意見がある。しかし、前希釈法では置換液補充後に血漿
On-line HDF、とくに前希釈法では大量の等張性置換
水の濾過が行われるため、後希釈法にくらべ血清アルブ
液が直接血液中に補充されるため、血漿浸透圧の維持効
ミンの影響を受けにくく、濾過血漿水の Na 濃度低下が縮
果が大きい。除水分を別に考えると、HDF では補充さ
小する。両希釈法における Na 負荷量の比較は今後の検
れる置換液と同量の血漿水が濾過されるため、体内への
討課題といえるが、臨床的実証は困難と思われる。
ナトリウム(Na)負荷は一見ないように思われる。しかし、
BS1
オンラインHDFの水質管理
東京女子医科大学 臨床工学部
○菅原千尋
て配管構造をよく理解した上で消毒方法の工夫も必要と
年に日本透析医学会より「透析液水質基準と血液浄化器
なる。当院では RO 配管戻り側デッドスペースによる汚
性能評価基準 2 0 0 8」が提示され、その質の確保と維持に
染が見られたため、この部分の自動洗浄を検討中である
ついては各施設での管理責任となっている。オンライン
が、現在は月に 1 度の消毒を行うことで対応している。
HDF は清浄化された透析液を大量に注入する治療法で
【生物的汚染評価】作製された透析液の生物学的清浄度を
あり、重要なことは各施設の透析液安全管理委員会が責
検査するために ET 活性と生菌数の評価を行う必要があ
任を持って管理することである。本セッションでは当院
る。当院では ET 活性の測定には生化学工業株式会社製、
での経験も交え、以下に示す内容を紹介する。
EG リーダ SV- 1 2 ( リムルス試験比色法)、生菌数測定に
【ETRF 管理】オンライン HDF 対応装置には安全性を確
保するため ETRF が 2 本直列に装着されている。ETRF
は日本ポール社製 3 7 mm クオリティモニタを使用したメ
ンブレンフィルタ法を用いている。
はメーカの指定する使用時間で交換することが必要で、
【実務管理】オンライン補充液の清浄度の担保はメーカの
さらにメーカの指定した洗浄消毒剤を用いることが必要
バリデーションのもと行われ、ユーザはメーカ推奨の管
である。また、治療前のリークテストも ETRF を安全に
理法を遵守することが大原則となる。しかし、当院では
使用するための管理の一つである。
メーカ推奨の方法を遵守していても、オンライン補充液
【洗浄消毒】透析関連液の配管には充分に洗浄消毒されな
いデッドスペースが存在する場合があり、各施設におい
BS2
HDF基礎セミナー
オンライン HDF を行う時の水 質については、2 0 0 8
としての品質が必ずしも保証されない事態を経験した。
実務管理について当院での ETRF の事例を報告する。
間歇補充型HDF(I-HDF)とは?
東京女子医科大学 臨床工学部1)、東京女子医科大学 臨床工学科2)
○江口 圭1)、峰島三千男2)
近 年、 オ ン ラ イン HDF(on-line hemodiafiltration)
い患者、末梢動脈疾患(PAD) 合併症例などが中心である。
の一法として、間歇補充型HDF(intermittent infusion
最近では、少量頻回など個々の患者に合わせた補充条件
hemodiafiltration:I-HDF)が臨床施行され、その症例数
の検討や、前希釈法/後希釈法オンライン HDF との併
は増加傾向にある。I-HDF の位置づけとしては、
「血液
用など、
新しい展開が始まっている。現在、
I-HDF 専用モー
浄化器
(中空糸型)
の機能分類 2 0 1 3」
によれば、
「膜を介し
ドを搭載した多用途透析装置が国内メーカより数機種販
て濾過・補充を断続的に行う I-HDF が診療報酬上オンラ
売されるようになり、安全かつ簡便に施行可能な環境も
イン HDF の一法として認められている」とされ、その算
整えられた。これらの現状を踏まえ、過去の I-HDF の構
定条件として、1 . 血液透析濾過器の使用、2 . 専用透析装
築にさかのぼり、その基礎的な部分を解説するとともに、
置の使用、3 . オンライン透析液水質基準の 3 要件をとも
最新の知見を含む臨床データを詳しく紹介する。
に満足する必要がある。I-HDF は、一般的なオンライン
HDF による前希釈法/後希釈法とは異なり、ヘモダイア
フィルタを介した間歇的で少量の補充を行うのが特徴で
ある。治療条件としては、一回補充量:2 0 0 mL、補充周
期:3 0 min、補充速度:1 5 0 mL/min で行われることが
多い。I-HDF に期待される効果としては、
1 . 末梢循環改善、
2 .plasma refilling 促進、
3 . 膜性能の経時減少抑制であり、
適応患者としては、主に低栄養、高齢者、血圧変動が大き
55
BS3
HDFに欠かせないヘモダイアフィルタの特性とは
法政大学
○山下明泰
【はじめに】ヘモダイアフィルタは健康保険上、血液透析
ン(分子量 6 6 , 0 0 0)の漏出は積極的には望まれていない。
HDF基礎セミナー
濾過
(HDF)
に用いられる専用の
「人工腎臓」
のことである。
濾過を用いて分子量に対するシャープなカットオフを考
血液透析(HD)に使用されているダイアライザとダイア
える場合、性能の継時的な低下、すなわちファウリングが
フィルタを、
装置性能で明確に区別することは困難である。
問題となる。しかし、ファウリングは膜の性能だけで制
しかし最近上市されたダイアフィルタのラインアップを見
御できるものではなく、装置の設計因子を最適化する必
ると、HDF を施行し易いように、性能が細分化されつつ
要がある。流体が膜表面に及ぼす剪断応力は、濃度分極
ある。本講演では、HDF の目的とこれを達成するための
層の形成を阻害し、抗血栓効果を生むことが知られてい
手段、およびヘモダイアフィルタの特性について考える。
る。剪断応力を増大させるには、中空糸内径の狭小化、有
【HDF に求められる治療効果】HDF を行う臨床的な目的
効長の延長が効果的であるが、同時に血球成分に対する
は、1)透析困難症の防止(血圧の安定化)
、2)掻痒症の
ダメージの増大、すなわち、生体適合性の観点からは負の
改善および合併症の予防、3)
やや軽い疼痛
(肩関節痛)
の
効果も予想される。
改善、4)重度の疼痛、RLS の改善、などに分類できる。
【おわりに】ダイアライザ・ダイアフィルタには除去性能
これらの目的を達成するために必要なアルブミンの漏出
だけでなく、高い生体適合性も求められる。生体適合性
量やα1 - ミクログロブリンの除去率などについて、数値
は元来、材料そのものに関する概念であるが、HDF をは
化された目標も提案されている。
じめとする高流量治療においては、これに起因するとみら
【ダイアフィルタに求められる性能】腎不全で除去対象と
なる最大の分子の分子量は 3 万~ 4 万であり、アルブミ
BS4
れる不適合反応も考慮に入れる必要がある。すべてを完
璧に満足するデバイスの開発は、未だ道半ばである。
透析用水作製装置とは
ニプロ株式会社
○鴨下洋一
近年On-line HDF 治療や I-HDF 治療の普及により、透
RO モジュールとのダブルフィルトレーションを行う装置
析液の清浄化が重要になっています。近年では生物学的
も上市されています。この装置は軟水装置が搭載されて
汚染物質だけでなく、化学的汚染物質の管理も注目され
いないため、再生用の塩や作業は必要ありません。また、
ており、透析液の清浄化を行ううえで透析用水作製装置
2 つのモジュールでろ過するため生物学的汚染物質に対
は非常に重要な働きを担っています。
して優れている反面、NF モジュールは軟水装置に比べ
透析用水作製装置は各工程で目的とする除去物質が異
て硬度成分の除去能力が劣っているため、化学的汚染物
なります。一般的な透析用水作製装置では、プレフィル
質に対して脆弱な面があります。そこで、軟水装置を搭
タで前処理水中の粗い粒子を除去し、軟水装置で原水中
載しつつ RO モジュールによるダブルフィルトレーション
の硬度成分をイオン交換により除去します。さらに活性
を行うことで、生物学的汚染物質と化学的汚染物質の除
炭ろ過装置では原水中に含まれる遊離塩素、クロラミン
去に優れている装置も上市されてきました。また、軟水
などを除去します。なお、活性炭ろ過装置にはボンベ式
装置により硬度成分を除去し RO 膜にかかる負担を軽減
とカートリッジ式があり、ボンベ式は活性炭の接触面積
させることができるため、水質低下を抑えながら回収率を
が大きいため除去効率が優れており、カートリッジ式は
増加させることも可能です。
小型で交換が容易という特長があります。その後、RO
ここまで一般的な透析用水作製装置について述べまし
モジュールによって原水中の電解質が除去されることで
たが、市場には多種多様な装置が上市されています。当
RO 水が作製されます。
日は当社製品を一例に挙げながらご紹介します。
現在は軟水装置の代替として NF モジュールを用いて
56
BS5
前希釈オンラインHDFの条件設定
東京女子医科大学 臨床工学部
○若山功治
オンライン HDF の治療効果として、透析アミロイド―
を行う上でとてもわかりやすく、有用な情報である。し
シスやレストレスレッグス症候群、掻痒感、いらいら感、
かし、そういった条件でオンライン HDF を行ったからと
いって、必ずしも全患者に満足いく効果が得られないの
も事実であり、そういった患者には、臨床症状や血液デー
る効果も報告されるようになり、HDF 療法の有用性はま
タをよく観察しながら、置換液量やヘモダイアフィルター
すます高まっていると言える。こういった結果が得られ
等治療条件の検討を重ねていくことが必要である。こう
るようになった背景として、オンライン HDF 療法とい
いった作業を怠り、ただ漫然とオンライン HDF を行って
う HD とは異なる特性を有する治療法の正しい認識が広
いるだけになってしまっては、上手に行えているとは言い
まり、多くの施設で上手に臨床使用できるようになったか
難い状況となる。これまでの HDF 療法では、過度にアル
らではないかとも考えることができる。つまり、正しい知
ブミンを漏出させる条件設定には抵抗を感じる面もあっ
識を持たずオンライン HDF を行っていても、HD と比較
たが、アルブミン漏出量が 1 0 g/session を超える条件設
してよい成績を出すことは難しいと言うことである。で
定であっても、血清アルブミン値が低下せず治療効果の
は、上手にオンライン HDF を行うポイントはどこにある
あがる患者も存在する。よく患者を観察するからこそ、そ
のか。それはオンライン HDF を行う目的を明確にし、患
ういった一歩踏み出した治療条件設定も可能になり、結
者をよく観察することと考えている。日本のオンライン
果的にそれがよい臨床効果を生み出すことにつながると
HDF を牽引してきた土田や櫻井らが報告した臨床効果等
考えられる。本セッションでは改めて前希釈オンライン
によって、適正な置換液量やヘモダイアフィルターの選択
HDF の治療条件設定について再考する。
HDF基礎セミナー
不定愁訴・貧血・炎症の改善、透析低血圧などへの適応
に関する報告が多い。さらに最近では、生命予後に対す
などが提案されてきた。これは、我々がオンライン HDF
BS6
後希釈オンラインHDFの条件設定
大分大学 医学部 附属 臨床医工学センター
○友 雅司
オンライン HDF は 膜ろ過技術により清浄化した透
いる治療法(1session 2 0 L 以上)
すなわち濾過量が多い
析液を置換液として用いる治療法である。一般社団法
治療において生命予後も改善するとの報告が海外から多
人 日本透析学会の統計調査によれば、2 0 1 4 年 1 2 月 3 1
くなされている。本邦における HDF フィルターには蛋白
日現在でオンライン HDF にて治療されている患者数は
透過性の高いものも少なくない。後希釈オンライン HDF
3 6 , 0 9 0 人にまで増加している。その内訳では、前希釈オ
においては蛋白透過性の高い HDF フィルター使用時に
ンライン HDF が 2 9 , 8 8 1 人、後希釈が 1 , 3 4 2 人、その他
濾過量を多くすることにより、蛋白漏出量が過剰となるこ
1 , 3 1 7 人、記載なしおよび不明が 3 , 5 5 0 人となってお
とも想定される。蛋白漏出量についても留意しなければ
り、本邦においては前希釈オンライン HDF により治療さ
ならない。本邦の後希釈オンライン HDF 療法の条件設
れている症例が圧倒的に多い。一方、海外では圧倒的に
定では、血流量、HDF フィルターの透水性・蛋白透過性、
後希釈オンライン HDF が多いとされている。この理由と
TMP 等を考慮して行う必要があると考えられる。本セミ
しては、本邦の透析患者および透析療法の特性(血流量、
ナーでは、後希釈オンライン HDF の条件設定について自
バスキュラーアクセス、HDF フィルターの蛋白透過性)
験例、他験例、私見を交えて概説する予定である。
が影響していると思われる。本邦では、血流量が海外に
比較して少ないため、後希釈オンライン HDF においての
濾過量を多く取ることが難しいことも想定される。近年、
後希釈オンライン HDF 療法において置換液量を多く用
57
ES1-1
この患者の治療、私ならこのモードでしますが、何か?
川島透析クリニック
土田健司
〈職歴〉
〈透析医療におけるモットー〉
イブニングセミナー
平成 02 年 6 月 大阪市立大学医学部附属病院泌尿器科臨床研修医
1 . 患者さんに対しては慢性病で死ぬまで継続する
平成 07 年 4 月 大阪市立大学医学部附属病院泌尿器科臨床後期研究医
という終わりのない治療です.患者さんにはいか
平成 10 年 10 月 大阪市立大学・大学院医学研究科泌尿器病態学助手
に明るく楽しく透析治療を受けていただけるかを
平成 16 年 1 月 大阪市立大学・大学院医学研究科泌尿器病態学講師
考え,常に笑って明るい態度で臨床治療していこ
平成 18 年 10 月 医療法人 川島会 川島病院 診療部長
うと心がけています.
平成 20 年 4 月 医療法人 川島会 川島病院 副院長 2 . 透析の中心は透析膜(腹膜含む)
,透析液,アク
平成 25 年 1 月 社会医療法人 川島会 川島病院 副院長 セスが 3 本柱と考えております.まず,この 3 つを
平成 27 年 3 月 社会医療法人 川島会 川島透析クリニック 院長
しっかりと管理する.透析に関しては限られた制
現在に至る
約内で最大の透析効率が得られるような治療を心
がけています.
〈専門〉
3 . 臨床医にとっては,日常の臨床治療だけではな
血液浄化全般、透析液、透析膜、アクセス、腎不全外科など透
く,臨床研究や教育も重要と考え,これらをバラ
析に関すること、エンドトキシン、腎移植、腎臓内科
ンスよくしていくことを心がけています.
ES1-2
この患者の治療、私ならこのモードでしますが、何か?
医療法人社団兼愛会 前田医院
前田兼徳
〈職歴〉
とはいえ、
「良い透析とは何か?」をあまりにも真剣に突き
2 0 0 2 年 4 月 対馬いずはら病院泌尿器科医長
詰めてしまうと、一歩間違えば、それは、ただの医療側の
2 0 0 3 年 4 月 健康保険諫早総合病院泌尿器科医長
押しつけになってしまいがちです。
2 0 0 5 年 4 月 広島県尾道市立御調総合病院泌尿器科医長
日頃の臨床では、できるだけそういう状況に陥らないよう
2 0 0 6 年 6 月 前田医院副院長
(現職)
に、透析医としての自らのポリシーをあまり前面に出さぬよ
いさはや
み つ ぎ
〈透析医療におけるモットー〉
ご存知の通り、包括的腎代替療法としては腎移植、腹膜透
析、血液透析があげられ、これらはしばしば末期腎不全治
療における三本柱と表現されます。これらの中でもっとも
生理的な治療法は腎移植だと考えていますが、この三本
柱には一長一短があると、なんと今ごろ気がついてしまい
58
うに、医学的根拠と患者の社会的・医療的背景をすり合わ
せた治療ができればいいな!と、模索しているところです。
ですから、
「マジな話、オンライン HDF とか、どーなの
よ!?」
とも感じています。
「透析をしていないときに、透析患者がいかに無愁訴で、
そして元気でいられるのか?」もしかすると、これが良い
ました。
治療の一つの指標になるのかもしれませんね。
まあ、健常腎は 2 4 時間、一瞬たりとも休むことなく稼働し
本イブニングセミナーでは、尊敬する蛋白漏出大王と親愛
ているわけなので、透析治療の基本はゆっくりと時間をか
なる高血流無酢酸王子との競演(狂演?)をとても楽しみ
けてやるものだとは自負しています。
にしています。
ES1-3
この患者の治療、私ならこのモードでしますが、何か?
腎内科クリニック世田谷
菅沼信也
り十分な透析量を確保していただくことを推奨していま
腎臓病及び透析医療に一貫して携わる。東京女子医科大
す。また、透析量増加が伴う透析患者様の社会復帰に貢
学附属病院での研修後、新宿石川病院内科、東京女子医
献するべく、在宅血液透析
(HHD)
にも力をいれています。
科大学腎臓病総合医療センター、東日本循環器病院
(現海
HDF は、オンライン HDF のみならず、I-HDF も個々の
老名総合病院)腎膠原病センター勤務を経て H 2 0 年 1 0 月
患者様に応じて行っております。最先端の透析治療およ
世田谷区烏山地域初となる保存期慢性腎不全に対する加
び患者様個人に合わせた治療法を選択可能な透析施設を
療に加え維持透析も可能な施設「腎内科クリニック世田
目指し、患者様の QOL を高められるような透析の提供を
谷」
を開設。臨床腎臓病学を専門とし、特に慢性腎不全の
心がけております。こうした取り組みが、透析患者様が
治療を得意分野とする。
より長生きしてもらえる状況につながれば何より嬉しい
イブニングセミナー
旭川医科大学卒業後東京女子医科大学腎臓内科に入局し
ことです。
〈透析医療におけるモットー〉
私の透析における信条は「しっかり食べて動いてしっかり
透析」
です。栄養状態の良い方、筋肉量の多い方、透析量
の多い方がもっとも長生きされていますので、よく食べ
よく動いていただいた上で、高血流、長時間透析等によ
59
CS1-1
近未来のHDFフィルター〈メーカーに“まず”求められること〉
東レ・メディカル株式会社 透析事業本部 企画学術室
○押原 渉
日本透析医学会の統計調査によれば、血液透析患者さ
4つの大規模前向きランダム化比較研究のメタアナリシ
んの予後に関わる因子のうち、透析膜素材や透析器によっ
スが行われた結果、オンライン HDF は、従来血液透析に
て影響される因子としては、
「Kt/V」
「ヘマトクリット」
比べて、死亡リスクの低下、特に 2 3 L/session 以上の大
「血清β 2 -ミクログロブリン」
「血清アルブミン」
「CR
量液置換(後希釈)において有効性が認められた(Peters
P」
「透析前白血球数」
「透析前血小板数」
などであろうか。
ら、NDT 2 0 1 6)
。ただし、その機序は不明とされ、大量
これらの改善について、果たして HDF 療法が寄与するの
補液による血液温度の低下に伴う血行動態の安定化が透
か、従来のように準実験的手法による予備的結果を示す
析中の血圧低下を防止したこと、いわゆる低温透析が心
だけではなく、今後は前向きのランダム化比較研究でエ
血管イベントリスクを回避したのではないか、との意見論
ビデンスとして確立する必要がある。
文も併記された
(Daugirdas)
。
さらに、血液透析器や血液透析ろ過器を含む、どのよう
さらに、今後の医療機器の開発においては、従前の
「有
企業セッション
な透析関連医療機器の開発においても、最終的な生命予
効性」
「安全性」
「品質」にとどまらず、マーケットアクセ
後への寄与を求めることが望まれる。現状の高い完成度
スと呼ばれる、費用対効果評価に基づく医療経済性やそ
の透析システムの中でさらに予後の優位性を立証するの
の財政への影響までを提示する必要性が生じつつある。
は難しいかもしれないが、製品開発に加えて、多施設にわ
個別の医療技術を評価することから、治療に伴う患者さ
たる大規模前向き臨床研究への関与が透析関連医療機器
んの一生の経済性や国の財政に与える影響を、メーカー
メーカーの課題となる。
が検証して提示する時代が迫っており、HDF 療法やその
最近、主に 2 0 1 2 年~ 2 0 1 3 年に EU 各国で行われた、
フィルターも例外ではない。
CS1-2
ヘモダイアフィルターABH-P・ABH-Fの除去特性
旭化成メディカルMT株式会社 血液浄化技術開発部
○西澤一樹
60
弊社のヘモダイアフィルター「旭中空糸型血液透析濾
を提供できると考える。TMP 値、置換液量に対する除去
過器(以下、ABH-P)
」
、
「旭中空糸型ヘモダイフィルター
特性応答性の特徴を生かし、定圧濾過モード、および、定
(以下、ABH-F)
」は TMP 値および置換液量に応じて
速濾過モードでのアルブミン除去量の制御が可能である。
中大分子物質の除去性能を制御することができるフィル
また ABH- 2 1 P においては、Qs コントロールを搭載した
ターであり、この 2 銘柄で幅広い治療バリエーションに対
JMS 社透析装置(GC- 11 0 N) と共に使用する事により、よ
応できると考えている。
り簡便にアルブミン漏出量を制御する事が可能となる。
透析液の一部を置換液に使用する on-line HDF は、透
Qs コントロールとは、治療開始から終了までを各ステッ
析装置により置換液量を簡便に変更することが可能とな
プに分け、ステップ毎に設定した TMP 値となるように
り、かつ大量の置換液を用いることが比較的容易にでき
補液量を制御する機能である。制御モードを選択する事
る。on-line HDF 治療においては、患者さんの状態に合
で、患者さんの状態に合わせた HDF 治療の提供が可能
わせて除去性能を設定する必要があり、フィルターの性
となる。
能は置換液量に応じて制御できる事が望ましい。また、
ABH-F は主に後希釈法、ABH-P は主に前希釈法で使
大量液置換する場合においても安全に使用できる事が重
用される事を想定し、除去性能およびディメンジョンの
要である。
設計がされている。一方で、目的に応じて少量の置換液
ABH シリーズは、TMP 値とアルブミン漏出量に相関
量を用いた前希釈HDF に ABH-F、または後希釈HDF に
関係があり、希釈方法、置換液量、ヘモダイアフィルター
ABH-P を使用する事も可能である。ABH シリーズは、
の組み合わせ方で TMP 値を制御しアルブミン漏出量を
希釈方法、置換液量の組み合わせにより除去性能を制御
コントロールすることで、患者さんに合わせた HDF 治療
し、幅広い HDF 治療を提供する事が可能である。
CS1-3
PEPAヘモダイアフィルターGDF / GDF-M
日機装株式会社 メディカル事業本部 メディカル技術センター
○岩島重人
【はじめに】PEPA 膜は、ポリアリレート樹脂(PAR)とポ
リングに伴う TMP 上昇や透水性低下を抑制した。また、
リエーテルスルホン樹脂(PES)の 2 種類の高分子(ポリ
PEPA 膜が持つブロードな膜分画特性を生かした細孔径
マー)をブレンドしたポリエステル系ポリマーアロイ膜
に設計することで、中・大分子物質の高い除去能を実現
(Polyester polymer alloy : PEPA) で あ る。 親 水 化
した。
PEPA 膜は、PEPA 膜に親水化剤であるポリビニルピロ
リドン
(PVP)
を使用して製造した透析膜である。
【ラインナップ】2 0 1 3 年 9 月に「PEPA ヘモダイアフィル
【GDF-M】透析困難症や栄養リスクを抱えた症例に対応
できるよう、
「アルブミン漏出を抑えたフィルターである
こと」
を GDF-M の設計コンセプトとした。
ター GDF」を、2 0 1 4 年 11 月に「PEPA ヘモダイアフィル
中空糸には、GDF と同様、親水化PEPA 膜を採用した。
ター GDF-M」
を上市した。
細孔径は、アルブミン漏出を抑制しつつβ 2 MG 領域まで
【GDF】ある程度のアルブミン漏出を許容しつつ、β 2 MG
は高い除去能を得られるようなシャープな分画特性に調
やα 1 MG において高い除去率を達成することによって、
整した。さらに、希釈方式によって中・大分子量領域の
関節痛や Restless Legs Syndrome 等が改善されると報
除去効率が選択可能な特徴を有する。
企業セッション
告されている。それらの透析合併症に対応すべく、
「小分
子から大分子まで効率よく除去可能なフィルターである
こと」
を GDF の設計コンセプトとした。
中空糸には親水化PEPA 膜を採用することで、ファウ
CS1-4
マキシフラックス・ファインフラックスの特性
ニプロ株式会社 企画開発技術事業部
○横川理史
HD に比べ治療条件の幅が広い HDF において、さまざ
ファインフラックスは中空糸に従来の均質構造の CTA
まな条件に対応できる製品が必要になる。このため、ヘ
膜から非対称構造の ATA 膜を開発することで、従来の
モダイアフィルタはダイアライザとは異なって要求され
CTA 膜に比べ TMP 上昇が抑制された。さらに血液側表
る性能の範囲も広い。具体的には大量の濾過に耐えうる
面が平滑化されたことで蛋白吸着が低減し、経時変化が
透水性が必要であり、さらにその性能を透析終了時まで
極めて少ない。溶出物については現存するヘモダイアフィ
維持できることが必要である。また、オンライン HDF の
ルタでは唯一の PVP・BPA フリーとなっており、HDF
適用には透析困難症から合併症予防まで幅広い病態があ
の患者選択の幅を広げる一助になるものと考えられる。
り、これらに対応する必要がある。そして、ダイアライザ
また、CTA 膜は付着蛋白種が PS 膜と異なる特性を有し
と同様に優れた生体適合性が求められる。当社はこれら
ており、特に血小板刺激を有するフィブリノーゲンの付着
の要求事項に対し、現在マキシフラックス、ファインフ
が少ないと報告された。ATA の平滑化された膜表面に
ラックスの2つの製品群を開発した。
よりさらなる血球刺激の低減が期待される。
マキシフラックスは中空糸に PES 膜を採用することで、
性能ラインアップについてはマキシフラックスが 4 種、
大量濾過施行時でも低い TMP を維持する。また、TMP
ファインフラックスが 2 種の計 6 種類取り扱っており、幅
の低減には膜面積増大も有効であることから、大膜面積
広い病態に適用可能である。
化にもいち早く着手し、世界最大の 3 . 0㎡を開発した。溶
弊社としては今後も幅広い HDF の用途に合わせた製
出物については環境ホルモンである BPA フリーとなって
品開発をすすめ、HDF 治療に貢献していきたいと考えて
おり、昨年スペインの研究グループから炎症マーカーの増
いる。
大軽減、酸化ストレスマーカーの上昇抑制が報告された。
61
CS2-1
当社オンラインHDF対応装置「透析用監視装置TR-3300M」のご紹介
東レ・メディカル株式会社 透析事業本部 技術サービス部門
○金山洋二
透析液を置換液として注入するオンライン HDF は、透
3 3 0 0 M は①業務効率化、②操作性・作業性の向上、③
析液の高度な清浄化が必要不可欠であり、
(一社)日本透
安全性・信頼性の追求、④高機能化、⑤クリーン化の 5
析医学会が定める透析液水質基準に適合する必要があ
つのコンセプトを基に開発した。透析液による自動化機
る。当社はかねてより、透析用水および透析液の清浄化
能およびオンライン HDF 機能などの有用な機能が付加
に積極的に取り組んでおり、上流の逆浸透法精製水製造
されている。自動化機能は使用条件に合わせて、逆ろ過
装置から末端の透析用監視装置、個人用透析装置までシ
透析液またはオンライン補充液の選択が可能であり、ま
ステム全体の透析液清浄化対策を行うことで透析液水質
たオンライン HDF 機能は間歇補充型HDF(I-HDF)にも
基準に適合するシステムが構築できている。
対応し、8 パターンの治療条件設定、補液前後の血圧測
企業セッション
当社は 1 9 9 0 年代後半よりオンライン HDF 装置の開
定、人工透析管理システム MiracleDIMCS UX® の連携
発に着手、2 0 0 0 年には欧州の販売認証である CE マー
などが可能となっており、I-HDF を簡便かつ効果的に行
キングに適合し、翌年には輸出を開始するなどオンライ
うことができる。これら特長を有する 3 3 0 0 M は、今後の
ン HDF を早くから推進してきた。一方、国内は当時、オ
透析治療および透析環境の向上に寄与できる製品と考え
ンライン HDF は未認可の治療方法であったため、国内製
ている。また現在、当社では体外循環中の血液モニタや
造販売承認の取得は 2 0 1 0 年 1 月となったが、長年海外で
透析液の排液モニタなどの生体モニタリング機能の研究、
培ったノウハウを活かし、さらに国内ニーズに対応した新
開発に積極的に取組んでおり、近未来にはバイオフィー
技術・新機能を付加することができた。
ドバック制御の展開を目指している。
今回は当社最新のオンライン HDF 装置である多用途
東レ・メディカルはこれからも安心・安全で効果的な
透析装置「透析用監視装置TR- 3 3 0 0 M」
(以下、3 3 0 0 M)
透析医療の実現へ、更なる発展にお役に立ちたいと考え
の特長について紹介させていただく。
ております。
CS2-2
多用途透析用監視装置DCS-100NX
日機装株式会社 メディカル事業本部 透析企画部透析企画グループ
○青木辰正
当社多用途透析装置DCS- 1 0 0 NX シリーズは 2 0 1 2 年
1 月にリリースされ 4 年経過した。今回、オンライン対応
【プログラム補液】透析治療中に補液をあらかじめ設定さ
機種として DCS- 1 0 0 NX に搭載されている「モニタリン
れた一定間隔で行う。
グ機能」や「プログラム補液」機能などを中心に利便性や
その後、次の補液までの間に、もともとの除水に加えて
安全性について説明する。
注入した補液と同量の除水をおこなうことが可能。透析
【血液量モニタ(BV 計)
】血液量モニタ(BV 計)は、治療
中の血圧低下、末梢血管の血流の改善、透析膜の目詰ま
中の循環血液量の変化率や、プラズマリフィリングレー
り防止等の効果が期待できる。
トを測定することでドライウエイト決定の指標の一つと
これらのモニタリング測定機能は非侵襲的で特別な消
なる。
耗品等は必要なく、リアルタイムに連続測定が可能であ
また、バスキュラーアクセス再循環率測定を行うこと
る。また特別なテクニックを行う必要も無く、安全に身近
で、シャント部の管理に役立つと考える。
に機能を活用できると考える。
【透析量モニタ】透析量モニタは、透析液排液の組成変化
を光学的に測定し、標準化透析量
(Kt/V)
および 尿素除
去率
(URR)を算出する。
通常治療時の Kt/V は血液検査の結果から算出するが、
「透析量モニタ」
は、血液検査の結果を待たずに治療毎に
62
K t/V の確認が可能になる。
CS2-3
JMS多用途透析装置について
株式会社ジェイ・エム・エス ME事業部 開発部
○正岡勝則
現在、JMSにて販売しております多用途透析装置に
透析」を目指すべく、製品開発に取り組んで参ります。本
は、コンソールで全自動機能を搭載した GC- 11 0 N と、個
セッションではJMSの従来技術と、モニタリング技術
人用装置で同じく全自動機能を搭載した SD- 3 0 0 N の 2
に関する取り組みの一部について紹介させていただきま
機種をラインナップしております。
す。
JMSは、早くから透析液の清浄化、オンライン HDF
に取り組んでおり、その清浄化透析液の究極的な応用と
して、逆濾過透析液を用いた自動機能の開発をすすめ、国
内初の全自動透析装置として販売を開始しました。
その 後、オンライン HDF 機 能 の 搭 載、オンライン
HDF における補充液速度をコントロールする TMP コン
トロール機能と I-HDF 機能を搭載し、続いてオンライン
透析液を用いた全自動機能の搭載を行いました。現在は、
企業セッション
TMP コントロールを更に発展させた Qs コントロールと
して機能を搭載しております。
今後は、培ってきたこれらの技術を発展させると共に、
モニタリング機能を充実させ「モニタリングによる安全な
CS2-4
透析用監視装置NCV-3 透析プログラムについて
ニプロ株式会社
○永井 翔
当社透析用監視装置NCV- 3 ( 以下NCV- 3 ) の特長につ
ります。そこで NCV- 3 では大気開放部を熱消毒するヒー
いてご紹介します。
トピュア機能を搭載しました。ヒートピュア機能は 3 0 分
【特長 1】
ViVit パネル
操作部に触覚・視覚・聴覚を刺激する 1 5 インチタッ
間で施行できますので、クール間の消毒に利用可能です。
【特長 4】
透析補液プログラム
チパネルモニタを搭載しました。大画面による視認性だ
透析補液プログラムは、透析液流量・補液流量を任意
けで無く、画面が振動することで触覚を刺激することで
に設定することが可能です。透析液流量は最大 8 0 0 mL/
操作性を向上させています。三感を刺激する ViVit パネ
min、補液流量は最大 5 0 0 mL/min まで設定可能なので、
ルにより誤操作を防止し、操作ストレスを軽減します。
幅広いプログラムを組むことができます。補液流量を徐々
【特長 2】
返血バックアップ機能
震災等で多人数用透析液供給装置が停止し透析液が
供給されない場合でも、NCV- 3 内に 残っている新鮮透
に高くするプログラムでは、Alb 漏出量に対するα1 MG
の除去量を増加さすることができたという報告があります。
【特長 5】
間歇補液プログラム
析液を利用することでいつもと同じ操作で返血が可能で
間歇補液プログラムは任意の時間毎に補液量と回収量
す。緊急時に急いで生理食塩液を用意する必要がありま
を変更することが可能なので、様々なプログラムを施設
せん。また、停電が起きても内蔵バッテリを利用した返
様独自に設定し、患者様の容体に合わせた治療提供が可
血が可能です。
能です。また補液量と回収量をリアルタイムに現在除水
【特長 3】
ヒートピュア機能
量へ反映することができるので、患者様の体重管理を容
カプラやオンラインポート、排液ポートは血液回路を接
易に行うことができます。また治療が中断しても、再計算
続する際に、大気開放となるため細菌汚染の可能性があ
を行いやすくします。
63
SS
CKD-MBDから考える最適な透析療法,栄養療法および薬物療法
福岡腎臓内科クリニック
○谷口正智、平方秀樹
スイーツセミナー
64
2 0 1 2 年に改訂された CKD-MBD 診療ガイドラインで
ンの影響もあり徐々に血清Ca 値は低く抑えられるように
は,改めて「血清P, Ca 値を PTH 値より優先して管理す
なった現状があるが,透析液Ca 濃度についてはまだ議
るべきである」ことがステートメントとして明記された.
論の余地がある.また,PTH 値については,Worldwide
特に血清P 濃度に関しては多くの観察研究において生命
DOPPS における各国間の比較で,わが国の PTH 値管理
予後との強い関連が示唆されており,基礎医学的見地か
状況は診療ガイドラインの影響もあり相対的に非常に低
らも FGF 2 3 や Klotho といった老化関連遺伝子とも深く
いことが確認されている.このことは生命予後や骨折の
密接に関与している.透析患者の高P 血症を治療する上
観点からはたして適正かという議論があるが,透析患者
において,適度な蛋白制限食が従来の基本的な考え方で
にとって適正な PTH コントロールが高回転骨,低回転骨
あったが,
その一方で近年は透析患者の栄養が問題となっ
を防ぎ,適正な P, Ca コントロールにつながるという点に
ており,過度の蛋白制限は生命予後を増悪させる可能性
おいて妥当であるという点を強調したい.
がある.したがって栄養状態を良好に保ちつつ血清P 値
本講では P, FGF 2 3,Klotho など CKD-MBD のトピッ
をコントロールするには,十分な食事量,十分な透析量
クについて紹介するとともに,CKD-MBD の観点から透
そして適切な P 吸着薬の服用が重要となる.また P 吸着
析量や透析液の問題など最適な透析療法を探索し,どの
薬においては,最近,鉄含有P 吸着薬の投与と FGF 2 3
ようにして栄養とのバランスをとるのか,またさまざまな
が関与していることが明らかとなっており興味深い.
CKD-MBD 関連薬の選択などについても深く外挿してい
一方,血清Ca 値についてもシナカルセトやさまざまな
きたい.
Ca 非含有製剤が上梓されたことにより,またガイドライ