17 特許を受けることができる者って誰?

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特許を受けることができる者って誰?
発明は自然法則を利用した技術思想の
創作ですから、創作できるものは個人(自
然人)に限られ、法人などは発明するこ
とはできません。特許法第 29 条は「産
業上利用することができる発明をした者
は特許を受けることができる」旨定め、
その着想を具体化した場合のみ)
イ.着想を具体化するための課題の解決
方法を示した人
ウ.着想を具体化するために必要な技術
を見出した人
(2)特許上の発明者とはならない人
特許を受けることができる者は発明者で
ア.部下の研究者に対して一般的な管理
あるとしています。また、特許を受ける
をした人。例えば一般的な助言・指導
権利 ※ は財産権ですから譲渡対象となり、
を与えただけの人(単なる管理者)。
法人などに譲渡され、承継人である法人
イ.研究者の指示に従い、単に実験を行っ
も特許を受けることができる者となるの
たりデータをまとめたりしただけの人
です。
(単なる補助者)。
ウ.研究資金を提供したり、設備使用の
1.発明者
特許には、必ず「出願人」と「発明者」
が記載されています。
便宜を図った人。その研究を委託、援
助した人(単なる後援者・委託者)。
発明者は特許を受ける権利を持ってお
「出願人」はその特許についての権利を
り、この特許を受ける権利を譲渡された
持っている者となっており、「発明者」は
ものが、特許出願人となることができま
実際に発明をした人となります。
す。
論文の場合は、実験補助をしてくださっ
特許出願が完了した段階で、その特許
た方や、実験の指導をしてくださった方、
に関する権利を保有しているのは特許出
実験の材料を提供してくださった方など
願人だけとなり、発明者には特許公報に
も論文の共著者として記載されることが
発明者として掲載されるという「名誉権」
多いと思います。
しかないことになります。
しかし、特許の場合は、発明者を認定
そのため、本法人が特許を受ける権利
するために基準を設けており、その判断
の譲渡を受けるときには、その特許から
基準に合致する研究者のみを発明者とし
利益が得られた場合には発明者の方にそ
て認定することにしています。
の利益が還元できるような仕組みを作っ
(1)特許上の発明者となりうる人
ア.発明が誰にも思いつかないような全
く 新 し い 場 合 は、 そ の 着 想 者( 但 し、
ています。
従 来、 先 生 方 が さ れ た 発 明 に つ い て、
企業にその特許を受ける権利を譲渡され
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ることも多いかと思います。そのときに
(使用者)は発明者から特許を受ける権利
は発明者には「名誉権」しかないという
について譲渡を受けて、特許出願人にな
ことに留意され、譲渡契約書締結の際に
るのが普通です。
は、何らかの補償を得られるような形で
契約されることをお勧めします。
このように特許を受ける権利を譲渡し
た場合には、発明者は特許公報に発明者
として掲載されるだけで、権利者とはな
2.特許出願人
りません。このようなことから多くの企
特許を受ける権利を有する者は、原始
業では社内規程を設け、発明者に補償金
的には発明者です。したがって、発明者は、
を支払うことにしているのです。本法人
特許出願人になり特許を受けることがで
においても、発明者を厚く補償するため、
きますが、特許取得やその維持管理に多
補償金制度を設けています。
額の費用がかかるため、企業などの法人
共同研究から生まれた発明
発明は一人だけで発明を行った場合と、複数で発明を行った場合があります。
この複数の発明者がいる場合は、本法人のみに発明者がいる場合と、本法人と
企業や他の研究機関との複数にまたがった場合とにわかれます。
企業や他の研究機関との共同研究から発明が生まれた場合、その発明の出願人
が誰になるかは、
「共同研究契約」に基づいて判断されます。
共同研究を開始する際には、その発明の取扱いについて、初めからきちんとし
た形でどのように取扱うのか、契約書の形で明記する必要があります。
共同研究契約に関しては、各大学の担当部署または TLO センターにご相談く
ださい。その共同研究に適した形で契約が締結できるようお手伝いします。
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