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代表世話人挨拶
自治医科大学附属さいたま医療センター
一般・消化器外科
力山 敏樹
平成 2 年外科医会の皆様、この度は「第 2 回平成次世代外科医療研究会 in 函館」にご参
加頂き、心より感謝申し上げます。
この会の発足経緯等に関しましては、
「平成次世代外科医療研究会」ホームページや昨年
の第 1 回研究会プログラムのご挨拶で述べさせて頂きましたので、ここでは割愛させて頂
きます。
昨年は、当初その開催が危ぶまれながら、佐村博範当番世話人の多大なるご尽力により、
記念すべき「第 1 回平成次世代外科医療研究会」が石垣島の ANA インターコンチネンタル
石垣リゾートにて盛大に開催されました。非日常的南国での素晴らしい環境の下、各領域
で活躍する平成 2 年メンバー“特別講演”のオンパレードとなり、予定時間を 2 時間近くオー
バーするという白熱した研究会となりました。また、医師を志す地元高校生の参加もあり、
その初々しい質問に一同心が洗われる思いでした。夜は、佐村当番世話人の友人達による
沖縄楽曲演奏も含めた石垣色あふれる懇親会や二次会を催して頂き、メンバーの団結が一
層深まった生涯記憶に残る一夜となりました。
さて今回の第 2 回研究会は、北海道大学 武冨紹信教授を当番世話人とし、中西一彰先
生を事務局として、函館国際ホテルにて開催されます。両先生のご尽力により、今回は 1.
各領域の先端治療 2.医療機器開発 3.手術における私の工夫・こだわり 4.外科医の教育
というメインテーマの下、16 演題の“特別講演(?)”が用意されています。今回も白熱し
た議論が期待(またしても時間延長が危惧)されるとともに、盛大に開催されます事を心
よりお慶び申し上げます。
昨年も申し上げましたが、我々平成 2 年外科医会は、これまでの経験と努力により、現
在の日本外科医療の中心を担う世代であると自負しています。この研究会が、我々の蓄積
した種々の業績を世間に発信していくとともに、我々世代の知識や技量、外科に対する熱
い思いを、次世代に伝え育てる会として益々発展していく事を強く祈念して、
「第 2 回平成
次世代外科医療研究会」開催に向けてのご挨拶とさせて頂きます。
当番世話人挨拶
北海道大学大学院 消化器外科Ⅰ
武冨 紹信
第 2 回平成次世代外科医療研究会の当番世話人の北海道大学の武冨です。この研究会は
春の日本外科学会、夏の日本消化器外科学会の時に開催されてきた H2 外科医会を発端に、
『H2 外科医会から日本の外科医を元気にしよう』をコンセプトに、力山敏樹代表世話人を
中心に、昨年からはじまりました。その名も「平成次世代外科医療研究会(H2GSC)」と
命名され、第 1 回研究会は 2015 年 10 月 24 日に琉球大学の佐村博範当番世話人のもと石
垣島で開催され、充実した発表内容と熱いディスカッションが繰り広げられました。その
あとを受けての第 2 回研究会開催ですので、少々プレッシャーもありますが、涼しい北海
道で熱い議論を繰り広げられるよう精一杯準備しております。
函館は本年 3 月に北海道新幹線が開通し多くの観光客が集い、さらなる活気に溢れてい
ます。その勢いに負けないよう、活気あふれる研究会にしていただければと思います。ど
うぞよろしくお願い致します。
平成次世代外科医療研究会会則・役員
第 1 条 名称
本会は、平成次世代外科医療研究会と称し、英語表記を Heisei 2nd Generation
Surgical Care 研究会、略号を H2GSC とする。
第 2 条 目的
本会は、外科医療全般に関する諸問題の研究、次世代外科医療手技の教育および
普及を行うことを目的とする。
第 3 条 事業
本会は第 2 条の目的を達成する為に次の事業を行う。
1) 年 1 回以上の学術集会の開催
2) その他、本会の目的を達成するために必要な臨床研究推進等の事業。
第 4 条 会員
本会は本会の趣旨に賛同する医師、並びに医療関係者をもって構成する。
第5条
役員
本会には、下記の役員を置く。
代表世話人 1 名
世話人 3 名以上 15 名以内
監事 1 名以上 3 名以内
第 6 条 世話人会
世話人会は、年1回以上開催する。
1) 構成
世話人会は、代表世話人、世話人により構成される。監査・討議を目的に監事
の出席を認めるが監事は議決権を有しない。
2) 役割
世話人会は、本会の意志決定機関であり、本会の運営に関する内容を審議する。
開催にあたっては世話人の過半数以上の出席を必要とする。決議にあたっては、
出席者の2分の1以上の賛成をもって可決し委任状を認めない。
臨時世話人会は、代表世話人もしくは監事の求めにより開催される。また、任
期中の世話人の半数以上の求めに応じても開催される。環境の変化に対応した本
会の一層の発展を目指して、事業、役員、会則について1年毎に見直しを行う。
第 7 条 学術集会
学術集会は年1回以上開催する。学術集会のため、当番世話人をおく。当番世話
人は、世話人会の審議によって決定され任期は1年間とし、連続して再選すること
ができない。
学術集会は、世話人会の審議において決定された主題について、当番世話人の責
任において討議を行うものとする。
第8条
会計
本会の会計年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までとする。経費は学術集
会参加費、会費、その他の収入をもって当てる。
1) 参加費は学術集会会場で徴収する(参加者全員)。
2) 参加費、会費の変更は世話人会の議決を経て、世話人会の承認を受ける。
第 9 条 会計監査
本会の収支決算は毎会計年度終了後に作成し、監事の監査を経て世話人会
に報告しなければならない。
第 10 条
事務局・連絡先
事務局は代表世話人のもとに、会員名簿の整理、会費の管理、懇談会運営に必要
な諸事務を行う。
1) 本会事務局は、下記に置く。
自治医科大学附属さいたま医療センター 一般・消化器外科
埼玉県さいたま市大宮区天沼町 1-847
TEL 048-647-2111(代表)
FAX 048-648-5188
第 11 条 組織、代表世話人、監事
本研究会のメンバーは、別紙参照。
【附則】
1. 本会則および会の運営方法を変更する場合には、世話人会の了承をもって決
定する。
2. 本会則は 2015 年 9 月 1 日より施行する。
研究会組織(敬称略)
代表世話人
力山敏樹(自治医科大学附属さいたま医療センター
世話人
大平 猛(九州大学 教授)
笠間和典(四谷メディカルキューブ センター長)
片桐 聡(東京女子医科大学附属八千代医療センター
小林 聡(信州大学 准教授)
教授)
准教授)
佐野圭二(帝京大学 教授)
佐村博範(浦添総合病院 下部消化管外科部長)
鈴木修司(東京医科大学茨城医療センター 教授)
武冨紹信(北海道大学 教授)
仲 成幸(滋賀医科大学 准教授)
中村慶春(日本医科大学 准教授)
比企直樹(がん研有明病院 部長)
室 圭 (愛知県がんセンター中央病院 部長)
吉富秀幸(千葉大学 講師)
渡邊雅之(がん研有明病院 部長)
[五十音順]
監事
内藤
剛(東北大学
准教授)
事務局担当
自治医科大学附属さいたま医療センター
一般・消化器外科
教授秘書 瀬端 直子
発表者の皆様へ
PC 発表の詳細
1. 発表機材について
□ 事務局では PC を準備しておりません。
□ 各自で PC の準備をお願いします。または、
ご相談の上共用で使用されても結構ですが、
必ず USB 等にバックアップを準備しておいてください。
2. データの受付・試写について
□ 受付・試写はありません。
□ 動画等の作動に不安のある方は研究会の 20 分前までに会場で試写・動作確認を行って
てください。事務局では PC を準備しておりません。
3. 発表について
□ 発表は演者ご自身で、演題上で PC を操作してください。
□ 患者個人情報に抵触する可能性のある内容は、患者あるいは代理人からインフォーム
ド・コンセントを得た上で、患者個人情報が特定されないよう十分留意しご発表下さい。
□ 個人情報が特定される発表は禁止いたします。
4. 進行について
□ 進行は座長一任です。
発表 6 分、質疑応答 2 分です。時間厳守でお願いします。
5. データ作成時の注意点について
□ 画像の解像度は XGA(1024×768 ピクセル)です。このサイズよりも大きい場合、スラ
イドの周囲が見切れる等の支障が出ます。
□ 画面ぎりぎりまで使用されますと再生環境の違いにより文字や画像のはみ出しなどの
原因となることがあります。
□ 会場で使用する PC コネクター形状は D-sub15 ピン(ミニ)オスです。この形状に変換
するコネクターを必要とする場合は必ずご自身でご準備下さい。
□ アプリケーションに他のデータ(静止画、動画など)をリンクしている場合は必ず前も
って動作確認を行ってください。
第 2 回平成次世代外科医療研究会
in 函館
開催概要
■会期:2016.10.15(土)15:00~18:00
■会場:函館国際ホテル
北海道函館市大手町 5-10 TEL 0138-23-5151(代表)
■当番世話人:武冨紹信(北海道大学大学院 消化器外科Ⅰ)
■事務局:中西一彰(市立函館病院 外科)
■プログラム
総合司会
市立函館病院 外科 中西一彰
15:00 開会の挨拶
当番世話人 武冨紹信
15:05~15:37(発表 6 分、質疑応答 2 分)
セッション1(各領域の先端治療)
座長
福島県立医科大学附属病院 呼吸器外科 鈴木弘行
市立函館病院 乳腺外科 鈴木伸作
OS01:食道癌に対するサルベージ手術の現状と展望
がん研有明病院 消化器外科 渡邊雅之
OS02:十二指腸非乳頭腫瘍に対する腹腔鏡内視鏡合同手術
京都府立医科大学 消化器外科 市川大輔
OS03:下部直腸癌における、術前 MRI での腫瘍の直腸間膜への浸潤距離(DME)による術式
選択の有用性の検討
国立がん研究センター中央病院 大腸外科 真崎淳一
OS04:小児がんの肺転移に対する積極的転移巣切除
神奈川県立こども医療センター 外科 北河徳彦
15:37~16:01(発表 6 分、質疑応答 2 分)
セッション2(医療機器開発)
座長 沖縄県立南部医療センター・こども医療センター 比嘉宇郎
神戸大学大学院医学研究科 呼吸器外科 真庭謙昌
OS05: エレクトロレーザーの新たなる展開: 高周波との融合にて凝固性能を手に入れた
Needlescopic Surgery 用マイクロレーザーデバイスの有用性
九州大学 先端医療イノベーションセンター大平開発チーム 大平 猛
OS06:新規マイクロ波手術デバイス Acrosurg. ™(アクロサージ)の詳細と使用方法について
滋賀医科大学 外科 仲 成幸
OS07:腹腔鏡手術における安定した術野展開のための工夫-臓器把持用クリップの活用とその
開発-
近畿大学 外科 木村 豊
16:01~16:33(発表 6 分、質疑応答 2 分)
セッション3(手術における私の工夫・こだわり)
座長
横浜市立市民病院 千葉泰彦
済生会福岡総合病院 外科 定永倫明
OS08:胸腔鏡下食道切除術における我々の工夫とこだわりの郭清手技
兵庫医科大学 上部消化管外科 竹村雅至
OS09:消化管がんの腹腔鏡手術における臍部先行切開の有用性
高槻病院 消化器外科 川崎健太郎
OS10:膵管空腸吻合における no stent 法のこだわり
東京医科大学茨城医療センター 消化器外科 鈴木修司
OS11:Negative Pressure Wound Therapy for wounds of stoma closure
Digestive Disease Center, Showa University Koto Toyosu Hospital.
Noboru Yokoyama
16:33~16:48
休憩
16:48~17:12(発表 6 分、質疑応答 2 分)
セッション4(外科医の教育①)
座長 自治医科大学附属さいたま医療センター 一般・消化器外科 力山敏樹
岩見沢市立総合病院 外科 羽田 力
OS12:コーチング理論を用いた技術の言語化による腹腔鏡下直腸切除術の指導
東北大学大学院 生態調節外科学分野 内藤 剛
OS13:後進への手技伝達 -腹腔鏡下胆管(肝管)空腸吻合-
日本医科大学付属病院 外科・消化器外科 中村慶春
OS14:消化器外科医育成を目的とした多施設共同腹腔鏡下胆嚢摘出術ビデオコンテストの試み
東大阪市立総合病院 消化器外科 山田晃正
17:12~17:28(発表 6 分、質疑応答 2 分)
セッション5(外科医の教育②)
座長 愛知県がんセンター中央病院 薬物療法部 室
圭
久留米大学 消化器外科 安永昌史
OS15:肝臓外科の歴史から外科手術を学ぶ
東京女子医科大学附属 八千代医療センター 消化器外科
OS16:当科に於ける外科医育成に向けての取組み
国立病院機構仙台医療センター 外科
片桐
聡
島村弘宗
17:28 閉会の挨拶
代表世話人 力山敏樹
17:40~18:00 世話人会
19:00~21:30 拡大プログラム委員会
① 各領域の先端治療
OS01:食道癌に対するサルベージ手術の現状と展望
がん研有明病院消化器外科
渡邊 雅之
【はじめに】根治的化学放射線療法 (CRT) は食道癌に対して根治を期待しうる治療選択肢
であるが、遺残・再燃例に対してはサルベージ食道切除術が根治を期待できるほぼ唯一の
治療法である。サルベージ食道切除術の治療成績を検討し、その適応と限界を明らかにす
るとともに今後の展望を考察する。
【対象および方法】1988 年から 2016 年 8 月までにサル
ベージ食道切除術を施行した 81 例を対象とし、短期および長期予後を解析。【結果】術後
合併症は 59 例(72.8%)、Clavien-Dindo(CD)分類 IIIa 以上の合併症は 34 例(42.0%)、在院
死亡は 7 例(8.6%)。在院死亡は cT1/T2 の 33 例では認めなかったが cT3 症例で 7.7%、cT4
症例で 16.1%であった。cN0、CRT による完全緩解 (CR)後の再燃症例に在院死亡は認めな
かった。多変量解析で在院死亡の予測因子は同定できなかった。全 81 例の生存期間中央値
は 619 日、3 年/5 年生存率は 32%/20%。単変量解析では CRT 前の切除不能例、cN+、CRT
後の遺残、ycT3/T4、ycN、術後合併症、ypT3/T4、ypN+、リンパ節転移個数が有意な予後
不良因子であった。多変量解析では CD IIIa 以上の合併症、ypT3/T4、R1/R2 手術が独立し
た予後不良因子であった。cT4 症例に限って解析すると、CRT 後の遺残に対してサルベー
ジ手術を施行した 8 例では CRT 単独の 65 例に対して予後の改善は認めなかった。サルベ
ージ術後の肺合併症発症例は非発症例に比較して全生存率・疾患特異的生存率が有意に不
良であった。鏡視下手術を施行した 5 例では CD III 以上の合併症を認めなかった。
【考察】
短期および長期予後の観点から T1/T2 症例、CRT による CR 後の再燃症例はサルベージ食
道切除の良い適応と考えられた。一方、cT4 に対する CRT 後の遺残症例ではサルベージ手
術の予後延長効果は認められず、手術適応は慎重に判断すべきと考えられた。術後肺合併
症は長期予後を悪化させることが明らかとなり、鏡視下手術の導入による肺合併症軽減の
効果が期待される。
① 各領域の先端治療
OS02:十二指腸非乳頭腫瘍に対する腹腔鏡内視鏡合同手術
京都府立医科大学消化器外科
市川大輔
【はじめに】内視鏡的治療技術の進歩により、十二指腸非乳頭部腫瘍(DNPT)に対する
ESD が試みられている。しかしながら、手技の困難さや濃厚な消化液への暴露から、術中・
術後の穿孔や出血等の合併症を来たすことも多い。今回、当施設で行っている十二指腸非
乳頭部腫瘍(DNPT)に対する腹腔鏡内視鏡合同手術(LECS)の手技の工夫と治療成績を紹
介する。
【対象と方法】粘膜下腫瘍に対しては全層切除後に縫合閉鎖し、早期粘膜病変に対
しては ESD 後に腹腔鏡下の縫合による補強を行う。全身麻酔下に、5ポートを留置。Kocher
授動を行った後、必要に応じて右結腸も授動する。その後 ESD を施行し、管腔の十分な洗
浄を行った後、短軸方向に縫縮する。
【結果】DNPT 12 例 13 病変に対して同術式を施行し
た。ESD では 11 病変中 3 病変に術中穿孔を認めた。非穿孔例も粘膜欠損部を縫縮するよ
うに結節全層・漿膜筋層縫合を行った。術後膵炎から縫合不全を認めた症例を 1 例認めた
が、保存的に軽快した。その他合併症等認めず、術後在院日数中央値は 9 日であった。病
理検査は、早期癌 10 病変、腺腫1病変、カルチノイド 2 病変であった。
【結語】同術式は
機能温存の観点から有用な術式であると思われるが、悪性細胞の腹腔内散布の可能性や補
強が不要な症例も有り得る等、今後も更なる検討が必要である。
① 各領域の先端治療
OS03:下部直腸癌における、術前 MRI での腫瘍の直腸間膜への浸潤距離(DME)
による術式選択の有用性の検討
国立がん研究センター 中央病院 大腸外科
真崎 純一 塚本 俊輔 落合 大樹 志田 大
同
金光 幸秀
放射線診断科
三宅 基隆
[目的]近年、直腸癌における病理学的な腫瘍の直腸間膜への浸潤距離(distance of the
mesorectal extension:DME)が予後に影響を及ぼすことが示唆されている。今回下部直腸
癌において、術前 MRI で測定した DME による、内肛門括約筋切除術(ISR)と腹会陰式
直腸切断術(APR)の術式選択の有用性について検討した。
[対象と方法]2000 年から 2014 年に下部直腸癌に対して ISR または APR が施行された 447
例のうち、術前診断が cT3 または T4 であり、かつ術前 MRI にて DME を放射線診断専門
医が読影し測定可能であった 223 例(NAC 症例を除く)を後ろ向きに検討した。DME は
固有筋層最外縁から腫瘍が最も深く浸潤いるところまでの距離(mm)とした。再発を予測す
る DME のカットオフ値は ROC 曲線解析や過去の報告を参考にした。
DME≧4mm を DME
陽性、DME<4mm を DME 陰性として解析した。
[結果]ISR 施行例は 74 例、
APR 施行例は 149 例であった。
DME は ISR 群/APR 群:0-20mm
(中央値 0mm)/0-32mm(中央値 4.2mm)であった。DME 陽性群は 102 例、DME 陰性
群は 121 例であった。両群間の背景因子(年齢、性別、肛門縁からの距離、術前 CEA 値)
に差を認めなかった。DME 陰性群では ISR/APR 施行例の 3 年無再発生存率は 87.2%/77.9%
(P=0.2168)
であったが、
DME 陽性群では 52.7%/69.5%
(P=0.0442)であった。[結論]DME
陰性例では ISR/APR の術式選択が予後に影響を与えないが、DME 陽性例では ISR 症例で
有意に 3 年無再発生存率が低かった。DME が下部直腸癌の術式選択に有用な可能性が示唆
された。
① 各領域の先端治療
OS04:小児がんの肺転移に対する積極的転移巣切除
神奈川県立こども医療センター外科
北河 徳彦
小児がんの化学療法感受性が高いことはよく知られており、原発巣に関しては、化学療法
による病巣縮小後に全摘できることが多く、外科の技術を駆使して難手術で救命する機会
は少なくなった。このような集学的治療により、肝芽腫をはじめ、骨肉腫なども転移がな
ければ 5 年生存率が 80%を超える時代となった。一方、転移巣に対しては、化学療法を限
界まで使用している症例も多く、予後の改善は乏しかった。外科的切除も多発転移では消
極的な姿勢が一般的であった。このような背景から、現在の小児固形がん治療の主な問題
点は、転移・再発の制御である。この問題に対し、我々は現在、化学療法の無効な転移に
対する積極的外科切除を行っている。【肝芽腫】小児の代表的肝悪性腫瘍である本症は、
外科的切除が予後を決定的に左右するとされてきた。転移巣も同様に考え、2007 年より全
ての肺転移巣を切除する方針としたところ、2 年生存率は 45% (JPLT-2 結果)から 85% (自
験例 18 例)に改善した。さらに ICG 蛍光法を導入し、最小 0.05mm の肝芽腫肺転移巣を術
中に可視化できている。結論として肝切除可能症例では積極的肺切除が有効と言えるが、
肝移植症例では再発を繰り返すことも多く、今後の課題である。【骨肉腫】肺転移の有無
が予後を決定的に左右する。古くから肺転移巣切除の報告があったが、現在でも手術適応
は定まっていない。我々は 24 例に対して肺切除を行ったが、10 例が死亡し、その殆どは肺
外転移・再発を来した症例であった。結論として、肺外転移・再発のない症例では積極的
肺切除が有効と考える。【その他の腫瘍】腎芽腫、滑膜肉腫、ユーイング肉腫、悪性神経
鞘腫、膵芽腫、横紋筋肉腫の肺転移に対して肺切除を行った。【結語】化学療法が限界に
達した転移・再発症例にこそ、外科医の出番があると考えている。あきらめず、かつ患児
の QOL を低下させない手術を心がけている。
②
医療機器開発
OS05:エレクトロレーザーの新たなる展開:高周波との融合にて凝固性能を手に入れた
Needlescopic Surgery 用マイクロレーザーデバイスの有用性
九州大学 先端医療イノベーションセンター大平開発チーム
大平 猛
序論:レーザーは古くからその直進性能・エネルギー保持性能・切開凝固性能より外科手
技への応用が模索されて来た。しかし凝固性能不足によりその能力が生かされず眼科網膜
剥離、口腔外科歯肉切開および耳鼻科アレルギー性鼻炎対策に利用されたに過ぎない。私
達は凝固性能を飛躍的に強化すると共に従来困難であった φ3mm のエネルギーデバイスを
レーザー技術にて開発した。
方法:レーザーの直進性に起因する他臓器損傷の危険性を回避しうる新たなレーザー拡散
技術を開発、更にレーザー自体の凝固性能をパルスレーザー発振技術により向上させると
共に効率的な高周波との同期を可能とする方法を開発した。6頭のブタを使用し、従来困
難であった漿膜切開・血管周囲リンパ節郭清・消化管壁部分切除・肝部分切除を行い作業
効率と止血性能を検証した。
結果:φ3mm 以上の動脈であってもレーザー凝固・切開時に把持部スリップがなければ確
実な凝固・切開が可能であることが確認された。更に標的臓器と非接触での照灼が可能で
あることも本デバイスの特筆すべき機能であり、不慮の悪性腫瘍露出時の抗腫瘍照射とい
う新たな使用法の可能性も確認された。
結語:エレクトロレーザーは新たなる細径低侵襲外科治療領域における新たなるエネルギ
ーデバイスの候補となり得ると考えられた。
② 医療機器開発
OS06:新規マイクロ波手術デバイスAcrosurg.™(アクロサージ)の詳細と使
用方法について
滋賀医科大学外科学講座
仲 成幸
【はじめに】我々は、新規マイクロ波手術デバイス Acrosurg.™(アクロサージ)を開発し、
PMDA(医薬品医療機器総合機構)の審査を経て製造販売が開始されることになった。こ
の手術デバイスは、組織の凝固切断に適したハサミ型デバイス(Scissors S)と凝固止血に
適した鑷子型デバイス(Tweezers S)
、医療機器としては初めてとなる半導体マイクロ波発
生装置から構成される。ハサミ型デバイスにより臓器または組織に対しマイクロ波を照射
し止血しながら切開、切離が可能であり、持ち替えることなく一種類の手術デバイスのみ
で結紮操作も無く手術手技を進めることができる。このマイクロ波手術デバイスの詳細と
手術への使用方法について供覧する。【方法】ハサミ型デバイスは先端部に軽く弯曲した 2
本のブレードを有しており、ハサミ機構により組織の剥離操作、切開が可能である。血管
シーリングまたは組織を止血凝固しながら切離する際には、先ず組織を把持した状態でマ
イクロ波を照射し、組織を凝固しつつハサミにより圧挫・シーリングを行いつつ切離を進
める。鑷子型デバイスはバイポーラー電気メスのような構造をしているが、先端部片側の
みでも止血凝固可能である。組織の両側よりマイクロ波照射を行いながら、組織を圧挫す
ることにより迅速な止血凝固が可能である。このマイクロ波凝固手術デバイスの臨床前試
験としてブタ 6 頭、ビーグル犬 5 頭をもちい、血管シーリング力、組織の止血・切離能力、
肝臓を含めた実質臓器の切離能力を測定した。
【結果】ブタおよびビーグル犬を用いた機能
評価において、血管シーリング、組織の止血・切離能力および実質臓器の切離能力が十分
であることが確認された。
【結論】新規マイクロ波手術デバイス Acrosurg.™(アクロサージ)は既存のエネルギーデ
バイスを代替し得る能力を有し、外科手術に有用であるとは考えられる。
② 医療機器開発
OS07:腹腔鏡手術における安定した術野展開のための工夫
-臓器把持用クリップの活用とその開発-
近畿大学外科 木村 豊
【はじめに】
腹腔鏡手術を安全、確実、迅速に行うためには適切な術野の展開とその保持が重要である。腹
腔鏡下胃切除術において術野の展開と保持を容易にサポートするツールとして藤井が開発した臓
器把持用クリップ(FJ Clip)を用いているので、その使用方法とともにさらに操作性に優れたク
リップの開発を行っているので報告する。
【FJ Clip の特徴】
FJ Clip は腹腔鏡用鉗子で操作可能なステンレス製の臓器把持用クリップで、把持力は強いが、
組織挫滅が少ない構造となっている。5mm 用と 12mm 用の 2 種類あり、クリップの開閉、着脱
は把持鉗子を使って容易に操作が可能である。バネ部に糸を結びつけて体外からその糸を引っ張
ることによって臓器を腹腔内で牽引することができる。
【手術手技】
1. 肝左葉の圧排:5mm 用クリップで右脚の噴門部頭側を把持し、2 本の糸で牽引し、糸と肝左
葉の間に三角ガーゼ(GG アブソーテック®)を挟み込んで肝左葉を圧排する。
2. #4sb、#4sa のリンパ節郭清:胃体部後壁または大網を 12mm 用クリップで右側・腹側に牽引
することによって、術野となる胃壁の背側や左側に体部の胃壁や大網が覆いかぶさることなく、
良好で安定した術野の確保が可能である。
3. #8a、#7、#11p、#9 など膵上縁の郭清:左胃動脈を含む胃膵間膜の pedicle を 12mm 用クリッ
プでしっかりと把持し腹側方向に牽引し、術野展開を確保する。助手の右手は、よりきめ細かい
術野展開の補助や出血時の迅速な止血の役割を担うこと可能となる。
【新しいクリップの開発】
より操作性の高いクリップを開発している。
【結語】
腹腔鏡下胃切除術において、FJ クリップは安定した術野の展開と保持に有用である。
③
手術における私の工夫・こだわり
OS08:胸腔鏡下食道切除術における我々の工夫とこだわりの郭清手技
兵庫医科大学 上部消化管外科
竹村雅至、瀧井麻美子、海辺展明、大嶋勉、篠原尚
食道癌に対する胸腔鏡下食道切除術は拡大視野による縦隔の詳細な解剖学的構造の確認が
可能で、手術の安全性向上に寄与する。さらに、鏡視下手術の定型化に伴って良好な術野
展開が可能となり、胸管や気管支動脈などの温存も安全にできる様になった。我々は鏡視
下に左右の気管支動脈を温存するとともに、胸管温存例では奇静脈弓を温存した手術手技
を行ってきた。今回、我々の手術手技の工夫の詳細を報告する。
(術式)左片肺換気のもと
左側臥位とし、完全鏡視下に気胸を併用している。上縦隔背側から剥離を開始し、胸管を
温存する層で剥離を腹側に向かって行い気管左側に達する。奇静脈弓頭側では右気管支動
脈を損傷しない様に注意し胸膜を切開剥離する。右反回神経周囲リンパ節を郭清後、気管
食道間を剥離し食道のみを確保し、テーピングを行い食道を背側に牽引すると、左反回神
経が食道枝により背側に牽引され、左反回神経周囲リンパ節の安全な郭清が可能となる。
気管食道間の剥離を尾側にすすめ、奇静脈弓尾側の胸膜を切開すると奇静脈弓が全周性に
確保され右気管支動脈ごとテーピングを行う。奇静脈弓の高さで胸管を損傷しないように
食道を剥離すると、左反回神経周囲リンパ節の郭清の術野が得られる。中下縦隔郭清終了
後に奇静脈弓頭側で食道を切断し、奇静脈弓左側をくぐらせて肛門側食道を尾側に牽引し
つつ、横隔膜上まで剥離を行い胸部操作を終了する。(結果)2015 年 9 月より本術式を導
入し、現在まで 22 例(男性:16 例、女性:6 例、年齢:67 歳)に奇静脈弓温存手技を行っ
た。開胸移行例や奇静脈弓損傷例はなく、胸部の手術時間は 133.5 分で出血量は 30ml であ
った。胸部郭清個数は 21 個で、安全に縦隔郭清が可能であった。(結語)胸腔鏡下に行う
食道癌に対する縦隔郭清は、拡大視野を十分に活用することで、質の高いリンパ節郭清を
可能とするとともに、食道周囲臓器の安全な温存を可能とする。
③
手術における私の工夫・こだわり
OS09:消化管がんの腹腔鏡手術における臍部先行切開の有用性
高槻病院・消化器外科
川崎健太郎、大川太資、朝倉 力、坂本浩輝、明石尭久、朝倉 悠、大和田善之、
土師 誠二、家永 徹也
【はじめに】近年、胃癌や大腸癌の腹腔鏡手術において、臍部を切開し標本を摘出するこ
とが多い。その後、結腸癌では体外で吻合、胃癌や直腸癌では体内吻合となる。そこで発
想を逆転させ臍部先行切開による手術を行っている。その実際、メリット、工夫について
報告する。【実際】手術開始時に胃や直腸癌では 3cm、結腸癌では 4-5cm、臍部を切開す
る。EZ access を装着し 12mm ポートを2本挿入する。その他には胃癌は 5mm ポートを 3
本、結腸癌は 5mm ポートを 2-3 本、直腸癌は 12mm ポート 1 本と 5mm ポートを 2 本挿
入し手術を行う。【メリット】1)手術既往のある症例でも臍部の小切開から癒着剥離が
できるため容易に腹腔鏡操作が開始できる。2)臍部の 12mm ポートを2本でカメラとカ
ーゼや縫合器が挿入できるので、他のポートは 5mm で可能。3)ポートを細く数を減らし
た Reduced Ports Surgery(RPS)であるものの、臍部の 12mm ポートを2本をフルに使
えるので通常ポートとほぼ同様の手術ができるため、初心者でもあまり問題なく手術が可
能である。4)ラッププロテクターを筒のようにつかうことで大量の生食洗浄が可能であ
る。5)EZ access をもちいるものの通常の手術よりコストを抑えることができる【工夫】
1)胃の手術で肝臓のつり上げは糸二本にペンローズを通す方法で行う。2)前もってガ
ーゼを必ず入れておき、手術操作を始める前に視野の近くにガーゼをおいておく。3) 膵
臓ころがしは固めたガーゼをエンドクリンチではさんでおこなう。4)臍部のポートの適
切に回転させる。以上の工夫で問題なく手術が行えている。【まとめ】消化管がんの腹腔
鏡手術における臍部先行切開は有用であると思われた。
③
手術における私の工夫・こだわり
OS10:膵管空腸吻合における no stent 法のこだわり
東京医科大学茨城医療センター消化器外科
鈴木修司、下田貢、島崎二郎、梶山英樹、竹村晃、西田清孝
[目的]近年膵頭十二指腸切除術の安全性は術式の工夫と術後管理の改善により改善してき
ている.しかし,未だ時として重篤な経過をたどることがある.われわれは,膵頭十二指腸切除
において,膵空腸吻合は patency に留意した膵管チューブ挿入のない膵管空腸粘膜吻合と膵
実質空腸漿膜密着を意識した前後列吻合(no stent 法)を施行してきた。こだわりを持った吻
合法の手技をビデオで供覧し,治療成績について報告する.【対象】2001 年から 2015 年まで
に当院および関連施設で no stent 法にて膵頭十二指腸切除術を施行した 227 例である. 硬
化膵 103 例(A 群),正常膵 124 例(B 群)に分け,背景因子,膵液瘻(PF)について検討した.
【成績】対象は 227 例で,男性 135 例,女性 92 例で,平均年齢は 68 歳であった. 対象疾患は
膵頭部癌 100 例,胆管癌 54 例,十二指腸乳頭部癌 23 例,IPMN25 例,慢性膵炎 16 例,その他 18
例であった.各群では手術時間,出血量に差は認めなかったが,在院期間は B 群で長かった
(p=0.025).PF(gradeB/C)は A 群 0 例,B 群 8 例(6.5%)と正常膵で有意に多い傾向を認めた.
また morbidity は A 群 26 例(25.2%)、B 群で 56 例(45.1%)と B 群で有意に高い傾向を認め
た。
【結語】当科における膵管空腸粘膜吻合法は膵頭十二指腸切除術において膵管ステント
を挿入無しでも安全性の向上に寄与し,良好な成果を認める吻合法と考えられる.
③
手術における私の工夫・こだわり
OS11:Negative Pressure Wound Therapy for wounds of stoma closure
Digestive Diseases Center, Showa University Koto Toyosu Hospital
Noboru Yokoyama,Seiya Hajikano, Suguru Ogihara, Kouzaburou Michihata, Masayuki
Isozaki, Genki Tsukuda, Kunio Asonuma,Akiko Ueno,Kai Matsuo,Takahiro Hobo, Shuei
Arima, Naoyuki Uragami, Haruhiro Inoue
【Introduction】
The number of cases of temporary ileostomy tends to be increased due to increase of
anal-preservation operations for colorectal cancer in recent years. The skin around
the stoma is revealed to the bowel contents for long time, and the risk of the surgical
site infection (SSI) is high. Actually, the incidence rate of SSI was reported with 41% in
a past study. Our hospital was opened newly in 2014 and we performed purse-string
suture (PS) for skin closure of stoma closure, but the incidence rate of SSI was high. So
we adopted negative pressure wound therapy (NPWT) with PICO system (Smith &
Nephew) from April 2015, and investigated its validity and safety.
【Materials and Methods】
5 patients (ileostomy) who underwent the stoma closure with PS from September 2014
to March 2015 (PS group), and 12 patients (8 ileostomies and 4 colostomies) who
underwent NPWT after stoma closure from April 2015 to November 2015 (NPWT group),
were assessed about the incidence rate of SSI. Time schedule:POD1: Putting the PICO
system on the wound.POD2: Beginning the diet.POD4: Checking the wound and
exchanging the pad.POD7: Removing the PICO ,the thread and discharge.
【Result】
SSI was observed in 2 patients in the PS group (40%) and not observed in the NPWT
group (0%, p=0.020). Mean of the post-operative hospital stay was 11.8 (7-15) days in PS
group and 11.6 (8-or 15 days) days in NPWT group (P=0.94).
【Conclusion】
NPWT with PICO system for wounds of stoma closure was considered to reduce the SSI
and could be performed safely. Now we use it for only inpatients, but it can be also used
for outpatients. So it might be possible to decrease the post-operative hospital stay. We
should increase the number of cases and investigate more in the future.
④
外科医の教育①
OS12:コーチング理論を用いた技術の言語化による腹腔鏡下直腸切除術の指導
東北大学大学院 生体調節外科学分野・同 消化器外科学分野
内藤
剛(ないとう
たけし)・大沼
忍・阿部友哉・唐澤秀明・渡辺和宏・長尾宗紀・
田中直樹・工藤克昌・青木 豪・井本博文・土屋堯裕・武者宏昭・元井冬彦・海野倫明
内視鏡手術の指導においては、術者と助手が同じ手術画像を共有できること、また画像の
記録が容易であることから手術手技を繰り返し見直しながら教育することが可能である。
しかし一方、助手の位置から術者の鉗子操作を修正することや、出血などの緊急時に助手
が直ちに介入して処置を行うことは非常に困難である。またさらに内視鏡手術では鉗子の
本数や自由度が制限されているため、最小限の鉗子で最適な術野を展開する必要があり効
率的な操作が必須である。そのため内視鏡手術の指導においては、手術手技をより明確に
言語で伝える「言語化」が重要である。手術のようにバリエーションが多い手技を言語で
説明することは非常に困難であるが、手術を幾つかのステップに分けステップ毎の操作を
定型化することで鉗子操作のバリエーションを最小限にすることができる。具体的には場
面毎に把持する部位、牽引方向や使用鉗子を規定することで例外的な操作を少なくするこ
とができる。その結果指導医にとっては言葉で手技を説明しやすくなり修練医にはそれぞ
れの手技の意義を理解しやすくなる。我々は技術の言語化をする上でコーチングの手法を
活用することにより効率的で効果的な直腸切除術の定型化に取り組んでいる。コーチング
とは目標達成のため質問と答えを繰り返しながら「気付き」を得ることによって自発的な
行動を促すコミュニケーションスキルである。手術指導におけるコーチングは本来修練医
に対して質問を行いながら答えを引き出すものであるが同時に指導者本人の指導法を客観
的に見直すことにも非常に有用である。これまでの外科における手術指導は、コーチング
とは対極的なティーチングによって行われることがほとんどであったが、指導医と修練医
それぞれがコーチングを行うことにより指導医はより言語化が可能になり修練医は手技の
意義を的確に理解することができるため効率的な手技の習得が可能になると考える。
④
外科医の教育①
OS13:後進への手技伝達
-腹腔鏡下胆管(肝管)空腸吻合-
日本医科大学 外科・消化器外科
中村慶春,松下 晃,水口義昭,勝野 暁,内田英二
腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術(Lap-PD)は、先天性胆道拡張症の分流術と共に本年度新
たに保険収載され、これからその手法が各施設に適切に導入されていくことが望まれます。
Lap-PD が、既に腹腔鏡下手術が定型化されてきている後腹膜臓器(腎臓、副腎、膵体尾部)
の切除術と大きく異なる点は、言うまでもなく最低でも 3 か所の再建術が必要となること
です。膵臓は後方に固定されている臓器のため、その鏡視下の吻合において move the
ground technique は使えません。膵消化管吻合は術後の膵液瘻の発生に直結する縫合手技
です。やはり少なくとも本術式の導入時期においては、膵切離断端の直上に患者の体型に
合わせた小さな切開創を置いて直視下に縫合すべきであると思われます。膵頸部は脊椎を
騎乗するため膵臓の中でも比較的腹壁の近傍に位置します。ところが胆管(肝管)は膵頸
部とは異なり体躯の後方に存在いたします。よって小さな切開創からの運針操作は難しい。
これは胆道拡張症の分流術を小切開創で行ってきた先生方には身を持って実感されている
ことであると思われます。よって腹腔鏡下分流術、Lap-PD が施設内に適切に導入され標準
化されていくためには、鏡視下での胆管(肝管)空腸吻合法を予めマスターしておくこと
が必要です。
今回、後進の教育を目的に作製した Swine ウエットラボ胆道再建実習モデルを紹介いた
します。また後壁側の術野展開が容易となり、細径膵管縫合にも応用している両端針を用
いた連続縫合の運針法についても、時間の許す限り解説させていただきます。
④
外科医の教育①
OS14:消化器外科医育成を目的とした多施設共同腹腔鏡下胆嚢摘出術ビデオ
コンテストの試み
東大阪市立総合病院 消化器外科 1
大阪大学医学部消化器外科 肝胆膵疾患分科会 2
山田晃正 1,2,野田剛広 2,浅岡忠史 2,和田浩志 2,濱直樹 2,江口英利 2,清水潤三 2,武田
裕 2,永野浩昭 2,土岐祐一郎 2,森正樹 2
【はじめに】腹腔鏡下胆嚢摘出術(Laparoscopic cholecystectomy, LC)は全国で広く一般
的に行われている消化器外科手術のひとつである.虫垂切除術やヘルニア修復術と並び,
若手消化器外科医が手術を学ぶ登竜門であると同時に,近年急速に普及してきた鏡視下手
術のノウハウを学ぶ意味でも非常に重要な術式である.
【目的】消化器外科医の育成をめざ
して,後期研修医を対象とした LC のビデオコンテストを多施設共同で実施したので,その
試みについて報告する.
【対象・方法】関連 10 施設から後期研修医を術者として実施され
た LC の記録映像を計 24 症例分収集し,手術毎に 2 名の評価者(評価者 A:肝胆膵外科学
会高度技能指導医,評価者 B:消化器外科専門医の各 1 名,日本内視鏡外科学会技術認定
取得者 2 名を含む)により,内視鏡外科学会の技術認定時の採点項目に準拠した採点を行
った.評価者は 10 項目のチェックポイントにつき 0~3 点(30 点)を加点し,難易度に応
じて最大 10 点追加の計 40 点満点で評価し,最大 80 点(評価者 2 名分)評点とした.
【結果・考察】術者の卒後年数の内訳は卒後 3 年目/4 年目/5 年目=4/8/12.平均手術時間は
83 分(41~151)で,得点は平均 51.3 点(34~64)であった.難易度加点はのべ 48 評点
中 18 例(37.5%)で 1~8 点が追加されていた.手術時間と得点の間には相関は認めなか
った.卒後年数別の得点は卒後 5 年目が平均 54.3 点で卒後 3/4 年目(50.3 点/47.5 点)に
比し若干高い傾向にあったが,卒後 3/4 年目でも 55 点以上の高得点を3名認めた.評価者
A/B による評点の差異は 24 例中 18 例(75%)において±5 点以内に収まっており,おおむ
ね妥当と考えられた.チェックポイント別には,
「胆嚢頚部から Carot 三角の展開」が平均
2.0 点,
「胆嚢動脈,右肝動脈への配慮」が平均 2.1 点と他のチェックポイントに比し低か
った.
【結語】今回のコンテストでは,手術進行の円滑さは加味されておらず,チェックポ
イント以外で不適切な操作が見受けられる場面もあり,採点方法などに改善の余地がある
と思われた.また,提出された映像を手術教育にどう生かすかが今後の課題と考えられた.
④
外科医の教育②
OS15:肝臓外科の歴史から外科手術を学ぶ
東京女子医科大学附属八千代医療センター 消化器外科1)
東京女子医科大学 消化器外科2)
片桐 聡1)2)、有泉俊一1)、小寺由人1)、高橋 豊1)、樋口亮太1)、
大森亜紀子1)、山下信吾1)、鬼沢俊輔2)、濱野美枝2)、江川裕人1)、
新井田達雄2)、山本雅一1)
肝臓外科の歴史を語るには神話の世界まで遡る。
天界の 火 を盗んで人類に与えたとして、
プロメテウスはゼウスから生きながらにして毎日、三万年間、肝臓 を鷲についばまれる責
め苦を強いられた。プロメテウスは不死であるため彼の肝臓は夜中に再生した。肝臓外科
解剖は 1654 年に Cambridge 大学解剖学教室の Francis Glisson 教授が人体肝臓の脈管を
初めて詳細に記載したことから始まる。ここから肝内脈管の周囲結合組織を Glisson 鞘と
呼称されるようになった。日本においては京都の地において、1754 年に山崎東洋が本邦初
の剖検を行なっているが、西洋と比較するとまだ大雑把なものであった。その後、19 世紀
後半から肝部分切除が行なわれるようになり、1908 年 Pringle により出血コントロール法
が提唱された。 1949 年に京都大学の Honjo らにより世界初の系統的肝右葉切除が行われ
た。その後に Lortat-Jacob は開胸開腹下の良好な視野で、肝門部での動脈初期結紮により
出血量軽減が可能であったと報告し、Tien-Yu Lin、Ton That Tung は肝実質切離を先行し、
肝内で Glisson 鞘ごと脈管処理を行う右葉切除を、1986 年に Takasaki は肝門部で肝外か
らの Glisson 一括処理による肝切除を報告した。同時期に Couinaud が “Surgical anatomy
of the liver revisited”で肝臓の外科解剖を詳細に示したと同時に、肝門部の門脈茎に到達す
る経路を示した。その後に続く多くの先達者により、術前肝機能検査、染色による亜区域
切除、門脈塞栓術、肝切離機材、IVC clamp、Hanging maneuver、肝移植術、腹腔鏡下切
除が実用化、定型化され、現在の安全で確実な肝臓外科手術に繋がっている。歴史を顧み
て現在の手術手技のその源流を理解することは、手技の向上に繋がると考える。
④
外科医の教育②
OS16:当科に於ける外科医育成に向けての取組み
国立病院機構仙台医療センター外科
島村 弘宗
【はじめに】外科医の減少傾向が叫ばれて久しい。
「君が外科医になる日セミナー」など、
各地で医学生や研修医に外科の魅力を伝える試みも始まっている。研修医が比較的多い当
院では、初期研修修了後に当科に外科レジデントとして残る研修医が全くいない時期が続
き、我々も危機感を覚えた。ここでは、そのような事態を打破し、どのように外科レジデ
ントを確保してきたか、当科に於ける試みを紹介する。
【海外国際学会への参加】当院の初期研修コースは、以前、外科ローテートが必須科目か
ら外された時期があったが、初期研修委員会に直訴して、小児科選択コース等一部を除き、
必ずローテートする方向で調整してもらった。外科をローテートしてきた研修医には輸液
など患者管理の教育のみならず、できるだけ手術に手洗いして入ってもらい、閉腹の際に
は皮膚の真皮埋没縫合を上級医指導の下でやらせている。更に 2012 年からは、外科に興味
を持った研修医を海外で開催される国際学会へ連れて行き、ポスター発表を経験させつつ、
外科の魅力をたっぷり語ることにより“青田買い”に成功している。
【外科医育成について】当科は臓器別チーム制(上部消化管チーム、下部消化管チームお
よび肝胆膵チーム)を採用しており、外科レジデントはこれらのチームをローテートしつ
つ何れかに所属し、上級医の指導の下で患者診療に当たる。虫垂炎手術・鼠径ヘルニア手
術(何れもラパロ含む)およびに腹腔鏡下胆摘ついてはレジデントの症例数に応じて割振
る。消化管吻合については、まず助手から担当させ、手技の上達程度により術者をやらせ
る。手術執刀症例数は集計して外科全体で共有する。そして、最終的には大学の医局への
進路を提示する。
【まとめ】当科に於ける外科レジデントの獲得・育成について概説した。今後は新専門医
制度の導入に従い、育成法の modify が必要になると思われる。