事件 - 海難審判・船舶事故調査協会

平成 19 年神審第 39 号
漁船第三十五大鴎丸運航阻害事件 (簡易)
言 渡 年 月 日
平成 19 年 6 月 29 日
審
庁
神戸地方海難審判庁(横須賀勇一)
官
鎌倉保男
人
A
名
第三十五大鴎丸船長
判
副
理
受
事
審
職
海 技 免 許
五級海技士(航海)(旧就業範囲)
損
害
シーアンカーが推進器翼に絡まり航行不能
原
因
漂泊する際の安全対策不十分
裁
決
主
文
本件運航阻害は,パラシュート型シーアンカーを投入して漂泊する際の安全対策が十分でな
かったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
裁決理由の要旨
(海難の事実)
1
事件発生の年月日時刻及び場所
平成 18 年 7 月 22 日 10 時 30 分
能登半島北方沖合
(北緯 37 度 41.8 分
2
船舶の要目
船
種
船
名
漁船第三十五大鴎丸
総
ト
ン
数
138 トン
長
29.41 メートル
機 関 の 種 類
ディーゼル機関
登
録
出
3
東経 136 度 55.4 分)
力
514 キロワット
事実の経過
第三十五大鴎丸(以下「大鴎丸」という。)は,昭和 51 年 3 月に進水した最大とう載人員
10 人の鋼製漁船で,同 53 年 4 月に乙種二等航海士の資格を取得し,その後五級海技士(航
海)(旧就業範囲)の海技免状の交付を受け,平成 12 年 4 月に同免状を更新し,同 17 年 4
月で同免状を失効(平成 19 年 3 月に再交付)したA受審人ほか 8 人が乗り組み,いか一本
釣り漁の目的で,船首 1.3 メートル船尾 3.4 メートルの喫水をもって,同 18 年 7 月 15 日 11
時 00 分青森県八戸港を発し,能登半島北方沖合の漁場に向かった。
ところで,大鴎丸のいか一本釣り漁は,魚群探知機により魚群を探知し,魚群の風上に移
動したところで,4 人の乗組員に命じて,直径 30 メートル長さ 95 メートルのナイロン製の
パラシュートに直径 55 ミリメートル長さ 70 メートルのクレモナ製のロープを繋いだパラシ
ュート型シーアンカーを 30 秒ほどの時間で船首から投入させた後,機関を適宜後進にかけ
てパラシュートを展開させ,漂泊して操業するものであった。
また,A受審人は,パラシュート型シーアンカーを投入して漂泊する際,操舵室から船首
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配置の見通しは良かったものの,単独で,操船及び魚群探索に集中しているので,パラシュ
ート型シーアンカーが投入されると,これに気付かないまま機関を前進にかけることとなり,
パラシュート型シーアンカーが推進器翼に絡む危険があったから,乗組員に対して漂泊地点
を知らせたうえ,同受審人の指示でパラシュート型シーアンカーが投入されるよう,事前に
作業手順を徹底して指示するなどの安全対策を十分に行う必要があった。
ところが,A受審人は,これまで事故がなかったことから大丈夫と思い,船首配置の乗組
員に対して漂泊する地点を知らせたうえ,同受審人の指示でパラシュート型シーアンカーが
投入されるよう,事前に作業手順を徹底して指示するなどの安全対策を十分に行わなかった。
A受審人は,操業海域に至り,5 回ほど操業を行った後,漁場を移動するため,単独で操
船及び魚群探索にあたり,7 月 22 日 10 時 29 分舳倉島灯台から 178 度(真方位,以下同じ。)
9.2 海里の地点において魚群を探知したので,一旦機関を停止して魚群の風上に移動するこ
ととしたが,魚群の位置を確認することに専念していたので,船首からパラシュート型シー
アンカーが投入されたことに気付かないまま,10 時 29 分半魚群の風上に移動するため,針
路を 207 度として,機関を微速力前進にかけて再び進行した。
10 時 30 分少し前A受審人は,浮子が船尾に流れていることに気付いておかしいと思った
が,どうすることもできず,大鴎丸は 10 時 30 分舳倉島灯台から 178 度 9.2 海里の地点にお
いて,パラシュート型シーアンカーが推進器翼に絡まり,機関が停止して航行不能となっ
た。
当時,天候は晴で風力 3 の南西風が吹き,付近海域には北東に流れる微弱な海流があった。
その結果,大鴎丸は,海上保安部に救助を要請し,来援した巡視艇に曳航され,伏木富山
港に引きつけられた。
(海難の原因)
本件運航阻害は,能登半島北方沖合のいか釣り漁場において,パラシュート型シーアンカー
を投入して漂泊する際,乗組員に対して漂泊地点を知らせたうえ,船長の指示でパラシュート
型シーアンカーが投入されるよう,事前に作業手順を徹底して指示するなどの安全対策が十分
に行われず,船首から投入されたパラシュート型シーアンカーが,機関を前進にかけた推進器
翼に絡まったことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は,能登半島北方沖合のいか釣り漁場において,単独で,操船及び魚群探索にあた
り,パラシュート型シーアンカーを投入して漂泊する場合,機関を使用して船体を魚群の風上
に移動する必要があったから,同受審人が指示する前にパラシュート型シーアンカーが投入さ
れることのないよう,乗組員に対して漂泊地点を知らせたうえ,同受審人の指示でパラシュー
ト型シーアンカーが投入されるよう,事前に作業手順を徹底して指示するなどの安全対策を十
分に行うべき注意義務があった。しかるに,同受審人は,これまで事故がなかったので大丈夫
と思い,パラシュート型シーアンカーを投入して漂泊する際の安全対策を十分に行わなかった
職務上の過失により,操船と魚群探知に専念していて,船首からパラシュート型シーアンカー
が投入されたことに気付かず,機関を前進にかけて進行し,推進器翼にパラシュート型シーア
ンカーを絡ませて航行不能とさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第 4 条第 2 項の規定により,同法第 5 条第 1
項第 3 号を適用して同人を戒告する。
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