スプリント・ランニング・トレーニングのメニュー構成法(1)/文献資料調査

スプリント・ランニング・トレーニングのメニュー構成法(1)/文献資料調査
Menu Forming Method of Sprint Running Training (1)
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黒月樹人(Kinohito KULOTSUKI)@黒月解析研究所
スプリントトレーニングのための 10 冊の本
このページを読むとよいのは、高校生や大学生で、スプリントパートを指導するコーチ
に恵まれていない選手である。あるいは、陸上競技を指導しているが、スプリント選手の
能力を高めることに困難さを感じているコーチも、よいかもしれない。
私自身のノウハウを示すのが正当な手順であろうが、私の経験や理論にも限界がある。
そこで、まずは、上記のような選手やコーチのために、役だつ文献資料を調べ、それに
ついての案内を記そうと思う。
私が住んでいるところにある、平均的な、町の図書館(げんみつには市の図書館)のス
ポーツ書籍のコーナーを覗き、とりあえず、役だつと思われる本を 10 冊借りてきた。
[1](改訂新版)
「マック式短距離トレーニング」ゲラルド・マック著、訳・構成――佐々
木秀幸・小林義雄、講談社刊 1985
[2]「陸上競技入門」丸山吉五郎・丹羽悟郎ほか著、講談社刊 1970
[3]「高校生の陸上競技」全国高体連陸上競技部編、講談社刊 1981
[4](改訂版)
「スプリントトレーニングマニュアル」阿部征次著、ベースボール・マガジ
ン社刊 2004
[5]「陸上競技 君だけのメニューづくりマニュアル」阿部征次著、ベースボール・マガジ
ン社刊 2004
[6]「スポーツ生理学の基礎知識」チーム O2 編、山海堂刊 2004
[7]「運動生理学テキスト」医学博士 市河三太著、理工学社刊 1992
[8]「運動生理学」医学博士 市河三太/医学博士 室 増男 共著、理工学社刊 1989
[9]「続 間違いだらけの (改訂版)スポーツトレーニング」鈴木正之著、黎明書房刊 1993
[10]「まんがでわかる ランニング障害解決事典」スポーツ整形外科医 小嵐正治著、ラン
ナーズ刊 2004
[1](改訂新版)「マック式短距離トレーニング」
この本の p27 に「短距離走トレーニングの構成要素」の表がある。1. スピード(トレー
ニング、以下この単語は略す) 2. 特殊持続力
6. パワー・スピード
3. テンポ持続力
4. 一般持久力
5. 筋力
7. パワー・スピード(ミックス) 8. 筋持久力 9. 筋持久力(ミッ
クス)
これの「7. パワー・スピード(ミックス)」は、ハイ・ニー・スキップ(A スキップ)
、
ハイ・ニー・スキップ振り出し(B スキップ)や、バウンディング、ハイ・ニー・ランニン
グ振り出し(B 型)など、多彩な補助トレーニングのリストである。ここの部分は非常に重
要な部分であるが、これまで、うまく理解されずにいて、高速ランニングフォームの力学
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的なメカニズムと、これらの補助トレーニングが密接に結びついていることが分からなか
った。
p57 に「10. 正しいランニング技術の指導」がある。ここに、私が加えたい注意点は、
「足
首まわりに力をこめて、足首のバネを利用して、地面を蹴る反動で膝を上げる」というも
のである。このことの重要性が、何十年もの間理解されてこなかった。
p91 から始まる「6 トレーニング計画」も、貴重な情報である。スプリンターに必要なト
レーニング要素を、合理的に組み込む必要がある。人間なのだから、やれることは、時間
的にも生理的にも限られてくる。だから、全体的な視野でトレーニングが計画だてられて
いることで、トレーニング効果に差がついてくる。
[2]「陸上競技入門」
p13 から始まる「短距離のトレーニング法」のところの、p16 にある「表 3 週間トレー
ニング計画」が、具体的なトレーニングメニューのサンプルとして役だつ。また、p17 の「表
4 週間トレーニング計画」も参考になる。同じタイトルの「表 5」「表 6」が、p20 と p21
にある。細かく書かれているが、非常に具体的なものであり、こまかなノウハウを読みと
ることができる。
[3]「高校生の陸上競技」
p20 からの「雪国の冬期トーニング」がユニーク。雪国でなくても、参考となるノウハウ
がつめこまれている。
p33 からの「陸上競技に見られるスポーツ障害」にもトレーニングに必要な知識がたくさ
んある。
p55 からの「(短距離の)トレーニング計画」のところに、「年間トーニング」や「第 1
強化期の練習計画例」などが豊富に載せられている。
[4](改訂版)「スプリントトレーニングマニュアル」
スプリンターにとって基本的な知識がまとめられている。トレーニングメニューの表が
たくさん示されている。
[5]「陸上競技 君だけのメニューづくりマニュアル」
よくまとまっている。スプリントチームのリーダーが参考とすべき、細かな知識が豊富
に語られている。参考とするようなメニュー表はほとんどないが、それを構成するための
考え方が説明されている。
[6]「スポーツ生理学の基礎知識」
ここに示されている科学的な知識を理解しておくと、トレーニングの効果を高めること
ができる。よい本が現れてきた。
[7]「運動生理学テキスト」 [8]「運動生理学」
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専門家が記した「運動生理学」のテキスト。大学での講義のためにまとめられているの
かもしれない。化学式などの専門的な知識までは必要がないかもしれないが、肉体の科学
的なメカニズムを理解することができる。
[9]「続 間違いだらけの (改訂版)スポーツトレーニング」
p80 から始まる「解剖生理学から見た筋力トレーニングの基本原理」は興味深い。
[10]「まんがでわかる ランニング障害解決事典」
ランナーが陥る故障や障害についての知識が豊富にまとめられている。故障したときは
もちろん、故障を防ぐ意味でも、これらの知識を吸収しておほうがよい。
まとめ
とりあえず 10 冊を選んで、その内容を概観してみた。
状況によって異なるかもしれないが、どれか一冊手にいれるとしたら、[5]「陸上競技 君
だけのメニューづくりマニュアル」がよいかもしれない。
[1](改訂新版)
「マック式短距離トレーニング」は、当時の翻訳者による理解が十分で
はなかったので、大切なところがうまく語られていない。かなり古い本なので、入手でき
にくいだろう。
補助的な知識をしっかり学ぶには、[6]「スポーツ生理学の基礎知識」がよいようだ。
(Written by Kinohito KULOTSUKI, Oct 5, 2011)
参照資料
[1](改訂新版)
「マック式短距離トレーニング」ゲラルド・マック著、訳・構成――佐々
木秀幸・小林義雄、講談社刊 1985
[2]「陸上競技入門」丸山吉五郎・丹羽悟郎ほか著、講談社刊 1970
[3]「高校生の陸上競技」全国高体連陸上競技部編、講談社刊 1981
[4](改訂版)
「スプリントトレーニングマニュアル」阿部征次著、ベースボール・マガジ
ン社刊 2004
[5]「陸上競技 君だけのメニューづくりマニュアル」阿部征次著、ベースボール・マガジ
ン社刊 2004
[6]「スポーツ生理学の基礎知識」チーム O2 編、山海堂刊 2004
[7]「運動生理学テキスト」医学博士 市河三太著、理工学社刊 1992
[8]「運動生理学」医学博士 市河三太/医学博士 室 増男 共著、理工学社刊 1989
[9]「続 間違いだらけの (改訂版)スポーツトレーニング」鈴木正之著、黎明書房刊 1993
[10]「まんがでわかる ランニング障害解決事典」スポーツ整形外科医 小嵐正治著、ラン
ナーズ刊 2004
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