和牛の肉は、どんな仕組みでみなさんに届くのでしょう

和牛の肉は、どんな仕組みでみなさんに届くのでしょう
全国には、久住高原のように母牛を飼って、生まれた子牛を 8~10 ヶ月くらい(体重
280~300kg)で市場に出す、繁殖牛飼養農家(繁殖経営)がたくさんあります。
この経営で使われる飼料は、母牛の健康、子牛の消化器官の発達を図るために、繊維質
飼料が中心で、農家の田畑で栽培される飼料作物や牧草、久住のような山の野草や牧草が
使われます。
もとうし
市場に出た子牛は肥育素 牛 と呼ばれ、各地の肥育を専門に営む経営に買われていきます。
肥育場では、1 年半くらいの期間をかけて太らせます(600kg 以上にもなる)。この時期
に、筋肉に脂肪が入る(脂肪交雑)能力が高いことが、黒牛の特徴で、この「霜降り肉」
をつくる技術も日本独特のものです。この期間の飼料は穀物が主体で、そのほとんどは輸
入です。
ぶどまり
肥育が終わった牛は出荷され、肉の量に基づく等級(歩 留 等級)と脂肪交雑・肉の光沢・
肉の締まりおよびきめ・脂肪の光沢と質に基づく等級(肉質等級)で格付けされます。こ
の等級で上質肉として格付けされた肉は、その肥育牛生産地によって「・・・牛(例えば
神戸牛)」としてブランド化され全国の肉小売店で販売されます。例えば沖縄で生まれ育っ
た牛が神戸で肥育されると「神戸牛」として商標がつきます。消費者の関心は肥育地だけ
になり、生まれ育った場所は商品の表に出てきません。
他の食品でも同じですが、肉の価値は消費者の感覚(味、見ため)の評価に直接関わる
生産段階(肥育)の結果によって決められます。
飢餓の時代を迎えているにもかかわらず、人間の食料と競合する穀物で牛を太らせる技
術と経営は評価されるのに、自然の植物資源を有効に利用し、有機物を供給して土壌を豊
かにし、地域農業を支える繁殖経営は評価の対象にならないという仕組みを変えることは
できないのでしょうか。
消費者が、小売店で肉を手にする時、その味や見かけだけではなく、それがどのような
育て方で生産されたのか、牛を育てることが生産地の自然とどのように関わっているのか、
地域農業の仕組みに牛を飼うことがどのような意味をもっているのか、などに共感するこ
とで生産物である肉の価値が形成される仕組みを作れないものでしょうか。
自然と土に根ざした牛飼いには、地域の個性が発揮されます。
久住高原の牛飼いの個性や自然を活かした農業、自然を豊かにする農業の仕組みを多く
の消費者に伝えることで、久住高原で育った牛の価値を正当に評価して貰える時代を目指
して活動を続けます。
久住 牧野の博物館(牧野ガイドパンフから)2011.10.4