患者カルテへの共有アクセスによって 臨床試験を加速

インターシステムズ ホワイトペーパ
患者カルテへの共有アクセスによって
臨床試験を加速
病院やシステムを横断して臨床データへのアクセスを向上させることにより、
製薬会社が新しい治療法を市場に投入する際の遅延とコストを削減する
病院やシステムを横断して臨床データへのアクセスを向上させることにより、
製薬会社が新しい治療法を市場に投入する際の遅延とコストを削減する
概要
製薬・生命科学業界には、革新的な治療法を提供する一方で、
全体的な研究開発コストを削減するための臨床研究を加速させ
るという戦略的使命があります 1。さらに、ほぼすべての製薬会
社および開発業務受託機関 (CRO) は、利用可能な患者データ
患者情報への不十分なアクセスによ
る遅延
製薬・生命科学において解決すべき最大の課題の 1 つは、医
薬品または治療法の市場投入に要する時間を短縮することで
す。収入機会の損失の観点から、日々の遅延によって臨床試
の量と質が限られていることが根本的な問題であり、それが新
験のスポンサは最大 800 万米ドルを失う可能性があると言わ
薬や新しい治療法の臨床試験におけるコストや遅延の増大に
れています 2。
つながっていることを認識しています。
臨床試験の全遅延のうち約半数が患者募集の問題によって生
根底にある課題は、病院、医療組織、コミュニティ、および国を
じており 3、現在の臨床試験の 50% が目標採用率に達していま
横断して、接続された、信頼できる、包括的な患者記録へのア
せん 4。研究者が目的の患者集団に関する包括的な情報に十
クセスと共有を実現することです。
分にアクセスできないことが、こうした問題の主な原因です。患
それは、研究者が病院などの医療機関から提供される臨床
者情報の不足が、次のような臨床試験の全フェーズにおける臨
データにアクセスし、使用できる、基盤となる医療情報プラット
床研究プロセス全体の遅延につながっています。
フォームと補完ソリューションによる臨床試験エコシステムを提
 プロトコルの実現可能性 — 研究デザインの実施をサポート
供することで解決します。そうしたソリューションの実装により、
するために利用できる臨床データがありますか。適切なデー
臨床研究者は、より迅速に治験実施計画(プロトコル)の実現可
タが存在するかどうかを簡単に確認するには、異なるソース
能性を評価して、被験者となり得る患者候補を特定して募集し、
からのさまざまな形式の臨床記録を検索し、正規化、および
臨床試験に登録された患者を追跡できるようになるほか、医薬
集約を実行できる必要があります。
品や治療法が市場に投入された時点で、効率的かつ正確な健
康モニタリングと観察研究を行えるようになります。
 試験実施施設の選択 — どの病院および医療システムが研
究に必要な患者数を集めることができますか。
 患者の特定と募集 — 研究に適した患者を特定し、連絡を取
ることができますか。
 観察研究 — 医薬品の発売後、患者集団や広く分散した臨床
データにどのようにアクセスし、研究できるでしょうか。
これらの質問は単純かもしれませんが、答えを出すのは難しく、
多くの障害があります。
臨床試験の現在の課題
研究への臨床患者データの利用に対応するどのソリューション
にも、製薬会社、CRO、および医療組織をつなぐ、接続された
 現在、患者記録は、さまざまな機能施設 (病院、プライマリ ケ
相互運用可能な情報エコシステムが必要になります。
ア、コミュニティ サービス) の異種システム (診療、薬局、検
査) にさまざまな形式 (種々のデータ モデル、構造化/非構造
化データ) にて格納されています。また、それらのデータは、
複数の言語や多様な臨床用語を使用している場合や、異な
る規制やプライバシ ポリシに準拠している場合があります。
臨床研究への臨床データの利用を可能にするため、既にいくつ
かの試験的イニシアチブが進行中です。それらのプロジェクトに
よって、商用ソリューションのニーズが明らかになっています。
例えば、英国の新しい国民健康保険 (NHS) 制度では、匿名化
された患者情報を一元的に格納して共有し、医療や研究の向
 現在、臨床研究をサポートするための包括的かつ検索可能
上に役立てることが認められています。ヨーロッパでは、
な患者データが不足しており、この状況が、おそらく臨床試験
Innovative Medicines Initiative (IMI) が、大学、製薬業界、中
で被験患者の募集が遅れる最大の原因といえるでしょう。病
小企業、患者組織、医薬品規制当局などの医療研究に関わる
院によっては、検索可能な医療記録が存在する場合もありま
主要組織間の協業を促進しています。コンソーシアム プロジェ
すが、異なる医療システム、市場、国を越えた集団全体に対
ク ト の Electronic Health Records for Clinical Research
応するシステムは存在しません。多くの場合、このような集団
(EHR4CR) は、ヨーロッパ 7 か国に渡る 11 の病院と 10 の製
全体に対応するシステムは、特定のプロファイルに当てはま
薬会社を統合する実証実験プロジェクトを開始し、相互運用性
る必要な数の患者を識別して募集する際に (特にヨーロッパ
の実証と臨床研究に患者データを利用するという目標の達成を
で) 必要になります。
目指しています。
 医薬品や治療法が市場に投入された時点で、研究者は特定
こうしたイニシアチブにより、関係者は、患者記録をいつでも研
の登録された患者グループとの接点はなくなります。しかし、
究に利用できるようにして、必要とされる包括的な患者データ
正確な観察研究を行うために、医薬品/治療の適用状況と関
セットを作成し、臨床試験のプロセスを加速するうえで、商用ソ
連結果、副作用、およびアレルギを確認する必要があります。
リューションが満たさなければならない 4 つの要件を特定するこ
さらにその際に、研究者は、より多くの医療提供者、データ
とができました。
ソース、および患者に対処しなければなりません。このような
場合、多くのソースから臨床データをマイニングするうえで、
情報ネットワークの一部として組織を招集する European
Medical Information Framework (EMIF) などのプロジェクト
が重要な役割を果たします。
病院間での臨床データへのアクセスを向上
インターシステムズ ホワイトペーパ
ソリューションの 4 つの要件
1. 相互運用性
臨床研究への患者データの利用と共有のすべての側面に単独
で対応できるベンダやテクノロジがない中で、医療情報プラット
フォームこそが、4 つのソリューション要件に不可欠な基本要素
必須要件: 異なる言語、データ モデル、およびシステムの
使用によって生じるセマンティック上の相互運用性の課題を
解決する
となります。医療情報プラットフォームは、システム間の相互運
用性と、接続された、包括的で信頼できる最新の患者記録の構
患者記録は 1 つの施設で生成されます。つまり、医師が各患者
築に必要な先進のテクノロジを提供するものです。この患者記
の情報セットを所有しています。患者が別の医療機関にかかる
録は、データのセキュリティ、プライバシ、およびアクセス制御を
と、別の情報セットが作成されます。それらの記録を統合するに
統合し、異なるシステムや場所からのすべての患者臨床データ
は、相互運用性が必要です。
を集約します。
相互運用可能な医療情報システムとは、「情報の受益者が、情
報を信頼して意味ある使用ができる形で、アプリケーションや組
織を越えて、適切な人物が適切なタイミングで適切な情報を入
手できるようにする」システムのことです 5。
臨床システム、管理システム、およびその他のサードパーティ
製システム間での相互運用性は、異なるソースから患者情報を
集約して利用するために必要な核となる機能です。相互運用性
によって、システム、データ モデル、コーディングおよびコンテン
ツの標準、構造化データ (検査結果など) と非構造化データ (診
察所見など) の使用、言語などのさまざまな相違によって生じる
ボトルネックが解消されます。
そのソース システムでは、臨床データが HL7 CDR(Clinical
Document Architecture) などの特定のデータ標準に準拠して
いる場合があります。そして、元となる医療システムから臨床試
験 管 理 シ ス テ ム に 送 ら れ る 際 に 、 そ の デ ー タ は 、CDASH
(Clinical Data Acquisition Standards Harmonization) や 、
CDISC (Clinical Data Interchange Standards Consortium)
など、臨床試験の全工程に対応する他の標準に変換する必要
がある場合があります。
医療システム
CDA などの形式
臨床試験管理システム
CDASH
CDISC
異なる言語やコーディング モデルを使用するデータに対応する、構造上およびセマンティック上の相互運用性、
マッピング、および用語サービスのサポートに必要なテクノロジに加え、
新しいコードやデータ ソースのマッピング テーブルを開発・保守するための人的要素も必要です。
2. データのセキュリティ、プライバシ、
および規制への準拠
必須要件: データの安全性を保護し、世界各地で異なるプ
ライバシとレポートに関する規制に準拠する
3. 包括的なデータ
必須要件: データの質と完全性を保証すると共に、構造化
データと非構造化データをどちらも評価できるようにする
使用目的への適合性を保証し、結果への信頼を生むためには、
倫理的要件、法的要件、およびプライバシ要件は、国によって
すべての臨床データは、接続された、信頼できる、包括的なも
異なります。患者のプライバシの保護には、さまざまなフェーズ
のでなければなりません。さらに、患者の募集と観察研究を行う
で患者の同意を得る必要があるほか、患者データの匿名化/非
には、データは最新のものである必要があります。
特定化を行う必要があります。こうした作業は、プラットフォーム
プロバイダと連携する信頼できるサードパーティによって行われ
ることが一般的です。そのようなサードパーティは、システム間
で患者データが共有される際の、データ セキュリティの確保、ア
クセス ポリシの適用、患者のプライバシの保護、および規制へ
の準拠を専門としています。繰り返しますが、これらの機能はシ
ステム、地域、国を越えて対応するものでなければなりません。
相互運用性によって、データの接続、標準化の課題に対処でき
ます。また、包括的なデータを実現する課題は、多種多様な医
療情報を集約できる相互運用プラットフォームが対処します。臨
床記録には、画像、診断の構造化データ、副作用、投薬管理、
指示、結果、看護記録や医師の所見、調査回答など、あらゆる
情報が含まれています。そのため、プラットフォームは、構造化
データと非構造化データが混在する包括的な記録の中で意味
を見いだすことが不可欠です。例えば、注目している患者の
データには、関連する構造化診断コード、記述的な病理検査結
果、あるいはカルテのコメントが含まれる場合があります。
接続された、包括的なデータを信頼できるものにするには、伝
送や集約時に発生するかもしれないエラーをなくすことも必要で
す。
医療情報は、医療が提供される時間や場所とできるだけ近いタ
イミングや場所で取り込まれることが理想です。データの取り込
みにおける1つのエラーが、データが臨床試験プロセスを通して
下流に伝送される際に、拡大し得る恐れがあるためです。
病院間での臨床データへのアクセスを向上
インターシステムズ ホワイトペーパ
4. 優れた持続性と拡張性
インターシステムズが提供する利点
世界各国の当局、研究所、病院、および医療組織のために、イ
必須要件: 臨床試験エコシステム全体 (製薬・生命科学企
業、CRO、保険業者、医師、および患者) に利益をもたらす
一連のビジネス利用をサポートできるプラットフォームを活
用する
ンターシステムズの HealthShare 情報プラットフォームは、デー
タの統合、提供、および拡張を適切に行います。また、これらの
機能によって、医療連携の改善、集団健康管理、観察研究のサ
ポート、医療コストの抑制などを支援する、包括的な患者情報を
臨床試験の各フェーズを通じて使用される情報プラットフォーム
やその他のソリューション コンポーネントは、適合性の高い、再
利用可能な、標準に基づくもので、持続可能なエコシステムの
中で管理されなければなりません。選択するソリューションは、
長期使用を見越して構築されており、研究をサポートするため
の臨床データの利用以外にも、製薬におけるさまざまなビジネ
ス利用をサポートできる必要があります。その他のビジネス利
用には以下が含まれます。
 対象の医薬品または治療法に最も適した患者グループを特
定するための臨床試験前分析
 ミスが発生しやすく時間のかかる、病院システムから臨床試
験用システムへの手作業でのデータの再入力をなくせる電
子的データ入力
 有害事象を検出するために最新の患者記録にアクセスする
などの安全監視
提供します。製薬業界には包括的な患者情報を必要とする同
様の差し迫ったニーズがありますが、HealthShare は、臨床試
験エコシステムに戦略的かつ自然に適合します。臨床研究者が
使用する問い合わせシステムは、患者情報が保存されている
病院システムに接続しますが、InterSystems HealthShare が、
システム間でのデータ統合機能および相互運用性を提供してい
ます。
HealthShare 独自の戦略的利点の 1 つは、構造化データだけ
でなく、臨床記録などの非構造化データの評価や統合も行える
ことです。
非構造化データは臨床データの 80% を占め、クエリや分析に
非構造化データを利用できるようにすることが、臨床試験プロセ
スを成功させるうえで不可欠となっています。
インターシステムズは、医療業界のグローバル コミュニティにお
ける実績、専門知識と信頼できるサードパーティとの関係を有し
ており、研究目的での臨床データの共有に必要なあらゆる機能
を提供しています。それらの機能には、システムおよびセマン
ティック上の相互運用性サービス、用語サービス、言語翻訳、
非構造化データの管理、同意管理、監査サービス、患者のプラ
イバシ保護、セキュリティ サービス、患者カルテの匿名化/非特
定化、ユーザ認証などが含まれます。
インターシステムズは、専門家やアナリストから医療業界のリー
ダーとして広く認識されており、ガートナー社のマジック クワドラ
ント「オペレーショナル データベース管理システム」では、リー
ダーとして位置付けられました
6
。 ま た 、InterSystems
HealthShare は、調査会社の KLAS のレポート「HIE 2014:
Revisiting Great Expectations」で、調査を受けた 100% の顧
客が「長期計画の一端」「再度購入する」と述べた唯一の製品で
ある、と報告されています 7。
結論: HealthShare はコストを削減し、臨床試験を加速し
ます。なぜなら、研究者がプロトコル(治験実施計画)を検
証し、患者候補の集団を特定し、臨床試験プロセス全体を
通して患者を追跡する際に役立つ形式で、臨床データをよ
り迅速に研究者に提供できるためです。
臨床研究のサポートにおけるインター
システムズの成功事例
 University Hospital Brussels — 構造化データと共に大部
分が非構造化データ (メモ) による分析を実施して、臨床試験
に適した患者を識別しました。
ベルギー — 製薬会社と連携して、非構造化の臨床記述から、
構造化データで報告されることがめったにない、刺青、鍼治
インターシステムズのテクノロジが医療のゴールド スタンダード
を打ち立てる
 米国のほぼすべてのアカデミック医療センターがインターシ
ステムズのお客様です。
 『US ニューズ&ワールド・レポート』誌の 2014 ~ 2015 年版
の全米のベストホスピタルに選ばれた 17 の病院すべてが、
インターシステムズのお客様です 8。
療、ピアス、刑務所での服役などの高リスク要因があるかに
 インターシステムズは、スコットランド、スウェーデン、デン
を分析することで、C 型肝炎を発症するリスクのある患者を
マーク、ブラジル、チリ、米国などで、州および全国規模のソ
識別しました。
リューションの主要サプライヤです。
 Hixny —異なるデータ ソースやデータ タイプを接続し、さまざ
まな管理組織や多様なポリシに適合する、優れた医療情報
交換用プラットフォームとサービスをニューヨーク州で提供し、
 米国人の 3 分の 2 が受けている医療で、インターシステムズ
は重要な役割を果たしています。
 ガートナー社が「グローバル ソリューション」と呼ぶ主要 EHR
診療現場または研究目的で利用する包括的な患者記録を構
ソリューションの 3 つのうち 2 つが、インターシステムズのテ
築しました。
クノロジ上で稼働しています 9。
1
「Integrating New Approaches for Clinical Development: Translational Research and Relative Effectiveness」、Jean-Pierre Lehner、Robert S. Epstein、
Tehseen Salimi 共著、『Journal of Comparative Effectiveness Research, Vol. 1, Issue 1s』、2012 年
2
「Recruiting Special Patient Populations」、Donna Beasley 著、Applied Clinical Trials 発行、2006 年 6 月 1 日
3
「Study Participant Recruitment and Retention in Clinical Trials」、Business Insights 発行、2007 年 5 月 31 日
4
「Fixing the Protocol Feasibility Process」、Beth Harper、Nikki Christison 共著、『Journal of Clinical Research Best Practices, Vol. 8, No. 1』、2012 年
5
「Connecting Health and Care for the Nation: A 10-Year Vision to Achieve Interoperable Health IT Infrastructure」、米保健福祉省国家医療 IT 調整室発行、
2014 年 6 月 5 日
6
「InterSystems Recognized as a Leader in Gartner Magic Quadrant for Operational Database Management Systems」、2014 年 10 月 21 日
7
「Healthcare Providers Weigh In on InterSystems HealthShare in KLAS 2014 HIE Report」、2014 年 4 月 2 日
8
「Best Hospitals 2014-15: Overview and Honor Roll」、Kimberly Leonard 著、『U.S. News & World Report』誌、2014 年 7 月 15 日
9
「Magic Quadrant for Global Enterprise EHR Systems」、Thomas J. Handler 著、ガートナー社、2013 年 9 月 9 日
病院間での臨床データへのアクセスを向上
インターシステムズ ホワイトペーパ
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〒160-0023
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