練習問題&解答 第4章

問題を解こう
1. 熱力学の基礎
【問題 4.1】容積 4[m3]の密閉容器内に、温度 20[℃]、質量 30[kg]の酸素が含ま
れている。この容器内の圧力を求めよ。ただし、酸素の気体定数を R=
259.8[J/kg・K]とする。
【解答】酸素の体積 V=4m3、質量 m=30kg なので、酸素の比容積 v=4/30 m3/kg
である。式(4.1)において、ガス定数 R=259.8、温度 T=(20+273)K であるので、
圧力 p は、
p
30  259.8  20  273
 571[kPa]
4
【問題 4.2】温度 15[℃]、気圧 1[atm]の空気の密度を求めよ。ただし、空気のガ
ス定数を R=287[J/kg・K]とする。
【解答】空気の密度 ρ と比容積 v は、v =1/ρ の関係があるので、式(4.1)より、

p
1.01325  10 5

 1.226[kg/m 3 ]
RT 287(15  273)
【問題 4.3】温度 40[℃]、ゲージ圧力 1[MPa]、の理想気体を変形しない容器中
で 80[℃]まで加熱する。この加熱後の圧力を求めよ。
【解答】変形しない容器なので比容積 v は一定で定数である。加熱前の温度と
圧力を T1、p1、加熱後の温度と圧力を T2、p2 とすると、式(4.1)より、
p1 R p 2
 
である。よって、加熱後の圧力 p2 は、
T1
v T2
p2 
p1T2 1  0.10180  273

 1.24[MPa]
T1
40  273
【問題 4.4】質量 2[kg]、圧力 100[kPa]、内部エネルギ 2000[kJ/kg]の気体が、容
積 1[m3]の密閉容器内に存在するとき、比エンタルピと全エンタルピを求めよ。
【解答】単位質量あたりの内部エネルギと流動仕事を eU、pv とすると、比エン
タルピ h は、式(4.18)より、
h  eU  pv  2000  100 
1
 2050[kJ/kg]
2
次に、エンタルピ H は、質量 m を比エンタルピ h に掛ければいいので、
H  mh  2  2050  4100[kJ]
1
【問題 4.5】容積 0.5[m3]の変形しない容器内に、圧力 1.013×105[Pa]、熱量
8[kJ] の気体を加えたら、容器内の圧力は 2.0×105[Pa]に変化した。このときの
気体のエンタルピの変化量を求めよ。
【解答】式(4.19)より、dH = dQ + Vdp なので、
H  Q   p 2  p1 V  8  103  2.0  1.013  105  0.5  157.4  103 [J]
【問題 4.6】密閉された容器内の気体は、外部に仕事を 40.0[kJ]を行ない、内部
エネルギが 15.0[kJ]増加した。このとき容器内に供給された熱量はいくらか。
【解答】式(4.12)より、
Q  EU  W  15.0  40.0  55.0[kJ]
【問題 4.7】タービンは、ボイラで作られた蒸気を翼に噴射し軸を回転させ動
力を得る装置である。そのボイラへはエンタルピ 400×103[J/kg]の水を供給し、
エンタルピ 1500×103 [J/kg]、8[ton/h] の蒸気を排出する。このとき、ボイラに供
給した熱量を求めよ。さらに、タービン出口の蒸気のエンタルピが 800×103
[J/kg]であり、タービン内で 100×103 [J/kg]の熱損失があるとき、タービンの出
力を求めよ。
【解答】式(4.29)において、ボイラでは運動エネルギ変化、および位置エネルギ
の変化は 0 であり、さらに、外部に与えた工業仕事 Wt は、無視できるので、Q
= mQ (h2 – h1) となる。一方、8 ton/h の質量流量を kg/s に換算すると
8  10 3
kg/s であるので、式(4.29)から
60  60
ボイラに供給した熱量 Q  8  10  (1500 - 400) 10 3  2.44[kJ/sec]
3
60  60
タービンにおいては、外部から受け取った熱量 q は 0 であり、タービン内での
熱損失を hLoss とすると、式(4.34)より、タービンの出力(外部に与えた仕事)は、
Wt=mQ×wt = mQ (h1 - h2 - hLoss) となる。よって、
タービンの出力 = (1500 - 800 - 100 )  8  10  1.33  10 3 [W]
3
60  60
【問題 4.8】シリンダ内の気体をピストンによって膨張させたところ、50[kJ]か
ら 20[kJ]まで内部エネルギが変化し、気体は外部に対して 15[kJ]の仕事を行っ
た。この過程で、シリンダから外部に排出した熱量を求めよ。
【解答】式(4.12)より、
Q  EU  W  (20  50)  15  15[kJ]
2
【問題 4.9】タービンに流量 0.5[kg/s]で気体が供給され、仕事 5.9[kW]を行なっ
た。タービン供給側は比エンタルピ 2500[kJ/kg]、速度 25[m/s]、高さ 30[m]であ
り、排出側は比エンタルピ 2425[kJ/kg]、速度 10[m/s]、高さ 40[m]である。この
タービンに供給された熱量を求めよ。
【解答】式(4.29)より、


10 2  25 2
Q  5.9  10 3  0.52425  2500  10 3 
 9.8  40  30  21.42[kJ/s]
2


【問題 4.10】エンタルピ 90[kJ/kg]の湿った空気が、流量 98.0[kg/h]で除湿器に
入り、除湿器出口ではエンタルピ 20.1[kJ/kg]、流量 12.5[kg/h]で流出する。除湿
器内に残された空気は、20.2[kJ/kg]のエンタルピを持つ。このとき、除湿器の
熱除去率を求めよ。ただし、除湿器を通るときにエネルギ損失はないとする。
【解答】熱除去率 Q とは、外部から受け取った熱量のマイナスであるので、式
(4.33)において wt は 0 なので、
除湿器内に残存する空気流量 mQ  mQ1  mQ 2  98.0  12.5  85.5[kg/h]
Q  mQ1h1  mQ h  mQ 2 h2   98  90.0  85.5  20.2  12.5  20.1  6.84[kJ/h]
【問題 4.11】温度 15[℃]、圧力 95[kPa]、速度 15[m/s]、エンタルピ 288.4[kJ/kg]
の空気を面積 1.28[m2]の供給管よりガスタービン内に取り入れる。そして、面
積 0.71[m2]の排出管を介して、温度 205[℃]、エンタルピ 480.7[kJ/kg]の空気が
大気に放出される。この供給管と排出管の内部エネルギは、それぞれ、
205.7[kJ/kg]と 343.5 [kJ/kg]であり、ガスタービンの出力は、2040[kW]である。
このとき、ガスタービンに加えられる熱量を求めよ。
【解答】供給管の空気の密度 ρ1 は、式(4.1)より、
p1 
p1
98

 1.15[kg/m 3 ]
RT1 0.287  288
排出管の空気の密度 ρ2 は、式(4.1)より、
p2 
p2
95

 0.692[kg/m 3 ]
RT2 0.287  478
m  A1u1 p1  1.28  15  1.15  22.1[kg/s]
w
W 2040

 92.4[kJ/kg]
m 22.1
u2 
m
22.1

 44.9[m/s]
A2 p2 0.71  0.692
3
q  w  h2 - h1 
u22  u12
44.92  152
 92.4  (480.7  288.4) 
103  286[kJ/kg]
2
2
【問題 4.12】容積 2.5[m3]の変形しない容器内に、温度 12.6[℃]、密度
1.3[kg/m3]、熱量 3.3[kJ] の気体を加えたら、容器内の温度は 28.8[℃]となった。
このときの気体の定積比熱を求めよ。
【解答】この気体の質量 m は容積×密度であり、式(4.39)の定積比熱の定義よ
り、
cv 
Q
3.3  10 3

 0.230[J/kg K]
mT 2.5  1.3  28.8  12.6  273
4
問題を解こう
2.
熱気流に関する基礎事項
【問題 4.13】飛行機が、高度 11,200[m]、温度-51[℃]の大気中を、時速
1211[km/h]で飛行している。この飛行機のマッハ数を求めよ。
【解答】式(4.49)より音速 ca は、
c a  RT  1.4  287  (273  51)  298.7[m/s]
飛行機の速度は、
 1211 
3
u 
 10  336.4[m/s]
 60  60 
式(4.50)よりマッハ数 M は、
M
u
336.4

 1.13
c a 298.7
【問題 4.14】温度 18[℃]の水素中、および、空気中の音の速さを計算せよ。た
だし、水素の比熱比はκ= 1.405、水素のガス定数は R = 4124.0[J/kg K]、空気
の比熱比はκ = 1.40、空気のガス定数は R =287.0[J/kg K]とする。
【解答】水素中の音速は、式(4.49)より
c a  RT  1.405  4124.0  18  273  1298.5[m/s]
空気中の音速は、式(4.49)より
c a  1.40 287.0 (18  273)  341.9[m/s]
【問題 4.15】速度 50[m/s]、圧力 90×103[Pa]、温度 300[℃]の空気の全温度と全
圧力を求めよ。空気の比熱をκ = 1.4 とする。
【解答】式(4.50)より、
M
50
1.4  287  300  273

50
 0.10
479.82
式(4.58)より、全圧力 p0 は、
1.4
1.4  1
 1.41
p 0  90 10 1 
 0.12 
 90.6[kPa]
2


3
式(4.53)より、全温度 T0 は、
 1.4  1

T0  3001 
 0.12   300.6[K]
2


5
【問題 4.16】飛行機が、気温-34[℃] の上空をマッハ数 M = 1.2 で飛んでいる。
飛行機の表面温度を求めよ。空気の比熱比をκ = 1.4 とする。
【解答】式(4.53)より、
T0  (273 - 34)[1
(1.4 - 1)
(1.2) 2 ]  307.8[K]  34.8[ C]
2
【問題 4.17】円管路内のある断面において、等エントロピの空気流れが、速度
40.3[m/s]、圧力 4.1×105[Pa]、温度 123[℃]のとき、速度 98.0[m/s]の下流側の管
路断面における温度と圧力降下求めよ。
【解答】式(4.62)より、
T2  T1 


 1 2
1.4  1
u 2  u1 2  (123  273) 
(98 2  40.3 2 )  392.0[K]  119[  C]
2R
2 1.4  287
式(4.64)より、圧力降下 Δp は、
 119 40.3 
5
Δp  4110 5 1 
  2.5 10 [Pa]
 123 98.0 
6
問題を解こう
3.
ノズル内の流れ
【問題 4.18】圧力 284[kPa]、温度 50.1[℃]のヘリウムがノズル入口から供給さ
れ、pv1.67= 一定平衡状態を保ちながら膨張し、圧力 89 × 103[Pa]でノズル出口か
ら噴出されるときその出口速度を求めよ。ただし、ノズル入口の速度を無視し、
ヘリウムのガス定数は、R = 2076.9[J/kg K]とする。
【解答】式(4.82)より、
  p  n 1 / n 
  89  1.671 / 1.67 
2 1.67
 2n 

u2  
 2076.9  (273  50.1) 1  
  1116[m/s]
 RT1 1   2 

1.67  1
  p1 

 n 1 
  284 



【問題 4.19】圧力 60.1 × 104 [Pa]、温度 19[℃]の空気をノズル入口から供給しノ
ズル出口に圧力 9.8 × 104 [Pa]で噴出させる。断熱膨張過程でノズル入口速度を
無視して噴出口のマッハ数を求めよ。ただし、空気のガス定数を R = 287[J/kg・
K]、比熱比をκ = 1.40 とする。
【解答】式(4.82)より、ノズル噴出速度 u2 は、

  9.810 4
2 1.4
u2 
 287  19  273 1  
4

1.4  1
  60.110





1.4 1 
1.4 
  487.1[m/s]


式(4.56)より、 T2  T1  p1 / p 2 1  /   19  273 
9.8 

60
 .1 
11.4  / 1.4
 173.9[K]
式(4.49)より、 c a  1.4  287 173.9  264.3[m/s]
よって、式(4.50)より、 M  u 2 / ca  487.1 / 264.3  1.84
【問題 4.20】ノズルに空気を供給したときのノズル入口との臨界圧力比、臨界
密度比、臨界温度比および臨界速度比を求めよ。
【解答】式(4.90)より、 pc  0.528
p1
1
式(4.92)より、  c   2 κ1  0.634
1 κ 1 
式(4.93)より、
Tc
2

 0.833
T1 κ 1
式(4.101)より、比熱比κ=1.4(空気)としたときは、最大の噴出速度 u2 は音速の
2.45 倍となる。
7
【問題 4.21】空気の比熱比はκ = 1.4、過熱蒸気はκ = 1.3、乾き飽和蒸気はκ
= 1.135 である。各気体の臨界圧力比と流量関数を求めよ。
【解答】
各気体の臨界圧力比は式(4.90)より下記の表のとおりとなる。
付表 1
比熱比
圧力比
臨界圧力比
過熱蒸
空気
気
1.4
1.3
0.5283 0.5457
κ
pc / p1
乾き飽和蒸
気
1.135
0.5774
各気体の流量関数は式(4.85)より下記の表のとおりとなる。
付表 2
流量関数
過熱蒸
空気
気
1.4
1.3
0.4842 0.4718
比熱比 κ
流量関数 
乾き飽和蒸
気
1.135
0.4494
【問題 4.22】容器内にゲージ圧 9.9 × 104[Pa]、温度 13[℃]の空気が溜められて
いる。断面積 2.2[cm2]の先細ノズルを通して気圧 1[atm]の大気中にこの空気を
噴出させるとき、ノズル出口の流速を求めよ。さらに、その質量流量を求めよ。
ただし、空気のガス定数を R = 287[J/kg・K]とする。
【解答】式(4.82)より、ノズル出口の流速 u2 は
κ1


2κ
  p2  κ 
  
u2 
RT1 1  
κ 1
  p1  


1.41


2  1.4
9.81
 
 1.4 
 287  (13  273)1  

  56.19[m/s]
1.4  1
 14.9  0.101 




よって質量流量 mQ は、
mQ  u 2 A2  56.19  2.2  10 2  1.2[kg/s]
【問題 4.23】スロート部の断面積が 2.5[cm2]であるノズルを通過する、温度
0[℃]、圧力 1.0332 × 104[Pa]の空気の臨界流量を求めよ。ただし、空気のガス定
数を R = 287[J/kg・K]とする。
【解答】式(4.103)より、臨界質量流量 mQc は、
 1.4 1 


mQc  2.5 10
2


2
4
 2   1.4 1  1.0332 10
 1.4  

 0.062[kg/s]

287  273  0
 1.4  1 
8
【問題 4.24】圧力 3 7× 104[Pa]、温度 322[℃]の空気をノズル入口に供給し流量
0.47[kg/s]でノズル出口から噴出させる。ノズル出口はスロート部であり、そこ
で臨界状態となる。このとき、ノズル出口の空気速度、ノズル出口の断面積、
ノズル出口の圧力、ノズル出口の温度を求めよ。ただし、空気のガス定数を
R=287[J/kg・K]、比熱比をκ=1.40 とする。
【解答】
式(4.103)と p1v1=RT1 より、ノズル出口の臨界速度 uc は、
uc 
2  1.4
 287  322  273  446.3[m/s]
1.4  1
式(4.103)より、臨界質量流量 mQc をスロート部の断面積 Ac で表すと、
1.4 1


2
37  104
 2 1.4 1
mQc  Ac 1.4  

 613.09 Ac  0.47

287  322  273
 1.4  1 
よって、 Ac = 7.67[cm2]
式(4.90)より、ノズル出口の臨界圧力 pc は、

1.4
2 1.4 1
 2   1
4 
p c  p1 
 19.5  104 [Pa]
  37  10  

   1
 1.4  1 
式(4.93)より、ノズル出口の臨界温度 Tc は、
Tc  T1
2
2
 322  273 
 495.8[K]
 1
1.4  1
【問題 4.25】スロート部直径が 25[mm]の円形断面の先細末広ノズルを用いて、
ノズル入口で圧力 114 × 104[Pa]、の空気を大気圧へ噴出させる。このノズル末
広比を求めよ。さらに、ノズルの出口断面の直径を求めよ。
【解答】式(4.105)より、ノズルの末広比は、
A2

Ac
 2 


κ 1 
1 / κ1
 114 


 9.81 
1 /κ
1κ /κ
κ 1   114 
1  


κ 1   9.81 

 3.03
よって、ノズル出口断面の直径 d2 は、
d 2  (25 10 3 ) 2   0.0043[m]
【問題 4.26】圧力 117.6×104[Pa] 、温度 220[℃]、κ=1.67、R=2076.9[J/kg・K]の
ヘリウムガスを大気中に流量 0.2[ton/h]で噴出させて完全膨張させる先細末広ノ
ズルがあり、このノズルのスロート部では臨界流れが生ずるとき、(1)スロート
部の断面積、(2)末広比、(3)ノズル圧力と入口圧力の比を求めよ。
9
【解答】
(1) 式(4.103)より、質量流量をスローと部の断面積 Ac で表すと、
1.671
mQc


2
4
0.2  10 3
 2  1.671 117.6  10

 A2 1.67  

60  60
2076.9200  273
 1.67  1 
よって Ac
 6.44  10 5 [m 2 ]
(2) 式(4.105)より末広比は、
1
(3)
1
 2  1.671  9.81  1.67




 1.67  1 
 117.6 
A2

Ac
11.67


1.67  1   9.81  1.67 
 1  


1.67  1   117.6 


 0.1199
(3)式(4.90)より圧力比は、
κ/ κ1
pc  2 


p 1 κ 1 
 2 


 1.67  1 
1.67 / 1.671
 0.487
10