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Aug. 4th 2003
Team Prominence
宮村 智也
‘03ソーラーカーレース鈴鹿 エネルギ消費傾向の解析
1.目的
‘03ソーラーカーレース鈴鹿におけるTeam Prominenceのエネルギ消費傾向を把握し、
次大会への資とする。
2.結論
1)レース中の発電電力と搭載バッテリ量
本年度の天候は曇りであり、最大発電能力480Wに対し、レース中の平均発電
電力は204Wであった。事前の机上検討では平均発電電力を350Wと見込んで
いたため、ゴール時の蓄電池残容量は40%と推定したが、実際のゴール時
蓄電池残容量は0%となった。したがって、本仕様のソーラーカーでは蓄電池
積載量をこれ以上減らすことはできないといえる。
2)未使用蓄電池の長期保存による性能劣化傾向
使用した鉛蓄電池は、昨年のテスト結果では電流容量は26Ahであったが、今年の
レースでは28Ahの容量が確保できた。したがって、1年間のバッテリ保存による
性能劣化はないといえる。昨年のテスト結果を上回る性能となったのは、電池温度
の差と放電パターンの差によるものと考えられる。
3)レース中のエネルギ分担
Team Prominenceが搭載した蓄電池重量は37.6kgであり、これは競技規則で
定められた上限値(80kg)に対し50%以下の蓄電池量である。しかしながら、
レース中の総消費電力に対する太陽電池による発電量は40%であり、60%は
蓄電池の電力によってエネルギがまかなわれたことになる。仮に大出力モータを
搭載して蓄電池積載量を80kgとした場合、太陽電池から供給されるエネルギは
総消費電力量の25%以下になるものと考えられるので、これをソーラーカーレース
といってよいのか疑問が残る。
3.‘03鈴鹿・Team Prominence車両仕様
表1 車両仕様
項 目
車名
形式
車両総重量
太陽電池形式
太陽電池種類
最大発電能力
蓄電池形式
蓄電池種類
搭載蓄電池重量
蓄電池容量
仕 様
ザ・ウインド・
フロム・
ザ・サン
Prominence 4X-5
195kg
FT-132E(昭和シェル石油)
シリコン単結晶
477.8W
FPX12240H(古河電池)
制御弁式鉛酸蓄電池
37.6kg
24Ah/20h
備 考
原動機形式
DDW4060D(本田技研工業)
原動機種類
動力伝達機構
変速機形式
最大電力追尾装置形式
最大電力追尾装置方式
永久磁石式同期電動機
外装式チェーン変速機・前進7段
シマノXTR
PT208HV(波越エレクトロニクス) 搭載台数は1台
3点電力逐次比較式
乗員・蓄電池を含む
搭載枚数は12枚
搭載個数は4個
値はカタログ公称値
・搭載台数は1台(最大出力600W)
・制御回路・電磁部は量産と同一
・冷却方式を通風冷却に変更
図1 車両概観
4.諸データの取得方法
Team Prominenceは‘00秋田大会より、走行中に運転者が蓄電池の使用状況と
時間配分を逐次判断するため、PCベース計測システムを採用している。本システムは
蓄電池の残容量推定機能とデータロガー機能を有している。本報告ではこのデータロガー
機能により得たデータよりエネルギ消費傾向を算出した。
表2 計測システム仕様
項 目
A/D変換器
A/D変換部仕様
サンプリングレート
計装アンプ
計装アンプ仕様
ソフトウェア
OS
CPU
メモリ
ストレージ
仕 様
備 考
DAQCard-700(National Instruments)
差動入力6ch・分解能12bit
1000sample/sec
モータ電流リプル周波数より決定
Prominence内製
絶縁増幅器×1
電流センサ用アンプ×2
電流センサはLA-50(LEM製)
タコメータ用F-V変換器×1
Prominence内製
LabVIEW5.0.1にて作成
Windows 95
Libretto 50(東芝)流用
Pentium 75
32MB
4MBメモリースティック
モータ回転数
モータ消費電力→
モータ消費電流→
←バッテリ残量推定値
太陽電池発電量→
↑バッテリ電圧
↑バッテリ電流
↑バッテリ平均電流
(ドライバーは平均電流が目標値に収束するように
ドライブする)
図2 計測システム測定項目と画面構成
4.レース結果
エンジョイクラス(総発電量480W以下・競技時間4時間)のエントリ台数は44台、
うち決勝出走は42台であったが、Team Prominenceは26周回を走り14位となった。
ちなみに、13位以上のチームは全て最大出力3kW以上の大出力モータ搭載チームである。
表3 順位表(4時間耐久)
Pos. No.
Team
Type
Laps
Total Time
Delay
1
69 紀北工業高等学校 生産技術部
KIHOKU SOLAR
41 4:01'54.785 59.05km/h
2
57 長野県工科短期大学校
Fizzer15
39 4:04'03.333 2Laps
3
71 宇都宮工業高校科学技術研究部
UK-hope 80th
39 4:05'00.769 2Laps
4
87 長野工業高等学校
Big Wave Type-R
38 4:02'32.127 3Laps
5
79 東京工業大学Me
i
s
t
e
r
OB
SilverFluke 480
38 4:04'02.174 3Laps
6
78 TEAM THOUSAND
Sky high
37 4:05'07.988 4Laps
7
52 OLYMPUS RS
OLYMPUS RS-4
36 4:01'44.148 5Laps
8
55 バカボンズ
LAKE WINDⅢ
36 4:05'27.980 5Laps
9
67 中日本自動車短期大学
SUN BIRD
34 4:06'12.346 7Laps
10
73 堺工業高校ソーラーカーチーム
Phehix UF
31 4:01'13.664 10Laps
11
58 大阪府西野田工業高校機械研究部 NSR-03SS
30 4:00'23.914 11Laps
12
89 府立今宮工業高校ソーラー研究部
Swallow-Wing
30 4:08'32.098 11Laps
13
81 高松高専
BlauGlanz
29 4:08'43.057 12Laps
14
74 Team Prominence
Prominence4X-5
26 4:07'30.187 15Laps
15
88 大阪産業大学附属高等学校
SANDAIKO
25 4:04'35.794 16Laps
16
86 Team DDW
MSB03
24 3:55'15.725 17Laps
17
85 岐阜県立可児工業高等学校
KANIKOU
24 4:02'11.384 17Laps
18
54 宮崎工業高校ソーラーカーチーム
M-2
24 4:03'34.284 17Laps
19
60 富山県立大沢野工業高等学校
STAR ANGELⅥ
24 4:04'06.579 17Laps
20
83 延工電子ソーラーカーチーム
ELEPANI 1C
24 4:05'22.047 17Laps
21
91 愛知県立豊田工業高等学校
HELLO-WIN
23 4:00'42.970 18Laps
22
62 龍谷大ソーラーカープロジェクト
RONRON
22 4:04'12.300 19Laps
23
64 ポリテクカレッジ成田
PLODUCT-TECH-1
21 3:46'05.845 20Laps
24
75 HALクラブ
HAL Sunny Ⅴ
21 3:57'23.910 20Laps
25
93 立命館大学太陽エネルギー研究室
NEW AGE
21 4:07'14.217 20Laps
26
61 三重県立津工業高等学校
TENTELRaisedSun
20 3:58'00.831 21Laps
27
65 つくば工科高等学校
Sun Force
20 4:00'34.705 21Laps
28
77 西脇工業高等学校
Advance
20 4:03'15.938 21Laps
29
59 職業能力開発総合大学校
NOKAIDAI6GOKAI
19 4:03'09.134 22Laps
30 *84 FIT福岡工業大学
FITTER
17 4:02'09.316 24Laps
31
70 シューレ大学
TRICHYCHROⅡ
16 4:00'53.381 25Laps
32
68 三重大学教育学部技術科
EduTechⅢ
16 4:02'36.308 25Laps
33
63 ATHS
KIRYU
16 4:08'14.394 25Laps
34
66 石川県立羽咋工業高校メカトロ部
A・R-KAI
15 3:58'06.626 26Laps
35
53 ゴコウコウトウガッコウ
RUNNA・ROUND
14 3:48'52.768 27Laps
36
90 山口短大手作り弁当’S
NEZUMIMARU
11 4:06'02.948 30Laps
37
94 近畿経産局自主研・夢創造の会A
MUSOU ENERGY FC
10 4:02'23.450 31Laps
38
92 大阪府立佐野工業高校定時制
G・S・K・Ⅴ
9 1:41'34.704 32Laps
39
56 石川県立小松工業高等学校
CollaborationⅢ
9 3:48'36.399 32Laps
40
76 タブラヂ・レーシングチーム
HOLS
9 4:04'41.693 32Laps
41
80 池田技研工業
GAUDI
4 4:02'09.230 37Laps
82 近畿大高専ソーラーカー
SOLARRI2003
0
41Laps
5.レース中の各部状況
1)太陽電池による発電量
スタート(7:20)からゴール(11:20)までの発電電力の時間推移をグラフ1に
示す。グレーのラインは各時間における計測値、赤のラインは20点の移動平均値
である。
グラフ1 発電電力の時間推移
450
計測値
400
350
20点移動平均
発電電力[W]
300
250
200
150
100
50
0
0
50
100
150
経過時間[min]
200
250
300
レース時間中は雲量7∼9程度の曇り空であった。レース後半は一時太陽が
顔を出し強い日射があったが、発電量と時間の相関は弱く、雲量に発電電力が
左右されたといえる。グラフ1よりレース中の発電電力をまとめると表3の
とおりとなる。
表4 発電電力まとめ
項 目
平均発電電力
最大発電電力
総発電電力量
実測値
204
428
839
単位
W
W
Wh
最大発電電力より、太陽電池と最大電力追尾装置の動作に問題はなかったと
いえる。
また、平均発電電力より、当初の検討値(平均350W)は甘い見通しであった
といえる。
2)蓄電池の放電傾向
スタート(7:20)からゴール(11:20)までの蓄電池放電電力の時間推移をグラフ2に
示す。
グラフ2 バッテリ電圧・積算放電電流推移
70
35
30
↓蓄電池電圧[V]
50
バッテリ電圧[V]
←積算放電
電流[Ah]
25
20
40
15
10
30
←放電電流
[A]
20
積算電流[Ah]
放電電流[A]
60
5
0
10
-5
0
-10
0
50
100
150
経過時間[min]
200
250
300
決勝で使用した蓄電池は昨年の単体放電試験結果より、組電池の状態で
端子電圧30Vを放電終始電圧として26Ah(4時間率)を確認している。
決勝時のデータでは4時間で28Ahを記録しており、昨年の試験結果を
上回る性能を発揮した。本電池は満充電のまま1年間保管しているが、
これによる性能劣化はないといえる。
単体放電試験結果を上回る性能が得られた理由として、次の項目が考えられる。
・電池の使用温度の差(温度が高いほうが化学反応が促進され容量が増加)
・放電パターンの差(単体試験では定電流放電だが実際は間歇放電+充電)
・単体試験時のエージング効果による容量増
ただし、これらの効果を定量的に把握することは困難であり、エネルギマネジメント
上はこれらに期待することは避けるべきであると考える。
グラフ2より蓄電池の使用状況をまとめると以下のとおりとなる。
表5 蓄電池使用状況まとめ
項 目
平均放電電流
蓄電池容量*
蓄電池電力量
実測値
7.0
27.9
1261.5
単位
A
Ah
Wh
*4時間率
3)モータの使用状況
鈴鹿サーキット1周でのモータ回転数とモータ消費電力は次のとおりである。
グラフ3 レース中のモータ回転数と消費電力 (代表例)
1200
←回転数
1000
モータ回転数[rpm]
モータ消費電力[W]
←消費電力
800
600
400
200
0
0
2
4
6
8
時間[min]
output power[W]
DDW4060は、500rpm∼700rpmの範囲で最大出力をとり、このときの
効率は65%程度である。また、800rpm付近で最大効率(
85%程度)をとり、
このときの軸出力は350W程度である。(グラフ4)
グラフ4 DDW4060 出力・効率特性
650
600
550
500
450
400
350
300
250
200
150
100
50
85
75 80
70
65
60
50
100 200 300 400500 600 700 800 9001000
Motor Speed(rpm)
20
30
40
50
60
70
80
90
Efficiency[%]
したがって、登坂時は最大出力領域を、平地・降坂時は最大効率付近を
使用すべく前進7速の変速機を採用した。
結果、4時間で26周回、平均速度38km/hを最大出力600Wのモータで
達成することができた。
表5にモータ使用状況をまとめたものを示す。
表6 モータ使用状況まとめ
項 目
平均消費電力
最大消費電力
実測値
485.9
1137.0
単位
W
W
6.考 察
・レース中のエネルギ分担の内訳について
前項で示した各部状況より、4時間26周回に要した電力量と、そのエネルギ分担を
まとめると次のとおりとなる。
グラフ5 レース中のエネルギ分担
太陽電池から供給した電力量
839Wh
蓄電池から供給した電力量
1262Wh
40%
走行に要した電力量
2101Wh
60%
Team Prominenceのバッテリ積載量は37.6kgであり、規定の半分以下であるが、
それでも4時間耐久では必要エネルギの60%を蓄電池でまかなっている。
仮に、現在の車体に大出力のモータと80kgの蓄電池を搭載し、今年と同等の日射量で
レースを行った場合、エネルギ分担の内訳は次のようになるものと推定される。
グラフ6 バッテリ80kg搭載時のエネルギ分担
太陽電池から供給できる電力量
839Wh
24%
蓄電池から供給できる電力量
2685Wh
走行に使用できる電力量
3524Wh
76%
蓄電池80kg搭載の場合、太陽電池によるエネルギ供給は全体の1/4以下であり、
これではモータと蓄電池勝負といわざるを得ない。また、単純計算ではTeam Prominenceの
場合、現在のモータを使用すれば太陽電池は必要なくなることになる。これでは
ソーラーカーの競技とは言いがたいと考える。
したがって、少なくとも4時間耐久では蓄電池搭載量を8時間耐久の半分以下
(40kg以下)とする検討も必要ではないだろうか。