SIMULIA - Dassault Systèmes

SIMULIA
Community News
2012 年 9 月 /10 月号
www.3ds.com/simulia
Caterpillar 社、FEA で
成功へと突き進む
SIMULIA
Community News
2012 年 9 月 /10 月号
www.3ds.com/simulia
特集
その他の記事
3 ごあいさつ
SIMULIA テクニカルマーケティング・シニアデレクター
Dale Berry
8 産業機器業界 アプリケーション
SIMULIA 産業 機器業 界 担当、シニア・テクニカル
マーケティング・スペシャリスト、Jack Cofer
4 Tenaris 社
油圧シリンダーの性能を掘り下げる
10 ケーススタディ
マツダ、スチール製車体の性能と軽量化を両立
14 プロダクトアップデート
SIMULIA V6R2013x の新機能
15 テクノロジーブリーフ
パイプラインの破断シミュレーション
16 ケーススタディ
6 MAN Diesel & Turbo 社
細部にまでこだわったエンジンの
リアリスティックシミュレーション
NSE Composites 社、エネルギー回収率を
12 パーセント向上させる設計案の検証
19 アライアンス
• NUMECA International 社
• Veryst Engineering 社
20 学術研究
• ノ ース カ ロ ラ イ ナ 大 学 シ ャ ー ロ ット 校 に よ る 、
耕作工具の摩耗シミュレーション
• アイルランド国立大学ゴールウェイ校による、XFEM
を用いた皮質骨の破壊モデリング
12 Caterpillar 社
22 Tips & Tricks
Abaqus/CAE の Assembled Fasteners ツールの使用法
FEA で成功へと突き進む
表紙: 製品開発&グローバル技術部門、
上級エンジニアリング・スペシャリスト、
Liqun Chi 氏
OCTOBER_SCN_Y12_VOL 2
産業&廃棄物グループ、
エンジニアリング・スペシャリスト、
Greg Zhang 氏
23 ニュースとイベント
• SIMULIA テクニカルサポートについて
• SIMULIA Community Conference のご案内
• Learning Community の内容について
• 新しい「お客様の声」ビデオ
発行元:
Dassault Systemes Simulia Corp.
Rising Sun Mills
166 Valley Street
Providence, RI 02909-2499
Tel. +1 401 276 4400
Fax. +1 401 276 4408
[email protected]
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編集長:
Karen Curtis
副編集長:
Rachel Callery
Tim Webb
寄稿者:
Liqun Chi and Greg Zhang
(Caterpillar),
Mihaela Cristea (Tenaris Dalmine),
Tore Lucht (MAN Diesel & Turbo),
Takehisa Kohira (Mazda),
DM Hoyt (NSE Composites),
Emer Feerick (National University of
Ireland Galway),
Gaurav Goel (UNC at Charlotte),
Pierre-Alain Hoffer (NUMECA
International S.A.),
Jorgen Bergstrom (Veryst
Engineering, LLC),
Parker Group,
Dale Berry, Jack Cofer,
Lori Bonynge, Jill DaPonte,
Lance Hill (SIMULIA)
グラフィックデザイナ:
Todd Sabelli
Dassault Systems K.K. SIMULIA 事業部
東京都港区海岸 3-18-1
ピアシティ芝浦ビル
Tel: 03-5442-6300
Fax: 03-5442-6259
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3DS ロゴ、CATIA、SOLIDWORKS,
SIMULIA, DELMIA, ENOVIA, GEOVIA,
EXALEAD, NETVIBES, 3DSWYM および
3DVIA は、Dassault Systèmes また
は、その子会社の商標または登録商標です。
その他の会社名、製品名およびサービス名
は、それぞれの所有者の商標またはサー
ビスマークです。
Copyright Dassault Systèmes, 2012.
ごあいさつ
産業機器のイノベーション
今2010 年 10 月号でした。それ以来、ダッソー・システムズのコミュニティにも、私個人にも、いろいろな
回、再びSIMULIA Community News(SCN)に寄稿できることを大変うれしく思います。前回は
出来事がありました。つい最近、私は長男を大学(父親似で同じ工学部)に入学させたのですが、我々親子
の体験を比較すると興味深いものがあります。状況はずいぶんと変わりました。
私の大学 1 年度は昔ながらの雰囲気でした。授業はとても広くて無機的な大教室で行われ、そこはビクビ
クした様子の新入生で溢れかえり、彼らの多くは最初の年を乗り切ることもできません。それでも、本読み、
クラスに通い、試験に合格さえすれば、それでオーケーでした。息子の体験はほとんど正反対です。大小さ
まざまグループの交流やプロジェクトが初年度からスタートします。協調的環境の中での個人学習が重要
なのです。Facebook、LinkedIn、Twitter などのオンラインツールは遊びのためだけではありません。それ
らは、授業の非常に速いペースに遅れずついていくためにも欠かせません。要するに、エンジニアは、初期
教育の段階からソーシャルコミュニティについて教わるのです。
SIMULIA では、グローバルコミュニティの皆様とも、アプリケーションやワークフローを共有することに同
様の興味を持つ小グループの皆様とも交流を深めたいと思っています。我々は以前からこうした努力を行っ
てきたのですが、その活動範囲はさらに拡大を続けています。我々は、従来からの直接面談、オンラインの
Learning Community サイト、お客様サポートサイト、そしてソーシャルメディアのそれぞれを有効に活用
するよう取り組んでいます。目標は、ユーザーコミュニティの全員と日常的に連絡を取り合うことであり、同
様に重要なこととして、メンバー同士の結び付きを手助けすることです。
我々は交流の手段を広げつつありますが、SIMULIA テクニカルマーケティンググループの役割が変わる
ことはありません。それはユーザーの皆様が、知識の獲得や意識の向上を通して、それぞれの業界におけ
るシミュレーションワークフローの価値を認識し最大化できるよう支援することです。
今回の SCN では、産業機器分野を特集しています。業種の多くは、その名前からすぐに理解できますが、
ここで産業機器業界を定義してみたいと思います。基本的に、産業機器業界には、他の企業によって購入
されるタイプの工業製品を製造している会社が含まれます。斜体で書いた部分が、産業機器業界と消費財
業界を明確に区別しています。後者は消費者によって購入されるタイプの製品を製造する会社が含まれま
す。産業機器としては、生産機械や器具(ポンプ、バルブ、パイプなど)、ターボ機械、農業・建設用の機器
や車両(コンバイン、モーターグレーダーなど)、ディーゼルエンジン、金属加工・成形用の機器、そして一般
産業機器(エレベーター、フォークリフトなど)が挙げられます。
弊社の産業機器コミュニティ活動の中心を務めるのは、テクニカルリーダーの Jack Cofer です(本誌 8
ページに記載の弊社アプリケーション戦略をご覧ください)。Jack は、この数年間、世界各地を広く旅して
きたので、皆様の中には SIMULIA ミーティングや学術会議あるいは皆様の社内で、すでにお会いになっ
た方も多いかと思います。
本誌のユーザー事例には、産業機器業界を構成するさまざまな企業の素晴らしい事例が紹介されていま
す。Caterpillar 社は自走式コンパクタと埋め立てごみの挙動を正確にモデル化し、Tenaris 社は Abaqus
FEA のき裂シミュレーションによって油圧シリンダーの性能を分析しています。また、MAN Diesel &
Turbo 社は溶接部の疲労設計に拡張有限要素法(XFEM)を活用しています。これら 3 社の事例は、産
業機器業界の多種多様なアプリケーションやワークフローを象徴しています。
皆 様には是非 、成 長を続け 活 気に満ちた弊 社グローバルコミュニティの活 発なメンバーになって
いただきたいと思います。オンラインの SI M U LI A Lea rning Community(https: //swym. 3ds .
com/#community:73/home)にまだ参加されていなければ、是非ともお試しください。同サイトは、チュー
トリアル、製品情報、興味深いブログ投稿などの素晴らしいリソースであり、皆様の専門ネットワーク
をさらに強化する手段の 1 つとなるはずです。オーストリア・ウィーンで開催予定の 2013 SIMULIA
Community Conference において、多くの皆様とお会いできることを楽しみにしております。
Dale Berry
テクニカルマーケティング、シニアディレクター
SIMULIA
SIMULIA Community News 2012 年 9 月 /10 月号
3
産業機器特集
ブーム、
アーム、および
バケットに油圧シリンダー
を備えた大型土木機械
時間とコストのかかる実物
大試験の回数を削減するこ
とが我々の目標です。
アーム
シリンダー
ブーム
シリンダー
Tenaris 社、研究員、Mihaela Cristea 氏
バケット
シリンダー
特に、変動荷重が疲労を誘発し、厳しい環境で
使用される(低温が破壊靱性を低下させるよう
な)油圧シリンダーにおいては、ハウジングは高
張力特性と疲労抵抗そして強靱性を兼ね備えな
ければいけません。これらの目標を達成するた
め、Tenaris 社は、靱性と強度を兼ね備えた冷
間引き抜き精密管の素材として、新たな高靱性
(HT)鋼を開発してきました。
内圧と外荷重の両方に耐えなけ
ればいけない新素材
Tenaris 社、Abaqus FEA の
き裂シミュレーションで
油圧シリンダーの性能を掘り下げる
熟
練 オペレータの手にかかれ ば、工事 現
場の土木 機械の作業は実に簡単そうで
す。ショベルが土を掘り起こしたり重量物を持
ち上げたりするときの滑らかな動きは、まった
く無理がないように見えます。しかしこうした
省力機 械も、骨と筋肉と腱からできている人
間の腕と同様に、多数の複 雑なパーツ類を完
全に同調して働かさなければいけないのです。
土木 機械の滑らかな動きを担っているのは、
ブーム、アーム、そしてバケットに取り付けられ
た一連の油圧シリンダーであり、それは油圧エ
ネルギーを力学的エネルギーに変 換するアク
チュエータの役割を果たします(同様の技 術
は、クレーン、プレス機、その他の産業機械にも
用いられています)。ピストンに動力を伝える加
圧された油で満たされたシリンダー胴体(ハウ
ジング)は、高サイクル疲労にも耐えうるように
設計されたシームレス鋼管でできています。
作業現場での危険性
しかし作業現場においては、オペレータミス、
ショベルに対する過負荷、破片の落下による衝
撃など、事故はつきものです。そのため、世界
中の土木建設機械メーカー(Caterpillar 社、
Volvo 社、LT Komatsu 社、Dong Yang 社な
ど)にシームレスパイプを供給している大手鋼
管メーカーの Tenaris 社も、そうした事故に備
4
えて多額の R&D 投資を行っています。Tenaris
社は、稼働時や環境上のさまざまな負荷がシ
リンダーの耐用年数に与える影響を調査し、そう
した極限状態にも耐えうるように材料設計を見
直しながら、毎年、世界中の何千人ものマシンオ
ペレータの安全に貢献しています。
世界 4 か所に設置された Tenaris 社 R&D セン
ターの 1 つ、イタリア・ダルミネ R&D センター
の構造保 全部門で研究員を務める Mihaela
Cristea 氏は次のように話しています。
「パイプが
破断するときの破壊モードと限界荷重を同定す
ることが特に重要です。我々の顧客である建機
メーカーは、何よりも高強度であることを期待し
ています。そのため、構造的な完全性と安全性
を保証する上で、破壊靱性が最も重要なパラメー
タとなります」
「破断」よりも望ましい「漏洩」
突 然の脆 性 破壊による被害を未 然に防ぐた
めに必要とされる「破断前漏洩」設計におい
ては、破壊靱性が重要な役割を果たします。
Cristea 氏は次のように説明しています。「ほと
んどの場合、いろいろな理由から延性破壊やき
裂発生の方が好ましいのです。何の前触れもな
く急に生じる脆性破壊と違って、延性材料は塑
性変形するので、破壊の進行が遅く、時間的余
裕が生まれます」
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通常稼働時に油圧シリンダーに生じる主要な
応力は、油の内圧によってもたらされます。こ
のとき、パイプの長手方向よりも周方向に大き
な応力(フープ応力)が生じます(長手方向の
応力はフープ応力の半分程度です)。そのため
Tenaris 社は、新素材の開発に際して、周方向
の降伏強度を最大化することを目指しました。
さらに彼らは、新素材が作業現場のさまざまな
予期せぬ応力にも耐えうることを証明しなけれ
ばいけません。「き裂発生の原因となり得る危
険な欠陥形状は、パイプの外表面に現れます」
と Cristea 氏は述べています。
製品の性能と品質を保証するため、ダルミネ
R&D センターでは、長年にわたって油圧シリン
ダー製品の大掛かりな実機試験を行ってきまし
た。この試験工程は、パイプ材料の詳細な機械
的特性評 価と破壊試験から開始されます。次
に、実物大のパイプ外表面に放電加工によって
人工欠陥が作成されます。さらに、さまざまな深
さの予き裂が与えられ、キャップが取り付けら
れ、そしてマイナス 20 ℃ まで冷やされます。最
後に、アルコールと水の混合液で加圧され(この
とき、アルミ製の埋め込み棒がパイプ内に挿入
されて、破裂時に高圧流体が過剰に吹き出さな
いように容積が減らされます)、そしてバースト
試験が実施されます。
ダルミネ R&D センターの研究員である Marco
Spinelli 氏は次のように話しています。「こうした
“作っては壊す”試験プログラムを通じて、我々
はコンポーネントの実挙動を模擬しながら、製
品性能について顧客に説明してきました。しか
し、この試験方法は複雑であり、非常にコスト
がかかります。我々は数値モデルを用いること
で、この実験結果を効果的に再現できないか、
さらに、コストも時間も削減できないか調査した
いと思いました」
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応力・構造解析から Abaqus FEA
による 3D き裂予測解析へ
彼らは実環境における詳細な実験データを多
数所有していたので、以前の実験で同定した材
料定義、ジオメトリ、き裂寸法、境界条件、破裂
圧力のデータを用いて非常に正確な FEA モデ
ルを作成することができました。関心があった
のは HT 材料でしたが、ソフトウェアが破壊を
どのように予測するかを確認するため、低靱性
材料モデルも調査対象とされました。Tenaris
社のチームは、3 D き裂モデリングについて
Abaqus の 2 通りの手法を試してみることにし
ました。それらは、Abaqus/Explicit の延性破
壊の機能と Abaqus/Standard の拡張有限要
素法(XFEM)の機能です。
Abaqus/Explicit では、パイプの対称性を利用
して 1/8 モデルを作成し、シミュレーション時間
を節減できることが分かりました。モデルの内
面にゼロから破裂圧力(1600 バール)まで徐々
に増大する圧力が負荷されました。き裂の発生
は、モデルの特定部分の塑性ひずみが以前の
バースト試験で決定された臨界値に到達したと
きに“要素削除”機能を利用することで模擬さ
れました。特定の要素が破壊基準を満たすと、
その要素はモデルから削除され、その後は間隙
となります。削除された要素の間隙部分がつな
がっていくことで、き裂形状が形成されます。
Abaqus/Explicit のシミュレーションは、初期
のき裂が開口するまでは静的な現象であり、そ
の後、解析は急激に動的な現象となります。実
験とまったく同様に、HT 鋼の場合は延性破壊
モード、低靱性鋼の場合は脆性破壊モードとい
う望ましい挙動を示しました。「実 験とシミュ
レーションを比較したところ、我々が調査した
ケースでは、破壊モードの予測に関して素晴ら
しい結果が得られました」と Cristea 氏は話し
ています。
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高靱性(HT)鋼のバースト試験とその Abaqus/Explicit モデル(左上下)、および低靱性鋼のバースト試験と
その Abaqus/Explicit モデル(右上下)
900
800
引張試験における実験結果
と Abaqus FEA(数値解析)
結果との強い相関性
700
真応力 [MPa]
そこでチームは、Abaqus 統合有限要素解析
(FEA)を用いて、彼らの破壊靱性試験のリア
リスティックシミュレーションを実施することに
しました。Spinelli 氏によれば、彼らはすでに
FEA に精通しており、溶接継ぎ手の応力解析
や複雑なコンポーネントの構造解析を実施して
いました。「Abaqus で利用可能な一連の機能
は、主にプリ・ポスト処理が優れていることか
ら、我々の R&D センターでも製品設計に広く
利用されています。我々は、新素材の性能のさ
らなる調査に必要なツールを手中にしていると
感じました」と彼は説明しています。
600
500
400
300
200
Experimental
tensile test
Numerical results
100
0
0
0.03
0.06
0.09
0.12
0.15
真ひずみ [mm/mm]
XFEM による先進のき裂
モデリング機能
一連の Abaqus/Explicit のモデリング課題
を終え、チームは XFEM を用いた最終テスト
ケースに取りかかりました。Abaqus Unified
FEA 製品に比較的最近追加された XFEM
は、現在 Abaqus/Standard で利用可能です
が、FEA モデルの要素境界を横切るような任
意経路に沿ったき裂伝播のシミュレーションを
可能にしています。き裂発生と伝搬経路が解に
依存しないことから、XFEM ではメッシュを
き裂に合わせる必要がなく、従って、き裂先端
付近でメッシュをそれほど細かくする必要もあ
りません。
す。シミュレーションによって、我々はコンポーネン
トの実稼働時の挙動に影響するさまざまな要因
を比較検討することや、実験結果をより迅速に
理解することが可能になりました。また、実験で
確認済みの反復的なケースに取り組む場合に、
FEA は結果を予測するための強力な代替ツール
となります」と Cristea 氏は話しています。
Cristea 氏は次のように述べています。
「XFEM
においても、延性損傷モジュールと同様の結
果が得られました。将来、XFEM の機能が
Abaqus/Explicit コードに実装されることで、こ
の手法はさらに発展していくことでしょう」
き裂予測に関する彼らの FEA 利用の研究は、
すでに Tenaris 社の R&D ワークフローに好
影響を与えています。「時間とコストのかかる実
物大試験の回数を削減することが我々の目標で
詳細をご覧ください
www.tenaris.com
www.3ds.com/SCN-October2012
SIMULIA Community News 2012 年 9 月 /10 月号
5
産業機器特集
細部にまでこだわった
エンジンのリアリスティック
シミュレーション
MAN Diesel & Turbo 社が溶接部の
疲労設計に Abaqus FEA と XFEM を活用
今
からちょうど 10 0 年前、世界 初の航洋
ディーゼル 船 セランディア号 が 処 女航
海に旅 立ちました。この船は、当時、技 術的
に大きな話題となりましたが、その船体とエン
ジンはどちらもデンマーク・コペンハーゲンの
Burmeister & Wain(B&W)社によって建造さ
れたものでした。
を引き起こしかねません。船舶用低速エンジン
事業部の R&D 部門で研究員を務める Tore
Lucht 氏は次のように話しています。「細かな溶
接部に至るまで、エンジンのあらゆる部分に対
して、疲労荷重に十分な安全余裕を持たせるよ
う設計し解析することが不可欠となります」
き裂のシミュレーション:溶接部
の疲労設計のための強力なツール
現在、B&W 社は世界に 12,000 名の従業員
を抱える MAN Diesel & Turbo グループの
一員であり、その船 舶用低速エンジン事業部
は今もコペンハーゲンにあります。同事業部は
B&W 社の伝統の技術力をフルに生かして、重
量 2800 メートルトン、高さ 16 メートルもある
新型エンジンを製造しています。このように巨大
なエンジンですから、ひとたび据え付けられる
と、その場で補修するしかありません。そしても
ちろん、できる限り補修頻度を減らすことが重
要です。
R&D 部門が複雑で巨大なエンジン構造の溶
接部の 1 つ 1 つに細心の注意を払うようになっ
たのは、船舶用低速ディーゼルエンジンの突合
せ溶接部にき裂が発生したことがきっかけでし
た。その溶接部は、二次の補償器(乗員を快適
に保つためにエンジン振 動を抑える大型の回
転部品)の表面にありました。この補償器は大
きな負荷や応力にも耐えるよう設計されていま
したが、き裂が発見されたのは、エンジンが供
用されてからたった 2 年後の、稼働時間として
13,000 時間、クランクシャフトの回転数として
は約 7,800 万回のときでした。
長く過酷な耐用期間を通じて信頼性と耐久性
を維持することが、船舶用エンジンにとって最
も重要です。これらのエンジンは、30 年以上に
渡り、約 100 RPM の一定速度で年間およそ
6,000 時間稼働できるよう設計されます。これ
は設計荷重サイクルとしては 10 億回に相当しま
す。こうした厳しい条件のもとでは、燃料の燃
焼力と可動部品の慣性力が高サイクル疲労破壊
全体モデルの一部
R&D 部門は、Abaqus 有限要素解析(FEA)
を用いて初期調査を行いました。「我々は数年
前に Abaqus に乗り換えたのですが、それは
Abaqus がエンジン構造のシミュレーションに
最適なツールだと分かったからです。我が社の
低速エンジンの構造解析は、すべて Abaqus を
切断図
溶接ギャップ
面
溶接部
図 2.左から右へ:補償器の全体モデルの断面、溶接ギャップの
切断図、および溶接のき裂を含む XFEM サブモデル
6
SIMULIA Community News 2012 年 9 月 /10 月号
き裂を含むサブモデル
ガイド
バー
図 1.船舶用ディーゼルエンジンの
切断モデル(2 つの調速機おもりを含む)
用いて実施されています」と Lucht 氏は話して
います。初期調査では、調速機おもりの遠心力
を受けるエンジンの一部分を取り出したモデル
が用いられました(図 1 参照)。遠心力の大き
さは、MAN B&W 5S60MC-C ディーゼルエン
ジンの 100 パーセント RPM 時の値である 16
メートルトンです。
エンジニアは、何十 年 にわたる実 稼 働 時 の
フィールドデータをもとに、これらの荷重のす
べてを正確にモデル化することができました。
Lucht 氏は次のように話しています。「我々の
エンジン解析は相当にリアルです。なぜなら、
我々は文献データ、測定データ、そして補修デー
タのベンチマーキングにかなりの力を注いでい
るからです」
最初のシミュレーションでは、溶接ルートの局
部応力レベルが妥当な設計限度を超えていまし
た。溶 接の設計を変更すれば、応力振幅を大
幅に低下させて問題を解決できたかもしれませ
ん。しかし、エンジニアはどうやってその改善策
が十分であると確信できるでしょうか?「明らか
に、補修法や将来のエンジンに適した溶接法を
決定するには、さらなる調査が必要でした」と
Lucht 氏は話しています。
国際溶接学会(IIW)は溶接部の解析に 3 種類
の方法を推奨しています。それらは、ホットスポッ
ト応力法、有効切欠き応力法、そしてもう 1 つは
破壊力学による方法です。最初の方法では、ホッ
トスポット位置の応力を溶接形式ごとの疲労強
度(FAT)等級と比較することによって評価し
ます。有効切欠き応力法では、溶接止端と溶接
ルートの両方の応力レベルを算定し、それぞれを
特別な FAT 等級と比較します。破壊力学による
方法では、線形弾性破壊力学(LEFM)理論を
用いることで、あらゆる部分の典型的な溶接欠
陥のシミュレーションが可能です。
過去の研究プロジェクトと経験から、R&D 部
門の解析者は、モデルの準備に手間はかかって
も LEFM 法が最も正確な回答を与えるだろう
と判断しました。「き裂解析用のメッシングは、
き裂前縁に沿って特殊なメッシュを必要とする
ため、非常に手間がかかります」と Lucht 氏は
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話しています。そこで彼らは Abaqus の拡張有
限要素法(XFEM)技術を用いることにしまし
た。これによって、き裂が要素境界に従わない
場合でも破壊の検討が可能なエンリッチ環境
が実現され、モデリング時間を大幅に削減でき
ます。Lucht 氏は次のように付け加えています。
「我々はすでに Abaqus 用の詳細なエンジン
モデルを開発していたので、作業時間をさらに
短縮することができました」
エンジニアは、き裂領域の XFEM サブモデル
を非常に細かなメッシュで作成しました。「4 階
建てエンジンに生じる数ミリメートルのき裂の
調査では、該当領域でメッシュの細分化が必須
です。サブモデリング法を採用することで、モデ
リングの時間と労力を大幅に削減できます」と
Lucht 氏は話しています。
き裂に対して最も厳しい動的負荷をモデル化す
るため、エンジニアはき裂定義に接触を含めな
いで、溶接ギャップを残したままにしました。こう
したギャップは、溶接加工に伴う残留応力や被
溶接パーツ間のわずかなズレによって生じます。
当初の設計案に対して応力を計算した後、エン
ジニアは、エンジンの補修用に提案された溶接
形状と、将来の新型エンジンの溶接形状に対し
ても同様の解析を実施しました。
残留応力と溶接工程のモデリング
補修が十分な強度を有することを確認するた
め、最後に荷重チェックが必要でした。それは、
溶接工程そのものによって生じる残留応力状態
のチェックです。この応力は他の LFEM 計算
では考慮されなかったのですが、溶接の最終強
度を変化させる可能性があります。
溶接部の残留応力を算定するため、R&D 部
門は、以前にデンマーク工科大学との研究プ
ロジェクトで開発された Abaqus 用の溶接
シミュレーションツールを使用しました。この
ツールは、溶加材、内部発熱、および表面熱
流束による移動熱源のシミュレーションに特
別なモデリング指針を与えるものです。このシ
ミュレーションでは、溶加材が徐々に追加され
る様子を、その融点よりも高い温度が割り当て
られた溶加材に相当する要素で表現します。
これらの要素は、所定の温度、内部発熱、お
よび表面熱流束の値を持つグループとして、
「モデル変更」コマンドでアクティブにされま
す。新しいグループは、伝熱に従って冷却さ
れる旧グループと同様に、後続のステップで
自動的にアクティブにされます。「溶接移動
熱源のリアリスティックシミュレーションは、
この種のシミュレーションで鍵となるもので
す。溶接の順序、熱量、熱流束などのアクティ
ブパラメータを調整することで、中性子回折
法などの測定法を用いた実験結果との比較を
もとに高レベルの検証を行うことができまし
た」と Lucht 氏は話しています。
今回のシミュレーションは、エンジニアがエン
ジンに追加の支持構造を溶接した時の結果を
見るのに役立ちました。このようにして、既存
エンジン構造の変形量と、き裂前縁付近の残
留応力場の大きさが予測されました。解析で
は、溶加材は 3 本のストリングビードで溶接さ
れるものと仮定され、モデルの側面に沿った
溶接がシミュレーションされました。そこは、き
初期ステップ 0
初期ステップ 1
20°C
2500°C
ステップ (
2 熱ステップ 1)
ステップ (
3 熱ステップ 2)
ステップ (
6 熱ステップ 5)
最新の MAN B&W 2 サイクルディーゼル
エンジン
裂の開閉を引き起こすような危険な溶接欠陥部
が残留応力の垂直方向に発生する場所です。
これらの最終シミュレーション結果から、エンジ
ニアは残留応力場とき裂シミュレーションを関
連付けることで、現実に即した疲労評価を行う
ことができました。予想したとおり、溶接止端で
大きな引張残留応力が残っていましたが、溶接
ルートでは応力レベルはゼロに近い値でした。
それは、新しい溶接設計では、問題となる溶接
ルート部の応力拡大係数の評価に、残留応力が
あまり影響しないことを意味していました。
Lucht 氏は次のように指摘しています。「たとえ
そうであっても、溶接止端にピーニング処理の
ような対策を施すことによって、大きな引張応
力が疲労破壊の安全余裕に及ぼす影響を制限
することは良いことだと思います。そうすれば、
補修時に新たな問題を引き起こすこともないで
しょう」
解析結果:順風満帆に進む
リアリスティックシミュレーションによって、なぜ
当初の設計案があのような結果になったのかが
明らかになり、新しい設計案が推奨される限界
曲線内に安全に収まることが確認されました。
また、溶接ルートで引張応力の生じないことが
分かり、新設計案の健全性が証明されました。
「このように、溶 接工程のシミュレーションと
XFEM による溶接欠陥の破壊力学的評価を
組み合わせることで、複雑な溶接構造物の構造
的完全性を評価するための強力なツールとなり
ます。今回の解析では、既存エンジンの補修と
将来のエンジンへの適用の両方において、我々
の新しい溶接法が安全であることを証明できま
した」と Lucht 氏は話しています。
詳細をご覧ください
図 3.Abaqus による溶接工程の段階的シミュレーション
(熱源が徐々に移動するに従って溶加材が
追加される)
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www.mandieselturbo.com
www.3ds.com/SCN-October2012
SIMULIA Community News 2012 年 9 月 /10 月号
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産業機器アプリケーション
リアリスティックシミュレーション
によるイノベーションの追求
SIMULIA 産業機器業界担当、シニアテクニカルマーケティング・スペシャリスト、Jack Cofer
人
類が初めて石を手にして木の
実を割り、やがて木の棒を取
り付けて斧を造った石器時代のこ
ろから、我々は常により高度な道
具を生み出し活用することで、生
活の質を向上させてきました。21
世紀の今、産業機器業界の中心に
あるのも、こうしたイノベーション
に対 する飽くなき探 究 心です。
ますます競争の激化するグローバル市場におい
て、産業機器や工業生産設備のメーカー各社は、
コストの削減、開発・製造サイクルの短縮、製品
の寿命および性能の改善といったさまざまな課
題に直面しています。同時に彼らは、安全、信頼、
環境、そしてサービスに対する厳しい要求にもさ
らされています。
直面してきたものです。当時の機械は水車が動
産業機器の定義
力源であり、商品は荷馬車や帆船で市場に運ば
産業機器業界は、さまざまな機械装置を広く扱っ
れていました。そして、機織り機、穀物の刈り取
ています。こうした幅広い業界に最良のサービ
り機、製紙機械などの工場主が互いに激しく競
スを提供できるよう、我々ダッソー・システムズ
い合っていました。革新的なアイデアは、しばし
(3DS)は、この業界を 5 つの主要セグメントに分
ば発明家に大きな経済的報酬をもたらしました。
類しています。
彼らは工程を飛躍的に改善することや、機械を
いち早く市場に投入することに成功したのです。
1. 産業用製造機械には、機械加工、包装、溶
接、金属加工、繊維、製紙、さらには石油ガ
ベッセマー製鋼法や大量生産方式(いわゆるア
ス探査などさまざまな業界に向けた、受注生
メリカ型生産方式)の導入と、流通における鉄
産型の製造・組み立て機械が含まれます。
道と蒸気船の発達に伴い 1860 年代に始まった
2.移動重機械器具には、農業機械、フォークリ
第二次産業革命は、これらの課題をさらに複
フト車、建設機械、鉱山機械などの自走式
雑化させ、技術革新の必要性を加速させました。
機械が含まれます。
そして今日、より高速かつ大型化し、より精密か
3.固定設備は、クレーン、コンベヤー、エレベー
つ複雑化した機械類とともに国際競争が進行す
ター、エスカレーターなど、人や物を運 搬・
る中、21 世紀の課題は、新技術、新手法、そして
輸送するための機械です。
新経営方式を大胆に採用し実施していくことを
4.工業設備製品は、機械式動力装置、加熱・
要求しています。
冷却装置、燃焼・乾燥炉、バルブおよび流
こうした課題は、1700 年代半ばにイギリスで第
一次産業革命が起きて以来、製造業が変わらず
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SIMULIA Community News 2012 年 9 月 /10 月号
体動力装置、各種のゴム・プラスチック製品
など、大型機械のコンポーネントやサブシス
テムとなる機械であり、航空機エンジンを除
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いて、すべてのターボ機械と、船舶推進や発
電用の大型ディーゼル/ガソリンエンジンは
このカテゴリに属します。
5.組立金属製品には、金属成型・プレス製品
や、ボルト、ナット、ネジ、板金、バネ、ワイヤ、
その他の構造用金属加工品など、他の 4 つ
のセグメントに属する機械の締結に必要な
ほとんどの製品が含まれます。
下で)最適な設計パラメータを特定するために
用いられます。このツールセットによって、ユー
ザーは設計プロセスの早い段階から最良のオ
プションに基づいて行動し、コストのかかる試
作実験に至る前に不具合を発見し解決できる
ようになります。
また Simulation Lifecycle Ma nagement
産業機器の特徴は、機械そのものだけでなく、 (SLM)は、小規模作業グループや広域企業の
その設計工程も非常に複雑な点です。上に掲げ
ユーザーが、迅速かつ協調的な意思決定のた
た機械類の多くは、何千ものパーツを含んだ大
めにシミュレーション IP を収集し共有・管理す
型のアセンブリで構成されています。それらは、 ることを可能にします。このようにして、彼らは
流体力学、空気力学、熱力学、機械的応力・ひ
設計上の意思決定を加速し、より迅速に製品を
ずみ、材料・金属学、電磁気学、接触/摩擦、破
市場に投入できるようになるのです。
壊/破損、そして疲労寿命分析など、さまざまな
これらのアプリケーションを統合すれば、仮想
分野にまたがった複 雑な多領域の設計プロセ
スを必要とします。これらの機械は、製錬、鍛造、 設計や仮想試験といったバーチャル環境下で
検証と妥当性確認を実施するパラダイムシフト
鋳造、プレス、溶接、切断、圧延、成型、押し出
が 促 進されます。我々は、物理学に基づくロ
しなど、さまざまな種類の製造工程や製造技術
バストで高精度なシミュレーション、設計探索
で使用されます。
の自動化、実物試験の較正、シミュレーション
データ管理など、さまざまな機能を組み合わせ
仮想試験と寿命予測
ることによって、皆様が機械製品の試作実験を
SIMULIA の使命は、ダッソー・システムズの
大幅に削減できるような、仮想試験と寿命予測
3D エクスペリエンス・プラットフォームの一部と
のためのバーチャル環境を提供しています。こう
して、お客様各社が自社の製品や製造プロセス
したパラダイムシフトは、最初、航空宇宙業界と
の実環境における挙動を探索し理解し改善でき
自動車業界で確立されましたが、今では、これ
るようにするため、ロバストでハイパフォーマンス
を産業機器メーカーの実践的アプローチとする
な包括的マルチフィジックス・アプリケーション
ためのさまざまな技術や手法が利用可能となり、
を提供することです。
成熟の段階を迎えています。バーチャル環境で
弊社の Abaqus 製品群は、非線形応力解析、流
試験と寿命予測を行うことによって、エンジニア
体-構造連成解析、動的振動解析、マルチボディ
リングと製造のための時間とコストが大幅に削
システム解析、接触解析、伝熱連成解析など、日
減され、機械製品の性能と信頼性は劇的に改
常的なものから最先端のものまで産業界のあ
善されます。
らゆるアプリケーションをカバーする、工学問
題のための強力な解析技術を提供しています。 イノベーションを推進する技術の
Abaqus のソルバー技術は、産業機器などの仮
応用
想試験と寿命予測のため、ダッソー・システムズ
この SIMULIA Community News には、リ
の 3D エクスペリエンス・プラットフォームに統合
アリスティックシミュレーションを適用すること
されつつある次世代シミュレーションツールの中
で、試作実験を削減し、信頼性を向上させ、イ
核を成します。Abaqus の最新リリースでは、最
ノベーションを加速させたさまざまなユーザー
近の破壊および 破損分野の技術進歩を取り入
事例が詳しく紹介されています。もう 1 つの
れて、拡張有限要素法(XFEM)技術を活用し、 優れた産業機器の事例は、2012 SIMULIA
機械の破壊および破損をより適切に予測します。
Community Conference において A BB
我々はまた、Safe Technology 社などの主要なソ
Turbo Systems 社が発表した「Isight を用い
フトウェアパートナーと協力し、疲労寿命予測を
たスラストつば 軸受けの設計 最適化」という
効率化する Abaqus 用の fe-safe アドオンのよう
タイトルの論文にも見られます。この論文には、
な関連ソリューションも提供しています。
Isight と Abaqus を用いて、さまざまな稼働条
Isight と SIMULIA Execution Engine(SEE)
は、複数の異なる分野にまたがったモデルやア
プリケーションを 1 つのシミュレーションプロ
セスフローに統合し、それらを分 散コンピュー
ティング環境で自動実行し、結果として得られ
た設計空間を探索し、そして(所定の制約条件
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件のもとで大型の産業用ターボチャージャーの
スラストつば軸受けのアセンブリ形状を最適化
した事例が記載されています。Isight によって、
同社の厳しい要件をすべて満たす「大満足」
の設計が実現されただけでなく、「まったく新
しい設計を受け入れる柔軟性と、エンジニアの
創造性の支援」といった付加的効果も得られま
した。
我々がさらに技術力を高める上で鍵となるのは、
産業機器ユーザーの皆様との密接な協力関係
です。我々との直接対話、オンラインコミュニティ、
あるいは弊社のワールドワイドおよび地域別ユー
ザーミーティングを通じて、皆様の改善要求をお
聞きするとともに、業界のニーズに一層応えてい
くため開発の優先度についても検討してまいり
ます。グローバル市場において皆様を成功に導
く、革新的で費用対効果の高い産業機械製品を
より迅速に設計できますよう、皆様と協力して業
界のシミュレーション要件に対する理解を深め
ていきたいと思っております。
Jack Cofer 略歴
Jack は、産業機器業界に向
けた SIMULIA 戦略の策定
および運営を担当しています。
彼は、ターボ機 械の設 計と
最適化に 35 年以上の経験
を持っています。それは GE Power Generation
社、Demag Delaval Turbomachinery 社、およ
び Engineous Software 社での設計職や管理職
を通じて培われたものです。彼はバージニア大学
において理学士号、マサチューセッツ工科大学に
おいて理学修士号、そしてノースイースタン大学
において工学修士号を取得しています。
詳細をご覧ください
www.3ds.com/SCN-October2012
SIMULIA Community News 2012 年 9 月 /10 月号
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ケーススタディ
マツダ、スチール製車体の性能と
軽量化を両立
最適化技術は、重量削減と性
能向上をいかに両立させるか
という問題の解決にとって
不可欠です。
Isight が複雑な CAE 最適化検討の
効率化と自動化に貢献
マツダ株式会社、テクニカルスペシャリスト、
小平剛央氏
組み合わ せを突き止めることでした。チーム
は、Abaqus、L S -DY NA、Nastran などさま
ざまな CAE ツールを用いて、そうした多領域
にまたがる車体の全体 挙動をモデル化しまし
た。「CA E は、設 計 の改善、分析 精度の向
上、そして試作品の削減に役立っています」と小
平氏は述べています。Abaqus の有限要素解
析(FEA)は、車両開発において、車体コンポー
ネントの強度と耐久性、そしてパワートレインコン
ポーネントの熱応力の評 価に使用されました。
軽量化に向けた設計最適化の調査は、Mazda
CX-5 に焦点を合わせたものでした。
ス
チ ールは、自 動 車 の 進 歩 に 歩 調を合 わ
せながら、1 世紀以上わたり車体の主要
材料としての地位を保ち続けてきました。耐
食性の向上、機械的性質のさらなる改 良、高
強 度 化 、そして最 新 の 製 造 技 術 が、平 均 的
な車両の材料 構成 比という意 味で、スチール
を 常 にトップの 座 に 置 いてきまし た 。そ れ
は今日、重 量 比として 約 6 0 % に 上ります。
ある小平剛央氏は次のように話しています。「最
適化技術は、重量削減と性能向上をいかに両立
させるかという問題の解決にとって不可欠です」
チ ームの目標 は、C X- 5 の車体 上 部 構 造 に
対する 4 つの性能(剛性、N VH 特性、耐久
性、衝突安全性)の目標値を満足しつつ、その
スチール部品の最も軽 量なゲージ(板 厚)の
しかし、車重は燃費に大きな影 響を与えるた
め、軽量化は自動車メーカーにとって常に最大
の関心事となっています。アルミニウム、マグネ
シウム、複合材など他の材料も、これまでスチー
ル製だったパーツの代 替素材として徐々に検
討されるようになりました。スチールの実績ある
信頼性を考えると、ここしばらくは車体の主要
材料であり続けると思われますが、自動車メー
カーにおいては、現在、スチール製車体を軽量
化するための方策は限界に近づいています。彼
らは、そうした中でもさらなる理 解と向上を目
指して、設計を最適化し、顧客が求める品質を
実現し、厳しさを増す燃費目標や排ガス基 準
そして衝突試験の規制をコスト効率よく満たす
ために、最新のコンピュータ支援エンジニアリン
グ(CAE)ツールに目を向けるようになりました。
マツダ 株 式会 社(日本・広島)の車両開発 部
と技術研究所は、最近の共同研究で、同社の
CX-5 モデルをベースとしたスチール製車体構
造のための複合領域最適化(MDO)手法を開
発しました。マツダのテクニカルスペシャリストで
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SIMULIA Community News 2012 年 9 月 /10 月号
定式化
最 初に、4 つの目標 領 域 の そ れぞ れ につい
て車体 挙 動を 最 適 化し 、次に、それら“ベス
ト”な特 性のすべてを可能な限り軽 量なレベ
ルにまとめて最 終 設 計 案とする、という包 括
的な解 析システムを構 築する必 要があります
が、これは非常に複 雑な解 析課題と言えます。
検討すべき目標性能のうち、剛性(静剛性・動
剛 性 )は 主に 線 形 計 算 に 基 づきます。一方、
N V H 解 析は、骨格部品の物理的相互作用と
車体 の 全 体 振 動の両方を考慮した複 雑なマ
ルチフィジックス問題を伴います。衝突安全性
は、それが 前面・後面衝突なのか 側面衝突な
目的関数
制約条件
設計変数
実験計画法
剛性
(最適ラテン超方格法)
NVH
耐久性
衝突安全性
左図:Mazda CX-5 車体側面の骨格
アセンブリ部分に対する初期の解析結果。多
数の挙動変数に対し性能を
最適することによって得られた
重量減少部位(白ラベル)と
重量増加部位(ピンクラベル)を示している。
近似モデル
(放射基底関数(RBF)/応答曲面モデル)
複合領域最適化
(遺伝的アルゴリズム/非線形計画法)
更新
近似モデル
収束?
最適化結果の分析
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のかによって、異なる度合いの非線形性を示す
ため、最も複 雑な解析となります。小平氏は次
のように話しています。「側面衝突解 析は曲げ
座 屈のみが関係するため、近似モデルでも予
測可能です。しかし、前面衝突と後面衝突で
は、多数の部品が曲げ座屈と軸圧縮の両方を
示すため、非線形性の度合いが強く、性能対
重 量の最 適化はとりわけ複 雑な解 析でした」
すべてのデータを“ベストパフォーマンス”を発
揮する車体設計としてまとめ上げるため、チー
ムは最初、さまざまな実 験 計画法(D OE)技
術と近似モデルを利用して、異なる挙動間のト
レードオフ検 討を手 作 業で実 施しました。車
体の各性能目標を制約条件とし、設計変数に
は各車体部品の板 厚が選ばれました。「我々
の最終目標は、常に車体重量を最小化するこ
とで す。しかし、手 作 業 で データを編 集し比
較 検 討していては、目標を達成するのに時間
がかかりすぎます」と小平氏は話しています。
そこでチームは、Isight を用いてプロセスの自
動化と設計探索を行うことにしました。小平氏
は次のように話しています。「いったん Isight を
使い始めると、DOE 検討後の設計案の限界が
ずっと理解しやすくなり、我々は容易に判断を下
せるようになりました。設計空間をより明確に把
握でき、結果も分かりやすく可視化できました」
I s i g h t に よって、エ ン ジニア は す べ ての
C A E ソフトウェアを専 用の“ドラッグ&ド
ロップ ”ワークフローに統合し、性能トレード
オフ手 順 の すべ てを自 動 実 行 できるように
なりました。「I s ig ht を用いることで、設 計
この複合領域最適化(MDO)
フローチャートは、複数の重要性能特性を保持しつつ、軽量な車体設計を
導くことの設計問題の複雑さを示している。
者 のアイデ アの 確 認 と数 値 的 検 証 が 可 能
になり、設 計 案 の 妥 当 性 に自信 を持 てるよ
うになりました」と 小 平 氏 は 述 べ て います。
車体の最適化問題に Isight を適用したこと
による 興 味 深 い 結 果 の 1 つは、車 体 全 体
性 能 の 相 対 的 な 重 要 性 に 基 づ いて 車 体 部
品を分 類できたことです。「最 適化プロセス
の 過 程で、ほとんどの場 合、性 能にあまり寄
与しない部品の板 厚を薄くできました。一方
で、性能に大きく寄与するパーツの中には、厚
く重くすべきものもありました。Isight による
最 適 化を 通じて、我 々は 総 重 量を削 減しつ
つ、これら対立する要 件 のバランスを取るこ
とができたのです」と小平氏は話しています。
その結果、チームは CX- 5 の以前の設計案か
ら 3.4 パーセント重量を削減するというゴール
に到達できました。彼らの多領域にわたる設計
最適化手順は、現在、マツダの SKYACTI VBODY 技術の開発プログラムで利用されてい
ます。これは、車体とシャーシーの軽量化と並
行してエンジンとトランスミッションを開発するこ
とで、車両の燃費性能の向上を目指すものです。
マツダチームは、今後、彼らの開発した Isight
による自動化 MDO 解析システムを、アルミニ
ウムや CFRP(炭素繊維強化プラスチック)な
どの材料にも適 応させていく予定です。小平
氏は次のように話しています。「現時点で、我々
はほぼ限界近くまでスチール設計を洗 練させ
たと思います。将 来の設 計では、スチール以
外 のさまざ まな 材 料 の比 率も 増えてくるで
しょう。しかし 我々の 手 元には、さらに複 雑
な 問 題 にも対 処できる 技 術 が あるので す」
重量減少
重量増加
−1.43kg
等級: 780 ⇒ 980MPa
−0.75kg
等級: 590 ⇒ 780MPa
+0.07kg
等級: 780 ⇒ 780MPa
−0.13kg
等級: 590 ⇒ 780MPa
+0.50kg
−0.04kg
−0.04kg
Fr
on
t
+0.10kg
等級: 980 ⇒ 980MPa
−0.30kg
−0.22kg
等級: 590 ⇒ 980MPa
+0.05kg
+0.16kg
−0.94kg
+0.11kg
−0.65kg
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プロセス自動化と設計最適化のためのソフトウェア
Isight によって、
マツダは自動化されたワークフロー
の中で MDO 問題の設定が可能になり、解析のセッ
トアップと実行時間を大幅に削減できた。
詳細をご覧ください
www.mazda.com
SIMULIA Community News 2012 年 9 月 /10 月号
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カバーストーリー
Caterpillar 社、FEA で
成功へと突き進む
Abaqus FEA が自走式コンパクタと
埋め立てごみの挙動を
正確にモデル化
Caterpillar 社の Cat® ランドフィルコンパクタ。強力な締固め力と牽引力を発揮する特許取得のドラムチップが見える。
有
史以来、人類はものを捨て続けてきました。
そして文明が発達するにつれて、ごみの山
も膨れ上がりました。今日、ごみ処理は単に収集
だけの問題ではありません。それは、あらゆる廃
棄物をできる限り安全に効率的な方法で処理す
ることが求められる、大規模かつ最先端のビジ
ネスなのです。
埋め立て地のごみ圧縮が重要課題となっていま
す。Caterpillar 社産業&廃棄物グループのエン
ジニアリング・スペシャリストである Greg Zhang
氏は次のように話しています。「埋め立て作業で、
最も重要な工程の 1 つはごみの圧縮です。それ
は、ごみの容積を減らし、埋め立て地の耐用年
数を延ばして、用地の収益性を高めます」
Caterpillar 社は数種類のランドフィルコンパク
タを製造しています。それは、蒸気ローラーとブ
ルドーザを組み合わせたような姿をした数十トン
もある巨大な機械です。この巨大機械には、接
地性を向上させて強力な締固め力と牽引力を生
み出す特許取得済みのチップ技術が盛り込まれ
た、スチール製の大型ドラムが装着されています。
コンパクタは、使用される現場の状況に合わせ
て調整されなければいけません。廃棄物は皆同
12
Abaqus は機械と地面の相互
作用をシミュレーションでき
る強力なツールです。
Caterpillar 社、産業&廃棄物グループ、エンジ
ニアリング・スペシャリスト、Greg Zhang 氏
じではないからです。例えば中国本土では、北米
や西欧の工業地域に比べて、埋め立てごみに多
くの食物や有機物が混入しており、含水量の高
いことが特徴です。「廃棄物の違いによって、圧
縮率とせん断強度に大きな差が生まれます。そ
のため、多くの場合、我々は地域に合わせてドラ
ムその他の特性を変更しています」と Zhang 氏
は述べています。
コンパクタの設計を個々の環境に合わせて適切
に調整するため、Caterpillar 社は Abaqus 有
限要素解析(FEA)を利用してきました。
FEA に本格的に取り組む
“Caterpillar 社製品開発&グローバル技術
部門の上 級エンジニアリング・スペシャリスト
である Liqun Chi 氏は次のように話します。
SIMULIA Community News 2012 年 9 月 /10 月号
「Caterpillar 社が FEA を使い始める以前、
エンジニアは基本的に経験を頼りに、図面か
ら新型コンパクタを設計していました」「そうし
たやり方は、パラメータがある範囲内にあると
きはうまくいきましたが、現行の製品ラインより
も大型あるいは小型の機械を作る場合など、
パラメータが範囲を超えると、スケールの問題
にぶつかっていました」。結果として、製品開
発サイクルが終盤にさしかかった頃に、コンパ
クタの実機試験を経てコストのかかる再設計
を行うことになります。「概念段階から設計案
を解析する方がずっと理に適っていました」と
Chi 氏は話しています。
最初にエンジニアがシミュレーションを始めた
とき、彼らの Abaqus モデルはかなりシンプル
なものでした。それは平らな地形を変形させる
だけの何の特徴もないドラムでした。軟らかな
廃棄物を表現するため、修正された可壊発泡
モデルが用いられました。この材料モデルは、
体積硬化を伴う弾塑性条件を含んでおり、締
固め力とスプリングバックの両方を捕捉するこ
とができたからです。廃棄物は多層にモデル化
されました。コンパクタのドラムを廃棄物上に
数回(前後に)通過させて、結果として得られ
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た締固め力が実際のフィールドデータと比較され
ました。この解析では、典型的な傾斜地を走行
するドラムのシミュレーションも行われました。
締固め力のシミュレーション結果はフィールド
データと良く相関していましたが、エンジニアは
もっと他の情報も入手したいと思いました。「平
滑なドラムのモデルは、実機試験よりも低い車輪
トルクを示していました」と Chi 氏は述べていま
す。さらに、解析では車輪設計の細部(チップの
形状、数、配置など)の影響も考慮されていませ
んでした。
これらの特性を追加するため、エンジニアリン
グチームは、アジア市場向け SEM6020 コン
パクタのチップ付きドラムのモデルを作成し、
異なる解析法を試してみました。それは、要素
の歪みをコントロールできる ALE(Arbitrary
Lagrangian Eulerian)法です。
しかし、この解析では、メッシュ内の要素の変
形が課題として残りました。Zhang 氏は次のよ
うに話しています。「最初のドラム通過時の挙動
は正確に捕捉できたのですが、変形によって、そ
の後の通過のシミュレーションが不能になりまし
た。また、穏やかな傾斜と比較的小さな車輪ス
リップのときに限りうまくいきました」。そこで解
析者は別の方法を探すことにしました。
彼らが最後に選択したのは、連成オイラー・ラグ
ランジュ(CEL)解析でした。今回、エンジニア
はドラムの通過ごとに 2 つの異なるシミュレー
ションステップとしました。ラグランジュ段階で
Abaqus の連成オイラー・ラグランジュ
(CEL)解析によって、
エンジニアは締固め力を正確にモデル化できるようになり、
車輪のトルク、
トラクション係数、回転半径、
そして転がり抵抗の決定にも役立ちました。
は、要素は締め固められた材料内に一時的に固
定され、その変形が記録されます。オイラー段階
では、変形が維持されたまま、著しく歪んだ要
素が自動的にリメッシュされます。「今度は、複
数回のドラムの通過を正確にモデル化すること
ができました」と Chi 氏は話しています。
素晴らしい成果
CEL 法では、以前 ALE モデルで経験したよ
うな要素の歪み問題が解消されました。チーム
平滑なドラムがごみを締固めるときの Abaqus による
シミュレーション。埋め立て地は、
ごみの材料特性をリアルに
捕捉する可壊発泡モデルでモデル化されました。
は、締固めドラムの複数回の通過を、詳細なチッ
プ形状を含めた状態でもシミュレーションでき
るようになり、実機試験と比較しても、ドラムと
埋め立てごみの両方の挙動を正確に予測できた
のです。「Abaqus は機械と地面の相互作用を
シミュレーションできる強力なツールです。我々
は、パワートレインや車輪グループなど他の製品
開発チームにも、トルク、トラクション係数、回転
半径、転がり抵抗などの有益なデータを渡すこ
とができました」と Zhang 氏は述べています。
これらのデータは、あらゆる大きさのコンパクタ
がどのような環境においても要求通り機能する
ことを保証し、生産性から燃料消費量まで、さま
ざまな測定値を改善させています。Zhang 氏は
「我々は現在、すべての全地形対応型ローダー
に対して Abaqus の CEL を利用しています。そ
れは、機械の設計にもドラムチップの設計にも役
立っています」と話しています。現在は、人気の
高いアメリカモデル 836 など、中国と米国仕様
のランドフィルコンパクタ製品シリーズに対して
解析が行われています。
Zhang 氏は次のように話しています。
「我々は、こ
のモデルのメッシュを、建設業界向けのソイルコン
パクタや振動コンパクタなど、他の機械の解析に
も流用しています。これらの機器のモデリングで
は、もう少し細かいメッシュが必要となりますが、
解析では、ランドフィルコンパクタのシミュレー
ションに匹敵する効果が得られるはずです」
詳細をご覧ください
www.caterpillar.com
www.3ds.com/SCN-October2012
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プロダクトアップデート
SIMULIA V62013x における主要な機能拡張
S
IMULIA は V6R2013x リリースにおいて、
ExSight、DesignSight、および Simulation
Lifecycle Management(SLM)製品シリーズと
CATIA V6 アナリシス製品群に対する機能拡
張など、数々の新機能を提供しています。
ExSight では、結果の可視化時に選択
したコンポーネントのマテリアルレンダ
リングが可能になり、
リアルな表現の結
果イメージが得られます。
ExSight は、V6 プラットフォーム上で高度な非
線形有限要素解析(FEA)とマルチフィジック
ス・シミュレーションを可能にする専門家レベ
ルの製品シリーズです。ExSight は Abaqus の
FEA 技術を活用して、解析専門家向けにモデ
リング、メッシング、シミュレーション、および結果
の可視化のための高度な機能を提供しています。
DesignSight では、
アセンブリ内のコ
ンポーネント同士の接触をモデル化する
ことで、パーツ間で荷重が伝達される様
子を正確にシミュレーションできます。
V6R2013x リリースでは、ExSight にモデリン
グと可視化に関するいくつかの新機能が追加さ
れました。はり要素は、航空宇宙や海洋構造物
の分野でさまざまに応用されていますが、このリ
リースでサポートされ、ユーザーが独自のはり断
面を定義することも可能です。また、複合材構造
をモデル化する場合、より正確な結果を与える
連続体シェル要素が利用可能になりました。パ
ワートレインの解析用に、ガスケット要素も提供
されています。このリリースに追加された解析機
能としては、振動騒音分野や不安定構造物の座
屈問題に用いられるモードベースの線形動的解
析があります。また、リモートコンピューティング
資源の活用による可視化の性能向上、シミュレー
ション結果に周辺アセンブリをあわせて表示す
る機能など、結果の可視化のための画期的な機
能も追加されています。
SLM 製品シリーズの Scenario Definition
(SCD)では、ユーザーはシミュレーション
内の既存ジオメトリと要件データや、シミ
ュレーション結果を参照できるようにな
り、製品設計と検証のプロセスを通じたデ
ータのシームレスな流れが保証されます。
DesignSight により、製造業のユーザーは設
計段階で製品性能をリアルに評価できるように
なります。V6R2013x には、新しいタイプの荷重・
拘束条件や相互作用を定義するための機能強
化が多数含まれています。
この最新リリースでは、使いやすいユーザーイン
ターフェースを備えたリアルな伝熱と構造接触
の連成 解 析機能が 提 供され 、アセンブリパー
ツ同士の相互作用を把 握できるようになって、
DesignSight のアプリケーション範囲が大幅に
拡大されました。これら連成解析機能に加えて、
このリリースでは、遠心力、熱伝達荷重、任意の
XYZ 軸方向または軸回りの拘束など、いくつか
の新しい荷重・拘束条件が提供されています。こ
れらの機能は、ユーザーが利用可能なツールセッ
トを拡張し、モデル化の対象範囲を広げます。
Simulation Lifecycle Management(SLM)で
は、シミュレーションデータの管理、会社のベス
トプラクティスの収集と展開、コンピューティング
資源にまたがるシミュレーションの分散実行、そ
してシミュレーション結果の共有を通じた協調
14
的意思決定の改善が実現されます。
既存の SLM ユーザーは、今回の V6R 2013x
の機 能 拡 張により、シミュレーションと他のソ
リューションとの統 合を促 進することで、製品
開発プロセスのさらなる合理化が可能になりま
す。ENOVIA Engineering Central、Designer
Central、および Requirement Central データの
サポート強化により、さらにシームレスな製品開発
プロセスが実現されます。たとえば、Requirement
Central で定義された値はシミュレーションワーク
フローでそのまま使用可能です。シミュレーション
関連の区分に基づいてシミュレーションデータを
回収する専用の検索ツールが、すべての V6 ユー
ザーに(SLM ユーザーだけでなく)利用可能にな
SIMULIA Community News 2012 年 9 月 /10 月号
りました。SLM はまた、配列(多値)属性のサポー
ト、実行プログラムとのコミュニケーションの改善、
管理者用の柔軟なシミュレーションログの設定な
ど、SLM の上級ユーザーに対する新機能も継続し
て提供しています。
詳細をご覧ください
www.3ds.com/simulia
www.3ds.com/simulia
テクノロジーブリーフ
有限要素解析によるパイプラインの破断
シミュレーション
力三軸度が損傷の発展に影響を与えることは
良く知られています。
Abaqus FEA による金属材料の損傷発生と発展の予
測が、実験室における構造試験の代替手段を提供
金
属製パイプラインは頑丈に作られてい
ますが、損傷することも多いのです。
良くある例は、バックホーローダーのバケッ
トなど重機がぶつかってできる打痕です。パ
イプラインがまだ使える状態か、あるいは修
復や交換が必要かを決定するには、その変形
状態の総合的な評価が必要です。
Pressure Vessels and Piping 誌に Oh 氏が発
表した実験結果を Abaqus FEA ソフトウェ
アを用いて再現しました。Abaqus には空孔
の発生、成長、結合により起こる延性破壊と、
せん断帯の局所化に基づくせん断破壊の 2 種
類の損傷発生基準が準備されています。チー
ムは延性破壊基準に的を絞ることにしました。
これまで、損傷したパイプラインの目的適合
性を判断するための評価指針が開発されてき
ました。その大部分は実験結果や半経験的な
手続きに基づいているため、それらが想定し
ていない負荷、材料、あるいは特定の損傷構
成について検討する場合、その有効性には疑
問が残ります。
図 1 に、検討対象のモデル形状が示されてい
ます。パイプには、長さ 100 mm の人工的な
打痕が付加されています。
有限要素解析(FEA)によるパイプライン損
傷のコンピュータモデリングは、そうした想
定外の変数の影響を予測することで既存の手
法を補完します。シミュレーションは、検討
すべき異なる材料やパイプ形状の性能につい
ても貴重な情報をもたらします。
打痕のある API X65 スチール製パイプに内圧
が作用するとき、FEA がどのように損傷発生
を予測するか調査するため、SIMULIA チー
ムは、2007 年発刊の International Journal of
2 次の六面体要素を用いた 1/4 対称のメッ
シュが作成され、内圧荷重が負荷されました。
また、実験の閉口端条件を模擬するため、モ
デル端部にも力が加えられ、これらの荷重が
時間とともに線形に増量されました。一般に、
損傷発生の指定は材料定義に含められますが、
塑性モデルと関連して用いる必要があります。
この解析では、Mises の塑性理論が用いられ
ました。メッシュが図 2 に示されています。
この FEA モデルを較正するため、Oh 氏の研
究論文に記載されている試験データが、対応
する FEA モデルと比較されました。試験片は
切欠きの付いた丸棒であり、完全に破壊する
まで引張荷重が負荷されます。試験のそれぞ
れについて、対応する FEA モデルが比較され
ました。その結果、切欠き半径が小さくなる
につれて、損傷発生降伏強度は増大しました
が、破壊時のひずみは減少することが分かり
ました。こうした挙動は、切欠き半径が減少
するとともに応力三軸度が増大するという結
果と一致しています。
損傷発生の出力変数を描いた FEA コンタープ
ロットが図 3 に示されています。この変数の
値が1.0 を超えたとき損傷が発生します。この
コンタープロットから、メッシュ内の危険な
要素は、対称平面の交差部に位置する切欠き
底部にあるこが分かります。さらに、危険な
要素の損傷発生基準を x-y グラフにして見る
と、破壊圧力をより正確に調べることができ
ます。シミュレーションから、1.0 のしきい値
は 24.97 MPa の圧力値で交差することが示さ
れました。実験で決定された破裂圧力は 24.68
MPa でした。
延性破壊による損傷発生基準は現象論的モデ
ルです。この基準を解析に盛り込むため、損
傷発生時の相当塑性ひずみが、応力三軸度と
ひずみ速度の関数として指定されました。応
45°
L=2300mm
D0=762mm
l0=100mm
t=17.5mm
図 1. パイプモデルとその打痕部のジオメトリ
d=8.75mm
r=2mm
図 3. Abaqus FEA によるパイプ打痕部の損傷発生
のシミュレーション
SIMULIA による FEA 結果は、Oh 氏のまと
めた実物大破裂試験データと非常に良く一致
しています。実験結果はコンピュータモデル
の検証にとって常に有用ですが、シミュレー
ションは大掛かりな構造試験に対する低コス
トの代替手段になり得ます。
詳細をご覧ください
図 2. パイプの 1/4 対称メッシュと、打痕部のメッシュ拡大図
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www.3ds.com/SCN-October2012
SIMULIA Community News 2012 年 9 月 /10 月号
15
ケーススタディ
風力タービンブレードの
新展開
NSE Composites 社、
Abaqus FEA を用いて、
エネルギー回収率を 12 パーセント向上させる
サンディア国立研究所のスイープ-ツイスト設計
を検証
図 1. スイープ-ツイスト適応型ローター(STAR)のプロトタイプは、カリフォルニア
州テハチャピ地区の TerraGen 風力発電所にある Zond 750 kW タービンに取
り付けられた。この革新的ブレード設計の先端部スイープ形状と後縁に沿った曲率に
注目のこと。
風
bladeMesher と Abaqus を
行ってきました。我々はすでに K&C 社に対し
て、別のブレード問題のトラブルシューティングも
用いることで、20 種類のスイ
実施しており、再生可能エネルギー分野にもっと
ープ形状を数週間で調査する 顧客ベースを拡大したいと思っていたので、それ
ことができました。これらをテ はぴったりの仕事でした」
ストリグで評価しようものなら、 Hoyt 氏と彼の共同経営者たちは、長年、有限
それこそ数年かかるでしょう。 要素解析(FEA)ツールとして Abaqus を使用
力タービンブレードの基礎をなす物理学と
経済学は、どちらも比較的単純です。まず、
その出力はブレードの長さの 2 乗にほぼ比例し
ます。この関係は、発電量を増やすため、ますま
す大型のブレードを作るよう設計者を駆り立てま
す。次に、ブレードが長くなると重量が(長さの 3
乗にほぼ比例して)増加するので、原材料コスト
の上昇につながります。この相互関係は、大型ブ
レードに付きものの負荷の増大に十分耐えうる強
NSE Composites 社、主任エンジニア、
度と剛性を備えた、重量効率の高いブレード形
DM Hoyt 氏
状を見つけ出すよう設計者を促します。
こうした技術課題の迷路から抜け出そうとする
2 0 0 4 年、サンディエゴに本 社を置く風 力ター
と、興味深い設計方向に導かれる場合があります。ビンブレードメーカーの Knight and Carver
米国エネルギー省(DOE)のサンディア国立研究 (K&C)社は、DOE から STAR 開発業務を受
所による風力エネルギー研究プログラムから生
注しました。K&C 社は、サンディア国立研究
み出された結果は、スイープ-ツイスト適応型ロー 所と提携して、スイープ-ツイスト・ローターのプロ
ター(Sweep-Twist Adaptive Rotor: STAR)と トタイプの設計、製造、試験ならびに評価を受
呼ばれるローターブレードでした。この革新的な
け持ちました。彼らはまず、専門企業と学術機
曲線ブレードは、最初、理論的研究の中で提案さ
関からなるチームを編成しましたが、その中の一
れ、その後、徐々に実用レベルでの応用に関心が
社に、この新ブレード設計の有限要素モデリン
もたれるようになりました。この新しい形態のブ グ(FEM)を担当した、シアトルを本拠地とする
レードは、ますます大型化するブレードの稼働時
NSE Composites 社がありました。
の負荷を低減する手段の 1 つと見なされていま
NSE 社の創業メンバーの一人である DM Hoyt
す。順調に商品化されたならば、そこから生まれ
氏は次のように話しています。「NSE は長年に
る成果は、より長く、より軽く、より安価で効率的
わたり Boeing などの企業に向けて、航空機や
な風力タービンとなるはずです。
ヘリコプターのさまざまな複合材構造の解析を
16
SIMULIA Community News 2012 年 9 月 /10 月号
してきました。彼らのプロジェクトがより大規模
で複雑なモデルへと移行してきたように、このソ
フトウェアの複合材やき裂生成・破壊に関するシ
ミュレーション機能も発展を続けてきました。
「シミュレーションは、我々の航空宇宙と風力エ
ネルギー分野の業務で大きな武器となっていま
す。それは我々にとって、コストのかかる試験を
最小限に抑えつつ、新しいアイデアの探索や、多
数の設計案や材料などの性能調査を可能にして
います」と Hoyt 氏は話しています。
スイープ-ツイスト・ブレードの基本
今までの直線的な形状とは異なり、スイープ-ツイ
スト・ブレードは、後縁に向かって湾曲した「ス
イープ」と呼ばれる緩やかにカーブした先端部
が特徴です(図 1 参照)。このような形状を用
いることで、ねじれと曲げを適切に制御すること
により、理論上、強い突風にも耐えうる丈夫なブ
レードを作れます。すなわち、ブレードはねじれ
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ているので、その根元(基部)に材料応力を発生
させるような負荷を軽減できるのです。同様のス
イープ形状は、自然界においても、長距離を移
動する渡り鳥の翼の形や、鯨の尾びれと背びれ
の特徴的な輪郭形状に見ることができます。
ようになったのです。このようなサイトは、今まで
風力発電用地として注目されてきた高風速地域
とは異なり、米国中央部の主要な電力消費地の
近くに多数存在しています。その費用対効果が
適切と判断されれば、低風速地域の開発によっ
て、米国内で風力発電が可能な地域は 20 倍に
広がることになります。
ねじれ連成のエンジニアリング上の利点は、通常
ブレードは長くなる程、負荷が増大しますが、こ
れが回避されることでより大型のブレードを作
風のない場所でタービン挙動を
れるようになることです。ブレードの根元だけで
把握
なく、タービン本体にかかる負荷も軽減されるの
「風力タービンブレードは、ここ数年、ますますハ
で、原材料コストを抑えたより軽量なブレードが
イテク化してきました。メーカー各社は、デザイン
実現され、さらに回転機械類の疲労荷重の低減
と素材の限界に挑戦しようとしています。そんな
にも役立ちます。初期の計算では、この STAR
ブレードは、3 度の先端ねじれ角を用いた場合、 中、エンジニアは、もともと造船技術に由来して
いた時代遅れの緩い許容値や生産管理を見直し
疲労荷重を 20 パーセント低減させることが分
て、我々が複雑な航空宇宙構造物に対して行っ
かりました。しかし設計が進むにつれて、負荷を
てきたような、より厳密な解析を採用する必要に
増大させることなく、より多くのエネルギーを捕
迫られています」と Hoyt 氏は述べています。
捉するため、さらに大型のブレードを目指すこと
になりました。
Hoyt 氏は、FEA によるブレード解析で特に有
用なのは、
Abaqus の複合材特性と材料配向を
ねじれ連成は、伝統的な「長さ-重さ-コスト」の
取り扱う能力であると指摘しています。
それに
関係を塗る変えるものと期待されただけでな
よって、
ブレード先端のたわみ量を
(タワーとの
く、低風速サイト(地上 10 メートルの平均風速
衝突を防ぐために)計算することや、複合材サン
が毎秒 5.8 メートルの地域)の資源開発におい
ドイ
ッチ構造のねじれ応答(負荷の軽減にとって
ても財政上魅力的なソリューションと見なされる
鍵となるねじれ角など)と、スイープ-ツイスト形状
に関連したせん断-圧縮座屈の安定性を正確に予
測することが可能です。ブレード解析で重要とな
るもう 1 つの機能は、3D ソリッドのFEM モデル
から、等価なビーム特性を正確に抽出することで
す。これら曲げとねじれの定義は、タービンの全
体性能を予測するために、風力タービンブレード
専用の動的解析コードで使用されます。
Hoyt 氏は次のように話しています。「予備設計
段階では、多くの場合、入力データの種類も量も
限られています。我々がこれまで関わった風力発
電プロジェクトで、FEM のベースとして利用でき
るほど品質の高い CAD モデルが準備されてい
たことは一度もありませんでした」。STAR 解析
の開始時においても、NSE チームが利用できた
のは、ブレードの基本的な幾何パラメータ(平面
投影形状、翼型、および翼弦長)だけでした。ブ
レードの基本パラメータしか定義されていない段
階においても、高品質な FEA を実施したいとい
う気持ちが、NSE 社の bladeMesher ソフトウェ
アの開発につながりました。これによって、不完
全なデータをもとにブレードの 3D ソリッドメッ
シュの作成が可能になります。
18 ページに続く
STAR の複合材構成について
STAR プロジェクトの開始時点で、プロトタイプのローター径は 56 メー
トル(約 184 フィート)に設定されました。多くの商用ブレードと同様に、
STAR もグラスファイバーとエポキシ樹脂で作られる予定でした。複合
材設計には、応力外板構造が取り入れられました。上部外板と下部外
板は一般的な二重ウェブではなく、単一のせん断ウェブで結合されてい
ます(図 2 参照)。プロジェクトを通して多数の反復設計が繰り返され、
ブレード細部のそれぞれに対して特定の複合材料が慎重に選定されま
した。
前部
パネル心材
スパーキャップ
せん断ウェブ
NSE 社が Abaqus FEA で解析したバージョンのスイープ-ツイスト・ブ
レードでは、ブレードの桁フランジに一方向性ロービングが用いられ、
せん断ウェブと外板パネルにはバルサ心材を覆う二重バイアス繊維が
選ばれました。表皮に対しては、それがブレードの曲率に追随できるか
どうか試された予備設計段階で、二重バイアス繊維とスパン方向(ブ
レード長手方向)に配向された一方向繊維の組み合わせが選ばれまし
た(図 3 参照)。この組み合わせによって、ブレードの全体的な剛性重
量比が向上し、さらに、この設計のねじれと負荷軽減能力にとって鍵と
なる、ねじり応答も改善されました。製造時やレイアップ時に材料面か
ら問題になりそうな最大曲率も調査されました。
外表皮
内表皮
後部パネル心材
図 2.(上図)
スイープ-ツイスト・ブレードのプロトタイプの翼型。主な複合
材構成が示されている
図 3.(右図)
この Abaqus 有限要素モデルは、一方向繊維複合材が
ブレードの曲率に追随する様子を示している。
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SIMULIA Community News 2012 年 9 月 /10 月号
17
ケーススタディ
「このソフトウェアは、ブレードの外側モールド層
(OML)の数カ所で定義されたジオメトリを滑
らかに結び、それを各位置で指定された複合材
の板厚情報と組み合わせて、実際通りに厚みの
あるメッシュを生成します。このソリッドメッシュ
と材料定義を Abaqus に読み込んで、詳細な
FEA を実行します。我々は、従来のブレード解
析で用いられてきたシェル要素の FEM に比べ
て、ソリッド FEM には多くの利点があることを
発見しました。たとえば、ねじれ挙動をより正確
に予測できること、そして構造要素間の接着剤
接合に生じる応力を解析できることなどが挙げ
られます」と Hoyt 氏は説明しています。
ブレードの設計が進むにつれて、チームはいくつ
かの新しい翼型についても調査し、スイープ形
状を調整しながら最適なねじり量を絞り込んでい
図 5. STAR ブレードのプロトタイプに対する Abaqus FEA シミュレーション結果。左図は応力/ひずみ結果
きました。bladeMesher ソフトウェアを用いれば、 (ブレードの曲げに伴い、翼型の上部すなわち低圧側で圧縮応力が生じている)。右図は全体的な変形結果。
新たなジオメトリを基にソリッド FEM を簡単に
更新できるため、チームは各変更点の影響を迅
速に評価することができました。Abaqus の役割
ジェクトにおいて、最近 DOE から 400 万ドル
準となるという事実が、大きな安全余裕を引き
は、ブレードの有効ビーム特性を見積もるため等
の契約を獲得しています。しかし、さまざまな疑
出していました(図 5 参照)。
価な一定断面を用いて実施された、以前の断面
問が広まっています。それは 50 メートルあるい
せん断ひずみ、ブレードのたわみ量、およびねじ
解析の予測結果に裏付けを与えることでした。
は 60 メートル級のブレードになるのか? そん
り角を測定するため、FEA に続いてプロトタイ
な長いブレードにどれだけ効果があるのか?
スイープ-ツイスト形状が予測通り負荷を軽減す
プの静止試験が実施されました。この静止試験
るかどうか調べるため、モデルに 2 種類の風荷
第 5 回サンディア・ブレード・ワークショップ
では、通常の荷重条件のもとでねじれ応答の調
重が適用されました。それらは、通常の風荷重と
査が行われました。また疲労試験を行うことで、 (2012 年春開催)において、エンジニアたちは考
極端な風荷重(50 年に一度の時速 156 マイル
えられるマイナス面について話し合いました。ス
K&C チームは、この新ブレード設計に 20 年の
の突風)の 2 ケースです。この解析の目的は、ブ
イープ形状によるねじり負荷が、空力弾性フラッ
寿命があることを確認しました。これは現行の
レードのたわみ量とねじれ量を予測し、詳細な
ターのような新たな問題を引き起こさないか?あ
業界基準に匹敵する年数です。
応力計算を実施して、この設計に特有なねじれ
るいは、接着剤接合部に過大な疲労応力を発生
さらに、このプロトタイプは、カリフォルニア州テ
の増大に起因するせん断座屈の危険性を調査す
させないか?扱いにくい曲線形状には、製造面
ハチャピ地区で数ヶ月にわたってフィールド試
ることでした(図 4 参照)。
や輸送面の問題もありそうだと Hoyt 氏は述べ
験にかけられ、さまざまなデータが(もちろん電
ています。「しかし 10 年後、多くの量産ブレード
力とともに)収集されました。同地区は民間の
が何らかのスイープ形状を持っていても、何の不
TerraGen 風力発電所のサイトで、米国でも最
思議もありません」
大級の風力発電地帯です。
Hoyt 氏は話を次のように続けます。「弊社では、
大手メーカーも進出
毎日朝から晩までシミュレーションが行われて
シミュレーションと試 験から得られた結果は、 います。我々は、ほとんどボタンをクリックするだ
Hoyt 氏が「素晴らしい」と表現するように、期
けで設計空間のさまざまな変数を探索し、初期
待通りのスイープ-ツイスト設計の負荷軽減効果
段階で多数の実機試験を回避しています。たと
によって、負荷を増大させることなく、現在稼働
えば、bladeMesher と Abaqus を用いることで、
中の同クラスのタービンを 12 パーセントも上回
20 種類のスイープ形状を数週間で調査すること
図 4. Abaqus シミュレーションのポスト処理によっ
る出力向上でした。
ができました。これらをテストリグで評価しよう
て、
ユーザーはブレード根元付近の座屈の危険性を把
ものなら、それこそ数年かかるでしょう」
握できる。
「これこそ、ブレード設計の未来だと思います。
今では皆が積極的にこれに取り組んでいます」
設計期間の短縮、試験の削減、出力の向上、こ
と
Hoyt 氏は話しています。業界大手の GE 社
れら実証された利点のすべてを携えて、この新
通常の風荷重ケースでは、断面解析から得られ
と Siemens 社も、現在、スイープ形状のブレー
設計のブレードは風力発電のさらなる発展に向
た先端たわみ量と良く一致していました。極端な
ドを開発中です。
創業間もない Zimitar 社は、 けて準備を整えています。
風荷重ケースでは、ひずみ値の比較も良好でし
スイープ-ツイスト設計を最初に考案した研究者
た。さらに詳細な検討の結果、危険な座屈限界
Mike Zuteck 氏が設立した会社ですが、洋上
に達するのは、極端な風荷重の 5 倍以上のとき
詳細をご覧ください
タービン基地の規模拡大に向けた技術開発プロ
であることが分かりました。材料の極限強さより
www.nsecomposites.com
も、たわみを抑える剛性の方が構造上重要な基
18
SIMULIA Community News 2012 年 9 月 /10 月号
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アライアンス
柔軟な風力タービンブレードの流体
-構造連成解析
現 象を取り扱う専 用の 数 値 解 析ツール が 必
要です。N U M E CA I nt er n at io n a l 社の非
構造格 子有限体 積法流体ソルバー F I N E™/
O pen は、Frau n hofer 協会によって開発さ
れた連 成アルゴリズム Mp C C I が 組み込ま
れ たさまざ まなコードと連 成 解 析 が 可 能 で
す。このプロジェクトでは、その幅広い材料モ
デリング機能と広範囲にわたる材料モデルを
考慮して、構造ソルバーとして Abaqus が選
定されました。流体ソルバーがブレード周りの
三次 元 流れを計 算し、時間ステップごとに計
算された荷重を構造ソルバーに渡します。それ
をもとに変 位 が 計 算され ると、流体ソルバー
に 戻されて、メッシュが 更 新されます。流 体
メッシュと構造 メッシュの間で 行われる計 算
結果の受け渡しは、高精度な幾 何アルゴリズ
ムによって 確 実に実 施されます。この 確 立さ
れた仕 組みによって、複 雑な工業 製 品に与え
る空 力弾 性 効 果 の高 精度な予測が 可能にな
り、それ は風 力タービンの設 計プロセスにお
いても既存の手法を補うものと期待されます。
ブ
レードの動的応 答を最大たわみ量と最
大 応力の 観 点から理 解しようとすると
き、空力弾性 解 析は、風 力タービンの設計プ
ロセスにおいて重要なステップとなります。こ
うした 解 析は、安 全面に限らず、パッシブ制
御系を開発 するためにも利用されます。これ
は、複 合 材における流体と構 造 の 相 互作用
を巧みに利用するものです。実 際、風 力ター
ビンブレードは稼働時に曲げ 変形とねじり変
形を起こしますが、それは事実 上迎角を変化
させ、最終的には負荷とエネルギー生産にも
影 響を及ぼします。風 速と空 力トルクの関係
において出 力をコントロールしようとする場
合、それは空 力弾性テーラリングと呼ばれる
技 術を用いて達 成できます。特に、遠隔地に
設 置される風 力タービンにおいては、パッシ
ブ制御によって破壊の危険性を減らし、ロバ
スト性と安 全 性を向上させることが 可能です。
ブ レ ードは 複 合 材 で できて いるため 、そ の
繊 維 方 向 を 適 切 に 選 定 することで、大 き
な 負 荷 を 回 避 で きる の で す。繊 維 方 向 に
よって 負 荷 が 低 減 され る 効 果 を 正 確 に予
測 するた め 、複 合 材レイアップとブ レ ード
形 状 の 異 なる 数 種 類 の 構 成 につ いて、空
力弾性シミュレーションが実 施されました。
空 力弾 性 効 果 の 予 測には、こうした複 雑な
詳細をご覧ください
www.numeca.com
ポリマーの高度なモデリングに役立つ PolyUMod™ ライブラリ
ポ
60
50
工学応力(MPa)
リマーや生体材料は、簡単な構成則では
表 現できない著しい非 線 形 効 果を特 徴
とするため、現実的なシミュレーションは難易
度の高いものになります。同じくらい重要であ
るのに忘れがちなのは、そうした材料モデルの
較正プロセスです。実験データに合わせ込むた
め、複雑な構成モデルの材料パラメータを手作
業で選定することは、とても骨の折れる仕事です。
40
30
20
10
Veryst Engineering 社は、これら両方のニーズ
に対するソリューションとして、PolyUMod ユー
ザー材料ライブラリと MCalibration ソフトウェ
アを提供しています。PolyUMod では、クリー
プ、応力緩和、異方性、温度および速度の依存
性など、複 雑な非線形効果を考慮したエラスト
マー、発泡材、熱可塑性樹脂、そして熱硬化性
樹脂のための Abaqus UMAT/VUMAT サブ
ルーチンが利用可能です。MCalibration では、
最新の最適化アルゴリズムを用いることで、これ
ら材料モデルと既存の材料モデルのすべてに対
して、実験データに基づく自動較正が可能です。
など、多くの製品に応用されている生分解性材料
の 1 つ、ポリ-L-乳酸(PLLA)材料モデルの較正
です。我々は、非線形粘塑性挙動をとらえた特殊
な負荷/除荷の時刻歴情報を用いて、この材料の
実験データを収集しました。このデータに基づい
て、PolyUMod ライブラリから、PLLA のモデリン
グ用に並列回路モデル(PNM)が選択されました。
ここに紹介する例は、吸収性の医療用インプラント
我々が PLLA 用に選んだ PNM モデルの流動
www.3ds.com/simulia
0
-10
0
0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08
工学ひずみ
図 1. MCalibration で較正された PNM モデル
学的定義は 2 つの回路で構成されています。回
路 A は Arruda-Boyce の超弾性を特徴とし、
回路 B は、超弾性に加えて、べき乗流動則と二
重指数関数型の降伏発展則に支配された粘塑
性部分を含んでいます。MCalibration を用い
て、この PNM モデルの PLLA 実験データに
対する較正が行われました。図 1 には、較正さ
れたモデルの予測挙動とパラメータが描かれた
MCalibration のスナップショットが示されてい
ます。予測挙動は実験データと良く一致していま
す。MCalibration は、PNM モデルに対応した
Abaqus UMAT/ VUMAT を出力し、それは
PLLA 材料のシミュレーションで利用されます。
詳細をご覧ください
www.veryst.com
SIMULIA Community News 2012 年 9 月 /10 月号
19
学術研究
ノースカロライナ大学シャーロット校による、
耕作工具の摩耗シミュレーション
材料除去速度の数値予測結果は、実験結果と
良く一致していることが分かりました。この結果
から、Abaqus/Explicit の有限要素モデルは、
耕作時の工具摩耗をコントロールする上で重要
となる、さまざまな要因を理解するためのロバス
トなツールとなることが示されました。
a)
b)
十
分なパワーと工具の摩耗 速度
は、農家の人が土を耕すときの
二大関心事です。最初の問題は、高
出力なトラクターの出現によってほぼ
解決されました。しかし 2 番目の問
題、すなわち耕作工具の摩耗につい
ては、これまであまり注目されません
でした。コロンビア国立大学メデジン
校で実施された実験研究で、耕作工
具は 1 キロメートルの耕作につき約
10 グラムという非常に速いペースで
摩耗することが示されました。こうした摩耗の速
さは、工具の寿命を縮め、工具交換のための深
刻な中断時間をもたらし、結果として、耕作コス
トを上昇させます。
コロンビア国立大学メデジン校の実験研究では、
耕作用トラクターに取り付けられた 3 つのアセン
ブリのそれぞれに 1 個の耕作工具が装着されま
した。トラクターの走行速度は時速 3~5 km の
範囲です。1 個の耕作工具の長さは 12 cm で幅
は 6 cm あり、調質鋼でできています。実験研究
で用いられた土質は、大きさが 0.5 mm から 2
mm の砂粒子を主成分とする砂土です。この実
験研究の観察結果から、工具の損傷は、一部に
砂利(大きさが 2 mm を超える粒子)による摩
耗も見られましたが、主に工具表面に沿って滑動
する砂粒子が原因であると認められました。この
フィールド試験では、摩耗した耕作工具の表面
には溝が形成され、失われた材料はこの溝から
20
削り取られたものであることが確認されました。
この研究を手掛かりに、ノースカロライナ大学
シャーロット校は、耕 作 速 度、耕 作 深さ、砂
の特 性など、さまざまな耕 作パラメータが 工
具摩耗に与える影 響を調べるため、Abaqus/
Explicit を用いた数値シミュレーションを実施
しました。摩耗プロセスの調査に向けた最初の
ステップとして、所定の初期食い込み深さで工
具表面を滑り動く 1 個の砂粒子が検討対象と
されました。工具は弾塑性材料としてモデル化
され、砂粒子は先端が半球形の円筒の剛体とし
て扱われました。滑動プロセスは 3 段階で実行
されました。最初のステップでは、工具表面との
接触が確立され押し込みプロセスが開始されま
す。第 2 ステップでは、工具表面に沿って砂粒
子を移動させ、第 3 ステップで、工具表面から
粒子を引き離します。粒子の速度、初期食い込
み深さ、粒子の大きさなど、さまざまなパラメー
タが定められた範囲で(実験値と合致するよう
に)変更されました。工具表面を滑る砂粒子の
動きによって、工具の塑性変形により溝が形成
されます。この溝形状と伝統的な「掘り起こし
理論」を組み合わせることで、工具表面が砂粒
子によって削り取られるときの材料除去速度が
計算されます。そしてこのデータから、多数の粒
子が工具表面を削り取るときの平均的な材料除
去速度が得られます。
砂粒子の大きさが 0.5 mm から 1 mm の場合、
SIMULIA Community News 2012 年 9 月 /10 月号
c)
d)
耕作時の工具摩耗:(a)摩耗した工具の表面、
(b)工具表面の押し込みプロセス、
(c)耕作工具の変形、(d)工具表面の変形
詳細をご覧ください
Gaurav Goel
[email protected]
www.mees.uncc.edu
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アイルランド国立大学ゴールウェイ校による、拡張有限要素法を用いた
皮質骨の破壊モデリング
人
間の骨格重量の 80 パーセントは皮質骨
が占めています。これは、腕や下肢の長骨
の骨幹部や、椎体など小骨の外皮膜に主に存
在する緻密な骨組織です。皮質骨は、自然に作
り出された丈夫な複合材として、体重を支え、運
動を促進し、内臓を保護するために必要な強度
を個々の骨に与えています。多くの場合、骨の固
定法として骨ネジを用いた整形外科用器具が埋
め込まれるとき、骨からネジが抜けないように、
皮質骨が主要な支持構造の役割を果たします。
こうした器具設計を評価するため、アイルランド
国立大学ゴールウェイ校の研究者は、ネジの引
抜き力が原因で引き起こされる皮質骨の破壊に
ついて研究するため、高度なモデリング法を駆
使したリアリスティックシミュレーションを実施
しています。皮質骨の破壊をモデル化するため、
拡張有限要素法(XFEM)と UDMGINI ユー
ザーサブルーチンが用いられました。皮質骨の
ミクロ組織は、繊維と母材からなる複合材に類
似しているため、皮質骨の破壊パターンのシミュ
レーション用に Hashin の損傷モデルをベース
にした基準が開発されました。発生基準の定義
に加えて、基準ごとにき裂進展方向も定義され
ました。これらは、皮質骨の破壊に関する実験
的観測に基づいています。
皮質骨は異方性弾性材料としてモデル化されま
した。軸方向の破壊強度が引張および圧縮負
荷に対して定義され、さらに、開発された基準
のそれぞれに対してせん断の破壊強度も定義さ
れました。モデルに割り当てられた材料方向は、
オステオン(骨単位)組織が整列する方向に相
当しています。ひとたび損傷が発生すると、それ
は XFEM ベースの粘着セグメントに従って進
展しました。また、所定のひずみエネルギー解
放率に到達すると、分裂した要素の 2 つの破
片が互いに自由に移動しました。分裂した要素
の非現実的な閉合を防ぐため、新たに露出した
面には摩擦係数 0.3 の表面相互作用も適用さ
れました。
2D および 3D のネジ引き抜きシミュレーション
では、開発された基準が皮質骨の破壊部に適用
されました。以前の実験研究で、ネジの引き抜き
時に、き裂がオステオン方向と平行に進展するこ
とが明らかになっていました。また、骨ネジの中
心軸に対して垂直に皮質骨のオステオンが整列
している(横方向の引き抜きの)場合、より大き
な引き抜き力が観測されていました。開発され
た破壊基準と XFEM 手法を用いた皮質骨のネ
ジ引き抜きシミュレーションは、実験で観測され
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(i) 縦方向の引き抜き
オステオン
方向
縦方向の
引き抜き実験
(ii) 横方向の引き抜き
横方向 - 計算
横方向- 実験
縦方向-計算
縦方向 - 実験
オステオンの縦方向と
横方向に対する
2D ネジ引き抜きモデル
オステオン
方向
横方向の
引き抜き実験
0.0
2.0
4.0
引き抜き力(kN)
Feerick and McGarry 2012:doi:10.1016/j.jbiomech.2012.03.023
45°
のオステオン方向に
対する 3D ネジ引き抜き
モデル
45°
の
オステオン
方向
た破壊荷重と破壊パターンを正確に予測しまし
た。すなわち、縦方向と横方向のネジ引き抜き時
に、どちらもき裂はオステオンの整列方向とほぼ
平行に生じることが示され、横方向の方がより
大きな引き抜き力を必要としていました。
以前は、ミクロスケールで皮質骨の破壊をシミュ
レーションするためのモデルが開発されていま
したが、そのためには、皮質骨のミクロ組織の
ジオメトリをそのままモデリングする必要があり
ました。皮質骨破壊のマクロスケールのシミュ
レーション(ネジ引き抜きのシミュレーションな
ど)では、皮質骨のミクロ組織の詳細なジオメト
リを取り込むと、非常に計算コストがかかります。
材料方向と異方性の損傷開始基準が割り当て
られた簡単な材料モデルを用いることによって、
計算コストの節減が可能であり、これは、ミクロ
スケールに限定されていた以前のモデルに対す
る 1 つの利点となります。
ネジの引き抜きシミュレーションに、XFEM を
用いて最新の損傷基準を適用したことは、器具
の設計評価と皮質骨骨折の固定法の検討の両
方に将来性を与えるものです。簡略化された皮
質骨のマクロスケールモデルは、破壊靱性とき
裂パターンの両方を正確に予測しており、骨折固
定法の検討に欠かせないレベルの複雑性を実
現しています。この複雑レベルは、XFEM を用
いることで、実行可能な限界を超えるほど計算
コストを増大させることなく達成されています。
詳細をご覧ください
www.nuigalway.ie
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SIMULIA Community News 2012 年 9 月 /10 月号
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Tips & Tricks
Abaqus/CAE の Assembled Fasteners ツール
複雑なファスナ挙動を多数のモデル位置で効率良くモデル化できる
Abaqus/CAE の Assembled Fasteners ツールの使用法
A
ssembled fasteners ツールを用いることで、各種ファスナの挙動を多くの場
所に複製できます。このツールは、1 つのファスナ構造を含んだテンプレート
モデル を使用します。いったん、ファスナテンプレートが定義されると、飛行機の
機体や自動車のような大規模モデルで何度でも利用できます。
操作方法:
A. ファスナ構造を含むテンプレートモデルを作成する。
テンプレートモデル:
-コネクタ断面
1.下記のいずれかを用いてテンプレートモデルを定義する。
• はり、
ソリッド、
粘着、
およびコネクタの各要素
• はり、均質ソリッド、
粘着、
およびコネクタ断面の割り当て
• 結合、
カップリング、
調整ポイントの各拘束
• 慣性
2.拘束に関係した全サーフェスに名前を付ける。
3.コントロールポイントとして 1 個のポイントからなる集合を作成す
る。これはメインモデルにテンプレートモデルのコピーを配置する
ために用いられる。
-結合拘束
-カップリング拘束
サーフェス B
メインモデルにテンプレート
モデルを複製する
サーフェス A
コントロールポイント
メインモデル
(入力ファイル内に生成されるモデル)
取り付けられ
たファスナ
取り付け
ポイント
割り当て
サーフェス B
割り当て
サーフェス A
etc.
B. メインモデル(ファスナが取り付けられるアセンブリ)において:
1. テンプレートのファスナが配置される場所に、取り付けポイントまた
は参照点を作成する。
2.取り付けられるファスナの拘束が与えられるサーフェスに名前を付ける。
3.相互作用モジュールにおいて、Special→Fasteners→Create を選
択する。
4. Create Fasteners ダイアログボックスが現れるので、Assembled
fasteners を選択して Continue をクリックする。
5.Edit Fasteners ダイアログボックスが現れるので、テンプレートモデ
ルの読み込み方法、割り当て方法、および配向方法を定義する。
• 取り付けポイントでは、テンプレートモデルのコントロール
ポイントが取り付けポイントに一致するように、テンプレー
トモデルが配置され平行移動される。
• テンプレートモデルは、その全体座標系の Z 軸の正方向
が、Edit Fasteners ダイアログボックスの Orientations
タブのページで指定された座標系と揃うように配向される。
ƒƒデフォルトでは、テンプレートモデルの Z 軸がメインモ
デルの最初のサーフェスの法線ベクトルに一致するように
配向される。
Edit Fasteners ダイアログボックスにおける、
テンプレートの
サーフェスとメインモデルのサーフェスの対応付け
ƒƒ必要に応じて、テンプレートを配向するために、一様なユ
ーザー定義の座標系を使用できる。
• 取り付けられたファスナの X 軸は、テンプレートの X 軸を
最初のサーフェスに投影することで定義される。
Edit Fasteners ダイアログボックスが用いられると、テンプレート
モデルの特性がメインモデルにコピーされる。
6.フィールド出力と履歴出力は両方とも、メインモデルに取り付けられ
たファスナから入手できる。
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詳細をご覧ください
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swym.3ds.com/#post:8277
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ニュースとイベント
SIMULIA カスタマ・サポートについて
SIMULIA では、2012 年 12 月 28 日をもって E-mailによる技術サ
ポートを終了いたしました。今後は、カスタマ・サポート・ポータル DSx.
Client Care & Order による技術サポート依頼、インストールメディアの
ダウンロードおよび発注、Q&A やバグレポートを格納した knowledge
Base の閲覧をご利用頂けます。DSx.Client Care & Order をご利用頂
くためには、事前登録が必要となります。DSx.Client Care への登録申
請や利用方法などについては、www.3ds.com/jp/SIMULIA_Support
をご参照ください。電話によるサポートは引き続きご利用頂けます。
DSx.Client Care へのアクセス : www.3ds.com/jp/support
2013 SIMULIA Community Conference
2013 年 5 月 21~24 日、オーストリア・ウィーンにて開催予定
第 26 回目を数えるシミュレーション専門家のための国際的な年次ユー
ザー会では、他のユーザーや SIMULIA スタッフとの情報交換などによ
り、皆様の専門知識を高めていただける良い機会です。さまざまな業界
のトップ企業が出席し、彼らがいかにリアリスティックシミュレーションを
活用して、設計案を探索、製品性能を改善、イノベーションを加速してい
るかご発表頂く予定です。コミュニティの一員となって、皆様がイノベー
ションを推進されますよう期待しています。
詳細はこちら: www.3ds.com/scc-2013
SIMULIA Learning Community の e-Learning ビデオ
SIMULIA V6 におけるサーフェスメッシュと
四面体充填メッシングの技術
皆様に価値ある情報を提供するため、SIMULIA Learning Community
では、Abaqus、Isight、そして新しい V6 シミュレーション製品のさまざ
まな機能に関するチュートリアルや e-Learning ビデオを多数取り揃えて
います。最近人気のある e-Learning ビデオでは、SIMULIA V6 のサー
フェスメッシュ機能と、そこから 3D メッシュを生成できる四面体充填メッ
シャーの使用手順について概要を紹介しています。
(ログインが必要です。
英語サイト)
本ビデオの視聴はこちら: swym.3ds.com/#post:14155
新しい「お客様の声」ビデオ
Abaqus によって不変の着心地を作り込む
株式会社メカニカルデザイン(MDAC)は、神経系や循環系に与える
医学的効果に加えて、着心地や運動性を向上させるためにも衣服設計
を改善することが重要だと考えました。MDAC 代表取締役の小林卓
哉氏が、いかにして Abaqus の解析機能を適用し、そこからメリットを
引き出したかについて説明します。
本ビデオの視聴はこちら: www.3ds.com/SCN-October2012
www.3ds.com/simulia
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