日本におけるセクシュアル・マイノリティに対する意識(1) セクシュアル

性・ジェンダー(1)
日本におけるセクシュアル・マイノリティに対する意識(1)
─セクシュアル・マイノリティ間の比較─
○中京大学
風 間 孝
明治学院大学
広島修道大学
国立社会保障・人口問題研究所
石 田 仁
河口和也
釜野さおり
横浜市立大学大学院
吉 仲 崇
1 目的と背景
本報告の目的は、全国調査の結果から、ゲイ男性、レズビアン、バイセクシュアル、トランス
ジェンダー、そして異性愛者に対する意識・態度を比較することである。日本のポピュラーカル
チャーではセクシュアル・マイノリティは可視性を獲得しつつあり、法的にも性同一性障害特例
法(2003 年)や同性カップルにパートナー証明書を発行する自治体(渋谷区;2015 年)が現れ
るなど、セクシュアル・マイノリティをとりまく状況は変化しつつある。このような社会・文化
状況のなか、規範的なセクシュアリティとされる異性愛との比較、またセクシュアル・マイノリ
ティ間の比較をとおして、セクシュアル・マイノリティに対する意識を検討したい。
2 方法
2015 年 3 月に報告者らが実施した全国調査『男女のあり方と社会意識に関する調査』
(科学研
究費基盤研究(B)、課題番号 25283018、2013〜2016 年)で得たデータを分析に用いる。本調査
は、住民基本台帳を用いた層化二段無作為抽出法によって抽出した満 20~79 歳の 2600 人(地点
数 130)を対象に訪問留置訪問回収法(一部郵送回収)により実施し 1258 人から回答を得た(有
効回収率 48.4%)。
本報告では、以下の4項目について、平均の比較を項目間ならびに男女別に行った。
(1):男
女、男性同士、女性同士が「街中で手をつないでいるのを見たら気持ちが悪い」、(2):男性同
士で、女性同士で、男女両方に「恋愛感情を抱くのはおかしい」、(3):男性同士、女性同士、
男女両方、そして男女の間での「性行為は気持ち悪い」、(4):同性愛、両性愛、体の性別を変
えたいと望む人のことを「義務教育で教えること」。すべての項目で4件法のリカートスケール
を使用し、分析には SPSSver.22 を用いた。
3 結果
(1):分散分析とその後の多重比較を用いて比較をしたところ、(ア)男女間、(イ)男性同士、
(ウ)女性同士、のすべてに有意差がみられ、抵抗感の強い順に並べると(イ)、(ウ)、(ア)と
なった。男性、女性ごとに3項目間の比較をしても結果は変わらなかった。
(2):項目間の比較
では、(エ)男性同士、(オ)女性同士、(カ)男女両方、のうち(エ)と(オ)の間に有意差が
みられ、男性同士への抵抗感が強かった。男女別の項目間の分析では、男性は(エ)男性同士へ
の抵抗感が有意に強く、女性では(カ)男女両方への抵抗感が他の2項目より有意に強かった。
(3):項目間の比較では、(キ)男性同士、(ク)女性同士、(ケ)男女両方、(コ)男女間、の
すべてに有意差があった。抵抗感の強い順に並べると(キ)、(ケ)、(ク)、(コ)となった。男女
別の比較では、男性では項目間の比較と同様の結果であったが、女性では(コ)が他の3項目よ
り有意に抵抗感が低く、(キ)、(ク)、(ケ)の間には有意差は認められなかった。(4):項目間
の比較では、(サ)同性愛、(シ)両性愛、(ス)体の性別を変えたい人、のうち、(ス)への抵抗
感が有意に強かった。男女別に3項目間の比較をしても結果は変わらなかった。
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