民法) 結んだ契約は絶対に守るべき?

釧路公立大学
法学概論[5]
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日常生活と契約(2)
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例) Xさんは,大学入学祝いとしてもらったお金で自動車を買うことにした。販売店Yに代金
を支払い,大型連休前の 4 月 21 日に納車してくれるよう頼んだ。ところが,
1) Xさんからの注文をYが忘れており,届くのは1か月遅れになりそう
2) Xさんの買った中古車をYが運んでくる最中に,Yが事故を起こして壊してしまった
3) Xさんの受け取った車はラジエーターが壊れており,走行中に蒸気が噴き出てきた
● 契約が成立すると
買い主(
債権者
) : 代金を支払う義務を負う
売り主(
債務者
) : 目的物を引き渡す義務を負う
正当な理由なく債務者が
債務
を
履行
しないことを「債務不履行」という
● 債務不履行の3類型
1 )履行
遅滞
: 債務の履行が可能であるのに,約束の期日に履行されない場合
2 )履行
不能
:
3)
不完全
債務者
履行 :
の
不良品
過失
によって履行ができなくなった場合
だったり,数が
不足
していた場合
● 債権者にできること
a )現実的
b)
c)
履行
の
損害賠償
解除
強制
: 裁判所に訴えて
の請求 (§民法
(§民法 541
415
強制執行
を求める
条)
条)
● 認められない契約もある
例1) Aはゴノレゴに対してB氏の殺害を依頼し,ゴノレゴは報酬20万ドルで引き受けた。
どんな契約を結ぶかは自由である(=
原則として,
国家
は
私的自治
私人
間の契約に
の原則)
介入
しない。しかし……
http://kushiro.sociallaw.info/
90
§ 民法
条(
*
公序良俗
無効
)
=
最初
から
なかった
ものとみなす
※ 代金が支払い済みなら原状回復
96
§ 民法
「
条
詐欺
又は
*
強迫
による意思表示は、
取消し
取り消す
が⾏われるまで,⼀応は
有効
ことができる」
として扱われる
● 成立した契約からの解放
1人で完全に有効な意思表示を行う能力(=
行為
能力)を持たない人もいる
例) 重度の精神障害者(成年被後見人)
,未成年
これらの《
制限
§ 民法
5
条(
§ 民法
7
条(後見開始の審判)
「
事理
※
Q
行為能力者》については
泥酔
未成年
を
弁識
が必要(§民法 20 条 1 項)
保護
者の法律行為)
する
能力
を欠く
常況
にある者」
事理弁識能⼒:物事の意味を理解する能⼒,おおよそ10歳で備わる
していたら?
→
契約を結ぶ能力(=意思能力)が欠けているので
無効
例2) 1000 万円で売るつもりだったのに「1,000,000 円」と書いてしまった
§
民法 95
→
無効
条(
錯誤
)
(∵本人が意図していない表示は,本人の意思を尊重する)
例3) 冗談で「別荘を100円で売ってやろう」と言ったら本気にされてしまった。
§ 民法
→
93
条(
心裡留保
)
原則として意思表示は有効とする。が,冗談だと分かる状況なら無効にする。
例4) 借金の取り立てから逃げるため,自分の土地を譲ったことにして資産隠しをした。
§ 民法
94
条(
虚偽表示
)
※ 無効
参考文献)平野裕之『基礎コース民法Ⅰ』(新世社,2005 年)