関節開大装具の研究開発 (装具の機構設計と関節面の運動解析)

講演番号22
関節開大装具の研究開発
(装具の機構設計と関節面の運動解析)
学生氏名
1.緒
岩田岳,清水春花
指導教員:大塚宏一
言
近年の高齢化社会の進行により,変形性関節症の患者は
増加している(1).この変形性関節症は関節軟骨の摩耗により
骨と骨がこすれ合うようになる病気である.本研究では荷
重関節でない指関節を対象として関節を開大することによ
り痛みを緩和する装具の研究開発を行なっている.関節の
開大を,屈曲・伸展による運動の中で靭帯への負担が少な
い角度で運動方向に対して法線方向に行うことで,最も効
率的に関節面を引き離すことができると考えられる(2).この
ため,今年度は指の関節面の相対運動を 2 次元的に計測で
きる装置を製作し,関節面の運動解析を試みた.なお,本
測定では左手第二指に装着して解析した.
2.装置の機構
図 1 に設計した装置の機構を示す.リンク部には軽量化
および曲げ加工が容易なためアルミニウム合金を採用した.
装置全体の可動部は 3 箇所設けた.一つ目は,基節骨に対
する中節骨の回転角度を測るため,近位指節間(PIP)関節に,
2 つ目は中節骨が軸方向に対してどれだけ傾くか(アームの
姿勢角)を測るために指先に,3 つ目は PIP 関節の回転運動
に対して中節骨がどれだけ軸方向に直線変位するかを測る
ため,リンク機構内に設けた.この機構により,装着部分
の相対変位を 2 次元的に検出した.
図1
装置の概略図
図2
装着部間の相対変位の軌跡(円運動との比較)
図3
法線方向の角度とアーム 2 の姿勢角の関係
3.実験結果および考察
はほぼ一致した.ただし,屈曲角 0~90°においてはほぼ直
線的な動きをしていることから,直動ポテンショメータを荷
重制御アクチュエータに変更することにより最適に開大で
きるものと考えられる.この結果から関節の開大方向は中節
骨の軸方向でよいといえる.
今回は製作した装置を指に装着し,完全に伸ばしきった状
態(屈曲角度 0°)を初期位置として,PIP 関節が 90°程度
曲がるまで計測を行なった.図 2 に装着部間の相対変位の軌
跡を示す.円運動とのずれを確認するために,円の軌跡を同
じ図中に破線で示す.計測した左手第二指の中節骨の軌跡は
円運動とほぼ同じであることが分かった.異なる点は屈曲角
度が 25°から 65°までの間で円運動ではなく直線的な動き
が見られた点である.つまりこの範囲が靭帯の張りに余裕が
あり,開大しやすいと推察される.また,図 3 に法線方向の
角度とアーム 2 の姿勢角(φ=θ1+θ2)との関係を示す.線形
近似したものは破線で示す.横軸(アーム 2 の姿勢角)が
40 度付近では,アーム 2 の姿勢角と法線方向の角度
参考文献
(1) 井上和彦・福島茂:ひざの痛い人が読む本「変形性関節
症」痛み解消 Q&A pp.139-152,講談社
(2) 笹田直・塚本行男・馬渕清資:バイオトライボロジ-
-関節の摩擦と潤滑- pp.18,産業図書
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