肝疾患サポートチーム 「櫂の木賞」 を受賞しました

肝疾患サポートチーム
「櫂の木賞」 を受賞しました
豆ちしき・・・櫂の木賞ってなぁに?
岡山大学に貢献した功績に対
して病院長が表彰してくださる、
名誉ある賞です
出張肝臓病教室の取り組み
消化器内科 下村 泰之
出張肝臓病教室もおかげさまで2年目に
入りました。
現在、出張肝臓病教室用に新たなリーフ
レットを作成中です。
肝炎についての予備知識や日常生活での
注意点なども記載されています。
今年度も様々な職場に出張させていただく
予定です。皆さんにとって有意義な時間とな
るようにスタッフ一同頑張ります。
よろしくお願い致します。
平成26年5月から肝臓病教室
を始めましたが毎回多くの方に御参
加いただき、誠にありがとうございます。
今まで、肝臓の病気をテーマに開催して
きましたが、参加して下さった方々のアン
ケート回答をもとに今後は栄養のこと運動
のことなど家庭生活に役立つ内容も充実
させていきたいと企画中です。
引き続きよろしくお願いします
編集後記 池田房雄、 難波志穂子
院内
第5回 肝臓病教室
(1時間程度)
日 時: H27年5月19日(火) 13:00~
場 所: 西6階病棟 カンファレンスルーム
テーマ: 肝臓の外科手術について
1/16 都道府県肝疾患診療連携拠点病院間連絡
協議会(東京):
池田.小山
1/27 出張肝臓病教室(牟佐刑務所): 安中.山﨑.
笠原.難波
2/4 岡山県肝炎対策協議会及び岡山県肝疾患診
療連携拠点病院等連絡協議会(岡山): :
山本.池田.難波.山﨑 犬山 笠原 小山
2/17 第4回院内肝臓病教室
2/21 第2回地域肝炎対策サポーター研修会(岡山): 犬山.笠原
3/6.7 肝疾患相談センター相談員向け研修会(千葉) :
犬山.山﨑
3/8 岡山県肝炎医療従事者研修会:山本.池田.小山
. 犬山.笠原.小銭.山﨑
3/17.18 出張肝臓病教室(消防署):
森元.坂本.竹内 長谷川
4/23 出張肝臓病教室(西日本メディカルリンク):
下村.佐藤.犬山.小山 難波. 笠原
岡山大学病院 肝臓病情報紙
発行元:岡山大学病院
岡山県肝炎相談センター
086‐235‐6851
発行日:2015.4.20
肝臓病死亡“0”を目指して
前 岡山大学消化器内科 教授 山本 和秀
私が医師に成り立ての頃(約40年前)、肝臓病
は不治の病であり、原因は分からず治療法も全く
ありませんでした。医学の進歩により、現在では
肝臓病の原因はほぼ解明され、治療法も確立され
ています。それでも、まだ多くの方が肝臓病で亡
くなられています。
その一番の原因は、肝臓病は末期になるまで症状
がないため、患者さんが自分では気付かないこと
です。これを防ぐためには「検診」が最も大切で
す。皆さん、肝臓病死亡を限りなく“0”に近づ
けるために積極的に検診を受けましょう。
肝炎相談センター長
肝炎相談センター
新 センター長
高木先生
新任ご挨拶
消化器内科 高木章乃夫
今年度より、肝炎相談センター長に就任しました岡山大学病院消化器
内科准教授高木章乃夫と申します。
山本和秀前センター長が立ち上げられました多職種協力型の肝疾患
サポートを引き続き充実させていきたいと思います。
肝臓は沈黙の臓器と言われるように、多くの場合調べてみないと病気
の有無がわかりません。健診で肝機能異常を指摘された時、血縁の方
に肝疾患が発見された時、など何かのきっかけがあった時に気軽に相
談できる窓口が必要です。
岡山県の支援により、肝疾患診療連携拠点病院である岡山大学病院内
に肝炎相談センターを設置し、医師・看護師・治験コーディネータ・薬剤師
・栄養士・ソーシャルワーカーなどより構成される肝疾患サポートチームが
患者さんからの相談を受けています。
最近では出張肝臓病教室などでの情報提供も行っています。
また、精査・治療が必要な場合には岡山県肝炎専門医療機関が連携し、
肝疾患の患者さんに良質かつ適切な肝疾患医療が提供できるように努
めています。
次々と新薬が認可される予定のC型肝炎治療や近年増加が著しい脂肪
性肝疾患など、多くの疑問や希望にこたえていきたいと思います。
今年度も何卒よろしくお願い申し上げます。
脂肪肝の診断について
消化器内科 和田望
脂肪肝の診断は血液検査や画像検査があります。血液検査はAST, ALT, γ‐GTPなどが
あります。AST, ALTは肝細胞中に含まれる酵素で肝障害により上昇してきます。γ‐GTP
は胆道系酵素でありアルコールの過剰摂取や肥満などで上昇します。
画像検査として代表的なものは腹部超音波検査になります。超音波では脂肪は白くみえ、
そのため腎臓との対比によりコントラストがつきます。
アルコールの過剰摂取を含まない脂肪肝(非アルコール性脂肪肝)の中の10~20%程度に肝硬
変に進行したり肝細胞癌を発症したりする可能性のある症例が存在し、非アルコール性脂肪性
肝炎(NASH)と言われています。NASHと単純性脂肪肝の区別は血液検査や腹部超音波検査で
予想することは出来ますが、診断の確定には実際に
肝臓の組織を採取が必要な場合もしばしばあります。
脂肪肝の治療について
消化器内科 白羽英則
脂肪肝の治療の基本は、原因を取り除くことです。生活習慣の改善、特に食事と
運動に気をつけることが大切です。アルコールや薬物が原因の場合には、それら
の中止も必要となります。肥満や運動不足が原因の場合は、摂取カロリーを減らし、
運動を増やします。簡単に言うと、一般的に行われている「ダイエット」を行います。
どのようにするべきかわからないといった方は、まず間食を減らしたりやめたりして、現在の食事
量から1,2割量を減らすと良いでしょう。特に乳製品など、比較的カロリーの高い食品を体に良
いと考え、多く摂取している方もいらっしゃいますので、食事内容の見直しも大切です。運動は、
15分以上行う有酸素運動が効率よく脂肪を燃焼させます。30分程度の散歩が体に負担をかけ
ずに運動をスタートするのには適当です。せっかくの生活習慣の改善も長続きしないと意味があ
りませんので、無理なく長く続けられる方法を考えていくと良いでしょう。脂肪肝になるような生活
習慣は、高血圧、高脂血症、糖尿病などその他の生活習慣病を合併しやすく、これらを予防する
という意味でも生活習慣の改善を心がけることが大事です。
がんばって、悪い生活習慣を克服しましょう。
脂肪肝の予防について
栄養部 坂本八千代
皆さんは脂肪肝の予防というと、「必ず油を控えています。」
「テフロン加工のフライパンにした。」などと一様におっしゃいます。
残念ですが、そうではありません。
栄養療法の基本はバランス良く野菜を十分に組み合わせて標
準体重を目標にしましょう。魚や大豆製品を中心に良質のたん
食事のポイント
ぱく質をとることも大切です。さらに、便秘をしない様に腸の中
の環境を整えることも大事なポイントになります。食事を減ら
1.腹八分目とする。
して間食や果物を取り過ぎないことです。
2.食品の種類は出来るだけ多く
標準体重の求め方ですが、2015年日本人
3.脂肪は控えめに
の食事摂取基準から考え方が一部変わり
4.食物繊維を多く含む食品
ました。BMI(体重指数)が、22から25未満
(野菜、海藻、きのこなど)
であれば標準以内となりました。
5.朝食、昼食、夕食を規則正しく
6.ゆっくりよく噛んで食べる。
身長160cmの方であれば
1.6×1.6×22~25=56~64kg未満ということになります。
64kg以上であればまずは2,3kg減量が目標です。
食生活を見直してみましょう。
C型肝炎(2型)に対するテラビックの適応追加について
薬剤部 晴田祐介
テラビックは、2014年9月に、ゲノタイプ2型のC型慢性肝炎に対する適応が追加されました。
対象となるのは、以前にインターフェロン治療をして無効だったか再燃した患者です。
内服に際しては、併用薬や食事に関して注意が必要なので、治療を開始する前に薬剤師が
薬のチェックや生活パターンの聴取を行います。
副作用として、皮疹、食欲不振、貧血などが現われます。
皮疹は早期から出現しうるので、全身の観察が重要です。
皮疹が見られた場合は、皮膚科と連携して対応します。
食欲不振が出現すると、食事や補食が摂りづらくなり、
テラビックの作用が弱まるため、吐き気止めや胃薬などで
対応していきます。貧血が見られた場合には、リバビリンを
減量するなどして対応していきます。
院内研究発表会で【肝臓病教室】をテーマに発表しました!
ICU(元 西6階)加賀宇悠里
院内研究発表会にて「肝臓病教室が患者にもたらす意義と検討課題」という題目で発表を
行いました。
第3回目までの肝臓病教室に参加された方が協力してくださったアンケートの集計結果を
基に、実際に参加した方の感想や、どのような教室を希望しているのか、現在の教室
に足りない部分は何なのかを分析し、まとめました。その結果、肝臓病教室に参加し
た肝臓病患者の治療意欲が向上しており、肝臓病に対する情報を提供する場として
の役割は果たせていたことが分かりました。一方で、就労している人の参加が困難で
あり、今後の開催方法において検討する必要性が明らかとなりました。
アンケート結果を分析する際に参加者の思いに触れることができ、今後の肝臓
病教室をより良い物にしていきたいと改めて思いました。
お役立ち情報!
~こんな論文があります~
Life expectancy in patients with chronic HCV infection and cirrhosis compared
with a general population
van der Meer AJ et al. AMA. 2014 Nov 12;312(18):1927-1928
C型肝炎とは、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染によって起こる肝臓の病気です。HCVに感染す
ると、慢性肝炎、肝硬変、肝がんへとゆっくり病気が進んでいきます。C型肝炎の治療の目的は
HCVを排除して肝炎の進行を防ぐことですが、HCVの排除に成功すれば本当に長生きできるので
しょうか? 今回はそんな疑問に答えてくれる論文の紹介です。
van der Meerらの研究グループは、肝線維化が進行したC型肝炎患者530人を対象に、インター
フェロンを基本とした抗ウイルス治療を行った後の経過を追跡調査しました。その結果、HCV排除
に成功した患者群の10年生存率は91.1%と高く、健康な人と変わらないことがわかりました。肝炎
が進行した患者でもHCV排除することで健康な人と同じ余命が期待できるというのはとても興味深
い結果だと思います。
近年、新しいC型肝炎治療薬が続々と登場し、80〜90%の確率でHCVを排除できるようになりま
した。この論文では抗ウイルス治療がインターフェロンを用いた治療に限定されているため、新し
い治療薬でも同じ結果になるかはわかりませんが、今後の研究による解明が期待されます。
元 治験推進部 林 桂一郎