『NPHC 研究会』日時： 2014 年 11 月 22 日（土） 18： 00～ 20： 00 場所：東京大学本郷キャンパス工学部１号館建築学科３階会議室主催：こどもの病院環境＆プレイセラピーネットワーク（ NPHC）【内容】・「 iPad をつかって子どもに医療処置を説明する試み」蝦名美智子氏（元札幌医科大学）・「 HPS－ Japan 昨今の活動紹介」杉渕早苗氏（東京都立小児医療センター保育士・ HPS）後藤和恵氏（心身障害児総合医療療育センター看護師・HPS）・「柳澤研究室の昨今の活動紹介」冨田恵氏・青木友里音氏（千葉大学大学院工学研究科）（会場の様子 ↑）講演１「 iPad をつかって子どもに医療処置を説明する試み」蝦名美智子氏（元札幌医科大学）保育園の子どもに比べ病院の子どもが暗いのはどうして？，あの看護婦さんのときは子どもは落ち着いているのはどうして？，が私の変わらないテーマです。「医療処置の説明」がポイントの一つと気がつきました。これを単純にプレパレーションと置き換えて，現在はこの言葉を知っている看護師は多いのですが，やり方を誤解している，あるいは大袈裟に構えている事例が少なくないようです。例示が必要という声に押されて，iPad を用いた紙芝居を作ってみました。それを見ていただき，ご意見をいただきたく思います。修正されたものをネットで見られるように考えています。講演２「 HPS－ Japan 昨今の活動紹介」杉渕早苗氏（東京都立小児総合医療センター保育士・ HPS）後藤和恵氏（心身障害児総合医療療育センター看護師・ HPS）お招きいただきありがとうございます。本日は「 HPS 養成の経緯」「国内活動」「海外の研修の状況」「各種セミナーワークショップ」の状況を実践も交えて紹介していきたいと思います（資料 1）。静岡県立短期大学部 HPS－ J 養成講座で育成している日本のホスピタルプレイスペシャリスト (以下 HPS) は 2014 年 3 月現在，トータル 9 期生 115 名が巣立っています。（ →写真；左から，杉渕氏，後藤氏） HPS は，入院している子どもや障がいを持つ子どもなど医療にかかわるすべての子ども達に対して，遊びの力を用いて支援します。また遊びの提供のみならず，発達支援やプレパレーション（以下 PP），両親やきょうだいの支援をしております。PP では例えば，点滴の先端は針先ではなくチューブであることを確認することで子どもの誤解を解いたり，医療物品の写真を用いた「かるたとり」遊びで，理解を深めることなど，状況に合わせて提供しています。また「各施設での HPS 活動」のみならず「在宅の子どもに遊びを届ける活動」や「在宅訪問療育支援ワークショップ」「 With SMA 家族の会」などを実施・運営しております。ホスピタルプレイ（以下 HP）を普及するための教育研究活動として「日総研主催の看護師のための HPS 普及講座」や「 NPO 主催の保育士のための HPS 講座」，年 1 回開催の「 HPS スキルアップ講座」「国際シンポジウム」，事例集発行などをしております。海外研修は， 2009 年からスタートし，英国などに学びに，また HPS や日本の状況を広める機会として「韓国：啓明大学での講義，及びプリップマウル（重症心身障害児施設）での講演」「ニュージーランド： HPS カンファでの発表（下記実演；『うんちクン』の情報貢献）」「チェコ：EACH 会議プラハ大学内のワークショップ」「アメリカ：CLS 学生研修活動」などを行って参りました。海外支援研修は NPO の HPS 協会が主催しております。各種セミナーワークショップとしては，連続講座として静岡で開催される「シリーズホスピタルプレイ」「三鷹 HPS 講座」「 HPS 国際シンポジウム」「キャリアアップ講座」などが今後平成 27 年春にかけて計画されています。【実演】 PP『うんちくん』（うんちくんの PP に取り組んでいる子どものビデオを放映しながら，消化排泄に関する学びと病気の理解を促進する状況を理解し，実際にうんちくんを作成しその状況を確認し合いました。） PP に使う「うんちくん」は，ジッパーの付いたビニール袋にシリアル（オールブラウン；無糖等のシンプルなものがよい）を入れ（右写真），粉々に潰し水を足して作ります。抗生剤の影響で便秘（時に下痢）気味となりがちで，ギブスによる車いす生活をしている児で，便はどのようにできているのか，便の形状に影響する生活スタイルは何かなどを学ぶべく，PP うんちくんを実施しました。腸の長さをビニールで模したもので体感し，食べたものが便になるまでには時間がかかること，シリアルに含まれる水分が多いと下痢に，少ないと便秘になる旨を体験します。うんちということで拒否的な子が徐々に「うんち」に触れ考えるようになり，本や写真を使うのみでは得られない効果があり，「だから水分が必要」「運動が大切だよね」などと実感しつつ進めていけるツールです。【ビデオ放映】「手術後の振り返りの活動の紹介」手術後の退院を控えた子ども達に，自身が受けた手術を振り返り，どう感じたか等の子どもの気持ちを表出させる活動を行っています。手術を受ける前に見たプレパレーションブックを ,手術を終えた後に再び見ながら行います。「これ，どうだった」「やったやった」「これ，見た」「見た見た」「怖かった？」「ぜーんぜん」「ちょっと怖かった」など，話していく中で ,『これは終わった』『これも終わった』と，終わったことを確認していきます。その際に例えば病室に戻り麻酔から覚めた時気持ち悪くなってしまったことを思い出して気分が落ちることもあります。その時は「そうだったよね」「そういうこともあるよね」と共感し，その子の気持ちを受け止めます。そのようにしながらも話を進めていくと，子ども自身が気持ちを切り替えて再び元気に振り返りに参加しました。（気持ちが変動する子どもの姿などをビデオで確認しました。）その他 ,プレパレーションツールや活動のポスターなど，展示し見て頂きました。（会場から）・ PP は子ども達全員が対象であるのか，また HPS が一人しか居ない都立小児では保育士全員ができるのか教えて下さい。 →杉渕：病棟の保育士は HPS ではなく，系統だった PP ができる訳ではありません。私自身の PP や技術を啓蒙しながら皆で対応できるようにしていますが，保育士（看護師や他職種でも）HPS の教育を受け，HPS を増やしていくことが必要であると考えています。対象に関しては， PP は HPS や看護師等が行っていますが，大きな病院であるので，全員にはできていません。また全員に必要性があるということでもなく，どの子に PP が必要か検討しながら進めております。しかし躓いた時には必要だと思います。また，外来でも PP が大切です。当院には障害児歯科があり，丁寧な診察をしておりますが，全身麻酔で行う治療のために必要な検査に対してプレパレーションとディストラクションを実施しています。このような場合には歯科衛生士や歯科医師から依頼があります。日帰りのヘルニア手術の対応などもしております。・都立小児総合医療センターは小児心理が多い都立梅ヶ丘病院が統合してできたセンター。こころの心理対応することがあり，そこが成育医療センターとは少し異なる特徴となっていると思います。心理職との連携はどうなっていますか。 →病棟を担当する心理職とは，日々の声掛けや情報交換，また会議などを通して，連携はうまくいっているのではないかと思っています。お互いにマンパワーが足りないので，重なって支援していますが，心理は家族や子どもの気持ちを引き出す部分で，私たちは子どもとの遊びの部分で，その患児・家族の姿・情報を交換・共有しながら，これからも連携していきたいと思っています。・今後は HPS の近況や，EACH 会議の模様なども当研究会で報告していただけたらと願います。講演３「柳澤研究室の昨今の活動紹介」千葉大学大学院工学研究科柳澤研究室冨田恵氏，青木友里音氏柳澤研究室の活動の近況を報告致します。国立国際医療センタープレイルームは，森の雰囲気を基調とし，カーテン柱に緑を絡ませ，隠れている動物を探すこと等をイメージし装飾しました。入院している子供達とオープニングセレモニーも行いました。課題もあるのでこれから使われているところを調査することでよりよいプレイルームを考えていきたいと考えています（資料 2）。国立障害者リハビリテーションセンターは，予算との関係で簡素になりましたが，思春期の発達障害のデイケアのための空間を作りました。病院ではないカフェのような雰囲気にしたいというのが先生達の希望でした。スイス小児病院を視察しました。外壁が太陽の位置などで緑からオレンジ色に輝くデザインで，病院棟間は地下でつながっているそうです。付属の自閉症成人施設は，もともと民家を改装・コンパートメント化したとのことです。鍵は閉めているけれども窮屈ではなく自由な雰囲気となる，下半分だけのドア。階段昇降が常同行為である方の部屋には，メゾネットタイプ（部屋内に階段がある）にする等配慮されていました。柳澤：ハンナさんがコーディネートして，わずかな時間であったが視察に至りました。スイスとは大学の学生交流もしており，建築のクオリティが高い国であります。建築は，それほど子どもっぽくない設えが特徴で，ハンナさんはもうすこし対象者に合わせたものをと考えていらっしゃるようです。記録：鈴木健太郎（ NPHC 運営委員，杏林大学保健学部）監修：蝦名美智子，杉渕早苗，冨田恵総合監修：柳澤要（ NPHC 代表，千葉大学大学院工学研究科）