「健康FPサービス」の提案

第 5 回「FP向上のための小論文コンクール」入賞作品(2014 年、日本FP協会)
《佳作》
お客様の生活習慣や健康維持に合わせた
「健康FPサービス」の提案
吹田 朝子
1.はじめに:家計収支の将来シミュレーションの課題
ライフプランを立てたお客様が、途中で健康を害してしまい、その目標達成が厳しくなってしま
うという事態は非常に辛いものです。特にそれが生活習慣からくる場合、相談の現場でお金の使い
方をお伺いしながら、
私たち FP が気づけることがあったのではないかと思うこともよくあります。
金額を中心にした形式的なキャッシュフロー資料では、机上の空論になりかねないとさえ思います。
ご本人のライフスタイルを確認する際に、私たちが知識や情報収集力を高め、現状の生活習慣か
ら予想できる病気のリスクを伝えたり、健康増進に向けたお金のかけ方も含めてプランニングがで
きたら、目標達成度をより高められるのではないでしょうか。
今まで、FP 相談のシミュレーションは、健康状態が今後も変わらないことを前提に試算するこ
とが多かったと言えます。それは、将来の健康状態の変化による支出までを見積もることは難しい
とされてきたからでしょう。しかし、お客様のヒアリング内容を工夫し、ある程度の統計データを
使えば、キャッシュフローなどの資料に健康状態を反映した数値を盛り込むことは十分可能になる
と言えます。
また、健康の維持や増進にある程度のお金をかけても、社会的に問題になっている医療費支出の
抑制に貢献できれば、本人の生涯収支の改善のみでなく、社会保障の財源にも貢献できるでしょう。
生活習慣の改善や健康に関わるお金は、その年の収支だけではなく、長期的な収支にも影響を及
ぼします。以下、健康とお金の連動性を加味した「健康 FP サービス」の意義と内容、そしてビジ
ネスの発展性について述べます。
2.生活習慣や健康と家計収支との関係
まず、健康で過ごせる生活設計と、途中で病気を患った場合の生活設計では、どの程度の違いが
生じるのでしょうか?実際は様々な病気がありますが、ここでは、日々の生活スタイルに直結する
生活習慣に関して発生する生活習慣病を前提にして試算することにします。
図 1「健康なライフスタイル」「不健康なライフスタイル」は、シンプルなキャッシュフローグ
ラフですが、同じ 40 歳で、家族構成や最初の手取年収、住宅ローンも全く同じ設定にしています。
[図1]
1.「健康的なライフスタイル」の家計推移
将来 の収支と貯蓄残高の推移
貯蓄残高
4000
3500
3000
< 事例> 40歳 夫婦
世 帯年収は手取り530万円
年 間支出約は46 0万円
住 宅ロー ン3 000万円
(期 間30年、金利は1 0年間 1.6%
1 1年目から 3%)。
退職金受け取り
収入
支出
2500
2000
健康 であれば、年間約70 万円
の貯 蓄増で生涯を 乗りきれる
1500
1000
500
0
40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75
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第 5 回「FP向上のための小論文コンクール」入賞作品(2014 年、日本FP協会)
2.「不健康なライフスタイル」の家計推移
同じ40歳でも、夜の宴会・2次会・寝不足などがたたり、
高血圧・高脂血症(脂質異常症)・糖尿病を発症。
生命保険も住宅ローンも見直せないと、貯蓄を取り崩すことにも
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「不健康な生活スタイル」のほうは、夜の宴会や二次会、寝不足がたたり、40 代半ばから高血
圧・脂質異常症、糖尿病を発症し、通院生活が始まってしまう例を試算していますが、健康状態が
悪化すると、保険の見直しも住宅ローンの見直しも厳しくなると言えます。更に収入も伸びずに低
下傾向が出ると、医療費支出の増大などと合わせ、家計収支は非常に辛い状態になることがグラフ
からの一目瞭然です。
やはり、表 1 にまとめたように、健康生活ができる方と、生活習慣から健康を害してしまった方
とでは、収入面、支出面、そして生涯収支にも大きな違いが出てくるのは容易に予想できると思い
ます。
[表1]健康生活 VS 病気を患った生活:家計収支への影響
健康生活
病気を患ってしまった生活
収入面
元気で、いい仕事ができ、生産効率もアップ
体力や集中力が衰え、仕事も生産性も悪化
支出面
・医療費支出が減る
・医療費支出や治すための食費・交通費など
・生命保険・医療保険も見直しでき、より健康 かさみがち
体割引など利用できる可能性も。健康なら、 ・生命保険・医療保険も見直し難しいことも
住宅ローンの見直しも団信の審査で選択肢 ・住宅ローンの見直しも、団信の審査のため
が減ることはない
に難しい場合もある
・一方、健康維持のための支出もある程度は
発生
生 涯 収 家計収支に余裕ができ、貯蓄額や自由に使 家計収支が厳しくなり、貯蓄額や自由に使え
支
えるお金が増える
るお金も減る
表:吹田作成
3.健康状態を加味したプラン作成のためのヒアリング
実際にお客様と話をしていると、健康に関わる支出が多様化していることがわかります。定期的
に整体に通い年間 20 万円かかる方、ご主人が毎日飲む栄養ドリンクやサプリメントで年間 30 万円
程度かかる方、その一方で、タバコ代が月 4 万円で年間 48 万円はかかるという女性もいました。
また、「予防で通う整体は健康保険がきかないけれど、関節の不調などによる治療なら健康保険
がきくからそちらがいい-」と予防の意識の低い方も見かけたことさえあります。
私自身、もともと家計支出には、その方の価値観や生活習慣が染み込んでいるので、単純に切り
詰める話はできないと思っています。お客様の中には、生活習慣などを質問しながら、生活習慣病
による出費に気づき、それが膨らまないように、予防へ動ける人もいます。また、健診結果のデー
タがわかれば、それを元に、生活習慣病のリスクに応じた医療費支出も意識して明確化し、本人自
身が悪化しないように気をつけるという行為も導けると思います。
以下のように、現状をヒアリングする際に、次のような視点で生活習慣について聞いたり、確認
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したりすることは十分可能でしょう。
表 2 も合わせてご確認ください。
(1)健康維持や治療などの支出
「健康維持のために使っているお金や今後増えそうな支出はありますか?」運動や体のケア、健
康食品・栄養ドリンクやサプリ、薬などがあれば、支出項目に反映させることができます。
(2)飲食・嗜好品
「食費や交際費に関して、夜の付き合いは何回くらいありますか?」「また、脂っこい食事や塩
分の多い食事が好きですか? 」これらの頻度で、表 2 にあるような改善点を共有することができ
ます。
「たばこは吸いますか?吸う場合はどれくらい?」1 日の本数と吸ってきた年数がわかれば、喫
煙指数を試算できます。
[喫煙指数=喫煙本数×喫煙年数]が 400 以上の場合、肺がんになるリス
クが高いと言われています。たばこを吸わない方は、民間の生命保険の中で、非喫煙割引を使って
保険料を軽減することを提案の中に盛り込むことも可能でしょう。
こうした話をすると、お客様や配偶者の方も、たばこ代のみでなく、生命保険料や医療費の軽減
効果を再認識されることもよくあります。
(3)運動
「趣味などで体を動かしたり、何か運動をされていますか?」最近は、ウォーキングをする方、
マラソンにチャレンジする方もみかけますが、運動不足から肥満体質になったり、循環器系の疾病
や癌のリスクにつながるというデータもあります(表 2 以下参照)
。
(4)睡眠
「お仕事などで睡眠不足などは大丈夫ですか?」疲れやストレスをためずに過ごせることで、精
神疾患はもちろん、自然治癒力をアップさせることができ、がん・高血圧・糖尿病の医療費削減に
も貢献します。
(5)体重管理
「ここ数年で体型の変化などで、洋服の買い替えなどもありました?」体重の急激な変化は、被
服費アップにもつながり、肥満から高血圧などに影響することも十分考えられます。身長と体重か
ら概算できる BMI 値などから、民間の生命保険料の健康体割引を使えるかどうかも見当をつける
ことも可能でしょう。
なお、健康診断結果で気になる部分があれば、表 3 の生活習慣病高血圧・糖尿病・脂質異常症・
次脳病・肝臓病の平均治療費をもとにざっくりと支出へ反映することも可能です。
このように健康や生活習慣と支出とを合わせて確認することで、将来の収支をより具体的にでき
るとともに、生命保険の健康体割引や住宅ローンを見直す際の団体信用生命保険も意識してより現
実性の高いプランを提案することもできるでしょう。
[表2]改善できる生活習慣のポイントと健康や家計への影響
心がけるポイント
健康への効果・影響
飲
食
嗜
好
品
食事は、野菜から、よく噛んで
食べ、腹八分目を心がけましょ
う
・繊維質の多い野菜から食べると、糖
質・脂質・コレステロールの消化吸収
を遅らせ、食後の血糖上昇抑制効果
へ
・よく噛むことで歯の健康や脳の活性
化にもつながる
調味料を少量にしたり、塩分を
高血圧への影響や、腎臓の負担を軽
控えめに
減できる
お酒を適量にしましょう
・アルコールのとり過ぎには要注意
(ビール中瓶 1 本 500ml/日本酒 ・適量ならリラックス効果と、心臓疾患
一合(180ml)程度)
を予防する善玉コレステロールのレベ
ルをあげる効果も
3
家計への効果・影響
・医療費や歯科診療費の
軽減効果
・大食いを避けることで、
食費も管理しやすくなる
医療費支出の軽減効果
・お酒代もリーズナブル
に
・医療費支出も軽減へ
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適
度
な
運
動
体
重
管
理
たばこを吸う場所と一日の吸う
本数を決めて、抑制に心がけを
[喫煙指数=喫煙本数×喫煙
年数]が 400 以上は注意
1日 8,000 歩(80 分程度)歩いた
り、1 週間で 60 分程度スポーツ
で汗をかくなど運動を
・喫煙指数が 400 以上なら肺がんの可 ・たばこ代の軽減
能性が高く、600 以上なら更に、肺が
・医療費支出の軽減効果
んリスクが高まる
・民間の生命保険料の非
喫煙割引も
・身体活動・運動の量が多い人は循環 ・体力づくりで、医療費削
器疾患とがんの発症リスクが低いこと 減
が実証
・循環器系疾患とがんの
・1日 8000 歩など運動を続けることで、 リスク軽減
酸素摂取量が増え、持久力、心臓収
縮力もアップ
食事と運動を心がけ、体重管理 ・肥満と血圧には関係があり、体重 1kg ・体型が変われば、洋服
をしましょう。
の増加で、血圧1~1.5mmHg 上昇する の買い替え費も発生
BMI 値=体重:kg / (身長:m の と言われる
・肥満でない・血圧や血
二乗)が男女とも 18.5 以上 25 未
糖値も正常などで生命保
満なら普通体重
険料の健康体割引も
自分にあったストレス解消法を
・ストレス解消で免疫機能を回復し、が ・元気で仕事力アップ
知り、十分な睡眠を
んやうつの罹患率も下落傾向に
・医療費削減にも貢献
・睡眠は、自然治癒力を高め、がん抑
制、高血圧、糖尿病にも効果あり
ス
ト
レ
ス
や
睡
眠
表:吹田作成 表中の健康の効果は以下を参照
●運動に関して
・健康づくりのための身体活動基準2013
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002xple-att/2r9852000002xppb.pdf
・厚生労働省 「肥満を防ぐ日常生活」
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/seikatu/himan/life.html
・厚生労働省「健康日本 21」 http://www1.mhlw.go.jp/topics/kenko21_11/top.html
1 日の目標歩数は 8000 歩(80 分程度)と明記。
・身体活動・運動の量が多い人は循環器疾患とがんの発症リスクが低いことが実証されており、1日 8000
歩など運動を続けることで、酸素摂取量が増え、持久力、心臓収縮力もアップすると言われている。(出
所:岩波新書「生活習慣病を防ぐ〜健康寿命をめざして〜」香川靖雄著 P77~78)
●たばこについて
国立がん研究センター がん予防検診研究センター予防研究部
http://epi.ncc.go.jp/can_prev/evaluation/782.html
●たばこの喫煙指数について
ブリンクマン指数の定義により、[喫煙指数=喫煙本数×喫煙年数]が 400 以上なら肺がんの可能性が
高くなる。喫煙指数が 600 以上は、肺がんのリスクが更に高まる。
●体重管理:BMIについて
BMI(Body Mass Index)は、体格指数を表すものとして、国際的にも認められている。肥満・やせの基
準。BMI 値=体重:kg / (身長:m の二乗)で計算され、日本でも医師はBMIを肥満判定の指標にしてい
る。BMIが男女とも 18.5 以上 25 未満なら普通体重とされている。肥満と血圧には関係があり、体重 1kg
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の増加で、血圧1~1.5mmHg 上昇すると言われる。
出所:BMI 判定表(新しい肥満の判定と肥満症の診断基準)日本肥満学会肥満症診断基準検討委員会
より
●ストレスや睡眠について
・朝日新書「病気になりやすい「性格」5万人調査からの報告」辻一郎著(「ストレスが解消できると、免疫
機能が回復し、がんやうつの罹患率も下げることができる」P18)。
・岩波新書「生活習慣病を防ぐ〜健康寿命をめざして〜」香川靖雄著(P79)より、睡眠は「自然治癒力を
高め、がんを抑制、高血圧、糖尿病にも効果がある」と明記。
・厚生労働省「健康日本21」には、以下のように記載。
「睡眠不足は、疲労感をもたらし、情緒を不安定にし 1)、適切な判断力を鈍らせ 2)、事故のリスクを
高める 3)など、生活の質に大きく影響する 4)。また、睡眠障害はこころの病気の一症状としてあらわ
れることも多く 5)、再発や再燃リスクも高める 6)。さらに近年では、 睡眠不足や睡眠障害が肥満 7)
8)、高血圧 9)、糖尿病 10)11)の発症・悪化要因であること、心疾患 12)13)や脳血管障害 14)を引
き起こし、ひいては死亡率の上昇 15)をもたらす」
4.生活習慣と健康についての情報提供と相談後のフォロー
40 代前後の方とお話ししていると持病をお持ちの方もよくみかけます。実際、前述の質問など
から、ご自身の持病について口にされることも多くあります。そこで、高血圧、糖尿病、高脂血症
などの脂質異常症、腎臓病、肝臓病などがわかると、表 3 のように健康保険別の平均治療費を目安
に試算することが可能になります。表 3 は、病院の医療費 10 割分のデータなので、個人の自己負
担は、健康保険の自己負担割合に応じて、3 割から 1 割で計算していくことができます。
[表3]一人あたりの主な生活習慣病別年間医療費平均(万円)
以下は 10 割の医療費なので、3 割~1 割で自己負担額を換算可能。
医療費
(10 割:万円)
組合健保
(60 歳未満)
男性
女性
国保
(60~74 歳)
男性
女性
後期高齢者
(75 歳~)
男性
女性
高血圧症
51.78
51.41
89.50
88.86
173.47
172.22
治療費
糖尿病
58.36
63.69
100.88
110.08
195.52
213.36
治療費
脂質異常症
46.53
40.73
80.43
70.40
155.89
136.44
治療費
腎臓病
40.84
66.67
70.59
115.24
136.81
223.35
治療費
肝臓病
32.44
23.65
56.07
40.87
108.68
79.22
治療費
出所:
H23 年版「医療給付実態調査 厚生労働省」
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&tclassID=000001048115&cycleC
ode=0&requestSender=dsearch
平成 22 年度 国民医療費の概況
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/10/index.html
厚生労働省「政府管掌健康保険における健診・医療費データの分析結果」
http://www.dm-net.co.jp/seido/02/
「平成 23 年度生活習慣病関連医療費の動向に関する調査分析報告」(健康保険組合連合会)一人あたり
医療費平均
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第 5 回「FP向上のための小論文コンクール」入賞作品(2014 年、日本FP協会)
また、定期的に健康診断を受けられている方などで、その健診データ詳細をご本人がご存知でし
たら、以下の表 4 をご参考までにお渡しして、正常値と異常値のチェックをしながら生活習慣病の
リスク度を示唆することも可能でしょう。相談中に時間がなくても、表 4 の資料をお渡しするだけ
でも、お客様が健診データに関心をもって、日々の健康管理を継続できるようになり、フォローの
コミュニケーションがとりやすくなるとも言えます。
定期的に健診を受けることをナビゲートすることは、お客様の健康管理とライフプランの実現に
貢献しますし、私たち FP が定期的にお客様にお会いして、プランの検証をするきっかけになると
思います。
[表4]健診データと生活習慣病のリスク度チェック
健診データ
分類
高血圧重症
血圧:収縮期と拡張期の
数値(mmHg)
LDL コレステロール(悪
玉):数値(mg/dl)
中性脂肪:数値(mg/dl)
空 腹 時 血 糖 : 数 値
(mg/dl)
条件に応じて治療費へ反映
収縮期 180 以上、または拡張期 110 以上
高血圧中等症
上記以外で、収縮期が 160 以上、または拡張期が
100 以上
高血圧軽症
上記以外で、収縮期が 140 以上、または拡張期が
90 以上
高コレステロー
ル血症
140 以上は高コレステロール血症(脳血管疾患)
境界域
上記以外で 120 以上は動脈硬化のリスク
脂質異常症、
肥満、高脂血
症
150 以上は、動脈硬化や心臓病、脳卒中
低βリポ蛋白
血症、低栄養
29 以下は、栄養不足
糖尿病
軽度・境界型
126 以上は、糖尿病と診断
上記以外で 110 以上は、糖尿病のリスクあり
HbA1c(ヘモグロビン A1
c):数値(%)
糖尿病
5.6%以上は、糖尿病と診断
尿糖:+/-
糖尿病
プラスなら糖尿病
尿たんぱく:+/-
腎臓病
プラスなら腎臓病
クレアチニン( 血中老廃
物):
数値(mg/dl)
腎臓病
男性は 1.2 以上で腎臓病のリスク
女性は 0.9 以上で腎臓病のリスク
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GOT(心臓肝臓に含まれ
る酵素):
数値(IU/L)
肝臓病
36 以上で心筋梗塞、肝臓病のリスク
γ-GTP(肝臓腎臓に含
まれる酵素):数値(IU/L)
肝臓病
56 以上で肝臓病、肝硬変のリスク
出所:それぞれのデータからの診断は以下より
●厚生労働省 標準的な健診・保険指導に関するプログラム
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/info03a.html
●脂質異常症
厚生労働省脂質異常症ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/seikatu/kousi/number.html
●糖尿病
厚生労働省糖尿病ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/seikatu/kousi/number.html
5.健康へ投資するという考え方は家計にも社会にも貢献する
実際、ご相談に応じている中で、心身ともに健康な人は、無駄遣いをすることが少ないと感じて
います。例えば、朝の目覚めも良く、早寝早起きから夜の電気代なども抑えめなこと、医療費支出
が少ないこと、ストレスが少なく暴飲暴食に走らず、胃腸も元気で食費も安定していること、集中
力もアップし、仕事も順調など、相談後のフォローも前向きな対策が増えていくことが多くなりま
す。
一方、生活習慣が乱れがちだと、ストレスを抱え、愚痴が多く、食事や買い物などで無駄遣いや
衝動買いも多くなることや、胃腸に負担がかかって薬代もかさむなども見られます。
ご本人にとっても家族にとっても、健康を害することは、心身および経済的に非常に辛いことで
す。一方、健康で過ごせるなら、医療費や生活費などの無駄が減り、元気に仕事もできることから
収入面も安定でき、生涯収支を改善できる効果があります。
更に、健康による医療費の軽減は、国民健康保険、健康保険組合、社会保険の医療費負担を着実
に軽減できる効果があり、健康保険の財政的な貢献と、働く人の収入安定などによる税収安定にも
つながるでしょう。
6.健康 FP サービスの役割と今後のビジネス展開の可能性
ライフプランの実現に向けて、お金と健康や生活習慣は非常に深い関係があります。そこで、前
述のようなヒアリングやプランニング、フォローをするサービスとして「健康 FP サービス」とい
う概念を導入しても良いのではないかと最近感じています。具体的に生活習慣や健康面を加味して、
キャッシュフロー表に反映することもできますし、毎年、健康状態も合わせてお客様とプランを検
証する機会を持ち、より実現性を高めることができるからです。健康診断の結果を見ながら、生活
習慣病のリスクが軽減したなら、家族でお祝いイベントを提案してもいいでしょう。
最近は、健康経営の視点も一部の自治体や企業で導入されています。健康経営は、「社員の健康
管理を経営課題として捉え、その実践を図ることで、社員の健康の維持・増進と、会社の生産性向
上を目指す経営手法」と言われていますが、健康経営を心がけることで、自治体では住民の健康増
進から医療費支出が軽減し、企業では従業員の仕事の集中力などが高まり、生産性が上がると言わ
れています。
このように生活習慣の改善からくる健康の維持と生活設計の両方をチェックしてライフプラン
の実現をサポートする「健康 FP サービス」を普及・浸透させることができれば、FP 活動は、企
業の福利厚生制度としてはもちろん、健康産業とのタイアップなどで、多方面に浸透することがで
きるのではないでしょうか。
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