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クロマトグラフィー
ねらい
合成有機化合物、天然有機化合物を問わず、精製する方法には、様々な手法
が知られている。その中でもクロマトグラフィーは大変有効な手段である。ク
ロマトグラフィーにも多くの種類があり、適宜選択し、あるいは複数を組み合
わせて使用されている。ここでは、最も一般的な手法であるシリカゲルカラム
クロマトグラフィーとシリカゲル薄層クロマトグラフィーについて実験を行い、
クロマトグラフィーについて学ぶ。
原理に代えて
昔々、遠くの国に偉大な王様が住んでいました。そして王様には美しい娘が一人いました。
王様はその娘が自分の王国内で最も強い男と結婚することを望んでおりました。
〈中略〉
クロモス(注:王様配下の一人)は次のように王様に申し上げました。
「陛下、王国の西部区域に
激流の川があります。そこを栄えある競技会に使ってはどうでしょうか。まず、技師に命じて
川の中に一定間隔で杭を打ち込ませます。男は杭を掴むことができますが、やがては流れによ
ってその杭から引き離されます。しかし、次の杭に流れついてそこで再度掴まることができま
す。力が強い者ほどより多くの杭により長い時間、掴まることができます。スタートからゴー
ルまでの間に十分な数の杭を配置しておけば、最初にゴールするのは最も弱い者で、最後に到
着するのが最も強い者ということになります。陛下の課題を解決できるすばらしい競技会にな
ることでしょう。」
〈中略〉
そして、本当にそのとおりのことが起こりました。勝者は簡単に、しかも流血沙汰なしで見
つかり、王様の娘と結婚しました。
スポーツドクターらは、その川を「移動相」と、その杭を「固定相」と、そして選手がコー
スの長さを移動するのに必要な時間を「保持時間」と呼びました。
〈後略〉
出典: Thin Layer Chromatography
メルク TLC マニュアル",メルク(株), 東京(2002).
準備
各班で
ほうれん草
の葉 2 枚程度(約 8g)を予め用意すること【重要】
。
当日、キャピラリーは各自で作製する。
操作
①乳鉢でほうれん草の葉 2 枚(約 8g)をエタノール 10ml とすり潰し、ピペットでエタ
ノールを捨てる。続いて、葉をジクロロメタン 10ml と十分すり潰し、抽出液をピペッ
トで 50ml 三角フラスコに移す。これに無水硫酸ナトリウムを加え 30 分以上乾燥する。
②キャピラリーで上記の抽出溶液を採取し、TLC 上に試料をうち、展開する。展開溶媒は、
ヘキサン:アセトン混合溶媒、容積比9:1,7:3,5:5の 3 種類で行う。各 10ml
を用意する。展開後、目視、ヨウ素蒸着、UV 照射でスポットを確認し、クロマトグラ
ムを記録する(シリカゲル薄層クロマトグラフィー)。
③カラムクロマト用展開溶媒(ヘキサン:アセトン=7:3)を 100ml 調製する。50ml ビ
ーカーにシリカゲルを 20ml 量りとり、これに調製した展開溶媒を 20ml 加え、ガラス
棒でよく攪拌しシリカゲルを膨潤させる。
④カラム管に脱脂綿を詰めた後、垂直になるよう固定し、展開溶媒 10ml を入れておく。
上部に三角漏斗をセットし、カラム管のコックを開いた状態で、ガラス棒でシリカゲル
を攪拌しながら一度に充填する。充填後、カラム管を叩きシリカゲルが密になるように
する。シリカゲル表面まで溶媒が下がってきたらコックを閉め、シリカゲル上に海砂を
乗せ、シリカゲルカラムクロマトグラフを用意する。
⑤①で調製した抽出液を濃縮する。50ml ナスフラスコの重さを量り、脱脂綿を詰めた三
角ロートで硫酸ナトリウムをろ過し、充分洗浄後、ろ液と洗液を集めエバポレータで濃
縮する。濃縮後、試料の重量を記録すること。
⑥濃縮した試料をカラム用展開溶媒 1ml に溶解させ、試料全量をピペットで、内壁をつた
わらせてゆっくりカラムに充填する。コックを開き試料をシリカゲル表面まで流す。次
に少量の展開溶媒で壁面に着いた試料を洗い込み同様にシリカゲル表面まで溶媒を流
す。これを3回繰り返した後、展開溶媒をカラム管上部まで充填し、資料を展開する(シ
リカゲルカラムクロマトグラフィー)。最後に、そのクロマトグラムを記録する。
課題
1)シリカゲル薄層クロマト
1)同じ試料を、極性の高い溶媒と低い溶媒で展開すると、Rf 値はどのように
変化するか、説明しなさい。
2)極性の高い試料と低い試料を同じ溶媒で展開した場合の、Rf 値の変化について
説明しなさい。
2)シリカゲルカラムクロマト
試料の量と分離能(Rf 値の違い)と、シリカゲルカラムの直径と長さの関係について
説明しなさい。
3)他のクロマトグラフィーを 3 種類以上挙げ、その原理を述べなさい。