<道徳の授業> 主題名:友だちの死 守山市立物部小学校 第3学年 児童

<道徳の授業>
主題名:友だちの死
守山市立物部小学校
指導者名
ねらい
資料等
準備物
第3学年
児童数39名
教諭 辻 教子
人の死を通して生命の尊さに気
づき,生命を大切にしようとする
心情を育てる。
・資料名「お母さんなかないで」
・出典 文溪堂
・救急車のサイレンの音
・場面絵
・フラッシュカード
・佐世保の事件の父親の手記
授 業 の 実 際
1
児童の実態
核家族で生活している子がほとんどであり 、
人の死の場面に出あった経験のある子は少な
い。また、ゲームでリセットボタンを押せば
死んだ人が簡単に蘇ってしまうことを経験し
ているため、死の意味が充分に理解できてい
ない子も多い。
そのため、腹が立つことがあると、友だち
に 対 し て 簡 単 に 「 死 ね 。」「 消 え ろ 。」 等 の 言
葉を使ってしまう子も見られる。
命が大切であるということは頭では分かっ
ていても、具体的に命が終わることの悲しみ
や喪失感などを自分の体験として味わってい
ない子が多い。
生き物に対しては生活科の学習等を通して
やさしい気持ちで育てたり、逃がしてやろう
とする心が育っていたりする子が多い。中に
は興味本位に残虐な行為をしようとする子も
見られるが,それを見て注意し合うことがで
きる。
家でペットを飼っている子も比較的多く、
生き物の死を通してその悲しみを経験してい
る子もいる。
同じ生命尊重の価値で,資料「子リスと母
ネコ」を使って学習した後も,社会科の探検
先でアリをつぶそうとする友だちを注意する
姿が見られた。
佐世保での小六の少女の事件をテレビのニ
ュース番組で見て知っている子は多く、朝の
会 で 話 題 に す る と 、「知ってる。知ってる 。」
と話す子が多かった。
この時期に人間の死についても深く考えさ
せ た い と 思 い 、「 友 だ ち の 死 」 の 資 料 を 使 っ
て授業をすることにした。
2 学習活動
(1) 導 入
資料への方向付けをするため、救急車のサ
イレンの音を目をつむって聞き、どんなこと
を思ったか発表し合った。
「交通事故でだれかけがをしたのかな?」
「だれか病気でたおれたのかな?」 等
の思いを持ち、効果音を使ったことで、スム
ーズに資料への導入を図ることができた。
(2) 展 開 <前段>
「お母さんなかないで」の資料を読んで話し
合った。
資料の提示は状況がつかみやすいよう、場
面絵をはりながら,効果音の入ったCDを聞
かせた。今まで自分たちが経験したことのな
い主人公の思いに真剣に聞き入る姿が見られ
た。
発問は以下の三つにした。
主人公の「わたし」の気持ちの変化を追い
ながら考えさせた。
①正子さんの事故のことを聞いた「 わたし 」
はどう思ったでしょう。
②正子さんのお通夜で誕生日のプレゼント
を渡された「わたし」はどう思ったでし
ょう。
③お葬式の時「わたし」はどんな気持ちで
「まあちゃあん 。」と呼んだのでしょう。
発 問 ① で は 、「 わ た し 」 が 昨 日 ま で は 元 気
だった友だちの突然の事故を知り、今まで経
験したことのない驚きや不安、悲しみを感じ
ていることに共感させたいと考えた。そのた
め、なかなか誕生会にこない正子を心配しな
がらずっと待っていた所に事故の知らせの電
話が入った状況をしっかりつかませるように
した。
発問②では 、正子が残してくれた「 わたし 」
へのプレゼントを見て、改めてかけがえのな
い命を失った悲しみに共感させたいと考え、
サルのぬいぐるみと手紙を紙袋に入れて用意
し、役割演技を取り入れた。
どの子の思いも授業の中で出させたいとい
う考えから、役割演技は二人一組で取り組ま
せた。プレゼントを渡すお母さん役と渡され
る「わたし」の役にそれぞれなり、プレゼン
トを受け取った「わたし」の気持ちを話す。
そうすることで、どの子もじっくりと考え、
自分の思いを話すことができた。役割を交代
することで、お互いの考えを聞き合うことも
できた。また、なかなか進んで発表しない子
どもの意見を机間支援する中で、教師が聞く
こともできた。さらに意図的指名をし、みん
なに広げることもできた。プレゼントの実物
を用意したことで,場面の状況がつかみやす
く、考えやすかったようである。積極的に取
り組む子が多かった。
発問③では,正子の写真を黒板にはり、正
子がどんなことを「わたし」に話しかけてい
るかを考えさせたうえで「わたし」の気持ち
を考えさせるようにした。また、悲しみばか
りでなく、力強く生きることの大切さにも気
づ か せ た い と 考 え 、「 わ た し 」 の せ い い っ ぱ
い生きようとする姿にふれられるようにした 。
(3) 展 開 <後段>
自分の近親者や飼っていた生き物の死に出
あった時の気持ちを振り返り、命の大切さを
実感したことを話し合った。
既に祖父母を亡くしており、二度と会えな
くなった悲しみ 、さみしさを話す子もいたが ,
飼っていた生き物の死に出あった時の気持ち
を話す子が多かった。
児童の反応
・飼っていた金魚が死んでしまった。えさを
ちゃんとやらなかった時があったので、お
なかがすいて死んでしまったのかもしれな
いと反省した。これからはちゃんと世話を
しようと思った。
・飼っていたハムスターが朝起きて見てみた
ら死んでいた。一生懸命手にのせてあたた
めたけど、生き返らなかった。お墓を作っ
てあげた。
・飼っていた犬が年をとって病気になって死
んでしまった。とてもさみしくなった。
・トンボをつかまえて虫かごに入れていたら
次の朝死んでいた。早く逃がしてやればよ
かったと思った。
(4) 終 末
佐世保の小六の少女の事件の被害者の父親
が書いた手記を聞く。
ちょうど新聞やテレビのニュース番組で被
害者の父親の手記が発表されたころだったの
で、教師の説話の代わりに読むことにした。
子どもを亡くした親の気持ちが書かれた手記
は、3年生の子どもたちには少し難しかった
かもしれないが、もし自分が死んだら家族は
どんな気持ちになるのだろうと考えながら聞
く子も多かった。真剣に聞き入る子が多かっ
た。
授 業 を 終 え て
佐世保での小六の少女の事件の報道を聞い
た時、私たち大人に大きな衝撃がはしった。
子どもたちはこの事件をどうとらえているの
だろうと思った。1学期には既に「子リスと
母ネコ」の資料を使って生命尊重の価値を学
習していたが、今もう一度生命の大切さを学
習する必要性があると考え、年間指導計画を
変更し、参観授業で本時の授業を行った。
今度は人間の死に直面させることで、生命の
大切さに気づかせたいと思った。参観されて
いるお母さんの中には涙を流されている方も
何人かみられた。子どもたちも真剣な表情で
授業に臨んでいた。
人の生死の場面に出あった経験が少ない子
どもたちにとって、仲良しの友人の死を扱っ
た本資料は 、大きな感動を与えたようである 。
授業後「先生、今日の授業はすごく心に響い
たわ 。」と話しにきてくれた子もいた。
友人をなくした主人公の悲しみに充分ひた
りながら 、死の悲しみ 、さみしさだけでなく 、
生命の重さ、大切さに気づいていったように
思う。友の死から学び、明日に向かって強く
生きようとする主人公の思いに共感できたよ
うだ。
授業後は主人公からの言葉として学習内容
をまとめ掲示している。理科の昆虫の学習な
ど他教科との関連をはかりながら、日常生活
の中でも指導を重ねていきたいと思う。