第4学年 「一つの花」学習指導案

第4学年 国語科学習指導案
平成22年9月22日(水)
江戸川区立鹿骨東小学校
4年1組
29名
指導者
宇田川 耕史
豊かな読みの力を育てる指導法の工夫
~文学教材の指導を通して~
1.単元名
学習材
願いを受け止めて読もう
「一つの花」
2.単元の目標
【関心・意欲・態度】
・場面の様子や登場人物の気持ちを想像しながら、物語を読もうとしている。
【話すこと・聞くこと】
・变述から読み取ったことをもとに、自分の思いや考えを発表することができる。また、自
分の考えと比べながら話し合いに参加することができる。
【書くこと】
・变述から、場面の様子や登場人物の気持ちについて、感じたことや想像したことを書くこ
とができる。
【読むこと】
・場面の移り変わりや、情景、登場人物の心情を、变述を基に想像しながら読むことができ
る。
・場面の様子を、作品の中の大事な言葉に気をつけて想像しながら読むことができる。
【言語事項】
・時を表す言葉について理解し、語句の役割について理解している。
3.単元の評価規準
国語への
関心・意欲・態度
B
变述に即して、
場面の様子や、
登場人物の心情
をすすんで理解
しようとしてい
る。
話す・聞く能力
書く能力
読む能力
言語事項
場面の移り変わ
りに応じて、登場
人物の様子や気
持ちについて、自
分の意見を話し
たり、友だちの意
見を聞いたりす
る。
心を動かされ
たことについ
て、变述に関わ
らせて書いて
いる。
・登場人物の気持
ちや場面の様子を
読み取るために、
手がかりとなる言
葉や文を自分で見
つけて読んでい
る。
・登場人物の心情
や場面の様子が分
時を表す言葉
について理解
し、語句の役
割について理
解している。
かるように音読す
る。
A
变述に即して読
み取ったこと
を、自分の考え
と比べながら、
場面の様子や、
登場人物の心情
を理解しようと
している。
友だちの思いや
考えを、自分のも
のと比べて聞き、
相違点や共通点
を考えながら話
し合いに参加し
ている。
变述をもとに、
感じたり想像
したりしたこ
とを、中心を明
確にして書い
ている。
・根拠となる变述
をおさえて登場人
物の気持ちや場面
の様子や変化を想
像しながら読んで
いる。
・書かれている内
容の中心や場面の
様子がよく分かる
ように音読する。
時を表す言葉
を見つけ、場面
の移り変わり
やつながりに
ついて理解し
ている。
4.単元について
(1)教材について
「一つの花」は戦争という特別な時代背景の中ではあるが、幼いゆみ子に対する両親の気
持ちが「ひとつだけちょうだい。
」という言葉を通して描かれており、それが主題となってい
る。過酷な環境の中で育つあどけないゆみ子と我が子の健やかな成長を願う両親の気持ち、
戦争のため、一つの喜びでさえ叶えられそうにない娘にありったけの心をこめて「一つの花」
を手渡し、戦争に行かなければならない父親の願い、戦後それを受け継ぎ明るく力強く生き
るゆみ子と母親の姿を、歴史的・社会的な状況を考えながら読み取り、主題に迫っていきた
い。
(2)児童の実態
3年からの持ち上がり学級である。自己主張が強い子が多く、休み時間も教室内外で活発
に活動し、言葉でのトラブルもたくさんあった。逆に、おとなしい子は、なかなか自己出せ
ない面がある。授業でも、国語に限らず、積極的に発言をする数人の子どもたちの発言を中
心に学習がすすんでしまうことが多い。自分の意見を持ったり書き込めていたりしても、発
表する勇気と決断力、自由に発言できるような学級の雰囲気が今一つなのだろう。
国語の時間には、当初から辞書を使って漢字の調べ学習をしたり、題材を読んで自分の感
想や意見をプリントに書き込みながら発表しあったりする活動を重視してきた。十分に力が
付いているとは言いがたいが、読むのが精一杯だった子が授業後の感想を書けるようになっ
たり、読む力の高い子どもは、たくさん書き込んでいたりする。しかし、登場人物の心情を
表現している变述を見つけられても、そこから心情を理解したり想像したりする力は全体と
して不十分と言わざるを得ない。
自分の知らない時代、世界を学習するのをよい機会として、一人ひとりの想像力と発言で
理解し、深めあう体験を共有したいとい思う。
(3)主題に迫るための手立て
本校では、
「豊かな読みの力」について、平成 16 年 2 月に出された文部科学省・文化審議
会答申「これからの時代に求められる『国語力』
」をもとに、次の4つの視点から考えること
とした。
3つそろうと、理解する力
考える力
→ 感じる力
→
想像する力
表す力
中学年では、この4つについて以下のようにとらえた。
考える力
・・・变述をもとに、中心をとらえて読み取る力
感じる力
・・・变述などから情景や登場人物の心情を感じ取り、心を動かす力
想像する力
・・・読み取ったことから情景や心情を想像する力
表す力
・・・考え、感じ、想像したことを、自分の言葉で発言したり書いたりする力
そして、この4つの力を支えるものとして、聞き合える・言い合える・認め合える学級づく
りと、語彙力の充実が欠かせないと考え、次のような手立てを考えた。
《日常の取り組みとしての手立て》
①調べて語彙を増やす→毎日の漢字練習で、熟語調べと短文作りをさせている。
教室に辞書を置き、意味調べや漢字調べができるようにしている。
②語彙と読解力の確実な定着を図る→音読を日々の宿題にし、正しく読めるようにする。
週2~3回朝読書の時間を確保し、読書量を増やす。
また、授業に関係する本を教室に置いたり紹介したり
する。
帰りの会などで、読み聞かせを行う。
③語彙を活用させるために表現する機会を増やす。→授業中、時には全員に発言を求める。
定期的に日記を書かせる。
活動後のミニ感想を随時書かせる。
朝の会でミニスピーチをさせる。
④他教科でも、意見発表の時間や対話の時間を増やす。→特活の時間での学級会の他に、他
の教科の時間でも予想したことや考え
などを話し合わせ、意見を発表する経験
を積ませる。
《学習活動の中での手立て》
①初発の感想を交流し、学習のめあてを設定する。
物語を読んで、
「一番心にのこったこと」
「よくわからないこと」「自分が○○だったら」
「みんなで話し合いたいこと」などを書く。それらの交流をもとに、学習のめあてにつ
いて話し合う。児童自身の感想や疑問からめあてを設定することで、意欲的に学習を進
めることができると考える。
②書き込みプリントを使って、一人読みをさせる。
「登場人物の様子や気持ちのわかるところ」にサイドラインを引き、思ったことや考え
たことを書き込みをすることによって、大事な言葉に注目して自分なりの読みをするこ
とができ、思いを表現しやすくなると考える。
③対話による意見発表の場を設定する。
全児童に発表の場を保証すると共に、全体の場でも自信をもって発言できるようにする。
④学習形態の工夫
話型をつくり、対話のペアを変えて様々な意見に触れる機会を作ったり、机をコの字型
にしてお互いの顔が見える形にし、ハンドサインを使って気持ちを表せるようにしたり、
同じ意見のもの同士の話し合いの場を持ったり、いくつかの場を設定した。意見が言えな
い子も意思表示をし、自分の考えや感想を人に聞いてもらい、認めてもらう体験を積むこ
とで、授業への参加意識を高めることができると考える。
⑤単元のまとめとして、
「一つの花」の意味をふまえた最終感想を書く。また、読み深めたこ
とを基に場面の中心や人物の気持ちを考えながら音読することで学習を振り返り、自分の読
みの深まりを確認する。
5.学習指導計画(全13時間)
次 時
学習活動
◎支援 ◆評価(評価方法)
第 1
全文を読み、学習のめあてを持つ
一
次
○題名「一つの花」からどんな話かを ◆題名から物語のイメージをもち、進ん
想像して書く。
で書こうとしている。
(ワークシート)
○教師の範読を聞き、初発の感想を書 ◆初発の感想を書くことができる。
く。
◎一番心に残った言葉や、文、シーン、
○「一つ」に繋がる言葉はどんなもの に着目したり、自分の疑問も含めて感想
があるか調べサイドラインを引く。
を書いたりすることができる。
○難語句の意味調べをする。
○場面に番号をつける。
2・ ○作品を読んでみんなで話し合い、深 ◆思ったことや話し合いたいことを書
3
めたいことを話し合う。
く。
(ワークシート)
◆自分と友だちの考えの違いや共通点
を考えながら対話することができる。
第
二
次
4
場面ごとに父・母・ゆみ子の気持ちや情景を読み深めよう。
○第一場面を読み、ゆみ子が最初に覚
えた「ひとつだけちょうだい」の言葉
から、その言葉を覚えざるを得なかっ
た生活の背景を読み取り、母親の願い
や気持ちを想像する。
◆戦時下の生活の厳しさや、ゆみ子の幼
さを読み取ることができる。
◆ゆみ子に対する母親の願いや気持ち
を読み取ることができる。
◆自分がなぜそう思ったのか根拠とな
る变述を示しながら発表することがで
きる。
5
○第二場面を読み、両親の会話や、ゆ
み子をめちゃくちゃに高い高いする
父親の行動からゆみ子に対する願い
や気持ちを想像する。
6
○第三場面を読み、戦争に行く日の家
族の様子を読み取り、気持ちを想像す
る。
○おにぎりを全てあげてしまう母親
の気持ちを想像する。
7
8
本時
9
10
第
三
次
11
12
◆ゆみ子に対する父親の願いや気持ち
を書くことができる。
◆自分と友だちの考えの違いや共通点
を考えながら対話することができる。
◆家族の様子や気持ちがわかるところ
にサイドラインを引くことができる。
(ワークシート)
◆おにぎりを全てあげてしまう母親の
気持ちを想像し、書くことができる。
(ワ
ークシート)
◆自分と友だちの考えの違いや共通点
を考えながら対話することができる。
○第四場面を読み、駅での家族の様子 ◆他の家族と違う様子やゆみ子の両親
を読み取り、気持ちを想像する。
の気持ちが分かるところにサイドライ
○駅での家族の様子や両親の気持ち ンを引き、比べることができる。
が分かるところにサイドラインを引 ◆自分と友だちの考えの違いや共通点
き、想像したことを話し合う。
を考えながら対話することができる。
○第五場面を読み、
「一つの花」を見 ◆「一つの花」に願いを込めて出征して
つめながら出征していく父親の、ゆみ いく父親の、ゆみ子への気持ちを、变述
子に対する気持ちを想像する。
を手がかりに想像することができる。
◎コスモスの咲いていた場所や様子に
も着目させる。
◎何も言わずに汽車に乗っていく父親
の気持ち、一つの花に込められた願いを
想像する。
◆自分と友だちの考えの違いや共通点
を考えながら対話することができる。
○第六場面を読み、母親とゆみ子の暮 ◆戦中と戦後の違いを読み取り、母親や
らしぶりを読み取る。
ゆみ子の気持ちを想像する。
◎行動や会話から母親とゆみ子の気持
ちを想像させる。
作品を通して、考えたことをまとめよう
○全体を通してふりかえる。
○「一つの花」という題名に込められ
た作者の願いについて考え、自分の考
えを書く。
○全体をふりかえっての感想を書き、
初発の感想と比べる。
◆読み深めたことを元に、「一つの花」
に込められた意味や願いを想像し、なぜ
そう思ったかを明らかにしながら書く。
◎初発の感想と比べ、自分の読みが深ま
ったことを確認させる。
○前時に書いた感想を発表し合う。
◆自分と友だちの考えの違いや共通点
を考えながら発表したり、対話したりす
ることができる。
13
○「一つの花」を音読し、聞き合う。 ◆読み深めたことを生かして音読して
いる。
◎総合の時間を使って…防災頭巾、もんぺ、配給、出征する兵士を見送る様子、当時の生活
の様子を視覚的に理解することが教材文の歴史的背景を理解することに繋がると考え、DV
D「火垂るの墓」や小松崎辰子氏による戦争体験のお話、昭和館の資料や図書館から戦争関
係の本を貸し出ししてもらったものを紹介し、当時の生活について学んだ。
◎保護者の協力も交えて…父親、母親の気持ちを、子どもに自分の立場に立って考えさせる
のには限界があると思われるので「
(ママ、パパ、まんま以外で)はじめて覚えた言葉は」
「何
歳くらいか、その頃の様子」など、幼い時の様子を教えてもらう、宿題の音読を一緒にして
もらうなど、協力していただいた。
6.本時の学習( 9/12 )
(1)本時のねらい
「一つだけの花」をゆみ子に渡し、何も言わずに汽車に乗っていったお父さんの気持ちを想
像する。
(2)展開
学 習 活 動
◎支援
◆評価(評価方法)
1,前時のミニ感想を発表する。
・2~3人
2,本時の学習のめあてと学習範囲を確認す ◎読みのめあてを掲示する
る。
コスモスの花をわたして戦争に行くお父さんの気持ちを想像しよう。
3,音読する。
一人読みをする。登場人物の気持ちや疑 ◎学習範囲を確認する。
問などに線を引き、自分の考えを書きこ ◆線を引いているか。書き込みがあるか。
む。
4,読みのめあてについて考えたり、自分の ◆相手の話を聞いているか。
考えを書き込んだりしたことを 2~3 人 ◆自分の考え、書き込みを伝えているか。
で話し合う。
◎お父さんの気持ちを声として表現させる。
・なぜコスモスで喜んだのだろう。
◆变述を根拠に、自分の考えを深めている
・お父さんはなぜ何も言わずに行ってしま
か。
ったのだろう。
5,
「一つだけのお花、大事にするんだよう
…。
」と言って、コスモスをわたし、何 ◆気持ちをこめて音読できたか。
も言わずに戦争に行ってしまったお父
さんの気持ちを全員で話し合い、想像を ◆感想を書けたか。
深める。
・コスモスは、お父さんのかわり
・コスモスはお父さんの最後の言葉のか
わり
・生命力のある美しいコスモスのように
育ってほしい
・悲しくて何も言えなかった
・何か言うとよけい行きたくなくなって
しまうから
・何か言うと泣いてしまうので、お互い
笑顔で別れたかったから
6,お父さんの気持ちを考えながら音読す
る。
7,学習の感想を書く。
(3)本時の視点
・一つだけの花をゆみ子にわたし、何も言わずに汽車に乗っていったお父さんの心情を想像
しながら読めたか。
・書き込みをもとにしながら、話し合うことができたか。
教材分析
場面
考える力
感じる力
想像する力
(一)
・「一つだけちょうだい」がはっ
きり覚えた最初の言葉
・ご飯のときでも、おやつのとき
でも「もっともっと」と言ってい
くらでも欲しがる。
・知らず知らずのうちにお母さん
の口ぐせを覚える。
○「じゃあね、一つだけよ。」と
言って自分の分から一つゆみ子
に分けてくれる。
まだ小さいんだな。
私は「○○」を最初に覚え
た。
その言葉を言えば、食べ物
がもらえる。
何度もお母さんが言ってい
る。
ゆみ子がお腹を空かせてい
るので、自分の分から分け
てあげる。
たくさんあげられる程の量
も無いので「一つだけ」
長い言葉を覚えるなん
て、相当お腹が空いてい
る。
「お父さん、お母さん」
よりも先に「一つだけち
ょうだい」を覚えてしま
う悲しさ、ひもじさ
配給で生活が苦しい中で
も何とかゆみ子とお父さ
んには食べさせてあげた
い。
(二)
○かわいそうな子
「一つだけちょうだい」と言えば
何でももらえると思っている。
●深いため息
「一生、みんなちょうだい、山ほ
どちょうだいと言って両手を出
すことを知らずにすごすかも知
れないね。一つだけの~…一つだ
けの喜びさ。いや、喜びなんて、
一つだってもらえないかも知れ
ないね。」
●めちゃくちゃに高い高いする。
食事の度にゆみ子が「一つ
だけちょうだい」を言う。
切ない気持ち
「一つだけ」なので片手で
足りる。
「一つだけ」でももらえた
らうれしい。
お父さんも喜びより不安が
大きい。(自分も戦争にい
くかも知れない)
ゆみ子がかわいい。
不安を紛らわしている。
もっとちょうだいと言え
ない現状から「一つだけ」
と毎日言っている
戦争が終わらなければ物
がないので全部一人の物
にする経験ができないか
も知れない。
山ほど、という状況を知
らずに育つかも知れない
ゆみ子の将来が心配
戦争で死んでしまうかも
戦争の先行きが分からな
いし、自分にはどうしよ
うもできない。
かわいい子どもに楽しい
思いをさせたい。
唯一あげられるものが高
い高いなので、せめてた
くさんあげる。
(三)
(四)
●体のじょうぶでないゆみ子の
お父さんも戦争に行かなければ
ならない
・「おじぎりひとつだけちょうだ
い」といって駅に着くまでにみん
な食べた
○お母さんは戦争へ行くお父さ
んにゆみ子の泣き顔を見せたく
なかったのでしょうか。
「せねばならない」本当は
したくない
●小さくばんざいをしていたり、
歌を歌っていたりしました。まる
で、戦争になんか行く人ではない
かのように……。
・「一つだけちょうだい。」
●「みんなおやりよ、母さん。お
にぎりを…。」
○「ええ、もう食べちゃったんで
すの…~ばんざあいって…。」
ゆみ子をあやす。
目立たない、人ごとのよう、
見送るひとが家族以外いな
い。ゆみ子をあやしている。
最後のだっこかも知れな
い。
状況が分かっていない。
泣き止んでほしい。
・ゆみ子泣き出す。
「一つだけ……。一つだけ……。」
(五)
●ぷいといなくなる。
◆一輪のコスモス
プラットホームのはしっぽ
ごみ捨て場のような所
わすれられていたように咲いて
いた
●「ゆみ。さあ、一つだけあげよ
う。一つだけのお花、大事にする
んだよう…。」
おにぎりと言えないほど幼
い。お腹が空いている。
戦争は末期、敗北が近い
体が弱いので死んでしま
うかも知れない
お父さんはこれから戦争
に行って会えなくなる
し、死んでしまうかも知
れないから、泣き顔でな
く笑顔を見せたい
自分のことよりも家族と
の最後の時間を大切にし
ている。
幼いので出征することが
分かっていない。
お母さんが泣きたい。
ゆみ子の泣き顔を見せたく
ない。お父さんに心配をか
けたくない。
もらえないので悲しい。
急いでいる。
駅のホームの端
薄暗く寂しい感じ
目立たない感じ
ゆみ子を喜ばせたい
あげられる一つだけのもの
食べ物ではないけれど与え
られるもの
・キャッキャッと足をばたつかせ お父さんからもらって喜ん
て喜びました。
だ。
●それを見てにっこりわらうと、 泣き止んでうれしい。
何も言わずに汽車に乗って行っ
笑顔が見られて安心した。
てしまいました。
胸がいっぱいで何も言えな
い。
最後の別れかも知れない
のに分からず、ご飯のこ
としか考えていない。
人混みに比べて、ゆみ子
の家族のようにひっそり
としている
戦時下でも力強く咲いて
いる花
一輪で目立たなくても力
強く咲いている
ゆみ子にこのように育っ
てほしい。
笑顔だけで十分。記憶に
焼き付けている。
食べ物以外のものにも喜
んでくれて安心した。
花に願いをかけている。
一つの花はお父さんの願
いそのもの。
最後にゆみ子に見せる顔
が笑顔でありたい。
●ゆみ子のにぎっている、一つの
花を見つめながら……。
(六)
◆それから十年の年月が経ちま
した。
・ゆみ子はお父さんの顔を覚えて
いません。自分にお父さんがあっ
たことも、あるいはしらないのか
も知れません。
◆コスモスの花でいっぱいに包
まれています。
お父さんは帰ってきていな
い。
お父さんは亡くなったかも
しれない。
平和な時代
コスモスを大切に育ててい
る。
◆たえず、ミシンの音が…まるで
何かお話をしているかのように
聞こえてきます。
・「母さん、お肉とお魚と、どっ
ちがいいの。」
家で働いている
楽しそう、リズミカル
◆ミシンの音がまたいそがしく
始まったとき
・スキップをしながら、コスモス
のトンネルをくぐって出てきま
した。
・今日は日曜日、ゆみ子が小さな
お母さんになって、お昼を作る日
です。
絶えず仕事をしている
肉と魚を選べる
自分でおつかいに行ける
楽しそう
お母さんを手助けする優し
い子に成長した。
コスモスにこめられたお
父さんの願いを大切に引
き継いでいる。
お父さんの思いがゆみ子
を守っている感じ
「一つだけ」と言わなく
てもいい世界になった
大きくなった
安心して仕事を続けられ
る。忙しい。
ご飯を作ることを任され
た喜びを知っている。
肉か魚を選べる喜びを知
っている。
お父さんが最後に願った
平和な場面そのもの
お父さんの存在を覚えて
いなくても、お父さんの
想いは伝わっている。
研究協議会記録
1.研究経過報告・分科会提案
→指導案参照
2.授業者自評
・やる前から難しいと思っていたが、やってみてやはり難しかった。
・子どもの生活体験と違うので、事前にビデオを見せたり、戦争体験者の話を聞かせたりし
て戦争時の様子を伝えた。
・ワークシートへの書き込みをもっと時間を取ってやらせたい。家でやらせるのもいいが、
その時間内に読んで書き込みをさせることが大事だと考えた。
・深まったとは言えないが、感想を見るとちょっとは分かったのでは…と思う。
3.協議(・→意見 ○→質問 ◎→応答)
○他のクラスの様子も教えてほしい。
○ワークシートの使用についてどうだったか。
○教師が正確さを求める場面が見られたが、
子どもたちから出させるにはどうしたらよいか。
◎2 組:ワークシートをしっかり書けるのは、3 分の 2 くらい。思ってはいても書けない子も
いた。書けなくても対話をしているうちに言える場面もあった。意見交換が有効だった。
:気持ちを想像させることが多かったので、正確さにはあまりこだわらなかった。
◎3 組:ワークシートは、書き方に慣れるまでクラスみんなで書いた。
には自分の考え、
☆には友だちの考え、◇には板書というように、記号を使用しつつ書かせ慣れさせた。
:物語なので、「色々な考え、感じ方があり、色々な読み方があるのがおもしろい」と
いうようにして、気持ちに関してはあえて正確を言わなかった。
◎1 組(授業者クラス):ワークシートを書かせるのは大変だった。ワークシートも場面に
よってサイドラインを引かせる項目を変えるなどした。どう言って書かせたらよいかも難し
かった。
:正確を求めたくなるが、色々な意見を出させて、小数の考えも活かしたいと思ってい
る。
○挿絵を使わなかった理由はあるのか。
◎挿絵は使った方が良かった。
・自分の体験にないことを考えるのは難しいので高学年でも挿絵を活用すると良い。
○めあてと読みの視点がずれているのでは。
◎お父さんの気持ちを追う前の段階も必要だと思ったので、その時の状況や、言葉について
も尐し時間をかけて考えさせた。
・以前 4 年生を担任したときに、「ゆみ子はわがまま」という意見から抜け出せず困った。
気がついたことをどう授業にのせていくか?状況を言葉に言いかえるのがよいのか?悩ん
だ。
◎事前では、お父さんとお母さんの気持ちにサイドラインを引いた。そうするとお父さんの
気持ちの箇所が多く、焦点化しづらかった。そこで本時では、お父さんの気持ちと様子とに
線を引いたのだが、今度は子どもたちは様子に注目してしまった。ワークシート作りの難し
さを感じた。
4.講師講評
・教材研究をやればやるほど混乱してくる。国語の指導法にも正確はない。
・教材分析について
→作者がどんな人物か、どんな作品を書いてきたかを知る。教員の読みによって視点が変わ
るので、全員が同じ方法で授業を組み立てて行く必要はない。色々な捉え方ができるのはい
い教材であると言うこと。受け止めたい「願い」は何かを考えることが大切。
→子どもの考えを大切にしたいあまり、子どもから出ない箇所はあまり扱わないところがあ
るが、教師が考えさせたいと思う所は取り上げるべき。
→「……」の省略された部分にどんな言葉があるかを考えさせると良い。
→指導案の最後に教材分析がついており、よかった。教師は教材分析をしっかりし、自分の
読みに自信を持って教えるべきことはしっかり教えていく。
・豊かな読みの力について
→読み取る力+理解する力+表現する力=豊かな読みの力
→子どもの経験にないことは、教師の助言が重要である。
・授業について
→実態から出発することが大切である。
→手立てがしっかりしている。
例:発表ができるようになるまで何度も繰り返す。口で言っているだけでは分からない。
:ワークシートの書き方も例示しないと分からないことがある。
→どうして線を引いたのかを問いかけ、それを書けばいいと声かけしてあげれば良い。
→子どもは教師が思ったように反応しないことがあるが、それが当たり前と思っていい。そ
れならどうするかを考えて行くことが大事である。
→今日の授業は場面の終わりまでやらないといけなかった。途切れると、子どもの気持ちも
薄れる。焦点化が必要。
○課題と成果
課題
・ワークシートの形式及び使わせ方が難しかった
… 何に線を引かせるか、または線が引けてもなぜ線を引いたのか、自分なりに感じたこと
を表現することができない児童への支援をどうしたらよいか。
・文章からイメージをわかせるのが難しかった
… 特に戦時中の生活のことなど、生活体験がないことを想像させることがなかなかできな
かった。
ゲストティーチャーによる話や、
本や資料などを使っても十分とは言えなかった。
他にどんな手立てがあるか模索している。
・わくわくするような本との出会いの機会が尐ないこと
… 読み聞かせなどの他に、もっと「読みたい」
「読んだことから想像できるのが楽しい」な
ど、わくわくするような本と出会う機会や場所を作っていく必要がある。
成果
・物語に親しむことができた。
・
「一つの花」の当時の生活について興味がわき、すすんで本を読んだり、祖父母にインタビ
ューしたりする児童も出てきた。
・みんなで一つの物語を読み深めていく楽しさを知った。一つの会話文からでも、様々な読
み方や気持ちの込め方、表現の仕方があることを知り、一人だけではすることができない
場面の深め方をするなかで、その楽しさに気づけた児童がでてきた。
・2 人組での対話の時間を取り入れたことで、人の意見を聞く楽しさ、自分の意見を言える
楽しさを体験できた児童が多かった。