福利厚生費に関する税務 - 税理士法人 森田会計事務所

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第5号
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福利厚生費に関する税務
1 福利厚生費も使い方で税務の取扱いが異なる
2 支出項目別の取り扱い 行事関連の取り扱い
3 支出項目別の取り扱い レジャー関連の取り扱い
4 支出項目別の取り扱い 慶弔費の取り扱い
5 支出項目別の取り扱い 従業員食事代の取り扱い
6 支出項目別の取り扱い 従業員に対する保険の取り扱い
7 支出項目別の取り扱い 社宅の取り扱い
森田 務 公認会計士事務所
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1
福利厚生費に関する税務
福利厚生費も使い方で税務の取り扱いが異なる
福利厚生費とは、従業員の福祉向上のために行う賃金以外の間接的給付で、法定福利費
と厚生費からなっています。
法定福利費とは、労働基準法に基づく災害補償、その他法令による社会保険(厚生年金
保険・健康保険・労災保険・雇用保険等)の事業主負担分のことを指します。
一方、厚生費は、従業員の医療、衛生、慰安、修養等のために会社が支出する費用を指
します。
税法上は福利厚生費の明確な定義はありませんが、一般的には「会社がその従業員の生
活の向上と労働環境の改善のために支出する費用のうち、給与、交際費及び資産の取得価
額以外のもので、従業員の福利厚生のため、すべての従業員に公平であり、社会通念上妥
当な金額までの費用」とされています。
法定福利費については税法上損金算入が認められておりますが、厚生費については給与
及び交際費との区分が必ずしも明確であるとは言えず、税法判断が必要となります。
福利厚生費は、労働力の確保・向上をめざして、従業員全体に対して支給されるもので
あるため、会社の経理上費用として計上され、税務上損金とすることができます。
ただし、給与や交際費との区分が難しく、直接給与としてお金を支給していなくても、
税法上給与と見なされ、従業員にとっては源泉所得税の課税対象となり、結果的に追加の
税金を負担することになったり、特定の人間に対しての費用支出について、交際費と判断
されれば、法人については全額損金にすることができません。
そのため、福利厚生費が給与や交際費と見なされないために、次のような点に配慮する
必要があります。
①
支出の目的(従業員の福利厚生のための支出であること)
②
支出の金額(社会通念上の相当性、税法規定範囲内であること)
③
一定の支出基準(社内規定や税法基準を満たしていること)
④
支出対象者(特定の者に限定されていないこと)
Tax Report
1
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福利厚生費に関する税務
3 給与か福利厚生費か
1
給与と福利厚生費の関係
労働基準法においては、給与には『賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、
労働の対償として使用者に支払うすべてのものをいう。』と規定されております。
ただし、税法上、給与と名目で支給されていても、労働の対価としての性格を有してい
ないものもあり、税法上の取り扱いを確認する必要があります。
2
税法上の取り扱い
所得税法上においては、福利厚生費として処理されている費用でも、給与所得と判定さ
れれば源泉徴収の対象となります。特に金銭以外の物、又は権利その他の経済的な利益の
価額されるいわゆる現物給与については、取り扱いが源泉課税の対象となるケースや、非
課税となるケース、少額不追求となるケース、割引評価となるケースなどがあります。
また、役員に対する福利厚生費が給与と見なされた場合には、法人税法上、損金不算入
となり、所得税と法人税のダブル課税となるので注意が必要です。
3
非課税とされる現物給与の一例
従業員が支給を受けた次の金銭等については、給与所得とはされず、所得税が課されな
いこととなります。
①通勤手当。交通機関の利用による運賃は実費。1ヶ月当り5万円までの金額。
②残業、宿・日直の食事代。
③深夜勤務者に対する食事代。(1回 300 円以下)
④1回 3,400 円以下の宿・日直料。
⑤以下の要件を満たす食事代(満たさない場合、課税)。
・
その食事の価額の 50%以上を所得者本人から徴収していること
・
月額 3,500 円を超えないこと
⑥旅費、交通費、宿泊費、日当、転勤・就職・退職に伴い支出する交通費、宿泊費、
運賃等。
⑦会社契約で一定要件を満たして加入する従業員を対象とした養老保険。
(原則従業
員一律加入でなければ、給与)
Tax Report
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福利厚生費に関する税務
⑧社宅の家賃。(一定額以内であれば非課税。計算式あり。)
⑨以下の要件を満たす永年勤続者表彰用記念品、旅行招待費。
・
受賞者の地位に照らして社会通念上相当と認められるもの
・
概ね 10 年以上の在職者に5年以上の間隔をおいて支払われるもの
⑩自社商品の通常販売価額の 70%以上又は原価販売による社員割引販売。
4
交際費か福利厚生費か
福利厚生費の大前提は、従業員の福利厚生のため、すべての従業員に公平であり、社会
通念上妥当な金額までとされています。
一方で、交際費とは、原則として得意先や仕入先その他事業に関係する者に対する接待、
供応、慰安、贈答などの行為のために支出する費用のことをいいます。ただし、社内の特
定の従業員との飲食の場合や、親族役員のみの役員会での会食等は福利厚生費とはいえず、
社内交際費になるケースがあります。
次のような支出については、原則、福利厚生費となりますが、要件を外れた場合には交
際費として取り扱われます。
①従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会等の費用。
ただし、不参加者に対し費用相当額を支給した場合には、参加、不参加者双方共に
給与とされます。
②従業員のみを対象とした保養所所有、賃借にかかる費用。(従業員全員が一律利用
できること)
③以下の要件をすべて満たす慰安旅行。
・旅行に要する期間が4泊5日以内(目的地が海外の場合には、目的地における
滞在日数が4泊5日)
・旅行に参加する従業員等の数が全従業員等の 50%以上であること
④創業記念日、社屋新築記念日等に支出する飲食費及び記念品の費用(処分見込額が
1万円以下のものに限る)
⑤一定の基準に従って支給される慶弔、禍福に際し支出する金品。
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福利厚生費に関する税務
支出項目別の取り扱い
行事関連の取り扱い
1 レクリエーション費用の取り扱い
福利厚生の費用を現金で支給すると給与所得あるいは交際費と見なされ、課税対象とな
ります。レクリエーション費用は、税法上原則として現物で支給する場合でも課税対象と
なりますが、対象者を社員全員とするもので、支出された費用の額が社会通念上必要と認
められる金額であるなど、一定の要件を満たす場合には非課税扱いとなるものもあります。
1
給与課税とならない範囲
レクリエーション費用については、現物で支給されるものであっても、税法上は原則と
して課税の対象となりますが、以下の要件を満たすことで、非課税扱いとなります。
①従業員の環境を精神面、施設面、経済面で整えることによって、気分よく能力を十分に発
揮してもらうために支出される費用であること。
②従業員や役員全員を対象に一律に支出されること。
③支出された費用の額が相応の金額(社会通念上、通常必要とされる額、すなわち世間一般
に行われている行事に支払われる額)であること。
2 忘年会・新年会の取り扱い
忘年会や新年会も福利厚生費として処理することが可能です。また、従業員の家族も含
め参加している場合も、同様の条件を満たしていれば、福利厚生費とすることができます。
【福利厚生として認められる条件】
①全社員を対象とする。(やむを得ない事情で参加できない場合を除く)
②会社の費用負担が一律であること。
③会社が負担する金額が社会通念上高額にならないこと。
【留意事項】
①忘年会や新年会等を二次会、三次会と場所を変えて行う場合、費用が高額になったり全員
参加にはならなかったりするため、社内の正式行事として行われる場合を除き、二次会以
降は接待交際費として取り扱われることが多くなっています。
②家族同伴型のレクリエーションでは、家族分の費用も高額でなければ福利厚生費として処
理できますが、ゴルフコンペは接待交際費とした方が、税務署からの指摘をされないため
にも無難といえます。
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福利厚生費に関する税務
支出項目別の取り扱い
レジャー関連の取り扱い
1 保養所利用の取り扱い
会社が別荘や会員制のリゾート施設などを利用する場合にも、一定の要件を満たせば福
利厚生費となります。
【福利厚生として認められる条件】
①従業員が一律全員利用できなければならないこと。
②従業員が利用すること。(得意先の接待で利用する場合は接待交際となります)
③社内での予約簿や利用報告書など、利用状況がわかる書類を整備すること。
【留意事項】
入会金が発生するようなリゾート施設においては、入会金は資産計上が原則となります。
2 クラブ活動の取り扱い
最近では、福利厚生としてクラブ活動を支援している会社は少ないと思われます。しか
し、社員のモチベーションや忠誠心の維持のためにクラブ活動を支援していくのは、企業
にとってプラスとなる要素があります。
福利厚生の税務処理に関しては、一律であるということが重要になります。
【福利厚生として認められる条件】
①会社が主体的にその活動に関わっていること
②クラブにかかった費用を実費で支出していること
【留意事項】
①備品管理簿や活動報告書などの活動実績を証明する書類の作成、整理、保管が整備
されていること。
②役員など一部の人のみが参加するようなものでないこと。(給料や接待交際費とい
う扱いになります)
Tax Report
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福利厚生費に関する税務
3 社員旅行の取り扱い
社員旅行の費用は、社会通念上一般的に行われていると認められる程度のものであれば、
所得税を課税しないことになっています。基準を満たさなかった場合には、役員部分につ
いては役員賞与、従業員部分は給与なので、所得税の対象となり、源泉徴収として所得税
を追徴されることとなり、「社会通念上一般的」の解釈が問題となってきます。
1
形式基準
まず形式としては、次の2つの要件を満たさなければなりません。
●旅行期間が4泊5日以内のものであること。(海外の場合には、現地 4 泊以内)
●全従業員の 50%以上が旅行に参加すること。
最近は、会社行事に参加したがらない従業員も多くなってきていますが、半数以上は参
加しなければなりません。支店、工場単位で行う場合も同様です。また、参加しなかった
従業員に金銭等を渡した場合には、その従業員に対して給与を支給したことになり、源泉
徴収の対象となりますので、留意する必要があります。
2
金 額
旅行の目的や行程などを考慮して、会社が負担する旅費が高額な場合には、従業員に対
する給与となります。近年、国内旅行よりも海外旅行の方が安いケースもあるため、一概
に場所では判定できませんが、金額の目安として、一般的な旅行代金と比較して高額でな
ければ福利厚生費として取り扱うことができます。
3
参加人数
参加者を一定の役職以上の限定した社員や、営業成績優秀者というように限定した場合
には、給与扱いとなり、所得税の対象となるため、全従業員を参加の対象とする必要があ
ります。また、従業員の家族を同行させた場合には、家族分は従業員に負担させるのが望
ましいです。会社側が負担した場合には、要件を満たしていれば、従業員本人の分は福利
厚生費となりますが、家族の分は従業員への給与課税の対象となります。
なお、得意先の担当者などを招待する場合には、交際費となり旅費の 90%しか経費算
入できなくなります。
Tax Report
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福利厚生費に関する税務
役員の取り扱い
基準は従業員と同様となります。役員に対して、給与として所得税の課税対象となった
場合には、
「役員賞与」という扱いとなります。役員賞与は全額経費に算入することができ
ないので、役員自身が所得税を負担した上に、会社も役員分の旅費全額が法人税の対象と
なるため、従業員以上に注意が必要となります。
4 研修旅行の取り扱い
研修旅行が会社の業務を行うために直接必要な場合には、その費用は給与として課税さ
れません。しかし、直接必要でない場合には、研修旅行の費用が給与として課税されます。
また、研修旅行の費用に会社の業務を行うために直接必要な部分と直接必要でない部分
がある場合には、直接必要でない部分の費用は、参加する人の給与として課税されます。
たとえば次のような研修旅行は、原則として、会社の業務を行うために直接必要なもの
とはなりません。
①
同業者団体の主催する、主に観光旅行を目的とした団体旅行
②
旅行の斡旋業者などが主催する団体旅行
③
観光渡航の許可をもらい海外で行う研修旅
なお、研修旅行については旅程表、参加者名簿、研修時に使用したテキストや資料、視
察旅行であれば視察場所の写真等の証拠となる資料を保管することが重要となります。
具体的には、次のように取り扱われるものと考えられます。
事例検証
イ
ロ
ハ
1
国税庁 HP より
旅行期間
費用及び負担状況
参加割合
3泊4日
旅行費用 15 万円(内使用者負担 7 万円)
100%
旅行期間、参加割合の要件及び少額不追及の趣旨のいずれも満たすと認められることか
ら、原則として非課税
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要点を整理して身につける
事例検証
イ
ロ
ハ
2
福利厚生費に関する税務
国税庁 HP より
旅行期間
費用及び負担状況
参加割合
4泊5日
旅行費用 25 万円(内使用者負担 10 万円)
100%
旅行期間、参加割合の要件及び少額不追及の趣旨のいずれも満たすと認められること
から、原則として非課税
事例検証
イ
ロ
ハ
3
国税庁 HP より
旅行期間
費用及び負担状況
参加割合
5泊6日
旅行費用 30 万円(内使用者負担 15 万円)
50%
旅行期間が 5 泊 6 日以上のものについては、その旅行は社会通念上一般に行われてい
る旅行とは認められないことから課税
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福利厚生費に関する税務
支出項目別の取り扱い
慶弔費の取り扱い
従業員や役員に対するお祝いや不幸などの際に、一定の基準に従って支給される金品に
要する費用については、福利厚生費とされます。祝い金(結婚祝、出産祝)、見舞金、香典
等の慶弔金、祝品、花輪の費用などが該当します。
1 慶弔費の法人税上の取り扱い
従業員や元従業員またはその親族などのお祝いや不幸などに際して、一定の基準に従っ
て支給される金品に要する費用は、福利厚生費になり、費用は全額損金になります(措置
通達 61 の 4(1)−10)。支給を受けるものが役員でも、同様に全額損金になります
支出の相手方が社外の者(取引先の従業員など)であれば交際費となります。
2 結婚祝金品等・見舞金・香典等
その金額が支給を受ける役員又は従業員の地位などに照らして社会通念上相当と認めら
れるものであれば、課税されません。
3 永年勤続者の記念品等
永年に渡り勤務した役員又は従業員の表彰に当たり、その記念として旅行、観劇等への
招待、記念品の支給によりその役員又は従業員が受ける経済的利益については、下記の要
件を満たせば非課税となります。
① 現金(商品券)ではない。
② 旅行、観劇等への招待、記念品の支給である。
③ 各人が自由に選択できない。
④ その金額は役員又は従業員の勤続年数に照らして社会通念上相当と認められる。
⑤ その表彰は、おおむね 10 年以上の勤務年数の者を対象としている。
⑥ 2 回以上表彰を受ける者については、おおむね5年以上の間隔を置いている。
※ 旅行ギフト券を支給した場合は原則として課税されますが、支給してから相当の期間内(おおむね1年
程度)に旅行をし、その旅行の事実を確認できる書類を備えている場合などは課税されません
Tax Report
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福利厚生費に関する税務
支出項目別の取り扱い
従業員の食事負担の取り扱い
従業員の残業、深夜勤務などにかかる食事代のうち、一定額を福利厚生費として扱うこ
とができます。
1 一般的な取り扱い
食事代の 50%以上を従業員等が負担し、会社が負担した食事代が月 3,500 円以内であ
る場合は福利厚生費にできます。(所得税基本通達 36-38-2)
ただし、この場合の食事代とは、社員食堂などで会社が調理して支給する食事の材料費、
または会社が購入して支給する弁当などの購入費のことをいい(所得税基本通達 36-38)、
現金で支出した場合は給与手当と見なされます。
2 残業者や宿直、日直者に支給する食事
支給した食事は原則として全額を福利厚生費にできます。ただし、その時間の勤務が支
給者にとって本来の業務である場合はこの限りではありません(所得税基本通達 36−24)。
また、現金で支給した場合は給与手当として扱われます。
また、社会通念上で「高すぎる」食事も給与所得と見なされる可能性があります。
3 深夜勤務者に支給する夜食
原則は一般的な取り扱いと同じです。ただし、会社が調理施設を備えていないなど、夜
食を現物で支給することが著しく困難な場合は、1回 300 円までの定額を夜食代として
現金で支給(給与に加算)しても福利厚生費として扱えます。(個別通達:直法 6-5、直
所3-8)。
なお、深夜勤務者とは正規の勤務時間による勤務の一部又は全部を午後 10 時から翌日
午前5時までの間に行う人をいいます。
Tax Report
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要点を整理して身につける
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福利厚生費に関する税務
支出項目別の取り扱い
保険活用の取り扱い
1 養老保険の取り扱い
従業員の退職金の積立に、会社契約で入る養老保険を使うと節税になるケースがありま
す。貯蓄性の高い養老保険であっても、一定の条件の下で従業員にかければ、一部を損金
として計上することができるのです。これを福利厚生プランといいます。
1
契約の要件
保険契約者
‥‥会社
被保険者
‥‥従業員
満期保険受取人
‥‥会社
死亡保険金受取人
‥‥従業員の遺族
上記のような契約の要件を満たせば、本来全額を資産計上しなければならない養老保険
でも、半分が損金として計上が可能になります。
税務処理は、支払った保険料のうち1/2を損金、1/2を資産計上します。
2
留意事項
福利厚生であることから、従業員に差を付けることは基本的にはできず、原則として一
律です。しかし、勤続年数などの合理的基準に基づく普遍的な格差を付けることや、入社
⃝年目から一律に加入させるということは認められます。
また、このプランを実施する際の根拠となる社内規定の整備が必要になります。
●
従業員が一律の条件の基に加入すること
●
前提となる退職給与規程や、福利厚生に関する規程の整備をすること
Tax Report
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要点を整理して身につける
福利厚生費に関する税務
2 中小企業退職金共済の活用
1
中小企業退職金共済とは
中小企業が従業員の退職金を準備するために国が作った制度で、中小企業退職金共済制
度、中退共といわれるものです。
最寄りの金融機関で手続きを受け付けており、会社は毎月共済掛金を支払うことにより、
退職金を積み立てていきます。掛金は、従業員1人当たり月額 5,000 円∼30,000 円の
範囲で、従業員ごとに選択できます。
また、従業員の勤務年数や職務などに応じて、途中で掛金を増額することも可能です。
2
活用メリット
(1)国からの助成がある
新規加入した場合、国から助成が受けられ、加入してから 1 年間、従業員 1 人当た
り月額掛金の 2 分の 1(1 人月額 5,000 円を限度)を国から補助してもらえます。
また、掛金を増額した場合も、増額分の 3 分の 1 を1年間、国が助成してくれます。
(2)全額損金処理ができる
生命保険については、保険の種類によって損金に算入できる範囲が異なりますが、
中退共制度については、毎月の掛金は支払ったときに全額経費(税務上の損金)と
なります。個人事業者の場合も、全額必要経費として認められます。
3
留意点
(1) 加入要件
従業員数や資本金の上限が設定されており、以下の通りとなります。
業
種
常用従業員数
資本金・出資金
一般業種(製造業・建設業等)
300 人以下
or
卸売業
100 人以下
or
1 億円以下
サービス業
100 人以下
or
5,000 万円以下
50 人以下
or
5,000 万円以下
小売業
3 億円以下
(2) 掛け金の受取先は企業でないため、退職金以外での活用はできない
事業主が従業員ごとに機構と退職金共済契約を締結し、事業主が毎月一定の掛金を納
Tax Report
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要点を整理して身につける
福利厚生費に関する税務
付します。従業員が退職したときに、機構から直接退職者に退職金が支払われるため、
生命保険のように、万が一企業の資金繰りが悪化した場合などに解約して、事業資金
に充てることはできません。また、懲戒解雇のような場合にも、従業員に直接支払わ
れるため、本来であれば支給しない退職金が支給されることとなります。
(3) 運用率
運用率は1%程度であり、退職金としての積み立てに足りない可能性があるため、他
の運用方法と掛け合わせて検討する必要があります。
3 401K(確定拠出年金)
1
401Kとは
日本版401Kとも呼ばれる確定拠出年金制度は、給付額が掛金とその運用収益によっ
て事後的に決まる年金制度です。運用環境の長期低迷や退職給付会計の導入、雇用形態の
流動化等を背景に 2001 年 10 月に施行された制度です。
加入者は自己責任で年金資産の運用を行い、原則として 60 歳以降に給付を受けます。
また、転職や離職の際には、転職先又は国民年金基金連合会の実施する確定拠出年金制度
に年金資産を引き継ぐことができます。
制度は「企業型」と「個人型」の 2 種類に分かれます。なお、個人型と企業型の両方に
加入することはできません。
【確定拠出年金の種類】
企業型
2
企業が従業員の年金受給のために
掛け金を支払い、従業員の負担は
ありませんが、401K に入りたく
なくとも、会社が導入を決めたら
加入する必要があります。
個人型
個人が自分で将来の年金を受け取
るために掛け金を支払い、自分で
毎月の拠出額を決めることがで
き、所得控除の対象となります。
活用メリット
【企業にとってのメリット】
●各々が運用するため、運用リスクを負う必要がなくなる。
【従業員にとってのメリット】
●個人別管理資産が設定されるため、自分の積立残高や運用状況が明らかになり、ラ
イフプランが立てやすくなる。
Tax Report
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要点を整理して身につける
福利厚生費に関する税務
●税制面の優遇(所得控除)の恩恵を受けることができる(個人型の場合)
●自分自身で運用するため、運用商品を自由に選択できる。
●転職した場合、前職場の資産残高を持ち運ぶことが可能となる。
3
活用デメリット
【企業にとってのデメリット】
●401K 導入前に、投資教育を従業員にする必要があり、研修費の支出がある。
●転職した場合、容易に資産残高を引き継げるため、退職の可能性が高くなるケース
がある。
【従業員にとってのデメリット】
●運用リスクを加入者それぞれが負い、将来の年金給付額は加入者の運用成績に左右
されるため、投資知識が必要とされる。
4
加入できない対象者
●公務員
●専業主婦(公務員や会社員の配偶者)
●企業年金があり 401K を導入していない企業の会社員
●国民年金保険料を納めていない方(滞納者、免除されている方)
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掛け金の拠出限度額
401K は税制上の優遇措置を受けているため、貯蓄ではなく年金制度であるとの位置づ
けがされているため、確定拠出年金には掛け金の拠出限度額があり、以下のとおりとなり
ます。
個人型
企業型
企業年金がない場合
18,000 円
自営業者等(国民年金第 1 号被保険者)
68,000 円
他の企業年金がない場合
46,000 円
他の企業年金がある場合
23,000 円
Tax Report
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要点を整理して身につける
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福利厚生費に関する税務
支出項目別の取り扱い
社宅の取り扱い
1 概 要
社宅制度の導入は、福利厚生を充実させ、社員のモラル向上に役に立ちます。また、税
務の面を見ると、本来個人が課税済みの所得により負担すべき住宅費用のうち、一定の金
額を会社の福利厚生費として経費にすることができ、節税になります。
2 税務上の取り扱い
役員と使用人とでは、税務上の取り扱いが次のように異なります。
1
使用人の場合
会社が使用人に提供する社宅については、次の適正家賃の 50%以上の金額を使用人か
ら徴収した場合、会社負担額が福利厚生費になります。しかし、使用人から徴収した家賃
の額が適正家賃の 50%未満である場合には、その徴収した家賃と適正家賃との差額は給
与となり、所得税が課税されます。
【使用人の場合の適正家賃】
①
家屋の固定資産税の課税標準額×0.2%
②
{12 円×床面積(㎡)}÷3.3(㎡)
③
敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%
④
①+②+③=適正家賃(月)
*他から借り上げた住宅を社宅とする場合であっても、この算式によって計算します。
2
役員の場合
会社が役員に提供する社宅については、次の適正家賃の金額を役員から徴収した場合、
会社負担額が福利厚生費になります。しかし、役員から徴収した家賃の額が適正家賃未満
である場合には、その徴収した家賃と適正家賃との差額は給与となり、所得税が課税され
ます。
Tax Report
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要点を整理して身につける
福利厚生費に関する税務
【役員の場合の適正家賃】
自社所有の社宅の場合と他から借り上げた住宅の場合とでは、次のように異なります。
(1)自社所有の社宅の場合
①
家屋の固定資産税の課税標準額×12%(木造家屋以外のものは 10%)
②
敷地の固定資産税の課税標準額×6%
③
(①+②)÷12=適正家賃(月)
(2)他から借り上げた住宅の場合
①
会社が支払う賃借料の額×50%
②
上記(1)の適正家賃
③
①と②のいずれか多い方の金額
(3)小規模住宅などの特例
床面積が 132 ㎡(木造家屋以外のものは 99 ㎡)以下の住宅である場合には、
(1)、
(2)
によらないで、使用人の場合の適正家賃によります。なお、社会通念的にみて豪華な住宅
である場合は、実勢価格によります。
3 留意点
①現金支給する住宅手当や入居者が直接契約している場合の家賃負担額は、福利厚生
費ではなく給与とされます。
②社宅家賃規定を作成保存すること。
③賃貸借契約書を保存すること。
④家賃の個人負担分は給与から天引きすること。
Tax Report
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要点を整理して身につける
福利厚生費に関する税務
TaxReport
要点を整理して身につける 福利厚生費に関する税務
【著 者】日本ビズアップ株式会社
【発 行】森田 務 公認会計士事務所
〒630-8247
奈良市油阪町456番地
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