看護化学 演習問題 解答例つき 2015.6.18

看護化学 演習問題 解答例つき
2015.6.18
以下、濃度計算に関する問題を中心にまとめました。
電子配置、分子の分極、化学結合に関する問題はありません。講義資料を中心に勉強してくださ
い。
解答上の注意

答えだけを書かないこと(減点の対象になります)。

計算の過程を示すこと。

得られた数値には単位をつけること。

有効桁数に注意すること。
濃度の計算
g
質量(g) = 密度( 3 ) × 体積(cm3 )
cm
質量パーセント濃度(%) =
モル数(mol) =
溶質の質量(g)
溶液の質量(g)
質量(g)
g
分子量(
)
mol
モル濃度(mol⁄L) =
× 100
モル数(mol)
溶液の体積(L)
問題1 濃度の計算
濃硫酸(H2SO4)は濃度 98.0%(濃硫酸)である。硫酸の分子量 98.0、硫酸の密度を 1.84 g/cm3 とす
る。
以下の設問に答えなさい。
問1
濃硫酸の 1 L の質量 (g)を求めなさい。
密度
(g) = 1.84 g/cm3×1000 cm3 = 1840 g
密度の意味を正しく理解する。L から cm3 へ単位換算を正しく行う。
問2
濃硫酸 1 L に含まれる硫酸(溶質)の質量(g)を求めなさい。
H2SO4 (g) = 1840 g×0.98 = 1803.2 g ≒ 1803 g
質量パーセント濃度の定義を正しく説明できること。
1
問3
硫酸のモル数(mol)を求めなさい。
mol = 1803 g/98 (g/mol) = 18.4 mol
モル数の概念を正しく説明できること。
質量と分子量からモル数が計算できること。
問4
硫酸のモル濃度を求めなさい。
1 L に 18.4 mol 溶けているので、18.4 mol/L, または 18.4 M
体積とモル数からモル濃度が計算できること。
問題2 濃度の計算
濃硝酸(HNO3)の濃度は 60%である。分子量 63.0 とする。密度は 1.40 g/cm3 である。以下の設問
に答えなさい。
問1
濃硫酸の 1 L の質量 (g)を求めなさい。
1.40 g/cm3×1000 cm3 = 1400 g
問2
濃硝酸 1L に含まれる硫酸(溶質)の質量(g)を求めなさい。
1400 g×0.6 = 840 g
問3
硝酸のモル数(mol)を求めなさい。
840 g/63.0 (g/mol) = 13.3 mol
問4
硝酸のモル濃度を求めなさい。
1L 中に 13.3 mol 存在しているので、13.3 mol/L
問題3 濃度の計算
濃塩酸(HCl)は濃度 37%である。分子量は 36.5 とする。密度 1.18 g/cm3 とする。以下の設問に答
えなさい。
問1
濃塩酸の 1 L の質量 (g)を求めなさい。
1.18 g/cm3×1000 cm3 = 1180 g
2
問2
濃塩酸 1L に含まれる塩酸(溶質)の質量(g)を求めなさい。
1180×0.37 = 436.6 g ≒437 g
問3
塩酸のモル数(mol)を求めなさい。
437/36.5 = 11.96 ≒ 12.0 mol/L
問4
塩酸のモル濃度を求めなさい。
1 L 中に 12.0 mol なので
12.0 mol/L
3
力学
加速度
速度
𝑎𝑎 = �落下運動では重力加速度𝑔𝑔� =
𝑎𝑎 =
∆𝑣𝑣 𝑣𝑣2 − 𝑣𝑣1 𝑑𝑑𝑑𝑑
=
=
𝑡𝑡2 − 𝑡𝑡1
∆𝑡𝑡
𝑑𝑑𝑑𝑑
𝑑𝑑𝑑𝑑
なので
𝑑𝑑𝑑𝑑
𝑑𝑑𝑑𝑑 = 𝑎𝑎𝑎𝑎𝑎𝑎
� 𝑑𝑑𝑑𝑑 = 𝑣𝑣 = � 𝑎𝑎𝑎𝑎𝑎𝑎
移動距離(変位)
ただし、変位との間に 𝑣𝑣 =
𝑑𝑑𝑑𝑑 = 𝑣𝑣𝑣𝑣𝑣𝑣
𝑑𝑑𝑑𝑑
𝑑𝑑𝑑𝑑
� 𝑑𝑑𝑑𝑑 = 𝑥𝑥 = � 𝑣𝑣𝑣𝑣𝑣𝑣
力
質量𝑚𝑚としたとき
𝐹𝐹 = 𝑚𝑚𝑚𝑚
位置エネルギー(ポテンシャルエネルギー)
重力加速度𝑔𝑔, 高さℎとしたとき、
運動エネルギー
𝑈𝑈 = 𝑚𝑚𝑚𝑚ℎ
1
𝐸𝐸 = 𝑚𝑚𝑣𝑣 2
2
問題4 力学
問1
以下の設問に答えなさい。
力・仕事・エネルギーの定義をそれぞれ説明しなさい。
問題集の解答例を参照して解答すること
問2
樹にリンゴが実っており、地面からの高さは h (m)である。正の力の向きを上向きとする。
次の問いに答えなさい。
(1) リンゴに作用している重力 F の大きさは−𝑚𝑚𝑚𝑚である。なぜ、樹上で静止しているリンゴに
重力加速度をかけて重力が求められるのか説明しなさい。
リンゴの樹から落ちるときに加速度𝑔𝑔で落下する。これは重力が−𝑚𝑚𝑚𝑚であることを示し
4
ている。したがって、リンゴの樹で静止していたとしても重力が−𝑚𝑚𝑚𝑚である。
(2) リンゴの位置エネルギーU をもとめなさい。
位置エネルギーとはその場所にあるだけで仕事をする能力が備わっているということ
である。リンゴは樹から落下して地面をへこませる。位置エネルギーを使って地面の表
面の位置を動かしているので仕事をしていることになる。仕事の能力はリンゴの質量と
高さに比例する。したがって、
𝑈𝑈 = 𝑚𝑚𝑚𝑚ℎ
(3) 地面までに到達する時間を求めなさい。
リンゴは重力加速度で速度を増しながら、高さℎから地上まで移動(落下)する。
加速度𝑎𝑎(いまは𝑔𝑔)を時間𝑡𝑡で積分して速度𝑣𝑣を求める。𝑣𝑣を時間で積分して変位𝑥𝑥をもと
める。
𝑣𝑣 = � 𝑔𝑔𝑔𝑔𝑔𝑔 = 𝑔𝑔 � 𝑑𝑑𝑑𝑑 = 𝑔𝑔𝑔𝑔
1
𝑥𝑥 = � 𝑣𝑣𝑣𝑣𝑣𝑣 = � 𝑔𝑔𝑔𝑔𝑔𝑔𝑔𝑔 = 𝑔𝑔 � 𝑡𝑡𝑡𝑡𝑡𝑡 = 𝑔𝑔𝑡𝑡 2
2
したがって、高さℎから地面に落下したとき、次の関係があるので、地面に到達するまで
の時間𝑡𝑡が求められる。
1
ℎ = 𝑔𝑔𝑡𝑡 2
2
𝑡𝑡 2 =
2ℎ
𝑔𝑔
2ℎ
𝑡𝑡 = �
𝑔𝑔
(4) 地面に到達するときの速度を求めなさい。
地面に到達するときの𝑣𝑣は
2ℎ
𝑣𝑣 = � 𝑔𝑔𝑔𝑔𝑔𝑔 = 𝑔𝑔𝑔𝑔 = 𝑔𝑔 × � = �2ℎ𝑔𝑔
𝑔𝑔
(5) そのときの運動エネルギーを求めなさい。
運動エネルギーは
1
1
𝐸𝐸 = 𝑚𝑚𝑣𝑣 2 = 𝑚𝑚 × 2ℎ𝑔𝑔 = 𝑚𝑚𝑚𝑚ℎ
2
2
位置エネルギーと同じ大きさである。
位置エネルギーが運動エネルギーに変換された。
5
理想気体の状態方程式
理想気体の状態方程式は、圧力:p、体積:V、モル数:n、気体定数:R、
温度:T としたとき
𝑝𝑝𝑝𝑝 = 𝑛𝑛𝑛𝑛𝑛𝑛

左辺の意味は気体がもっているエネルギー(仕事をする能力)である。

右辺の意味は温度𝑇𝑇のときに気体分子 1 個 1 個がもっている運動エネルギー
の総和である。

状態方程式は温度がゼロではないとき、𝑝𝑝𝑝𝑝(気体のもっているエネルギー)
はゼロではないことを意味している。

気体定数は温度𝑇𝑇をエネルギーに換算する係数である(換算係数)。
問題6 理想気体の状態方程式
問1
理想気体の状態方程式を書きなさい。ただし、圧力:p、体積:V、モル数:n、気体定数:
R、温度:T とする。
𝑝𝑝𝑝𝑝 = 𝑛𝑛𝑛𝑛𝑛𝑛
式の意味を理解していることが重要
以下の形に変形すると浸透圧との関係が理解しやすくなる
𝑝𝑝 =
問2
𝑛𝑛𝑛𝑛𝑛𝑛
𝑉𝑉
𝑛𝑛/𝑉𝑉は単位体積当たりのモル数(モル濃度)
、1 mol の気体が 22.4 L)か
気体定数 R を気体の標準状態(0℃、1.013×105 Pa(1気圧)
ら計算しなさい。
0℃は 273 K である。
22.4 L は 22.4×10-3 m3 である。
𝑅𝑅 =
𝑝𝑝𝑝𝑝 (1.013 × 105 Pa) × (22.4 × 10−3 m3 )
=
= 8.31 J⁄(mol ∙ K)
1mol × 273K
𝑛𝑛𝑛𝑛
単位換算がきちんとできること。
6
浸透圧
半透膜を隔てて溶媒と接していると溶液の体積が増える
理想気体の分子と溶液中の溶質粒子(プラスイオン、マイナスイオン、
電離していない溶質分子)

分子や粒子(プラスイオン、マイナスイオン、電離していない分子)が容器の壁
に衝突して(壁を押して)圧力が生じている。

理想気体分子は真空の中を運動して壁と衝突して壁を押している(圧力の原因)
。
ゼロではない(有限の)温度𝑇𝑇の環境では理想気体はゼロではない(有限の)𝑝𝑝𝑝𝑝の
値を持つ。言い換えると、有限の温度𝑇𝑇の環境では有限の圧力と有限の体積を持つ。

水溶液の粒子は溶媒の中を運動して壁と衝突して壁を押している。これが浸透圧
𝛱𝛱の原因である。真空=溶媒と考えれば、理想気体と同じ状況であるので、状態方
程式が成り立つ。また、有限の温度𝑇𝑇の環境では理想気体は有限の𝛱𝛱𝛱𝛱の値を持つ。
言い換えると、有限の温度𝑇𝑇の環境では有限の浸透圧と有限の体積を持とうとす
る。

溶質のモル数が高ければ、𝛱𝛱𝛱𝛱の値も大きい。

溶質のモル濃度が高ければ、容量オスモル濃度も高い。

浸透圧Π(パイ)の式:𝛱𝛱 = (𝑛𝑛⁄𝑉𝑉 )𝑅𝑅𝑅𝑅


(𝑛𝑛/𝑉𝑉)が容量オスモル濃度である。
もし、半透膜を隔てた液体が同じ浸透圧をもつと、壁を隔てて浸透圧がつりあう。
もし、半透膜の向こう側の相手の浸透圧が低いとすると、半透膜を向こう側に押
して、
(𝛱𝛱𝛱𝛱の中の)体積𝑉𝑉を増やそうとする。しかし、半透膜は固定されているの
で、動かせない。代わりに、こちら側の体積を増やすために半透膜を通して向こ
う側から溶媒分子を奪ってくる。これが濃度の高い溶液の体積が増加する原因で
ある。
7
問題7 浸透圧
以下の設問に答えなさい。
問1
浸透圧の原理を理想気体と比較しながら説明しなさい。
溶液中の溶質粒子(プラスイオン、マイナスイオン、イオン化していない溶質分子)は気
体分子と同じように運動する。気体分子の運動では、分子が容器の壁面に衝突して圧力を
つくりだしている。溶媒中の溶質粒子も容器の壁や半透膜と衝突して浸透圧をつくりだし
ている。この際、溶質粒子の運動には理想気体の状態方程式であらわされる体積を必要と
する。このとき、溶液が半透膜を通して溶質粒子のない溶媒と接していると、そこから溶
媒分子を持ってきて運動に必要な体積を確保する。これが溶液側の体積が増える原因であ
る。半透膜を隔てた溶液と溶媒の液面の高さと同じになるように、液面の高い溶液側に加
えた圧力が浸透圧である。
補足:同じ浸透圧の溶液が半透膜を隔てて接している場合、同じ圧力で半透膜を押す。し
たがって、2つの溶液の間での溶媒分子のやり取りは起きないため、浸透圧差は生じない。
問2
浸透圧がなぜ重要なのかを説明しなさい。
注射の再に注射液と赤血球内(溶質粒子が含まれているので、固有の浸透圧がある)の浸
透圧の差が大きいと、赤血球の破壊や変形を引き起こしてしまうため。注射液の浸透圧の
方が低い(低張溶液、低張電解質溶液)と、赤血球内の浸透圧が注射液の浸透圧と同じに
なろうとして、注射液から水分子を取り込み、膨張する。しかし、赤血球の膜が破裂して
しまう(溶血)
。
問3
浸透圧Πの定義の式を書きなさい。
理想気体の分子運動とプラスイオン、マイナスイオン、溶質分子の運動は同じであるとみ
なすことができるので、理想気体の状態方程式が成り立つ。浸透圧について式を変形する
と
𝛱𝛱 =
𝑛𝑛
𝑛𝑛𝑛𝑛𝑛𝑛
= � � 𝑅𝑅𝑅𝑅
𝑉𝑉
𝑉𝑉
𝑛𝑛はイオン、マイナスイオン、電離していない溶質分子の総モル数である。𝑛𝑛/𝑉𝑉は容量オス
モル濃度である。
浸透圧は容量オスモル濃度に比例する。
問4
浸透圧濃度と容量オスモル濃度の定義と単位をそれぞれ説明しなさい。
浸透圧濃度:溶媒 1 kg 中に存在する粒子(プラスイオン、マイナスイオン、電離していな
い溶質分子)の総モル数 単位:Osm
容量オスモル濃度:溶媒 1 L 中に存在する粒子(プラスイオン、マイナスイオン、電離し
8
ていない溶質分子)の総モル数 単位:Osm, mOsm
問5
浸透圧濃度と容量オスモル濃度は理想気体の状態方程式の中のどの変数に相当するかを答
えなさい。
理想気体の状態方程式の中の𝑛𝑛/𝑉𝑉に相当する。
問6
NaCl 58.5g が水 1 L に溶けたときの容量オスモル濃度を求めなさい。NaCl の分子量は
58.5 とする。
NaCl のモル数は 1 mol だが、Na+と Cl-に電離するので 2 mol になる。
よって、容量オスモル濃度は 2 Osm、2000 mOsm(こちらの単位を推奨)
定義に沿った計算をするだけである。
問7
0.9% NaCl 水溶液の容量オスモル濃度を求めなさい。
NaCl (g) = 1000 g/L × 0.009 = 9 g
NaCl (mol/L) = 9/58.5 = 0.154 mol/L
容量オスモル濃度 = 0.154 mol/L × 2 = 0.308 Oms = 308 mOsm
定義に沿った計算をするだけである。
問8
5.0%ブドウ糖(D-グルコース)注射液の容量オスモル濃度を求めなさい。ブドウ糖の分子
柳雄は 180 とする。なお、ブドウ糖は電離しない。
グルコース(g) = 1000 g/L × 0.05 = 50 g
グルコース(mol/L) = 50/180 = 0.278 mol/L
容量オスモル濃度 = 0.278 Osm = 278 Osm
定義に沿った計算をするだけである。
問9
昏睡期のときの血中アルコール(エタノール)濃度は 0.41~0.50%である。モル濃度と容量
オスモル濃度を求めなさい。なお、エタノールは電離しない。化学式と分子量は各自で考えるこ
と。
0.41%のとき:
エタノール(g) = 1000 g/L × 0.0041 = 4.1 g
エタノール(mol/L) = 4.1/(12×2+1×6+16×1) = 4.1/46 = 0.0891 mol/L
9
容量オスモル濃度 = 89.1 mOsm
0.50%のとき:0.41%の 1.22 倍なので、
容量オスモル濃度 = 109 mOsm
問7と8で得られた数値の半分以下であるにもかかわらず、昏睡する事に注意したい。
定義に沿った計算をするだけである。
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