プラスチックの実用強さと耐久性(4)

蕪
灘
第a章 プラスチック力学的特性と試験法
目一1.基礎的特性
3−1−1.粘弾性
プラスチックの力学的な特長としては,「粘弾性特
性」を示すことが上げられる。プラスチックが粘弾
性特性を示す理由は・ポリマーは巨大分子の集合体
であることに起因する。ポリマーに力が加えられる
と,分子の原子間距離結合角などが瞬間的に変形
してひずみが発生するが,時間が経過するとポリマ
ー分子間で絡み合いがほぐれ,分子間で滑りを生じ
て変形する。前者の時間に依存しない変形は弾性変
形であり(可逆的変形),後者の時間に依存する変形
的なモデルとしては,図1のように,マックスウェ
ルモデルとフォクトモデルで示される。同図からわ
かるように,応力やひずみは時聞の関数になってい
ることがわかる。ただ,ポリマーは多分子性である
ため,これらのモデルを組み合わした複雑な関数と
して表される。
また,粘弾性特性は時間だけではなく,温度によ
っても変化する。つまり,温度が高い場合は,分子
間の滑りは起こりやすくなるため,粘性に基づく時
間依存の変形が起こりやすくなる。逆に,温度が低
い場合には,弾性に基づく変形が支配的になる。こ
のように,プラスチックの力学的特性は時間や温度
に依存するため,製品設計に当たっては,粘弾性特
性に基づくクリープや応力緩和特性を考慮しなけれ
は粘性変形である(不可逆変形).
ばならない。
粘弾性特性のモデルは,弾性(スプリング)と粘
性(ダッシュポット〉の組み合せで示される。基本
3−1−2.転移温度
“Seiichi HONMA, 本問技術士事務所所長
〒2540811神奈川県平塚市八重咲町19−23
ポリマーは巨大分子であ弘分子骨格に固有の分
子鎖を有しているので,これらの分子運動に基づく
融点,結晶化温度,ガラス転移温度などが存在する。
また,分子の側鎖や固有の結合鎖
マ ウェルモデル
σ(‘)一E・即(子)
η
E τ(∫)=万
灘
墓
奎
霊
る。
σ=応力,ず:時間
融点(融解温度)については,
η ただし、ε:ひずみ,E:スプリングのヤング率,
ポリマーは多分子性であるため,
η:ダッシュポットの粘度
τ:緩和時間
フオークトモデル
E
・(ガ)一砦〔1一岬(子)〕
η λiユ
E
ε:ひずみ,σ:初期応力,
ただし,λ:遅延時間,バ時間
図1粘弾性モデル
174
の運動に基づく副分散温度も存在
する。副分散温度においても力学
的特性に変曲点が表れることがあ
1
箕岡丁削
■γ
布
一温度(℃)
図2 融解温度の求め方
(ピークが 1点の場合)
プラスチックス
単分子の化学物質のように明確な融点を示さないこ
とが多い。結晶性ポリマーでは,溶融ポリマー中に
微結晶が存在しなくなる温度とする考え方もあ
1987では,示差熱分析計(DTA)
または示差走査熱量計(DSC)の測定により,図2の
ように,融解ピーク温度(7》初),補外融解開始温度
る%JIS Kl7121
(公曜),補外終了溢度(蝿躍)などで定義している。た
だ,融点は成形加工においては,成形条件の目安に
はするが,力学的特性としては,あまり意味のある
るかは・分子量,結晶化度,架橋・分岐度,欠陥部
の存在などの材料要因,肉厚,コーナーアールなど
の設計要因,温度,ひずみ速度などの使用条件要因
によって変化する。
表1に,延性破壊しやすb要因と脆性破壊しやす
い要因を示す。たとえば,通常,脆性破壊する
PMMAでも,高い温度では延性破壊する。逆に,通
常,延性破壊するPCでも,シャープコーナーがある
DTAまたはDSCによる測定で,図3のように,結
と脆性破壊するようになる。また,延性確壊から脆
性破壊への変化点では,延性破壊と脆性破壊が混在
し,強さがばらつきやすい傾向がある。
延性破壊する場合では,衝撃エネルギーは塑性変
形ひずみエネルギーとして吸収されるため,高い衝
撃強さを示す。また,延性破壊では強さのばらつぎ
も少ないという特長がある。一方,脆性破壊では,
応力下で欠陥部からクラックが発生し多方向に急速
に伝播して破壊する。破面はガラスの破壊のように
晶化ピーク温度(7》、),補外結晶化開始温度(丑。),
脆く破壊し, 強さのばらつきも大きい。
補外結晶化終了温度(蝿・)な、どを定義している。
3−1−4.エネルギー弾性とエントロピー弾性
ガラス転移温度(主分散またはα分散ともいう)
は,分子主鎖の運動が停止する温度であり,分子運
動に対応する比熱,屈折率,比容積などの変曲点で
プラスチックが示す弾性としては,エネルギー弾
性とエントロピー弾性がある。3−H.項で述べたよ
うに,原子間隔や結合角が瞬間的に変形することに
示される。JIS K7121−1987では・DTAまたはDSC
の測定で,図4のように,中間点ガラス転移温度
表1破壊方式の要因別の傾向
データではない。
結晶性プラスチックの結晶化速度は,核生成と結
晶生成速度の積に依存する。ここで,核生成速度は,
低温側で速く,高温側で遅い。一方,結晶生成速度
は,高温側で速く,低温側で遅い。このことから,
それぞれのプラスチックについては最適温度,つま
り結晶化温度が存在する。JIS K712P987では,
(簸g),補外転移開始温度(公g),補外転移終了温度
(篇)などで定義している。
材
副分散温度は,分子間の結合力の差,分子の部分
的運動の相互作用,分子鎖の部分的な運動などに基
づくものと言われ,ガラス転移温度(α分散)より低
料
設 計
い温度で,高い方からβ分散,γ分散,δ分散と称さ
れている。これらの副分散は,ポリマーの動的粘弾
性の温度特性を測定するときに表れるが,すべての
ポリマーについて観察されるわけではない。副分散
は,ポリマーの分子運動と力学特性を関連づける場
合には有用な指標である。たとえば,PCの低温側で
脆性化する挙動については,一100∼一500Cあたりに
延性破壊
脆性破壊
平均分子量
岐度,架橋度’
晶化度
高い
低い
い低い
い高い
コーナーアール
厚
大きい
分類
項 目
小さい
いなし
いあり
エルド
使用条件
温 度
高い
ずみ速度
低い
いなしなし
工一ジング
外線照射
注)この表は延性破壊を示すものが,条件によっては脆性破
壊を示すようになる一般的傾向を表したものである。
存在するγ分散との関係が報告されている2)。
3−1−3.延性破壊と脆性破壊
プラスチック成形品の破壊様式には,「延性破壊」
と「脆性破壊」がある。延性破壊は,力を加えると
分子の絡み合いが解れながら破壊する状態であり,
現象的には伸びを示しながら破壊する。一方,脆性
破壊は,欠陥部から亀裂が生じ,これが成長して破
壊する状態であり,現象的には伸ぴを示さず脆く破
一温度(℃)
一温度(℃〉
壊する状態である。
図3 結晶化温度の求め方
図4 ガラス転移温度の求め方
プラスチック成形品が延性破壊するか脆性破壊す
(ピークが1個の場合)
(階段状変化の場合)
Vo1.55,No.1
へ
Tir
」γ
』γ
ぺ 丁
肖IN
↑ 一IN
ぺ ぺ
↑
ZσTピ。
穿
175
ずみの応力状態を示す3,。
よるひずみは,力を除けば原型に復する。づまり,
弾性変形では,加えられた力は弾性ひずみエネルギ
ーとして蓄積され,力を除けぱ回復する。
一方,エントロピー弾性は,ガラス転移温度また
は結晶化温度と融点の間で表れるもので,この温度
領域ではゴム弾性を示す。エントロピー弾性を示す
温度領域では溶融体の自重変形が少ないので,押出
成形,ブロー成形,真空成形などでは,この温度領
域で加工される。ポリマーはガラス転移温度や結晶
化温度以上では,分子は自由に動けるので,エント
ロピーの大きいランダムコイルの状態を取ろうとす
る。この様子を図5に示す。ゴム弾性を示す溶融体
に力を加えると,ポリマー分子は引き伸ばされるが,
たとえば,PCの衝撃強さの厚み依存性で,厚肉側
で急に低下する現象は平面ひずみ状態で応力が多軸
化することによるものといわれている。
目モ.強さの試験規格
プラスチックの試験方法は,JIS(日本工業規格)
に定められている。以前のプラスチック関連のJIS
は,ASTM規格に準じる方法によっていたが,最近
では,国際規格であるISOの試験法に整合化しつつ
ある。このため旧JISとISOに整合化したJISで
は,さまざまな点で異なっている。強さに関する試
験法につい宅,主要な変更点はつぎのとおりである。
第1に,プラスチック材料を正確に比較するため,
エントロピーの増大する方向,つまりランダムコイ
ルの形態を取る方向に変形しようとする.これがエ
試験片の作成方法にっいて,試験片の金型や加工条
件について細かく規定し・成形の履歴を記録するこ
ントロピー弾性である。
また,分子骨格にソフトセグメントとハードセグ
メントを有する熱可塑性エラストマーでもソフトセ
グメントのエントロピー弾性によってゴム弾性を示
とを求めている。たとえば,以下のことがある。
①試験片は,基本的には図7に示す多目的試験片
エントロピー減少
すD
3−1−5.平面応力と平面ひずみ
エントロピー増大
肉厚の薄い試験片を引張ると,引張方向に伸び,
横方向にポアソン効果のため収縮しようとする。一
方,肉厚の厚い試験片や丸棒では,横方向に収縮し
ょうとしても,材料の内部の部
ランダムコィル
図5 エントロピー弾性の原理
分が邪魔になって収縮しにく
い。このため,引張方向だけで
なく,横方向にも応力が発生す
るため, 多軸に応力が作用して
肉厚の厚い方が強さは低くなる
場合がある。肉厚の薄い場合を
平面応力状態といい,肉厚が厚
心
(単位mml
い場合を平面ひずみ状態とい
試験片の形
う。図6に,平面応力と平面ひ
‘』幅の狭い平行部分の長さ
1A
‘3:全長
80±2
r:半径
P
P
y
ピ、
≧150D
6D,0±O.5
≧6〔ト勾
20−25
ら:幅の広い平行部分問の間掃
104∼1133)
106∼1203
’
砿端部の幅
20.O±0.2
わ1:狭い部分の幅
10,0±0.2
門:標準厚さ41
lB
4.0±0.2
燭:標準問距離
50.O±0.5
L二つかみ具悶の初めの問隔
n5士、
嚇
注〉射出成形などで直接型成形する試験片はIA形多ヨ的試験片,また,板などから
機械加工によって作る試験片は1B形多目的試験片を標準(Pr己f㎝£d)とする・
工)材料によっては,つかみ具の中での滑りや破壊を防ぐために,つかみ部の長さ
を大きくする必要があるD(例えば,ど2i20Drnm)
P P
σ〆ら=0 επ=ε=iO
ε),5τ・ε=キo σF,σエ,σこ≒o
図6 平面応力状態と平面ひずみ状態3)
176
2)ri[(12一‘1)2+(西2一の2]/4(む2一の
,3)‘1,r,診、及び西2によって決まる。ただし,記載した許容範囲内であること
4)支障のない限り優先的に使用する厚さ。
。
図7多目的試験片の形状(IA形と1B形)
プラスチックス
表2シングルポイントデータの提示のために試験条件とフォーマット(機械的性質にっいてのみ記載)
性 質
2.1
引張弾性率
2.2
2.3
引張降伏応力
引張降伏ひずみ
2.4
引張破壊呼びひずみ
2.5
50%ひずみ時
張応力
引張破壊応力
引張破壊ひずみ
2.6
2.7
記号
El
σy
試験片のタイプ
よび寸法(mm)
規格
JIS K7工61
IS K?工62
JIS K7139
試験条件および補足説明
単位
MPa
備考5.参照)
試験速度1mm、/1nin
降伏点のある破壊=試験速度50mm〆min
l備考7.参照)
εy
轟β
MPa
αo
備考6.参照 降伏点のない破壊(備考8.
参照)
εB≦エ0%:
試験速度5mm/mi口
σ3
ε8
εB>1D%=
試験速度50mm〆min
2.8
引張クリープ弾性痙
曲げ弾性率
2.1r曲げ強さ
2.12 シャルピー衝撃強さ
β
2.工4
工
シャルピー衝撃強さ
ッチなし
引張衝撃強さ
JIS K7171
MPa
1h ひずみくO.5%
醗σ
ISO179−1
たは
免4
向
8{1×10×4
MPa
試験速度2mm〆min
1,000h
備考5.参照〕
α廿
ノッチなし
2.工3
ISO899
c103
.9
2.10 1
旦.1
SO王79−2
ISO8256
性材料では,任意の特別情報備考9.参照〉
kJ〆m2
80×10×4
エツジワイズ衝撃・破壊のタイプを記録(備考10.参照)
備考5.参照)
械加工による
ノッチ,プ=D.25
kJlm2
80×10×4
参考 ノッチ付きシャルピー試験で破壊しな
備考5.参照)
ヵ、った場合だ塾ナ言己録する。
械加二による
ブルVノツチ,
=1
2.15 パンクチャー
撃試験
.16
恥鴎
ISO6603一一2
6D X60×2
備考4、参照)
N
J
最大応力 ストライカ速度4.4m!S
最大値を示したストライカ直径20mm
応力が50%ストライカに潤滑剤を塗布
低下するまでする〔旛考王L参照〕
パンクチャー試験片を外側にずれないよ
ネルギー うに十分にクランプで固定
する6
〔備考〕
蔓.試験片を射出成形で作る場合,厚さ1mmの試験片にはタイプ
壊ひずみを記録する。もし,50%を超えるひずみで破壊鯵起こ
ったら,50%ひずみ応力と破壊ひずみの測定値を記録するかラ
Dlを,厚さ2㎜の講片にはタ〃D2の鍾鞭用する
たんに’‘>50”と記録する。もし,速度5CI mmlm[nで試験して
試験片が降伏点なしに破壊し,10%以下の破壊ひずみであれば,
に対してはISO lO724−2を参照)。との試験片の成形条件の詳細
については,適切な材料規格を引用する。これらの条件が得ら
れない場合,JIS K7139多目的試験片を㌍製するために規定し
た条件を用いる。ただし,射出速度の値は,多目的試験片で決
めたものと同等の射出時間から求めなければならない。
5.JIS K71$9には,引張試験のための二つのタイプの試験片が規
データの取得に対する試験速度は,5m皿〆minで行い,破壌応
(熱可塑性プラスチックに対してはISO294 3を,熱硬化性樹詣
定されている。タイプA試験片は,少なくとも長さ80mmの中
央部が得られるように,肩の半径を2G∼25mmという,より小
さい値に修正している。そうすることによって,80mmX ID
mmX4m口の寸法の漂準ISO短冊形が多目的試験片の中央部
から切り出すことができる。この場合は,直接の型成形による
試験片が薦められる。タイプBの試験片は,60㎜以上のより
大きな半径の肩をもっており,機械加工による試験片が推奨さ
れる。
6.2、1∼2.7の性質に対して記録するデータは,破壌までの応カ
ひずみ曲線の特性を明確に表すことを意図している・
7.もし,速度5D mm価inで試験して試験片が降伏点を示すなら,
データの取得に対する試験速度は,5CI mm〆mlnで行い,降伏応
力,降伏ひずみおよび破壊呼びひずみを記録しなけれぱならな
い。もし,5D%を超える呼びひずみで破壊が起こったら,破壊
呼びひずみの測定値か,たんに’‘〉5D”と記録する。呼びひず
みは,伸び計による測定の代わりに最初と最終のグリップ間隔
から求める。
8.もし,瀬511㎜1minで識して10%を超えるひずみで瀬
力と破壊ひずみを記録しなければならない。
9.曲げ試験は,試験片の断面方向に不均一な応力を生じさせる。
本来・破壊するまでに非線形挙動を示す材料に対して得た曲げ
強度の数値は,試験片の厚さに依存する。したがって,この試
駿は,二れらの材料には推奨できない。破壊まで線形挙動が支
配的な材料に対して,この試験を用いたデータを入れることは,
任意である。しかし,射出成形品または強化材料の場合は,断
面方向の不均質な構造によって,曲げ特匪と引張試験で得られ
た数値は,差が出るであろうと注記しなけオしばならないc
lO.試験後,ISO l79−1および1SO179−2で規定する破壊の三つの
タイプに従って試験結果を分類する。
C一完全輯支壊また酢まヒンジ破壊
P 部分破壌
N一非破壊
破壊のタイプで試験結果を層別し,もっとも頻度の高い破壊
のタオプに巽して衝撃強さ平均値と蒐応する破壌のタノプ〔C,
PまたはN)を記録する。
1Lこの試験で比較可能なデータを選択する目的で,ストライカと
試験片の間の摩擦を最小限にするため打撃面への潤滑剤の使用
を規定するQ最適な潤滑剤とその眞用方法についての詳細な説
明は,試験規格を参照する。潤滑剤を使用しない試験からの結
果は,摩擦によって高めとなP,破壊の様式は,潤滑剤を使用
した試験と異なるであろう。
し,50%以下のひずみで降伏点、を示さないなら,破竣応力と破
Vol、55,No.1
177
を用いる。ほとんどの測定項目は・この多目的試験
片を用い,必要な場合にはこの試験片から切り出し
て測定することになっている。このように同じ試験
片を用いることによって,どの測定項目にういても
試験片の加工条件が同じになるようにして,成形上
の要因によるデータのばらつきが生じないようにし
L996
ている(JIS K7139
②試験片用の金型は,久プルー,ランナなどの形
。
状,抜き勾配ゲートの位置やサイズなどを規定す
るとともに,金型温度の均一化という観点から,加
熱溝の流路設計についても規定している(JIS
K7152−1 1駐99
③成形機についても,射出容量とショット重量の
関係や型締め圧の関係から, 適切な能力のものを規
。
呂一目,各…式験法と特性
3−3−1.引張試験
(1)試験法
ISO規格に整合したJIS K7161一・994では,
旧JIS
とは,つぎの点で異なっている。
第1に,試験片は図7に示した形状のものを用い
るD
①標準の試験片の厚みは4.O mmである(旧JIS
は3.2mm)
②試験片の平行部に標線を入れ,試験時にこの間
の変位を測定してひずみを求める(引張弾性率
を測定する場合)。
て成形条件の測定方法について規定している。また,
などの点が変わっている。
第2に,引張弾性率は,ひずみで0.OOO5と0.DO25
に対応する応力の値から計算する。「日JISでは・原
点から接線をひいてうその勾配から計算していたが,
必要塗項目については,適切な条件範囲を明記して
誤差が大きいので,応カーひずみ曲線の2点問の勾
いる(JIS K7152−1
配から計算する方式をとっている。
第3に,引張強さのシングルポイントデータでは,
1 1999
定している(JIS K7152
Q
④成形条件についても,各条件の定義を明確にし
199騒
第2に,材料特性の表し方にっいては,使用者が
材料を選定する場合に,材料閏の比較をしやすいよ
うに,
シングルポイントデータ(JIS K7140−1−2000)
つぎのような特性値で表示することになっている。
①引張弾性率(E♂)
とマルチポイントデータ(JIS K7141一・996)によって
②引張降伏強さ(σ、)
表示するように求めている。シングルポイントデー
③引張破断呼びひずみ(σの
定められた一点の条件で測定した値で表示す
るフォーマットである(表2)。
マルチポイントデータは,主として設計のための
データベースであり,’それぞれの特性値が温度,時
問・その他の環境因子によってどのように変化する
かを示すため,これら因子の測定水準問隔の取り方
④50%ひずみ時引張応力依。)
タは,
⑤引張破断応力(σB)
⑥引張破断ひずみ(ε房
これらの特性値で表現する理由は,応カーひずみ
ε1
を定めている・
強さについては,動的弾性率,定速引張特性,引
張クリープ・シャルピ廿衝撃強さなどが規定されて
いる。図Sにシャルピー衝撃強さ 温度特性のマル
チポイントデータ表示例を示す。
ε
旧魂
σM
σB
脆い材料
σM
σB
σy
b
a
σy
1
伏点を示す1脆くない材料
σM
C
σ σ3
£
σ
目
\
σM
σ3
玄
図8マルチポイ
ントデータの
蔦
劇
潭
撃強さ
温度
d降伏,氣を示さない
σ且
1脆くな
「
1張弾性率E、の計算 の
い材
禦講磁鷺蹴禦
σz
σ1
泣
ミ
1
キ ー40−30−20−10 0
10
法
ε152
23
L78
εB
ε
一〉、
γ(℃)
ε日EyεyX% εM ε廟 ε阿
図9
代表的な引張応カ
ひずみ曲線
プラスチックス
曲線は図9に示すようにいろいろなパターンがある
ため,上述のデータによって,それぞれの材料の特
E:引張弾性率(MPa)
性を明確に表すことを意図している。
引張試験では,荷重や変位を測定し,つぎのよう
張応力
に計算して引張応力・ひずみ・引張弾性率,ポアソ
張応力
ン比などを求めている。
【ポアソン比】
【引張応力】
必要な場合には・ポアソン比を互いに直交する2
引張応力は,試験片のはじめ(応力をかける前)
の断面積をもとに,つぎの式によって算出する。
方向のひずみの値をもとに,次式で算出する。
F
σi−
4
乙こに,
(3
σ一=ひずみ&=0.0005において測定された引
σ2=ひずみε2=0,0025において測定された引
μ.一専 (3−7)
o
1)
ここに,
険:ポアソン比(無次元の比)
σ二引張応力(MPの
F:測定荷重(N〕
苑=わ(幅),またはηh(厚さ)となり,選択し
た方向を示す。
。4:試験片のはじめの断面積
ε二縦ひずみ
【ひずみ】
引張ひずみは,通常,つかみ具の移動量で求め,
これを引張呼びひずみと称している。引張弾性率を
求める場合には・標線間の変位を伸び計またはひず
みゲージで測定することになっているρ
引張ひずみは,図7の試験片に示した標線間の距
離をもとに,次式で計算する。
_∠Lo
Aト
/
B’
ε(箔)一1・o×誓
器謡一.__。,__ 畔籾一
qJ5
く3一恥
ピ Lo
糊
潭
κ
(3一一3)
『r\・
}1
田降D,50一。
ここに,
\
田
ε=引張ひずみ(無次元の比または%)
0
五Q:試験片の標線間距離(mm)
』L・=試験片の標線間の増加(mm)
引張呼ぴひずみの値は,はじめのっかみ具間距離
o.25 0
().OQ
をもとに,次式で算出される。
0.OO
∠L
εf二τ
(3
∠L
εピ(%)=100×τ
(3−5)
または%)
L;はじめのつかみ具問距離
1,200
∠ゐ:つかみ具間距離
【引張弾性率】
引張弾性率は,2点の規定されたひ
ずみの値をもとに,次式で算出する。
E一雲≡響1 (3−6〉
c2 G旦
ここに,
VoL55,No,1
一20 x
_1,00Q
り
日
ロ
\
鱈
レ
R
偉
懸
温
025 α50 0、75 1・00
伸び/ゲージ長さ
4)
図10
ここに,
εご:引張呼びひずみ(無次元の比
ε
3
潭
800
引張荷重・伸び曲線と試験片の変形状態4j
℃ナイ。温
霧 直後
£ 8DO
19mm/血証
鼠〕0
400
十2℃
200
=Ll 40_
O 10 O
毯
ψ
『ド80℃
}
20 30 40 50
這600
ぎ400
R
畏20σ
図11PA66の引張応カーひずみ
ASTMD638による
成形直飛愚㎞,血
吸湿率2.5%
吸湿率8%
墨
聞 o
0 10 20 30 40 50
ひずみ(%)
曲線51(温度の影響1
ナ㌍噸
1,000
み速度 ひずみく%)
図12
PA66の引張応カーひずみ
曲線51(吸湿率の影響)
179
go
120
110
念IOO
愛go
ミ80
遼70
超60
壷
50
荷重F (単位:mm)
80
ム
圧子 1
70
一ポリカーボネート
。・ABS樹脂
ム
・
血
’
’
ー’
、、一
’
,
ド
淋
佃一
20
「
, 一 『
40
60(
50婆
40る
30}
一
.
10
図14白げ試験
の支持台と
“
頃
囚
試験片の位
置(試験開
始時の状
態)
10−2 10−I lOo 101 102 103 104 105
麹
標準試験片の寸法な,つぎに示すとおりである。
長さ1‘需80.0±2.O,幅:西=L(LD±O.2,
厚さ:直=4,0±O.2
ひずみ速度(%/S)
図13引張降伏応力および破断ひず券のひずみ速度
依存性
る場合である。例えば,PA66などで,吸水した場
合や高温での引張試験では,降伏を示さない応カー
暉
1
1 晦/2
中立軸一
十一一
1勘/2
ングを示さず,試験片の全体が伸び,延伸方向へ分
子の配向するため,応力は増大し,ついには破断す
ひずみ曲線(曲線d)を示す。
圧縮応力側
図15曲げ荷重に
よる発生応力
引張応力側
引張特性における強さのぱらつきについては,降
伏強さは比較的試料間のばらつきは小さい。一方破
断強さや破断伸びは,ばらつきやすい傾向がある。
この理由は,破断は表面傷,異物∋気泡,クラック
などの欠陥部が起点}となって破壊するため,試料中
での欠陥部の有無に左右されるためと考えられる。
最大引張応力(最大繊維応力)
εが横ひずみ,宛=鼠幅),または盟一h(厚さ)
(2)引張特性
引張試験による応カ ひずみ曲線のパターンは,
材料の特性をよく表している。図9で,脆い材料(曲
線a),降伏点を示す脆くない材料(曲線b,c),降
伏点を示さない脆くない材料(曲線d)などがある。
たとえば,材料の微細なクラックの発生をともなう
劣化の程度を評価する場合,破断強さや破断伸びの
低下を指標にすることが多い。
引張特性は,温度によって変化する。図115〕は
PA66の応カ ひずみ曲線である。室温では降伏点
を有する特性を示すが,高温側では降伏を示さない。
また,PA66の場合,吸湿率の影響も受けるが,図
125)のように,成形直後の試験片(吸湿水率は0.2%
曲線aの場合は,破断点で亀裂が発生して破断し,
脆性破壊を示す。曲線b,cは,降伏点に達するとネ
ッキング現象を示し応力は低下し・その後塑性変形
しながら応力は増大し,ついに破断点に至る。
図10はPCの引張荷重・伸びと試験片の変形状態
である4)。ひずみが約0,01までは弾性限界内にあ
り,さらにひずみが大きくなると非線形となり・上
降伏点A(通常上降伏点を降伏点としている)に達
し,それと同時に写真A’のようにネッキングが発
生する。ネッキング部発では急激な分子み配向によ
以下)では明瞭な降伏点がみらる。しかし,吸湿率
が高くなると,温度の影響と同様に,降伏を示さな
い応カ ひずみ特性を示すようになる。
引張特性は,ひずみ速度によっても変化する。ひ
ずみ速度が速くなると,分子の動きがついて行けな
いので,弾性の成分の寄与が大きくなるため,引張
り弾性率,降伏強さまたは破断強さは高くなる傾向
り発熱し・いわゆるひずみ軟化を生じて応力はB,
Cおよび下降伏点のDまで低下し,ネッキングも成
長する。延伸されたネッキング部分は分子の配向に
より強化されるので,応力は下降伏点Dより低下す
ることなく,ネッキングは未延伸部分に向かっ宅成
み漣度依存性を示す。同図から,ひずみ速度の増大
につれて,降伏強さの値は大きくなり,破断伸びの
値は小さくなる傾向があることがわかる。また・試
験片の引張方向に直角に切欠きが入っている場合
も,びずみ速度の増大と同様な傾向が認められる。
長レゴついには試験片全体が延伸・強化され,ふた
たび応力は上昇して破断に至るG曲線dは,ネッキ
考えられる。
180
がある。
反面,引張破断伸びは小さくなる傾向がある。図
13にPCとABS樹脂の降伏強さと破断伸びのひず
この理由は,切欠き底ではひずみ速度が速くためと
プラスチックス
3唱一2.曲げ特性試験
(1)試験法
2点支持,中央荷重の曲げ試験では,試験片の中央
に荷重を加えると,中立軸A−A〆より上側では圧縮
応力が発生し,下側では引張応力が発隼する。最大
の応力は試験片の上面(最大圧縮応力)と下面(最
大引張応力)にそれぞれ発生する〔図14)。プラスチ
ックは圧縮応力より,引張応力で破壊する性質があ
るので,曲げ強さは試験片の下面に発生する最大引
張応力〔最大繊維応力という)の値で表示される・
また,ひずみも試験片の下面に発生する値で表示さ
れる。曲げ弾性率も試験片下面に発生する引張応力
とひずみの値から計算する。
JIS K7171皿1994の試験法ではつぎの方法で測定
される。
試験片は,図7に示した多目的試験片の平行部分
を切り出して測定する。測定治具は図15のように,
2点支持で試験片の中央部に荷重を負荷する。支点
間距離Lは特に指定されておらず,試験したときの
支点間距離Lを計測し,この測定値を用いて計算す
表3引張特性値と曲げ特性値の比較
!弓1磁さ
引張弾性率
(MPa)
K) 61
変駐 PPE
55
PA6
絶乾)
POM
鴎
64
93
95
1Lt
窃0
曲げ弾性率
(MPa)
(MPa)
2,400
2,300
2,500
2,500
a、mQ
2,91〕Q
2,go臼
2,6DO
注)①使用材料=非強化標準グレード
②試験法:引張特性JIs K716H994
曲げ特性JIS K717正 工994
ここで,
の:曲げ応力(MPa)
F=荷重〔N}
L:支点間距離(mm)
猷試験片の幅(mm)
乃:試験片の厚さ(mm)
【曲げ弾性率】
曲げひずみは,次式で・ε‘・一〇・ODO5とεご2=0.0025
る。また,曲げ応カーたわみ曲線は図16のような曲
線パターンに分類している。つまり,降伏前に破壊
する試験片〔曲線a),ピーク値をもつが,規定たわ
み前に破壊する試験片(曲線b),降伏点もなく,規
に相当するたわみ5LとS2を算出するら
定たわみS・以前に破壊もしない試験片などであ
る。ここで規定たわみ5・とは,試験片の厚さ彦の
&:たわみ
L:支点間距離(n皿1)
1.5倍に等しいたわみと定義している。
航試験片の厚さ〔mm)
曲げ応力や曲げ弾性率は,荷重とたわみを測定す
る乙とによって,以下の式で算出する◎
曲げ弾性率は,次式によって算出する。
【曲げ応力】
ε謬2一εε1
曲げ応力は,次式で計算する。
3EL
σオ=
降伏前に破壊する試験片 3r=1,5ん
σ2M⇒σrB
入 !ピづ値をもつが,
規定たわみ5.以前に
破壊する破壊片
σrM
1
■
σrB
十 呼 一』
σ慮
■ 一
I
k 曳
コ b I l l降伏点も益く,
c l規定たわみ5。以前に
1破壊もしない破壊片
I I l I I
し し
ド し
I l I I
l
I I I
l I I
εr日 εrM ε旧
εr→
Vρ1.55,No.1
εご一管(飼2) (3
9)
ここで,
E亡一σオ2一卑1 (3−10)
ここに,
ゐゑ3 (3
ε五2
8)
島:曲げ弾性率(MPa)
σ置1:たわみs・で測定した曲げ応力(MPa)
σご2=たわみ∫2で測定した曲げ応力(MPa)
(2)曲げ特性
曲げ特性は,試験片下面に発生する引張応力ど引
張ひずみによる特性であるので・基本的には引張と
同様な特性になる。たとえば,PCの引張特性と曲げ
民
図16代表的な
Σ
駒
たわみ曲線
懇
蓉100
月
駒 50
図17引張・曲げ 漁
ゆ
強さの温度特 E
聞
性(PC)
曲げ応カ )150
碑旛き
塚魯♂
一/00−50
0 50 100 L50
温 度(℃)
1$1
非晶層に発生するため,曲げ弾性率は引張弾性率よ
−匝
c
り低くなると考えられる。
以上のように,曲げ特性値は,材料の特性を理解
する上では有用であるが,設計値として利用する場
合には,上述のような事柄を考慮する必要がある。
1響勢形議よ丞
R
b
蟄
(遅延弾性変形)
輻
図18荷重と曲げ
応力の関係
荷 重F
特性は図17のとおりであり ,ほぼ同様な特性曲線で
あることがわかる。ただ,引張試験と曲げ試験では,
材料力学的な点から,特性値には違いが生じる。
表3に,プラスチックの曲げ特性値と引張特性値
の対比を示した。同表からわかるように,引張強さ
に対し曲げ強さの値はかなり高い値を示している。
一方引張弾性率に対し,曲げ弾性率は,結晶性樹脂
では低い値を示し,非晶性樹脂ではほぼ同等の値を
示している。これらの理由について考えてみる。
曲げ応力については,すでに述べたように,試験
片の下面に発生する最大引張応力(最大繊維応力)
の値で示される。このときの曲げ応力の計算式は(3−
8)式で示される。しかし,材料力学的には,この式
は荷重Fと曲げ応力のは,線形であるという前提
で導かれた式である。図18に示すように,プラスチ
ックは降伏点(または破断点,規定たわみ点)近傍
では,塑性変形(遅延弾性変形〉によって,直線よ
り下方にずれてくる。このため,線形の関係式で計
算した曲げ強さは,塑性変形も加わった真の曲げ強
さより高い値を示すことになる。引張強さは,降伏
または破断荷重を試験片断面積で徐した値であるの
で,
ここにいう真の曲げ強さに相当すると考えられ
る。したがって,曲げ強さは引張強さより見かけ上
高い値を示すことになる。製品設計のデータベース
としては1 引張強さから求められる許容応力を前提
JIS K7140−2−2000のシングルポイントデ 一タの備
考においても,つぎのように注釈されている。
「曲げ試験は,試験片の断面方向に不均一な応力を
生じさせる。本来,破断するまでに非線形挙動を示
す材料に対して得た曲げ強度の数値は, 厚さに依存
する。したがって,この試験は,これらの材料には
推奨できない。破断まで線形挙動が支配的な材料に
対してこの試験を用いたデータを入れることは,任
意である。しかし,射出成形品または強化材料の場
合は,断面方向の不均一な構造によって,曲げ特性
と引張特性で得られた数値は,差が出るであろうこ
とを注記しなければならない」。 (次号に続く)
く参考文献>
1)Lawrence E.Nielsen著(小野木重治訳),高分子の力学
的性質,P30,化学同人(1965)
2)B,Hartmann and G.F、Lee,エApplt Polym.Sci,23
(19),p.3639/3650 (1979)
3)成澤郁夫,プラスチックの強度設計と選び方,p.29/30,工
業調査会(1986)
4)Gerard Buisson and K.Rav正一Chandar,Polymer,31
(11),P.2071〆2076(1990)
5)福本修編ポリアミド樹脂ハンドブッタ,p.155,日刊工業
新聞社(1988)
にすべきであろう。
一方,曲げ弾性率にっいては, フッ クの弾性限界
内と考えられるひずみとして,0.0005と0.0025に
対応する応力の2点間の勾配から計算している。こ
のため,曲げ弾性率と引張弾性率は,非晶性樹脂で
は両方の値は一致する。ただ,結晶性樹脂では,引
張弾性率のほうが高い値を示している。この理由は,
射出成形する際に型内での結晶化挙動に関係すると
考えられ番。つまり,成形品の断面方向については,
型内で冷却されるときに成形品の表面近傍は急冷さ
れるため非晶層になり,内部は結晶化している。曲
げ試験では,最大引張応力は試験片の下面,づまり
182
プラスチックス