第5学年「算数科」学習指導案

研究テーマ
「考える力を育む指導の工夫」~算数科を中心として~
平成24年7月11日(水) 5 校 時
板
橋
区 立
新 河
岸 小
学 校
第
5
学 年
2 組
3
3 名
授
業
者
教 諭
工 藤
慎 也
第5学年「算数科」学習指導案
題材名「きまりを見つけて」~図、表、式を使って考える~
学習指導要領より
内容
D 〔数量関係〕
(1)伴って変わる二つの数量の関係
ア
簡単な場合について、比例の関係があることを知ること。
(2)数量の関係を表す式
(2) 数量の関係を表す式についての理解を深め、簡単な式で表されている関係について、二つの数
量の対応や変わり方に着目できるようにする。
1
題材のねらい
変化する2つの数量について、図、表から数量関係や規則性を見付け、変化する2つの数量の関係を式に
表し、課題解決につなげる能力を伸ばす。
2
評価規準
評価の観点
関心・意欲・態度
評価規準
2つの数量の変化の仕方について、対応する数値を図、表、式に表すなどして、問
題を解決しようとしている。
数学的な考え方
2つの数量の変化の仕方について、対応する数値の規則性を見付けようとする。
3
本題材の扱いについて
変化する2つの数量に着目し、図、表、式を用いて問題解決に取り組む。2つの数量の規則性を探させ、規則
性を見付けることのよさに気付かせる過程で、数学的な思考力の育成をねらう。
本題材で主に育てたい考え方は、「帰納的な考え方」(・ 幾つかのデータを集めようと努めること。
・ それ
らのデータの間に共通に見られるルールや性質を見出そうと努めること。
・ 見出したルールや性質が、その
データを含む集合で成り立つであろうと推測すること。 推測した一般性が真であることをより確かにする
ために、新しいデータで確かめること。
)である。
変化のきまりを見つけるには、一人一人が目的意識をもって自力解決することが最も大切なことではある
が、本題材の学習を通して、図、表、式それぞれの表現の機能やよさに気付かせるようにしていく。
ここでは、具体的に次のような機能やよさを児童にとらえさせたい。
図:問題場面を視覚的にとらえやすい。
表:2量の変化の関係をとらえやすい。
式:一般化されていて、別の場面でも活用しやすい。
それぞれのよさに、自力解決する過程や、意見交流をする過程を通して気付かせることで、以後の問題解決
で意欲的に活用しようとすることにつなげていきたい。
また、今後同じような課題に取り組む場合に、「変化のきまりを見つけることが解決の糸口になりそうだ」
という見通しをもてるようにしたい。
本題材の第 1 次では、正三角形を横に並べていくときの正三角形とぼうの数の関係についてきまりを探す。
きまりを見付けたり、表したりする方法として、図、表、式のそれぞれのよさに気付かせたい。この段階では、
図に表し直接数えることも、表を全てかくことも認めつつ、きまりを見つけることの有用性に気付かせるよ
うにしていく。
第 2 次では、正三角形を重ね、100 段ピラミッドを作るために必要な正三角形の数を求める。100 段のピラ
ミッド図を描くのは容易ではない。そこで、第 1 次の学習を生かし、「表をもとにきまりを見つければ出来そ
うだ」と見通しをもたせる。しかし、第 2 次の課題は第 1 次のときのように、表を横に見て、横の関係だけを
見て見付かるきまりでは、なかなか正答にたどり着けない。表を縦に見て、「段数」の二乗が「正三角形の数」
になっていることに気付くことで、解決の糸口が見つかる。その過程できまりを見付ける上での表の有用性
に気付かせたい。また、式に表すことで、段数が何段になっても問題に対応できるという、式に表すことのよ
さである「別の場面でも活用しやすい。」ということに気付かせたい。
4
児童の実態
○1学期算数アンケートの結果
1 学 期 算 数 ア ン ケ ー ト 5 年 2 組
①
②
③
④
算 数 の 学 習 は 好 き で
すか
6
10
2
算 数 の 学 習 は よ く 分
か り ま す か
18
0
1
い ろ い ろ な 解 き 方 を
考 え る の は 楽 し い で
すか
10
3
0
考 え を 発 表 し 合 う の
は 楽 し い で す か
13
3
1
15
14
20
16
①
②
③
④
好 き
ど ち
ど ち
き ら
、
ら
ら
い
分 か る 、
か と い え
か と い え
、 分 か ら
楽
ば
ば
な
し い
好 き 、 分 か る 、 楽 し い
き ら い 、 分 か ら な い 、 楽 し く な い
い 、 楽 し く な い
○数学的な考え方について
解き方を考えたり、考えを発表し合ったりすることに、多くの児童が楽しさを感じている。
5年生での小数のかけ算、小数のわり算の学習では、これまでの小数の学習や、整数のかけ算やわり算の学習
で学んだ法則を生かしながら、問題解決に取り組むことができた。また、自分の考えをノートに記録し、なぜ
そのように考えたのかの説明もノートに書くことができた児童も半数以上いた。また、体積の学習では、平面
図形の学習をもとに、複合図形の体積を求め、既習事項を活用して新しい解き方を考える活動に意欲的に取
り組む児童が多くいた。
しかし、既習事項が十分に定着していない児童と、既習事項を生かして考えることのできる児童の差が大
きいことも実態である。
○発表し合い、考えを深めることについて
「考えを発表し合う」ということに関しては、人の考えに耳を傾けて自分の考えに取り入れる意識の高さは
見られる。しかし、友達の考えをノートに書き加えたり、自分の考えの補足として取り入れたりする姿は見ら
れるが、自分の考えを発表しようとする意欲はあまり見られない。原因としては、①発表すること自体に苦手
意識をもっている ②「発表し合う場面」が「友達の考えを聞いて、自分の考えが合っているか検証する場」と
いう感覚をもっている児童が多い、ということが考えられる。
5
ねらいにせまる手立て
○学習課題の工夫
第 1 次では伴って変わる数の問題に、表、図、式などいろいろな考えに取り組む中で、多様な考え方があ
ることに気付かせることをねらう。第 2 次では、第 1 次で出された考え方を使うことで答えを求められそ
うだという見通しをもった上で、学習活動に取り組めるようにする。
○児童が目的意識をもって主体的に学習に取り組むための工夫
自力解決(個)の時間を十分に保証した上での、発表・集団討論(全体)、そして自分の学習の振り返り(個)の
学習の流れを重視。
個で思考した過程があることで、他者の発表に目的意識をもって耳を傾けることができると考えた。
6 指導計画
時
目標
1
(
本
時
)
学習活動
主な評価規準
○ぼうを並べて正三角形を横
関
に並べていくときの棒の数
の仕方について、対応する数
を、分かっていることをもと
値を表、式に表すなどして、問
に規則性を探し、答えを求め
題を解決しようとしている。
る。
2つの数字が変化して
いる問題では、きまりを見
つけると、より簡単な計算
で答えを求められること
2
に気付く。
正三角形の数と使う棒の数
○図、表を使って規則性を見つ
ける。
考
2つの数量の変化の仕方に
ついて、対応する数値の規則
性を見つけることができる。
○変化する2つの数量の関係
を式に表す。
○100 段ピラミッドを作るため
関
段数とブロックの変化の仕
必要な正三角形の数を、分か
方について、対応する数値を
っていることをもとに規則
表、式に表すなどして、問題を
性を探し、答えを求める。
解決しようとしている。
○変化する2つの数量の関係
を式に表す。
考
2つの数量の変化の仕方に
ついて、対応する数値の規則
性を見つけることができる。
7
本時(全2時間の第1時)
めあて
ぼうを並べて正三角形をつくるときの、正三角形の数とぼうの数の規則性を調べる活動
を通して、数量の関係を見つけたり、調べたりする能力を伸ばす。
流れ
つ
か
む
学習活動
○留意点 ◇支援 ◆評価
○本時の学習課題をつかむ。
長さの等しいぼうで、図のように、正三角形を作り、横にならべていきます。正三角
形を 30 個ならべるとき、ぼうは何本いりますか。
○全員が課題の内容を把握できるよう、並
べ方を確認する。
考
え
る
○個々で課題に取り組む。
T:それでは自分で作戦を考えて、答えを求めまし
ょう。
C1:図に表す。
三角形を 30 個かき、ぼうの数を数える。
きまりに着目させるための発問
T:三角形が 30 個のときは求められたね。では、
50 個のときはいくつになるか、図にかいて
求められそうかな。
C:50 個もかくのは難しい。面倒くさい。
T:それなら、もっとかんたんな方法がないか考
えてみよう。正三角形の辺の数はいくつだろ
う。
C:3つです。
T:この問題では正三角形が1つ増えるとぼうの
数はいくつ増えるかな。
C:2つふえます。
T:そうですね、それなら、正三角形を2つ増やし
たら。
C:4つ
T:今のように考えてみて、何か良い方法を見つ
けられないか考えてみよう。
◇図から分かることをもとに、正三角形を
30 個かかなくても、答えを求める方法
がないか考えさせる。
C2:表をかき、表を完成させる。
◇「見つけたきまりを、言葉や式で表す方
法はないか」発問する。
三角形の数
1
2
3
4
5 ・・・
29
30
ぼうの数
3
5
7
9
・・・
59
61
◆表をもとに規則性を見つけることがで
きる。
【数学的な考え方】(ノート)
2 本ずつぼうが増えていることに気付いた
ので、30 まで表をかいて求めた。
C3:表をかき、きまりを見つけ、式を立てる。
三角形の数
1
2
3
4
ぼうの数
3
5
7
9
○この方法が正しいければ、300 段でも
5
①3+2×29=61
②1+2×30=61
400 段でも答えを求めることができそ
うだ、という一般化への見通しをもた
せ、6 個、7 個の場合も出来そうか図等
を用いて検証させる。
○立てた式が成り立つことを他の人へ説
明する方法を考えさせる。
◆分かっている部分で立式したことで、規
則性を見つけ、計算して答えをもとめる
ことができる。
【数学的な考え方】(ノート)
C4:図から立式する。
図の形から、正三角形が 1 個増える毎にぼう
が 2 本増えることに注目する
③ 1+2+2+2+2+・・・+2=61
1に 2 を 30 回足す。
○立てた式が成り立つことを、他の人へ説
明する方法を考えさせる。
◆図をもとに規則性を見つけ、立式して答
えを求めることができる。
【数学的な考え方】(ノート)
④ ③の式から1+2×30=61
⑤ 3+2+2+・・・+2=61
最初の三角形の3本に、2 を 29 個分足す。
⑥ ⑤の式から3+2×29=61
C5:正三角形を横にならべ、重なった辺を引く。
⑦3×30-29=61
○立てた式が成り立つことを他の人へ説
明する方法を考えさせる。
◆分かっていることをもとに立式し、答え
を求めることができる。
【数学的な考え方】(ノート)
○それぞれの考え方を発表する。
・C1~C4の考え方を発表する。
○教師が指名した代表者1名がホワイト
ボードにかく。かかれたホワイトボード
を見て、説明できる児童を挙手させ、指
名して考え方を説明させる。
○分からないことは、発表者に質問するよ
うにする。また、発表者が質問に答えら
れない場合、代わりに質問に答えられる
児童に挙手させ、質問に答えさせる。
○C2、C3のように表を使うという意見
が出ない場合は、教師が提示する。
○それぞれの考え方について話し合う。
T:それぞれの考え方のよいところはどんなとこ
ろでしょう。
○表現の仕方が違っても、正三角形が1つ
増える毎に、使うぼうの数が 2 本ずつ増
えていることは共通していることに気
C:C1やC2の方法は大変だけど確実に答えを
付かせる。
求められる。
C:表にまとめると変わり方が分かりやすい。
C:C4やC5のように式に表すと、正三角形が
いくつになっても答えが求められそう。
C:C2~C4は、正方形が1つ増える毎に、使う
ぼうが 2 本ふえることを使っている。
C:3+2×29 と1+2×30=61 の2つの式は
最初の三角形の数え方が違うだけで似てい
る。
○適応問題に取り組む
○式を用いて解いた児童を指名し、答えと
T:いろいろな方法が出てきましたね。では、練
習問題をします。
使った方法を発表させ、式を使う優位性
に気付かせる。
『正三角形を 100 個ならべるときに必要なぼ
うの数を求めましょう。
』
自分が 1 番よいと思う方法で解いてみまし
ょう。
①1+2×100=201
②3+2×99=201
答え 201 本
○2つの式について、式を文字式で表す。
○②の式を文字式で表せる児童がいなか
T:正三角形の数を○、ぼうの数を□としたとき、
った場合、最初の問題で出た、29 が何を
○と□にどのような関係があるか、記号を使
表す数なのかを考えさせ、正方形の数か
った式に表しましょう。
ら1を引いた数であることに気付かせ
C:①1+(2×100)=201
②3+2×(○-1)=201
る。
○正三角形の数を表す数字を記号に入れ
ると、どんな場合でもぼうの数を求める
ことができるということをおさえ、文字
式に表すことのよさに気付かせる。
◇式をかけない児童には、変化する数を記
号で表すことを確認し、式中の 30 や
29、答えの 61 がそれぞれ何を表すのか
発問することで、数字と記号を結びつけ
られるようにする。
ま
と
め
○学習のまとめをする。
T:今日の学習を通して、分かったことを発表し
ましょう。
○数字が変わっていく問題では、きまりを
見つけると、答えを求めやすくなるとい
うことをまとめる。
C1:表からきまりが見つけられる。
C2:きまりをもとに式をつくることができる。
C3:式に表すと、正三角形がいくつのときでも、
ぼうの数を求めることができる。
まとめ
数字が変わっていく問題では、きまりを見つけ
れば答えを求めやすくなる。
【授業の視点】
①本時の課題は、自力解決をしようとする意欲を引き起こし、かつ「伴って変わる2つの数量の関係を見つけた
り、調べたりする能力を伸ばす」というめあてに合ったものであったか。
②自力解決の時間を十分に保証した上で個→全体→個の学習の流れを行ったことで、児童が目的意識をもって
主体的に学習に取り組むことができたか。