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ワンポイントレッスン
クレームについて
Ver.1 (2014.1)
どうして医療機関は
苦情・クレームが発生しやすいのか
• 産業構造の根本的違い
笑顔で来られる方はいない
心や体に不安や心配を抱えて来られる
• 今後の見通しの問題
いつ治るという確定的なお話ができない
• 不可逆的の問題
元の状態に戻すことができないという現状がある
• 費用の問題
検査や治療の費用がどれくらいになるのか、流動的
なところが大きい
• 家族の存在
説明・指導等、家族の関わりが大きい
院内におけるクレームの種類
• 診療に関するもの(診療行為・診療態度等)
• サービスに関するもの(接遇・待ち時間・提供
サービスの内容)
• 施設等に関するもの(駐車場や通路等)
• ご意見箱(目安箱)の運用等
• 医療の質に関するもの
• 医療事故(合併症を含む)
患者の怒りはなぜ爆発するのか
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•
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•
治療経過がわるい
医師が横柄だった
看護師が話を聞かない
外来で長く待たされた
受付の態度が不親切だった
駐車場で長く待たされた
• 有害事象がおこっても迅速に報告してくれな
い、または詳細な説明がない(当事者がでて
こない)
陥りやすい紛争化のパターン
• 患者側から見れば、全ての人がスタッフ
• スタッフの現場意識が強すぎて、自分の担当
ではないと関係のないような対応をする
• 結果的に患者は自分の不満をどこに言って
いいのかわからない
• 担当者がどんどん変わり、患者はたらい回し
にされていると感じる
ナラティブの影響
(Narrative Based Medicine)
職員の丁寧な対応
この病院は信頼できる
職員の不親切な対応
この病院は信頼できない
点
滴
時
の
穿
刺
ミ
ス
気にしないで
なんでこんなミス
するんだ!
医療メディエータ―
(医療対話促進者)は
Narrative Based Medicine に基づいて行動
している。
Narrative Based Medicineとは、患者の語
り(これまでの経験などに基づく)に寄り
添って医療を進めていくという考え方。
この考え方を根本として対話も促進してい
く。
相手の気持ちを受け止める
・最初は相手の気持ちを受け止め、食い違う点を確認していく。
・そうだったんですね、そう思われたんですね
→相手の気持ちに共感する姿勢
何が病院側と違うのか
・逆の立場に立って話を進める
→○○さんが△△であれば、そう思いますよね
出てきた意見には、同様の意見が隠れている。
怒りの奥には不安や悲しみが隠れている
※ここに焦点を当てられるかどうか・・・
意見の否定や誤解を解くのは信頼関係が出来てから
話が聞けるようになれば、自分に矛先は向かない
後から誤解を解いていく、話を聞いて質問する事に重点を置く
医療メディエーションとは
「対立する2人以上の当事者(病院でいえば患者側と病院側)
がいる場合に、中立的第三者としてメディエーターが当時者を
援助し、エンパワーする事で話し合いを促進し、自分たちの手
で合意形成、葛藤の乗り越えへと至らしめる仕組みのこと」をいう。
メディエーションの特徴
・中立的なケアの提供を通じて、対話を促進
・介入を控え、あくまで当事者自身の「自助能力の回復援助」と
合意形成の援助」に徹する。
患者側
援助
医療者側
対話
信頼
信頼
メディエーター
援助
【メディエーションの手法】
1.傾聴
相手の話をしっかりと時間をかけて聞く(遮らずにじっ
くりと聞く)
2.オープンエンデット・クエスチョン
こちらから話の内容の詳細を聞くように拓く
3.リフレイミング
表現の言い換え⇒反対の表現
4.サマライジング
話の内容を要約の確認。主張内容の双方の確認
5.IPI分析
【IPI分析とは】
I :ISSUE(問題)
当事者の問題となっている事案そのもの
P:POSITION(表面の主張・要求)
対立や意見の相違の原因となっているもの
I: :INTEREST(本当に求めている欲求)
対立時のPOSITIONの元になっている根本的な動機や感情
つまり、患者さんの場合で考えると・・・
表層の感情(POSITION)・・・怒りの感情
問題点( ISSUE )
深層の感情( INTEREST)・・・ 不安や悲嘆、悲しみの感情であることが多い
この深層の感情に焦点をあて、表層の感情だけで対応していくのではなく、看護師
は患者さんの気持ちを考え話を傾聴していくことが大切。
個別的な声かけが大事・・・自分のことを理解してくれているという思いが出てきて、
信頼関係が築けて、方向性が良くなってくる
【メディエーションの効果】
以前は紛争・事故の発生後がメディエーターの活動領域であったが、最近は
初期対応への応用など発生の抑制にも活動が広がり、
「いつでも・だれでも・どこでもメディエーション」という考え方が広がっている。
医療現場では、在院日数が短縮され、患者・家族と十分なコミュニケーション
が取りにくい状況になっている。
このような中で、患者・家族と医療者間のちょっとした解釈の食い違いなどが
きっかけで問題になるケースが増えてきている。クレームも同様である。
患者:「あの先生は信用できないですよね?」
メデ:「どうしてそう思われたんですか?」
患者:「○○の時に△△というこがあったからです」
メデ:「先生、今のお話を聞かれていかがですか?」
医師:「○○の時は××という状況だったんです」
患者:「そうだったんですか・・・」
ここからの対応が大切になる!
過去思考型「あの時○○だったじゃないですか、だから・・・」ではなく、
「今後の経過を診せてください」と、未来思考型にもっていく。
【メディエーションにおける有効性】
①患者側に誠実に向き合い、対話を繋げる手法として医療メディエーションを理解し、
患者さんの気持ちにしっかり寄り添い、じっくり聴く(聞くではなく、心できく)という視点
が不可欠。
病院全体として、より良い患者=医療者関係を構築
②専従の医療メディエーターがいればいいというのではなく、リーダーとなるメディ
エーターを配置し、病院全体にこうした発想やマインドを浸透することで、日常診療や
インフォームド・コンセントなどの場面、クレームの初期現場での患者・家族との関係
構築・修復が早期に可能となる。
クレーム時の初期対応によってその後の方向性が変わってくる。
③病院全体として、患者・家族への対応の質が向上していくことになり、その結果、患
者・家族のとっても納得のいく対応が推進される。
④患者側だけのケアに焦点があてられるが、実際は現場職員の相談を通して職員
のケアも重要な領域。
クレーム時の当事者を謝罪に同席させるか・・・謝罪をするポイントが終わったら、そ
の場から退席させるほうがよい。
引用・参考文献
平成25年度 福岡県看護協会
第6回リスクマネジャー交流会
作成 石川俊幸