窓 - マネックス証券

Strategy Report
2013/3/15
チーフ・ストラテジスト 広木
隆
窓 - ダウとソニーとニコンとその他
昨日のレポート『「根拠なき熱狂」と「熱狂なき最高
グラフ1: ダウ工業株30種平均
ダウ平 均 [@@I NDU/U] 日 足
2013/03/14
値」』では、ダウ平均のローソク足チャートに「二ツ
14,600
←
14,500
星・三ツ星」が示現しており、この次の展開が重要
14,400
だと述べた。なぜなら次に上放れた場合、さらなる
14,300
14,200
上昇の始まりを示す買いシグナルとなるからだと指
14,100
14,000
摘した。果たして、昨日の米国株式市場でダウ平均
13,900
は連騰記録を 10 まで延ばし、1996 年に記録した 10
13,800
13,700
日続伸に並んだ。ほぼ高値引けとなり、上げ幅は
13,600
0
80 ドルを超えた。酒田五法に従えば、上昇相場の
01/31
02/04
02/07
02/12
02/15
02/21
02/26
03/01
13/01/31 - 13/03/14 [30]
03/06
03/08
03/13
(出所)マネックス証券作成
「二ツ星・三ツ星」→上放れて陽線、今後も一段高
の展開となっていくのだろう。
ちょっと待った!という声が聞こえる。果たしてこれは「上放れた」と言えるのか?「放れる」とは「窓」を空け
ることではないか。う~ん、この解釈は微妙である。持ち合いから上下に動きが出ることも、「放れる」という
から、僕はこれで「上放れた」として良いような気もするのだけれど。
そもそも、ダウ平均は「窓」が空かない。いったい、どういう理由かは定かではないのだが、「窓」がないのだ。
そこで、この業界の「生き字引」と自他ともに認める、ナンバー・ワン・テクニカル・アナリスト、K さんにお伺い
したところ、K さんも詳しくはご存じないとのこと。彼が知らないなら、僕に分かる訳がない。但し、K さんいわ
く、
「日本は気配値優先だから窓が空くが、米国の個別銘柄は寄り付くまでは<前日比変わらず>で計算され
ているようなので、それでダウ平均は窓が空かないのではないか」との示唆をいただいた。なるほど。そん
なところが理由なのだろう。
日本株でもチャートを注目していた銘柄がある。ソニーである。2 月 7 日に 1,551 円の高値をつけた後、反落
し、今月に入って切り返してきて 12 日に 1,550 円まで買われたが、2 月の高値を抜けなかった。「あと 1 円」
足らないで抜けないのは「鬼より怖い一文新値」の逆状態。「鬼より怖い一文新値」とは、前回の高値を僅か
-1–
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一文(一円)上回ったところで上昇が止まってしまうとダブル・トップとなって強烈に天井を打ったサインとなる
ことだが、一文(一円)下回ったところで上昇が止まってしまっても結局ダブル・トップとなるので、同じだろう。
むしろ、こっちのほうが「抜け切らない」感があって「ヤバイ」感じじゃないか。
と、心配していたら、今日は抜けてきた。しかも「抜
けた」なんてものではない。これそ上放れの見本の
グラフ2: ソニー (6758)
ソ ニ ー [6758/T] 日 足
20 13/03/15
1,800
ような突き抜け方である。日経新聞の記事「会社研
1,700
←
1,600
究」が効いたのか、あるいは大手証券の投資判断
1,500
1,400
引き上げの効果か、東証の売買代金ランキングトッ
1,300
プとなる商いを集めて 10%超の急騰を演じた。高
1,200
1,100
値は 1,690 円まで買われ、昨年 4 月 10 日から 11
1,000
900
日にかけて空けた窓を完全に埋めてきた。日経平
800
均がリーマン前水準を回復し、多くの銘柄が次々と
昨年来高値を更新するなか、ソニーはまだ昨年来
0
03/15 04/04
04/27
05/24
06/15
07/10
08/02
08/24 09/18
10/12 11/05
12/03/15 - 13/03/15 [247]
11/28
12/20
01/22
02/14
03/08
(出所)マネックス証券作成
高値さえ抜けていないのだ。「戻り率」という点では出遅れ物色の矛先が向かうのは必然だった。
「戻りも窓まで」という格言がある。下げ相場で窓を空けて下放れても、とりあえず窓までは戻ってくる。但し、
窓埋め完了すると、再び下落することが多いということの教えである。しかし、それは下げ相場の初期反騰、
リバウンド局面の話だ。今のソニーは本格反騰に入ったような気がする。米国本社ビルの売却など、なりふ
り構わないリストラモードだが、「復活」の道はまだ見えない。スマホが反攻の鍵とよく言われるが、確証はつ
かめていない。但し、何度も述べていることだが、誰もが確信が持てる復活へのストーリーが市場に示され
るころには株価はもっと上に行っているだろう。ある程度は、感覚や「兆し」みたいなものに賭けてみることも
株式投資では必要だと思う。
この斬新でスタイリッシュなデザインは往年のソニー復活をじゅうぶん予感させて余りある。
(出所:ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社ホームページ)
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「戻りも窓まで」というが、窓埋めまで戻ればじゅう
ぶんという銘柄がある。ニコンだ。 2 月7日にニコ
グラフ3: ニコン (7731)
ニ コ ン [7731/T] 日 足
2013/03/15
2,750
2,700
2,650
ンは値幅制限の下限(ストップ安)水準となる前日
2,600
2,550
2,500
比 500 円(19%)安の 2,139 円と急落。2 カ月ぶりの
2,450
2,400
2,350
安値に沈んだ。前日に 2013 年3月期の業績見通し
2,300
←
2,250
2,200
を下方修正したのがきっかけだ。ニコンの株価は円
2,150
2,100
2,050
高修正を追い風に1月 15 日に昨年来高値(2,750
2,000
1,950
1,900
円)をつけ、11 月半ばからの 2 カ月で千円近く上昇
1,850
1,800
していたが7日の下落でこの約半分を吹き飛ばし、
0
10/02 10/11
10/23
11/02
11/14
11/27
12/07
12/19
01/07
01/18
12/10/02 - 13/03/15 [110]
01/30
02/12
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03/06
(出所)マネックス証券作成
その後も株価は下落を続け、今月に入ってザラ場
で 2,000 円の大台を一時割ってようやく底値感が出たところだった。それが先日来、在庫整理に目処がつき
利益率改善の観測、今日は 450 ミリウエハ露光装置をインテルから受注したと日経新聞で報じられ 4 連騰で
ある。2 月の急落分を取り戻し、窓埋めとなる 2,600 円程度までの戻りが見込めるような状況になってきた。
ずっと推奨してきた産業ファンド投資法人も窓空けして上放れ、新値をとってきた。REIT 全般に買いが途切
れない。しかし、REIT は利回り商品である。株価が上がれば、利回りが落ちる。だから必然的に株価上昇に
も限度がある。さらに株価が上がるには投資先の物件から得られる賃料収入が増加する必要があり、それ
には①賃貸料が上昇する、か②投資物件を新たに取得し収入を増やすかである。投資物件を取得にする
には増資か借入をして外部成長を図るしかない。増資だけでは、結局 1 株当たりの収入は変わらないから、
借入をしてレバレッジをかけることが必要である。
物流施設に投資する REIT を推奨してきたが、産業ファンド投資法人も GLP 投資法人もプロロジスリート投
資法人も配当利回りが 3%台に低下している。株価は底堅いと思うし、まだ上値はあるだろうけれど、長期
国債との利回り格差が 3%を切ってくると、そろそろ割高感も台頭する。これらの銘柄についてはアップサイ
ドも限界が近づいていることを認識するステージにある。
今日の業種別騰落率トップは海運。もともとボラティリティが高く、これまで業績悪化でパフォーマンスが低
迷していた代表業種だけにその反動もあって「リスク・オン」になると急騰する「癖」のようなものがある。今日
の急伸の背景は、TPP(環太平洋経済連携協定)に関する思惑だ。TPP 参加で貿易量が増えるという期待
から、川崎汽船や日本郵船や乾汽船などの海運株が軒並み買われているが、後講釈の感が強い。海運株
物色に持続性があるかは疑問だ。
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TPP(環太平洋経済連携協定)は太平洋地域における自由貿易協定(FTA)の集合的呼称である。自由貿
易協定(FTA)は特定の国や地域との間でかかる関税や企業への規制を取り払い、物やサービスの流通を
自由に行えるようにする条約のことだが、このFTAを柱とした経済連携協定(EPA)というものもある。EPAは、
物流のみならず、人の移動、知的財産権の保護、投資、競争政策など様々な協力や幅広い分野での連携
で、国または地域間での親密な関係強化を目指す条約のことだ。
5年前、経済連携協定(EPA)の介護福祉士候補者として来日し、特別養護老人ホームで働きながら資格を
取ったインドネシア人のチェチェップ・サリフ・サフルディンさん(27)が「私の3K」と題するスピーチを行った。
3Kは「きつい、汚い、危険」。しかし、彼の考える3Kは「健康」「工夫」「共感」である。「施設で働くと1日の歩
数は1万歩を超える。どうすれば笑顔を浮かべてくれるか。お年寄りの心の支えになるのが私の喜びで
す。」
同じインドネシア人で三重県の病院で働く看護師マルガレタ・マリア・カシミラさん(26)は、なぜEPAの看護
師は訪問看護が認められないのか疑問を投げかけた。「高齢化が進む日本で、私も訪問看護で役に立ちた
いのに残念だ」という。
制度だけあっても、それを本当に有効に活用するにはどうすればいいか。現場の声から学ぶべきことは多
い。TPP – まだまだ言葉だけが独り歩きしている感がある。
ちなみに、サフルディンさんらの話は朝日新聞夕刊のコラムで知った。そのコラムのタイトルは「窓」という。
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